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シナリオ詳細

<Rw Nw Prt M Hrw>一角ウサギは漁夫の利がお好き

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 いつもは乾ききっている風に、今日は鉄錆の奥に甘さがある湿り気が乗っている。
 恵みが干上がった砂漠にはごくごくまれに溺れるくらいのお恵みがある。
 ホカホカと湯気を立ててこと切れている大きな肉だ。まだ干上がっていない水気たっぷりの。
 まだ死んではいないが身動きが取れないなら同じことだ。
 首に噛みつけば死ぬ。弱い生き物から死ぬ。
 何でこんなに落ちているのかわわからないが、肉であることには変わりない。
 噛みしめる。
 肉。
 うまい。


 願いを叶える秘宝』が眠っていると噂され、学者達が調査を行っていた遺跡群『FarbeReise(ファルベライズ)』
 その中には、小さな願いを叶える宝、『色宝(ファルグメント)』が眠っていた――

『歪な死者蘇生』の産物である『ホルスの子供達』の製作者『博士』
 その精神と同化し、狂気に陥った遺跡の最奥の祠にまつられた大精霊ファルベリヒト。
 一攫千金をもくろむ大鴉盗賊団は構成員の犠牲をものともせずに進軍してくるだろう。
 放置すれば、混乱は更なる暴走を呼びラサ全域に広がりかねないだろうと推測された。
『ホルスの子供達』の戦闘能力はかなり高い。死人と同じ姿の狂った戦闘マシーンが遺跡の外に流出する事態も避けたい。


「中核に至る手前。地底湖で盗賊団とうちのイレギュラーズが遭遇。実力が拮抗してて泥仕合。辛くもこっちの勝利――なんだけどもさ。漁夫の利っつうか、倒れたやつらをおいしくいただこうとしてる魔獣がわいてるので、排除しつつ、うちの人員回収頼むわ」
 『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は、頑張ったのに生きたまま食われちゃ可哀想でしょ。と、目元をぬぐった。
「――士気おちるしね。ヒト食ったウサギが味を占めて、後ろから他の陣に乱入始めたら困るから。あ、回復向きの人が足りない場合もあるから、敵は皆殺しは全然ありだよ。戦闘に救助対象を巻き込まないように考えてほしいけど」
 情報屋は、メイン目的はかいしゅう。面子に任せると言った。

 ヒトと魔物の争いなどどこ吹く風。獣の掟にのみ従うモノたちには倒れ伏した戦士たちは食料化食糧予備軍だ。
 まだ助けられる命はあるが、盗賊もローレット・イレギュラーズも入り乱れて倒れている。
 安易に活力を付与すれば盗賊達は先手必勝とばかりにローレット・イレギュラーズを殺すだろう。
 だがえり好みしていてはその隙に、魔獣共が盗賊もローレット・イレギュラーズも区別なく食い散らかすだろう。
 
 まだどうするかほんの少しだけ相談する時間はある。
 どうやって助ける? どれだけ助ける?
 そして、何をどれだけ殺す?

GMコメント


 田奈です。
 頑張ったのに報われないってことは時としてありますが、助けられるなら助けたい。助けてください。
 仲間を回復させること前提ですが、どんな術をどういう風に掛けるかを軸に相談してくださいね。
 もう、端から敵は殺していくのが早くね? も、もちろんありです。 
 
● 敵・アルミラージ×8匹
 角がついた大きなウサギです。額から頑丈なのが一本生えています。跳躍して加速をつけて角で突き殺そうとしてきますし、先端で薙いでも来ます。
高速スピンで全方位攻撃もしますが、範囲は狭く、やる前にお尻を振るのでタイミングは見計らえます。
前歯はとがっています。噛み合わせも早いです。このウサギに似た魔獣は肉食です。お肉もぐもぐします。
 色は黄色くぬるぬるします。かわいくない種類なので安心してください。

●敵・大鴉盗賊団×6人
 10人以上いましたが、数人はそもそも死んでたかアルミラージに急所をもぐもぐされたのが致命傷になってこと切れてます。
 まだ生きてます。回復したら、自分を食おうとしているアルミラージに攻撃するか、目についたローレット・イレギュラーズの弱ってるやつを殺そうとします。
 ほっておくと、そのまま遅かれ早かれ死にます。

