PandoraPartyProject

シナリオ詳細

今宵は闇オークション。商品はそう、荒くれ者です。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ステーキハウスにご招待
 皆様、初めまして。僕は闇のバイヤー、コンラッド・ララーと申します。そして、此処はステーキハウスになります。今日の僕はウエイターというものです。黒縁メガネをつけ、白いシャツの上にベストを身に着け、漆黒のパンツ、疲れにくいホールシューズを履き、気配や殺気を殺した獣とともにゲストに最高の時間を提供しようと思っております。おや、ベルの音が聞こえました。もう、時間なのですね。どきどきしてきました。
「さぁ、行きますよ」
 深呼吸し、僕は笑顔でゲストのキドー (p3p000244)様とグドルフ・ボイデル (p3p000694)様をお迎え致します。
「いらっしゃいませ。キドー様、グドルフ様、お待ちしておりました」
 優雅にお辞儀をし、僕は素早く、彼らをテーブルに案内しながら彼らの商品価値を判断致します。商品価値が無ければ僕はこのまま、ウエイターの役割をこなし、暗殺者の邪魔をすることなく、立ち去ろうかと思っております。どうでしょうか、彼らは今回のオークションに相応しい商品となるのでしょうか。僕はとても、ワクワクしています。
「おう、懸賞のただ飯にしては良い店じゃねえか」
 キドー様は満足そうにグドルフ様を見つめ、にっと笑いました。キドー様とグドルフ様は暗殺者の存在に気が付いていないようです。
「ああ、イイねえ。あとはおれさまが気に入る酒があるかどうかだぜ?」
 グドルフ様が僕を試すような視線を向けてきました。キドー様はにたにたと素敵な顔で笑っています。
「ええ、アルコールはすべて、最高級のものを準備しております」
「ほーん。んじゃ、持ってこいよ。うめえ酒を」
 おや? 笑うグドルフ様、歯が足りません。一本だけでしょうか、抜けています。至極、良いですね、屈強そうなグドルフ様は奴隷向けでしょうか。傲慢で強情そうな心を支配する。これぞ、喜びではないでしょうか。ああ、素晴らしい。とてもへっちな方だ。
「勿論、俺の分もよろしくな! 飲み方はハーフロックで」
 キドー様が人差し指を立て僕を見つめました。僕は頷き、ウイスキーをハーフロックで準備し、テーブルに置きました。ああ、彼も素晴らしい。荒くれ者らしい口調にピアス、赤目のゴブリン。キドー様はそうですね、美食家の□□□様にぴったりかもしれません。特に彼女は赤目を愛しておられる。
「乾杯といくぜ!」
 グドルフ様の雄叫びのような声にキドー様が持ち上げたグラスをグドルフ様のグラスに叩きつけました。
「かぁー、最高だぜ」
 声を揃わせ、げらげらと笑っています。僕は少し遅れて分厚いステーキをテーブルに運びます。
「お待たせ致しました、ステーキでございます」
「はっ、でっけえステーキだな、おい!」
 ナイフで切ることもなく、グドルフ様はフォークですくうようにステーキに齧りつきます。ぼたぼたとソースが滴り落ちていきます。
「うんめえ! ソースは玉ねぎってやつか!」
 キドー様もフォークでステーキを突き刺し、夢中でステーキに噛みついています。僕は時計を見上げました。そろそろでしょうか。
「──!?」
 一瞬の出来事。室内の明かりが消えました。やはり、ショータイムのようです。
「ああ、速いですね……」
 ショックガンの銃声が二回聞こえ、僕は呟きます。パッと明かりがつきました。見れば椅子から倒れ、白目を剥くグドルフ様とキドー様の姿がありました。暗殺者はサバイバルナイフに持ち替え、グドルフ様とキドー様に近づいていきます。僕は笑いました。僕は彼の前に立ち、両手を広げ首を傾けます。
「ねぇ? 此処で始末するより良い方法がございますのよ」
 ええ、そうです。僕は楽園に彼らを招待するのだ。

