PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Behind the scenes

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ファルベライズ遺跡で動き出した思惑。
 大鴉盗賊団の暗躍や、ホルスの子供達を作成した『博士』……そして『博士』を追ってきたリュシアンや、レアンカルナシオンという組織。入り乱れての攻防はまるで蟲毒の渦が如く、だ。
 色宝の悪用と陰謀を見過ごせぬラサ商会や、彼らによる依頼によってローレットのイレギュラーズ達も加わり――はたして如何なる結末を迎える事か。
 激闘の果ては未だ見えず。
 ……しかし、忘れてはならない。
 戦いはとは決して……直接戦場で起こっている事だけが全てではないのだ。
 命をやり取りし、華々しく刃を交わす。
 そんな――歴史が見据える場面だけで全てが完結している訳ではない。
「おぉぉぉぉ! ファイト――十発じゃ!!」
「怪我人はいないかしら!? ああ、その書類はそこに置いといて!」
 ラサのローレット支部。そこにて目まぐるしく駆け回っているのはチヨ・ケンコーランド (p3p009158)と華蓮・ナーサリー・瑞稀 (p3p004864)であった。此処へ届くは様々。次々と挙がって来る各地の戦況報告であったり、或いは戦いの狭間に救援物資を求めて帰還してきた者であったり……その応対に二人が走り回っている。
 ここは最前線ではない。
 しかし、ここにもまた別の戦いがあるのだ。
 報告書の作成。決戦へと赴く者への鼓舞。帰還した者達の治癒……山の様に。
「ふむ――これはこれは忙しない事だ。どこから手を付けたものか」
『Loveも、お手伝いするの』
 更に訪れるナイジェル=シン (p3p003705)にMelting・Emma・Love (p3p006309)の二人だ。ローレット支部はてんやわんやの様子。一大決戦の最中ともなれば多くの者が動き、多くの状況が動く――どこもかしこも猫の手でも借りたい状況であろう。ああ、隅の方ではユリーカ・ユリカ(p3n000003)が多くの箱を持って走り回っていて……あっ、こけた。

 だからこそお鉢が回ってきた。支援の手伝いをしてほしい、と。

「失礼! こちらがローレットだろうか! 私はラサ所属の傭兵、テトラス!
 救援を求めたい……負傷者の手当てを手伝ってほしいのだ!」
 噂をしていればラサ商会の方からも新たな頼み――依頼が発生した様だ。
 彼について行けばスムーズにファルベライズ遺跡付近にある拠点に赴けるだろう。ついでに物資搬入などの支援や、戦いに往く者へ鼓舞や祈りを捧げてもよし……或いは、このままローレットに留まって情報の整理や負傷者の手当てをするもよし。
 どこも多忙な状況だろう。その一手となるだけでも随分と助けになる筈だ。
 例えば戦う事に向いていなくても。
 それでも出来る『戦い』というのは――あるのだから。
「……拙者にも出来る事があるなら、やってみよう」
 故に星影 昼顔 (p3p009259)も決意を固め往くのだ。
 己らが戦場に。己らの成すべき事を成す為に。

 見えぬ戦いを――制する為に。

GMコメント

●依頼達成条件
 各々の『戦い』にて全力を尽くしましょう。

●フィールド・ロケーション
 ローレット内、もしくはラサのファルベライズ遺跡の付近です。
 皆さんは<Rw Nw Prt M Hrw>の裏方にて行動して頂きます。(あくまでもそういうロケーションというだけですので<Rw Nw Prt M Hrw>に参加していても別に排他な要素はありません)

 ローレットに留まっていればやがて山の様に戦況報告が届きますし、或いは負傷者なども帰還してくるでしょう。報告書作成を行ったり、治癒活動を行ったりと出来るかもしれません。
 ファルベライズ遺跡の付近(最前線ではありません)へと赴けば、支援物資の運搬や、ここでも治癒活動も必要な場面があったりするでしょう。また、鼓舞や天へと捧げる祈りも――前線へ往く彼らに力を与える一助となるかもしれません。

 やるべき事はこれ以外でも構いません。
 直接的な戦闘行動以外――支援と思われる事であれば何をやってもOKです。(というか直接的な戦闘は本シナリオでは発生しません)自身の非戦スキル、ギフトなどを駆使してもいいでしょう。

 自らの『戦い』を、見せてやりましょう。

●備考
 ユリーカ・ユリカ(p3n000003)やショウ(p3n000005)など、そこにいそうなNPCはいるかもしれません。
 ただし「いるかも」なので確実ではありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • Behind the scenes完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月25日 22時21分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ナイジェル=シン(p3p003705)
謎めいた牧師
※参加確定済み※
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
※参加確定済み※
Melting・Emma・Love(p3p006309)
溶融する普遍的な愛
※参加確定済み※
テルル・ウェイレット(p3p008374)
料理人
チヨ・ケンコーランド(p3p009158)
元気なBBA
※参加確定済み※
星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物
※参加確定済み※
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
ベルナデッタ・フォン・ローエングリン(p3p009582)
は?ちょろくないが?