●要救助対象・頑張ったローレット・イレギュラーズ
 みんな重傷です。回復役もAPが尽きてます。自分達だけでは無事にこの戦闘区域を離脱できない状況です。
 なん鷹アルミラージを威嚇していて、イレギュラーズは食われていません。

場所・ファルベライズ・地底湖・さっきまで戦場だったところ。
 バタバタと。盗賊もイレギュラーズも入り乱れて倒れています。
 そこにアルミラージが散開して、盗賊団の死体を食べている状態です。
 戦闘区域は20メートル四方。天井は3メートルありません。
 地面は堅く、アルミラージの跳躍に支障はありません。
 光源の心配はしなくて大丈夫です。

 関係者
 EXプレイングにて、倒れているローレット・イレギュラーズに自分の関係者がいたことにできます。
 (ない場合は、せいぜい顔を見たことがある程度のローレット・イレギュラーズになります)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Rw Nw Prt M Hrw>一角ウサギは漁夫の利がお好き完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月22日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
クンプフリット・メーベルナッハ(p3p008907)
砂翔ける曲芸師
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針

リプレイ


『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は、ちょっとは楽しみになるかなと思ったのだ。異世界の砂漠のウサギさん。
「ほうほう一角ウサギ。ウサギと名のつくくらいだからさぞ愛らし……くないな!」
 砂漠の生き物は砂に足を取られないように足は細く長くなるのだ。
つまり、あれだ。フォルムが愛らしさを演出する丸みからかけ離れてるコレジャナイ感。あ、でも、耳は放熱のためにおっきい。ちょっとかわいくないこともない。角生えてるけど。
「なんだこれ…形状はうさぎに似てるのに、どう見てもうさうさしてない…毛皮など提供してなるものかという強い意志を感じる……」
 アーマデル・アル・アマル(p3p008599)がげんなりした顔をした。
 ぬるぬると黄色い粘液が毛皮を包んでいるのもかわいくない。生物としての必然性がヒトのツボをつかないこと、ヒトが少ない地域ではよくある。
「ウサギの癖に肉食ってどんな魔物よ。アルトリウスの苦労した首狩り兎じゃないんだから……。勘弁して貰いたいものだわ」
『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)は、嘆息した。
 どこの世界にも、ウサギの化け物はいるようだ。特徴、ヒトをがっかりさせる。
「まあ、退治する対象に可愛さを求めても仕方ない。遠慮なくぶちのめそう」
 というか、ぶちのめしやすくていいんじゃなかろうか。幼気なふわふわウサギさんよりは野犬のミミが長いのと思った方が間違いなく精神衛生上いいはずだ。

「さて、今回の目的は2つ」
 ちょっと大人なので、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が進行に回る。
「魔物を倒し、頑張ったイレギュラーズを救う」
 一同の顔を見回し、ジェイクは口の箸を片方だけ上げた。
「ヒッチャカメッチャカで、ちょいと面倒くさい状況って所だが、まあ、俺達なら問題ないだろうぜ。何せ俺達はプロ中のプロだ」
 一同の顔が引き締まる。どういう偶然か、ここには単独で事を済ませる生業をしていたものが多い。
「俺達なら、その両方を達成できるさ――俺は討伐班として動く」
「俺も討伐」
 アーマデルが頷いた。
「ボクも基本、敵と戦う方向で動くよ」
『砂翔ける曲芸師』クンプフリット・メーベルナッハ(p3p008907)も手を上げた。
「私の役割は敵の討伐、かつ矛先を集め受け持つタンク役だ」
『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は、にこぉと相好を崩した。
「救助最優先だ。その上で俺が敵を引き付けよう」
『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は眼差しをきっした。
「救出の方に行くよ。医療の心得もあるし」
 仮面をつけているが物腰が貴族的な『夜に這う』ルブラット・メルクライン(p3p009557)は、比較的最近混沌に召喚された。
「僕も救出班です。よろしくお願いします」
 ランドウェラは、貴族には敬語を使うことにしている。
「私も救出班よ。さあ、行きましょう。あの、かわいくないウサギにみんなが食べられない内に!」


 リゲルが剣を掲げて声を上げる。
「ここまでよく頑張ってくれた! もう大丈夫だ! 後は俺達に任せて、まずは自分の命を大切にしてくれ!」
 騎士の仕事は、敵の衆目を集めることである。大音声で呼ばわることである。敵の攻撃を一身に受けることである。そして、踏ん張り切ることである。
 一角ウサギの殺人スピンに余人が巻き込まれないように距離をとる。
 ベトベトした毛皮を持つウサギの化け物が、だぶだぶと皮を震わせながら白銀の騎士に向けて跳躍を始めた。

