PandoraPartyProject

シナリオ詳細

鬼ごっこ with 節分

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「こんばんは、少しお願いしたいお仕事があるのですが、よろしいですか?」
 ローレットに訪れた君達の下に、微笑を浮かべたアナイス(p3n000154)が声をかけてくる。
「カムイグラに存在する、とある村から皆様宛にお祭りへの招待状が届いているのです。
 もしよろしければ、行ってみてはいかがでしょうか?」
「招待状?」
「ええ。イレギュラーズ――あちら側では神使というのでしたか。
 皆様のお力で一緒に遊びたいと仰っておられました」
 笑みを絶やさず、彼女はそう言って村への案内図と依頼状を手渡してくる。
「ええと……たしか、異邦のどこかでは節分、というのですか? それとほぼ同じ時期ですね。
 そういった類のお祭りなのではないでしょうか?」
「お祭りねえ……」
 差し出された依頼状には祭りの詳細はそれほどの記載されていない。
 どうやら、祭りの後には豆で作ったお餅やらおはぎやらの提供もあるようだった。


「……村長」
「ほっほっほっ。なんですかな、神使様」
「あれは?」
 案内図に従ってたどり着いた村にて、君は思わずソレを指さした。
「あれですかな? あれはうちの祭りで一番重要な存在ですな」
「なるほど……あれが?」
「ええ。どうやらこの村は立地的に宜しくない『気』が溜まりやすいらしいのです。
 そうやって溜まった気が、あのような姿を取るので。年一度、この時期に発散させてやってるわけですわ」
「……はぁ」
 説明を受ける横で、獣の如き咆哮が響く。
 太鼓にでも撃ち込まれたかのように内臓まで響く咆哮を上げたのは巨人――いや、一つ目に一本角、5mはあろうかという鬼だった。
 全身から放たれる妖気というべきか分からぬ気配は異様。
 たった今、目の前で収束したのを見れば、アレが鬼人種とは全く別物、ただの化け物であることは明確だった。
「まぁ、いつもであれば村の衆が全員でアレがおさまるまであやつと遊んでやるのですが……
 そこをほら、皆様であれば気にせずやって大丈夫なのではないでしょうかと」
「なるほど」
 さて、そういえば、と君は思い出す。
(皆様の『お力で』一緒に遊びたいかぁ……)
「それでは、そろそろよろしいですかな?」
 村長の言葉に、君達はひとまず頷いた。なんにせよ、受けた以上はやらねばなるまい。
 それに――芳しきぜんざいの匂いがする。視線の先にはおはぎの準備もだ。
 ちょうど、食前の運動といこうか。
「では、最後にもう一度、あれは基本的に、そこら中を駆け抜けまする。
 捕まればその者はなんかこう、邪気みたいなものに中てられ、その一年はちょっとした不幸に見舞われるのです。
 まぁ、皆様であればせいぜいがその一日、ちょっとだけ鬱な気持ちになるぐらいでしょう」
 ――何か、嫌なことを言われた気がした。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 『コメディー寄り、戦闘してもいいよ』系鬼ごっこです。
 節分……節分かなこれ?

●オーダー
・『村の邪気』が発散される。

●フィールド
 村の郊外に存在する平野部。
 抜群な視界と抜群な広さを持ちます。

●エネミーデータ
・村の邪気
 5mほどの鬼っぽい形状の邪気の塊。
 実体がなく、これに殴られても死んだり傷を負うことはありません。
 また、実体がないため、意外とジャンプで空とかにも行きます。

 ぶつかってしまうと村人はその後一年をちょっとした不幸に覆われます。
 とはいえ、箪笥の角に小指めっちゃぶつけるとか、よく紙で指を切っちゃうとか、何もないところで転びやすくなるとか。
 そんな命に支障がないレベルなので村人は今年一年の幸運を競うお祭りとして楽しんでいます。

 皆さんの場合は一日どんよりするのと、邪気との鬼ごっこ中は【不吉】系BSがつきます。

 ざっと10Tほど遊ぶか、攻撃などにより四散させられると発散されて終了します。

●戦後
 善哉、おはぎ、甘豆など、豆の料理が揃った宴が催されます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 鬼ごっこ with 節分完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月21日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
彼岸会 空観(p3p007169)
ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
Binah(p3p008677)
守護双璧
瑞鬼(p3p008720)
幽世歩き
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花
型破 命(p3p009483)
金剛不壊の華