リプレイ


「ほほ! なんぞ大忙しじゃの!!
 ローレットがてんてこまいなのじゃ――!! ふぉ――!! やりがいがあるの――!!」
 次々と舞い込んでくる仕事に『元気なBBA』チヨ・ケンコーランド(p3p009158)は己が活力をフル発揮していた。ラサのピンチとあらばかのBBAはいてもたってもいられない――その高齢さからはまるで想像も出来ぬ俊敏さで各地に出没。
「わしじゃよ。ほれ、これを受け取るがいい!!」
 医薬品や食料品を前線拠点に運んでいるのだ。拠点に現れたかと思えば、いつの間にか後方の支援拠点にチヨが現れ――少し目を離したらもう物資と共に消えている。な、なんて早いBBAだ……!!
「そうだよね……直接戦う事以外にも出来る事はあるんだ、うん」
 同時に『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)もまた前線の拠点へと。
 さすればテトラスに導かれ訪れた地では――多くの負傷者がそこにいた。最前線からは離れた場所であるが……治療者、負傷者共に安心できる様な状況ではない筈だ。もしも戦闘の余波が来れば、万全たる者が少ないここは窮地に陥るだろう。
 ――だからこそ意味がある。戦う事以外の手段というものが。
「僕が手伝う事で……誰かの命が、絆が、1つでも多く救えるのなら」
 寄り添おう。
 治療が得意とは言えない、だけれども彼らの安堵の一つと成れるなら――それだけでも。
「一番大変なのは現場……戦場の真っただ中ではありますが、裏方側の支援もおろそかにしてはいけません。帰れるべき場所があるからこそ……戦える事もあるのですから」
 更に昼顔に次いで『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)も拠点にて支援を。
 彼女も昼顔と同様に負傷者の治癒に当たる。大多数の者が戦闘に向かい……だからこそやはり、負傷者の数もそれに比例しているのだから――一人増えただけで手が足りるという事もない。
「然り。そして……戦えぬ者たちとて、戦いと無関係というわけではない……
 意志があればそれは力となるのだ」
 そして『謎めいた牧師』ナイジェル=シン(p3p003705)は負傷者の傍に寄りつつ『聞く』
「諸兄らの意志を前線へ届けよう――述べる事はあるか?」
 彼らの闘争は終わってなどいない。
 未だ彼らの心が戦場に在るのならば。彼らの意志が、魂が其処にあるのならば。
 集め、届ける事もまた――戦いの一つとなるのだ。