「ふふっ、随分と賑やかな戦場だね。お祭り騒ぎのようだよ」
 一方、マルベートは蝙蝠の翼はためかせ、とがったしっぽを機嫌よく振りながら、これと見定めた盗賊の近くに動いた。放っておいたら死んでしまいそうだが、まあ、今はまだ生きている。
「あぁ、安心して。盗賊の君達も見捨てるような無粋な事はしないさ。私は優しいからね」
 うふふふふ。と、地面に這った盗賊を見下ろし、マルベートは笑う。
「幸運な子よ、最低限の助力はしてあげるから、君も狩りに参加したまえ」
 盗賊の体にびりびりと紫色の雷がまとわりついた。呼吸が楽になる。体が――動く。
「狩りって――」
「ウサギを狩るのさ。かじられたくないだろう?」
 子供に言って聞かせるようにマルベートは言う。
「けど私や仲間達に牙を向けるようなら最優先で君にかけた付与をブレイクさせてもらうよ。この状況で元通りの体力になればどうなるか……分かるよね?」
 死ぬ。端的に死ぬ。
 青ざめた盗賊がそれでも震える手でショートソードを握ったのを見て、マルベートは破顔した。
「さあ、仲良く力を合わせて愉しもうじゃないか!」

「弾数は十分。気合も十分。さて、いつもどおりに仕事に取り掛かろうか」
 いい仕事は、リズムと少しのリラックスが肝要だ。
 リゲルとマルベートが敵を引きつけてくれているのを確認した。
 大体の目算をつけて、『狼牙』と『餓狼』の二丁を手に取る。大きくて凶悪としか言いようがない大型拳銃だ。
 しん。と、定まる。どこに鋼の驟雨を降らせるか意志と指の感覚が重なり合う。
「識別があるし、ターゲット以外に狙いが逸れることはねえから安心だ」
 確信犯ほど質の悪いものはない。
「そして、俺達がアルミラージを相手取っている間に救助班がイレギュラーズを救い、盗賊たちをなんとかする手筈だ」
 引き金を引く指。
「そんなわけで、時間をかける訳にはいかねえ。素早く対処をしねえとな!」
 鋼の雨はアルミテージの上にだけ降り注ぐ。たとえすぐそこに傷つき倒れたローレット・イレギュラーズが転がっていてもだ。
「よく頑張ったわね……! ここからは大丈夫よ、安心して」
 ルチアは、まず声掛けをした。自分達は救出に来たのだと言霊で伝えたのだ。
 重症のローレット・イレギュラーズのそばに膝をつき、その手を握った。
 ルチアは、明確に他者へ施す命の息吹を自覚している。それはルチアの武器になる。
 声を張り上げ朗々と響く癒しの旋律に確かに力が上乗せされているのを感触で感じる。
 すぐそこで一角ウサギが弾丸の雨を浴びている。信じて歌う。それが今、ルチアにできる最善だ。
「私の声が聞こえるか? いいかね、助かりたかったら気を強く持つんだ」
 ルブラットの語りかけはとても理知的だった。
 回復薬の投擲は混沌ではファーマシストの嗜みだ。患者に語り掛けるのを忘れてはいけない。
「楽しいことでも想像したまえ。恋人の顔や、美味しい食事、死にゆく者の命乞い……」
 相手を元気づけるのに様々な角度からのアプローチは大切だ。患者が摂食障害のボッチの嗜虐主義者という場合もある。
「……まあ、何でもいいが。しっかりしてくれ、先輩方」
 どうやらギフトを使用するには至らないくらいの傷のようだ。少し時間があれば移動させても問題ないくらいには回復するだろう。
 しかし、それには位置がよくない一角ウサギがいる。
 ルブラットは、魔性の茨でからめとる準備をはじめた。
「そっちに行かれると困るよ」
 巨大なウサギが不格好に締め上げられた。毛皮に糸が食い込みぶつぶつと音を立てる。
 クンプフリットは、救助対象とルブラットがウサギの視界に入らないように立ちふさがる。
「ルブラット君、大丈夫?」
「問題ないな」
「ウサギはボクに任せて、どんどん治してイこっ♪」
 クンプフリットは、ウサギの息の根を止めるべくキリリと糸を引き絞った。


