シナリオ詳細
海の荒くれ者たち
オープニング
●青い海、青い空。
どこを見ても蒼、碧、青。
暖かい太陽の灯りが甲板を照らしながら、大きな商船は海を征く。
「……ほーんと、いい天気でいい風なのに」
穏やかな風が帆船を動かしてくれ、半日もあれば首都のリッツパークへとたどり着く予定だった。
海原を眺める船員は力なく声をあげている。
「海賊」
多量の商品を乗せた船は航路をリッツパークへ向けており、その周囲を海賊船に囲まれていた。
接舷はされていないものの、海賊船からは小舟に乗った海賊たちが武器を構えて何人も向かってきているのが見える。
「あと少しだったのにー……ほ、ほんとに頼んでいいんだな!?」
がっくりと肩を落とす船員だったが、すぐに顔をあげると甲板で戦闘準備を整える一団へ向き直る。
「船……にあるもんは何でも使っていいけど、基本的には船と商品は護り切ってくれよ!?」
前もって護衛として乗り込んできた『ローレット』の面々。
本当に大丈夫かと不安になりながらも、この場は彼らに託すしかない。
「うう、こんなことならこっそり商品の酒盗み飲みしとくんだった……!!」
船員は小さな野望を口にしながら、この状況を突破するために操舵輪を握りに走る。
あとは彼らに託すしかない。本当に大丈夫なんだろうかと不安はぬぐえないが、沈むわけにも殺されるわけにもいかないので、今は必死に動くしかない。
●時を遡り、ローレットにて
「はい、海洋へ向かう商船の護衛のお仕事なのです」
地図と海図を広げながら、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼の説明をしていた。
「最近海賊さんの動きがみられていて、よく使われる航路でもいつ襲われるかわからないという話で、商品どころか商人さんも連れ去ってしまうらしいのです」
実際海賊の被害は頻発しており、ここ最近では商人の活動も危なくなっている。
こちらからの商品も届きづらくなり、あちらの名産品も届きづらくなってしまう。
「美味しい特産品も食べられなくなるのは困るのです」
ふんす、とユーリカは若干私情を交えながら依頼の説明を進めていく。
出発は数日後、襲われない可能性もあるとはいうが、間違いなく自分達が活動する場が出てくるだろうと半ば確信を覚えながら、君達は護衛の準備を開始した。
- 海の荒くれ者たち完了
- GM名トビネコ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年06月16日 21時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
照りつける陽射しの中、海賊たちはどんどんと小舟に乗って近づいてくる。
そんな海賊たちに向けてか、それとも思いついたのか、陽気な歌が響き始めた。
「なんだ、その歌」
「これ? 海賊の歌かな」
『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)が即興で作り出した詩が響き渡れば、同じように海賊を見やる仲間達の戦う意欲が上がっていく。
傍でそれを聞いていた『無道の剣』九条 侠(p3p001935)なんのこっちゃと疑問符を浮かべる。
ひとしきり歌い終れば、カタラァナは船から勢いよく海に飛び込んだ。
「もうちょっとで接舷してくる、準備はいいか?」
上空で翼をはためかせる『大空緋翔』カイト・シャルラハ(p3p000684)は敵の接近を告げ、味方を鼓舞する。
もう少しこの気持ち良い風を受けていたい気もしたが、今は海賊を追い払わねばと槍を構えなおす。
「まぁ、やるっきゃねぇよなぁ……さて、と」
船から身を乗り出し、『本心は水の底』十夜 縁(p3p000099)は向かってくる海賊たちを見据えた。
「どうだい、ここは一つ、見逃しちゃくれねぇか。この通り、丸腰のか弱いおっさんなんでな」
飄々とした態度で海賊たちに向けてそう告げる。