リプレイ


(邪気が形をなす、か。あれも精霊種のようなもの、だろう、か。
 或いは、ガイアキャンサーに近しいもの、か?)
 形成された黒い靄の鬼を見上げながら、『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)はふと考えていた。
 邪悪というよりも陰気の強いようにも感じられるソレ。
 けれど、町の人々にとってもお祭りであるというらしいソレ。
 ――であれば、こちらも『祭りの作法』に乗っ取らねばなるまい。
 暗い色合いの金髪を、わしゃわしゃと蠢かせて形成するは多脚。
「そう容易くは、捕まらん、ぞ。マリアを捕まえるなら。鬼があと10匹は必要、だ(フラグ)」
 盛大なフラグをぶちかましたエクスマリアが動き出す。
「何かとんでもないお祭りですけど」
 言いつつ、『心臓もさもさらしいわ!?』ヨハン=レーム(p3p001117)は空を見上げる。
「命に別状はないらしいですし、頂いた情報通りに遊びましょうか……
 えーと、こういうのはなんていうんでしたっけ……オールハンデッド……違うな……」
「そうだ! 鬼さんこちら!」
 パンパンと手を叩けば、挑発するように邪気目掛けて声を出した。
「ふふ……」
 やや離れた場所で笑みをこぼすのは『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)――異界の元鬼たる自分が、さても『鬼に覆いかけられる』とは。
「何とも可笑しく、楽しそうですね。
 折角のお祭りです、変わったことはせずに、真面から参りましょう」
 零れる笑みをそのままに、少しばかりストレッチをしながらその時を待つ。
「そういえば境界図書館の本で読んだ事ある気がするかな?」
 節分という行事に親しみがあまりなかった『鋼のシスター』ンクルス・クー(p3p007660)とて、祭りと聞いて頑張ろうと決意を胸に秘める。
 そんなンクルスは手をパンパンと叩いて。
「私はこっちだよ! 鬼さんこちら! 手になる方へっ!」
 息を吸って自分なりの大声でそう言って邪気に声をかけた。
(変わった鬼ごっこですね。
 とはいえ、無理に戦わず邪気を発散出来るのであれば
 それに越した事は無いでしょう)
 邪気の事を見ながらも、周囲にいる人々の様子を見る『守護双璧』Binah(p3p008677)はそちらを真っすぐに見ている。
「鬼事とな。子とやったことはあるがいつも追う側をやっておったしこちら側は初めてじゃな。
 ……しかし、あんまり動きたくないんじゃがのう……疲れるし」
 煙管を燻らせる『幽世歩き』瑞鬼(p3p008720)は面倒くさそうに息を吐いて、煙がぽう、と空へ消えていく。
(故にここは『精霊疎通』と『精霊操作』を使い周りにいる精霊に手伝わせるとしようかの)
 空気中の精霊と意思疎通を始めた瑞鬼は精霊に邪気の接近を知らせるように指示しつつ、その場でのんびりと座る。
「そうそう、お前たちも触られないように気を付けるのじゃぞ? 嫌な気分にはなりたくないじゃろ」
 大気中に語り掛ければ、これまたもう一度、ぽう、と空へ煙を吹き付ける。
 同じように鬼ごっこといえばずっと『お前、鬼だからずっと鬼役な!』だった『薄桃花の想い』節樹 トウカ(p3p008730)も邪気を眺めていた。
 軽くトラウマな経験に顔を引きつらせながら、邪気の事を思う。
(……あの邪気さんはずっと鬼で楽しいんだろうか)
 そんなことを想うトウカである。
 そもそも生き物ではない、一種の自然現象であるこの邪気の塊に喜怒哀楽や意思があるかは不明だが。
(邪気の塊が鬼の形を取るってのも、なんつーか……いかにも!って感じだぜ)
 癖毛を風に靡かせる『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)はふーむと思考する。
(アレを散らせば依頼完了って話だが、
 せっかく祭りとして楽しんでるのに己れ達が武器をブンブン振り回すってのも無粋ってモンだよなぁ……)
 そのままぽん、と手を叩いてうんと大きくうなずいて。
「よし、なんか変なことが起きて己れや村人達が危ないってんじゃなければこの村のやり方に倣うぜ!
 そこんとこどうなんだ、村長」
「ほほ、そうですなぁ……『変な事』は起こるかもしれませぬなぁ……危なくはないでしょうが」
 鬚を撫でつけながら、ほほ、と村長が笑うのと頃――邪気の塊が動き出す。
 祭りの開始だ――


