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シナリオ詳細

小規模闘技場で勝負しよう

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

 鉄帝は誰もが知る通り、脳筋の国である。
 間違ってる?
 いや、大体あってると思う。
 何か問題があっても、大抵は相手をぶっ飛ばせば解決。
 古代のオーバーテクノロジーが出土することもあり、ある種の歪とも言える機械技術が有ったりするが、やっぱり基本は脳筋。
 というか、話の通じる蛮族である。
 などということを心の中で思いながら、リリスは目の前の男と交渉していた。
「遺跡を下さい」
「やーだよ」
 ちびちび酒を飲みながら、目の前の男は返す。
 粗野ながらも人懐っこい雰囲気を纏う男は、今いる場所の実質的な統治者だ。
 今いるのは、鉄帝国のとある端に属する街。
 小さいながらも闘技場がある程度には栄えているが、それほど規模は大きくは無い。
 特徴と言えば、小規模な古代遺跡が比較的多く街の傍に存在していることぐらいだ。
 もっともこれは、古代遺跡の発掘と調査を元に作られたベースキャンプが街の始まりなので、街の傍に古代遺跡があるというよりは、古代遺跡に街がくっついていると言った方が正しい。
 この街は以前、魔種に襲われ壊滅しかけたのだが、それを手勢を率いて撃ち滅ぼしたのが彼、ギギルだ。
 帝国軍人である彼は、そのまま街に駐留し、偶に古代遺跡に新兵を突撃させ、訓練させている。
「ここらの遺跡は、侵入者用の罠やら防衛機構があるから、新兵共の訓練にちょうど良い。誰かにくれてやる気はねぇよ」
「でも、いい加減物足りなくなってるでしょう?」
 ギギルに言ったのは、リリスの隣に居る壮年の紳士に見える男、ヴァンだ。
「私達が欲しい遺跡だと、罠や防衛機構のタネも分かって面白くないでしょ」
「まーな。って言ってもよ、だからってほいほいやれるか。お前ら幻想の住人だろ?」
 鉄帝は過酷な土地ゆえ、肥沃な領土を持つ幻想地域への南下作戦を繰り返している。
 そんな幻想の住人に古代遺跡をくれと言われて、はいそうですか、と言える訳もない。
 のではあるが――
「別にその辺りは気にされずに。私たち国とかどうでも良いので」
「幻想より鉄帝の方が住み易ければこっちに移住しますし」
「……商人だな、お前らホントに」
 呆れたように、それでいて感心する様にギギルは言った。
「そういうふてぶてしさは、俺ぁ嫌いじゃねぇよ。そっちが安く物資を都合つけてくれるから、この街は助かってるしよ」
 半年ほど前からヴァンとリリスは街と物資のやり取りを行っており、その縁があってギギルとも懇意にしている。
 それが古代遺跡欲しさだというのは、最初に会った時から伝えられているので、本音を言うといまさら怪しむ気はない。
 というより、本気で怪しいと思っていたら、とっくに武力行使をしている所だ。
「大体よぉ、お前ら遺跡なんか手に入れてどうすんだ? あんなの持ち運びできねぇぞ」
「別に遺跡自体が欲しいわけじゃないです。本命は遺跡を調べて出てくる遺物ですから。いざ遺物を探し当てて、それを後から取り上げられたら堪りませんからね。予防策に、所有権を手に入れたいんです」
「遺物ねぇ……あそこにゃ、大したもんが無かったと思うけどよ。あそこでなに探し当てようってんだ?」
「メイドロボです」
「冥土ロボ」
「明らかに、こちらの想定とは違う想像してますよね」
 ヴァンのツッコミに、ギギルはリリスを見ながら言った。
「メイドって、アンタの服みたいなの着てるヤツだよな?」
 趣味でメイド服を着ているリリスは応えた。
「もちろん。他に何があるんです」
「いや、そんな自信たっぷりに言われてもな……そんなもん発掘してどうすんだ」
「メイド喫茶で働かせるために決まってるでしょ」
 ハッキリくっきりキッパリ言うリリス。
「さよか……で、そっちも同じ理由かよ?」
 ヴァンに訊くと、彼は肩を竦めるようにして返す。
「いいえ。私は手足の部品に興味があるんです。元々あそこの遺跡から出土したという、壊れた人型の義手を以前弄ったことがあるんですが、随分と出来が良くて。同じようなのがあれば欲しいんですよ」
「そんなの手に入れてどうすんだ?」
「昔、ある事件で片腕を無くした子供に義手として付けてやったんですけど、そろそろガタが来てるみたいで。代わりを用意してやろうと思いまして」
 これを聞いたギギルは、一瞬間の抜けた顔を見せたが、すぐにカラカラと笑いながら言った。
「はんっ、商人のくせに随分とまぁ、人の良いこと言いやがるな」
「商人やってるのは、趣味をし易くするためだけですからね。それで、許可は頂けますので?」
「遺跡はやれねぇよ。でもまぁ、遺跡を探索して出てきたもんがヤベーのじゃなけりゃ、それなりの金を払えば持って行きゃいいさ。ただし俺達にも、ちぃーと良い目を見させてくれよ」
 ワイロをくれと言うギギルにヴァンが尋ねる。
「何をご所望で?」
「闘技場で遊べる奴ら用意してくれ」
「好きですねぇ」
「心底バトルジャンキーですね」
 ヴァンとリリスの呆れたような物言いに、ギギルは笑いながら返す。
「ははっ、本当のこと言っても何も出ねぇぞ。まぁ今回のは、うちの若い奴らを遊ばせてやりたくてな。遺跡でちまちま探掘させるより、闘技場で暴れさせてやりたいんでな」
「分かりました。用意します」
 接待をするつもりで、ヴァンは言った。
「ローレットに頼みに行きます」
「おう、頼むぜ!」
 ヴァンの応えに、ご機嫌な様子で返すギギルだった。


