シナリオ詳細
モチスライムを護って
オープニング
●モチスライムを狙う者達
幻想北部、ドレヴィング平原。曇り気味の空の下、降り積もった雪が蠢いている。
否、雪が蠢いているのではない。よく見れば、雪の上にいる白い何かが蠢いていることがわかるだろう。
その何かとは、モチスライム。雪が降り積もった時に、ドレヴィング平原に現れるというスライムである。
雪のように白い体色とその食感からその名の付いたモチスライムだが、獲れたてのモチスライムは搗きたての餅のような食感と味がすることで知られており、ドレヴィング周辺では季節限定の珍味として知られていた。
「ヒャッハー! いるぜいるぜたっぷりといるぜえ!」
「狩れば狩っただけ、高く買い取ってもらえるんだろう?」
「こりゃあボロ儲けじゃねえか、オイ!」
南方にある森林を抜けてドレヴィング平原に姿を現した一団は、そんなモチスライム達の姿を目の当たりにして歓喜した。彼らは、とある商人に雇われてモチスライムを密漁に来た荒くれ者どもである。
元より資源保護の目的でモチスライムの狩猟には制限がかかっているのだが、金のためにはそんなものは無視して乱獲しようという輩はやはりいるものであり、彼らの雇い主の商人もその一人だった。ドレヴィングでしか味わえない珍味のモチスライムを他の地域で売りさばくことで利益を上げようとしており、そのためには資源保護だの狩猟制限だのは知ったことではない。
報酬は狩った数で決まるとあって、荒くれ者どもはモチスライムを狩りにかかろうとする。だが、彼らはまだ知らない。彼らに迫らんとする一団があることを。
●モチスライムの乱獲を許すな
時は少し遡って、ギルド・ローレットの一室。
「ドレヴィング平原で、モチスライムを狙う密猟者を退治してもらえませんか!?」
『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)は、バタバタと駆け込みながら眼前のイレギュラーズ達にそう呼びかけた。
勘蔵が言うには、ある商人が荒くれ共を雇ってモチスライムを密猟しようとしていることが発覚したため、モチスライムを乱獲から護る依頼をドレヴィングの街から取り付けたのだと言う。
「ドレヴィングの街としても狩猟制限をしてまで資源保護に努めている以上、モチスライムを乱獲されるわけにはいきませんからね。
今から急げば、何とか密猟者の一団に追いつけるはずです」
そこまで言ってから、勘蔵は大事なことを思い出したという風に付け加えた。
「あ、そうそう。依頼に成功したらドレヴィングの街の皆さんが、モチスライム料理のパーティーを開いてくれるそうです。
是非依頼を成功させて、モチスライム料理を堪能しましょうね♪」
その時の勘蔵の表情は、「お前それが目当てだったんだろ」とイレギュラーズ達に思わせるくらいのいい笑顔だったと言う。
- モチスライムを護って完了
- GM名緑城雄山
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年02月11日 22時00分
- 参加人数8/8人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●乱獲許すまじ
「ほうですか、モチスライム。大陸には、妙な生き物がおるんですの」
「僕も、そんな生き物がいるなんて初めて知りました」
それが、今回密猟者から守るべきモチスライムについて聞かされた『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)と『知らないこといっぱい』ニゼル=プラウ(p3p006774)の第一声だった。もっとも、豊穣にせよ大陸にせよ、それが無辜なる混沌の内である以上、奇妙な生き物、知られざる生き物の存在は珍しい話ではない。
「それにしても、ルールを守らないで密猟する方達がいるんですね……」
生まれ育った村の外のことをあまり知らず、また真面目で律儀な性格のニゼルは、密猟者の存在にがっかりしたような様子を見せる。
「ああ。密猟はよろしくない。価値が高いからって狩り過ぎたら絶滅してしまう。
絶滅したら二度とモチスライムを食べられないし、他の生物にも影響があるかもしれない」
『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)は、そうした悪影響を理解しようともせずにモチスライムを密猟しようとする者達を逃すまいと真剣な表情で意気込む。
「そうね、駄目ねー。獲り切ったらそれ以上稼げないのにねー。
それに、貴重な素材を一時の為に乱獲するなんて……ウフフ、許さないわよー」
『お料理しましょ』嶺渡・蘇芳(p3p000520)は笑顔を崩さないでいたが、密猟者を許す気がないのはイズマと同様だ。むしろ、笑顔を崩さずに「許さない」などという分、ゾッとする何かを感じさせた。
そうして依頼を受けたイレギュラーズ達は、密猟者を追ってドレヴィング平原へと急行する。
「もうすぐ、密猟者に追いつけそうですの。そいじゃあ皆さん、食事の前に一仕事と行きやしょうか!」
召喚した鳥のファミリアーによって密猟者の一団を空から捕捉していた支佐手の言葉に、イレギュラーズ達は心を一つにして深く頷いた。
●先制攻撃!
