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シナリオ詳細

<瘴気世界>消えた元冒険者

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ――災害獣が討伐される数刻前

「まさか、キミの模倣体はイレギュラーズをここから離す囮だったなんてね?」
 瘴気世界、闇の精霊が根城にしている常闇の塔には招かれざる客が来ていた。
 突如として、リュミエール王国付近の地上に現れた光輝の精霊の模倣体は、光輝の精霊本人が仕組んだ何かの罠であることには気付いていた。だからこそ、何かがあった時に自分が倒れるわけにはいかまいとイレギュラーズを向かわせたのだ。
 だが、その時はそれが裏目に出るなんて思ってもいなかった。
「貴女は考え方がいい加減で愚直、昔に言った言葉オボエテル?」
「ああ、確かキミが新しい生命を作りたいって言った時の話かい?」
 オプスキュティオは、目の前のリュミエールを強く睨み付けると、殺意の奔流を彼女へ剥き出しにする。このふたりの存在を知る者であればどちらが優勢かなんて明らかだろうが、劣勢を被ることになったオプスキュティオは口元を少し吊り上げる。
 この時はまだ、彼女にも勝機があったのだ。
「あのレベルの魔獣を生み出すとなれば、馬鹿にならない精霊の力を消耗する。いくらキミが精霊三人の力を吸収していたとしても、ボクの算段では半分以上消耗してる筈だ。
 ……愚直なのはキミの方なんじゃないかい?」
「そう、かもしれないわね?」
 同時に、イグニスヴールが炎を纏ってリュミエールの背後を取る。
 イレギュラーズの足止めをするほどの魔獣となれば、見合う代償が必要なことはオプスキュティオもイグニスヴールも十分に理解していた。それこそイレギュラーズは過去、全快じゃなかったとはいえイグニスヴールを討ち倒したほどの実力だ。
「俺様はテメェの舐め腐ったその顔をぶっ叩きたかったんだよ!!」
 猛火を帯びた強烈な拳がリュミエールの顔に迫る。
「イグニスヴールは昔と変わらず、本当に熱いだけの莫迦ね?」
 ――その拳がリュミエールの顔へ届くことはなかった。

●狂いゆく歯車
「おーい、生きてっかよ」
 リュミエール王国に現れた災害獣。その討伐報告と色々文句を言いに来た【元冒険者】ラナードは、闇の精霊が住まう塔のてっぺんの扉を強く叩いた。
 いつもなら面倒くさそうな声で返事が返ってくるが、今日は返事がない。
「おい、返事くらいし――」
 呼びかけても物音ひとつ立たないことに何か胸騒ぎを覚えたラナードは、いつもなら返事があるまで開くことのない扉を無断で開き、そして唖然とした。
 その後、彼は慌てて境界図書館へ帰還を――
 …………。

「今回は集まって頂き、ありがとうございます」
 既にイレギュラーズが瘴気世界への介入を果たしてから暫く経った。
 初介入から精霊たちの身勝手に振り回され続けたイレギュラーズと境界案内人だが、今日はその一人であるラナードが見当たらなかった。
「…………」
 代わりに、彼を瘴気世界から連れ出したイヴ=マリアンヌが貴方たちを出迎える。
 その表情はどこか落ち着きのない様子だった。
「ええ、お察しの通り、ラナードが瘴気世界から帰ってきていないのです」
 闇の精霊は前回、光の精霊が生み出した災害獣と呼ばれる凶悪な魔獣の討伐をイレギュラーズへ依頼したが、結果はあまりにも非情で惨たらしいものに終わった。
 報告書に目を通したラナードは、精霊に文句を言おうといつものように瘴気世界へ出向いていたらしいのだが――既に出発してかなりの時間が経っている上、連絡すら取れなくなってしまったらしい。
「少々嫌な予感がしまして、彼の現在地の座標を調べてみたのですが――」
 イヴが瘴気世界全体の地図を大きな机の上に広げると、その座標と思われる場所にピンを一つ立てた。それは地図の範囲外、存在しない場所、領域外。
 そして、再びイレギュラーズへ一件の依頼が発行された。

NMコメント

 牡丹雪と申します。
 <瘴気世界>も終わりが近づいてきました。最後までよろしくお願いします。
 また、世界の詳細は牡丹雪の自己紹介ページや、過去作をご覧いただければ幸いです。


●目的【消えた【元冒険者】ラナードを探す】
 オプスキュティオたちに会いに行っていたラナードが突然姿を消しました。
 また、同じくオプスキュティオもイグニスヴールも行方不明になっています。
 イヴからの少ない情報を基に、彼を助け出してあげてください。

