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シナリオ詳細

<グラオ・クローネ2021>チョコで商売 蟻が襲来

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●チョコレートを狙って
 海洋の『大号令』に端を発する豊穣の発見は、豊穣に様々な大陸の文化をもたらすことになった。
 もっとも、それをどれだけ受容しているかは人により、あるいは地域により様々であろう。だが、水都(みなと)領朝豊(あざぶ)の町の商人外村 伝衛門(とむら でんえもん)は、グラオ・クローネの風習に商機を見出した。
「大陸では、この日に大切な人に『ちょこれいと』なるものを送るそうでっせ!
 ちょこれーとはうちでたっぷり用意しますさかい、これを機会に大切な人に思いを伝えてみまへんか!?」
 伝衛門は年が明ける前からチョコレートの生産体制を整えて、年が明けてからは一ヶ月ほど、朝豊をはじめとする水都領内で入念に宣伝を行った。その甲斐あって水都の人々の多くが――多少、不正確ではあったとしても――グラオ・クローネの風習に興味を抱き、伝衛門の元には数多のチョコレートの注文が舞い込んだ。
 そして二月十四日もあと数日となり、チョコレートの生産も終えて後は売って回るだけとなったところで、予期せぬトラブルが伝衛門を襲ったのだった。

 朝豊に向かう街道を、体長一メートル半ほどの蟻の群が行列となって、脇目も振らずに進む。
 その蟻の群が異様だったのは、旅人にも動物にも、その他の餌になりそうな物にも全く目をくれなったことだ。目的の物が朝豊にあるかのように、巨大蟻達はただ進んでいく。その光景に人々も動物も不気味な物を感じたのか、ただ静観するだけでちょっかいをかけようとするものはいなかった。
「何やてえ!? 巨大な蟻がぎょうさんここに向こうてるやて!?」
 一方、その報を聞いた伝衛門は直感的に悟った。巨大蟻達は、朝豊にあるチョコレートを狙っているのではないかと。そうであれば、獲物になりそうな物に目もくれずに朝豊に向かっている理由の説明が付く。
(こうしてはおれへん……かと言うて、領主に頼っても動いてもらえるかさえ怪しい。となれば……)
 巨大蟻にチョコレートを奪われては、商売どころではなくなる。いや、朝豊に入ってきただけでも、グラオ・クローネどころではなくなるだろう。下手をすると、巨大蟻を招き寄せたとして責任を取らされるかも知れない。
 頼るべきは神使。伝衛門は、すぐさまそう判断した。

●チョコを守って、チョコをもらおう
「うーん……よくチョコレートを嗅ぎつけたものだとは思いますが、それはさておき」
 ギルド・ローレットにて『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)は首を捻る。だが、そうしてばかりもいられない。伝衛門からの依頼を受けた以上、巨大蟻を退治するイレギュラーズを送らねばならないからだ。
「ともあれ、今回の依頼はこの巨大蟻を朝豊に入れずに撃退することです。
 数がおよそ百と多くて厄介ではありますが、一列に並んでいて動きも素早くないため、上手く各個撃破すれば勝てるはずの相手です。
 通常の報酬に加えて、商品のチョコレートの一部を付けてくれるそうなので、よろしくお願いします」
 イレギュラーズ達に、深々と頭を下げる勘蔵。だが、イレギュラーズ達はこの時点では知らない。勘蔵もそのおこぼれに預かるつもりでいることを――。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回は、<グラオ・クローネ2021>のうちの1本をお送りします。
 チョコレートを狙って朝豊に進行しようとする、巨大蟻の群を食い止めて下さいますようお願い致します。

●成功条件
 巨大蟻の朝豊進入阻止

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 朝豊に通じる街道。時間は昼間、天候は晴天。
 朝豊まではそこそこ距離があり、例え蟻に通り過ぎられても即依頼失敗とはなりません。
 街道の両側は草原であり、遮蔽になるものはありません。
 巨大蟻は前方を邪魔されないか攻撃されるまでは戦闘行動を取りませんので、戦闘時の初期配置はイレギュラーズの自由とします。
 また、環境による戦闘へのペナルティーはありません。

