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シナリオ詳細

大運命裁判

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●開廷の槌が鳴る

 XXXX年 2月某日 17:00
―異界裁判所―

「静粛に!」
 打ち鳴らされた木槌の音に、ざわめいていた傍聴席が静まり返る。
 ここは異世界の裁判所、裁きの庭である大法廷。
 厳格な審判を下すため、何者にも染まらぬ意志を示す"黒い法衣"を身に纏い、裁判長は宣誓する。

「それでは、これよりCafe&Bar『Intersection』で起こった殺人事件の法廷裁判を始めます。
 弁護側ならびに検察側。準備は宜しいですね?」

 裁判所の問いに、それまで検察側の席で寛いでいたスーツの男が立ちあがる。
 神経質そうにスクエア眼鏡のブリッジを押さえ、不敵な笑みと共に弁護側の席にいる4人――特異運命座標を見下した。

「検察側はいつ始めても構いませんよ。特異運命座標とか言いましたか。4人も出向いて戴いたところ申し訳ございませんが‥‥私、佐伯 渡(さえき わたる)は確信しています。
 呼び出された被告人は間違いなく黒! どの様な弁護をしても、あなた方に逆転する奇跡などあり得はしないとね!!」
「ううっ!!」
「私、珈琲はブラックこそが至高と考えておりますが、貴方の腹はどうやらそれ以上に黒いようだ‥‥ねぇ? 蒼矢さん」
「‥‥‥」
 検察官に断言され、被告人席に座っていた『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)は動揺のあまり仰け反った。
 だらだらと汗を流し、弁護人席に座る特異運命座標たちに視線を逸らす。
「佐伯検事はああ言ってるけど、僕は君達を信じてる。何より‥‥僕は人殺しなんて、していない!!」
 ざわざわ、ざわざわ。傍聴席がさざ波のように騒ぎ出す。
「静粛に! 静粛に!!」
 再び沈黙を促す裁判長。そもそも、何故こんな事態になってしまったのか――その顛末は数時間前にさかのぼる。

●被告人 神郷 蒼矢

 XXXX年 2月某日 11:00
―異界法廷裁判所―

「ほんっっとうにゴメンね~~!!」
 開口一番、蒼矢は集まった特異運命座標に土下座で精一杯の誠意を見せた。
 というのも、ここに居る4人、元は蒼矢が異世界で経営しているカフェに新作スイーツの味見を頼まれやって来たのだ。

 しかし、いざ現地に行ってみれば店の周りに人だかり。入り口まで近づけば『KEEP OUT』のテープが貼られ、警察官が野次馬たちを散らしている。
 何があったのかと聞かれれば、警備にあたっている警察官は「この店で殺人事件があった」と素直に答え、蒼矢の関係者と知れば、この部屋に通してくれたのだ。

「それにしても、困ったなぁ‥‥。検察側には佐伯検事っていう有名な検事が出て来るらしいんだけど、なんと検挙率100%!
 おかげで僕の弁護に立つ予定だった弁護士さんも怖がって逃げちゃったんだよねぇ。困ったなぁ、誰か弁護に立ってくれないかなぁ‥‥」

 そこで蒼矢に天啓がくだる。現在の時間は午前11時。開廷までの猶予はある。
 おまけに今、目の前にいるのはいずれも奇跡を起こすと名高い特異運命座標たち。

「巻き込んだついでにムシのいい話だとは思ってるけど‥‥お願い特異運命座標。僕の無実を証明して!」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 特異運命座標のいくところ、どんな場所にも事件あり!

●目標
 蒼矢が無罪判決を受ける

●場所 
 異界裁判所
  司法の番人達が罪人を裁く由緒正しき裁判所。混沌にある裁判所と比べて、特に変わった部分はありません。
  被告人の控室、検察側の控室の他に、裁判が行われる法廷があります。

●プレイングについて
 以下の2パートで行う行動をお書きください。
  1、捜査パート
   殺害現場となったカフェや、この裁判所、被害者の自宅などを調べる事ができます。
   ここで必要なのは皆さんの閃き。非戦スキルやギフトを駆使して捜査してみるもよし、無実の証拠を捏造してみるもよし。
   怪しい人物に拳で聞き出すといったアウトローなプレイングもOKです。