 鬼のような形を成した邪気が走り出す。それとほとんど同時、村の衆やイレギュラーズは各々走り出した。
 最初に標的となったのは、鬼からほど近くにいた一人の男――その先には女がいた。
「かっかっか、こっちじゃこっちじゃ」
 女――もとい瑞鬼は大笑していた。
 のんびり見物といこうしていたとはいえ、手の届く範囲ぐらいでぶつかりそうであれば助けてやろうと思っていた。
「ほれ――」
 瑞鬼の隣を走り抜けようとした男の首根っこを右手で掴むと、ひょいと左側へ引っ張ってやる。
 邪気が、それまで男のいた側を走り抜けていった。
「かかっ、なるほどのう、これは面白いわ」
 そのまま別の人間の方へ走りゆく邪気を眺めながら、そのまま笑う。
「ほれ、お前さんもそろそろ行かんか。
 なに、これでも昔は豊穣を逃げ回っていた身。これくらいわけないわ」
 煙を燻らせてそう言って、男をけしかければ、ぺこりと礼をした男が去っていく。
 幻影の花吹雪が舞い踊る。
 真正面にいたトウカは邪気の動きをよくよく見据えながら、舞い踊るようにその進行方向から躱していた。
 桃の花びらを手に、そのまま邪気目掛けて舞い散らせるように投げる。
「疫はー外! 福はー内!」
 掛け声ひとつ、放たれた花弁は邪気の周囲を逆巻き、螺旋を描いて天へと昇っていく。
 振りほどいた邪気が真正面からトウカとぶつかれば、トウカは静かにギフトを行使した。
 それは鬼紋へ触れたものと心情を交わすギフト。
 純粋なる思いは『タッチされたし、鬼役変わるか?』という思い。
 かつて永遠に鬼だけやらされた純情なる青年の想いは――しかし届かない。
 というよりも、そもそも一種の自然現象なのだから、届かせる相手がいないという方が正しいか。
 エクスマリアは脚の代用とした髪を用いて多脚で疾走する。
 迫りくる邪気は真っすぐにエクスマリアを目指していた。
 ――とはいえ、エクスマリアはその実、かの邪気に対してそれほどの脅威はない。
(ちょっとやそっとの不運、不幸など、通じない。来ても構わない)
 圧巻の安定性である。そのままぴょんっと、バネの要領で跳躍し、くるくる回転しながら空へ。
 これなら邪気を巻くことも可能――ちょっとだけ心に慢心を抱いて。
「む……追ってくる」
 流石に邪気の集合体というべきか、質量を感じさせぬ動きで跳躍した物がエクスマリアに突っ込んできた。
 ぞわぞわする風のような塊に煽られくるくる落下して――着地と一緒にぶるりと体を震わせた。
 だが、それだけだ。エクスマリアの安定性なら問題ない――髪で身体を跳ね上げ、そのまま離れようとしたその瞬間。丁寧に積まれたフラグを踏み抜いた。
 ぐらり、見れば、髪が地面の草を絡めてしまっていた。邪気が質量など無さそうなのに落下してくる。
「あ――」
 自然落下した邪気が再びエクスマリアを覆いつくした。
「その人ばかり狙って良いのかな?
 まだ捕まえてない僕の方を捕まえてみてはどうかな?」
 村人の方へと走り抜けていく邪気の前へ身体を刺しだすようにして声をかけたBinahを見ているのか、ただ前にいたからか、真っすぐに走る邪気がBinahを包み込む。
 Binahはそれを背に、思いっきり走り出した。
 猛烈な風が草を揺らしているような音を立て、邪気が追いすがってくる。
「うおおお! 全力移動!!」
 ヨハンは走っていた。なんかこう、キラキラ輝きながら。
 逃げるにしたって、割と普通に全力で走るしかないのだから仕方ない。
 光物に誘われるように追いすがってくる邪気の動きに追われながらも走る。
 全力で、そりゃあもう全力で走り続ける。
「おはぎとぜんざいのために! お腹を空かせるのです!」
 などと言っていたのは少し前。
 今思えば、こんなに走らされるのであればお腹にたまる糖分が必要になるのもさもあらんという気もする。
「し、しんどい……!」
 一時的に巻きながら、呼吸を整え小休止する。
 くぅぅとお腹の音が鳴った。
 ヨハンが巻いた邪気は、村人の一人を追っている。
 鬼から極力離れていた無量は、村人に邪気が近づくたびに邪気の前に出ていた。
 如何に些細な不幸でも、降りかからぬに越した事はない。
 小さな不幸は積もり積もって山となり、其れがいづれ澱みとなり、邪気になる。
「……なれば、村人の被害を此処で少しでも多く抑える事が出来たならば来年の鬼は今よりも小さくなるやも。そうなれば大変好い事です」
 贖罪を行く女は善性の言葉をぽつりと呟いた。
 疾走する邪気は真っすぐに無量に向かってきている。
 さて、既に何度目であろうか。
 それが無量の身体を包み込み、煽り、走り抜ける。
「……好い事なのですが、此れは何故か気分が落ち込みますね」
 通り過ぎた邪気を浴びて、無量は溜息を吐いた。
 それは雨上がりの梅雨の日に湿気の籠った室内に閉じ込められたような。
 じっとりと汗をかいたまま眠りに落ちた時の朝のような。
 べったりへばり付く不快感。
(……堕落にも程がありますが、叶うならば今すぐ帰路に着きたい気分ですね)
 思わず遠い目をしたくなっていた。
「次は私だよ! ほら! 手の鳴る方へっ!」
 パンパンと大きく手を叩いて反応を呼ぶのはンクルスだった。
 ついでに近くにいた仲間へと自らの特殊システムの恩恵を分岐させて齎すと、そのまま走り出す。
 ある程度走ったところで、一気に空へ。
 簡易の飛行能力に追いすがるように、邪気が形状を伴ったまま向かってくる。
「むむむ! 空まで追いつかれたら仕方ないね……!」
 邪気がンクルスを覆いつくすように走り抜けていった。
 強烈な突風にあおられるように、ンクルスの身体が空に舞い上がって落ちていく。
「……でも、もうそろそろ終わりかな」
 徐々に薄まっている邪気を見れば、時間がそろそろ終わるのは見てわかった。