「ああ、その報告書はこっちに置いといてほしいのだわ。未確認事項はこっちの方で……」

 同時刻。拠点の方で忙しなく動くナイジェル達の一方で『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)らはローレットの方で膨大に届く情報の整理に勤しんでいた。
 届くのは各方面に出向いたイレギュラーズ達の戦果――負傷者――成否――
 この中には華々しい活躍の記録が記されている一方で、重大な傷を負った記録も混じっている事がある。そういった方面に救いの手を差し伸べる為にも、早急に目を通す事が必要なのだ。
『ローレットでのお手伝いなの。Loveにも出来る事をしっかり手伝うの』
「えーっと書類は混ぜたらダメだからね?
 とりあえず、こっちの箱と、こっちの箱とあっちの箱に入れて欲しいな。
 そうそう、ラサへ報告するのはそっちで、ローレットの本部に持っていくのはこっちで……」
 同時に『溶融する普遍的な愛』Melting・Emma・Love(p3p006309)と『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)も華蓮と同様に後方におけるサポートを行っていた。
 前線で負傷した人物はチヨらのいる拠点にて治療を受けている者もいるが……しかし比較的軽い怪我や少し疲労した程度であれば寄らずに直接帰還する者もいる。であればとMeltingは疲労しているであろう者へと近付き。
『そこに座って欲しいの。大丈夫、これは筋肉痛や関節痛、肩や腰の凝りにも効くの』
 丁寧に体全体をマッサージして疲労回復を行うものだ。
 スライムボディであるMeltingには独特の弾力がある――それを利用し、少しでも怪我や疲労を和らげんとするのだ。さすればЯ・E・Dは報告書の方へと向かい合い、整理と分類の時間だ。
 乱雑に纏められていれば直しローレットに届けるのかラサ商会へと持っていくのか誤っていれば直し。目を通して場合によっては持ってきた者に再確認。
「……やれやれ流石に一大決戦となれば多いね」
 吐息一つ。されどこれも重要な事だと、背筋正して次なる書類を手に取った。
「ぬぁああああ! あー、もう! なんだってこんなに報告書があるのさ! というかローレットはどれだけの作戦に参加してるわけ!? 確認されてるだけでも33!?」
 底なしのお人よしだよねぇ、全く! 『は?ちょろくないが?』ベルナデッタ・フォン・ローエングリン(p3p009582)の叫びはЯ・E・Dらと同様に多くの報告書を目の当たりにしたが故のものである――
 これはベルナデッタにとっての初仕事。
 後方支援だけでいい仕事があると聞き、ラッキー! としか思っていなかったのだが。
「くそ! 前線は頭まで筋肉な連中に任せて……なんて言葉を信じたのが馬鹿だった! おのれユリーカァ……!! しかも誤字だらけじゃないかこの資料。どうなってるんだよ――!!」
 素早く資料を探し手に取るのはお手の物、なのだが……そもそもの資料に欠陥があるのであれば意味がない。訂正、修正、確認の作業にベルナデッタは忙殺されていた。
「流石なのですベルナデッタさん! そんなベルナデッタさんに更なるお仕事があるのですが!」
「えっ? なんだユリーカ。手が足りてない場所がある……? 僕の力がどうしても必要……? ふ、ふん。そこまで言うなら手伝ってやるよ。だけどまさかまたこんな大量の事務仕事じゃあないだろうな!」
 そこへ掛けられる声。取り掛かるべきモノは多いが、華蓮やЯ・E・Dも資料の整理に当たっているのであれば、やがて手は十分となるだろう。だから『大丈夫なのです!』とサムズアップと共に純真な笑顔を見せたユリーカを信じて――


「戦場じゃないか!! くそ、また騙しやがったなアイツ……!!」
 そうしてベルナデッタが辿り着いたのは戦場後方拠点であった。
 多くの負傷者が集う場所――確かにここで求められているのは事務仕事ではないが、しかしこれは詭弁というものだろうユリーカァ!! くっ、怪我人だらけじゃあないか。
「全く、こんな血生臭い所によくも……
 だいたい幻想種以外がどうなると知った事では……」
 帰ろうか。思いはするが、しかし。各地から聞こえてくる苦悶の声が彼の後ろ髪を引く。
 喉の奥が痒くなる様な感覚だ。ええい、ええい、くそ。
「……、ああもう! 呻き声をあげないでもらえるかなぁ! 耳障りなんだよねぇ! ったく、同胞の幻想種治療のついでだぞ!! 僕がこんなサービスをするなんて今回限りだからな!!」
 さすれば手が足りていない所に入るベルナデッタ。
 これは彼らの声にどうこう思ったからじゃあないぞ。ただこの中には深緑出身の幻想種ももしかしたらいるかもしれないし、ラサは同盟国だし仕方なくだ! 勘違いするんじゃあないぞ!
「他の国だったらこうはいかないぞ! ほら、次! はやく来なよ、死にたくないだろう!?」
 文句を言いながら治癒の術を掛けていく。
 重篤な者はプロに任せるとして、簡単な怪我なら苦――いや嫌いな己でもなんとかなると。
「大丈夫、1人じゃないから……もう少しだけ頑張って……!」
 更に昼顔の治癒も続く。負傷者の中には……場合によっては生死の境目に在る者もいて。
 彼らの命を少しでも繋げる為にも――その手を握りしめるのだ。
 一人ではない。大丈夫。もうすぐ助けが来る。
「テトラス氏。トリアージを定めよう、重症患者の方を優先しないと……!」
「ああ! 選別を次々に進めている……この人物もすぐに運ぼう!」
 トリアージ。つまり、誰を優先して運ぶべきかを選別する作業。
 それが重要であると昼顔は述べて、テトラスも同意。軽傷、重傷多くの者がここにいるが、だからこそ誰を優先していくべきか定めば『間に合わぬ』事例もあろう。自らも医療の知識を糧に周囲に視線を巡らせ、分析し治癒を。時には自らも手術に加わって――
「治療している貴方も1人じゃない。それだけは忘れないで」
 誰かとの繋がりを知覚せし風を吹かせるのだ。病は気から……という様に、治癒はなにも物理的なものだけではない。精神を。精神の孤独を救うだけでも――確かにそれは命を救う事に繋がるのだ。
 昼顔は願う。一人でも多くの助けになる事を。
 一人でも多くの者を――生死の瀬戸際から解放する事を。
「ばば――でぇりばり――――ぃ――――!!
 ほれ! 食べる元気のあるものはこれでも腹に突っ込んでおくんじゃ!!
 腹の減ってる子はおるかいの――!! たんと食うんじゃぞ――!!」
 直後、比較的軽傷な者が集められている地にて駆け巡っているのはやっぱりチヨだ。
 彼女が担いでいる箱の中にあるのは数々の料理である。BBA特製料理スキル!
 BBAが作ってBBAが届ける産地直送――ッ!! おにぎりにサンドイッチに……何? もう少し食べ応えのあるものの方がいい? いやしんぼじゃのう!
「そんなお主にはこいつでもやろうかの! こんがり骨つき肉じゃ――ッ!! ほーれ!!」
 重要なのは『片手でも食べられる』事を主眼に作ったチヨに抜かりはない。これならば片腕を負傷して者でも問題ないから……ああもしもそれすら困難という者には。