  2、法廷パート
   証拠を突き付けた時や、検察側の証言にほころびを見つけた時の恰好いいセリフを書いてください。
   また、捜査パートで得られるであろう証拠をどのように使うのか書いておくと良いかもしれません。

 その他、心情など自由にお書きください。

●登場人物
 佐伯 渡(さえき わたる)検事
  今回皆さんの相手をする検事。メタ的に言うと真犯人です。
  法学だけでなく薬学、医学、事件解決のため奇術にまで通じ、検挙率100%の腕を誇る凄腕ですが、
  その裏で口封じや証拠の捏造をしているという黒い噂の絶えない人物でもあります。
  裁判所には彼の部下や、彼が活躍する裁判を見に来るファンがいるようです。

『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
 今回の被告人。境界図書館で境界案内人の仕事をする傍ら、Cafe&Bar『Intersection』のカフェタイムを切り盛りしています。
 カフェに来たお客さんに癒されて欲しいと願っており、時にはお客さんの気持ちをほぐすために一緒にお茶を楽しんでくれるいいマスター。
 事件当日、被害者が来店した事は覚えているのですが……仕事の最中に急な眠気に襲われたと供述しており、事件前から事件後の記憶がありません。
 店には監視カメラもないため、弁明もできず逮捕されてしまいました。 

『超能力者』フェニックス与太郎(よたろう)
 自らを超能力者と名乗り、テレビで話題沸騰中のタレントでした。死因は毒殺。彼が飲んでいたと思しき珈琲に毒が混入されていたそうです。
 フリーで活動しており、事務所には所属していません。自宅が彼の住処であり、仕事の拠点であります。
 蒼矢いわくカフェの常連で、カウンターの端の席にいつも座り、決まって珈琲と砂糖を頼むとの事。

●その他
 この依頼は一軒推理モノに見えますが、推理っぽい雰囲気を楽しめるカジュアルな依頼です。
 プレイング内の考察が外れても悪い事は起きませんし、可能な限り推理に寄り添うリプレイを目指したいと思っています。
 とにかく楽しんで参加していただければ、NMとして、これほど嬉しい事はございません。

 それでは、よい旅路を!

  • 大運命裁判完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月07日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて
トキノエ(p3p009181)
恨み辛みも肴にかえて

リプレイ

●捜査開始
「実に全うに探偵の仕事だ」
 嬉しいね、と『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は静かに微笑み事件現場を捜索していた。
「ボクも最近は軍師としての活動ばかりで探偵としての仕事がめっきり減っていたからな……」
 現場は検察が証拠を押収し終えた後で、店の物が幾つか無くなっている。そんな事はシャルロッテにとって些末な事だ。
 物が置かれていた形跡、犯行時刻。それらを噛み合わせれば自ずと持ち去られた物に目星はつく。
 答え合わせは後程、検事を調べている仲間と擦り合せれば良いだろう。
「しかし、ボク達も舐められた物だね」
 ハイセンスによる超嗅覚で彼が捉えた甘い匂いは、お店の焼き菓子でも香り高い珈琲でもない――死に至る毒薬だ。
「そら、見つけた」
 整頓された食器棚の中、ただひとつ雑に置かれているコーヒーカップを手袋をして持ち上げて、シャルロッテは嗤う。
 ただティータイムを過ごしに来ただけの素人集団……検事が4人に抱いているのは、それくらいの印象だろう。
 嗚呼、なんと可哀想に! その慢心がこの綻びを生んでしまったに違いない!

「……っクシ!」
 誰かに噂された気がして、"検事を調べている仲間"こと『特異運命座標』トキノエ(p3p009181)は周囲を見回した。
(検事を嗅ぎ回ってる事がバレちまったか? さっきから視線を感じる様な……)
 裁判所の中で関係各所に聴き込めば、情報が出るわ出るわ。検挙率100%の話から、彼の不思議な技能まで。
「こいつ、奇術も使えんのかよ……そういや、被害者も超能力者だったな」
 謎解きが苦手なトキノエは、情報の整理に注力する。無い頭を振り絞り、出てきた捜査の目星はふたつ。
 ひとつは検事と被害者の接点。ふたつめは、検事が過去扱った事件について。
(前者は事務所の捜査に行った奴らが調べてくれそうだ。とすると、検事が今まで扱った事件に似た犯行がねえもんか――)
「……ッ!」
「よぉ」
 あっという間の出来事だった。トキノエが廊下の角を曲がった直後、忍び足で追いかけて来た不審者相手に、彼はフェイントをかけたのだ。
 待ち伏せた相手の胸ぐらを掴み、空き部屋へ引きずり込む。
「そんな目立つ格好で尾行のつもりか? あァ?」
「貴様、警察相手に……ぐぁっ!」
 殴られ、痛みに悶える警察官。トキノエは再び拳を握り、鋭い双眸で睨みつける。
「お前は法の犬ですらねぇ。権力を振りかざせる道理はねぇんだよ!」

