PandoraPartyProject

シナリオ詳細

墓掘りフェリス。或いは、悪魔の胃袋突入作戦…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●彼女は墓掘り
 小さな身体に纏う衣服はつぎはぎだらけ。
 適当に切りそろえられた砂色の髪は瞳を覆い隠すほどに長い。
 頭頂部には大きく幅広い三角形の獣の耳。
 それは猫のそれに似ていた。
 紐で繋いだ棺桶を引き摺り、スコップを担いだその少女の名は“墓掘り”フェリス。
 ヴィーザル地方で墓泥棒を繰り返す、はた迷惑な孤児である。

 雪に残った足跡を追いオウェード=ランドマスター(p3p009184)は、それを見つけた。
 雪の積もった山間部の一角に、突如として現れた直径10メートルほどの深い穴だ。
 足跡の主は、その穴を降りて行ったらしい。見れば、穴の外周添うようにして人が通れる程度の足場があった。
 その足場を使えば、穴の底まで辿り着けるだろうか。
「ふむ……なんだ、この穴は? 何やら異臭も漂っておるし、ただの穴ではなさそうな……む?」
 穴を観察していたオウェードは、視界の端で雪に埋もれた何かを見つける。
 それは、ひと抱え程もあるぬいぐるみであった。
 ゆるい顔をした虎を模したもの。
「とらぁ君ぬいぐるみ? それにこの小さな足跡と、箱状の物を引き摺った痕跡……まさか」
 足跡の主にオウェードは心当たりがあった。
 つい暫く前、彼と仲間たちが雪深い墓地から救出したフェリスと言う名の少女。
 ゾンビの群れから助け出し、その後気づけばどこかに消えていた彼女の安否を気にしてはいたのだ。
 その手掛かりが、こうして見つかったわけだが……。
「追ってみるか」
 明らかに異質な大穴に、一体何の用があるのか。
 足跡を追って、オウェードは地下へと進んでいった。

●悪魔の胃袋
「と、そのような経緯があってな。穴を降りてみたのだが……少々困ったことになってな」
 まっすぐに前を見据えたまま、オウェードは語る。
 彼の視界にはイレギュラーズの仲間たち。
 フェリス救出のため、オウェードが呼集した者たちだ。
 そう、捜索はすでに救出へと目的が変わっていた。
「まず、我々が向かう場所の名は“悪魔の胃袋”と呼ばれている。かつては死体の安置場として使用されていたらしい」
 その死体安置場が現在使用されていないのには、いくつかの理由があった。
 まず1つは、雪の積もった山間部を進む必要があり、行き来に苦労するため。
 そして2つ目だが、自然災害によってそれを使用していた部族が遠くへ集落を移したため。
 3つ目が、廃棄された死体が度々アンデッドと化し、人を襲うようになったため。
「“悪魔の胃袋”とはよく言ったものよな。元々、件の部族の者たちは“死者の身体を自然に返し、魂を冥府へ送るため”にそこへ死体を置いていたそうだが」
 魂の行く先は不明だが、その死体は長い時を得てもなお腐らず、今も時折アンデッドと化し彷徨っている。
 事実、穴の底にまで辿り着いたオウェードは、そこで大量の死体を見たという。
 広い地下空間に隙間なく並べられた死体。
 ウェット・ミイラと化しており、その多くは元の容貌は分からないが、人の形は保っているという状態だった。
 フェリスの姿が見えないことに気づいたオウェードは、少しの間、死体安置所を探索したという。
「結論として、フェリスは見つかった。死体の集合体に取り込まれた状態であったがな」
 オウェードが見たそれは、3メートルを超える巨体を有していた。
 身体は幾つもの死体が寄り集まってできており、頭部に至っては3つもあったという。
 その胸部に埋もれるように取り込まれていた棺桶はフェリスの持っていたものだ。
 蓋の隙間に衣服の端が挟まっているのを見て、ランドウェラはフェリスがまだ生きていると予想した。
「咄嗟に棺桶に飛び込んだのであろうな。とはいえ、環境が環境なのでそう長く持つとは思わんが」
 フェリスを無事に救出するには、胴への攻撃はご法度ということになる。
「適性体は巨大アンデッド、および地下空間の死体たちだのう。巨大アンデッドとの交戦中、次々に起き上がってきよった」
 そう言ってオウェードは、手甲を外して太い腕を晒した。
 そこには、人の手形に痣……否、凍傷が残っている。
「【凍結】の状態異常のようだったな。あぁ、形の残っているアンデッドはおよそ30体ほどだ。動きは鈍いが、とにかく数が多いのが難点だな」
 アンデッドに囲まれ、身動きが取れなくなったところを巨大アンデッドに襲われる。
 その結果、オウェードは撤退に追い込まれたという。
「巨大アンデッドの攻撃には【呪い】【魔凶】【懊悩】の状態異常が付いておる。武器として振るう骨の斧もなかなかの威力だったわ」
 あれは1人では抑えきれん。
 そういってオウェードは、自身の髭を引っ張った。