「一人たりとも、逃がさないわよー。許してもあげないんだからー」
モチスライムを狩りはじめようとした密猟者達の側方に突如躍り出た蘇芳は、ゴウと燃え盛る猛烈な炎を纏った大きなフライパンを全力で横薙ぎに振り抜いていく。
「ぐあああっ! 熱ぃ、熱ぃよおっ!」
不意を衝かれてフライパンの直撃を受けた二人の密猟者が、フライパンから燃え移った炎に包まれて他の密猟者の方へと弾き飛ばされる。
突然の事態に困惑する密猟者達だったが、冷静になる暇さえもなくイレギュラーズ達の攻勢が続く。
「ボク向こうで頑張ってるから、格好良く助けに来てね、美咲さん! えへっ♪
いってきまーす!」
「任せて。ヒィロも、頼りにしてるわよ」
『ハイパー特攻隊長!』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は、『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)に期待と信頼を込めた笑顔を向けると、密猟者達を後ろから追い抜きその前方に躍り出た。そして、『星天』を鞘からスラリと抜き放つと、速力を乗せた一閃を放つ。
「ボクが言うたいのはただ一つ、今からキミ達が狩られる獲物になるってこと!
大人しく捕まるなり殺されるなりして、ボク達の報酬になってもらうの。
――狩っていいのは狩られる覚悟がある奴だけだって、その体と命に教えてあげる!」
「ぐあ、あっ……!」
大上段から振りかぶられた一撃は、ザックリと最前にいた密猟者を斬り伏せた。
(環境保護とか言う気はないけど、何て言うかな……まあ『気に入らない』でいいか)
ヒィロを微笑んで見送った美咲は、表情を引き締めて、密猟者に対して抱いていた言葉にしがたい感情を単純な言葉で片付ける。そして呼吸を整えて浮遊すると密猟者達との距離を詰め、その前方を狙って腐食結界『ラヴィアンローズ』を展開した。
「痛えっ! 何だこれは……!」
『ラヴィアンローズ』の茨が密猟者の四人ばかりに絡みつき、棘がその身体に突き刺さっていく。
(モチスライム……不思議な生き物ですね。
なんか見てて面白いのでペット用に一匹持って帰りたいのです……)
初めて見るモチスライムの姿に、そんな雑念を抱く『協調の白薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247)だったが、その行動は確かだった。雑念を抱いている間にも密猟者達のすぐ後方に接近し、聴く者を凍てつかせる哀しみの聖歌を歌う。なお余談だが、モチスライムは普通の環境だと死んでしまう。それをラクリマは、後から知ることになる。
「この歌から、逃がしはしません」
「さ、寒いぃっ!」
ラクリマの近くにいた五人の密猟者が、身体を凍てつかされて寒さに震え、動きも鈍らされていく。
それに続いて、『もふもふねこ巡り』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も密猟者達の後方へと接近していく。
「街の人達が絶滅しないよう制限設けて頑張ってるのに、勝手に乱獲するのは駄目だよ?