●巨大蟻 ✕約100
 いわゆるジャイアント・アントです。嗅覚が尋常でなく発達しており、伝衛門の用意したチョコレートを嗅ぎつけ、朝豊へと進行を始めました。
 全長約1.5メートル。攻撃力、生命力、防御技術が高くなっており、命中はそこそこ、回避は低めです。
 攻撃手段は、顎による噛み付きと尾端の毒針です。
 数は100近くいますが、長蛇の列になっており動きも素早くないため、戦い方次第では一度に戦う数を抑えられるでしょう。
 また、これは勘蔵は知らなかったのですが、巨大蟻は倒される度に周囲に警報フェロモンを残し、それが一定以上蓄積されると危険と判断して退却します。
 そのため、実際に倒す必要があるのは30匹強となります。

●報酬のチョコレート
 伝衛門の用意した商品です。味はオーソドックスなものです。
 商品の一部なので、あまり無茶な量はもらえません。
 また、この報酬はあくまでフレーバーです。システム上は報酬は通常と変わらず、アイテムとしても発行しません。
 予めご了承下さい。

●同行NPC
・羽田羅 勘蔵(p3n000126)
 戦闘能力は一切ありません。
 特に皆さんから働きかけがなければ、皆さんの後方で戦況や依頼の成否を確認し、報酬のチョコレートのおこぼれに預かるだけですので、基本的に描写されることはありません。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <グラオ・クローネ2021>チョコで商売 蟻が襲来完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
アクア・フィーリス(p3p006784)
妖怪奈落落とし
シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
紫煙揺らし
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

サポートNPC一覧(1人)

羽田羅 勘蔵(p3n000126)
真昼のランタン

リプレイ

●巨大蟻の行列を前にして
「アリだー!!!!!!! 酸だー!!!!!!!!! ……あ、酸は吐いてこない? そうでしたか」
 朝豊に迫る巨大蟻の群れを見て、『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)はテンション高く叫び、一人ツッコミを入れた。
 実際には、ヤマアリ亜科に属する蟻は蟻酸を吐いてくるらしいが、今回の巨大蟻はそうではないのでそれはさておく。
「アリもこんな大きいとちょっと気持ち悪いかも……虫苦手なんだよ。小さくてもわらわら集られたりしたら嫌だけど……」
「わたしも……虫が苦手。でも、今は……そうも、言ってられない。
 チョコレートを、食べられる方が、嫌……絶対に、守る……。アリなんかに、チョコレートは、あげないの……!」
「そうだよね、豊穣の人たちには珍しそうなチョコレートを守るためにがんばらなきゃ!」
 『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)と『闇と炎』アクア・フィーリス(p3p006784)は、共に虫が苦手でありながらも、いや、むしろそう言う共通点があるからこそ、巨大蟻からチョコレートを守ろうと意気投合した。その動機には、若干の差異があるように思われるが。
「この大きさの蟻が行進している光景はさすがに壮観ね。
 百匹の相手は憂鬱だけど……果たして被害がチョコレートだけで済むか怪しいものだし、ここは丁重にお引き取り願いましょう」
 自分の身長と同等以上の大きさの蟻が、延々と列を成している。その光景に『舞蝶刃』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)は深く溜息をついた。だが、アンナが危惧するようにこれだけの巨大蟻が町に進入して被害がチョコレートだけで収まるかと言えば、極めて怪しい。そもそも、依頼としてチョコレート自体を守らねばならないわけであるが。アンナは気を取り直して、巨大蟻達の接近を待つことにした。
「巨大な蟻すらも狙うチョコって言うと、なかなかの商売文句になりそうなもんだが……」
 だが、街に混乱をもたらしたとなれば宣伝文句には出来ないのだろうなと考えつつ、『スモーキングエルフ』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)は煙草をくゆらせる。
(まぁ、俺達が依頼を完遂さえすれば、『巨大蟻すらも誘き寄せた”かもしれない”チョコ』として売り出す事はできそうか。
 ……なんにせよ、被害が出る前に追い返してしまうとしよう)
 ふぅ、とシガーは煙草の煙を大きく吐き出しつつ、じっくりと戦意を高めていった。
「世界中にチョコが溢れかえるこの時期にあえて蟻達が狙ってくるなんて、実はスゴいチョコとか?
 昆虫界の甘物マイスター・蟻さえも欲しがる逸品、伝衛門印のちょこれいと! 売り文句はバッチリ!」
 豊穣にチョコが溢れかえっているかどうかはともかくとして、『ハイパー特攻隊長!』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は、巨大蟻がわざわざ狙ってくるという伝衛門のチョコレートに興味津々だ。
(輸入ではなく自家生産に踏み切る思い切り、いいね! 蟻の嗅覚が凄いのか、惹きつけるだけの品が凄いのか、そこは分からないけど、興味はでてきた!)
 それは、ヒィロとコンビを組んで行動を共にしている『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)も同様だ。
「でも、肝心のチョコが無くなっちゃったら、元も子もないからね! 頑張るよ!」
「よーし。頼れるところ、見せちゃおっかな!」
 チョコレートを巨大蟻から守るべくヒィロが意気込むと、それに応じるように美咲も意気を高めた。
(……チョコレートの匂いを嗅ぎつけるなんで、凄い嗅覚だな。百もいる巨大蟻に襲われたら、大変なことになりそうだ)
 『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)は、巨大蟻が朝豊にあるチョコレートの存在を嗅ぎつけたことに驚きを禁じ得ない。そして、眼前の列をなしている蟻の全部に襲われたらと想像し、背筋をゾッと震わせた。だが、行列で進行してくるのを上手く利用して撃退れば、そんな事態は避けられるとも考えるのだった。