「ふーふー。はい、あーん、どうぞ」

 テルルが自ら作った料理を、多少冷まして差し出す。天使かな?
「美味しいですか? ふふ、まだまだ沢山ありますからね。遠慮せずにどうぞ?」
 特に彼女が作った料理は、疲労で胃が物を受け付けていない事を考慮して、流し込みやすいスープが中心だ。チヨの料理が旺盛なる者の助けと成り、テルルの料理が弱っている者の一助となる。
 材料ととしてはエネルギーの元となる穀物を少し。体を構成する蛋白質の補充や負傷を癒す事に必要な肉類に……あぁ、それだけだとバランスも悪いので野菜も忘れずに。更に大人数にも対応出来るように持ってきた大鍋で作れば立派な炊き出しだ。
 汗の喪失にも対応すべく塩も振って。優しき味わいが喉から胃へと落ちれば――
「テ、テルルさん。俺も手が使えなくて……」
「あっ、テメェ! さっきまであんなに元気だったのに!!」
「おや。こんなにいらっしゃるのであれば……もう少し追加する必要がありそうですね」
 なぜか負傷者の申告が増えて、テルルは一旦調理場へと帰還。
「どうしたお前さんら! あっ、温泉も欲しいのかの? 遠慮するでない、BBAが相手をしてやるでの!」
「げ! ちょ、ま、あんたはお呼びじゃな……うぉぉお湯だああ!」
 そこへチヨが料理襲撃と、温泉の作成を行う。ドラム缶を用意し、怪我をした者の汚れを落とすべく。こういうのは放置しておくと最悪危篤な症状を出す事もあるのだから……
 さすればなんだかんだと士気もあがるものである。
 ああ――皆に元気が取り戻されている。


「さぁ奮い立て諸君。後方へと下がった者の無念は……諸君らに託されたのだから」
 そしてナイジェルは少し最前線の近くへと。
 ここに至るまでに集めた意志を、言葉を。届け――伝える役目は己が担うべきなのだ。
 人に何かを説く事に関しては一日の長がある。
 宗教家というのは……結局のところは神の代弁者であり、何者かの意思を伝えるという行為に勤しむ者だ。その才知をもってして多くの者に己が声を……いや『皆』の声を伝えんとする。
「『頼む』『勝利を』『後を任せた』『負けたら承知しない』――おお、より取り見取り。
 しかし全てが諸君らに期待を寄せているに相違なし。
 諸君らを信じ、勝利の明日を夢見る全てがあるのだ!」
 語るは雄弁。大仰に手を振り、より注目を集める。
 遺跡付近で出陣前の者、一度戻ってきて再出陣を待つ者を鼓舞し。
 負傷者として運ばれる者には――これで終わりではないのだと心に訴える。
「そして――生きて帰るのだ。明日は皆で共有されるものであり。一人で歩むものではない」
 そして、祈る。
 この戦いに関わった者たちが命を落とすことなく。
 一人でも多く無事に戻ってこれるようにと。
 ――湧き上がる熱意。再び蘇る闘志。それらが戦場に満ちれば、ナイジェルは。
「ふっ……だが、祈るだけでは、な」
 再び戻ろう。祈りは尊いが、しかし現実にならねば意味がないと。
 負傷者の治療の場へと戻ろう。
 祈りを現実にするために……一人でも多くの者が生きて帰還できるように。
『みんなお疲れ様なの。ゆっくり休むといいの。元気よく動くだけじゃ、きっとだめなの』
 そして引き続きローレットではMeltingの活動も継続されていた。
 時が立てばやがて落ち着いてくるものである、が。それにはまだ今少し時間が必要そうだ。
 だからMeltingは癒す。優しく丁寧なマッサージで……激闘を制した者達を癒す様に。
『Loveにも……きっと出来る事があるの。それがこれ、なの』
 微かに暇が出来れば飛行し、荷物を届ける作業も行う。
 怪我人が来るのを待っているだけではない。怪我人がいる場所へも往くのだ。
 医療道具を運んだり資材を運ぶ事も――ああ、重要なのだから。