●闇オークションへようこそ
 熱狂的な闇の遊び。人々は地下室に集まっている。
「さぁ、皆様。お待ちかねの荒くれ者のオークションがもうすぐ始まります!!!」
 白色の燕尾服を纏った人物が低い声で笑い踊る。
「今回はなんと、ローレット・イレギュラーズをご準備出来ました!!! それも□人!!! それも、珍しいことに男です! 鳥籠の中の鳥は翼を折られ、皆様の前で憐れに泣き叫ぶことでしょう!!」
 興奮した声。人々は唸り、吼え、笑う。傷だらけのイレギュラーズが四つん這いになり、首には太い首輪、その先には太い鎖が繋がれている。それぞれの鎖を握るのは3Mほどの大男だ。同じ顔のウサギの仮面を被り、スーツを着こなしている。
「ああ!! ぼろぼろで虚ろな目……あれは何日も拷問された目よ!!! ああ、最高じゃないの。見て、あの子! 頬から血が流れてるわ……どうしましょ、とっても美しいわあ!」
「おいおい! ローレット・イレギュラーズってすごいじゃないか!!! しかも、□人だってさ!! どうやって手に入れたんだろう!?」
「確か、あのゴブリンと山賊を餌にしたって聞いたケド。それにしても、見ろよ、あの恰好。かぁ~~~~、ぞくぞくするよなぁ!! 散々、好き勝手暴れ回った荒くれ者が自由も尊厳も奪われて商品になってるなんてよ!! あ~~~、やばい! 興奮してきた! あいついいなぁ! 俺、あいつの手足を斬って俺の話し相手になってもらおうかなぁ!!! どうよ、逃げられない苦痛は?」
「みんな、みんな、良い目をしているのね……絶望の奥に潜む殺意……美味しそう、とっても美味しそうですわね……そのまま、スプーンで食べてしまいたい」
「かっ! 変態どもめ……私は純粋に奴隷として買おう。くふふふ……ああ、楽しいじゃないか、反抗的な男が私に屈する様は! すべてを私に捧げよ、なんてなぁ??」
 ビールを飲みながら笑う。
「おい、始まるようだよ!!」
 スポットライトが当たり、ローレット・イレギュラーズの荒くれ者達が目を細める。一方で、闇オークションの会場に潜入しているのはローレット・イレギュラーズの女性達である。会場の異様な熱狂と興奮にクラクラしながら、彼女達は金を握り締め……あ、違う。え、ええと荒くれ者達を救うためにどうにか、機会を伺っているのである。

GMコメント

 リクエストありがとうございます、青砥です。今宵、荒くれ者限定の闇オークションが開催されております。思えば、荒くれ者限定ってへっちですよね。どうしよう、目覚めちゃいそう。あ、皆さんも楽しんでくださいね。

●目的
 真夜中の闇オークション会場でぼろぼろになった荒くれ者達を救い、オークションを阻止する。オークションを阻止するので悪依頼になります。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●今回の商品について
 荒くれ者限定で、男性限定。自称、荒くれ者でも何でも商品になれるよ、大丈夫!!! 男性だった場合は選択権なしで必ず、オークションの商品となり、傷だらけのぼろぼろになり本来の戦闘能力は失われ、服の切れ目から肌がチラリと見えたりするかもです。むしろ、へっちに脱がしてもいいかもしれない。性別不詳の方はどうしましょ。オークションの商品になるか、救出班になるか選んでください!!! 性別が無い方もオークションの商品になるか、救出班になるか選んでください!!! きゅ、救出班だからといって油断は禁物ですよ。この依頼に入った時点で……分かるだろう? どうなるか!!

