PandoraPartyProject

シナリオ詳細

百足Vorarephilia

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●消失、或いは悲劇のプロローグ
 集落が『呑まれた』のは、二日前のことだった。
 唯一生き残ったという少年は、隣の集落まで馬で逃げ延び助けを求めた。
 集落の若衆程度では歯が立たない。兵隊さんを呼んでくれと。
 けれどもその集落を治めている大名は隣領の大名と覇権争いをするばかりで、末端の農民にまで兵を割いてはくれなんだ。最後にのこった頼みのつなとして、決して多くない米を代金として呼ばれたのが……そう、ティスル ティル(p3p006151)をはじめとするローレット・イレギュラーズたちであった。

「……そう、大変だったね。今は、ゆっくり休んで」
 顔を覆って泣きながら、村長宅を出て行く少年。
 集落の中でもやや大きいこの家は、集会場としての役割を持っている。
 豊穣郷カムイグラ。四神結界によって守られた高天京からずっと離れた田舎町。地方の大名たちが収めるこの土地に、ティスルたちはやってきていた。
 囲炉裏をはさんで藁のゴザに座っていたティスルが、あとからやってきた仲間のイレギュラーズへと向き直る。
「みんな、お待たせ。あの子から聞いた内容を要約して説明するね」

●百足天女『がららぼん』
 二日前、集落に怪物が現れた。
 それは一見すると空飛ぶ巨大なムカデのようで、うねうねと蛇行しながら高速で空を飛ぶ怪物だった。
 逆光で目がくらんでいた内はムカデにこそ見えていたものの、それが近づくにつれておぞましい怪物だということがわかる。
 まず見えたのは女の頭だ。それも常人とは比べものにならない、馬車一台分ほどの巨大な頭である。
 まるで遊女のように整えた髪に、真っ白く塗った顔。しかし目や鼻や耳のような器官はなく、通常の二倍比率の口があった。
 口を開けば黒い歯。黒く塗ったというよりは、素材からして黒い骨のようなものがずらりと並び、闇としか形容できない口の奥をさらけ出す。
 それが最初に行ったのは、畑仕事をしていた少年の父と祖父母を喰らったことだった。口から吸い込むように含み、蛇のように丸呑みにする。悲鳴すら聞こえぬほどの強引さでだ。
 少年は母の手によって馬にのせられ、無理矢理に走り出した馬の背から振り向いてみたのは、母までもが怪物に飲み込まれるさまであった。

 ここからは情報屋からの話も含む。
 怪物は周辺で『がららぼん』と呼ばれている巨大な怪物で、少年がみた人食いの巨大頭から女の上半身を大量に連結させたような、奇怪な『胴体』がはえている。大量に並んだ腕はさながらムカデのようで、そのすべての手に握った神楽鈴が連なって鳴る音から『がららぼん』と呼ばれた。
 無抵抗な人間はそのまま、抵抗できるような人間は魔術の爆撃でいたぶってから食う習性をもつという。
「この怪物を倒すのが私たちが依頼された仕事だよ。
 おそらく戦っているうちは食べることに気を回さないと思う。誰だって、荒事の最中にごはんを食べようとは思わないしね。仮にそういう時がくるなら、私たちが全滅してみんな土に伏した時かな。……そんなことには、させないけど」
 がららぼんは主に空を飛び、神楽鈴によって起こした邪悪な呪いで地上や空の敵対者を爆破させるらしい。
 爆破させるのに黒くて巨大な鈴のようなものが飛んでくる幻影が見えるので、回避や防御は無理ということはない……だろうが、今集まっているメンバーで力を合わせて戦わなければ苦しいとも言われている。
 向こうも攻撃を当ててくるだろうし、逆にそれだけの耐久力や防御力を持っていることもわかる。油断せず、万全のチームワークで挑みたい。
 そして最後に、この怪物は魔種集団羅刹十鬼衆『衆合地獄』が肉腫と人間を意図的に混ぜ合わせて製作した『美術品』なのだという。

「『衆合地獄』華盆屋 善衛門……もとは私だけの問題かと思ってたけど、こうなっては国全体の問題ね。みんな、これ以上……あの少年のような悲劇を生まないために、この天女を倒そう」

GMコメント

■オーダー
・天女『がららぼん』の撃破

 フィールドは隣の集落です。
 皆さんが依頼人から話を聞いた集落からは馬で半日程度の距離にある場所で、『がららぼん』の襲撃によっておそらく民は誰も残っては居ません。
 『がららぼん』はそこから少年を追っかけるでもなく、しばらくその場に留まっている様子です。
 とはいえイレギュラーズが近づいているとわかれば空へ飛び上がってすぐ戦闘態勢にはいるでしょう。
 ちょっと遠回しなことを言いましたが、要するに『廃村で巨大な怪物とのバトル』です。

