PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Rw Nw Prt M Hrw>砂の拳貫くは獅子の群れ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂踊る
 激しい砂嵐が吹き荒れる。クリスタルが星空の様に輝く迷宮が褐色の澱みに濁っていく。
「くそ……っ」
 一人、また一人。自分を慕う仲間が、家族が、倒れていく。この視界を覆う砂嵐に翻弄され、死角から叩き込まれる巨大な拳に首を跳ねられ、朽ちていったのだ。
 男は自らの無力さへの怒りから血のにじむ手で曲刀を握りしめ魔物へと振り下ろす。刹那、魔物の躰は煙へと変わり、そこには嘲笑と狂気が入り混じった言葉に出来ぬ奇声だけが残るのだ。
「たかだか煙男(ジン)風情がこれほどとは……!」
 振り下ろされた巨腕を辛うじて躱しながら、男は千切れ飛ばぬ様にと服を肌へと押さえつける。この戦闘服に残された防護の魔力も、あと僅かであろうか。
 だがまだ残っている。そんな男の希望を嘲笑うかの様に、男の鼻腔へと砂が入り込みその肉体を内側から蝕み始める。
「うおおお……!」
 命運尽きたか。男が全てを諦め力尽きるその寸前、気高き獅子の一撃がその魔物を貫いた――

●狩りへと
「良く来てくれた、アタシが『群れ』を率いる獅子、シファリーフだ」
 ファルベライズ外に設けられた仮設キャンプに集められたイレギュラーズ達を待っていたのは、眼光の鋭い傭兵団長であるシファリーフという女性であった。
「情報屋、あの少年はどうした?」
「他の所、先に行ってる。問題が無ければすぐ行く、って」
『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)の言葉に「そうか」とのみ答え、シファリーフは手短に状況を説明する。
「アンタ達の助けを借りたのは他でもない、このファルベライズ遺跡に問題が発生した。中枢にいるのは『博士』なる異端の存在とあの腐れ大鴉盗賊団どもだ……」
 シファリーフ率いる『群れ』もまたこの決戦に備え、敵性存在を葬り去るために駆り出されたのだ、と。そこまで説明したところで彼女は来訪者の数を数え、部隊員にテントの入口を締めるように命令する。
「アタシ達が戦う事になるのは砂の魔神とも呼ばれる魔物『ジン』だ。砂とも大男とも言えるそいつを始末しなきゃならない……と言う事になっている」
 指を振り妙に演技っぽくシファリーフは説明すると、閉じていた金色の瞳を開き、一呼吸。
「実際の任務は違うってことか?」
 イレギュラーズの言葉にシファリーフは首を振る。
「魔物の討伐は確かさ、だがアンタ達に任せたいのはそのオマケ」
 イレギュラーズ達が呼び集められる少し前、ある少数の傭兵がその魔物を討伐するためにファルベライズ内へと侵入した。彼らはある商人を暗殺した嫌疑をかけられ、恩赦を得るためにこの戦争へ身を投じる事となったのだが――それはアリバイもある真っ赤な嘘、混沌では良くある競争の暗部である。
「でも妙だと思ったんだ、濡れ衣の恩赦を得る条件にしては余りにも簡単すぎる。調べてみたら……そのジンは怪王種になっていたって話だ。」
 その言葉にイレギュラーズ達にざわめきが走る。
 滅びのアークの影響を受けた魔物、アロンゲノム。それほど強大な魔物相手であれば、彼らは間違いなく全滅するであろう。
「要人についての詳細は悪いが言えん、名前も顔も変える事になるだろう。それでもアタシ達はそいつを助けて陰謀の犠牲者が出るような事態を防がなきゃならない……頼む、力を貸してくれ」
 決戦の陰に起きた陰謀、これはその悲劇を止める為の戦いである!

