PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ビソシソ・チャレンジ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幸せのハッピー・シャワー
 『ソレ』は一体何なのだろうか。
 存在は希薄。しかし確かにそこに存在する一個体。
 ……綺麗な言葉を使うなら『妖精』とでも称するべきだろうか。
 しかし、その。『奴』は……とてもそんな綺麗な枠組みに収める事は出来ず。
「うわああああ! やめろ、よせ、何をするんだ――!!」
 ある街中。ローレットの情報屋であるギルオス・ホリス(p3n000016)は逃げていた。
 何から? いや何というか奴というか……
 ソレはいつの間にか後ろにいる。いや下手すると目の前にもいる。

 ソレは純白と漆黒の合わさった毛髪を携え。
 ソレは疾風と同等の速度にて対象を追いかけ。
 ソレは口内より虹色の神秘を人々に齎す存在――

「やめろぉ! 僕になんの恨みがあるんだ!! せめて喋ってくれこわい!」
「…………」
「黙って見つめないで――ッ!!」
 その名を(名乗らないので)人はビソシソと呼んだ――
 酷く誤解を招きそうであるが、恐れず言うなら黎 冰星(p3p008546)と姿が似ている……様な気がする存在だ。いや似ているって言っていいのか分からないのだが、しかし他に適切な言葉が見つからないので仕方ない……!
 ともあれビソシソは突如として現れる。
 ある特定の条件を満たす人物の前に……そして。
「……ヴ」
 奴は『出す』のだ。
 何を? 書いたじゃないですか、ほら。ソレは口内より――って。

「ヴォエーッ!!」
「あ”あ”あ”あ”あ”――ッ!!」

 『ソレは口内より虹色の神秘を人々に齎す存在』
 どう見ても吐……違う。虹色のハッピー・シャワーをギルオスに振りかけている。わぁキラキラしたエフェクトも付いて綺麗だなぁ。
 しかし、街中に響き渡る絶叫。
 ――冰星がギルオスを追いかけ回して虹ゲロ撒き散らしてる。
 そんな噂が流れ始めたのに、時間は要らなかった。

●ビソシソ捕獲計画
「冰星。早く責任を取ってビソシソを捕まえてくれ! 奴を放置していては危険だ!」
「いや責任って言われてもぉ!?」
 髪先に虹色が残っている気がするギルオスは、ローレットにて冰星を含めた面々に依頼の話をしていた――単純に言って『ビソシソ捕獲計画』である。
 ビソシソの所為で冰星に『虹ゲロテロリスト』という濡れ衣が掛かっているのだ……どの道ビソシソをなんとかしなければ、このままでは冰星の社会的色々も危険である……! いやビソシソ出現の責任が彼にあるかはともかくとしてだが。
「……はて、しかし如何に捕まえるべきなのでしょうか」
「確か見える人と見えない人がいるのよね? なんだっけ――ストレスの有無?」
 しかし幾つか問題があると些か思考を巡らせるのは散々・未散 (p3p008200)とゼファー (p3p007625)だ。そう、ビソシソはあちこちに出没する謎の個体であるが――奴はどういう訳か『希薄』なのだ。
 奴の姿を強く認識できる者もいれば、見え辛い者もいる。
 それこそ強くそこに居ると思わなければ見逃してしまう程に……
 それは奴が人々のストレスに呼応して現れる存在だからと推察されている。仕事、人間関係、その他諸々……理由は何でも良いが、とにかくビソシソはストレスを感じている人間の下へと現れ――そして虹色ハッピー・シャワーを繰り出してくるのである。ヴォエーッ!
「ふむ。つまり……事前にストレスを感じておく必要があるという訳ですね!」
「……だが、それははたしてコントロールできるモノなのだろうか?」
 リディア・T・レオンハート (p3p008325)の言に次いでグリム・クロウ・ルインズ (p3p008578)が語るは懸念だ――ビソシソが現れる程のストレスをどうするのか。強いストレス環境下にずっといるのも辛い話である。
 悩ましい。腕を組んで思案して、と。