GMコメント

こちらのシナリオは「墓掘りフェリス。或いは、死体漁りの災難…。」のアフターアクションシナリオとなります。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4985


●ミッション
フェリス・マルガリータの救出

●ターゲット
・フェリス・マルガリータ×1
スナネコの特徴を備えた獣種の少女。
ボロ布を繋ぎ合わせたような服。
砂色の髪。
痩せた体躯。
スコップと棺桶を携えた少女。
墓泥棒を生業としている。また、趣味として気に入った死体の部品を収集することも。

現在、忍び込んだ死体廃棄場で巨大アンデッドに捕らわれている状態にある。
意識の有無は不明。
棺桶に収まった状態で、アンデッドの胴に取り込まれている。


・巨大アンデッド×1
複数の死体が集合して出来ている巨大なアンデッド。
3メートルオーバーの巨体を誇る。
胴体部分には棺桶(inフェリス)が埋め込まれている。
頭が3つあるので、不意打ちが成功しづらい模様。
武器として骨の斧を使用する。

ボーンバッシュ:物至範に大ダメージ、呪
 骨の斧に呪いを付与して振り回す。

不死者の特攻:物中単に大ダメージ、魔凶、懊悩
 不気味なオーラを纏った猛攻。
 相応に揺れるため、使用されるとフェリスが弱る。


・アンデッド×30
ウェット・ミイラ(脱水処理を施さないまま、自然環境により成ったミイラ)
生前の容貌は窺えないが、腐っているわけでもない。
動作は鈍く、キンキンに冷えている。
普段は寝ているようだが、音に反応して起き上がる。

冷たい手:物近単に小ダメージ、凍結

●フィールド
悪魔の胃袋。
ヴィーザル地方山間部、地面に空いた直径10メートルの穴。
下っていくと、広大な地下空間に辿り着く。
かつては死体安置場として使用されていたようで、数十体の遺体が安置されている。
壁や地面は、非常に硬いが一応土。頑張れば掘れる。
身を隠すような場所はない。
穴の直下は光が届いているため明るいが、奥に進めば進むほど暗くなる。


●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 墓掘りフェリス。或いは、悪魔の胃袋突入作戦…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈りの先
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
誰かの為の墓守
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
英雄的振る舞い
アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)
不死呪
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の悪食狼
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き

リプレイ

●悪魔の胃袋
 地面に空いた深い穴。
 直径はおよそ10メートル。
 底も見えないほどに深いその穴からは、淀んだ空気と不気味な気配、そして異臭が漂っていた。
「何があったやらは知らぬが命知らずな事よ。まぁ仕事なればサクッと終わらせるのであるよ」
「えぇ、まったく、人騒がせなにゃんこですわね。でも起こってしまったものは仕方がありませんわ。皆で助けに行ってあげましょう!」
 ランタンを掲げ穴を下る『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)。そして、その後ろに続く『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が言葉を零す。
 彼女たちの目的地は穴の底にある死体安置所。
 そこに捕らわれているという少女・フェリスを救出することだ。
「依頼を成功させるために必要だから、助ける。言っておくけど、俺はそれ以上の肩入れはしないぜ?」
 握った拳を鳴らしつつ『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)はそう言った。
 地下に進めば進むほど、死体特有の臭いが強くなってくる。ブレイズは眉間に皺を寄せ、そっと鼻を手で覆った。
 地下空洞まであと僅かというところで『不死呪』アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)は足を止めて、そっと耳に手をあてる。
 地下より響く何かの声に気が付いたのだ。
「ワタシも前の世界で死ねなかったのできっとアンデッドも死んでも死ねないのは辛いでしょうからここで全て殲滅してまいまショウ」
 アオゾラが耳にしたその声は、おそらく死者の呻きであろう。
 ちら、と視線を仲間と交わし『英雄的振る舞い』オウェード=ランドマスター(p3p009184)が前に出る。重装甲の 胸部を叩き、彼は告げた。
「さあ着くぞ! ワシをどのように動かすは任せるとする!」
 その宣言を最後に、彼は黙って地下へ向けて歩き始めた。

 地下空洞を彷徨い歩く数体のミイラ。
 生前の面影を色濃く残しているものの、変色した肌や落ち窪んだ眼窩を見るに、死後長い時間が経過していることが分かった。
「……個人的に墓荒らしはぶん殴りたいが。それよりも死者の弔い方は色々とはいえこうなったものは見逃せない」
『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)は墓守だ。彼にとって、死者の眠りを妨げるという行為は、とてもではないが許しがたいものである。
 けれど、今回の救出対象であるフェリスの職業は“墓泥棒”。つまり、グリムの存在意義とは真逆に位置している者だ。
 とはいえ任務は任務。
 武器を手にし、彼はミイラへ向かって進む。
 死者に再度の安らかな眠りを。
 それこそが自身の役割であると、彼はそう認識していた。
 コツン、と小さな足音が響く。
 それに反応するように、地下空間の奥で巨大な何かが蠢いた。
 それは複数の遺体が寄り集まって形成された巨大アンデッドである。体躯に比べ、脚は短く、腕は長い。太い胴には 棺桶が1つ埋め込まれており、加えて言うならその肩のうえには3つの頭が乗っている。
「なんでまた死体が合体なんかしちゃったんだろうね? しかもそのアイダに巻き込まれて取り込まれちゃうなんてね」
 巨大アンデッドへ視線を向けて『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は両の拳を打ち鳴らす。
 その胴に埋まる棺桶の中に、フェリスが閉じこもっているのだ。生身のまま、巨大アンデッドに吸収されれば、その時点で彼女の命運は尽きていたことだろう。アンデッドに遭遇し、咄嗟に棺桶に飛び込むだけの余裕と判断力があったという意味では、フェリスはなかなか“運”が良い。
 アンデッドだらけの地下空間にうっかり足を踏み入れるあたり、不運の値も相応に高いようだが。ともかく、幸運も不運も、等しく“運”には違いないが。
「じゃ、やろうか。とりあえずタンクの人達は巨大アンデットの方に集中して。できるかぎり普通のアンデットはそっちに通さないから」
 タン、と軽い足音を鳴らし『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)が駆け出した。
 その足音に反応し、眠っていたミイラたちも続々と立ち上がりはじめたようだ。眼前に並ぶ死体、死体、死体の群れ。
「……でも、少しくらい通しちゃったらゴメンね」
 赤のコートを翻し、敵陣へ切り込むЯ・E・Dは無表情のまま、頬に一筋汗を垂らした。

●VSアンデッド
 迫るアンデッドを蹴り飛ばし、Я・E・Dは両の腕を顔の前に翳して見せる。
 その手のうちに集約する魔力の渦。
 消費する魔力が膨大なため、そう何度も使える技ではないもの射程、威力ともに申し分のない【魔砲】の発動姿勢に移る。
「わたしが道を開くから、先に進んで。その後は巨大の近くに居る死体から優先的に駆逐していくから」
 Я・E・Dの言葉を受け、ブライアンとオウェードは同時に地面を蹴飛ばした。
 まっすぐ、前へ。
 巨大アンデッドの元を目指して走る2人の姿を確認し、Я・E・Dは魔砲を解き放つ。
 ごう、と空気が渦巻いた。
 眼前に迫ったアンデッドたちを飲み込みながら、放たれたそれは巨大アンデッドの目前で、その巨腕に弾かれた。
 直後、肉片と砕けた骨と血管と、誰かの目玉が飛び散った。
 アンデッドの腕を構成していた死体が弾け飛んだのだ。
 飛び散る肉片を浴びながら、疾駆するオウェードは身体ごとアンデッドの足元へと潜る。
「『7人呼んだ事』『人質持って33人で1人に襲いかかる事』どっちが卑怯かはわからんがのう……言える事はただ一つッ! これで平等になったという事じゃよッ!」
 斧による一撃が、アンデッドの脚部を抉った。
 一瞬、巨大アンデッドの視線がオウェードへ向く。
 3つの頭、6つの眼に見据えられオウェードはしかし好戦的な笑みを浮かべる。
 その巨腕が、骨で形成された大戦斧がオウェードへ目掛け振り下ろされるが、構わない。1撃や2撃で息絶えるほどに柔な身体はしていない。
 そして、何よりオウェードは1人ではないのだから。
「今じゃよ! ブライアン殿!」
「応よ! この機会を待ってたんだ。救助者救出のために最善を尽くすぜ!」
 振り下ろされた骨の戦斧がオウェードの頭部を殴打する。ガゴン、と兜が激しく鳴った。
 よろけながらも、オウェードは歯を食いしばりその場に足を踏みしめる。たったの1歩さえも後退せぬままに、彼は巨大アンデッドを睨んだ。
 3つの頭がオウェードを睨むその間に、ブライアンは巨大アンデッドの背後へ回る。
「おら、こっちだこっち!」
 降り抜かれた拳が、巨大アンデッドの腰を打ち抜く。
 ぐちゃり、と腐りかけた肉の潰れる音がした。
 無数の死体に阻まれて、殴打の衝撃は棺桶にまでは届かないだろう。そういう位置を狙って殴ったのだから、それは当然だ。
 しかし、ダメージを負った死体は胴から剥がれて落ちた。
 確かな手ごたえを感じ、ブライアンは再度の攻撃を試みるが……。
「いかん!」
 オウェードが注意を喚起するが間に合わない。
 巨大アンデッドの振り抜いた骨斧が、オウェード、そしてブライアンの身体を裂いた。

 立ち上がり、動き出したウェット・ミイラの動作は大きく分けて2つに分類されるだろうか。
 つまり、巨大アンデッドの元へ向かう個体と、入り口近くのイレギュラーズへ襲いかかる個体である。
「ウェット・ミイラの数が多くなって来ましたね。纏めて片付けてしまいまショウ」
 ここまでは、仲間を巻き込まないよう【スティールライフ】を主な攻撃手段としていたアオゾラだが、隣にいたЯ・E・Dがミイラに押し倒されたのを見て、作戦の軌道修正に至る。
 自身に群がるミイラの相手を一旦仲間へと託し、彼女は胸の前で手を組み、そして目を閉じた。
「すぅ……」
 淀んだ空気を肺いっぱいに吸い込んで、紡がれるは破滅の歌唱。
 魔力を孕んだアオゾラの歌声が響き渡るにしたがって、ミイラたちの動きにいくらかの乱れが生じた。中には、隣に立っていた別のミイラへ喰らいかかる者もいる。
 死体が死体を喰らうなど、まるでここは地獄のようだ。
 なるほど、悪魔の胃袋とはよくぞ言ったものである。
「見ていられないな。もう目覚めないようにここで確実に眠ってもらう」
 同士討ちを始めたミイラたちへ向け、グリムは武器を突き出した。
 彼の放った一撃は、正確にその頭部を射貫き、ミイラたちの動きを止める。
 ばたり、と地面に倒れたそれは、もはや単なる死体であった。
「さぁ、こっちへ来い。霊魂はともかく遺体だけでも再度眠っていただこう」
 グリムは武器で地面を叩いた。
 その音に反応し、ミイラたちは四方からグリムへ押し寄せる。伸ばされた冷たい手がグリムの肩を鷲掴む。腕に喰らい付く個体もいれば、顔面に向け凍えた手を伸ばす個体もいる。
 ミシ、と掴まれた肩が軋んだ音を鳴らした。
 腕の肉が食いちぎられて血が零れる。
 顔面に伸ばされた手を打ち払い、グリムはその喉元に武器を差し込み、押し倒す。
「ところで……アンタには後で言いたいことがある」
 と、そう呟いたグリムの視線のその先では、しゃがみこんだЯ・E・Dが“何か”を喰らっていた。
「んー? あ、これ? ウェットでドライな干物みたいかと思ったら冷たすぎて、まるで冷凍の塊肉だよね。わたし、今回はコレを食べに来たんだけど」
 牛や豚を人は食料として喰らうだろう。
 で、あれば“獣”が人を喰らうのも、また自然なことなのだ。

 火炎を纏ったメイスによって、ミイラの頭部が粉砕された。
 黒き拳の一撃が、腐った胸部に風穴を穿つ。
 手弱女のそれにも似た拳による殴打の嵐が、滅多やたらと降り注ぐ。
 ヴァレーリヤ、イグナート、そして百合子の3人はミイラたちをなぎ倒しつつ、巨大アンデッドへ向け進行していた。
「次、左から1体来るヨ!」
 【暗視】スキルを持つイグナートが、仲間たちへ指示を出す。
 その指示に従い、ヴァレーリヤは即座に左へ身体を向けた。
「彼らも主の御許に届けてあげないといけませんし、ね」
 小さな身体を命一杯に躍動させて、振り抜かれるは無骨なメイス。
 火炎を纏うその一撃が、ミイラの胴を打ち抜いた。
 ミシ、と骨の砕ける音と、肉の潰れる音が響く。倒れた遺体は、ヴァレーリヤの放った火炎に焼かれて灰へと変わっていった。
 
 切り開かれた道を抜け、ヴァレーリヤは疾駆した。
 地面を蹴って、高く跳んだ彼女の向かうその先には、腰を低く落とした姿勢の巨大アンデッドの姿。振り抜かれた骨斧はブライアンとオウェードが2人がかりで押さえている。
「どっせーい!!!」
 落下の勢いを乗せた一撃が、頭部の1つを叩き潰した。
 全身全霊を籠めたヴァレーリヤの一撃は、アンデッドの巨体をもってしても耐えきることは難しい。姿勢を崩し、膝を突いたその瞬間、その眼前へと素早く百合子が駆けこんだ。
「クハッ! やっと全力で戦えるな! 吾が白百合清楚殺戮拳の冴えを食らうがよい」
 黒き艶髪を靡かせて、放たれるは拳のラッシュ。
 殴打に次ぐ殴打の嵐が、当たるを幸いにと巨大アンデッドの顔面に次々叩き込まれた。
 鼻が潰れ、歯がへし折れ、窪んだ眼窩から眼球が零れ落ちる。
 衝撃で揺れたその巨体。
 胴に埋まった棺桶の中から「あぁぁぁあ!」とか細い悲鳴が響いた。
 悲鳴の主はフェリスであろうか。
 ぎょっと目を見開いたオウェードが「まずいぞ」と言葉を吐いた。
 可能であれば今すぐフェリスを助け出したい。
 けれど、オウェードとブライアンは骨斧を抑え込むのに精いっぱいだ。
 だが、この場には頼れる仲間がもう1人。
「オレに任せテ!  引き摺りだせば、エンリョなくデカブツを殴れるようなるからネ!」
 イグナートの伸ばした腕が、アンデッドの胴に抉り込まれた。
 肉を裂き、血管や内臓を押しつぶし、黒い腕が奥へ奥へと突き進む。
「っ!! ヨシ!」
 その指先が重厚な木箱を掴んだ。
 フェリスの収まっている棺桶だ。万力のようなイグナートの握力をもってすれば、一部にだけでも指がかかれば、決してそれを離すことはあり得ない。
「ゥゥ、ォォオオオオ!!」
 雄叫びと共にイグナートが腕を引く。
 腐肉に足を立て支えにしながら、片腕だけの力で棺桶を引きずり出した。
 よほどに煩わしかったのだろう。
 振り下ろされたアンデッドの拳が、イグナートの頭部を叩いた。衝撃が脳を揺らす。額が割れて、血が溢れた。
「おい、あんたっ、血が!!」
 銀の髪を赤に濡らしたイグナートを見て、ブライアンが悲鳴染みた声をあげた。
 けれど、イグナートは血に濡れたまま気丈にも笑って見せるのだ。
「ダイジョウブ! それより、少し待ってなヨ。すぐにヒザ着かせて、下がって来た頭を殴って砕けるようにしてやる!」
「えぇ、一気に決着をつけるつもりでございますわーーー!! さぁ、これでも喰らいなさい!」
「うむ、即座に取って返して戦闘に戻るのである!」
 百合子の拳と、ヴァレーリヤのメイスが残る2つの頭部を打った。
 衝撃を受け、アンデッドの巨体が空を仰ぐ。その隙を突いて、イグナートは腕を引き抜いた。
 肉片や血管、干からびた内臓と共に、引き摺りだされた棺桶が地面を転がっていく。