GMコメント

●依頼条件
 ・エネミー『ジン』の撃破
 ・要人の保護

●ファルベライズ内部
 いたるところに敷き詰められたクリスタルが光源となる石の迷宮の一部。
 ジンや救助対象がいる広めの踊り場を取り巻く様に昇り下りする階段が取り巻いています。

●『ジン』
 煙状の下半身と筋骨隆々な男の上半身を持つアークモンスター。
 膨大な体力と恐るべき回避能力を有する。
 強力な物理攻撃と搦手の神秘攻撃を有する他、身を煙に変えて相手を肺から蝕む範囲攻撃に警戒する必要あり。
 本来ならばイレギュラーズ1部隊でHARD相当の敵である、これに単身挑むとなると……。

●NPC
○シファリーフ
 ラサ傭兵商会連合に所属するルーキーであり、活躍が期待されている傭兵部隊『群れ』の団長。
 統率能力と連鎖行動に優れ、部隊員を文字通り獅子の群れの様に使役するヒーラー。
 攻撃力(回復力)と反応は高いがHPは低め。
 指示が無くとも部隊への指示と時折範囲ヒールをイレギュラーズに行使します。
 プレイングでの指示があればその通りに動きます。

○『群れ』x6
 高EXAを有する獣種や飛行種で構成されたシファリーフの部隊。
 雪崩れ込むような至近〜中距離の攻撃を得意とするインファイターたちです。

○要人『エックス』
 救出対象の傭兵、仲間は倒れ本人もかなり消耗しています。
(最大HPの何割かのHPで戦闘が開始します)
 彼を回復、ないしは庇う要員は必須でしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 色宝の決戦、その傍らの物語の一つです。
 よろしくお願いします。

  • <Rw Nw Prt M Hrw>砂の拳貫くは獅子の群れ完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月22日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
腐れ縁
シラス(p3p004421)
竜剣
すずな(p3p005307)
憤怒
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
導きの戦乙女
笹木 花丸(p3p008689)
竜交
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール

リプレイ

●砂であろうと喰らって見せる
「ヒトの要人に手ェだしてんじゃねえぞ煙野郎!」
 砂が舞い飛ぶ水晶の迷宮に甲高い声が響き渡る。シファリーフの金色のオーラ纏う右手が砂男の姿を魔力で掴み、男の喉から引きずり出す。同時に金色の輝きは男の肺を治療し、悔しがる魔神を更に突き飛ばす様に怒涛の斬撃と弓矢の嵐がダメ押しとばかりに追撃し、更に針に糸を通すような正確な魔弾の一撃がジンを大きく怯ませた。
「相手は怪王種だ、各自狂気の伝染に警戒しろ!」
「キミは、一体」
 吹き荒れる砂嵐に外套を揺らし、護る様に立ちはだかる女性に男が声をかけようとも返る言葉はない。
「御呼ばれだぜ、なんか言ってやれよ?」
 魔弾を飛ばし、シファリーフと並び立つ『鳶指』シラス(p3p004421)がいけ好かない態度の彼女にかまをかけるように問いかける。シファリーフもそのシラスに対し鼻で笑い、睨みつけるような目で帰す。裏のある仕事だ、お互いキナ臭いのは承知だろうと。
 それでも彼女が依頼を頼み、彼がそれを受けたのは二人の間に確かな興味と親近感という信頼があってのことだ。
「戦闘中だ、構えろ」
「言われずとももう来てるよ、ほら!」
 魔神が吠え肉体をかたどる砂が変色し、それは赤い肌の筋骨隆々な男性の姿を取る。アークに汚染されたジン、名を付けるならカースド・ジンと言ったところか。そいつは拳を瞬く間に身の丈よりも巨大に膨らませると要人へと向けて振り下ろす!
「させるか! 貴様はここで動かさん!」
 風と風がぶつかり合い、周囲の視界が奪われる。『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が風を纏う空の剣をジンの拳に突き刺し、腕にすべての力を籠め食い止める。
「花丸、防御を!」
「おっけー!」
 ブレンダの剣が弾かれ、体勢を崩した所を『はなまるぱんち』笹木 花丸(p3p008689)が咄嗟に拳を構え、なんとジンの拳骨を無心の突きで相殺する……!
「ッ……!」
 腕が痺れ、拳に手が滲み、花丸は唇を噛みしめる。この程度の攻撃など彼女の背後の、仲間を殺された男の心の痛みと比べれば――これ以上何も奪わせるものか。
 歯を食いしばり全ての力を振り絞り、硬質化した拳骨を食い止める花丸。彼女が目を細めた瞬間、迸る閃光が巨腕に突き刺さり、空いた穴を逃さないかの様に瞬く間に無数の蒼い斬撃が走りジンのそれは幾方向に切り裂かれた。
 魔物の肉体が霧散し、再びすさまじい衝撃波が全てを吹き飛ばす。『血雨斬り』すずな(p3p005307)の水に濡れたかの様な美しい刀が拳の中から現れ鋭く光り輝く。
「手応えありました! 急ぎ治療を!」
 奴には物理攻撃も問題なく入る――その連撃の冴えわたる感覚にすずなは心を躍らせながら再び迎撃の構えを取る。斬れる相手ならば砂の怪王種であろうとも殺せるという事、ならば相手にとって不足なし。
「ローレットだよ! おじさん、すぐ助けるからねっ!」
 ジンを牽制しつつ『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)もまた要人の前へと駆け付けると次の魔法矢をつがえる。それが誰かの命を救うものであれば依頼の内容に貴賤はない――そうクルルは想いを魔力に込め、ジンの肉体を固める蔓の矢を放つのだ。
 ローレット。その名が男の閉じかけていた目に、体に活力を取り戻させていく。
「詳細を知る必要もその心算もありませんが、こちらの仕事は人命救助ですので」
『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)の魔力に『柔らかく、そして硬い』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)の活性の願いが乗り、尽き欠けていた命が再び灯される。
「死んじゃダメだよおじさん、死んだらそこで全部終わっちゃうからね!」
 再び地に拳を付け、ゆっくりと立ち上がろうとする要人の上空から砂嵐をも貫く強い光が照らし出す。『銀なる者』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)の魔力の波動が、男の肺に涼しく爽やかな風を送り込む。
「すぐに動けなくても大丈夫。治療が終わるまでいてあげるから」
 男に優しくリウィルディアは語りかける。幾ら戦力がいつもの2倍以上はあれど相手は魔種に匹敵する怪王種。こういう時だからこそと気を抜かず一つずつ丁寧に、息も乱すことなく男の傷を的確に直していく。
「そうか、そうか。謀か」
 男は曲刀にしがみ付きながらも立ち上がると、血の涙を流しながら悔いるように呻く。
「キミ達には……迷惑を」
「理解が早くて助かります、では、動けるようになり次第階下に避難を」
 瑠璃はそう言い切ると回復の手を止め、つかみどころの無い魔神を射止めるべくその身に纏う魔力を破壊へと転換するとそのまま一歩下がり、肉体を再形成するその魔神を観察する。吹き荒れる紅の砂嵐はこの砂野郎の崩壊した下半身が作り出している。それはこの空間の全てがそのジンのものであると主張するかのようであった。
 その影響力たるやまさしく怪王種、世界にはびこる混沌の癌。これを討伐せず謀殺に使おうとするなどなんと暗部の汚れ切ったことか。
 イレギュラーズたちとシファリーフの『群れ』はみな内心毒付きながら、今は目の前の魔物に意識を集中する。まずこの化物を倒さない事には、要人の救出は叶わないのだ。