 宴もたけなわ、邪気の収束はほころび始め、祭りのメイン舞台が終焉を迎えようとしつつあった。
 無量は邪気の方へ飛び掛かる。
 収束した邪気ならば、斬り下ろすより突きで割るほうがいいのでは? という判断の下で放たれた三段突きが邪気を払い穿つ。
 ほんのちょっぴり『帰りたいなぁ』が心を支配しているのは、積極的に村人を庇って邪気を浴びまくったから。
 そうすれば来年の邪気が今年よりも小さくなるかもしれない。そう判断してのこととはいえ、何とも鬱々としてくる。
 邪気に組み付く(?)ンクルスはそこから続けるように大技のパワーボムへと流して打ち下ろす。
 邪気に包み込まれるようにどんより感が増すが、それも一日の物だというのだから気にするまい。
 ――とはいえそれでも若干嫌な気配に纏わりつかれたようで気分が悪くなってきたのは内緒だ。
「ふぅ……単純に逃げるだけって結構しんどいですね……
 鬼くんも楽しかったですか? まぁ、邪気南下に言うのもアレですけど!」
 寓喩偽典ヤルダバオトを開き、記された魔術の一端を紐解く。
「また来年遊びましょうね!」
 放たれたる鮮やかな閃光は邪気を払うように照らし――
「折角、だ。ただ消えるより、派手に散らして、祭りを締め括る、か」
 球体を形成するエクスマリアの黄金の髪が、中空に浮かぶ。
 それはやがてスパークを走らせ、一つの弾丸を形成――極大の稲妻となった雷光が迸る。
 盛大な雷光の花火を以って、祭りの終わりが彩られた。