 その時。

「……あれ?」
 ふと。冰星が気付いた。
 この場に集っているのはギルオスを含めて九人、なのに。
 なんか人影が『十人』に――見えて――
「…………う、うわあああああビソシソがいるうううううう!!」
 えぇ、どこに!? 数名が周囲に視線を巡らせるが、ハッキリと見えているのは今のところ冰星だけの様だ。ビソシソの所為で濡れ衣を着せられているという状況のストレスに反応して来たのか……!?
「何ッ――まさか。ローレットの支部にまで来るとはいい度胸な……!」
「え、だけどどこに……冰星! どこだ、どこにいるんだ!?」
「そこ、そこにいるよぉ! うわあああこっち見てきてるううう!!」
 思わずベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ (p3p007867)が臨戦態勢を取るも、突如の事であったが為か望月 凛太郎 (p3p009109)と同様に――ビソシソの姿を上手く認識する事が出来ていない。
 ビソシソの無感情な目線が冰星を見つめる。
 あ、ダメ。なんだろうあの瞳すごく不安になる。あ、だめ。虹色でちゃうぅ! ハンス・キングスレー (p3p008418)君、どうか羽根をむしらせて心を落ち着かせて……あ、あッ。
「オエエエエエエエ」
「わあああああ! 僕の背中で虹色はちょっとおおおお!!」
「ヴォエーッ!!」
「うわあああああビソシソが撒き散らしてきたああああ!!」
 阿鼻叫喚。しかし、今こそ奴を捕まえんと一人がビソシソに手を伸ばす――
 が。駄目!
 いつの間にか超速度で動くビソシソは窓を頭からぶち破って、外へと逃走した! こら――!! その窓誰が修理費を出すと思ってるんだ――!! ギルオスか!?
「み、皆奴を追いかけるんだ! ビソシソは確かに存在するんだ!!
 つまり――今ならこの街にいるのは確定! 捕まえるのは可能なんだから!!」
 ギルオスが叫ぶ。存在が希薄であったとしても『そこに居る』のは間違いないのだ。
 つまりなんらか……カラーボールでもぶつければより位置が正確につかめる。
 ともすればストレスが無くても実質視認する事も出来るだろう――
 頼んだぞ皆! この虹色の惨状を放置しておくわけにはいかないんだから――!!

GMコメント

 リクエストありがとうございます!!!

●依頼達成条件
 ビソシソを捕まえろ!! ヴォエーッ!!

●フィールド
 練達の街中です。ビルなどが立ち並んでいます。
 時刻は昼。一般人なども沢山いますが、ビソシソが見えてる人は少ないようです。
 周囲にはコンビニや広い公園、野球場みたいな公共施設も存在しています。

●ビソシソ
 ある日、冰星が目を覚ますと枕元に立っていた冰星そっくりの謎の物体――
 魔物なのか精霊なのかその正体は一切不明。
 会話を試みても相槌代わりに「ヴォエーッ!!」と虹色のハッピー・シャワーを繰り出してくる難敵である。ヴォエーッ!! 強いストレスを感じる人間にだけ見える存在、らしいです。

 戦闘能力の類も不明です……ただ戦意は無いように感じます。
 ……代わりに虹色ハッピー・シャワーをぶちかましてくる。綺麗だなぁ。
 現在は練達の街中を逃走中の模様。どうやら捕まる意志は無い様です。

 とにかく虹色とはいえハッピー・シャワーをぶちまけられる訳にはいきません。冰星にも『虹色のヴォエーッしてくる人』『虹色テロリスト』『マタタビで悶える人』という噂が立ち始めている所で……このままでは色んな意味で危険です!
 奴を捕まえてローレットにでも突き出してください! あるいは練達の研究所にでも!