●オプション目的【消えたふたりの精霊を探す】
 オプスキュティオとイグニスヴールも行方不明になっています。
 イヴは、同じ空間にいる『筈』と言っているので確実性はありません。
 また、情報量も明らかに少ない目的になりますので、ストーリーに大きな影響は及ぼしません。

●ロケーション【光輝の牢獄】
 イヴがその座標まで飛ばしてくれます。
 恐らく光輝の精霊が作り出したとされる不思議な空間です。
 空間は無限に近く続いており闇雲に動き続けたらかなりの距離を歩くことになります。
 移動手段や、捜索手段を確保しておくと楽にラナードを見つけ出すことができるでしょう。

 また、今までの荒野よりもかなりの瘴気で満たされています。
 視界が悪いどころか、イレギュラーズに対して別のマイナス効果を及ぼす可能性があります。

●敵対相手の情報
・【元冒険者】ラナード?
 闇の精霊に会いに行き、そのまま行方不明になった境界案内人です。
 座標は同じ案内人のイヴが見つけたので間違いないはずですが、どことなく様子がおかしく見えます。
 意思疎通は可能ですが、時々ボーっとした様子を見せており……???

(PL情報)
 7ターン毎に何かに憑依されたかのように装備している大剣で攻撃してきます。
 その後も放っておいたら憑依されたままですが、強めの一撃を入れれば元に戻ります。
 舐めてかかると痛い目を見る他、攻撃をしすぎると命の危険もあります。

●世界観のおさらい
 かつて世界の均衡を保っていた6人の精霊たちはあまりの退屈さに人類を生み出し、それを繁栄させた。だが、人類を生み出す過程の中で邪悪な力を持つ魔獣も生み出してしまい、やがて史に残る大戦争が起きてしまう。瘴気により荒廃してしまった跡地から逃れるべく人類は地底へと生活圏を移動した。
 そう願った精霊が導いてくれた際に偉人が受け取ったとされる高純度の精霊石を用いた5つの疑似太陽により、まるで地上にいるような生活を送っている。のちにその疑似太陽に惹かれるように人々は巨大なコロニーを築き、5つの国が出来上がった。
 人類は精霊に最初に生み出された種族であるため、精霊石の魔力を浴びつつ魔獣の灰を食べながら生きている。

●前回までのあらすじ
 大型魔獣を討伐したことによりイレギュラーズはA級の冒険者として扱われております。
 この世界を統べている精霊の一人、【闇の精霊】オプスキュティオと交流を行ったり様々な調査を行った上で、イレギュラーズは『火焔の国 イグニスヴール』を襲った【火焔の精霊】イグニスヴールを取り押さえました。
 しかし、イグニスヴールの証言により三精霊が【光輝の精霊】リュミエールに取り込まれてしまった事実が判明しました。
 現在はオプスキュティオがイレギュラーズを利用してリュミエールの悪事を止めようと動いています。

 前回の依頼はリュミエールの生み出した強力な魔獣の討伐でした。
 討伐は成功しましたが、討伐中にオプスキュティオが在する常闇の塔へリュミエールの襲撃が入り……。
 ——また、イレギュラーズはリュミエール王国より罪人として扱われています。

●関連シナリオについて
 当シナリオは以下の連続シナリオと関連しています。
 よろしければ参考程度にしていただけたらと思います。

・『<瘴気世界>災害獣』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4978

●アドリブについて
 本シナリオではアドリブが多めに含まれることがあります。
 アドリブがNGの場合、通信欄かプレイングに一言ご記載いただければ幸いです。

  • <瘴気世界>消えた元冒険者完了
  • NM名牡丹雪
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月09日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女

リプレイ

●世界の端っこ
「――っってぇな。くそ、何がどうなった」
 目を覚ましたラナードは、全く見覚えのない場所を見渡しながら頭を押さえた。
 数メートル先ですら視界が曇るほど濃度の高い瘴気と、本当に何も存在しない平面だけがただ続く空間を見て、ここが普通の瘴気世界ではないことを理解する。
「確か俺はあの塔で……いや、ここに来る前後の記憶が曖昧だ」
 境界図書館への帰還を試みるが、能力は案の定発動せず。
 この世界の出身者にとって猛毒ともいえるだろう高濃度な瘴気の中で、彼は歩き回ることを余儀なくされてしまうのだった。

 ――畜生、あいつ等が助けに来てくれるまで待つか?
 ――いや、助けに来る保証なんてどこにもねぇし
 ――てか俺があいつ等を倒さねぇと
「――……? 俺今、何を考えた?」

「完全にリュミエールに遊ばれてるね。ここも絶対罠だと思う」
 方向感覚が狂ってしまいそうなほど濃く視界を悪くする瘴気の中で、『神は許さなくても私が許そう』白夜 希(p3p009099)は小さく呟いた。
 鼻下をスカーフで巻いて、できるだけ瘴気を吸い込まないよう工夫しているが、少し息をするだけで器官に痛みが伝わる。今まで何も害を及ぼさなかった瘴気という毒素が、突然自分たちに牙を剥いているのである。
「ラナードぇ、何回俺たちに世話賭けさせりゃ気が済むんだ?」
 瘴気に軽く咳き込む『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)がそう言いたくなるのも仕方がない。行方不明になった某境界案内人は、境界案内人になる前もなった後も幾度となく迷惑をかけているからだ。
 そう思えば、この依頼はとんだ“貧乏籤”である。
「瘴気か。確か伝承に曰く、俺の故郷は瘴気で滅びかけた話がある」
 アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は瘴気について考えていた。
 この世界の精霊と瘴気の在り方。それらは事前にマリアンヌや希から聞いていたが、害のある瘴気から生まれる魔獣の副産物を食べて生きているのも不思議な話である。
 そして、魔獣が瘴気から生まれるということは、この瘴気の中でも魔獣の出現を警戒する必要があるのだ。
「それにしても、少し見ない間に随分と様変わりしちゃったみたいで」
 過去に闇の精霊と面識がある『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は、久しぶりに訪れた瘴気世界の現状にそう呟いた。楽観的でどこか短絡的でもあったオプスキュティオが彼女のことを気に入っていたことは間違いない。
 そんなオプスキュティオは、いつの間に増えた火焔の精霊や案内人と仲良く迷子だ。
「さあて、姿を消した大きい迷子たちを捜しに行こうか?」
 ルーキスはそう言いながら、ファミリア―で召還したコヨーテのような小型の狼を瘴気の中に解き放つ。素早く動くそれは五感を共有し、大きな迷子を捜すための目となるだろう。
 視界が非常に悪い中で人探しをするには、これでも足りないくらいだ。
「そっちの方はどうだい?」
「まだ、もう少し待って」
 広い空間を大移動するのに馬車は非常に便利であり、無駄に動き回って息を切らし大量の瘴気を吸わない手段としてもかなり有効と思える。だが、手掛かりが薄いまま馬を走らせれば、逆に自分たちが迷子になってしまう。
 希は馬車の中で迷子の位置に当たりを付けるべくタロットカードを捲っていた。
「中央に死神、その近くに愚者……少し離れたところに正義と吊るし人?」
 死神と愚者はリュミエールを、正義と吊るし人はラナードを示しているだろう。
 今の状態で悪い意味を持つ死神に近付くのは野暮以外の何物でもないが、目的であるラナードの救出に背に腹は代えられない。希はすぐに馬車を出発させる準備を始めた。
「……アイツが持ってた解毒剤、サンプルに貰っときゃよかったか?」
 少し立ち往生している時間、世界は瘴気について調べていた。
 結論からしてここの瘴気が自分たちに今更害を及ぼすのは、『濃度の高さ』である。
 瘴気自体に毒性があったことは間違いないが、今まではラナードのような現地人に害がある程度の濃度しか発生しておらず、この世界の人間とは根本から違う上、強靭な身体を持っていたイレギュラーズに害は見られなかった。
 しかし、光輝の牢獄と呼ばれるここに存在する瘴気濃度は今までの数十倍にも達しており、それがイレギュラーズにすら害を与えている理由である。
「とにかく長居は無用だな。さっさと見つけてさっさと帰ろう……てか帰りたい」
「馬鹿なこと言ってないで、馬車の用意ができたよ」
 丁度、馬車を出発させる準備の整った希が全員に馬車へ乗るように促し、一同はラナードが居ると思われる地点まで向かうのだった。

●光輝の人形
「もう随分馬車を動かしたと思うが、まだ見えないのかい?」
「こうも視界が悪いとね、ラナードも無事なら移動してると思うし……」
 数メートル先すら曇る瘴気の中、少し動かれるだけでその姿は見えなくなるだろう。
 そんな中で馬車を動かし暫くの時が経った。進む先からふと声が聞こえてくる。
「――誰か、そっちにいんのか?」
「!」
 聞き慣れた境界案内人の声に、希は馬車を停止させる。
 ラナードの足音は馬車の走行音でかき消されていたが、どうやら逆に馬車の走行音をラナードが察知して近付いて来たらしい。
「なんだお前らか、迎えに来てk――」
 馬車の正面には警戒して大剣を構えたラナードが居たが、馬車から下りた希の姿を見て大剣を下ろし……希の拳がその顔面に炸裂した。その顔面が一瞬歪みを見せ、まるでスローモーションに間抜けな表情を晒したラナードは、しこたま身体を回転させて嫌という程地面に叩きつけられることになる。
「よし……」
「けほっ……おいてめぇ、何がヨシだ!?」
 ごく普通の一般人であれば当然これでKO間違い無し。それでも気絶しないのは彼が元冒険者だからだし、希も手加減した――多分。
「ほら、偽物の可能性もあったし? ……なんか殴りたい気分だったから」
「納得いかねぇよ畜生! ……けほっけほっ」
 反応と憎まれ口は、知る人ぞ知るラナードである。
 それに、瘴気の中でイレギュラーズよりも数倍辛そうにしている様子から、紛れもない本物だと判断して問題は無さそうだ。
「くそ、瘴気のせいで、けほっ……身体が上手く動かねぇんだ。イヴが外から繋げてくれるんだろ? 馬車に乗せてくれ」

 ——目の前の冒険者たちを殺しなさい

「ラナード殿、帰還したいのは同じなのだが、実は同じく行方不明になってる精霊がまだ見つかっていない」
 まだこの空間に居るかもしれない、そして放っておけばリュミエールに取り込まれてしまう可能性を危惧したアーマデルは、少し困り顔で言う。一度境界図書館に帰還すべきか、このまま精霊を探すかは分岐点であり、どちらも賭けなのだ。
「ルーキスの使いは何か見つけてないのか?」
「手掛かりは無いな。広い上、あまりにも視界が悪すぎるね」
 世界とルーキスのそんなやり取りの最中、ラナードの身体が突然ふらりと揺れた。
「……第一、もうリュミエール様に吸収されてる可能性だって」
「ラナード殿?」
 次の瞬間、ラナードの手にしていた大剣がアーマデルの首を狙って振り下ろされた。
 隙を付いた完全な不意打ち――の筈だったが、実は少し前からラナードの殺意に気付いていたアーマデルは、その刃を見切り、受け止める。
「リュミエールサマ、ノ、タメ、ニ……」
「ラナード、とうとう壊れちゃった?」
「挙動がおかしい時はとりあえず斜め四十五度くらいから叩いてみると改善が見られるってイシュミルが――」
「それって練達の変なハコの話じゃないか?」

 何故かイレギュラーズに奇襲を図ったラナードだったが、アーマデルが斜め四十五度からコツンと頭を叩いた瞬間に希が放った怒りの鉄槌により、見事にKOされたのは言うまでもなく、程なくして馬車の中で世界の治療を受けていた。
「案内人がトチ狂ってどうするのさ――状況がわかってるのに気絶しちゃって」
 ルーキスが軽くラナードの頬を叩くが、暫くは起きる気配がない。
 瘴気によるダメージと精霊の手掛かりが全くない現状を見るに、一度境界図書館に帰還することが先決にも思えた。それは全員同じなのだ……が。
「これ以上、無暗に探すのはラナードの負担が大きいだろう。オプスキュティオには悪いけど、ここは一旦――」
 ルーキスの開いた口がそこまで言ったところで止まり、顔色が変わる。
 座って静かにしていたアーマデルも何かゾワッとするものを感じたらしく、目を見開き馬車を走らせる方角と逆、つまりは来た道を向いた。
「なんか、来る」
 馬車の中でも絶えず精霊の行方を捜索していたルーキスとアーマデルは、何か得体の知れないものを察知した。その方法はお互い違えど、伝わる感覚は同じもの。少し遅れて、希と世界もそれを感じ取った。
「物凄い殺気が、近付いてくる?」
 どうやらここに来て最悪のカードを引いたらしい。
 以前、高位な冒険者を沢山狩り、一層に力を増していた『光輝の精霊』リュミエールは、操り人形にしたはずのラナードがあっさりイレギュラーズに回収されてしまったと見るや、その手で始末しようと動き出したのである。
「この状況で相手をするのは得策とは言えないな、一旦帰還する方針で良いね?」
 もとよりそう言いかけていたルーキスの言葉に全員が頷く。
 巨大な殺気がみるみる迫る中、マリアンヌから渡されていた帰還のスクロールを彼女が破き去ると、一同は光に包まれその座標から消滅した。

成否

成功

状態異常

なし

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