PandoraPartyProject

シナリオ詳細

【黄昏小町】あの子はどこに?

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いつもの町で

――――カァー、カァー。

 茜色の空の下、烏の声が響き渡る。
聞こえてくるのは、それだけじゃない。

――――わーっ!
――――待ってよぉー!

パタパタパタと靴音が、カラカラカラと笑い声が、聞こえてくる。

 ここは『黄昏小町』。
延々と夕焼け空が、永遠に夕方が続く、子供のための楽園。
町の建物は皆木造で、そこら中に柿の木や金柑が植えられていて、近くの池には鯉が泳いでいて。
どこか古めかしくて、しかしどうしようもなく懐かしいような、そんな空気が漂う町。

 そしてそんな黄昏小町で、今日も一緒に遊ぶ、仲良しグループの子供達。
けれど、ピーンポーンパーンポーン、と、町に放送が鳴り響けば。
あっという間に『夜』が来ちゃう。そうしたら、今日はお別れ、また明日。

 いつものメンバー、リキ、トモヒロ、アキ。
そして、あともう一人。

「あれ? 『みっちゃん』は?」

一番小さくて、一番可愛くて、一番泣き虫のあの子が、居ない。

「ばーちゃん! みっちゃん見なかった?」

駄菓子屋のおばあちゃんに、ほっぺに絆創膏のリキが尋ねる。

「ううん? あんた達と一緒じゃなかったのかい?」
「それがね、今見たら居なかったの」
「そうねえ……。トモちゃん、今日は皆でどこに行ったの?」

トモちゃんこと、眼鏡の少年、トモヒロはこう答える。

「えっと……一緒にお寺の境内で追いかけっこして、公園でかくれんぼをして、かくれんぼが終わったら、駄菓子屋に行こうって約束して。それから今さっき、ここに来ました」
「……待って、トモくん」

真っ赤なリボンのポニーテール、アキが、何かに気づいたように話を止める。

「さっきのかくれんぼ、鬼は誰だった?」
「リキです」
「リキ。その時の事覚えてる?」
「えーっと、最初におれ、みっちゃんを見つけて、でもみっちゃんが『疲れた』って言ったから、じゃあ待ってて、って言って、おれだけでアキ達を探して……って、ああああーっ!?」

何かに気づいたように、リキは膝を落とす。

「どうしたのよ」
「お、おれ、アキ達見つけるの、時間かかったけど、すっごく探して、やっとみんなを見つけて。やっと3人みつけたーって思って、ほっとしてたら」
「……まさか、みっちゃんのこと、忘れちゃったんですか」
「そうかも……!」
「もー! 何やってんのよリキ! 今から、3人で探しましょ!」

 仲良しグループは、大急ぎで走り出す。
『夜』が来る前に、みっちゃんを見つけてあげないと。
怖くて大きい大化けおばけが、あの子を拐って連れてっちゃう。

●あの子を、迎えに行かなくちゃ

「……あたしも昔、友達とはぐれちゃった時、大声で泣いたりしちゃったっけ」

 しみじみとそう語るマチネ。
しかし、一人取り残された『みっちゃん』は、今頃怖くて怖くて、不安で不安でしょうがないはずだ。
それに、『大化けおばけ』という存在も、決して無視はできない。
イレギュラーズならばいざ知らず、子供達がそういうものに引きずり込まれてしまったのなら、きっと抗う手立てなど、ありはしないのだから。

「とにかく、みっちゃんを見つけて、助けてあげて。あたしも、皆が無事に帰ってくるの、待っているから」

NMコメント

どうも、なななななです。
ノスタルジーな気分に浸りながら、童心に帰ってみませんか?