 しかし一体なにが目的なんだ……うわ、しまった背後を取られた!
 た、助けて! あああああヴォエーッ!!

●ギルオス・ホリス
 ヴォエーッ! された人。ヴォエーッ!!
 ビソシソの所為で強いストレスを感じています。
 ギルオスも追いますし、なんらか指示があればプレイングで指定するとその通りに動きます。

●備考
・ビソシソは見え辛い・存在を感じ辛いだけであって『いない』訳ではない――ので、例えばカラーボールなどをぶつければ物理的な色を感じ取って視認する事は可能です。
・ビソシソは捕まえようとしてくるとヴォエーッ! と抵抗してきます。
・虹色は綺麗です。綺麗と言え!

・皆さんはビソシソの先制攻撃(?)により、既にある程度のストレスを受けている……かもしれません。少なくともある程度はビソシソの姿が見えている様です。更になにがしかのストレスの工夫があればもっと見える様になるかも……

●情報精度
 このシナリオの情報精度はV(VOE-!)です。
 不明点はありません。たぶん。

  • ビソシソ・チャレンジ!完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
黎 冰星(p3p008546)
誰が何と言おうと赤ちゃん
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨
望月 凛太郎(p3p009109)
誰がための光

リプレイ


 虹色の輝きが練達の空に舞う。
 ビソシソの口から漏れ出る神秘がかの者の跳躍と共に。
 なんという光景だというのか――これはまるで神話の創成期の様で――

「あぁなんで僕生まれてきたんだろう……ううっ……ママッ! ママーッ! 暗くなってきた! 助けて! 土に還りたいよー! 冬には朽ちて、春に芽吹いて夏に実を付けて、秋には謳歌する生活に戻りたいよ、ママー!」

 もうすっかり気が狂っ……失礼。気がお狂らればせになられたのか『場外ホームラン』黎 冰星(p3p008546)の精神は彼方に吹っ飛んでいた。
「落ち着くんだ冰星……ストレスを感じなければ見えない謎の怪生物とはいえ、自分を追い込み過ぎれば今度は動く事もままならいぞ……しかしストレスを感じていないと見えないというのはどういう原理なんだ?」
「あ、あぁ――! ビソシソがこっちに……汚なァ!? うわあああ虹色が俺の顔面に――!」
 そんな冰星の背をさすりながら『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)は跳躍するビソシソの軌跡を目で追い、しかし一瞬の隙を突かれた『誰がための光』望月 凛太郎(p3p009109)がビソシソの洗礼を受けるッ――!
 直後、凛太郎の阿鼻叫喚。
 絶叫が轟く頃にはビソシソは次なる行動に移ろうとしていて――
「あああああ! お、俺が何をしたってんだよ――! まてやこの野郎――!!」
「はっ! いけない、ビソシソ捕獲に集中しなきゃ……うぇっぷ、しんど過ぎて集中切れてた……でもレインボーシャワーを追えば自動的にビソシソに辿り着くはず――うわ迎撃のレインボーだ避けろ!!」
 しかしやられっぱなしではない。ビソシソを捉える事が出来ている精神状態――凛太郎や冰星は事前に購入していたカラーボールをブン投げまくる。身体の重いグリムも(滅茶滅茶嫌だが)虹色のキツイ匂いのする後方へ移動し投擲準備。
「……参ったわね。何か徐々に騒がしくなってきてるし、あまり良い状況ではないのは分かるんだけど……まるで何も見えないッ!」
 それはそれとして超優良健康体である『never miss you』ゼファー(p3p007625)はストレスなどとは無縁ッ! の存在であった!
 まーったく見えない。カラーボールを投げている先に噂のビソシソがいるのだろうか……? 見えないものは見えないので仕方ない!
「とはいえビンシンを社会的に死なす訳にもいきませんからねぇ――
 さ、行くわよ。見えない私にとっては貴方が頼りなんだから。ねぇ……
 『ストレスの荒波に揉まれる現代人』!」
「えっ。そのルビ『ギルオス・ホリス』ってなってるの? やめて離して――!」
 ゼファーが首根っこ掴むのはギルオスだ。逃がさないわよ。
 ビソシソハッピシャワーを既に浴びてたり、なんか色々と常日頃ロクな目に遭ってないギルオスが(人身御供的な意味で)此処では頼りなのだ。虹色の犠牲になるまいと抵抗する生贄だがゼファーはがっちりと掴んで絶対離さず現場へ急行――さすれば。
「はぁ、何か、疲れちゃいましたね。どうしたんでしょうまだ始まったばかりなのに」
「あー……うん、なんか、そうですね……あははははは……」
 まるで死んだ様な目で『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)と『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)が公園にいた。その右手には缶チューハイ500ml。片手のみで開けてストローぶっ刺し口元へ――あぁアルコールが脳髄へと沁み渡る。
「仕事をせずに昼間からお酒を飲んでるなんてぼくは駄目な人間です。
 でもこれも全部環境が悪いんですよ……」
 言いつつもどこかに感じる至福もある様な……されど倦怠感に頭痛が彼女を襲っているのもまた事実。あ、違うわ。肩凝りは前からします、何がとは言わないですけど有識者曰く96で大きいものが付いてるので……はっ? ムキャるか?
 おっとビソシソ以外の怪物も湧いて出てくる所だった――ともあれ言い識れない不安感、未来への焦り。酷い肩こりと成長している気がしないでもない二つの房。此れが現代社会の人の心に巣食う闇、ストレスですか。
「んー……ストレスって脳に負担を掛けますからねぇ……あ、ちょっとくすぐった――んっ?」
 瞬間。未散の言に頷きながらハンスの翼が引っ張られた。
 羽根を抜こうとしている者がいるのか? 虚ろ目ながらそちらを振り返れ、ば。