「お時間を戴きありがとうございます。早速、被害者の与太郎さんについてお話をお聞かせいただけますか?」
「勿論だけど、君……可愛いね」
 不意打ちの褒め言葉に『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は目をぱちぱちと瞬いた。
 調書によれば、被害者はテレビで話題沸騰中のタレントだという。人気商売は妬まれやすいものだ。犯人が彼を殺す動機を探れるのではないかと、彼女は被害者の冠番組の収録スタジオを訪れたのだが――
「この後新しいコーナーの収録があるんだけど、急に演者が病欠になってねぇ」
「それは大変ですが、僕もこれから弁護の……」
「知ってるよ! 与太郎のために検挙率100%の検事に挑む、勇気ある弁護人! 君達はお茶の間の注目の的さ」
 頼むよこの通り――なんて手を合わせるADに睦月は眉をひそめた。あまりにも、与太郎の死に対して扱いが軽すぎる。番組を共に創り上げてきた絆があれば、彼の死をネタにする事など無いだろうに。素直に感じた事を伝えると、ADはそれまでの愛想笑顔をひっこめ神妙な顔をした。
「ネタにする事を望んだのは与太郎だ。殺害される前からアイツは自分の死を悟ってたからな」
「それは……どういう事ですか?」

 シャルロッテが事故現場を捜査してる間、『海を越えて』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)はカフェの周りを清めてまわっていた。霊魂疎通を使うにあたり、ノイズとなる物を極力退けておきたいからだ。
(卑怯かもしれないけれど……被害者から直接話を聞けるならそっちの方がいいよね)
「シャルロッテさん、そろそろ彼を呼んでみていい?」
「勿論。面白い証拠は見つけ出せたからね」
 それならばと、ドゥーは改めて店内に踏み入る。普段は笑顔で溢れている店の筈なのに、今は水をうったように静かだ。
 部屋の奥、被害者が倒れた席の前で目を閉じて、彼岸へと意識を飛ばす。そうして手繰り寄せる死者の魂は――
「あれ?」
 幾度か探りを入れたものの、与太郎を呼び出せず。暫く考えた後、ドゥーは前髪の奥でハッと目を見開いた。
「もしかして、死者が呼び出せないんじゃなくて……!」
 閃いたのは逆転の発想。不思議な高揚感を覚えつつ、ドゥーはすぐさま調書を見返し、店の電話を借りて番号を入力した。
 数度のコール音の後、ブツ、と通話に切り替わる音。
『……誰、ですか?』
「俺はドゥー。あなたの力になりたいんだ」

●開廷
「異議あり! 検察の発言は被告の尊厳をないがしろにするものであり、とうてい認められたものではありません!」
 時を戻して法廷の場。検事の挑発を受けても冷静に睦月が裁判官へと切り返す。
「弁護側の意義を認めます。検察側は気をつける様に」
「失礼。それでは検察側の見解を述べましょう」

 検事いわく、事件当時カフェに居たのは蒼矢と被害者の2人きり。被害者に提供する珈琲に毒を混ぜ、毒殺したのだという。

「検察側から証拠品を提出します。被害者が口をつけたカップです。毒の痕跡も検出されている。言い逃れは出来ません――」
「そいつぁ通らねえぜ!」
 勢いよく弁護側の席を蹴って立ち上がるトキノエ。鋭い双眸に思わず検事が息をのむ。
「お前の検挙率100%には裏があるそうじゃねぇか。その証拠品も捏造なんじゃねぇのか?」
「言いがかりはよして欲しいな。検察側の証拠品に捏造のタイミングは無い。君は法の番犬を敵に回す気か?」
 火のない所に煙は立たぬ。ざわつく傍聴席を止めようと裁判官が木槌を叩く。
「静粛に! 弁護側、そこまで言うのなら捏造の証拠はあるのですか?」
「……」
 ニヤリ、と余裕の笑みで腕を組むトキノエ。しかしその腹の内は全くの逆だ。
(マジかよ、んなもん用意してねえ……!!)