「鉄帝の闘技場で戦って欲しいのです」
 招集されたイレギュラーズに向けて、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼の詳細を説明してくれる。
「ワイロ代わりに戦闘をプレゼントしたいらしいのです。接待みたいなものですけど、やるからには本気でやって欲しいそうです」
 生死をかけた殺伐とした戦いにはならないようだが、だからといって手を抜いたりすると逆に怒るみたいだ。
「同じぐらいの強さの相手を、対戦相手とした出すみたいです。だから新人さんでも大丈夫なのです」
 ユリーカの話を聞いた限りでは、誰でも参加できるようだ。
 この依頼を引き受けたイレギュラーズは、鉄帝に向かうことにした。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
三本目のシナリオになりますが、今回はノリ良く戦闘をして頂こうというシナリオになっています。
オープニングだと、それ以外の情報も入ってたりしますが、この辺りは他のシナリオで進めていこうと思っています。
そして以下が、今回の詳細説明になります。

●成功条件
 闘技場で勝利する。

●戦闘場所
 小規模闘技場。
 平地を囲むようにして観客席がある。
 広さはあるので、全員が一度に戦っても狭さは感じない。
 戦闘時に支障が出るような障害物などはありません。

●戦闘ルール
 全員が一度に参加するチーム戦です。
 審判が開始を告げるまでは戦闘は開始されません。
 戦闘開始前に、自由に配置を組んだ状態から始められます。
 HPを10%以下にまで削られると、闘技場から退場させられます。
 戦闘中の回復は可能です。
 最終的に対戦チームの人数を0に出来ると勝利です。
 
●対戦相手
 PC達と同じぐらいの強さの相手になります。
 これは同じぐらいのレベル帯で、似たようなスキルや装備をしている、ということになります。
 対戦相手の性格は積極的×2・慎重×6の割合になっています。(ダイスを振って決めました)
 これにより今回の対戦チームは、一部の突進野郎を残りの冷静な仲間がサポートする、という相手になります。