身勝手に乱獲するような、密猟者とかの願いは叶わないし叶えない!」
自らを人々の願望を叶える器たらしめんとする魔術紋が本体であるヨゾラは、まず密猟者達に諭すように語りかけてから、密猟者達の願望を一蹴。そして自らの背中に光輝く翼を顕現させると、その翼をバサリと羽ばたかせて光の羽根を舞い散らせる。
「ぎゃあああっ」
羽根は光の刃と化して、ラクリマの聖歌によって身体を凍てつかされた密猟者達を斬り刻み、満身創痍にまで追い込んだ。
「俺たちもモチスライムに興味があるんだよね! だから、密猟は見逃せないね!」
続いてイズマも密猟者達に接近すると、声高らかに叫ぶ。その叫びは見事に、一団のうち後方にいる密猟者の注意を引き、イズマへの敵意を高めていった。
「出でませい! 水銀の女神よ!」
「うげええええっ!」
支佐手は呪言を唱え、一団の中心に水銀の女神を召喚する。水銀の女神の周囲には硫化水銀からなる真紅の沼が出現し、燃焼されていく。その際に発生する有毒なガスは、密猟者の皮膚や目、そして呼吸器さえも腐食させ、あたかもそれらの部位が灼けるかのような苦痛を与えていった。
「茨よ! 動きを止めて! モチスラちゃん、今のうちに逃げてね!!」
「ぐっ、畜生ッ!」
討伐依頼は初めてであるため緊張していたニゼルであるが、それだけに皆の足を引っ張るまいとする意気込みも、モチスライム達を守って依頼を達成しようとする気持ちも強い。ニゼルは未だ誰からも攻撃されておらず、イズマの挑発によって敵意を煽られていない密猟者を上手く見定めると、指先から魔性の茨を放ち、絡め取っていく。
●密猟者、全滅
突如始まった戦闘に、周囲のモチスライム達はこの場を離れようとする……のだが、残念ながらその動きは鈍い。
しかし、それでも一体たりとも密猟者達に狩られることはなかった。
いくら目の前に高く売れるモチスライム達がいたとしても、明らかに密猟を阻止するために攻撃を仕掛けてくる者がいる以上、密猟者達は応戦せざるを得ない。しかも、半分はイズマに、半分はヒィロに敵意を煽られているというおまけ付きだ。
そして、ただでさえ密猟者達の戦力はイレギュラーズに劣る。それが隙を衝かれて先制攻撃された時点で、勝ち目があるはずはなかった。如何にか冷静さを取り戻して体勢を立て直そうとするも、元よりただの荒くれでしかなく、数だけはいても連携も何もなく、一人、また一人と倒されていったのだ。
「うふふ、うふふふふー……♪ お料理や食べ物絡みの怨みは重いのよー。
一人残らずお料理してあげるわー♪」
まさか、自分が「料理」される側になったとは思うまい。そして、蘇芳の笑みに密猟者が恐怖を感じる暇が、果たしてあったかどうか。
蘇芳の専用包丁『銀嶺』のうちの一振りが、尋常ではない蘇芳の速度を乗せて密猟者の胸板に突き立てられる。その威力は、到底ただの荒くれ程度が耐えられるものではない。
「……かはっ」
蘇芳が『銀嶺』を密猟者から引き抜くと、密猟者は血を吐いてその場にどうと倒れた。
「ボク言わなかったっけ? ここで死ねって。あはっ」
ヒィロは辛辣な言葉と共に、目の前に集まっている密猟者四人に向けて己が闘志を叩き付け、我を忘れるほどに敵意を煽り立てる。そして、ヒィロの闘志によって我を忘れた時点で、この密猟者達の命運は詰んでいた。
「美咲さん、ボク頑張ってこーんなにいっぱい獲物を確保しといたんだよ! 褒めて!」
「うんうん、沢山捕まえたね、ヒィロ! ……あとは、任せて」
「ぎゃああああっ!」
側方から密猟者達を大きく迂回するようにしてヒィロの近くまで前進した美咲が、邪悪を灼く神聖なる光をヒィロを中心として放つ。
ヒィロが敵意を煽り忘我に至らしめた隙を衝いて、美咲が最も効果的な形で必殺の一撃を浴びせる。幾多もの敵を相手にしてきた連携は、今回も見事に活きた。
眩い聖光に灼かれた密猟者達は、一人残らずバタバタと昏倒した。
「誰も、俺の蒼剣からは逃れられないのです!」
ラクリマは祈りの聖歌を高らかに歌い上げる。その音色は空中に蒼き剣の形をした魔力塊をいくつも創り出した。そして、イズマに集っている密猟者の一人を狙って指先を振り下ろすと、魔力塊はその密猟者めがけて雨の如く降り注いでいく。
「がっ!?」
頭上から降り注ぐ数多の魔力塊を避けることもままならず、そのほとんどをその身に受けた密猟者は、自分の身に何が起きたか理解出来ないような表情で倒れていった。
「逃がすわけには、いかんですけえの。見えぬものは、避けられんじゃろう」
「ぐっ! く、そぉ……」
ラクリマに続いて、支佐手もイズマの前の密猟者を狙い不可視の悪意を放つ。支佐手の言葉どおり、支佐手に狙われた密猟者は自身に迫る悪意を避けられずに直撃を受けてしまう。悪意を受けた密猟者は、身体をガクンと大きく震わせると支佐手に恨めしそうな視線を向けたまま、意識を喪った。
「大丈夫、ですか?」
自身の攻撃の威力が高くないと自覚しているニゼルは、序盤は茨による足止めに尽力し、イズマが密猟者達に集中攻撃されるようになってからはイズマへの回復に集中していた。戦況も終わりが見えて攻勢に転じるか一瞬迷ったニゼルだったが、これまでの味方からの回復を受けてもイズマの傷が軽くない事を踏まえて、今回もイズマに治癒魔術を施すことを選んだ。
「ニゼルさん、助かった!」
ニゼルによる癒やしを以てしても、まだイズマの傷は軽いとは言えない。それでも、傷のいくらかが塞がったこともあってか、イズマの声には活力が戻ってきていた。
「さあ、反撃と行こうか! そろそろ、終わらせないとな!」
「があっ!?」
まだ傷は残るとは言え、イズマの動きは癒やしを受ける前までとは明らかに違っていた。そこに、魔術を織り交ぜて独特な動きとする。密猟者はイズマの動きを見切ることが出来ずに、鞭を避けることも受けることもままならず、ただ一方的に次々と鞭打たれて力尽きた。
残る密猟者は三人。だが、彼らの命運は風前の灯火だった。
「命を奪いに来ておいて、逃げられると思わないでね?」
「く、そおぉ……」
バサリ。ヨゾラが光の翼を羽ばたかせ、光の羽根を舞い散らせる。舞い散った羽根は光の刃となり、残る密猟者達をズタズタに斬り刻んだ。密猟者達はその傷に耐えきれず、残らずその場で意識を喪い倒れ伏した。かくして、密猟者達は全滅し、モチスライム達は守られた。
●待望の、モチスライム料理パーティー!
密猟者達は、何人かは息絶えたものの大半は昏倒しつつも生き残った。イレギュラーズ達は密猟者達を残らず捕縛すると、ドレヴィングの街に連れ帰りその身柄を引き渡した。後は、ドレヴィングの街側の仕事だ。
そして、イレギュラーズ達に感謝の意を示すべく、事前に聴かされていたとおりモチスライム料理パーティーが開かれる。
(さっきまで守ってたモチスラちゃんを食べるのは……いや気にしない気にしない! おいしそうだし!)
ほんの少し、内心で躊躇を見せたニゼルだったが、それは忘れることにした。既に、モチスライムの身が焼ける香ばしい匂いが辺りに漂い、鼻孔をくずぐってきたからだ。
そんなニゼルが用意したのは、ネギと大根。だし汁に醤油を加えて、たくさんの刻みネギ、大根おろし、海苔、鰹節を入れ、焼けたモチスライムの身を浸せば、醤油餅の出来上がりである。モチスライムの身が、それぞれの具の味を受け止めて、口の中で渾然一体の味わいを醸し出す。浸した汁がだし汁をベースとしており、具も味が強すぎないこともあって、さっぱりした感じの味わいである。
「柔らかいお餅なら、からみ餅かしらねー。卸した辛味大根とお醤油を混ぜて、お餅を落としてー……。
この辛さが良いのよねー、お酒が欲しくなるわー♪」
「どれがいいですか? 『震電』、『零』、『流星』、あと赤ワインと白ワインもありますが……」
からみ餅を満面の笑顔で堪能する蘇芳が酒を欲しがれば、ドレヴィングの街の住民が酒のリクエストを聴いてくる。『震電』、『零』、『流星』は米を発酵させて造ったいわゆる日本酒であり、『震電』はキレのある鋭い味わいがあり、『零』は吟醸香が強く、『流星』は舌の上でサラリと流れると言う。そしてワインはワインで、モチスライムの身に合うと言う。
「うーん、ひととおり頂こうかしらー」
「お酒、あるんですね! 俺も欲しいです!」
蘇芳は少し悩んだ末、どれも味わってみたいと全部をリクエストする。それを見たラクリマは、自分もと酒をリクエストした。
ラクリマが食べているのは、モチスライムの身に醤油を付けて海苔を巻いたシンプルなものだ。だが、その醤油が醤油だけに限らず、辛みのあるワサビ醤油、濃厚な味わいの混ざるマヨネーズ醤油などバリエーションに富んでいる。チーズを挟んだモチスライムは、赤ワインとよく合った。
「ほほう、これが噂のモチスライム料理ですか。故郷の餅とどれだけ違うのか、わくわくしてきますの」
支佐手は、豊穣の餅と味を比べるべく、まずは焼いただけのモチスライムを口にした。支佐手の口内には、噛めば噛むほど餅の持つ素朴な甘味が広がっていく。結果。
「これは……まごうことなき餅ですの」
モチスライムと餅の味が、ほぼイコールで結ばれると断じた支佐手は、様々な料理に手を付けていった。
(……思ったんだけど、モチスライム意外と大きいよな。一体でもかなりの量の餅にならないか?)
そんな疑問を抱いたのはイズマだった。実際のところ、一体でもかなりの量になるのは確かなのだが、一方で街の風物詩と言うこともあり、消費量もかなりのものだったりする。
そんなイズマが選んだモチスライム料理は、雑煮だった。出汁の中に餅をはじめ椎茸や人参、三つ葉などの様々な具を入れた汁物である。
「……美味しいし温まる……! いくら食べても飽きない!」
ドレヴィングの街で用意されている雑煮は醤油ベースの澄まし汁仕立て、味噌ベースの味噌汁仕立てがあって、それぞれの中でもバリエーションがあるのだが、それを差し引いてもイズマは飽きる様子を見せなかった。
「あっ、あまりがっつかんで下さいよ! 喉に詰まって倒れられたら、助けるんが大変ですけえ!」
次々に雑煮を平らげていくイズマを心配した支佐手が、そう声をかけたほどである。
「おいしいね、モチスライム……幸せ……!」
ヨゾラは、モチスライムとドレヴィングの街の住人に深く感謝しつつ、うっとりとした様子でモチスライムの身を堪能していた。最初は食べていい量に気をつけるつもりだったが、どうやら満腹になっても食べきれないだけ用意されていると見れば、オーソドックスな砂糖醤油や海苔巻きから、湯で柔らかくしたモチスライムの身に黄粉と砂糖をまぶした黄粉餅、ガーリックバター醤油と様々なモチスライム料理を味わっていく。
美咲とヒィロも、様々なモチスライム料理を楽しんでいた。量を少なく用意してもらったのを、さらに二人で半分こしたため、満腹にならずにいろいろと味わうことが出来た。
「美咲さん、頑張ったご褒美なーに?」
一通りの料理を楽しむと、ヒィロが狐耳をピクピクとさせつつ、ご褒美が楽しみで仕方ないと言った様子で尋ねる。美咲はそんなヒィロに微笑むと、用意していたシンプルな手作りアイスを手頃な大きさに分けてモチスライムの身で包み、ヒィロに渡す。
はむり、とそれを口にしたヒィロの口内で、温かいモチスライムの身と冷たいアイスが渾然一体となる。
「こ、これは……!? 甘ーい! 冷たーい! 美味しー!!」
至福の表情で、ヒィロはアイスのモチスライム包みをしっかりと味わっていく。正しく、ご褒美に相応しい味だった。