●破式魔砲、炸裂!
 巨大蟻は、イレギュラーズの姿を近くに認めても、何ら変わった行動を起こすことなく列も乱すことなく、朝豊へと進み続ける。どうやら、目の前を塞がれるか攻撃されるかしなければ、攻撃してくることはない様子だ。ならばとイレギュラーズ達は、有利な状況で戦えるようにと巨大蟻に仕掛けるまでに布陣を整えていく。

「今回は美咲さんがすぐ側にいるから、いつも以上に張り切っちゃうよ!
 ――それと、美咲さんがいつも以上に危険な前寄りにいるから、絶対守るんだ!
 これが美咲さんに捧げる、ボクの愛のカタチ! えへっ」
 巨大蟻の真正面に躍り出たヒィロは、裂帛の気迫を込めた咆哮と共に、荒ぶる闘志を怒濤の如く発した。闘志は直線上に迸り、行列になっている巨大蟻を次々と射貫いていく。
「私の隣は特等席よ。一番派手に炸裂するとこ、みせてあげるから」
 突然闘志の波を叩き付けられて硬直したように動きを止めた巨大蟻の列を狙い、美咲はヒィロの横に並ぶと通常の魔砲よりも魔力をより収束させ、貫通力を高めた魔砲を放つ。迸る魔力は猛然と突き進む太い柱となって、巨大蟻の列を貫いた。
「ダメージスコアアタックなら、ローレットレコード叩きだせるかも……とは言え、ワンパンとはいかないか」
 ヒィロが作った隙を付いて美咲が大技を繰り出すのは二人の普段からの連携だが、今回は普段以上に高効率で大ダメージを与えられる状況であった。しかし巨大蟻は外骨格をひしゃげさせたり体液を外骨格の隙間から漏れ出させたりしながらも、まだ倒れたりはしない。もっとも、巨大蟻の生命力が高いことは事前に予想されており、一撃で倒せると思うほど美咲は巨大蟻を甘く見てはいない。あとは、頼れる仲間達が仕留めてくれるはずだ。
 そして、ヒィロと美咲の攻撃によって、巨大蟻達の雰囲気はガラッと変わった。イレギュラーズ達を、敵と認識したのだ。
「ここから先は通行止めよ。諦めて他の餌を探すことをおすすめするわ」
 巨大蟻はヒィロに殺到する様相を見せたが、それよりも早くアンナが動いた。予め行列の横を取れる位置に待機していたアンナは、行列の横合いから急襲し、掌に浮かべた闇の月の黒い光で巨大蟻達を照らしていく。闇の月の光に照らされ、運命を歪められた巨大蟻六匹が死へと導かれていった。
「チョコレートは、わたしたちが、食べるの……邪魔、しないで……!」
 身体から放たれる漆黒の炎をゴウ、と普段よりも強くしながら、アクアがアンナに続く。普段は世界への憎しみにより燃え上がるこの炎だが、今回はチョコレートを奪うなら殺すという殺意によって、燃え盛っていた。
 アクアは、殺意を込めて絶望の海の歌を歌う。昏い歌声は呪いとなって、アンナが倒した個体の後ろにいた巨大蟻三匹を呪いで蝕み、その命を奪った。
「巨大蟻の行列、近付いて見ればなかなか立派だな……でも!」
 アクアが倒したものよりもさらに前方にいる巨大蟻達に、側方からイズマが仕掛けた。剣を横薙ぎに大きく振るい、行列の中で吹き荒れる嵐となる。イズマの剣は三匹の巨大蟻の身体を次々にズバズバと斬り裂き、地に伏せさせた。百体いてもこれなら! と言う勝機がイズマには見えたように思われた。
「美味しい物に惹かれただけっていう蟻には悪いが、此処を通すわけにはいかんのでね」
 巨大蟻達のうちヒィロの闘志と美咲の魔力の柱を受けたものは残り三匹となっていたが、シガーは巨大蟻に若干の同情を感じつつも、『精霊刀-熱砂-』でその三匹を滅多斬りにした。外骨格をズタズタに斬り裂かれた巨大蟻達は、体液を漏らしながらガクリと崩れ落ちた。
 残る巨大蟻達は、最も近くにいるシガーに襲いかからんとする。だが。
「鼻のきくアリンコたちめ! オイラ達がいるからには、せっかくのチョコレートは渡さないぞ!」
「何匹でもかかって来いやぁ!!!! 『グラオ・クローネ』持ってきたぞ! チョコが欲しいんだろうがー!!」
 チャロロとハッピーは、シガーのさらに前方に進み、ヒィロの闘気を受けていない巨大蟻達の注意を手分けして引き付けた。そして真っ直ぐ美咲とヒィロの方へと進んでいく。すると巨大蟻達も、仲間の死体を乗り越えて一直線に前進する形となった。