●対戦中
 街の住人がお祭り騒ぎで観覧してます。
 戦闘中も歓声が飛んできます。
 基本は、ガチファイトのプロレス、みたいな感じの雰囲気です。
 対戦相手もその辺は分かっているので、ノリ良く戦います。
 マイクパフォーマンス的なことをすると、相手も乗ってきます。
 その他、プレイングによっては、相手もノリ良く応えるでしょう。

●戦闘後
 手当や回復をしてくれます。
 飲んだり食べたりに誘って来るので、参加しても良いですし、しなくても良いです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 説明は以上になります。

 それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • 小規模闘技場で勝負しよう完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
冷泉・紗夜(p3p007754)
剣閃連歌
雑賀 才蔵(p3p009175)
アサルトサラリーマン
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

リプレイ

「賄賂……え? 闘技場で戦うことなの?」
 現地で依頼人から詳しい事情を聞いた『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)が思わず聞き返すと、依頼人のリリスが応えた。
「ええ。鉄帝の方らしい賄賂です」
「楽しめるんだから良いじゃねぇか」
 ガハハと、対戦相手のボスであるギギルが笑いながら言った。
 同じように対戦相手の8人も明るく笑う。
 その屈託のなさに、イズマも笑みを浮かべながら返す。
「まぁ、戦う機会をプレゼントしたいって気持ちはわかるし、ぜひ協力しよう」
 盛り上がる対戦相手。
 そこに『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)が話を続ける。
「んっと基本的にはプロレスで良いんだよね?」
「おう! 真剣に楽しく! 盛り上がっていこうぜ!」
 対戦相手が明るく笑いながら応える。
 状況を確認したЯ・E・Dは、大事なことを尋ねた。
「まだ時間あるみたいだけど、それまで好きにして良い?」
 闘技場には人が押し寄せ屋台が並んでいる。
 串焼肉に揚げ物に果物を飴で覆った物。
 目移りするほど盛り沢山。
「もっと人が集まってからやるから、それまで食べ歩きたいなら好きにしてくれ。お前さんらは今日の主役だから、みんな奢ってくれるぜ」
 話を聞いて早速Я・E・Dは向かい、屋台の店主達から山盛りで奢って貰う。
 同じように屋台巡りをしているのは『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)。
「うーん、いまのうちにもっと買っておいた方がよかったかな」
 塩が振られた肉串を食べながら豊富な屋台のメニューに視線が向かう。
 食べ歩きが趣味なので楽しみたい所だが、試合前。動きが鈍くなるほど食べる訳にはいかない。
「お祭り騒ぎだし、試合後も屋台ってまだやってるよね……?」
 この呟きを耳にした対戦相手が声を掛けて来る。
「終ったあとの方が盛り上がるぜ。へばって食う気力が無けりゃ別だけどよ」
 笑顔で挑発するようなことを言って来るが、雑音は聞こえてこない。
(なるほど。盛り上げようとしてるんだ)
 ギフトの助けも借り確信したコゼットは、乗っかるように言葉を返す。
「まぁ、軽い運動すると、ご飯がおいしいから、ちょっとだけ我慢しようかな……お兄さんたちは試合後に歯が残ってるといいね」