「……ヴォエーッ!!」
「あああああ――ッ!」

 ビソシソだった。振り向いたと同時にハッピーシャワーの洗礼がハンスへと。
 その後ろから冰星達が『待てよぉぉお!!』とカラーボールを投げながら追いかけてくるがビソシソはまた逃げる! は、はやい!
「ビソシソ……くっ、目的もそうですが一体、何者なんでしょうか……
 冰星さんと一体どのような関係が……!? まさか生き別れのご家族……!?」
 いや違うかなと『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)は思いながらも放ってはおけないと動くのだった。捨て置くのはあまりにも危険すぎる……主に皆さんの情緒的な意味で!
 うーん、しかしストレスが無いと見え辛いとは困ったものである。
 騎士として心身の健康を維持するのは当然の務め。ストレスなんて無縁なリディアにとっては、ビソシソを視認できてしまう事がむしろ負けというか……んっ?
「あれ?」
 瞬間。リディアは眼前に『何か』がいるような気がした。
 見えない。けれど何かいるような。
 そうしたら空中から突然、神々しい虹色がリディアに――

「――そうはさせんよ。うら若き乙女に虹の祝福など、不要であろう」

 同時。正にリディアに注がれようとしていたその時。
 彼女を庇う様に割り込んだ影が一つあった。
 それは『金獅子』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)。

