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シナリオ詳細

大掃除、1泊キャンプと空の星

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●わたりすすもっけ
 空気の冷えた冬は、空がよく見えた。
 冴え冴えとした星が夜空にまたたいている。
「お、ホントに綺麗だな、星」
 幻想のワンダーフォーゲルは小さな村の製材所の、もう少し奥に行った場所にある小さな高原だ。こんなへんぴな場所にわざわざ立ち寄るのは、一部の季節の罠猟師か、それとも、山を登って星を見上げるようなロマンチストか。
 そして、今日は、その両方だった。
 景色を求めて小屋に立ち寄った旅人は、偶然にそこにいた猟師と出会い、酒を酌み交わしながらいろいろな話を聞いていた。
 簡易のピザトーストが、たき火の上で炙られている。トーストの上では、チーズがぱちぱちとはぜていた。こった料理ではないものの、外で食べれば何でも美味い。
 舌鼓を打ちながら、いろいろな話に花を咲かせていた。
「そういや、あんた、ものは大切にするタイプか?」
「ん? まあ、そうだな……けっこう雑に扱っちゃうよ」
「そうか。それじゃあ、”すすもっけ”に食われちまうかもなあ」
「すすもっけ?」
「ここらにでる魔物でなあ。……、食べ物を食い荒らしたり、手入れの行き届いてない道具にとりついて、汚しちまうんだとさ。まあ」
「ははは、可愛いもんだなあ……って、あれ? さっき洗ったはずの鍋が真っ黒に汚れてる」
 立ち上がった旅人は腰を抜かした。
 わさわさと這い上がってきたすすの塊が、ぴゅん、と旅人に飛びついた。
「うわあーーー!」
「あ、出たなあ。掃除、サボってたからなあ……」
 わさわさとした一群は、とくに何をするでもなく。
 小屋の外にぴゅーっと逃げ出していった。

●通りすがりの騎士
「ポテトの料理は美味いからなあ……今日は何だろう?」
「シチューはどうだ?」
「ああ、間違いないな」
 夫婦仲良く買い物の最中。
『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)は、住民の声にはたと足を止めた。
『白獅子剛剣』リゲル=アークライト (p3p000442)は、ポテトのようすに気がついて、すぐさま振り返る。
「危険っちゃ危険なんだが、めったに人も通らないような場所だしなあ……」
「イレギュラーズを頼るか? いや、うーん……」
 素朴な格好をした村人たちが、顔をつきあわせてああでもない、こうでもないと言っている。
「どうかしましたか? 魔物、と聞こえましたが。もしもお困りであれば、教えてください。お力になれるかもしれません」
「おっ、兄ちゃん! 腕に覚えがありそうだな」
「ちょ、ちょっと! この人は……! ゴホン、この白銀は天義の名高い騎士様だぞ!」
「ええっ!?」
 リゲルは、買い物袋を脇に置き、姿勢を正した。
「事件に大きいも小さいもありません。お力になれるのなら、是非お話ししてください」
「そうですか……? いえ、本当に大したことではないのですが! しかし、我々が困っているのも事実でして……」
 彼らの話によると、人里からややも離れた場所に、「すすもっけ」という奇妙な魔物が大量発生しているそうだ。
「なるほど……?」
 数は多いが、それほど危険でもない魔物であることは確からしい。
 それなら、あの情報屋キータを誘っていっても大丈夫だろう。
 良い訓練になるはずだ。ほかにも、イレギュラーズたちがいればたのもしい。
「買い物が終わったら、顔を出してみようか?」
「ああ、そうだ。それでしたら、退治のあと安全確認をかねて一泊していただくというのはいかがでしょうか。ご飯や、道具や、食料。あとはちょっとしたお酒なんかご用意します。……お礼としてはあまりにささやかなものですが」
「それは十分なお礼ですね」
 みんなでご飯を作ってビールを飲みながら他愛ない話をして過ごす一時は、きっと素敵な思い出になるに違いない。

GMコメント

お待たせいたしました!
ほんわかした魔物退治と、1泊2日キャンプでございます。

●目標
・すすもっけを倒す
・安全確認のために1泊キャンプ!