 こうして邪気を払ったイレギュラーズは村で善哉やらおはぎやらの甘味に舌鼓を打っている。
「お嬢さん、そんなに量食って大丈夫なのかい?」
 村人らしい老女から問われたエクスマリアの前に広がるのは、外見からは想像もつかない量の豆だった。
「ん、問題ない」
「そうなのかい? ならいいんだけど……ほら、その豆だけじゃなくて、こっちのおはぎも同大?」
「お土産は頼める、か?」
「もちろんだよ! どれを持って帰るんだい?」
「それじゃあ――」
 幾つかのおはぎを見て、それをくるんでもらいながら、自分用を黙々と食べていく。
「はぁぁ……お茶が身に染みますね……」
 一息入れるヨハンの目の前にはおはぎが3つ。手元の茶器には緑茶らしき淡い色のお茶が注がれている。
 疲労感を溶かすような味わいのお茶と、身体が求めていた糖分を口の中に放り込む。
 餡子特有の甘味にもち米が良くあっている。
「……甘味を頂けば多少。気分が和らぐかとも思いましたが……」
 間違いなく美味しい緑茶とおはぎに最中の疲労感が回復していくのを感じつつも、落ち込んだ気分は上り調子とはいかない。
「あねさんが俺達を庇って浴びすぎたせいってのもあると思うが……」
 そう言ってきたのは村の男のようだ。
 村人を庇い続け、邪気を浴び続けたのは中々に無茶であった。
 一日で済むであろうという理由からだが。
「まぁでも、アンタが守ってくれたからうちの村の衆は例年に比べて浴びてないんだ。ありがとう」
「それは……良かったです。来年もまた、お手伝いに参りますね」
「おうよ、よろしく頼むぜ!」
 からりと笑った男性から視線を外して、食べかけのおはぎを口に運んでいく。
 ンクルスは人々が食事をしている姿を眺めながら微笑を浮かべていた。
「やっぱり、人が美味しそうに食べてるのを見るのも楽しいね♪」
 上機嫌のンクルスは、食事の味という者がまだよくわからない。
 それでも、誰かと一緒に食事を食べるということの楽しさは分かってきた。
 こうしてみるだけでも、それは同じなのだという。
(鬼は外、といつもは言われるが今年はそうならなかったのう。神使たちのおかげかの?)
 盃を片手に甘味も頂きながら瑞鬼も宴を楽しんでいた。
(去年はまっこといろいろあったが退屈はしなかった。今年はどうなるかのう……)
 去年――それはこのカムイグラに外来の神使が訪れ、動乱の果てにこれまでの支配からカムイグラを解放した年。
 元々このカムイグラにいた瑞鬼にとっては色々あったが退屈にならなくて済んだといえる。
「福は内、とまでは言わんが退屈しない程度に何かあるといいんじゃがな。かっかっか」
 もうひと笑いして、瑞鬼は甘味に舌鼓を打った。
 トウカは一人ちびちびとお酒をたしなんでいた。
 どうにも過去の自分と重なる邪気の存在に思いを馳せている。
 手元にあるおはぎはお供えのつもりだったが、村長からやめた方がいいと言われてしまった。
「祭壇の類とかありませんし、作っても無意味ですしのう。
 あれはただの自然現象、この村に陰気が集まりやすいが故の、ただの現象ゆえ」ということらしい。
「はぁ~たくさん動いた後の甘いモンってのはより一層美味しく感じるなぁ」
 ぺろりとおはぎを食べ終えた命は緑茶でのどを潤せば、一息ついた。
「なぁ、村長さん、おはぎとか少し包んでもらってもいいか? 食べさせたい奴がいるんだ」
「ほっほ、なぁに、お気になさらず、おいくつでもお持ち帰りくださいませ」
「ありがとよ! じゃあ――」
 村長から笑い返された命はそのままお土産にするおはぎをどれにするか考えていく。
 宴は長く続き、翌日にはイレギュラーズは村を後にするのだった。

成否

成功

MVP

彼岸会 空観(p3p007169)

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。

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