●会場
 地下の会場。映画館のような作りになっている。入り口も出口も施錠されていない。壇上には荒くれ者がいる。飲み物や食べ物が無料で振舞われている。楽しいねぇ~。

●人々
 闇オークションは会員制。此処で買ったものはどんな用途に使っても問題ない。本当に色んな人がいるが戦闘能力はなく、面白いことが大好き。己の好奇心を満たすことがあれば、大人しく座っているかもしれない。皆、顔を隠すことなくオークションに参加している。司会者は勿論、闇のバイヤー、コンラッド・ララーで、別にこの人物も命を懸けてまでオークションの商品を守ろうとはしないし侵入者がいても気にしない。むしろ、何故、救うのかに興味がある。ただし、大男達は拷問官で、戦闘能力は高い。素手で殴り殺せるし、荒くれ者達を武器や盾にするかもしれない。大男達は商品を奪われるくらいなら、自らの手で殺すタイプ。わざと煽るのもいいかもしれない。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 今宵は闇オークション。商品はそう、荒くれ者です。完了
  • GM名青砥文佳
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談9日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
※参加確定済み※
グドルフ・ボイデル(p3p000694)

※参加確定済み※
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
アンジェラ(p3p007241)
働き人
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨
ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に
壬生 京次郎(p3p009489)

リプレイ

●始まりました。荒くれ者オークション!
 どうにか黙っていたが、もう我慢の限界だった。ねえねえ、オークションって何?
「ぎゃああッ!? ちょっと、山賊ぅ!? あっあっあのおじさん、俺にウインクして! どうしよう、荒くれ者なのに女の子になっちゃうぅ!」
 雌犬のようにキャンキャン叫んでいるのは『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)。脳内で薄い本のようにいたぶられ、可愛がられている。妄想によって薄い本がどんどん分厚くなっていく。所謂、イレギュラーズ闇オークション合同誌だ(?)
「ハァ~!? ウッセェわ!! キドーッ! オメー責任取っておれさまの身代わりに買われてこ……んんん~~~! あのオヤジ、おれさまにもウインクしてやがる……くうう~~、くそったれが!」
 ギリギリと歯ぎしりマックスの『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)。
「おおおお落ち着いてくれ! グドルフさん、キドーさん。おい、デカブツ!! 鎖がなきゃ怖くて何も出来ねぇんだろ、知ってんぜ?」
 顔を腫らした『救海の灯火』プラック・クラケーン(p3p006804)が笑う。ミイラ取りがミイラになっちまったが仕方ない、やれることをする。
「なんだよ? くっ殺せなんて……言わねぇぞ?」
 近づいてきたコンラッドを睨み付ける。
「いいね、その強気な表情」
 コンラッドに奇麗な顎クイを決められるプラック。四つん這いで、鎖で、顎クイってすごい。途端にゾグゾクし始める。あれ、新しい扉開きかけてるかも。
「壬生さん、大丈夫か?」
 こっそり、体力と魔力を回復しているのは『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)。ぐったりしている京次郎に声をかける。
「ええ、大丈夫です」
 壬生 京次郎(p3p009489)が顔を上げる。慣れぬ地とはいえ、些か無警戒が過ぎたようでうっかり、穴に落ち、全員捕まってしまった。ただ、不幸中の幸いでキドーとグドルフを見つけることは出来た。京次郎は咳をする。弱ったふりをし、チャンスを伺っているのだ。ちなみに情報収集は既に終えているし、救出班が潜んでいることも理解している。うんうん、優秀だねぇ。