「邪魔だっ!」
 ランドウェラは、新鮮な肉をかぎつけて、ヒスヒスと鼻をうごめかせているウサギを見つけた。
 おそらく、彼が一番の重傷者。身じろぎも難しいローレット・イレギュラーズの誰かは目を見開き、悲鳴を上げることもできないでいる。
駆け寄り、背にかばうと、ウサギ目掛けてノーモーションで衝術をぶっ放した。衝撃で毬のように吹っ飛んでいった。落ちた先がマルベートの目の前だったのがそのアルミテージの不運だ。
「ここまでよく頑張ってくれた。あとは僕らに任せておくれ」
 代謝を加速させ、傷を急速にふさぐ。
 呼吸が弱弱しい。だが、生きている。
「ここで死なせるなんてとんでもない。生き残ってもらわなければ僕らの頑張りを誰が自慢するんだい?」
 軽い口調に、重傷者は顔をゆがめるように笑った。
「だがら、頑張ってくれよ。みんなで帰ろう。がんばってくれたら、こんぺいとうを上げるよ」
(……あいつ――イシュミルがここにいなくてよかった)
 アーマデルは呼吸を整えた。当たりをよく見回す。
「変なこと言われると手元が狂いそうだからな」
 医療行為が行われているのが視界に入ったせいか、自分のケアをしていた医療技官――教師ともいえる白い男のことがちらとよぎる。
(巻き込まないよう注意しなくちゃ。特に[英霊残響:怨嗟]は【不殺】だけど【致命】もついてるから、治療待ちの味方に当たるとまずいだろう)
 だから、敵を引き付けているリゲルの方に移動した。
 こんな風に気を使いながら戦うのは混沌に来てからだ。
 出来る限りの注意をして、一角ウサギに向けて、そしられた聖女の怨嗟をぶちまけた。
 その不協和音にさらされた一角ウサギは動くことを忘れる。
 好機。リゲルは一角ウサギのただ中に飛び込み、白銀の剣を振り回す。絹布右派小規模の嵐と化し、ウサギはこま切れ肉と化す。巻き上げられた肉がぼとぼとと地面に落ちた。
「ウサギの魂ではあまり腹はふくれないなぁ」
 ランドウェラに吹き飛ばされ、マルベートの目の前に落ちたアルミテージは、この場においては今日一番不運な生き物だ。
 因果律を自分の都合のいいように書き換え、巨大なナイフとフォークで突き刺され、黒い本流に食らわれるウサギはせいぜいおやつ程度にしかならない。
「いやいや、今は食事じゃなくて足止め最優先だな」
 マルベートは、ぺろりと舌なめずりした。
 ウサギの数が減っている。そうなると一矢報いたいと思うのがヒトの常だ。どうせなら地獄に道連れにしたい。自分達だけ意味のない死を迎えるなんて耐えられない。
ふらりと妄執で立ち上がった盗賊が血走った眼をして、指先に引っ掛けるようにしてぶら下げたナイフを握り直す。側に転がるローレット・イレギュラーズに向けた。
 まだ少年だ。茶色の――いや血がにじんで変色したのだ。もとは緑色の――帽子がころりと落ちた――金髪の――少し生意気そうな――。
 盗賊は今にもその切っ先を――。
「エトワール!」
 リゲルは叫んだ。
 盗賊を突き飛ばすと、少年を抱えあげる。
 生きている。ルチアの天使の歌は届いていたのだろう。呼吸は安定している。
「俺達の仲間に手を出すならば、容赦はしない」
 剣を使わなかったのはギリギリの理性だ。突き飛ばされた男は辛うじてぴくぴく動いている。
「だが共闘するというのであれば、命は奪わない。何なら、君達を守ってもいい――死んでしまったら、全てが終わりだ」
 低く、噛んで含めるように言う白銀の騎士の言葉には重みがあった。いつでも簡単に奪えるというのはたった今実演された。
「――ヒトの耳元でごちゃごちゃうるさいです」
「エトワール、君がいるとは思わなかったよ。修行にでも出ていたのかい? 恩に思うなら、多少は無茶をやめて貰えたら嬉しいな。心配でたまらなくなってしまうよ」
 大事な友人の弟だ。助けることができてよかった。安ど感からか、リゲルの口数がいつになく多い。
「ですから、うるさいです。それより先にやることがあるでしょう。おろして下さい。僕は何ともありません。少し休めば動けます」
 その騒ぎとは反対側、死体に紛れて移動しようとする盗賊。その掌にズドンとナイフが突き刺さった。
「大人しくお縄につくか、ここで死ぬか。好きな方を選ぶといいよ♪ この次は足を狙うよ。糸でずたずたに絞るからもう歩けなくなるかもしれないね♪」
 クンプフリットは、ナイフを踏みつけ、にこぉと笑って見せた。