その様子から緑の本質は一切悟れないほどに不可思議だ。
「行くぜーー野郎ども!!」
だが、相手の海賊たちはそんなこと知ったこっちゃないという事で突っ込んできた。
こちらの事を弱いと悟ったか、それとも文字通り気にすらしていないか。
「ま、こうなるわよね。さて、やるわよ配置について!」
『ツンデレ魔女』ミラーカ・マギノ(p3p005124)そういえば、面々はそれぞれ迫ってくる船に向かって別れて対応していく。
数のバランスを見ればやや小さめの船の方に人が少ないので、ミラーカはそちらの対応へと回っていく。
「さて、やるかの」
「そうね、やりましょうか」
『鉄乙女』一条院・綺亜羅(p3p004797)ライフルを構え、『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)が自身の使い魔を飛ばし、ふわりと宙を浮く。
「さて、せっかくだ。彼らには学んでから帰ってもらおう。必要以上に欲をかかない、という節度をね」
『商店街リザレクション』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275) は迫ってくる海賊を見て、彼らに伝えねばならぬことを秘めていた。
●
「まずは……一発!」
ミラーカの編んだ遠距離術式が船に向かう小舟の近くへ炸裂する。
凄まじい水しぶきと波を立て、接近してくる海賊たちを揺らすが小舟を転覆させるまではいかない。
これに関しては、海賊たちが荒波に対して慣れている、というのもあるのだろう。
「なるほど、このぐらいの牽制じゃ怯まない、やるじゃない海賊だけど!」
「お前さん。もうちょい数を減らしてくれねぇか、あの数を相手にするのはちょっとか弱いおっさんには厳しいぜ?」
「わかってるわよ、綺亜羅、レジーナ!」
海賊達が乗り込むまで様子を眺めている縁がそういえば、ミラーカは次の行動に移る。
目の前に迫る船と海賊の数は10人と3隻。一人で相手にしていてはキリがない。
二人にミラーカが声をかければ二人はすぐにやってきた。
「それじゃあ、無尽の武器群がお出迎えよ」
射程に入った相手をしっかりと見据え、遠距離術式を炸裂させる。
術式は見事に船に乗っていた海賊一人に直撃するが、殺しを意識していないこともあり、致命傷ではなくその場で蹲った。
それと同時に、船の漕ぎ手が突如腕を抑えてオールを海に落とす。
「流石ぞな。おかげで狙いやすくて助かったぞよ」
同じようにライフルを構えた綺亜羅が漕ぎ手を狙撃していた、これにより船は一隻完全に動きを止める。
「ほんと元気ね!」
続くミラーカの遠距離術式がもう一人の海賊の足に炸裂し、動けなくなる。
「船、そこ脆いよね?」
海賊たちに迫る脅威は船からだけではない。
突如、海中からずどんと術式が炸裂したかと思えば、船底に穴が開き水が浸水し始めた。
「や、やべぇ!?」
「あなたたちはつついたら逃げる賢い子かな。それとも……」
「おい、お前ら戻って来い。そのままじゃ沈むぞ!」
船の脆い部分を索敵し、的確に波濤魔術を打ち込んだカタラァナが海中から顔をあげれば、慌てふためく海賊の姿があったが副船長の指示で下がっていく。
「賢い子だったみたいだね」
ふふ、と笑いながらカタラァナは再び海中に潜っていく。
「まずは一隻……次はこれよっ!」
一隻船が沈んだことを確認したミラーカがついで剣を宙に召喚させ、宙を走らせて次の船に乗り込んでいた海賊の一人へと直撃させていく。
もちろん命は奪わないように最大限留意しているが、当たり所が悪い事はある。
「あ…!?」
胴体に剣は直撃し、海賊は体勢を崩して海に沈む。
どぼん、と海中に海賊は沈む。赤い鮮血が海中に浮かぶ。
「……ってめぇ…」
海賊船で、怒気をはらんだ声を小さく副船長が上げた。
●
「うおお、こっちも忙しいぞよ!」
対する反対側は小船にして5隻。人数にして20人だ。
「つべこべ言ってる暇はないわよ。遠距離から仕掛けられるのは私達だけなんだから」
綺亜羅、レジーナが反対側にやってくれば、魔弾を放って海賊たちを迎撃するイシュトカの姿があった。
「ちょっと遅かったじゃないか、もうじき乗り込んでくるぞ」
不殺を意識し、牽制を中心に攻撃を行っていたため一隻分の海賊達を行動不能にしたところで残り4隻は既に商船ぎりぎりまで接近していた。
「いくぞぉー、乗りこめぇー!」
海賊たちは乗り込む為に用意してきた鉤縄を振り回し、船へと投げつけ片手で器用に登りだす。
「と、言うわけにはいかせないんだよな!」
プツン、と海賊が昇るロープが切れ、身を乗り出していた海賊は海中へと転落する。
翼をはためかせたカイトが急降下と共に槍の一撃でロープを切断していた。
「そっちもな!」
一人海中に叩き落としたところで、もう一人に回し蹴りを放てば、その一撃を受けた海賊は海中へと吹き飛んでいく。
「あいつを撃ち落とせーーー!」
「うおっ!?」
二人落としたところで海賊側もカイトが危険と判断したのか、船上から片手銃を乱射してくる。
一人や二人からの攻撃ならば問題なくカイトならば躱せるものの、相手の数が数。
躱し続けていればいずれは被弾を免れられず、翼に一射が突き刺さる。
「い、ってぇ……!」
このまま飛行は難しい、そう判断したところでカイトは船へと着陸する。
「けど十分時間を稼いでくれて何よりだ」
海賊の大多数がカイトに意識を向けた。
つまりそれは船からの攻撃に意識を向けていないという事。
イシュトカの放つ魔弾が的確に海賊の腕を撃ち抜き、戦闘力を削ぐ。
綺亜羅の術式も小舟へ被害を与えていき、カイトの傷はレジーナがすぐに癒す。
「それは何より。けど……」
「まぁ、これだけさもあれば削れただけ十分、後は直接戦闘だ」
海賊が乗り込んでくるまで余力を温存していた侠が両手に剣を構えた。
「喰らいなっ!」
乗り込んできた手近な海賊に一撃を叩き込む。
同時に海賊を炎が包み込み、その身を焼き始める。
「燃え尽きる前にさっさと連れて帰れよ!」
そのまま怯んだ海賊を蹴り飛ばし、海に叩き落せば他の海賊が回収をして行くのが見えた。
「っとぉ……!」
その様子を確認した隙を見たのか、侠の両脇から海賊が二人挟撃を仕掛けてくる。
咄嗟に剣で受け止める。個々の実力は高くないにしても、連携した状態に育て上げる船長に侠は興味がわき始めていた。
「ぬおお、よくこまぁ乗り込んでくる……」
乗り込んできた海賊に対して距離を取り、射撃を続けていく綺亜羅だったが相手の数が多い。
動けないようにするよりも早く距離を詰めてくる相手に取り囲まれ始めていた。
「アイヤー、これは不味い……」
「いや何、待たせたね」
追い詰められる綺亜羅の側面から、踏み込んでくる海賊を経過敷いていたイシュトカが割り込み威嚇程度の術を放ち、海賊を牽制する。
威力は低い魔法ではあるものの、弱っていた海賊には十分、一撃受けた海賊は気を失う。
「て、てめぇ!」
味方が倒されたと思った海賊は綺亜羅の方からイシュトカに狙いを定め片手剣を構えて突撃してくる。
「威勢は良いが、相手をよく見るべきだったね」
自身の周囲に展開された茨がイシュトカを守り、そして触れようとした海賊を傷つける。
「……とはいえ、流石に数は多かったね」
傷ついた海賊は綺亜羅の援護によって吹き飛ばされたがイシュトカもまた剣によるダメージを受けていた。
「全く忙しいわね。すぐに治してあげるからちょっと待ってなさい」
様子を見て駆け寄ってきたレジーナがイシュトカの傷を癒していく。
攻撃は味方に任せ、治療を重視して行動していくレジーナの活動がこの戦況を支えたと言っても過言ではなかった。
「でもまぁ、これで痛い目は見ただろう? 次に言うことは君の船長に伝えてくれたまえ」
倒れた海賊を見て、イシュトカはゆっくりと告げた。
「お互いに多少の痛い目は見たのだから――今日のところはこれでお終いにしないかね、と」