「はんっ! 言うじゃねぇか!」
 対戦相手が獰猛な笑みを浮かべると、見ていた住人達から歓声と応援の声が上がる。
「頑張れよ、嬢ちゃん!」
「好い試合見せてくれたら好きなだけ奢るからよ!」
「任せて」
 コゼットの応えに、歓声がさらに上がるのだった。
 そして続々と街の住人が集まってくる。
「良いとこ見せてくれよ!」
「おう! 楽しませてやるぜ!」
 住民の掛け声に対戦相手が笑顔で応える。
 それを見ていた『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は満足するように頷いた。
「ここの兵は住民とも折り合い良く、かつ意気軒高で大変宜しい」
「そう言って貰えるとありがたいですな、大佐殿」
 対戦相手のボスであるギギルが声を掛けて来る。
「今日は新兵共をいっちょ揉んでやって下さいな」
「承知した。私も協力を惜しまん」
 エッダの応えに対戦相手の新兵達は歓声を上げた。
 賑やかな中、それを見ていた『風韻流月』冷泉・紗夜(p3p007754)は得心した。
(つまりは私の故郷の流義でいえば武芸上覧の場、ということですね)
 闘技場を見ながら故郷を思い出し納得する。
(見るものが士や貴族、神官たちではなく平民ではあるといえど、熱狂する鼓動や息は、日々を生きる力となるのでしょう)
「ならば剣神に仕える巫女として嫌はなし」
 清涼なる意志を持って戦いへと意識を高める。
 皆がそれぞれ戦いへと意識を盛り上げる中、『アサルトサラリーマン』雑賀 才蔵(p3p009175)は観察を終える。
(殺し殺されの戦場とは違いあくまで試合ではあるが……お祭り騒ぎの群衆の中で戦うのは悪くない)
 冷静さの中に熱情を込めて。
(ホームグラウンドとは言えないアウェーの地であるが――)
 観客である住人達は、才蔵にも歓声を送ってくれる。
(戦士であれば、同じように受け入れてくれるようだ。なら俺達はいつも通りに戦えば良い)
 余計な力みを抜いて、仲間と共に闘技場に立つ。
 対戦相手と向かい合い、楽しげに声を上げるのは『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)。
「闘技場でのバトル! 血が騒ぐね! どうせなら気持ちよく勝って帰ろう! 皆! 頑張ろうね!」
 マリアの掛け声に、仲間のイレギュラーズも応え、対戦相手も気合が入る。
 その熱に応えるように『暁の剣姫』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は前に出た。
「さあ闘技場ときたらアタシの出番だよ!」
 困った時の道具袋からマイクを取り出すと観客に呼び掛ける。
「お客さんも盛り上げていこうっ!」
 歓声が上がる。
 ギフトも使い観客の視線を集めると、やる気満々で前に出る対戦相手2人組にマイクパフォーマンス。
「そこの腕が立ちそうな二人! 砂漠の猟豹と言われたアタシとそこのエッダでタッグバトルを申し込む!」
 ミルヴィの宣言に合せエッダが前に出ると、紹介するように続けた。
「エッダは栄えある鉄帝国の大佐、アタシはラド・バウでは実質Bランクと言われる実力! この挑戦、受けてもらう!」
 さらなる歓声。
 それを割れんばかりに高めるべく、エッダはミルヴィからマイクを受けとり声を響かせた。
「喜べ貴様ら! 今日は無礼講だ! いくらでも殴って来い。だが腑抜けた戦いをすれば、分かっているな?」
 大いに笑顔を浮かべる対戦相手に、エッダは高らかに開戦を告げる。
「鉄帝人らしく戦え! さもなくば死ね! 行くぞ!」
 空気が震えるほどの歓声の中、戦いが始まった。