 巨大蟻達に群の動きを統率するリーダーがいれば、あるいは、巨大蟻のそれぞれにチャロロやハッピーの誘引にかからないだけの知性なり抵抗力なりがあれば、戦況はまた違った展開を迎えていたのかも知れない。しかし、巨大蟻はいくら巨大になっても所詮蟻であることには変わらず、イレギュラーズの戦術から逃れることは出来なかった。
 再度、ヒィロが直列に並んだ巨大蟻達に真正面から闘気を飛ばしてぶつけて作った隙を衝いて、美咲が魔力の柱で一気に貫く。そしてアンナ、アクア、イズマ、シガーに加えて今度はチャロロとハッピーも横合いから攻撃を加えれば、倒された巨大蟻は三十に及んだ。
 そして、その時点で巨大蟻達は戦闘を止めた。ピクリと何かに反応したかのような様子を見せると、逃げるように戦場から去っていったのだ。
 イレギュラーズ達は知る由もなかったのだが、巨大蟻達は倒される度に人間にはわからない警戒フェロモンを発していた。そして、倒された数が三十に及んだ頃には、警戒フェロモンはこれ以上戦っていては危険だと巨大蟻が判断する域にまで濃密になっていた、と言うわけである。
 それを知らないイレギュラーズ達は、巨大蟻達の急な撤退に首を捻ったが、これ以上巨大蟻と戦わずに済む上、依頼は達成されたのだと喜んだ。

●伝衛門の店の前にて
「いやぁ、おおきに! ホンマ、助かりました! ほな、これが報酬です」
 朝豊に戻ったイレギュラーズ達は、伝衛門の熱烈な感謝に迎えられると共に、報酬の金銭とチョコレートを渡された。
「伝衛門さん、お店で一休みさせてもらってもいいかしら?」
「え? そらかましまへんけど……?」
 チョコを受け取った美咲の提案に、伝衛門は怪訝そうに首を捻る。だが伝衛門はすぐ、美咲に感謝することになる。