●黄昏小町
 永遠に夕方が続く、古き良き日本のような光景が広がる世界です。
空模様や天気はいつまでも変わりませんが、一応『夜』という概念があるらしく、毎日決まった時間に放送が流れます。

遊ぶのはここでやめにして、今日はもうお休みしよう……という意味もあるようですが、この黄昏小町には、『夜』になってもいつまでも遊んでいると、『大化けおばけ』にどこかへ連れて行かれてしまう……という伝承があるようです。

因みにPC達は今回聞くことはありませんが、『朝』が来たら、町中のスピーカーからチャイムの音が鳴ります。

そうしたら、また子供達の時間の始まりです。

●目的
『みっちゃん』を見つけること。

 非戦、ギフト等など、あらゆるものを活用して見ると良いかもしれません。
仲良しグループ(NPC欄参照)の子供達と協力するのも良いかもしれません。

 また、メタ情報になりますが、『みっちゃん』はPC達に発見される際、『大化けおばけ』に連れて行かれそうになっているので、助けてあげてください。
レベル1のPCでもワンパンで倒せる程度なので、がっつりとした戦闘プレイングは不要です。
でもせっかくやっつけるなら、ドカンと一発、カッコいいのをぶつけるのもアリかもしれません。

※ちなみに仲良しグループの子供達は、特にプレイングで触れられたり、指示がなくとも彼らなりに真面目に手分けして『みっちゃん』を探します。
彼らがはぐれる心配等は無用です。


●NPC

みっちゃん
今回の捜索対象です。
仲良しグループ1の泣き虫で、だけど一番優しい子。
仲良しグループの中で唯一の茶髪で、くりっとしたお目々が特徴です。

リキ
仲良しグループ1のやんちゃ坊主で、おっちょこちょい。
ほっぺや膝に、いつも絆創膏が貼られています。

トモヒロ
仲良しグループ1の賢い子で、眼鏡っ子。
誰にでも敬語で話しますが、仲良しグループには心を開いています。

アキ
仲良しグループ1のおしゃれさんで、しっかりもの。
いつも真っ赤なリボンでポニーテールを作っています。


●探索場所(例)

・お寺
 皆のいつもの遊び場所。
ここではよく、けんけんぱをしたり、押し相撲をしたり、何かおもちゃを持ち寄ったりと、色んな遊びをしています。
いつもみんなが集まる境内に、みっちゃんも戻ってきているのかも……?

・公園
 仲良しグループがみっちゃんとはぐれてしまった場所です。
とても広くて動きやすいので、かくれんぼの他にも、けいどろやだるまさんが転んだ、等で遊ぶ日もあるそうです。
遊び疲れたみっちゃんが、今もここに座っているのかも……?

・柿の木通り
 子供達に大人気の、甘い甘い柿がたくさん生っている木が並ぶ通りです。
柔らかめから固めまで、食感もさまざま。
お腹を空かせたみっちゃんが、ここで柿を取っているかも……?

・花園商店街
 魚屋さんに八百屋さん、鞄屋さんと、毎日町の大人達がせっせと働いています。
毎日、とても賑やかです。
皆を探してみっちゃんが、大人達に尋ねて回っているのかも……?

 以上になります。
皆と一緒に夕焼け小焼け、楽しくおうちに帰れますように。

  • 【黄昏小町】あの子はどこに?完了
  • NM名ななななな
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月07日 22時00分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
Binah(p3p008677)
守護双璧
望月 凛太郎(p3p009109)
誰がための光
胡蝶(p3p009197)

リプレイ

●あの子を見つけて

 みっちゃんを探そう。そうは言ったけれど。一体どこに行ったんだろう。どこから探せばいいだろう?
そう囁き合う子供達の肩を、そっと叩く人影が居た。

「嬢ちゃんに、坊っちゃん方。どないしなはったの」

 まず、優しく彼等に声を掛けたのは胡蝶(p3p009197)だ。
その背後には、『誰がための光』望月 凛太郎(p3p009109)、『守護双璧』Binah(p3p008677)、『騎士の忠節』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が控えている。
黄昏小町では見たことない人。知らない人。一体、どこの誰だろう?
でも、あの子のために。躊躇ってなどいられない。

「えっと、ボク達、友達とはぐれちゃったんです」
「みっちゃん! 姉ちゃん達、みっちゃんを見なかった?」
「えっとね、アタシ達より小ちゃくてね、目がクリッとしてて。茶色くってサラサラな髪の子なんだけど」

 仲良しグループの前に屈み、視線を合わせ、凛太郎が笑ってみせる。

「大丈夫だよ、俺達がきっと見つけるからさ」
「とりあえず、その『みっちゃん』が行きそうな所に、心当たりはないかな?」
「えっと、ボク達が今日遊んだのは、公園とお寺で。あ、これが案内板です」
「でもでも、みっちゃん、花屋の姉やと仲良しだし、商店街にも行ってるかも」
「柿の木通りもどうかな、って話してたとこだったのよ」

 Binahの優しい問いかけに安心したのもあって、子供達は心当たりについてどんどん口を開く。
そこまで聞いたアルヴァも、静かに頷いて。

「とりあえず、誰か、みっちゃんの持ち物を持ってないかな」
「みっちゃんのものは持ってないけど……アタシ、みっちゃんにリボン貸したの。これ!」

 みっちゃんをお洒落して遊んだのだと、アキが青いリボンを差し出すと、顔を近づけ、すんすんと鼻を鳴らす。

「兄ちゃん、犬みたい……」
「……まあ、ね。で、匂いは『あっち』だ」

アルヴァの指は、公園、お寺のある北方面を示した。

「ほな、せやったら私の友達にも手伝ってもらいましょか」

 そう言うと、胡蝶は、掌から光り輝く蝶々を飛ばした。
胡蝶の夢も、アルヴァが示すのと同じ方角へと飛んでいく。

 ともあれ、イレギュラーズは、超嗅覚と蝶々の導きに従い、彼等が遊んだというお寺と公園を探す事に決めた。
残りの候補も念の為、地元をよく知る仲良しグループが探してくると言うのだから、これで見逃すことは無いだろう。

「お兄さん達、お願いします!」

彼らの声を受け、イレギュラーズは黄昏の町へと駆け出した。

●あの子を探して

 最も足の早いアルヴァを先導に、一行は黄昏小町の通りを走っていく。

「おーい、みっちゃーん!」
「……ううん、ここには居ないみたいだ」

 道すがら、凛太郎が遠くまで聞こえるようにと声を張り上げ、Binahが返事を聞き逃さないよう、耳を澄ませる。
しかし返事は聞こえない。人助けセンサーにも引っ掛からない。ならば、みっちゃんが居る場所は、まだまだ先なのだろう。
その証拠に、胡蝶の放った式神は、未だその羽ばたきを止めず、北へ北へと向かっている。
アルヴァもその匂いを辿り、未だに走り続けている。

「みっちゃんはこっちの方角にいるのは、間違いないんだよな?」
「その筈だ。順番に見ていこう」

お寺は町の最北端。
公園もその道すがらにあるならば、見ていく価値はあるだろう。

「一人で迷子なんは辛いからねぇ、早う助けたらんと」

最後尾を行く胡蝶も、その目は真剣そのものだ。

「それにしても、俺は記憶がないから知らないんだが……子供って、やっぱり隠れんぼが好きなのか?」
「そりゃあそうだよ、俺だって昔よく、妹とやってたし」
「僕の所も、自然が豊かだったから。そういう場所に隠れたりとかしてたかな」
「あらぁ、かいらしい事してはったんやねぇ」

 ふとした疑問から、緊迫していた空気が少しばかり緩む。
そんなものなのか、とアルヴァが首を傾げるも、一行はまず公園に辿り着いた。
確かにみっちゃんの匂いはここに残っているが、それなりに時間が経っているらしい。
輝く胡蝶も、公園を通り過ぎ、更に北へと飛んでいる。

どうやら、既にみっちゃんはここには居ないらしい。
そう結論づけて、更に北へと足を伸ばし。
数百メートル程走った所で、その声がやっと一行へと『届いた』。

『いや……たすけて……!』

やっと聞こえた、今にも消えそうなか細い声。間違いない、この声の主は。

「みっちゃん!」

真っ先にアルヴァが、お寺に向けて足を早めた。

●あの子を助けて

 大人がボロシーツを被ったような、そしてそれを半透明にしたかのような。
そんな『何か』が、数体がかりで、一人の子供を取り囲み。
その両腕を引っ張って、何処かへ連れて行こうとする。

「アキ……トモ……リキ……」

 今にも泣きそうな声はしかし、すぐに驚きへと変わる。何故なら。
真っ先に駆けつけたアルヴァが、その身を刃に変えてアクロバティックに飛び込んだかと思えば、オ’レンジ・キスによる零距離射撃で、大化けおばけの一体を吹き飛ばしたからだ。

「助けに来たよ」
「その子を連れて行くのはやめてもらおうか」

 静かに、しかしはっきりと発せられたBinahの声に、残りのおばけも意識を向ける。こうなれば、あとはこちらのものだ。

「待てーいっ! その子を、離せーッ!!」
「おイタはあきまへんよぉ」

 凛太郎のドロップキックが激しく、胡蝶が放つ壱式『破邪』が静かに、大化けおばけを打ち据えたなら。
残りのおばけも、霧となって消えていく。

「幼女誘拐は許さないぞっ! おばけでもなんでも、ロリコンダメ、絶対!」
「うふふ、ここには頼もしい殿方が沢山居てはるわぁ」

 ともあれ、大化けおばけは、皆倒された。
力が抜けたように、ヘナヘナヘナ、と、茶髪の子供がへたりこんだ。

「……あ、ありがと……」
「あらあ、怪我してるやないの。痛いの痛いの、飛んでいき」

 大化けおばけに掴まれた両腕、確かにそこに、くっきりと、赤い跡がついている。
しかし、胡蝶の符が優しくそこに触れたなら。たちまち、その子の腕は元の色を取り戻す。

「それにしても、あのおばけ……思いっきり蹴っちゃったけど、後で祟ってきたりしないよな?」
「エレメント系の魔物か何かじゃないか? 詳しくは、わからないけど。実体があって殴れるという事は、そんなに恐れる事もない」

武器を隠すアルヴァと、怯え震える凛太郎は、先の『アレ』について考察しようとするが、この場で答えは出ないだろう。それよりも。

「きみが、みっちゃんだよね?」

Binahの問に、この子はこう答える。

「う、うん……ぼくはミカ……皆にはいつも、みっちゃん、って、呼ばれてる」
「……『ぼく』?」

その答えに、凛太郎は目を丸くした。

「……みっちゃん、きみは」
「……おとこのこ、だよ?」
「……マジでぇ〜!!!????」

凛太郎は、この日一番の大声を上げたという。





 それからややあって、イレギュラーズに手を引かれ、みっちゃんは仲良しグループの溜まり場、駄菓子屋前へと戻ってきた。

「あっ、みっちゃん!」
「ごめんみっちゃん、おれ、おれ……!」
「泣かないでリキ、ぼくはもう、だいじょうぶ」
「これにて一件落着、ですね」

仲良しグループの再会に、子供達皆が笑い、喜び、胸を撫で下ろす。

「もうはぐれるんじゃないよ。キミ達も次から忘れないように」
「うん、ありがとう、お兄ちゃん!」
「気をつけます」

 子供が子供を叱るのはどうなのだろう、と抵抗感があったものの、このグループからしてみれば、アルヴァもまた、立派な『お兄ちゃん』だ。

「腕以外は、特に怪我もなくて良かったよ」
「うん、ぼくはもう、だいじょうぶ。ありがと、おにーちゃんに、おねーちゃん」
「ちゃんと『ありがとう』も言えるなんて、ミカはんはええ子やねぇ」

 みっちゃんの様子に、Binahに胡蝶も、そっと微笑む。
無事、迷子を助け出せた。その事実が、そっとイレギュラーズの胸を温める。

「それにしても、さっきからなんか、悪寒がするんだけど……やっぱ俺、祟られてるんじゃ……?」

……ミィー……!!

「ヒャッ!!???」
「ああ、今のは近所のミケの声よ。この辺の猫で一番強いの」
「な……なんだ……猫かよ……」
「猫くらいでそんな驚く?」
「まあ……仮にもさっき、おばけと戦ったばかりだし」
「アハハ、あの分だとまた、ハチと喧嘩してるぞ」
「今のところ、ミケが勝率100%ですけどね」
「それにしても、凛太郎はんたら。慌てん坊やねぇ」
「あわてんぼう、なんだねぇ」

 子供達と、イレギュラーズの笑い声が、夕日の下で暖かく響き渡る。
兎にも角にも、遊びの時間は、もうおしまい。お手手繋いで、皆帰ろう。

ちょっと名残惜しいけれど。また明日になれば、いつもの皆が、いつもの場所で、待っているのだから。 

成否

成功

状態異常

なし

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