 そして、その救出班の三人は席に座り、様子を伺っている。
「悲しいかな、気分が悪いくらい盛り上がっているね。まったく、人間の性か。困ったものだね」
 『さよならの香りがする』ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)が王子様らしい苦笑をする。
「そうだな。しかしながら、何処を潰しても人身売買は無くならないんだな。これがもし女性対象で、オレの恋人やリーゼロッテ嬢が売り物であったならと考えると……寒気がする」
 『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)が呟く。耳と尾が不愉快そうにピンと立っている。
「それにこのオークションを正当化するような雰囲気も気にくわない」
 アレンツァーは続ける。
「あのぅ──」
 知らない声。
「おや? プリンセスどうしたのかな?」
 俊敏に反応したのはアントワーヌ。
「その子も此処で買ったんですか? とっても可愛いですね」
 女は『働き人』アンジェラ(p3p007241)を眺めた。アンジェラの右足の鎖と古びた服から彼女をアントワーヌまたはアレンツァーの奴隷と判断したようだ。
「ああ、そうなんだ。でも、私は荒くれ者も欲しくなってしまってね」
 笑うアントワーヌ。
「で、オレはその付き添い」
 アレンツァーがつまらなそうに言う。
「あら、買えるといいですね! 私は今回のオークションは見送ろうと思っていましたから」
「その判断、とても正しいと思います。売買するなら、丈夫で文句も言わずに働く私の方が向いていると思います」
 『働き人』アンジェラ(p3p007241)が無表情で言い切ると女の目が輝く。ちなみにこの言葉は有機家具、アンジェラの本音であった。
「洗脳にも成功してるってことですか!? 凄いなぁ」
 女は興奮し飲み物を取りに行った。
「とても上手くいきましたね」
 アンジェラが言った。
「ああ。ありがとな、アンジェラ、ラクロス。しっかし、本当に腐ってやがる」
 アレンツァーが言った。
「私にもお礼を言わせておくれ。だけれど、我ながら嫌なことを口にしていたね。アンジェラ君、ごめんね! 後日、紫電君とともにアフタヌーンティーにお誘いするよ」
 アントワーヌが言い、壇上のお姫様達に合図を送る。

●色々と希望が湧いてきました。
「つうかさ、はじめに牢屋にぶちこまれたじゃんか、そっからこの檀上に運ばれる時によ、観客の誰か知らねえけどおれさまに向かって『グッドスメル!』とか『10番の筋肉の海に溺れたい!』とか言ってよ。 気持ち悪いのなんの……なあ、おめえらは何か言われたか?」
 グドルフが恋バナのように四つん這いの皆に打ち明ける。身体も痛いし、拘束されているし、もう喋るしかないのだ。だがね、侮ってもらっては困る。数時間前。そう、牢獄の中でプラックが主体となり、脱出の相談を行っていた。あとはタイミングだけなのだ。
「自分は巫女の服装に赤ふんどしが似合うって聞こえたな」
 グリムが悪趣味にうんざりしていると、拷問官がグリムの髪に触れ、綺麗な三つ編みを作った。呆気にとられるグリム。
「触んな、クソ男。ああ……あとで絶対ぶん殴る。ベタベタ触ってきやがってほんと気持ち悪い……」
 目の下のクマが濃くなっていく。
「うう……結局はみーんな、売られて開発されちまうんだ! あのぉ、出来れば俺は美人の貴婦人がいいです! 勿論、食肉はナシで! オヤジ、アンタもナシだ!」
 キドーが首輪をかきむしるように握りしめれば拷問官はキドーを鞭で打とうと──
「あ~あ、鞭とかクソダサかよ」
 笑うプラック。直前でぴたりと止まる鞭。拷問官はプラックの顔に鞭を振るった。驚き、口々にプラックの名を呼ぶ荒くれ者達。いいな、そういうシチュエーション。
「大丈夫、無傷だ」
 鼻血を流すプラック。笑っている。苛立つ拷問官。今度は背に鞭を振るった。歪む顔、服は破け、肌に赤を刻む。皆、喉をごくりと鳴らした。何だかへっちだ。
(おかしいな。これ、くっ殺になってねぇ? 誰得だよ)
 朦朧とする意識の中、プラックは見た。
「はいはい、脱出ぅ!」
 突如、キメ顔で宙を舞うキドー。盗賊の手で首輪を外し、拷問官の仮面に爪痕を刻む。
「む、いつもより浅い感じか……まぁ、いいや。鎖は貰っておくぜ!」
 奪った鎖を拷問官の首に巻き付け、ぶら下がりキドーは大きく揺れはじめる。拷問官はキドーを引き離そうとし、掴んだ服を豪快に破った。
「おっふ!」
 いきなりのふんどし姿。でも、キドーは何も気にしちゃいない。博打でスッて身ぐるみ剥がされた事が何度かある。確か、5回。 
「うそでしょ、そんなに?」
 そっちにびっくりするキドー。
「ふふ、お手をどうぞプリンセス。今宵、私と踊ってくれますか?」
 壇上にブーツの奇麗な音が跳ね、アントワーヌが姿を現す。ちょっと笑っている。
「狂っていても舞踏会は華やかだね」
 踊るアントワーヌ。瞬く間に黄薔薇の花が壇上を飾り、楽しそうに拷問官達の胸元に飛び込んでいく。電撃を帯びた薔薇の棘。拷問官は呻き、グドルフを盾にしようとするが間に合わない。
「はは、危険な薔薇に嫉妬してしまうかい?」
 アントワーヌは自らの舞いに傷付きながら、コートを優雅に翻した。拷問官達の胸元には黄薔薇を咲いている。
「とても綺麗だね。そういえば、君達は買えないのかい? その無駄にでかい身体はそこそこ価値がありそうなんだけどな?」
 アントワーヌはウインクし、自らの能力をブーストさせ、身構えた。
「紫電君、お姫様達を任せたよ」
「ああ、勿論だ! 待たせたな、助けに来たぞ」
 まずはプラックに駆け寄るアレンツァー。
「何故、あなたは助けにきたのです?」
 背後からコンラッドの声がした。
「あぁ? 『何故助けるか』だと? 決まっている。"犬にも劣る自称貴族のクソヤロウ共"が気に入らないだけだ」
「はは、手厳しい。でも、それは明確な理由ですね」
「納得してくれて良かった」
 アレンツァーは屈み、持参したピッキングツールでプラックの首輪を素早く外し、瞬時に移動する。
「サンキューな、助かったぜ」
 安堵するプラック。コンラッドの視界に入らないように機材の裏に隠れ、深呼吸。
(あーーー、ほんと、ありがとうよぉぉぉ。怖かった!! アイツらめちゃくちゃ気持ち悪い視線向けんだよぉぉ!! 尻がヒュンとすんだよぉぉ! 寒気やばいんだよぉ!)
 プラックは無言で両手足をばたばたさせているとアンジェラと目が合う。
「あ」
 プラックはひどく赤面したが、アンジェラは真顔だった。
「此処でしたか。プラック様、治させていただきます」
 重傷のプラックを優先するアンジェラ。壇上は騒がしい。
「嬢ちゃんたち、恩に着るぜえ!」
 グドルフは腕をぐるぐると回す。首輪はアレンツァーによって外されている。
「よぉ、クソ共! ようやく、二足歩行になれたぜ?」
 拷問官目掛けてラリアットを決めるグドルフ。耐えきれず、壇上から転がり落ちる拷問官。
「だいぶ痛めつけられたが、戦えねえワケじゃねえ。分かったろ? さぁ、立てよ。やろうぜ、究極のショーを!!」
 顎を引き、挑発するグドルフ。
「救出班が来たのなら、某も動きましょう」
 京次郎がゆらりと立ち上がった。剣豪らしい動き。拷問官はぎょっとする。今まで動かなかった男が急に動いたのだ。異様なプレッシャーに拷問官は震え上がった。ああ、この男はやはり、鬼なのだ、盲目といえども。
「首輪はまだ外れてはいませんが、某にもやれることはあります」
 冷静な声、呻き声を上げる拷問官。凄まじい力。何も分からぬうちに身体が前のめりになり、反射的に手を放してしまう。掌からぽたぽたと血が落ちていく。京次郎が瞬時に鎖を引いたのだ。拷問官はハッとする。京次郎がいない。
「……確かこのあたりにあるはずですが」
 鎖を引きずりながら、壇上裏を探る京次郎。壇上に上がる前、誰かが話していた。触れる麻袋。
「これですね。もう、不覚は致しません。今度こそ、キドー殿とグドルフ殿を含め、全員で帰ります」
 すぐに壇上に戻り、京次郎は叫んだ。
「装備品を取り返しました、受け取ってください」
「俺の装備……!!」
 ふんどし姿で己の武装を探していたキドーが歓喜する。
「ああ、笑えるわ。最高じゃねぇか」
 魔杖を受け取り、グリムは目を細めた。拷問官がグリムを見た。首輪はまだ、外れていない。
「おい、そこのクソにも劣る変態野郎。武器くらいで狼狽えるんじゃねえわ。このまま奪われるのは癪に障るんだろ? なら俺を殺して見せろよ、商品殺してどうなるかは知らんがな。それにさ……お前の攻撃全然痛く無かったんだわ、この貧弱ウサギが。あ~あ、単純って不幸、だな」
 グリムが呆れ顔で掴みかかろうと近づく拷問官に死神の洗礼を手渡す。吹き出していく死霊が拷問官に絡みつく。拷問官は青ざめ、ぽかんとする。身体は痛みだし、伸ばした手はあろうことか止まっていた。
「間抜け面だろ、ほんと」
 グリムは死霊の聖域に身を委ね、笑う。