■エネミーデータ
 戦う相手は『がららぼん』一体きりです。
 情報屋の話では、HP・防御技術・特殊抵抗といった能力が高く、空から爆撃を行う戦闘スタイルのようです。
 といっても、討伐記録がないので追い詰めるとどんな手を使ってくるのかは分かりませんし、ちゃんとした倒し方が伝わっているわけでもありません。
 油断せず万全の体制で挑みましょう。

 敵は主に高高度を飛行しながら戦いますが、爆撃を行ったりする都合射撃可能位置にあります。
 また建物の屋根から飛びかかったり、飛行可能な仲間の補助を借りてがらららぼんの背に飛び乗ったりといった方法で近接戦闘を仕掛ける事は可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 百足Vorarephilia完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月10日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
源 頼々(p3p008328)
虚刃流開祖
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー
蛇蛇 双弥(p3p008441)
医神の双蛇
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
アスル=トゥルエノ(p3p009254)
蒼雷玉

リプレイ

●蹄よ泣いてくれ
 村へ至る馬上より、怪物の姿はよく見えた。
 畑に挟まれた広い土道を泥をけりながら進む馬が、まるで恐れるように足を止めてしまうのも無理からぬことだろう。
 見上げた青い空を、糸のきれた連なり凧のように飛び回る女の顔が見えるのだ。
 あれなるが魔種集団羅刹十鬼衆『衆合地獄』の作り出した美術品。
 天女『がららぼん』である。
「天女と名がついている割に、随分と悪趣味かつ物騒な姿を持っているのですね?
 助かった子のことも心配ですが……。
 まずは、これ以上の被害が広がらないようしっかりと止めないとです」
 カムイグラ向けの和装を着込んだ『小さな決意』マギー・クレスト(p3p008373)は、馬から降りて上着の前を解いた。
 腰にちらりと見えるホルスター。赤と青のハンドガングリップが、すぐに上着の中に隠れた。
「百足……百足か……鍋の具にするには些か大きいな」
「食べるの?」
 同じく馬を下りる『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)と『祝福を授けし者』金枝 繁茂(p3p008917)。
「いや冗談である。あのような気持ちの悪い化生、食う気にもならん」
 頼々は腰にさげた鞘の表面をスッと指で撫でると、顎を上げて目を細めた。
 こちらの接近に気付いてはいるのだろう。がららぼんは永遠と空で8の字を描いては顔だけをこちらに向けている。しかし向こうから近づいてくる様子は無い。
 何か狙いがあるのか、それとも単に腹を満たしているだけか。
(鬼殺しで有名な源が一緒。ここで仲良くなれば、あの鬼殺しが獄人と仲良くなったと獄人の印象は良くなるはず……。ビッグネーム、活用しない手はないね)
 一方で繁茂は頼々のほうが気になるようで、腹の脇で見えないように片手で小さくグッと拳を握った。