●滅びの砂神は嗤う
 幾重にも重なりあう不気味な笑い声が石の祭殿に響き渡る。耳を抑えようとそれは僅かな隙間から脳髄へ木霊し、悪意が平衡感覚を奪っていく。
 この場にいるイレギュラーズ達が皆こちらへと意識を向けた事に気づき、ジンが笑ったのだ。これで全員かと、ならば朝飯前だと言わんばかりに。
「笑うほど愉快か、生憎こっちも同じ気分だ」
 ジンの侵攻を燃え盛る剣が食い止める。それは先程振るわれた風剣の魔力と協奏曲を奏で、共鳴するかの様に燃え広がる――ブレンダだ!
「だから他に譲ってやるつもりはない、貴様はここから動かさん!」
 ジンは腕の数を増やし、ブレンダの鎧を砕こうと殴りかかる、その全てを二本の剣で躱し、金色の魔眼を輝かせながら彼女は笑顔を浮かべ応戦し続けるのである。
「援護だ」
「任せろ、俺の実力見せてやるぜ」
 ブレンダの防戦に続く様にシファリーフ率いる群れの部隊が怒涛の様に彼女の後方から飛び掛かり、躱した所にシラスの魔力弾が着弾。魔力の奔流が大きな胸板へ大きな穴をあける。
「リウィルディア!」
「もう、終わってる!」
 シラスに応える様にリウィルディアは叫び、己の周囲に漂う魔力を眩い雷光に転換する。応急処置は早期に終わったが、男はまだ安全地帯に離脱できていない――花丸が戻るまでの今が堪えどころだろう。
「それでも、負けはするものか!」
 複雑に曲がりくねる雷光はジンの胸元に開けられた穴へと接触し、周囲の砂嵐に激しい火花が散る――通ったか。いや、間違いなく通ったはずだ。
「よぉし、このまま一気にいっちゃおー!」
 苦しがり、胸元を抑え込むジンのがらあきの眼窩へとクルルの矢が再び突き刺さる。砂に根が張り、咲き誇る大輪の花が頭部を破壊する。
「花丸さんには悪いですけど……その首頂きます!」
 試合は早々に決した。すずなの目にもとまらぬ高速の二閃が砂男の体を粉砕したその時、すずなの真剣な眼が見開かれる。先程はあった手応えが、今は感じられない。確かに斬ったのは同じ砂ではあるが、まるで……。
「みんな、目と口を覆って!」
 異変に気がついたのはリウィルディア、魔物に最も近かった群れの一人が喉を抑え、失神した直後の事であった。手応えがなかったのも無理はない、あの魔物はこちらの攻撃を敢えて受け、大技の発動を自然に見せかけていたのだ。
「また煙が来るぞ! 私が尾を掴むまで総員構――」
 シファリーフが手に魔力を纏い、仲間へ防御命令を送る。その時に、彼女は見てしまった。

「スーッ!!! マッチョスーッ!!!」
「……」
「うぅっ、胃と肺の中にマッチョ感じる! 苦しい! 苦し気持ちいい!」
「何やってるんだ、オマエ?」
 敵の大技の最中、一人だけ無防備にマッチョ分を摂取しているムスティスラーフを見た時のシファリーフの表情については、彼女の名誉の為に割愛させて貰おう。
 彼女は知らないのだ、彼の十八番に呼吸が必要な事を、そしてその破壊力を。
「苦しい、苦――オエーッ!」
 困惑と怒りの混じった様子で一度殴ろうと向かったシファリーフの僅か横を、ムスティスラーフの口から放たれた緑の線香が全て焼却していく。筆舌に尽くしがたい破壊と暴力の化身がムスティスラーフの肺の中のジンを焼き切り、反射的に皆の肺から飛び出し周囲の砂嵐に還元されていく。
「ふう、すっきりした! 驚かせてごめんね!」
「気にするな」
 シファリーフはムスティスラーフに問題ないと防御魔法を解除し、じっと魔神が消えた方角の砂嵐を眺める。
「ハ、気に入った。あの筋肉男の慌てたバカ面を今度は皆に見せてやれ!」
「了解!」
 次の手を思いついたか、砂嵐はより赤熱し彼らを火炎流で覆いつくそうとその渦を狭めていく。
「ホントにいろいろ思いつくね! 戦ってて飽きないよ!」
 ムスティスラーフは恍惚とした表情を浮かべると、怒り狂う魔神の流れをタンザナイトの剣で断ち切るのであった。