「はい、ヒィロ。あーんして?」
「あーん……美味しいよ、美咲さん! 美咲さんも、はい、あーん!」
「ふふ、ありがと。あーん……美味しいわ、ヒィロ」
 伝衛門の店の前に用意された長椅子に座り、美咲とヒィロは笑顔でチョコを互いに食べさせあった。


(全滅するまで止まらない相手ではなくて、本当にホッとしたわ……)
 アンナは別の長椅子に座り、静かにチョコレートを口にしながら一息ついた。
「やったぁ!!!!! チョコレート!!! 美味しいよおっ!!!!!!」
 アンナとは対照的に、ハッピーは大声で叫びながらストレートに感想を叫ぶ。
「あぁ、甘味がしみわたる……!」
 じーん、と打ち震えるようにして、チャロロはチョコレートを味わっている。機械の身体であっても味覚はあり、チャロロは甘い物が大好きなのだ。
「やった、チョコレート、チョコレート……! 頑張って、良かった……!」
 幸せそうな笑顔でピコピコと耳を動かしながら次々とチョコレートを頬張るアクアは、小動物のように愛らしかった。
(……んー、美味しい! 戦った疲れが癒やされるようだ)
 イズマは豊穣でチョコレートがどう発展したかと期待したが、伝衛門の用意したチョコレートは、大陸で流通しているものと大きく変わらなかった。それもそのはずで、伝衛門は大陸から伝えられたチョコレートをそのまま再現したのだ。豊穣でチョコレートが発展するとなれば、それはこれからの話になるだろう。
 だが、それでイズマががっがりしたかというとそうではなく、戦いの後にはむしろ慣れ親しんだ味の方が疲れを癒やしてくれるように、イズマには思えた。
 イレギュラーズ達が思い思いにチョコレートを堪能する様子は、人々の耳目を引いた。
「これは、一体……?」
「へえ、大陸では『ぐらお・くろおね』と言いまして……」
 店先を通りがかった人々に不思議そうに尋ねられると、伝衛門は都度、今日は大陸では大切な日にチョコレートを贈る日であること、イレギュラーズ達は依頼の報酬として受け取ったチョコをここで楽しんでいること、美咲とヒィロは互いに大切な相手としてチョコを贈り合っている――と言うよりも、食べさせ合っていることを、丁寧に説明した。
 その話は噂となり、伝衛門の店先にはチョコレートを嗜む神使を一目見ようとする人々と、チョコレートを買って大切な人に贈ろうとする人々が殺到した。伝衛門の用意したチョコレートはすぐに完売御礼となり、イレギュラーズ達の姿は後々まで朝豊の人々の語り草となった。
 アンナ、チャロロ、アクアには子供のような愛らしさが感じられた。凜としたイズマが甘味で癒やされるのも絵になっていた。幽霊であるハッピーがチョコレートを味わうと言うのも、それはそれで趣深いものがある。しかし何より、美咲とヒィロが互いにチョコを食べさせ合う姿は多くの人に「尊み」を感じさせ、朝豊の多くの人々が二人のことを日記に記したり句に詠んだり、果ては絵に描いたと言う。

「――なるほど、皆がチョコレートを食べる姿が最大の宣伝か」
 伝衛門の店から離れたところで煙草を飲みながら一部始終を見ていたシガーは、美咲が伝衛門の店で一休みしたいと言った意味を完全に理解していた。
 他のイレギュラーズ達はチョコレートを美咲達と一緒に食べることにしたが、シガーは持ち帰ることを選ぶと、煙草を売っている店を見つけて購入して、ここで喫煙していたのだ。
(さあて、これを――)
 持ち帰ったチョコを渡すつもりの相手の姿を、シガーは心に思い描く。すると、不思議と胸の辺りが温かくなってきたように、シガーには感じられたのだった。

成否

成功

MVP

美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆様のおかげでチョコレートは巨大蟻から守られ、朝豊の人々は初めてのグラオ・クローネを楽しむことが出来ました。それだけではないような気もしますが、それはさておき。

 MVPは、大火力を高効率で巨大蟻の行列に叩き付けて、巨大蟻の撤退を早めることに寄与した美咲さんにお送りします。
 伝衛門のチョコの宣伝を気にかけて下さったのも、高ポイントでした。

 それでは、お疲れ様でした!

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