●奪還と脱出
 地面に転がる棺桶へ駆け寄っていく影が2つ。
 人影……アオゾラとЯ・E・Dは棺桶の蓋を叩いて、中にいるフェリスへ呼びかける。
「落ち着いてワタシ達の言うこと聞いて下サイ」
「何なの何なの何なの何なの、何事なの。揺れてる、揺れてる、揺れてるよぉ!!」
「フェリスさん大丈夫そう? 酸素不足と脳挫傷の可能性もあるし、誰かが背負って外に出た方が良いと思うよ?」
「……ダメですね。蓋を開けるのにも時間がかかりそうですシ」
「だったら棺桶ごと戦場から離すんだな。追って来る連中は、自分が相手をしよう」
 また食われてはかなわんからな、と。
 そう言い捨てて、グリムはアオゾラとЯ・E・Dに背を向ける。
 ミイラたちの残りは僅か。
 けれど、1人で相対するには些か数が多すぎるだろうか。
「眠り妨げられし者、もはや忘れ去られた者よ。我はここにその名を刻む」
 ひゅん、と武器を一閃させれば空気を切り裂く音が鳴る。
 静かな声で、囁くように。 
 瞑目し、唱えたそれは死者へ向けた祈りであろうか。
「どうか安らかな眠りあれ、そして次なる生に祝福あれと願わんことを」
 その身は既に満身創痍。
 けれど、墓守が墓守であり続けるために、彼は死者に相対せずにはいられない。
 
 不吉なオーラを巻き散らし、アンデッドは骨斧を縦横無尽に振り回す。
 1歩ずつ前へ進みながらの猛攻を、真正面から浴びた百合子は意識を失い、地に伏した。その頭部を踏みつぶすべく、アンデッドは足を高くにあげた。
 百合子は【パンドラ】を消費し起き上がるが、このままでは回避も間に合わないだろう。
 けれど、片足を上げた不安定な姿勢となったその隙を、見逃すイレギュラーズではない。
「救助者を引き剥がしたなら、もう遠慮はいらねぇよな」
「えぇ、やりますわよ。っ……どっせえーーい!!」
 アンデッドの膝を目掛けて、ブライアンの拳と、ヴァレーリヤのメイスが叩き込まれた。
 死肉の潰れる不快な感触。
 骨の砕ける湿った音。
 ガクン、と前へ向け倒れるその顔面へイグナートと百合子の拳が叩き込まれた。

 悪魔の胃袋を脱出した一行は、棺桶の中で蹲ったフェリスへ向けて言葉を投げた。
 まず初めに声を上げたのは百合子である。
「何用があったかは知らぬがな、他人の手も良い武器よ。対価は居るが……そこの髭の方など頼まれもせぬのに貴殿を探したからな」
「まぁ、死体漁りは貴女の趣味でもある以上は辞めるのは難しいだろうけれど、次からは気をつけて。危ない場所には踏み込まないようにね?」
 次いで言葉をかけたのはヴァレーリヤだ。
 死体を漁る彼女の生き方に思うところはあるのだろうが、力を持つ者こそが正義といったようなヴィーザルの地では、そういった生き方を選ばざるを得ない者も出てくるのだろう。
「たしかにゼシュテルでは実力があればどんな生き方でもジユウさ! 実力がなくても生き方はジユウだけれど、生き残れるほど優しい土地柄じゃないしね!」
 事実、イグナートとてフェリスの生き方に一定の理解を示してはいる。
 好きに生きて、好きに死ぬ。
 ゼシュテルという場所に限れば、弱肉強食こそが真理であることは間違いない。
「まぁ、儂にはなかなか馴染めぬ考え方であるな。ところでお前さんは前に“友達が欲しい”とか言っておったのう……ならワシが友達になってあげようかね?」
 と、そう言って。
 オウェードはフェリスの手に“とらぁ君ぬいぐるみ”を手渡した。
 空になった棺桶と、オウェードの顔を交互に見やり、彼女はくすりと、困ったように笑うのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578) [重傷]
誰かの為の墓守

あとがき

お疲れ様です。
無事にフェリスは救出完了。

依頼は成功しました。
皆さまの言葉は果たして彼女に届いたでしょうか。
少なくとも、笑顔を浮かべることが出来る程度にはイレギュラーズに心を許してくれたようです。

さて、この度の依頼、ご参加いただきありがとうございました。
縁があればまた別の依頼でお会いしましょう。

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