 雪崩の様な攻撃が飛び交い、リウィルディアとシファリーフの回復魔法が傷付き倒れかけた仲間に致命傷を避ける為の僅かな活力の差を補っていく。この戦いにイレギュラーズと『群れ』のメンバーが共に取り組めたことは行幸であろう。シファリーフだけならば、倒されずとも『群れ』の団員に欠員が出る事は否めなかっただろうから。
「まだ、笑いますか」
 瑠璃は注意深く魔物を観察し、僅かでも長く戦場に立つ為に的確に指示を送り、その急所へ血の弾丸を撃ち込み続けていく。敵を斬り刻むすずなの手応えが毎回異なるのは何故だ、それは奴に核となる部位があるからだ。滅びのアーク秘めたそれを――おそらく汚染された色宝や魔石の類を巧みに動かし、魔力源として動かしているのだ。そして二度目はあんな大胆な被弾の演技を行い、不意打ちをした事を考えるに、それは瞬時に動かせまい。
「あの人の目ならば、それを捕らえる事もできる筈、ですが」
「それならすぐ着そうだぜ、ほら」
 情報を伝え、シラスから呼びかけられた瑠璃は後方をふと振り返る。誰かが階段を駆け上がる。
「――みんな、待たせちゃってごめん!」
 戦場に飛び込んだ花丸が両手を広げ、仲間へ振り下ろされた拳を受け止める。石に叩きつけられようとも、彼女は力強く立ち上がる。
「ここからは花丸ちゃんも頑張るから、派手にやっちゃって!」
「ベストタイミングだぜ、花丸!」
 シラスの言葉に花丸が短く頷くや否や、ジンの無数の拳が花丸目がけて振り下ろされる。
 花丸はそれを咄嗟に受け止め、己の集中力を飛躍的に高めていく……!
「聞いたんだ、あの人は、あの人達は私達の力になれるならって、魔物の討伐を受け入れたって」
 花丸はちらりと床に転がる骸を眺め、拳を握りしめる。あと何分魔物を見つけるのが早ければ、あの人も助ける事ができただろう。
「ここで負けたらみんなは、あの人は助けられない……!」
 彼女の身を覆いつくすような巨大な拳がぶつけられる、砂嵐がその皮膚を切り裂かんと襲い掛かる。それでも花丸のその身は堅牢なる盾となり、仲間を傷つける悪意全てをはじき返す。
「私が倒れてでも、絶対に、絶対に護って見せるんだ!」
「準備できたよ! みんな下がってね!」
 花丸が攻撃を受け止め目を細めたその時、ムスティスラーフの一撃が炸裂する。
 仲間達の空けた斜線を緑の爆発が破壊し、その軌跡に沿って凄まじい爆風の小型の爆発が連鎖する。その最中――ほんの僅か、花丸はその霧散した胸元に輝く宝石を見た。
「見えたよみんな! 心臓の位置に!」
 その言葉にイレギュラーズ皆の目が見開かれ、ジンはどこか慌てた様子で身を砂嵐で隠そうとする。しかしその悪あがきも、既に弱点が露出した今となってはもう遅い。
「檻術空棺、捕らえられていると良いのですが」
 ジンの体が硬直し、強張る。コアを動かそうとしても砂の中に埋もれた何かに閉じ込められ動かないのだ。
 それでもなお狂気めいた笑い声をあげながら、ジンは砂嵐を集め、肉体を更に分厚く形成する。
「なるほど、逃げられぬならば身を厚く‥…どうやら成功しましたね」
「おおっ、下半身もムキムキでいいね!」
 下半身を形成し、ファイティングポーズを取ったその背中から無数の触手が生まれ、その拳と触手を以てイレギュラーズ達を襲い迫るジン。あとは小細工を使わず、ぶつかり合うのみ。
「さあ、皆でダメ押しと行こう。落ち着いてね」
「今度こそ最後だ――その心臓を食い散らかしてやれ!」
 リウィルディアたちの回復術を契機に『群れ』が、イレギュラーズが飛び掛かる。『群れ』の鋭い戦術が触手を切り裂き、同時にそれが仲間達を抉っていく。
「笑ってろよ、砂だろうが触手だろうが切り裂いてやる!」
 シラスの両腕に光の刃が付与され、その鋭い鉤爪が最後の触手を断ち切る。至近が無防備となった胸元に、クルルの矢が突き刺さる。
「すずなちゃん、さっきのもっかいいくよ!」
「任せて下さい!」
 耳をピンと立て、すずながその隙を突く。右ストレートをスライディングで躱し、抜いた刀で太腿を狙い横に一文字。更に縦に切り裂き十文字。
「核を護ろうとしているのは読めてますよ、『それ以外なら』余裕で斬れます!」
 片腕と両足が吹き飛ばされ、その筋肉が剥がされていく。最大火力に注意がそれた、今ならば。
「心臓を斬れないのは悔しいですが、後は任せます!」
「ブレンダさん、いっけえええ!」