「ああ、なんていう事……こんな、こんな戦いがあったなんて……」

 瞬間。書類を持つ華蓮の指先に歪んだ力が籠められる。
 数多くの資料に目を通している華蓮は――さて。同時にイレギュラーズ達の英雄譚も目にしていた。それらには『難敵を打ち破った――仲間と共に――防衛線を突破した――』などなど、素晴らしい記録があって。
 だからこそ彼女にとっては胸の内に微かな炎を燃やしていた。
 それは嫉妬の影。戦場で活躍する皆が妬ましく。
「……ああいけないのだわ! 早くレオンさんへの物を纏めないと……!」
 頭を振って過った感覚を払う。
 そう。将来はギルドマスターの――レオンの秘書となりたいのだ。
 だからこれはその一歩。他者の活躍を目にしたからと言って、それに薄暗き感情を灯している場合ではないのだ――こういった後方での戦いを行っている己もまたその一員であるのだと、まるで自分に言い聞かせながら。
 次々に資料を探し出し、搔い摘み。
 その中でも特に負傷者の情報が乗っているモノを抜き出し伝達。
 彼女の医療への知識が理解を及ぼすのだ。そして表紙に『優先度の高低』『内容の概要『要対応項目』『その他備考』……のメモ書きを。資料内には要所要所のページにだけ付箋を付ける――
 全てはこれから読む者へ向けた検索性の向上の為。
 つまりはレオンへ手向けたものだ。
 見やすく整理する事でレオンが余計な時間を掛けなくて済むように、との彼女の想い。
「ああ……やっぱり私は、こっちの方が向いているのかもしれないだわね……」
 しかし上手くやれればやれる程に漏れるのは吐息だ。
 戦うよりも後方にて活動した方が……
 再び胸の内に『何か』が渦巻きそうになりながら――それでもと。
「当たり前だけど、ここで働いているわたし達も何か食べないとダメだよ?
 食事は身体を動かすためのえいよーの元なんだから」
 そしてЯ・E・Dは食事を運ぶ。食事をせずに、長時間活動するというのは非効率だ。
 今までと同じように動けているように思えても実は違う。
 パフォーマンスの劣化が意識せぬところで発生しているのだ、だから。
「えっと、他の人達の分は温かい物で良いかもしれないけど……書類仕事をしてる人達はこぼして汚すと大変だから汁物以外かなぁ。うん、きっとサンドイッチが良いよね。なるべく零れないようにして、と……」
 書類仕事をしながらも食べやすいモノ――そう、サンドイッチを作る。
 パンに具を挟んだだけのソレはお手軽ながら味も良い。こういう時の為に生まれた人類の英知の結晶の一つと言えるだろう……野菜を挟み、ハムも入れて。嚙み切りやすいもので構成すれば。
「一口サイズに切り分けたから具がぽろぽろ落ちる事も無いよ。
 足りなかったらお代わりも持ってくるから言ってね?
 これぐらいならお安い御用だから」
 世界中を巡るグルメ旅の経験から肥えた舌から、合う物は分かっている。可能であれば珈琲もあれば喉も潤すのだが――しかし、書類仕事の最中には邪魔かと思考して。Я・E・D
もまた、己が分を一つ齧れば机に向き合う。
「さぁってと……うわぁ。少し目を離しただけでこんなに来るかな普通……?」
 さすればそこに在りしは再び増えた報告書の数々。
 ファルベライズ遺跡中枢での戦いが激化し決戦が始まったという報告も混じっていた。
 ついに佳境か。向こうでの戦いも、こちらでの戦いも。

「はぁ……まぁ、これも誰かがやらないといけない事だしね……!」

 この仕事はきっと己でもない『誰か』でもやれるのだろう。
 しかし『誰か』がやらなければいけない事であり、そしてそれを『自分』がやるのが。
 仕事というものなのだ。
 Я・E・Dは息を漏らしながらも己を奮い立たせる。
 ここも戦場だ。皆で戦う、一つの戦場。

 舞台裏の――死闘は確かに存在したのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――戦場で戦うだけが全てではなく。
 皆さんの様な裏方の行動こそまた、重要なのです。

 ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM