シナリオ詳細
珍茸守る3枚の殻
オープニング
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幻想ローレット。
そこを訪れたのは、小さな体躯を覆う程ボリュームのある水色の長い髪を揺らし、真上に大きな赤いリボンをつけた海種の少女だった。
「キャシーはカタリーナ・マエストリなのよ」
彼女はそう名乗り、友達であるデイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)を訪ねてきたことを伝えると、程なくしてその当人が現れる。
「よく来てくれたのじゃ」
デイジーは笑顔でカタリーナの手を引き、この場にいるイレギュラーズ達を紹介しつつ歓談室へと向かう。
しばらく、互いの紹介を行い、話に一通り花が咲いた後、カタリーナは本題を持ち出す。
まだ幼さも残すカタリーナだが、彼女は海洋王国の五つ星レストラン『アルタ・マレーア』のオーナーの娘。
その店は海洋の貴族達はもちろん、幻想からも貴族達が足を運ぶこともあるという。
店で育ったカタリーナも美食家として育ち、繊細な味覚と抜群のセンスで店のメニューの選定権限を持つ。
そんな彼女は他にも、珍しい食材を探したりもしているらしい。
「ブロッコダケなるキノコを食してみたいと思っていたのだわ」
そのキノコ……ブロッコダケは植物と菌の性質を併せ持つ珍しい種だそうで、生育には程よい湿気と日照時間が必要なのだという。
それらを十分に備えるのに適した場所が海に面した海洋且つ日当たりの良い名もない島にあった。
「けど、その島は海魔と呼ばれる海のモンスター達の縄張りなのだわ」
カタリーナの把握している範囲で、この島には3種の海魔が存在しており、島へと上陸と丘への接近を妨げるのだという。
それらの海魔は全てが甲殻類ベースの巨大モンスター達。近海、砂浜、丘を縄張りとしており、外敵が接近すれば全力で排除に向かってくるはずだ。
「なら、全力で排除せねばのう」
キャシーことカタリーナの為、デイジーもまた海魔の情報を手にしながら、その排除を誓うのである。
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海洋首都リッツパーク近海。
カタリーナが親に頼んで用意した中型船へとイレギュラーズは乗り込み、目的地である名もない島を目指す。
目的のキノコ、ブロッコダケは植物の要素と菌類の要素を併せ持つ珍しい種とされる。
しゃきしゃきしながらもそれでいて歯ごたえ充分で噛み応えのあるそのキノコ。さすがに生齧りはお勧めしないが、煮てよし焼いてよし。是非とも味わってみたい一品だ。
だが、この生育域へと至るには3つの殻を突破する必要がある。
名もない島の近海に住む巨大エビ、マッスルロブスター。
島の砂浜を根城とするキラークラブ。
そして、島の丘を走り回る巨大ダンゴムシ、ローリィポリィ。
ただ、全てを倒す必要はない。邪魔な丘のローリィポリィは撃破必須と見ていいが、他2体は上手くやり過ごすことで戦力を温存できるはずだ。上手く対処法を考えたい。
それらのモンスターを掻い潜ることで、非常に珍しいキノコを手にし、味わってみたい。
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/8949/49afa3a1bba5280af6c4bf2fb5ea7669.png)
- 珍茸守る3枚の殻完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年02月14日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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海洋首都リッツパーク近海、イレギュラーズ達を乗せた船が沖を目指す。
「ブロッコダケ? 初めて聞くけど美味しそう!」
「ブロッコリーのようなキノコか。ちょっと味が想像できないけど……美味しいと期待しておこう」
赤と青の瞳を輝かせた『二律背反』カナメ(p3p007960)の言葉に、青髪ストレートの鉄騎種青年、『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)も彼なりにその味を楽しみにしていた様子。
「キャシーのおすすめなのだわ」
青髪の海種少女キャシーことカタリーナが笑顔でイレギュラーズへと語る。
「ワシはグルメじゃないが、討伐には参加するのう……成功したら、少しは頂こうかね?」
そんなカタリーナに、大柄でガタイの良い髭男『英雄的振る舞い』オウェード=ランドマスター(p3p009184)がややもじもじした態度で言葉を返す。
「有名なれすとらんの主人の娘さんであるカタリーナさんが言うなら、ブロッコダケってとても美味しいんだろうなあ……」
中性的な容姿の『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)はやや横文字が苦手らしく、少し言葉を詰まらせつつも相伴に預かりたいと興味を示す。
「えび、かに、だんごむし……か。んー、惜しいっ」
『新たな可能性』郷田 京(p3p009529)は手前側に大きなエビ、そして向こうに見える島にカニの姿を視認して。
「だんごむしより、あっちの2匹のが断然美味しそーじゃない!」
「エビと、カニ……お汁にすると、美味しいですよね。……あっ。やることは分かっています、よ?」
銀髪ウェーブの『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)も京に同意してみせる。
「じゃあ、ついでにそれも持って帰ろうよ☆」
カナメもそちらを討伐していただきたいと希望を語るが、さすがにまだ見ぬダンゴムシは全力で「ムリムリ」と拒否していた。
「……あのエビとカニも食べられるのではと考えてしまうのは、ひとの悲しき性なのです」
見た目金髪な豊満な体つきの獣耳女性、『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)も海の幸に興味は持てども、そこまでの余力はなさそうだと現状把握する。
「巨大甲殻類3種も気になるが、目的はブロッコダケだ。穏便に行くぞ」
イズマもそれが分かっていたようで、エビ、カニには触らぬよう提案すれば、白熊の獣種『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)も異論を唱えずに。
「敵に遭遇できないに越したことはないからな」
この場はエビやカニの縄張りに入らず、隠密行動に注力をとエイヴァンはできるだけ敵のいないルートを選択し、操舵手や船長のサポートを行う。
仲間達の意見を聞き、京は残念そうに首を振る。
「まあ仕方ないか……今回はブロッコリーだかシイタケだかが目当てだし……?」
「そうだ、収穫出来たらお姉ちゃんにも後で贈ろ♪ えへへ、喜んでくっれるっかなー!」
再びキノコへと話題が戻れば、カナメが双子の姉にもブロッコダケを土産にと小さく笑うのだった。
●
さて、近海のエビ……マッスルロブスターを避けつつ、目的の島を目指すイレギュラーズ一行。
「よし、その辺の南国ペンギンさんよ、来い!」
京が呼び寄せたファミリアーに潜行偵察を任せ、エビがこちらの船を発見、追跡しているかを確認させる。京自身もエネミーサーチを働かせ、敵の動きを注視する。
「消耗を避けるためにも、あまり相手はせずにやり過ごしたいところだね」
「これ以上は相手を刺激しそうです」
津々流も山人の素養により、船上から視覚、聴覚、嗅覚を働かせる。クーアは相手の縄張りを察知し、仲間と協力してエビとの遭遇を避け、船を大きく迂回させていく。
「遠くからでも、視認しやすい相手なのはありがたいね」
カナメは目視のみで、海上へと浮上したエビがこちらを捕捉しないか注視する。
「縄張りから十分遠く離れたら諦めてくれそうですね。そっと回り道してさようなら、です」
フェリシアも仲間の情報を合わせ、ひらめきを活かしてルート探し。
京が縄張りの範囲を把握して都度仲間達へと共有し、マッスルロブスターを完全にやり過ごす。
「エビは水棲生物だから、陸上までは深追いしてこない」
そんなイズマのモンスター知識もあり、一行を乗せた船はエビへの接近を避け、島へと接岸する。
「カニは巣穴を掘っているかもしれないと思っていたが……」
イズマは相手が姿を隠しているかもと警戒していたが、巨大ガニ……キラークラブは我が物顔で砂浜をのし歩いていた。
上陸自体は問題なくできたが、丘への通り道がカニの縄張りとなっており、遭遇は免れそうにない。
「出来れば、戦闘は避けたかったがのう……」
オウェードは少し心配そうなカタリーナを気にかけ、動揺する。
ズザザザザ……!
砂を巻き上げる巨大ガニは脚を動かして近づいてくると、素早さを活かしたクーアがその脚目がけて光弾を撃ち込んでいく。
続けて、津々流も霊力で生み出した花吹雪で嵐を巻き起こして巨大カニの動きを封じ込めようとする。
そうして、相手を足止めしつつ、メンバー達は丘を目指す。
オウェードが敵の腹下から振り上げた斧を叩きつけると、巨大ガニは態勢を崩しかけて。
「!?」
この場をスマートにやり過ごすべく、自己強化したエイヴァンが絶対零度の冰砲撃で凍てつかせようとする。
「今のうちに離脱しよう」
相手が動けぬなら今の内と、イズマの呼びかけもあって一行は巨大ガニをそのままに丘へと駆け上がっていくのだった。
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丘は端にある水場の影響か、程よい湿気が当たりを包む。
人にとってはやや不快感もある為、間違いなくハイキングやキャンプには向かないが、それ故にブロッコダケにとっては最適の生育環境であったのだろう。
ゴロゴロゴロゴロ……。
そこを丘の支配者とでも主張すべく転がり回るのは巨大ダンゴムシ、ローリィポリィ。
「こちらは戦闘が不可避のようですね」
「……キノコをうっかり踏み潰されたら、悲しい気分に……なります」
クーアやフェリシアは砂浜のカニが丘まで登ってこないかを警戒しつつ、巨大ダンゴムシを注視する。
その軌道上には、ブロッコダケの生育域もしっかりと入ってしまっていたのだ。フェリシアの表情も陰ってしまおうというもの。
「幸いにして相手はおそらく好戦的、ちょっと動かす程度なら誘導手段には困らないはずです」
一歩縄張りに入ろうとすれば、こちらへと向かってきそうな勢い。ここまで後ろについてきていたカタリーナはイレギュラーズにこの場を託し、岩陰に身を隠す。
「攻撃される前から丸まって襲ってくるのは、確かに攻撃的だな」
出来る限りローリングの被害を食い止めるべく、イズマは散らばるよう仲間達へと呼び掛ける。
後は戦いやすい場所を探すのみだとクーアは主張し、海岸とは逆側の比較的乾いた場所への誘導を提案する。
そして、彼女は早速燃え上がるような感情を抱かせる薬を投げつけ、敵の気を引く。
「一番美味しくなさそうなのに限って、倒さなきゃならないとはね!」
煮ても焼いても食えなさそうなその巨大甲殻類にイズマもやや悪態づくも、目的のブロッコダケを潰されぬようにと荒ぶる風を纏わせた機械の拳を叩き込む。
「ブロッコダケを潰されてしまうと困るからな」
「ふむ……、この辺りかのう」
砂浜に行かれぬよう逆側からの攻撃を意識するイズマ。オウェードも戦略眼で適所を見定め、おびき寄せるべく待ち構える。
カナメも近場で自己強化を行っていたが、津々流もまた仲間から距離を取りつつその接近に備える。
「お前、甲殻類ならたぶん美味いんだろー!?」
ブロッコリーだけじゃ乙女のお腹は膨れないと叫ぶ京もカニが接近してきたことで、瞬間的に気功を操り、必殺の回し蹴りを巨大ダンゴムシの側面へと撃ち込む。
敵の誘導に当たり、イズマはあちらこちらにある岩を利用する。
一度岩にぶつけさせると、触覚を動かすローリィポリィは右、左、右と交互に曲がるのを視認して。
「こいつもダンゴムシの性質を持っているようだな」
イズマは思った通りと、仲間が待つ方へと誘導する。
「こっちだ。そのローリング、受け止めてやろう」
エイヴァンが大盾を構えると、ローリィポリィは望むところと言わんばかりに彼を引き潰しにかかろうとする。
身長2m程と巨躯のエイヴァンだが、ローリィポリィは身体を丸めてなお彼より大きい。
「位置取りだけは注意ですね」
自らを戦いの為に最適化した状態としたフェリシアは十分仲間から距離を取って巻き添え事故の被害を抑えるべく、指揮杖を振りかざして支援の為の号令を出す。
さらに、フェリシアは回復の為に天使の歌声を響かせ、全力で戦う仲間を支える。
「だーめ、こっちは通行止め♪」
上手く相手を誘導場所へと引き付ければ、カナメはそこから敵がブロッコダケや入り江の方に向かわぬようにブロックする。
そして、タイミングを見て彼女は相手の体内にまで食い込む赤き斬撃を見舞い、ローリィポリィを苦しめる。
後はこのまま足を止めて戦い、討伐を目指すのみ。
クーアはやや距離があったことで、魔術を行使して誘惑の力をエンチャントした焔で巨大ダンゴムシの身体を焼く。
「荒ぶる丘の主。ゆっくりとお休み」
続いて、津々流が霊力で生み出した桜の花びらで嵐を巻き起こして動きを止めようとする。
さらに、肉薄するイズマも両手の拳を旋回させて相手を横転させようとし、勢いを込めてオウェードが振り被った斧を叩きつけ、体液を流す相手の傷をより深めていく。
だが、ローリィポリィも丘の主としての意地を見せる。頭部の触手を突き出し、攻撃直後のオウェードの身体を貫いたのだ。
「ぐううっ……!」
運悪く致命傷を受けてしまい、彼は丘の上で倒れてしまう。
フェリシアがすぐさまその介抱へと回る中、エイヴァンが至近距離から斧砲を撃ち込む。
「如何に堅い殻を持っていても、炎には耐えられまい」
エイヴァンが言うように、巨体を包む業火はより大きくなり、ローリィポリィは身をよじらせて苦しんでいた。
ただ、それでも敵は丸まったままで防御態勢を崩さぬこともあり、京はコンビネーションを活かした打撃を叩きつける。
「ブロッコリーだけじゃ乙女のお腹は膨れないんだよ、ばっきゃろー!」
後は一気に敵を弱らせるべく、クーアが霊薬を撒き散らして相手の巨体を炎と雷の奔流を浴びせかけ、津々流が意志の力を衝撃波に変えて撃ち込むと、ダンゴムシはついに身体を丸めるのをやめてぐったりと倒れ込む。
そいつ目がけ、自らの血飛沫を刀としたイズマが斬りかかると、ローリィポリィは触覚をへたらせて動かなくなった。
「やったのだわ!」
すぐに邪魔な敵の討伐を確認したカタリーナが一行の元へと駆け寄ってきたのだった。
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その後、イレギュラーズ達は目的のキノコの生育地へと向かう。
「あったのだわ!」
カタリーナが駆け出した先にあったのは、緑がかった珍しいキノコ……ブロッコダケだ。
確かに、見た目はブロッコリーを大きくしたような形。傘の部分に葉緑体が集まっており、日の光も取り入れながらも、根元は菌類の特徴を有している。
「厄介な事が起こる前に採取しちゃおう! 次に収穫出来る分もきっちり残さないとね」
カナメが言うように、一行は程々に残しつつ、ブロッコダケを採取していく。
「ブロッコリーっぽいキノコ……? ブロッコリーそのものとはどう違うのです……?」
「これがブロッコダケ……ブロッコリーみたいだけど、キノコなんだろう?」
クーアの疑問に答えたクーアが生ではお腹を壊すだろうと、加熱して食べることを提案する。
「まぁ、薪になりそうな木はその辺にあるし。火種さえあればどうにでもなりそうだな」
「少しなら料理の心得があるから、必要であれば手伝いをさせてもらうよ」
エイヴァンは持参した調味料を出して火種を準備すると、津々流もご相伴に預かりたいと自ら調理を申し出る。
「料理の腕、興味あるのだわ! ……でも、その前に、素材の味を楽しむのもいいものよ」
そこで、依頼人であるカタリーナが嬉しそうにメンバー達へと勧める。
カタリーナ自身が味を確かめたいと要望したこともあったが、キノコ採取中に意識を取り戻したオウェードがそれに懸念を示す。キノコは有毒種も少なくないからだ。
「そのまま大丈夫かね? 毒味係とかは?」
「このキノコは問題ないのだわ」
丘の上で起こした火に枯れ枝をくべていたカタリーナが最初に口にすると、満面の笑顔を見せる。
それでも、オウェードは難しい顔をして、程よく焼けたブロッコダケを見つめて。
「しかし……、ウム……食べてみよう……」
何かあった時の為にと、彼は少しだけ齧ってからもぐもぐと反芻すると……。
「うまああい! 確かに言うとおりの絶品じゃな! 匂いからして素晴らしい!」
見た目だけでなく、歯応えもブロッコリーのようにシャキシャキとして素晴らしいとオウェードは絶賛する。
「味もまた美味。キノコらしい所を残しておる。行ったばかりとは言え、口からでもこの綺麗な海を思い出しそうじゃ!」
続いて試食する他メンバー達もその食感や味に好感を抱いたようだ。
「……おお、歯応えあるなぁ。香ばしいし、美味しいじゃん」
「これならお酒にも合いますね。ソテーにしていただきたいです」
イズマがうんうん頷きながら生身の左手でもう一つブロッコダケを焼く。その横で食していたクーアの要望もあり、津々流がフライパンを使い、エイヴァンから受け取った油やバターを使ってブロッコダケのソテーを作る。
「うん、なかなかいい香りに仕上がったね」
津々流が皿へとよそったそのソテーをつまみに、クーアは天甜酒を煽る。
「油とアルコールは万事を解決するのです!」
想像していた通りだったのか、満足そうに彼女は酒盛りを始めてしまっていた。
余談だが、酒飲みで辛党なクーアはねこの獣人ではあるが、特に食べられないものはないらしい。
「ねこですが、ひとなので」
程なく、顔を赤くしたクーアはすっかり出来上がってしまっていた。
「いや、いい食材が手に入って嬉しいのだわ!」
なかなか得られぬ一品とあり、レストランで提供するには少々高価になりそうだが、それだけの需要はあるとカタリーナは笑う。
「ワシらも取りに行った甲斐があったワイ! 御礼が言いたいのはこっちじゃよ!」
カタリーナにどぎまぎしていたオウェードであったが、幻想のリーゼロッテを思い浮かべ、このキノコを……と鼻息をや荒く仕掛けたところで自制していたようだ。
「まぁ、試食していい料理が思いつきそうなら、ぜひレストランの方に招待してほしいところだな」
「そうだわね。機会があればお誘いするのよ」
それなりの労力を貸すのだから、それくらい罰は当たらないだろうと主張するエイヴァンに、カタリーナは店の状況を確認しつつ招待できればと前向きな姿勢を見せていた。
ところで、キノコだけでお腹を満たすのはちと難しい。
「でもさあ、ちょっと物足りなくない? 美味しいにしてもほら、量とか食べ応えとか??」
京が横に視線を向ければ、そこには先程倒したローリィポリィが転がったままになっていたのだが……。
「え? ローリィポリィ? うーん、さすがにやめとくかなぁ……」
イズマを始めとして、皆それを食べるのには難色を示す。
「調理法次第だけれど、さすがにレストランで出すには厳しいわね」
食べた経験があるカタリーナによると、見た目ほどにはまずくはないようだが、メニューとして出す分には客に不快感を与える可能性が高いとのことで、食材にはならないのだとか。
「やっぱり、エビとカニもいいですよね」
フェリシアが気にかけたのは、今も海岸を徘徊するキラークラブだ。
気付けばすでに、カナメが交戦を開始していて。
「あのハサミ、一目見た時からすっごい痛そうで……うぇへへ、味わってみたーい♥」
精神を研ぎ澄ましたカナメは黒い靄を纏い、赤黒い血のような一閃をキラークラブへと叩き込んでいく。
「…………!!」
だが、その反撃は手痛く、槍のような形状のハサミで体を裂かれてしまう。
命のやり取りをするその感触を楽しむカナメは見上げんばかりの巨大ガニへと呪いの斬撃を浴びせ、その巨体に桜の花を咲かせていく。
だが、さすがにタイマン勝負するには厳しい相手。
泡を吹きかけられたカナメが怯んだ隙にキラークラブが回り込み、ハサミの刺突を打ち込んでくる。
対応の遅れたカナメはそのハサミを腹部に受け、希望の力を僅かに使って踏みとどまる。
そこへ、丘から駆け下りてきたメンバー達が参戦する。
カニに興味を示していたフェリシアがカナメへと調和の力を使って癒しをもたらす間、メンバー達が攻撃を仕掛けるが、とりわけ、お腹を空かせた京などは美味しい一品をと気合を入れて堅い甲羅へと蹴りを叩き込む。
そんな仲間達に支えられて交戦を続け、カナメは見事にそのハサミを切り落とす。
「!?!?!?」
ハサミを落とされて無力化すれば、後は単なるデカブツにも等しいキラークラブ。
少しして砂浜へと崩れ落ちた巨大ガニは一行の肴として捌かれ、美味しくいただかれたのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはダンゴムシの習性を活かして誘導を行った貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
まだまだ、混沌には余り知名度のない珍味が存在しております。海種の少女と共に、それを味わいに向かってみませんか?
●目的
ブロッコダケの採取。
●敵……海魔・巨大甲殻魔獣×3体
目的のキノコが生育する島周辺の海域、砂浜、丘に住まう巨躯のモンスターです。
自らの縄張りを脅かすモノを全力で排除しようとしてきます。
○マッスルロブスター×1体
全長3.5m程もある屈強な身体を持つエビ。主に目的の島の近海をテリトリーとしています。
基本直立態勢をとり、エビ反りになりながらも太い腕で殴り掛かり、尻尾を叩きつけてきます。
○キラークラブ×1体
目的の島の砂浜をメインに生息する全長5mもの巨大ガニ。
鋭いハサミを持ち、断ち切るだけでなく、槍の様に突き出して攻撃することも可能です。
泡を吹きかけて牽制する間に迫り、相手の命を奪うまさに殺戮のハサミの名を冠する海魔です。
○ローリィポリィ×1体
全長4mほどもある巨大ダンゴムシ。丘をテリトリーとしています。一応、甲殻類の仲間であるようで、丘に上がった海魔の一種のようです。
のしかかりや、硬化した触手の突き出し、加速してからの広範囲へのローリングなどを攻撃手段としています。
採取対象であるブロッコダケの生育地にも現れる為、討伐は避けられない相手でしょう。
●NPC
○カタリーナ・マエストリ
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)さんの関係者。海洋王国の五つ星レストランのオーナーの娘であり、食いしん坊な美食家の少女です。
戦闘には参加せず、後方で何か食べつつメンバーを応援してくれます。
●状況
程よい湿気のある地域にて、日の光を浴びて生育するブロッコダケなるキノコの採取に向かいます。
リプレイは目的の島の近海に船が近づくところから始まります。
島の近海、入江、丘はそれぞれ巨大な甲殻類のモンスターが縄張りとしておりますので、それぞれ対処した上でブロッコダケの採取を願います。OP説明の通り、必ずしも討伐の必要はありません。
ブロッコダケはブロッコリーのような形をしたほんのり緑色がかったキノコです。
非常に歯応えのあるブロッコダケは焼いても非常に香ばしくいただけます。
無事採取できたなら、カタリーナが試食したがる為、島のどこか、あるいは船上などで一緒に食べてみるとよいでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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