●闘技好戦
 真っ先に跳び出したのはミルヴィとエッダ。
 攻防の役割分担を意識して動く。
 対戦相手も応え真正面から突撃。
 突出して踏み込む相手の戦闘技法は拳闘。
 手甲に炎を纏い様子見のジャブから入ろうとする。
 だがエッダが迎撃。
「甘い」
 魔神拳から夢想拳への繋ぎを経て、榴弾拳で確実に衝撃を体の芯に食い込ませる。
「逸るだけでは届かんぞ」
 エッダの指摘に拳闘士は笑みを深め拳速を増す。
 避けず躱さず真正面から打ち合うエッダ。
 戦術よりも見栄えに重きを置いた戦い。
 今、ここで求められる物を魅せていく。
(……当然負担は増えるでありますけどね)
 この戦い方でダメージが大きいのは相手となる拳闘士。
 単純な強さだけなら互角に近いが、新兵である彼は巧さが足らない。
 それでもエッダに応じるように打ち合う。
 エッダの笑みが深まる。
「よし、それでは心置きなく殴り合おうか。逃げるんじゃないぞ?」
 拳闘士も笑みを深め、拳打の音が響き渡る。
 それを見て、突出してきたもう1人が楽しげにミルヴィに呼び掛けた。
「好いねぇ! こっちも楽しもうぜ!」
 振るうは剛剣。
 一刃先は死の淵を連想させる。
 けれどミルヴィは臆さず踏み込んで、ロザ・ムーナの迅さで切り崩し、殺人鬼ミリーへと繋げ捌いていく。
 それは舞うような美しさ。
「踊りましょう。連いて来れる?」
「当ったり前だ!」
 ミルヴィの呼び掛けに、剛剣士は戦闘技法を切り替える。
 一撃の重さよりも速さに特化。
 互いの立ち位置を切り替えて、舞い踊るかのような剣武を魅せる。
 華やかな戦いに歓声が響く。
 そこに横手から援護をするように対戦相手の仲間が動く。
 もちろんイレギュラーズ達は気付き迎撃した。
「サポートなんて、させないよ」
 コゼットが黒装束の少年に疑針暗器で確実にダメージを与えると、仲間からわざと離れ相手を誘導する。
 黒装束の少年はコゼットの意図に気付いたようだがあえて乗って来た。
 距離を詰めてくる彼に、わざと隙を見せる。
 そこに放たれた手裏剣を避け挑発。
「なにやってんの……? ちゃんと狙いなよ、ひさしぶりに遺跡から出てきて、目が眩しいのかな?」
 これに返すように少年の投擲の数は増し、コゼットは華麗に避けていく。
 踊るような動きに歓声が増す。
 しかし少年は冷静に攻撃を重ねる。
 それはコゼットを攻撃し続けることで動きを留め、仲間の援護で一気に仕留めるため。
 しかし仲間の援護は来ない。
 イレギュラーズに阻まれる。
「雷吠殲姫! マリア・レイシスだ! 派手にいくよ!」
 援護に動こうとした対戦相手に、マリアは雷吠絶華で跳び込む。
 蒼く輝く雷光に、冷気纏う少女が魅了されたように見詰めて来る。
 彼女にマリアは笑顔で応え、拳を持って戦いへと誘う。
「さあ、楽しもう!」
 冷気纏う少女は迷うような表情を見せたが、そこに前線で戦う剛剣士が声を掛ける。
「やっちまえミリー!」
「……バカ」
 ため息をつくように言うとマリアと向き合う。
「ミリー・ハンニバル。戦ろうか、お姉さん」
「好いね、やろう!」