 盗賊は、ローレットの軍門に下った。


「リゲルとアーマデルは二人で何匹ミンチにしたんだ? あそこの血だまりが俺が撃ち殺した奴らだろ? クンプフリットが絞り切ったのがそことそれで――おお、数が合った――あとはお前だけだ!」
 バレル・ピリオドは伊達ではない。魔性の弾丸は黒犬の顎と化し、刹那の飢えを醜悪なウサギで満たした。

「先ほどは応急処置だったからな。今からもっと本格的な治療をしてやってもいいぞ?」
 ルブラットは、後方移送されるイレギュラーズに付き添っていた。
 はくはく動く口元に耳を寄せるが、少し首をひねる。ちょっと意味が分からなかった。
「……ああ、精神医学は専門外だ。必要なら別所で頼む」
「ちょっと待って。自力で歩けるくらい回復させるから――」
 ルチアが聖躰降臨の奇跡を起こすと、ローレット・イレギュラーズは二人に礼を言った。
「これでしゃべれるだろうから、お医者様に診てもらって――」
 ルチアは、ルブラットがそのお医者様なのに気が付いた。
「――よく話し合って」
 少し頭が痛いのは、重傷をおして、限界ギリギリまで癒し続けたからだけではないだろう。

 恐怖に駆り立てられ、無我夢中で剣を振り回し、気がついたらすべて終わっていた。
「……おっと、盗賊の君はまだ生きてるか」
 よかったなぁ。と、マルベートは笑う。マルベートの雷にとらわれた盗賊は生きた心地がしない。簀巻きにされた仲間と、包帯で巻かれたローレット・イレギュラーズが後方に移送されていく。
「捕縛して司法に突き出すのに賛成だ。捕縛できるようなら無理に倒す必要はないだろう。犯した罪は償うべきだと思うから情けをかけるわけじゃない」
 きろりとアーマデルの目玉が動く。
「……いや、それよりも我が家に連れ帰ってディナーにしてしまおうか。メニューは「兎の腸詰めと盗賊肉のカスレ」なんてどうかな?」
 悪魔が手をワキワキさせている。心を折られた盗賊は声にならない悲鳴を上げて尻で後ずさるしかない。
「俺は人の罪を計り、裁く立場にはないから、それを担うところに任せたいというだけで――」
 アーマデルは生真面目にマルベートに告げた。
 盗賊の生死などどうでもいい。と、言外ににじんでいる。
「全く、つくづく幸運な一日だったね、君は」
 マルベートは笑う。
「確かに運がいい。こういうところに放置されたら、往くべきところへ逝けないかもしれないからな」
 アーマデルの手に粗末な袋。やけに小さい理由を考えてはいけない。
 盗賊はとりあえず死ななくて済んだのだ。今日は。
「目の前で命が奪われるのは目覚めが悪いから回復はするけれど、後で出頭して貰うわよ」
 ルチアがきっちり言い置いて、最低限の回復術式を盗賊に施した。
「ラサに警察のような組織があるか分からねえしな。ディルクの『赤犬』にでも届ければいいのかね」
 ジェイクがしげしげと盗賊を見下ろす。
 名の知れた傭兵団の名に盗賊はすくみ上った。きっと無事では済まない。
「約束通り、天義免罪符や、ファルケの紹介状を用いて口利きに努めよう――ラサ繋がりじゃないのは申し訳ないが」
 リゲルはいつでも公正だ。ルチアに賦活されたおかげで幾分顔色がよくなったエトワールが奥歯をぎりぎり言わせる程度に。
「裁かれずに生き残るなんて許されるわけないだろう……ま、とりあえず今は生きてるし。こんぺいとう食べる?」
 ランドウェラは笑った。
 盗賊の血と泥で固まったてのひらに、じゃらじゃらと場違いにきらびやかな砂糖菓子を転がされた。

成否

成功

MVP

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。盗賊は捕縛。仲間は無事回収できました。ゆっくり休んで、次のお仕事頑張ってくださいね。

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