この言葉が大いに残る海賊達から戦意を削ぎ取っていった。
●
戦況がローレットに傾いている状況でもう片方の方面で副船長は今にも船から飛び出そうとしていた。
その視線は戦場に漂う鮮血と、商船のローレットのメンバーに向けられている。
「まぁまぁ、落ち着いて」
だが、そんな副船長にかけられたのはいやに落ち着いた声。
「てめぇ、何を……な、に……?」
「やぁやぁ、流石に大変そうだったからね、運んできたよ」
水中から顔を出したのはカタラァナ。腕には負傷した海賊の一人が抱えられている。
「こんなことは馬鹿らしいでしょ? だからはい、治療はちゃんとしてあげて?」
幸いにも、元々不殺を狙っていたため致命傷は避けられている。
すぐに治療すれば彼は無事に助かるだろう。
「それじゃ、お願いね」
それを確認したカタラァムはまた海に飛び込んでいく。
「……あいつら」
先ほどまで見せていた怒気は彼にはもうない。
「……はぁ、無事ね」
運の悪い不幸だったが無事に救助された姿を見てミラーカは安堵した。
「って、もう乗り込んできてるじゃない。気を取り直さないと!」
だが戦いは終わりではない。海賊達は鉤縄を使ってどんどんと昇ってきている。
即座に剣を召喚して投擲、一本の縄の切断して海賊を一人海に叩き落すが、残りの4人は戦場へとのし上がってくる。
「さて……やりますか」
ゆっくりと動き始めた縁を見て、海賊達は手近な相手と判断したのか一斉に向かってくる。
が、そんな愚直な動きに合わせた的確な拳が海賊の顎を捉え、撃ち抜く。
「まずは一人……んで」
ふぅ、とゆっくり息を吐きながら周囲の相手を見据える。
二人同時に飛び込んでくるが縁は慌てず行動を取り、突き出される剣を躱しながら至近距離に踏み込み、腕を取って背後に回り込むようにして抑え込む。
「……二人」
完全に動きを封じ、組みついてしまえば残りの海賊も正面から迂闊に手が出せない。
「これで勘弁してくれないかね」
抑え込み、関節を外す。これでこの海賊はもう戦えない。
だが残り一人、裏に回り込んだ海賊が剣を構え斬りかかってくる。
「……こっちは一人でもないんでね」
割り込んだミラーカが防御壁を即座に展開して剣を抑え、返す言ってで威力を抑えた術式で海賊を吹き飛ばす。
「間に合ったわね!」
「ああ、ばっちりだ」
関節を外し、動けなくなった海賊を離して縁は残る一人を見据える。
柳風崩しの構えを取ればその様子にかなりの警戒心を見せた。
「何、別に取って食うつもりでやってるわけじゃない、これは正当防衛さ」
相手はその言葉を聞いて動きを止める。
「俺はともかく、この船には腕の立つ護衛が揃ってる。お互い怪我はしたくねぇし、ここは退いてくれねぇか、ってな」
この状況と実力を合わせ、それでいて交渉の姿勢を見せる彼の言葉に、海賊は頷く。
「よし、良い子だ。それじゃあ、こいつらは頼むぜ」
倒れた海賊を見て、縁はそう伝えてゆっくりと残る積み荷をミラーカと共に護りに向かった。
●
最後まで戦っていた海賊二人の裏に回り込んだカイトが槍の一撃を足に叩き込み、離脱しながらもう一撃をもう一人の腕に叩き込む。
「よし、降伏するなら助けるぞ? 軍に突き出す気はねーから安心しろ」
斬撃を受け、甲板に転がり込んだ海賊を見てカイトはそう言った。
周りを見れば他の海賊達も鎮圧されてる。
「はぁ……いやぁ、感服ですわぁ……」
これで居てだれも死んでないのだ。降伏しない理由がどこにある。
海賊船の船首で様子を眺めていた船長は笑みを浮かべた。
負けたことが楽しいわけでもない。かといって皆が助けられたからでもない。
ここまで心意義を見せてくれたものと出会えたことが嬉しいのだ。
「おーい!」
そんな彼女に、船から声がかけられた。
無力化された部下たちを回収しに来い、という事なのだろうか。
「……いや、違うみたいじゃないか」
小舟に海賊達を乗せ、向かってくる者達とは別に一人で小舟に乗って向かってくるものがいた。