「あれをして『美術品』とは、どうやら魔種となっても職人としてのセンスと腕前は微塵も強化されないようだな。可哀想に」
 馬車をとめ、御者席から飛び降りる『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)。
 飛び回るがららぼんを一瞥し、もし『素材』になった女達の意識がまだ残っていたらという想像をしたが……きっとそうはなっていないだろうとすぐに思い直せた。
 ティスルや他の仲間達から聞き及んだ『衆合地獄』の性格は人を苦しめて喜ぶタイプではない。
「奴はおそらく、エゴの達成のためにまわりが全部自分のオモチャに見えているってタイプだ。他人の幸せや事情がどうでもいいかわりに、他人を苦しめたり悲しませることにも興味が無いのさ」
 ああいう奴はどこの世界にもいるよな、と冷めた目をする錬。
(登録知識によれば、美の視覚的表現として作られた品物と記憶しています。
 その基準から、標的は大きく逸脱していると判断します。
 しかしながら、今回その点の判断は不要と思考します……)
 錬と同じような考え方をしたようで、『蒼雷玉』アスル=トゥルエノ(p3p009254)は額の結晶体をきらりと光らせた。光に連動するよう空中にぱちぱちとスパークが走り、肩掛けベルトで背負っていた携行式可変電磁砲『Indradhanus』のコア部分が反応して青白く光り始めた。
 彼と同じく馬車から降りてきた『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)が、ややよれたシャツの襟をただして上着のすそを整える。
「天女とされちゃいるが、なかなかエグい見た目をしているな。
 どう動くか分からない以上、油断大敵だ。気張っていかねえとな」
 眼光鋭く歩き出す彼と並んで、『蛇に睨まれた男』蛇蛇 双弥(p3p008441)もフードを深く被り直して馬車より歩き出した。
「天女……天女ねえ。何処の世界でも天上の人間はまともじゃねえんだな。
 神楽鈴をじゃらじゃらならして我はここにありなんて寂しがり屋か? 涙拭けよ。
 だがまァ、跳ねっ返りな女は嫌いじゃねえよ。人の形してんなら、だけどな!」
 そんな彼らの前。否、はるか頭上。
 広げた翼によって滑空状態にあった『幻耀双撃』ティスル ティル(p3p006151)が翼を丸めてホバリング状態に入り、馬車の上へと着地した。
 まるでそれを待っていたかのようにがららぼんがぐぱっと大きな口を開く。
「相っ変わらず好き勝手に人を弄り回してるのね。悲劇しか作れないのになにが芸術家よ」
 思い出すのは、数日前カムイグラの仮拠点に届いた怪文書。
 神霊の加護を受け白く染まった髪と翼に、毛先から僅かながら黒い色が重なっていく。まるで自分をマークしているであろう『衆合地獄』に呼ばれたかのように。
「まあ、今はアイツより天女をなんとかするのが先ね。がららぼんには、もう誰も殺させないよ」
 地を蹴り翼を羽ばたかせ、大空へと舞い上がっていく。
 交戦距離まで、あと僅か。

●はないちもんめ、どのこもほしい
 あがる砂煙を走る錬。
 袖の内より滑り出た三種の式符を扇状に広げると、上空を泳ぐがららぼんをにらみつけた。
 連なる腕が波打つように神楽鈴を鳴らし始める。そうしてできあがった儀式魔術が呪詛の爆弾となって降り注ぎ、崩れた民家やまぜかえされた畑を更にかきみだしていく。
 錬はそんな中を、凍った樹木の壁を作り出すことで防御。やっとふきとばされた壁ごしに、地面に貼り付けた式符によって召喚された戦車砲の狙いをつけた。
「反撃開始だ。行け、ティスル!」
 轟音と共に発射された砲弾ががららぼんの顔面近くで大爆発を起こし、その煙に紛れる形で飛行中のティスルが急接近をかけた。
 バクンッと口が閉じるがティスルが飲み込まれることはない。寸前で身を丸めてスピンをかけ、顔面を切りつけてからがららぼんの後方へと飛び抜けていく。
 目があったらぎろりと睨むような勢いでがららぼんはターン。ティスルを追尾――しようとするところまでが。
「作戦通り!」
「で、ある!」
 大地を踏みしめ、空想の刃を抜刀する頼々。
 クロスした斬撃が空を裂き、ターンしたばかりのがららぼんへと命中していく。
 むき出しになった脇腹から激しく血が吹き出し、よどみなかった飛行が若干傾いた。
 ここまでの攻撃はがららぼんの脇腹を斬り付けるためのものだったのか?
 否。
 この傾きこそが、真の狙い。
「今です! アスルさん!」
 マギーは二丁拳銃を抜くと右目にかかるようにターレット式魔方陣を回転。がららぼんの飛行を担っている鈴群を見定めると、リボルバー弾倉の許す限り打ちまくった。
 左右六発計十二発。撃ち尽くしたら空薬莢を足下にばらまくように放り捨て、袖の下に仕込んでいたスピードローダーでもって素早く装填。手首を返すアクションで銃へ弾倉を収めると、さらなる射撃を継続した。
「了解。『援護』します」
 一方のアスルもまたIndradhanusをマシンガンモードにして乱射。弾幕を張っていく。
 発射された帯電弾頭ががららぼんのボディに命中しじわじわと肉体の動きを鈍く弱らせていく。
 一通り打ち込んだところでIndradhanusの折りたたみ部を伸ばしてレールガンモードに変形。眼球の奥で3つのマーカーが中央に集まったその瞬間を逃さず、人差し指でトリガーをひいた。
 直撃をさけるべく強引に身体を傾け、神楽鈴を振り乱し呪術障壁を形成するがららぼん。
 しかしシールドをはらせることもまた、作戦の内であった。
「女を誘うのは得意じゃねえ。挨拶代わりにこれでも喰らえ」
 双弥は『クシティ・ガルバ』で架空の弓をひくと、がららぼんの障壁めがけて『爆ぜ結ぶ因陀羅』を放った。
 着弾と同時に広がる炎。炎の中を、繁茂と義弘が大ジャンプによって抜けていった。
 振り払うだけの手数を、がららぼんは残していない。炎に紛れて気付くことにも遅れていた。
 こうして積み上げた布石をすべて使って、二人はがららぼん胴体の上へと着地したのである。
(がららぽん、君には同情も憐れみも感じるけど、その存在は許されない。
 だから殺させてもらいます。次生まれ変わったら幸せになりや)
 繁茂は目を瞑り、振り上げた拳に炎を宿した。
「……」
 義弘もまた拳を握って振り上げ、背に不動明王が浮かぶかのようなオーラを湧き上がらせる。
 爆撃とくらいつきを主としたがららぼんにとって背は死角。それを覆うための障壁は先ほど使い切ったばかりだ。
 つまりは、無防備にさらけ出した弱点を二人は今まさに殴り放題な状態にあった。
「墜ちろ、デカブツ」
 義弘と繁茂による猛烈なパンチラッシュによってがららぼんの背骨がへし折られ、飛行能力を損なったがららぼんは煙をふきながら墜落していく。