 虹を跳ねのける黄金の魂が――代わりにヴォエーッ! された。


 なんたる惨状だ。この状況は如何にも拙い気がする――
 あまりの負の渦巻きに己が精神も一時は。
「なぜわたしはあちこちのおとめにてをだしているのだ不節操め……
 おとめの唇を追いもとめ吸いつくなど……まるでわたしは……」
 陰鬱なる気持ちに心が染まり――
 染ま――
 染。
「染まらぬ! ぉぉぉおお! なにがこの程度で屈しようものか! 我が魂は決して絶望を許さぬ希望の体現! 明日の光をこの手に掴む至高天ッ――まぁストレスを感じぬ訳ではないが!」
 そうか、これが希望の心を持ちながら激しい絶望によって目覚めた伝説の戦士……!
 もう何も怖くない。乙女の唇だってこれからもンーマッ・チュッし続けるし、ビソシソにも臆さない。故にベルフラウは激しいストレスを感じながらもリディアに接近する奴めを捉えた。そして――
「ここにいるぞ――皆、狙え――!!」
 虹色を受けながらも皆に声を。あぁベルフラウが虹色に飲み込まれた!
 されど彼女の一声が動きを導く。
「止まってくれ、とにかく止まってくれ。自覚があるか分からないが匂いがきついんだ、てか見た目があれだから追いかけたくないんだ。本当に止まってくれ。頼む、世界平和の為に」
「うわ! 顔面に掛かったわクソッタレ! 酸性かこれ! 胃酸だから的な!? じゃあなんで虹色なの!? 腹の中で消化されてるモノが何かに昇華されてるの!? もうやだこの生き物!! はやくカラーボォォォルゥゥゥ! ディスカウントストアで買ったカラーボールゥウウ!」
 グリムと冰星だ。極度のストレスの中にある彼らは、はやくなんとかして解放されたい。グリムなんてさっきから『たかが墓守一人いなくても問題ないのでは……足止めもできないのでは……』と精神が堕ちかけている。あああ捕まえたらかえって家の近くに住み着いている鴉と馬に癒されるんだ!
 一斉に放つ色付き玉。が、これだけでは終わらない。
 束縛せし死霊の一撃がビソシソの動きを低下させんと襲い掛かるのだ――
「ヴォエーッ!!」
 が、まさかのビソシソの反撃! 虹色のナイアガラシールドが攻撃を妨げる!
 なんなんだこいつはマジで! あ、Vサインしてるぞ余裕なのかこいつ!?
「もうここまで来たら見えない訳がないんだよね。お前を塗料の海に沈めてやるよ。
 なんだよその余裕は……逃げれると思ってるの? 逃がさないよぉぉぉお!!」
 カメラ目線のビソシソへと往くはハンス。皆ストレスをガンキメしすぎて動きが鈍くなっている者もいる。未散とかもうなんか三本目の缶チューハイ開けてるしやばいぞ!
「ヴ~ォエーッ!」
「そう何度も繰り返してればタイミングぐらい分かるよぉぉぉ――!!」
 迎撃のビソシソ。
 されどハンスの優れし機動力――更には空から攻め立てる勢いは止まらない。
 というかそもそもゲ……虹色ハッピーシャワーは口から齎される以上、空には中々発射しにくい筈だ。だからこそハンスは優位を持って奴を縫い留めんとせん! まぁ万が一虹色が来ても某枢機卿の精神でなんとか……
「あっ! 滑った! 今何か滑った! 液状の何かを踏んで靴の裏が滑っ……!
 こら――! 無駄にワイルドにスプラッシュしながら逃亡してんじゃないわ!!
 ていうかマジで色々迷惑でしょこれ!」
 同時。周囲の一般人とか、見えてる人がいたら貰いシャワーしてしまうのではとゼファーは言を。
 近付けば虹を撒き、離れれば虹を飛ばし。攻撃が来たら虹のカーテンで遮断する。
 無駄に隙が無い二段、いや三段構えを用意するにしても、もっとマシなの、をッ!
「行くわよギルオス、準備しなさい……もうすぐ貴方の役目だから!」
「え、何どういう事? どういう……ちょ、答えるんだゼファー!」
 体力に自信のあるゼファーはギルオスをお姫様抱っこ(半ば強制)で運びつつ、ビソシソの隙を見据える。一瞬でも隙があれば――ここぞという場面がくればと――思考を巡らせて。
「うあああん!!! 家に帰らせてくれぇぇえええ!!!
 働きたくないよぉぉおお!!!」
 同時。号泣し、頭を抱え、味方がやられる事に憤怒し、己が心の底から勇気を振り絞って凛太郎はビソシソに立ち向かうッ――! 必死の精神がきっと奴を追い詰めるのだと信じて、信じて!
「嗚呼、実家に帰って……久々にお母さんの手料理が食べたいな……実は黒猫が居るんですけどねぇ、ヤミって云って可愛くて……ぼくによく懐いてくる子なんですよ……ふふっ」
 一方で凛太郎と異なり結構強くアルコールの魔術をキメてる未散はついに幻の過去を想起し始めた。ああ懐かしや存在しない記憶。すり寄って来るヤミがとてもかわいくて……
「取り敢えず何でしたっけ、ビンソンだかビソシショ……うっ、舌を噛んだ。もうだめだぼくは無能だ……こんなぼくなんて捨て置いて下さい……どうせどうせぼくなんて、うぅ……あ、カラーボールと一緒にお頼みしたお酒の追加とあたりめはどうでした!? え、何? 年齢確認されて身分証が無かった?! そんなの『見てわかりませんか?』って脅せばいいんですよ!」
 もうこれ完全に酔っ払いの領域である。
 公園のベンチでチューハイの『ストロォング・オー』をキメる未散……今日はどうしたんですか未散さん! 『じゃあゼファーさまなら屹度大丈夫ですから!』じゃないんですよ! さっきから己が肩を赤子をあやす様に叩く手を振り払いながら――んっ?
「全く、さっきから誰ですか! 折角人が真昼間からおs」
 振り向くと同時。己が視界に鮮明に映るビソシソから虹のプレゼントを貰った。
 わああ! 余りに視認性が良いと今度は本物と判別つき難いッ!
 ほぼ反射的に放った魔砲の一撃が公園を貫きながら――その片隅では。