 マリアは笑顔を浮かべ戦闘再開。
「速さにはそれなりに自信があってね! 神速のコンビネーションをお見せしよう!」
 ミリーは動きを捕えられないと判断したのか防御に徹するが、そこにマリアは助言する様に言った。
「それと……忠告しておくが私の技は少々特殊でね! いくら頑丈であろうとも、それらを貫きスタミナや活力を消耗させる!」
「……っ」
 攻撃を受け続けたミリーは、マリアの言葉で戦闘技法を変え戦いを重ねていった。
 戦いは派手に続く。
 しかし中には静かに戦況を見極め動こうとする者も。
(死角を突くつもりですね)
 戦局を見定めていた紗夜は、援護に動く長刀を収めた少女に気付く。
 迎え撃つため前に立ち、戦武の口上を告げた。
「全身に全霊をもって、剣風を武神の息吹の如く吹き散らしてご覧にいれましょう」
 構えは居合。
「冷泉・紗夜。居合を持ちて、いざ尋常に参ります」
 臆するも卑怯もなく。
 勇猛と果敢に、真っ向より向かい合う。
 尋常なる名乗りに長刀の少女は応える。
「口上痛み入ります。名乗られたなら応じぬは不作法。サギリ・サジョウ、尋常に立ち会いましょう」
 ほぼ同時に放たれる居合二閃。
 サギリの一刀を迎え撃つ紗夜は瞬天三段。
 瞬速の三段突きは、一刀を弾き逸らし回避に動かせる。
 態勢を崩した所で諷詠斬。
 一歩ずつ確実に追い詰めていく。
 仲間の不利を悟った対戦相手の1人が支援のために射撃に入ろうとする。
 しかし才蔵の動きの方が速い。
「では、普通のサラリーマン雑賀才蔵……狙い撃たせてもらう!」
 場を盛り上げるため、あえて名乗りを上げてD・ペネトレイションを撃つ。
 狙われていることに気付いた相手は回避に動くが、避け切れず肩の端を軽く撃ち抜かれた。
 撃ち抜かれた相手は即座に反撃するが、すでに才蔵は動いている。
 動いた先で狙いをつけるのは、闘技場の中央で戦う前衛組。
 先ほど才蔵に撃たれた相手は、味方が撃たれる前に止めようと射撃体勢に入るが、それを見越していた才蔵が不意を突くようにハイロングピアサー。
 凍結し動きが鈍った相手に距離を取りながら追撃を重ねた。
 次々に白熱した戦いが続き、場が熱くなって来た所でЯ・E・Dも動く。
「朝飯前とは言わないけれど、夕飯前には間に合うように倒させてもらうね」
 仲間の死角に対戦相手が向かわないよう、魔砲を連打。
「っさせないよ。少しの間、道は塞がせて貰うから」
 効率よくダメージが与えられるよう位置取りを重ねながら撃ち続ける。
 Я・E・Dの援護射撃もあり、対戦相手の連携は鈍る。
 それを見ていた観客は、おひねりの如く声援と共に屋台の食べ物を投げた。
「ん、いただきます」
 狼顎を発動し、串も容器も気にせず完食していくЯ・E・Dだった。
 観客も一体になって盛り上がる中、イズマも盛り上げに加わっていく。
 ギフトを使い武器を打ち鳴らし注意を引くと、口上を告げる。
「さぁ、俺たちが相手だ!」
 踏み込みと同時に落首山茶花。
 変幻魔性の切っ先で相手を惑わせると、剣魔双撃で追撃。
 躱しきれない相手を斬り裂くと、反撃の一撃を外三光で捌き翻弄していく。