●場所
幻想の高地のキャンプ地、『ワンダーフォーゲル』。
あたりは安全な森林で、開けた場所にキャンプが出来そうな場所があります。
テントをはってすごしましょう。

●敵
すすもっけ黒×20
すすもっけ白×20
 黒白のほわほわとした綿のような敵です。
 イレギュラーズの攻撃の一撃で沈むような脆い生き物です。
 暗いところや、ものの隙間に潜り込みます。
 倒すとわずかなすす汚れが残ります。お掃除が出来ると吉ですね!

●登場
キータ・ペテルソン(p3n000049)
「今日はたくさん飲むぞーっ!」
 キャンプにあたってビールを持ち込んできました。アルコールにはそんなに強くありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 大掃除、1泊キャンプと空の星完了
  • GM名布川
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月14日 21時56分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
※参加確定済み※
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
※参加確定済み※
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
マヤ ハグロ(p3p008008)
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
エドワード・S・アリゼ(p3p009403)
太陽の少年

リプレイ

●備えあれば憂い無し
『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は、すすもっけをクールな表情で見つめている。
(かわいい……)
 クールな表情の下で、そんなことを考えていたりするのだが。
 人間に害をなすなら仕方がない。仕事はきっちりこなさなくては……。いやしかし、あのフォルムは……。
「……なんとか飼育してペット化できんのか?
……できんのか……残念だ」
 しょんぼりとするモカだった。
「あまり害のない可愛い魔物のようだが……子どもも来るキャンプ場に魔物が来るのは良くない」
「ああ。子供達も楽しむことが出来るようキャンプ地を綺麗にしよう」
『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)はバケツを、『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)はハタキを構える。
「今回はしっかり退治して、すすもっけたちにはここから離れて貰おう。……キータも宜しくな!」
「おうっ! 頑張るぜ!」
「おーっす! 気持ちいいところだな~~!」
『ドキドキの躍動』エドワード・S・アリゼ(p3p009403)は集まった面々を見渡した。オレンジの瞳は、好奇心に輝いている。
「季節的にちょっぴりさみーけど、そんなこと気にしてる場合じゃねぇ!」
「元気じゃのう。我は少し肌寒いぞ」
『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)はどっかりと荷物を下ろす。
「ああ、なんてったって今日は初依頼! 初舞台だからな!」
 この依頼ならば間違いは無い。……アークライトの名前を聞いたギルドの人間がそう言っていた。
「そうなのか。よろしくな」
 すっと手を差し出すモカ。
「ああ! 魔物を追い払って、たくさん掃除しなきゃな。気合入れてくぜ!」
「こうなってしまえば、キャンプも仕事のうち、だな!」
 リゲルが微笑んだ。
「我も、野営は初めてじゃ。
うむ、しからば万全を整えていかねばな! ……なに、荷物が多すぎる?」
「はりきっちゃう気持ち、わかるなあ。備えあれば憂い無し、だよね、美咲さん!」
「そうね。全力で楽しみたいもの」
『ハイパー特攻隊長!』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)とのお泊まりが嬉しくて仕方が無い。
「人助けでキャンプまで楽しめるなんて最高だね!」
「せっかくのお泊まり、楽しみましょうね」
「うん! すす払いもお泊りも全力出しちゃうよ。ね、美咲さん!」
「仕事の一杯はいいもんだね」
『キャプテン・マヤ』マヤ ハグロ(p3p008008)はぐいと背伸びをした。
「じゃあ、とっととやっちまおうか」

●光はあまねく照らし出す
 キャンプ場には、暖かな気が満ちている。その気配を、ポテトは感じ取ることが出来た。ぽかぽかとした暖かい春の陽気のような気配が、建物をゆっくりと包み込んでいく。
 ……保護結界による保護は、完了だ。
 ポテトは長い髪を結い上げて、お湯を沸かし始める。
「よし、俺がおびき寄せるから、よろしく頼む! ……連携攻撃だな」
 リゲルが剣を掲げる。驚いたすすもっけたちが、わさわさと飛び出してきた。
「よーっし、任せてくれ!」
 エドワードは続けて、武器を構えた。
「はっ!」
 リゲルの流星剣が、すすもっけを片付ける。
 煌く銀閃。驚くほど澄んでいる一撃だ。
 魔を退ける迷いのない一閃。
 すごい、と思う。負けていられない、とも。
 けれども、エドワードはぎゅっと武器を構える。
(他のみんなよりもオレはよえーかもしんねーけど、負けてらんねぇ! やってやるぜ、オレ!)
 駆け出しのレベル1。
 今の自分がとるべき行動は、たぶん、リゲルの真似じゃない。出来ることをしっかりとするべきだ。
 だから選んだ手は、攻撃じゃなくて防御になった。一呼吸おいて、しっかりと狙いを付けて振り下ろす。
 狙い通り、逃れたすすもっけがきゅうと倒れた。
「で、できたっ……!」
「いいぞ! すごいじゃないか!」
「……良い判断だ。よしっ、続けていこう」
「おっ、ポテト! 今日は攻撃側なんだなー!」
「……普段攻撃に回ることはないから、ちょっとドキドキするな」
「ポテト、そっちにいったぞ!」
 リゲルは、静かに武器の刃を一撫でした。
 光輝。
 まばゆいばかりの光が、辺り一面を照らす。飛び出してきた一体は、ぱきりと空中で凍り付いた。
 凍星-絶対零度を浴びたすすもっけは、そのまま割れる。凍らせると汚れがまとまって、実に便利だ。
「……苦しんだりはしていないと思うが」
「済まないすすもっけ……。その代わり、ここはぴっかぴかにするからな!」
 ポテトはぺしぺしと、次々とすすもっけをすすの塊にしていく。
「そっちに行ったぞー! エドワードさん!」
「こっちだな! 諦めねぇぞ!」
 エドワードがぱっと反応し、駆け出していく。
 通せんぼして、一撃。上手いこと倒すことが出来た。
 もう一匹を、頬を煤だらけにして追いかける。
「待ーーーてーーーっ!」

●隅から隅まで
「っと、そこの棚の隙間にまだいるな」
 モカはめざとく隠れたすすもっけを見つけ出す。胡蜂乱舞脚が、すすもっけを十分にぱちんとはじいた。
 振り切る必要は無い。つま先だけで十分だ。
「♪」
 クレマァダの歌の、たった一音節がすすもっけを弾き飛ばす。本気を出すに及ばず、これくらいで十分だ。
「うーん、生き物なのか? これ。
不思議なもんも居ったものじゃのう……」
「……持って帰りたかった……」
 音により、すすもっけの位置はじゅうぶんにわかっていた。
 クレマァダはまた言祝いだ。
「しかし、ずいぶんと汚れてしまうものじゃ。ポテトが湯を沸かしてくれてはおるが」
「っと、ここにもだ」
 マヤがぐいぐいとラム酒をあおり、飛翔斬を食らわせる。
「よし」
 モカの高い蹴りが、すすもっけをもう一体倒す。
「やっぱり陸は海が恋しくなるねぇ」
「……ここはキャンプ地。湖があったはずじゃ。……どれ、見てくるのじゃ」
 外に数体が出て行ったが、問題は無いだろう。
 なんたってあっちには、ヒィロと美咲がいる。

「んー! 自然って、気持ちいいよね」
「私が混ざると、ひと睨みでまとめて消し飛ぶからね……」
 ヒィロはすうっと綺麗な外の空気を目一杯吸い込んだ。
 見回せばこのワンダーフォーゲルの様子が、手に取るようによく分かった。小さな一団がわさわさと移動しているが、”生き物”ならどこに身を潜めるか、……簡単なことだ。
 ブラッククロニクルをその手に。エメラルドの瞳は、小さな隙間に潜んだすすもっけも見逃さない。
「いくね、美咲さん!」
 闘志!
 溢れ出る勇気と迸る闘志は、今は美咲のためにあった。
 呼びかけるまでもなく、ヒィロが動くのに合わせて美咲は動き始めていた。けれども、名前を呼びたかった。
 何度でも。何度だって。
 集まってくるすすもっけは怖くない。
(すす汚れなんて気にせず敵いーっぱい集めたら、美咲さん褒めてくれるかな?)
 ねえ、美咲さん。
 ヒィロはわくわくした感情に身を任せる。ヒィロにぶつかってくるすすもっけたちは、寸前で、蒸発するように消えた。
 爆風に感じるかすかな衝撃が、……心地よかった。
 それが全然ホンキのにらみではないことは、よくわかっている。このあたり一帯を吹き飛ばすくらいの威力になる。
「ヒィロはいつも一杯頑張ってくれるから、もう早いこと」
「えへっ」

●お片付けの時間
 討伐後は、掃除のターンである。
「ありがとう。ヒィロ。さて、まずはお掃除からね」
 まずは、キャンプのための道具や設備だ。片付けられたベンチを元の位置に戻して、丁寧に汚れを拭き取っていく。
「こういう場でも、雑にはさせないよー」
「場所を借りて行うキャンプなら、丁寧に使うのは当然よね」
(……世の中にはそう思わないひともいるけど
私は綺麗なところを使いたいし、ヒィロにも使って欲しいから)
 それにしても、ヒィロは張り切っているようだ。ぴょこぴょこ動く耳を見て思う。
(キャンプ客のためでもあるけど…何より、美咲さんと一晩過ごす場所だもん
掃き掃除もお片付けも綺麗綺麗してロマンチックな夜に備えるの!)
 ふたりは、同じようなことを考えていたのだった。

「よし、終わったな!」
 すっかり煤で汚れたリゲルが、それをいとうことはない。家名を頼らぬ下積み時代から、なんでもこなしてきたのだ。
「みんなで協力してキャンプ場をぴかぴかにしよう!」
「ああ。すすもっけ達に感心される程にピッカピカにしよう。
どれだけ綺麗にできるか競争だ!」
 ポテトは、沸いたお湯をバケツに移し替えて、拭き掃除の準備だ。
「どうせやるならすすもっけ達がびっくりするくらい綺麗にしてぇよな。それならあいつらも、納得するかもしれねぇし」
「キャンプに訪れた人が驚く程、綺麗にしたいな」
「ぐええ。モップ、折れちまったけど!」
 キータがモップを折ってしまったようだ。
 古くなって壊れてしまった掃除道具は、リゲルが鍛冶であっという間に直してしまう。
「新品みたいだ……!! でも、この鉄板の汚れは……取れないな」
「こんなこともあろうかと! たわしを持ってきたんだ」
 遠くとも訪れたくなるような魅力あるキャンプ地にしたい。……人が多く来れば、きっと綺麗さを保てるはずだ。
「掃き出していくぞ」
 モカはほうきで煤を払っていく。きびきびとして、さすがに手際が良い。そしてキータの届かない場所もまあ、当たり前のように届くのだ。
……ちょっと羨ましい。

●キャンプに向けて
(ずいぶん片付いたよな)
 エドワードは助走を付けて、ぴょんとジャンプする。高い木の果実をもいだ。
「おっと、きっと目的は一緒だよね!」
 エドワードとヒィロがにやりと笑う。
 キャンプなのだから、なにか食べられるものを探してきたいのだ。
「ふふふ、エドワードさんにわかるかな?」
「ああ! それなりに食べられる植物については勉強してるし、あと鼻の良さには自信あるんだぜ!」
 エドワードはひょいと食べられる山菜を見つけ出す。
「晩飯のメニューとか当てるの得意なんだ、へへ……」
「おっ! すごいや。じゃあ、お野菜とかそっちの方は任せても良さそうだね! 僕、たんぱく質をとってくるから!」
「よーし、競争と行こうか!」
 ヒィロは野山を駆け巡り、怒涛の咆哮をあげた。
(ヒィロ、張り切ってるなあ)
 その様子を見て、美咲は微笑ましく思う。
「上手に狩れましたー! ってね。この大きいのが美咲さんの分でしょ!

 掃除を終え、ふうと外に出ようとしたクレマァダは開けた戸をもう一回閉じた。
「ささ、寒い!! 冬の山は斯様に寒いものか?!」
 ザックから上着を取り出して、せっせと羽織る。
 テントの設営やら火起こしやら、そういうスキルは一切ない。
……そもそも山に泊まるなどということが初めてだ。
(……他の者たちは、手際が良いものじゃ……)
 海洋貴族の家に生まれたクレマァダには無理からぬこと。
 最低限の仕事はしたのだ。黙っていても責められることはない……だろうけれども、何もしないと言うことの罪悪感に耐えられないのがクレマァダだ。
「大丈夫か?」
 様子を見に来たポテトに頷いた。
(うむ、力仕事なら出来る!)
 水を汲んでいる時に、揺れる水面を見てはたと思い立つ。
「湖なら、魚がいるのでは!!」
 上着を脱いで、湖にダイブする。
 波間が気持ちよかった。
(我が苦手なのは冬のからっ風じゃ)
 水の中ならば、暖かい。すいすいと泳ぎ、岸に魚を打ち上げていく。

「えへへ。張り切ってたくさんとっちゃった!」
「どうだっ、山菜と、果物もとってきたぜ」
「! 新鮮な魚じゃないか! それに肉と、山菜もあるな……!」
「全員、お腹いっぱいになりそうだな、リゲル」
 そこへ、ざっぱんとクレマァダが出てきた。
「はい、調理は出来んのじゃ。すまん。
誰かが良いようにしてくれることを祈る」
「狩りをするのも重労働だから助かるよ。……ふむ、調理なら任せてくれ」
 なんたってモカは本職。ステラビアンカの店長である。

●風呂など
「お湯ありがとう、ポテトさん!」
「うむ、ちょうど良い湯加減じゃのう」
 汚れた身体を綺麗にするために、後退で湯浴みをしていくのだった。
「お疲れ様。頑張った分、一杯綺麗にしてあげる!」
「わっ。へへへ……ボク、美咲さんに頭撫でられるの好きなんだ」
 すすにまみれた髪は、湯を浴びせればすぐに金色に戻る。
(ヒィロの煤は、私が全て落とす!)
「次、交替だよ! これ、美咲さんの匂いになっちゃうねぇ……」
 綺麗な髪をとかしていく。
 手入れの行き届いた髪はつやつやとして、指先からつるんと落ちる。

 すっかり日も暮れたころ。目印は、キャンプファイヤーだ。
(キャンプ場の試運転だと思えばこれもお仕事の一環だよ、うん)
「ふう、水はこんなところかな」
「ああ、リゲル。ありがとう」
「皆の現地調達は凄いなあ、どれも新鮮で美味そうだ」
「メインはみんなが集めてくれた食材でのBBQだ。調味料も色々持ってきたから、必要に応じて使ってくれ」
 ポテトは実に手際よく食材を並べていった。
「全部そろってるな。……ヒィロさんの狩猟は完璧ですね!?」
「皆のご飯だもんね!」
「エドワードの採集で山菜もバッチリだ、クレマァダさんのお陰で魚まで……夕食がより豪華に!」
「ふふん」
「へへっ」
「ポテトは酒のつまみまで凄いなあ、どれも美味そうだ!」
「あ、野菜が足りなかったら育てるから」
「……育てる?」
「ふふふ、見ていてくれ!」
 ポテトよりも、リゲルが誇らしげに言う。
 ポテトは半分に切ったジャガイモを土に埋めた。
 豊穣の恵み。ポテトの声に応えて、植物がするするとツタを伸ばす。あっというまに、小さな畑は実り豊かなものになっている。
「うわー、すげえや!」
「キータは飲み過ぎないようにな?」
「わーかってるってばー!」
「調理は私に任せて、皆食べてくれ」
「ありがとう、モカさん」
「これ、手土産の」
「米か! ちょうど欲しかったんだ」
 美咲から手渡された米に、マヤが口笛を吹いた。モカはまかせろ、と頷いた。
(料理もプロがいれば、手伝い程度でいい……)
「なんか凄い楽してるな私」
「いえ。手伝い助かります、モカさんも流石手慣れておりますね!」
「お酒美味しいなー!」
「その前に、ホラ」
 リゲルはそっとおつまみのカナッペや和え物、焼けたBBQを差し出した。
 腹に何か入れておかないと悪酔いしてしまう。
「!!! いやー、美味しいなあ! すっかり美人の嫁さんもらっちゃってまあ……俺も感動だぜ! おめでとう! 二十歳に乾杯!」
「乾杯だな!」
「バーテンが酒の飲み方を教えてやろう」
 モカは、蒸留酒を持ち込んでいた。マヤが舌鼓を打つ。
「おっと、待ってました! っと、私も当然、ラム酒を持ってきたんだ」
「……大人の楽しみじゃのう」
「お菓子があるよ」
 美咲がすかさずプリンを差し出し、モカがただの紅茶を淹れてくれた。
「マヤさんは豪快で格好いいなあ」
「見ててくれ、焼くのは得意だ」
「モカさんも、どうぞ」
 美咲が焼けた串をそっと皿によそう。
「あとでいいかと思っていたんだが、ありがとう」
 持ち込みのワインと、カナッペがよくあう。
「マリアージュだね! ……美咲さん、これ、ボクがとってきたお肉なんだよ!」
「ありがとう。美味しいね」
「あれ!? これ、俺が持ってきた酒なんだけど……美味いぞ!?」
「飲み方によって変わるものだ」
 モカは次々と鮮やかな酒を作っていく。
 ウイスキーの冷たい水割りや、ブランデーを熱い紅茶で割ったブランデーティー。多彩に形を変えている。
「どうだいマヤさん、こういう飲み方も」
「いいな。気に入った。ありがとう」

「皆今日一日、お疲れ様!
さあキータ、乾杯しよう!」
「乾杯!」
「しかし、皆にとっては言うまでもなく当たり前のことなのじゃろうが……ただ生きるにも、色々な技能があり、また得意不得意があるのじゃなあ」
「うっわおいしい! なんだこれ!」
「なるほど、キャンプというのはそれを学ばせてくれ——そのギモーヴは我が育てたものじゃ!!」
 皆と一緒に炎を囲んで飲めや歌えやしたり、花火で盛り上がったりして……。
 ゆっくりと、時間は過ぎていく。

「ポテトはどの花火がいい? 何でもあるよ」
「そうだな……じゃぁこれにしよう」
 ポテトが選んだのは桜の花びらのような、小さな花火。
 寄り添い、火傷しないよう気を付けながら、そっと横顔を眺めている。
 小さな光がポテトの横顔を照らす。
 きれいだな、と心から思った。美しさを目に焼き付ける。

 夜になれば、明かりがゆっくりと消えていく。
「ねぇ、美咲さん」
「どうしたの?」
「抜け出しちゃわない? 一緒に空が見たいんだ」
「もちろん」
 美咲とヒィロは二人寝転んで、星を見上げる。
「星の話、見るひとの話、私たちの話……いくらでも、話せるものね」
「寝ちゃうの、もったいないなあ。……だって、終わっちゃうものね」
「明日の朝は、朝食を作ってあるの。余った食べもので」
「……いつの間に?」
 保存食のパンを添えて。……硬いパンは、スープに浸けて柔らかくすると結構いけるのよ」
「それじゃあ、明日も一緒に居てくれるんだね」
「……当たり前よね」
「そうだねえ」
 幸せだ。なんだかこのまま寝てしまっても良いような気がした。けれどもやっぱりもったいなくて、空を見上げている。


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

1泊キャンプ、お疲れ様でした!
きれいになったキャンプ場は賑やかさを取り戻し、隠れた観光地となったようです。

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