「ああ、ベルフラウお姉様……! ご無事ですか!? こんなに虹色に輝いて……!」
「私の事には構うな……それよりも皆を……ビソシソを……!」

 でもベルフラウお姉様の麗しさに変わりはありません、とリディアはビソシソ戦線から少し離れた所で、己を庇って虹色に塗れたベルフラウを気遣う。先日のホワイトデーも素敵だったお姉様。透き通るお声に惚れ惚れとし……
 ……――まぁ、かくいう自分は殿方にはまったくご縁がなかったりもするのだが。
 グラオ・クローネでも結局同性の知人にしか、チョコ配ってませんし……と思えば、お兄様はちゃっかり本命っぽいチョコ貰ってるわ、せっせとお返しに手作りクッキーを厨房で焼いてる姿をこの前見たわで……はぁ。
「なんか――ってあれ? 冰星さん、どうしてここに……」
 その時。リディアの前に現れたのは冰星――
 否。
「び、冰星さんが二人いる!? ハッ――まさか貴方が虹色の化身たる噂のビソシソ!?
 この至近距離では――くっ、殺――ってうわー! 虹色はダメです!
 私、私これでも一応お姫さまですよ王族的に虹色はNGうわッ――!!」
 何故見えてしまったのか! リディアは自覚なきままビソシソの口を視界に。
 ――されどこのまま死んでなる者か!
「おのれ、かくなる上は死なば諸共です! 喰らえレオンハートカラーボォォォル!!」
「ぐわ――! リ、リディアさん、どうして……!」
「あ、しまった! こっちは本物でした! こ、こらー! 躱すなんて卑怯ですよ!」
 レオンハート家が秘儀が一つカラーボールアタックを躱し本物にブチ当てさせるとは何て奴だビソシソ……! 縦横無尽に駆け巡る奴を止める事はもう出来ないのか――!?