 戦いはイレギュラーズがやや優勢。
 けれど気を抜けば勝負の天秤が傾く危うい際。
 それを決定的に崩したのはミルヴィとエッダのコンビネーションだった。

(ここで、決める!)
 ミルヴィはエッダとアイコンタクト。
 それだけで意図を察したエッダは、素早い足さばきでミルヴィと連携できる配置へと動く。
 気付いた相手は迎撃態勢を取ろうとするが間に合わない。
 先行して跳び出したのはミルヴィ。
 速さを生かした剣舞で相手を翻弄すると、舞い終えた瞬間エッダが追撃。
 攻撃の質の違う連携攻撃は、しかし絶妙さをみせる。
 まるでダンスを踊っているかのような優美ささえ見せ相手を追い詰め、止めに全力攻撃。
「エッダ! いくよ! 清楚ソニックマックス!」
「合わせますよ、マリア――チャンバー内圧力上昇、リミッター解除。雷神拳、始動」
 ミルヴィの剣舞が疾風怒濤に斬り裂くと、エッダがスパーク散らす無数の拳打。
 絶好のタイミングで重ねられた連撃は、対戦相手を完膚なきまでに沈めた。

 これにより勝負の天秤は一気に傾く。
 残存戦力を叩きのめす。

「あたしごと撃って!」
 対戦相手を纏めて引き付けていたコゼットがЯ・E・Dに呼び掛ける。
 対戦相手は回避しようとするがすでに遅い。
 呼び掛けよりも早くアイコンタクトで意図は交わしている。
 魔砲を撃って纏めてダメージを与えた。
 これにより動きが鈍った所でЯ・E・Dは距離を詰め狼顎を発動。
 すると1人の少年が影を実体化させ迎え撃つ。
「食い千切れ影鰐」
 Я・E・Dの狼顎を噛み切り、お返しとばかりに狼顎も噛み付き飲み込んだ。
「不思議な歯応え。味は、貴方の方が美味しいかな?」
 Я・E・Dは狼顎を連続発動。
 影使いの少年は互角の攻防を見せるが、そこにイズマが援護。
 戦いながら全体の動きを見ていたイズマは、絶好のタイミングで連携に入る。
 狼顎を捌くのに気を取られた少年を外三光で動きを鈍らせ。
 そこにЯ・E・Dと動きを合わせ倒し切った。
 最早勝負の行方は見えている。
 しかし相手は最後まで全力。
 それに応えるように戦っていく。
「懐に近寄らせないでくれ」
 才蔵は罠を張り誘いを掛ける。
 距離を取った攻撃のみに集中し、近接戦へと導いていく。
 序盤であれば相手も乗って来なかっただろうが、不利な局面で焦りを見せている。
(さて、あと一押し)
 才蔵は動き続けて疲れた振りをすると、わざと怯えたように声を上げる。
「うわぁぁ助けてくれ!」
 掛かるかどうかはギャンブルに近い。だが――
(こういう時のギャンブルは嫌いじゃない)
 才蔵は賭けに勝つ。
 罠だと感じつつもあせって踏み込んできた相手にオ’レンジ・キス。
「良く来た……盛大に歓迎しよう」
 近距離でキツイ一撃を受け、相手は倒れ伏した。

 ここにおいて、もはや勝敗は決している。
 ゆえに相手に残された物は、1人でもイレギュラーズを倒し意地を見せること。
 その意地のぶつかりを、イレギュラーズは制していく。

「捕まえてごらん!」
 2人を同時に相手していたマリアは、ドリームシアターで自身の幻影を創り出し、自身と交錯するように何度も動いてみせる。
「分身!?」
 見極めようとする相手に、マリアは茶目っ気を込めた声で応えた。
「分身して見えるかい? ふふ! そうかもしれないね? でもただの残像かもしれないし幻影かもしれない……どちらかな?」
 相手は必死に見極めようとするが叶わない。
 マリアは翻弄すると、仲間の援護を受けながら挟み撃ちをするようにして打ち倒した。
 残りは1人。
 途切れず打ち合いをしていた紗夜は、刃を交えながら観客に呼び掛ける。
「この果敢に切り結ぶふたりのうち、勝者にこそ二つ名を授けて頂けますか?」
 応!! と歓声が返ってくる。
 それを受け、紗夜は打ち合うサギリに笑みを浮かべ言った。
「得る名に恥じぬ為にも、熾烈に斬り合いましょう」
「承知」
 居合抜刀の速度がさらに上がる。
 息を飲む斬り合いは、僅かでも勢いが落ちた方が負けるは必定。
 ゆえにこそ。
「剣閃、歌のように途絶える事なし」
 居合から始まる手数、連閃を重ねて、威烈の疾風の如く。
 剣風と斬刃を瞬かせ、最後に放った一刀でサギリの長刀を弾き飛ばした。
「……私の負けです」
 サギリの敗北宣言と共に、イレギュラーズ達の勝利が決まった。

「ありがとう! とっても強かったよ!」
 戦い終わり、マリアが健闘を讃える。
 同じようにミルヴィも闘技場でお互いを讃え歌い始めると、イズマも演奏に加わり盛り上がる。
 そして手当てを受けた対戦相手はイレギュラーズ達を讃えると、出店の料理を山盛りで持って来て歓迎してくれる。
 街の住人達も加わって、大いに賑わう楽しい一時を過ごすのだった。

成否

成功

MVP

ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥

状態異常

なし

あとがき

皆さま、お疲れ様でした!

正直、もっと書きたかったです! 後2000字ぐらい。戦い終わった後のワイワイガヤガヤした感じとか、対戦相手も喜んでるので奢ったりなんだりするシーンとか!
思わずそう思ってしまうほど、皆さまのプレイングを楽しませていただきました。
素敵なプレイングをありがとうございます。
そして皆さまのお蔭で、街の住人も込みでイレギュラーズ達に対する好感度が上がっています。
そのため、今後この街や周辺遺跡に関するシナリオを出す際は、イレギュラーズ達に便宜が図られやすい状態で始める予定です。

それでは、最後に重ねまして、皆さまお疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

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