「おい、そこのアンタ。アンタが海賊のお頭だろ? 俺は九条 侠、相当の腕前の剣士と見た」
二刀の剣を手に、侠は船長を見て言い切った。
「……一手で良い、仕合っちゃくれねえか」
これだけじゃ味気ないだろう。そんな意味を込めた言葉。
「ほんとならやり合う気はなかったけど……いいじゃないか。乗ってあげるよ」
だが、それ以上に感じさせるものがあった。
それを感じ取り、船長は侠の乗る船に飛び乗る。
「ちょっと、ほんとにやるの!?」
「うーん、死なない程度にやってくれるといいのだが」
小舟に乗って海賊達を運ぶミラーカと、それを護衛するように空中を飛ぶカイトは不安そうにその様子を見ていった。
レジーナはすぐに治療ができる準備を整えてもいるし、海中からカタラァナも興味げにその様子を見ていた。
「あいつには意味があるんだろうねぇ」
「無茶をしてくれることに変わりはないがね、全く」
船から見守るようにして縁とイシュトカは様子を眺めていた。
「じゃあ、行くぜ」
「いいよ、来な」
対する船長はカトラスを侠を誘った。
「はあああっ!!」
二刀を巧みに操り、船長に迫る。
「へぇ……!」
迫る一刀はカトラスで受け止め、刃が鍔競り合う。
そして残る一刀は船長のカトラスをすり抜け、その胴へと迫る。
「届いた……!」
「あんたら腕も立つときた……けどね!」
だが刃が叩き込まれても船長は動きを止めず、勢いのままに頭突きを見舞う。
「がっ、あっ……!?」
なんという威力か、その一撃を受けた侠はそのまま海上に吹き飛ばされ、海中へと放り込まれる。
カタラァナが海中を泳ぎ、侠を確保して海上へと連れあげれば、小舟の上で船長は笑みを浮かべていた。
「いやぁ、あんたやるねぇ。ついついムキになっちまった」
届いた刃だが彼女は"敢えて受けた"のだ。
何らかの方法で刃を受け止めてはいたのだろうが、その体からは血が滲んでいる。
「強くなりたいんだろう? だからこうやって無茶してでも挑む。勇敢でいい男だ」
笑いながら返す彼女に、一切の悪意はない。
「だから無茶して死ぬんじゃないよ? 手を届かせたいなら、ね」
「……おう」
本当にこいつは海賊か、とツッコミを入れたくもなるが、逆に言えばここまで真っ直ぐだから人がついてきているのだろう。
「ところで海賊さん。連れ去った商人さん達、どこにやったの?」
「ああ。ちゃーんと送り返してるよ。料金は頂いてるけどね」
要は身代金でも要求してるのだろう、この辺はやはり海賊か。
「なぁ、あの船長何時もあんな感じか?」
「あ、ああ……まぁ、あれでいい人なんすよ」
「はは、お前ら面白いな。なぁ、お前らの団名と船長の名前を教えてくれよ! 広い海だけどまた会うかもしれないしな!」
けらけら笑いながらカイトが聞く。
「え、えーっと、団名っていえばそういうのはないっすけど。船長はフリーダって言います」
勝手に船長の名前を喋ったことでこの海賊は後でこっぴどく怒られることになるのだが、その話は別。
「それにしても海賊って楽しいの?」
ふと疑問に思ったことをレジーナは海賊達に聞いた。
「え、そりゃあ……楽しいっすよ。悪いことはしてますけど、何より自由で、お頭と一緒にいられますからね」
「……へぇ」
盗賊や野盗と同じように、食い扶持に困ったから海賊をしているのかと思っていた。
だが、彼らは自由と船長の生きざまに惹かれて海賊をやっているという。
「ぬぅ、ローレットに誘おうかと思ったがそうもいきそうにないぞな、これは」
そこまで非道を働かないのであれば、ローレットで活動すればいいのではないかと提案しようとしていた綺亜羅だったが、彼らの考えを聞けば勧誘は無理そうだなと判断できた。
ともあれ、海賊達は全員船に戻されれば、大人しく撤退を始めていく。
「……正直、こんなことになるとは思わなかった」
航行を開始した商船の上で、船員はあっけにとられた様子を見せていた。
海上で海賊に襲われた上でそれを無傷で撃退して、さらに交渉をしたうえで話までして行った彼らに驚きを隠せなかった。