その様子を見ていた蘇芳は、デザートならとモチスライムの身の中に胡麻餡を包み、砂糖を混ぜたミルクに落としたミルク胡麻団子を作り、皆に振る舞っていく。
「甘いのも大好きですー……」
「これも美味しい……本当に幸せ……」
ニゼルとヨゾラはその甘い味わいに、幸せそうな笑顔を浮かべた。
そしてパーティーもお開きになると、モチスライム料理を存分に堪能したイレギュラーズ達は満足感と満腹感に包まれながら帰途に着いたのだった。
成否
大成功
MVP
状態異常
あとがき
ご参加、ありがとうございました。久々のリプレイ執筆となりましたが、モチスライム料理共々お楽しみ頂けましたら幸いです。
皆さんがプレイングに記しているモチスライム料理がどれも美味しそうで、プレイングを読んでて、また、モチスライム料理パーティーを執筆してて、ものすごくお腹が空きました(笑)
今回のMVPは迷いに迷いましたが、初手で密猟者達の約半分に【怒り】を付与して意識を釘付けにして、逃亡を含め自由な行動を阻害したイズマさんにお送りします。
GMコメント
こんにちは、緑城雄山です。去年に引き続き、今年もモチスライムをネタにしたシナリオを出します。
去年はモチスライムを狩って食べるシナリオでしたが、今年はモチスライムを密猟から護るシナリオです。
去年と同じく、成功すればモチスライム料理のパーティーを楽しむことが出来ます。
●成功条件
密猟者の全員を退治する(生死不問)
●失敗条件
以下の何れかが発生する
モチスライム(成体幼生あわせて)が11体以上殺される
モチスライム幼生が5体以上殺される
密猟者が1人でも逃亡に成功する
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●密猟者 ✕20
商人に雇われてモチスライムの密漁に来た荒くれ共です。実力は高くはありません。ただしそこそこタフです。
装備は、狩猟用の弓やクロスボウ、近接用のダガーやショートソードと遠近共に対応可能になっています。
報酬が狩った数次第という出来高制であること、そのモチスライムが眼前にたくさん居ることから士気は高いのですが、逆にそれに目を奪われて後方から迫る皆さんには気付いていません。
密猟者達の最後方から皆さんの最前衛までの距離は、戦闘開始時点で40メートルとします。
●モチスライム ✕平原全体にたくさん
白く丸い餅のような姿と味のスライムです。
成体が直径約3メートル以上、幼体が直径1メートルぐらいあります。
獲れたての成体は搗きたての餅のような食感と味が、幼体はわらび餅のような食感と味がします。食感の違いから幼体も人気ですが、資源保護の観点から狩猟には厳しい制限がかかっています。
基本的に動きが鈍く、大人しい性質のため狩るのは難しくありません。
●商人
荒くれ共を雇ってモチスライムの密漁を試みた商人です。
ドレヴィング近辺には居ないこともあり、このシナリオではどうすることも出来ないものとします。
●ドレヴィング平野
降り積もる雪によって、一面の雪原となっています。
しかし、特に対策を行わなくても足場による悪影響や判定へのペナルティーはないものとします(逆に、足場への対策を行えば内容次第では有利な補正が付くかもしれません)。
●モチスライム料理のパーティー
餅料理と同じ要領で、思いつく限りの料理を楽しむことが出来ます。
餅料理で基本的な、砂糖醤油とか海苔とか黄粉とか、あるいは中に入れる餡子などは用意されています。雑煮などの準備もされています。
もし何か独特の料理を作りたいようでしたら、モチスライム以外の材料を持参する旨と作り方をプレイングに明記しておいて下さい(作り方はそれが載っているURLでも構いません)。
●描写予定
密猟者との戦闘終了まで:モチスライム料理のパーティーを、大体3:1くらいで描写する予定です。なお、皆様のプレイング結果次第でこの割合は変更されることがあります。
●同行NPC
・羽田羅 勘蔵(p3n000126)
ただし、皆さんが密猟者退治に出ている間はドレヴィングの街におり、モチスライム料理のパーティーの間は一心不乱にモチスライム料理を食べているため、基本的に描写されることはありません。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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