「……『さて』」
 彼の焦りを知ってか知らずか、助け舟を出すシャルロッテ。唐突な横入りにも関わらず、不思議と異を唱える者は誰もいない。
 ギフトの恩寵か、はたまた彼の名探偵としての素質がそうさせるのか――話は続く。
「この場に並べられた検察側の証拠品に捏造の痕跡はない。それはボクも保証しよう。
 その上で気になる事がひとつある。ここまで優秀な鑑識達がなぜ"こんな大事な証拠を見逃した"のか」
 取り出されたのは一見、被害者が飲んだカップと同様の物だ。検事の瞳が見開かれる。
「これが何か分かるかねドゥー君」
「蒼矢さんの店の……もしかして、事件当初に蒼矢さんが飲んでいたカップかな?」
 いかにも、とシャルロッテは口元を緩めた。蒼矢は客のアイスブレイクのために一緒にお茶を飲む習慣があるという。
「あ! 記憶がぼんやりしてたけど……確かに僕、お茶を飲んだよ。お店に来た時の与太郎さんは元気がなくて」
「蒼矢君が使用したカップからは睡眠薬が検出された。つまり彼は犯人に仕立て上げられた被害者なのだよ」
「待った! つまり第三者の仕業だと?一体誰の――」
「それは君がよく知っている筈だろう、佐伯君。ボクの超嗅覚によれば、君のジャケットからはこの睡眠薬と同じ香りがするのだから!」
「――ッ!」
 驚きに仰け反り、反撃をしようとテーブルを叩く検事。
「私が真犯人だと言いたい様ですね。確かに私の奇術なら毒も睡眠薬も現場にいれば混入可能ですが……私と被害者に接点はありません!」
「接点がない? それは、俺が聞いた話と違っているね」
 誰に聞いたかって? 場の疑問に答えるべく、ドゥーは静かに傍聴席の奥へ視線を滑らせた。時を同じくして席を立った男は――嗚呼、調書に貼られた写真の通り!
「与太郎さんから聞いたって言ったら、信じる?」
「こ、これはどういう事ですか弁護側!」
「与太郎さんの芸名はフェニックス。不死鳥の因子を持つ蘇り体質なんだって。周りには秘密にしてたけど」
 つまり被害者は一度死んでいる。殺人犯の前に姿を現す勇気を彼が絞り出せたのは、ドゥーの真摯な説得あってこそだ。
「この殺人が用意周到な計画であった事も裏付けが取れています。貴方は薬学の知識を使い、自分を医者と偽って少しずつ毒を盛っていましたね」
 与太郎が以前から弱っている事を、睦月はADから聞いていた。カフェでとどめを刺したのは、犯行を蒼矢になすりつけるためだ。
「貴様ら、先程から聞いていれば……私に動機などない!」
「どうだかな。俺にだって分かるぜ、てめぇが腹の黒い大嘘つきだってなぁ!」
――こいつを喰らいな!
 トキノエが突き出した証拠品は、検事が過去に携わった事件の資料だ。いずれも被害者は数ヶ月前から体調不良を訴え、毒殺によって死んでいる。
「ち、違……」
「俺を襲ったてめぇの部下が色々囀ってくれたぜ。余罪も含めて落とし前、キッチリ払って貰おうか!」
「違う。違う違うちがう! その表情(かお)じゃないッ!」
 突然頭を掻きむしりながら叫ぶ検事の姿に法廷は騒然となった。その中でシャルロッテは冷静に問う。

 それが君の動機か――と。

「エリートの私が昇進を蹴り続け、現場に居たのは何故だと思う? 好きだからさ……謂れなき罪に被告人の顔が歪む様をね、一番近くで見れるのが!」
 暴れようとする佐伯を警察官が取り押さえ、法廷の外へ連行し始めた。犯人はまだ喚いているが、自供が始まった時点でシャルロッテは興味を失っている。
 そこにはもう、謎が無いからだ。
「裁判官、木槌を鳴らしたまえ。――Q.E.D.(これにて閉廷だ)」

成否

成功

状態異常

なし

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