●拷問官達は必死です
「強いらしいけど何だか、戦い慣れていないね」
 息を弾ませるアントワーヌ。拷問官達の大ぶりな攻撃。
「なんだい? その気の抜けたステップは? そんなんじゃ私はあげられないな! そうか、このタイミングだね?」
 攻撃をかわし、再度、黄金の輪舞曲を贈りつける。身体を抉る薔薇の棘。拷問官達は鼻息を荒くし、アントワーヌは息を吐く。アントワーヌもまた、攻撃の対価によってその身に傷を負っていく。
「嘘だろ。その程度でよく、拷問官を名乗れたな? 俺の方がうまくやれる」
 煽りのグリム。接近してきた拷問官を容赦なく、切り刻んだ。振るい縛ったのは自らのブラッド。攻撃の反動でダメージを受けながら、グリムは血塗れの拷問官を一瞥し、首輪を外してもらおうと駆け出す。
「ラクロス様」
 飛び出すアンジェラ。衝撃に髪を乱し、アントワーヌを拷問官の攻撃から庇いきる。
「すまないね、アンジェラ君……」
「いいえ、大丈夫です、働き人ですから。それに、ラクロス様は攻撃の要です、気にせず攻撃を続けてください」
 アンジェラの言葉に小さく頷くアントワーヌ。
「ならば、すぐに倒れてもらわねばね」
 アントワーヌは拷問官を見上げ、式符を構えればアレンツァーが遠くに見える。
「もう、カノンやエルメリアの二の舞はうんざりだ」
 グリムと京次郎の首輪を外し、アレンツァーは見た。拷問官は壇上で醜く踊っている。
「もっと踊れ」
 アレンツァーは踏み込んだ、片刃の機械剣を手に。
「──紫電一閃【禍】、さぁ、全てを殲滅だ」
 そう唸れば──刀がアレンツァーの生命力の一部を喰らい、拷問官を次々に薙ぎ払う。紅黒く迸る雷光と共に放たれる強力な居合一閃。
「オレは許さない」
 自らの体力を犠牲にしながら、アレンツァーは果敢に拷問官を薙ぎ払い、アントワーヌを見た。アンジェラは皆を回復している。
「さあさあ! 猛毒の蛇が解き放たれたぞ! モタモタしてると地獄へ真っ逆さまだ! 己の身が可愛い子達はさっさと逃げるんだね!」
 毒蛇を召喚するアントワーヌ。毒蛇は口を開け、拷問官の首に食らいつく。大パニックになる観衆。拷問官は口をパクパクし、ばったりと倒れた。悲鳴が花火のように上がる。
「どうした、最期まで遠慮すんなよ? 京次郎、他のヤロウ共を頼むぜ! 居場所は分かんだろ?」
 グドルフが拷問官を投げ飛ばし、技の反動を受ける。
「ええ。グドルフ殿、そちらはお任せします。では、案内致します」
 京次郎が駆け、あとを追うのは。
「しゃああああッ、今度は俺が困らせてやるぞ!」
 目についた絵画をガントレットで破壊しまくるプラックと逃げ惑うスタッフから金品を奪いまくるキドー。
「高そうな時計じゃねえ! へっ、スタッフも豪勢ってやつ!」