 渾身の花丸の一撃がジンの体勢を崩す。ブレンダのたった一度の、確かに掴んだその隙が、ジンにとっての命取りとなった。
 炎の嵐がその砂の肉体を吹き飛ばす。コアが露出し、皆の目に見えたその瞬間。動けるものは誰もいなかった――ブレンダを除いては。
「この我慢比べ、私の勝ちだな!」
 全身全霊のブレンダの二刀の振り下ろしが全てを砕き、核を粉砕する。砂男はそれをただ笑って、大きく笑って、そしてゆっくりとその全身が焔に包まれる。e
「剣とは何かを護るために振るうモノ。それがある限り折れるわけにはいかんのだ……私を笑いたければ、地獄で笑っているんだな」
 風が全てを吹き飛ばした後、そこに残っていたのは砕け、妖しい輝きが失われた宝石の破片であった――
●歴史に残らぬ一頁
「……あぁ!」
 砂嵐が止み、迷宮は真の姿を取り戻す。息を呑むほど美しいクリスタルの輝きが、暗い石の迷宮の壁を星空の様に演出する。
 核の残骸を踏みつけ粉砕し、新鮮な空気を吸い込み――吐き出したブレンダは緊張が解けると当時に砂まみれの床へと座り込む。確かに奴を殴り飛ばしてはやったが、体力も気力もギリギリの戦いだった。
「ブレンダさん、大丈夫ですか?」
「ああ、すまない……すずな殿、援護感謝、だな……そちらも疲れただろうに」
 すずなはブレンダに肩を貸し立ち上がるとリウィルディアの元へとゆっくりと連れて行く。
 その手早い後処理と次の戦いへの息継ぎを観察しながら、シファリーフはイレギュラーズへ報酬の金貨が入った袋を放り投げる。
「協力感謝する、ギルド・ローレットの気高き獅子たちよ」
 そして彼女は天の宝石の光を見ながら、どこか惜しい様に呟くのであった。
「あの程度の魔物、アンタ達ならアタシの協力が無くとも――」
「そんな事無いよ! お姉ちゃんの援護があったから怪我人も出なくて済んだし!」
「……そうか」
 クルルの言葉に、何か考え込みながら視線を移すシファリーフ。後方には彼女の仲間とムスティスラーフ達が再びこの広場へと運び出された要人の応急手当をしている所であった。
「ケガはないかい? 他に僕たちにできる事はないかな?」
「もう、大丈夫さ……それに礼をしたいのはこちらだ……いつかかならず――」
 男はシファリーフの方を向き、そしてムスティスラーフに感謝の念を述べる。
「この礼を返そう、たとえ私からと分かる事がなくとも」
 それが短い時間ながら、ムスティスラーフと男が交わした確かな約束であった。
「シファリーフさん、これをどうかあの人に」
「ああ、念のため一旦こちらで預かろう」
 瑠璃が戦場でかき集めた、亡骸の遺品の数々。要人を生かすため先に散っていった仲間の遺物。丁寧に布でくるまれたそれをシファリーフは受け取ると、要人の元へと歩み寄った。
「あ、ありがとう、どうお礼をしていいか……」
「礼はいらん、ラサから受け取っているさ、それにわかっているな」
 シファリーフの言葉に男は深く項垂れる。陰謀に巻き込まれた者は足が着くような事があってはいけない。この世界の暗部で生きる者ならば当然の常識だ。
「また歩けるな? 着いてきてもらおう、何、少々手荒だが死ぬよりはましだ」
 頷き、シファリーフに同行する男に心配から花丸は何か声をかけようと一歩歩み寄るが、すぐに手を出したシラスの手に遮られる。聞いても彼の未来は、きっと依頼を受けたシファリーフ自身にも完全に知る事はできないだろう、と。
 それでもこの傭兵において金より大切な物があるとすれば信頼だ。シファリーフは、そして彼女の背後にあるギルドはローレットとの信頼を深める為、男が不幸になるようにはしないだろう、と。
「シファリーフさん、お願いします」
 シファリーフは花丸の瞳をしばらくじっと見つめ、そして入口の方へと部下と共に去っていく。
「黄金双竜の小魚よ――最深部の攻略、任せたぞ」
「言われなくても、任せてな」
 代わりにシラスにその言葉を残して。気高き獅子が感謝の笑みを静かに浮かべながら階段を昇っていくのをイレギュラーズ達は眺め続けるのであった。



成否

成功

MVP

笹木 花丸(p3p008689)
竜交

状態異常

笹木 花丸(p3p008689)[重傷]
竜交

あとがき

 お疲れ様でした。
 これで傭兵ギルドのローレットへの信頼は一層高まり、より重要な依頼を任される事でしょう。
 決戦、ご武運を。

PAGETOPPAGEBOTTOM