「いいえ勝負はここからよ――喰らいなさい! ナント・ギルオス砲弾ッ!!」

 ゼファー、絶対許さないからな――!
 ギルオスからの抗議を聞こえなかった事にしつつゼファーが放つのはギルオスである。
『大丈夫、私人間を放り投げるとか得意だから――』
 そう満面の笑みを浮かべて述べた彼女。人を水平に投げて弾丸みたいに飛ばす事に自信があるとは、彼女は今までどれだけの人間を砲弾にした事があるというのか……! 質量砲弾は虹色の壁を突き破りビソシソの腹に着弾。
「ヴ、ヴォヴォォエーッ!」
「動きが鈍った! さぁ皆さん行きますよ! 今こそお忙しい中本日お集まりいただいた目的……そう! ビソシソ捕獲へのご協力の――佳境なのです!!」
 顔に掛った虹色を冰星は拭きながら、突撃する。
 今がチャンスなのだと。よろけているビソシソに吶喊し――そして。

「ビソシソ……卿はギルオスをストレスから救いたかっただけなのだろう? 分かるよ」

 虹色が直撃しつつも復帰したベルフラウもまた、ビソシソを抱きしめる。
 高き壁の如く。虹の飛散を防ぎつつ……虹塗れになろうと厭わずに。
「さあ、思う存分ハッピーシャワーをギルオスにぶちまけて彼をストレスから解き放ってやってくれ。顔面にぶつけると多分効果が倍増するかと思われるから――さぁ!」
「えっ」
 導くは砲弾にされた衝撃で動けぬギルオスの下へと。
 あ、ああ。止めろ、よせ! ベルフラウ貴様!! 覚えておけよ――ぐあああああ!!
 絶叫。悲鳴。
 轟けど――もうこれ以上の犠牲は無い。ビソシソを捕まえる事に成功したのだから。
「この、この! 私達になんてものをぶちまけて……ああ口は塞いでおかないと!」
「ええい、虚無みたいな顔しても絶対許さないんですから。大人しくこのままお縄に付きなさいな。ゲロ吐いてもダメ! 口は塞いでおくから……ん? なんで私こいつの顔が見え…ンッ??」
 リディアが憤怒をぶつける様にビソシソの毛を毟りながら、ついでにゼファーと共に口をガムテープで塞ぐ。今やゼファーの目にも鮮明に映っているが理由は――考えないようにしておこう、ヨシッ!
「よしよしみんなお疲れさま……僕の青で癒されようね……」
「おかしい……直接戦った訳じゃないのに何でこんな消耗してるんだろう……パンドラ5億くらい減った気分です。この傷は焼肉でしか癒えないって本能が叫んでます。焼肉にしましょう! うお――! 焼肉以外に方法がない!」
 そうだ! 焼肉に行こう! 焼肉は全てを解決してくれる!
 ハンスの青き羽根で心を癒し、冰星は幸福なる道を求めて焼肉屋を提案する。
 ビソシソ捕獲に協力してくれた礼でもあるのだ――ここは祝って皆でパーッ! と。
「ああ鳥料理が美味しいらしいお店もあるんですよ、そっちにも行きませんか――手羽先と唐揚げが絶品だそうですよ! ……やだなぁ、軽妙なブラックジョークですよ、ちるっ!」
 ちるっ! 未散の視線はどこぞへと。
 ジョークですよジョーク、フフちるっ。
「……ところで。これ、ここの研究所に預けたらなんやかんやして、より凶悪になって戻ってくるとかないよな? 大丈夫……なんだよな?」
 過るグリムの不安。されどまさか、そんなまさかと振り払うように。
 ビソシソを引き摺り研究所へと売り払、もとい叩き込んで。
 いずれは裁判所にでも引きずり出し社会奉仕でもさせてやろうと冰星は思いながら……
 ――こうして『虹色のハッピー事件』と称された酷い惨劇は幕を閉じた。
 ビソシソは研究所にてその生態がやがて解明される事だろう……
 これで戦いは。悪夢は終わったのである――



 ――なお。ビソシソ脱走の報が冰星に届いたのは、三日後の話だったとか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ヴォエーッ!!!!!!!

 なんてひどい光景だ……!! ともあれありがとうございました!!!!!!!

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