「おらおらっ!」
 グドルフが雄叫びを上げ、頭突きをお見舞いする。
「いいねえ、おれさまたちももっと楽しもうぜ!」
 仮面が割れ、拷問官は素顔を見せる。
「おいおい、なんだ? 鼻が曲がっちまってるがなんでえ、色男じゃねぇかよお! 良い顔だぜ、テメェ! 売りたくなっちまうな!」
 グドルフが拷問官の胸元に蹴りを放ち、真後ろから鎖を放つ拷問官の顎先を身を捻って砕き、吠えた。
「グリム、そっちのクソヤロウは任せたぜ!」
「ああ、自由になったしぶち壊す」
 グリムは首輪を投げ捨て、煽った拷問官に接近し、杖を顔に向ける。
「飛べよ、くそが」
 発動する、魔力の一撃。攻撃が当たった瞬間、跳躍するグリム。ありったけの力で拷問官を殴り付ける。

●拷問官は苦しんでいます
「オレとキドーが鍵を開ける、クラケーンと壬生は誘導を頼む」
 アレンツァーが叫び、素早く人々を解放する。祝福の雄叫びが響き渡った。
(おや、そろそろ終演でしょうか)
 アントワーヌを庇いながらアンジェラは思った。衝撃で口から血を吹き出す。限界に近いがまだ倒れることはない。ただ、命を引き換えにする覚悟はある。
「アンジェラ君、すぐに回復を!」
 アントワーヌが叫んだ。
「いいえ、働き人は、手足の一本二本くらいならもげても動ける作りになっていますから。それに、拷問官はあと一人です」
 目を細めるアンジェラ。
「何もかも終われ」 
 死霊の力によってグリムが拷問官の両足を押さえ付ける。
「なあ、屈服させたと思った相手に見下される気分はどうだよ。でもまあ、どうでもいいや。名前だけは憶えてやるからさっさと壊れろ」
「誰が言うもんか、薄汚いガキに」
 拷問官がグリムに唾を吐き、すぐに白目を剥く。舌打ちが聞こえた。グリムは拷問官に冷たい眼差しを向ける。
「……」
 魔力を纏わせた一撃が男を殺したのだ。
「終わったね。早く、此処から離れよう。こんな欲まみれの場所に長居する意味はないからね」
 アントワーヌはアンジェラを横抱きし、皆に声を掛けた。一同は頷き、京次郎が手帳を拾い上げる。
「皆様、出口は分かりましたか?」
 手を振るコンラッド。京次郎が持つ手帳に気が付く。
(おやおや、誰でしょう。あそこに次のオークションの予定が書かれているのに)
「へっ、出口ならキドーさんとグドルフさんが見つけてるさ。なんたって天下の盗賊と山賊だからな! なっ! キドーさん!」
 乙女のように跳び跳ねるプラック。
「……」
 キドーとグドルフは互いに顔を見合わせ、「「知らねえな」」と呟く。
「「──だが、出口は作るもんよ!」」
 斧を構えるグドルフと大型ナイフと大振りのストーンナイフを構えるキドー、きゅんとするプラック。雄々しい声とともに壁は崩れ落ち、わっとその穴に押し寄せていく人々。それに続くローレット・イレギュラーズ。悔しいがコンラッドは諦めるしかない。すれ違いざま、グドルフだけが僅かに立ち止まる。
「おい、てめえ! てめえだよ、ウェイター! その顔、覚えたぜ。次会ったら、ぶち殺してやるからよ。首洗って待ってな!」
 唸り、疾風の如く、消えるグドルフ。
「物騒ですが、僕も覚えておきますよ」
 コンラッドは呟く。静かな会場は赤い匂いがする。コンラッドは死体を片付けながら、鼻歌を歌い始める。そろそろ、幸福な朝がやってくる。

成否

成功

MVP

アンジェラ(p3p007241)
働き人

状態異常

プラック・クラケーン(p3p006804)[重傷]
昔日の青年
アンジェラ(p3p007241)[重傷]
働き人

あとがき

 オークションはめちゃくちゃだ。だが、それでいい。次回のオークションはより、盛り上がることだろう。しかしながら、落とした手帳は戻ってくるだろうか。

 参加者Dの手紙(抜粋)

 そして、MVPは他者を想い行動し続けたあなたに贈ります。

PAGETOPPAGEBOTTOM