「次の護衛もあっちに回そう……それがいい」
彼らに任せれば次もきっと海賊に襲われても安全に行けるだろう。
無事に船を護り切った彼らを乗せて、無事に積み荷はリッツバーグに届けられることになった。
そして、ちょくちょく小さな商船の護衛依頼がローレットに届くようになったという。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お待たせしました。GMのトビネコです。
依頼は無事完了、船の護衛は完了しました。
海賊達も、アクシデントはありつつも誰も死なず、死傷者ゼロの戦闘となりました。
船長に関しても皆さまの事を色々と気に入ったようです。もしかしたらこの広い海でまた再開することがあるかもしれませんが、それはまた別のお話。
それでは皆様、ご参加ありがとうございました!
GMコメント
今回は海洋を舞台にシナリオを用意させていただきました、トビネコです。
海、船旅……皆様船はどうでしょうか、私は大好きです。酔いますが。
依頼の目的は船の護衛となり、海賊の完全討伐ではありません。
勿論できるのであれば、倒してしまってもよいのですが、船から離れすぎないように注意は必要です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●状況について
現在皆さまは、首都リッツバークへと向かう商船に乗り込み、海賊の襲撃にあっています。
船は海賊の襲撃を突破するために進み続けており、速度を緩めず安全圏まで移動しきる予定で動いています。
海賊船は2隻あり、丁度船の左右から挟み撃ちにされている状態にで、海賊たちは波状攻撃を仕掛けてきています。
●海賊たち
1人見たら30人いる…というわけではありませんが、かなり大人数のようで合計で30人ほどの海賊集団のようです。
船は大き目の船と小さめの船があり、大き目の方には船長と20人の海賊。
小さめの船には副船長と10人の海賊が乗り込んでいるようです。
合計は32人で、基本的には部下達に行動させているようで、船長と副船長は海賊船に乗り込まない限りは戦いには参加しません。
部下たちは小舟を使って商船に接近し、船に飛び乗ってきます。
海賊の部下の戦闘能力は基本的には低いです、1対1で戦えば皆さんが負ける様子はないですが、基本的に彼らは複数人で一人を叩く戦い方を主にするようです。
海賊たちは皆そろって片手銃と片手剣で武装しています。それ以外の装備はありません。
海賊船には大砲などの武装はついていないので、海賊の迎撃だけに集中してもらえれば問題ないでしょう。
●船長と副船長
それぞれの船に乗り込んでいて、部下たちに指示を出しているボスたちです。
船長はよく鍛えられたカトラス1本で戦う豪快な人物で、その実力も非常に高く、彼女と戦う場合難易度がHardに跳ね上がると思ってください。
ちなみに性別は女性のようで、部下たちには姐御と呼ばれているようです。
副船長は船長からもう一つの船を任されている人物で、こちらは両手斧を振り回す男のようです。
豪快な性格は船長と似通っているようですが、比較的冷静な人物のようで、味方の被害が大きくなれば撤退も直ぐに考えるでしょう。
ですが、非常に仲間想いのようで、海賊の仲間が殺された場合激高して動き出す可能性は非常に高いです。
●追加情報
正しいかどうかは定かではありませんが、この海賊たちは完全に悪逆非道というわけではなく、物は奪っても無用な命を奪うようなことはしない、という噂があります。
ですが、現時点では商品を奪いに来ているのは間違いないので、依頼が失敗しないようにお気を付けください。
依頼の説明は以上となります。
既にもう無事ではないですが、これ以上の被害が出ないことを祈っております。それではよい航海を!
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