●がららぼんは何のため
 民家を破壊しながら畑をえぐるようにして墜落したがららぼん。
 直前まで上に乗っていた繁茂を小脇に抱え、義弘は離れた草の上へと着地した。
 解放された繁茂がぱたぱたと服についた炭をはらって振り返る。
「やったかな?」
「古今東西、それを唱えるとやれないらしいが」
 同じく振り返る義弘。
 すると、畑の上で巨大な影がぼこぼこと動いているのがわかった。
 がららぼんが分解し、三体ほどの怪物になって動き出したのである。
 人間の上半身を数個連結させたような怪物が、無数にはえた腕の力で這いずって逃げ出していく。
「ほんとだ、やってない」
「逃がすか!」
 錬は式符を数枚放り投げ、『式符・樹槍』を発動。できあがった丸太の如き槍ががららぼん分裂体へと突き刺さる。
 そこへ繁茂が飛びかかって掴みかかり、両手から吹き上げた炎でがららぼんの肉体を燃やし始める。
「分裂体はこの手の攻撃が効くみたい!」
「丁度良い」
 義弘は抜け落ちた丸太を掴むと、豪快なスイングによってがららぼんを畑へと打ち返した。

 一方でこちらはマギーたち。
「逃がすわけにはいきません!」
 援護射撃を終えて墜落ポイントへ先回りしていたマギー、双弥、アスルの三人は身体をぶっくりと膨らませて逃げ出そうとするがららぼん分裂体へ包囲射撃を浴びせていた。
 扇状に広がり、民家の壁へと追い詰めてゆっくりと円を縮めていく。
「ったく、女と会うならもう少しこう、マシな出会いがあったんだけどな」
 『カーリー・ディ・カ』の術式によっておこした『ソウルストライク』を連続で打ち込んでいく双弥。
 がららぼんはかろうじて二つだけ残した神楽鈴を振ることで障壁を展開するも、それを打ち抜くのはそう難しい事ではなさそうだった。
 追加で打ち込まれた『爆ぜ結ぶ因陀羅』によってたちまち燃え上がったがららぼん分離体へ、マギーが片手で銃弾を連射。右手側拳銃の弾倉を開き、歯にくわえた特殊弾頭を吹き込むように装填。障壁が壊れた瞬間のがららぼん分離帯へと発射する。
 精神に直接影響する弾によって冷静さを欠いたのか、マギーめがけて突撃をはじめるがららぼん。
「アスルさん、任せます」
「――」
 アスルは額と胸の結晶と両手の甲に装備した結晶をそれぞれ反応させ十字のスパークを越すと、Indradhanusの銃身に直接エネルギーを纏わせソードモードへ変化。突撃してくるがららぼんの横を駆け抜けながら、強引にボディを切り裂いていった。

「どうやら、仲間達がうまくやったようであるな」
 ティスルの伸ばした両手にぶら下がる形で、がららぼん分離体の顛末を観察していた頼々。
 空中ブランコの要領で勢いをつけると、小さな腕を生やして逃れようとしていた顔面部分のがららぼん分離体の前へと着地した。
 びくりと足をとめるがららぼん。
 挟み込むように、後方へとティスルが着地する。
 三者それぞれが動き出さぬまま、それぞれの間をぬるい風が抜けていった。
「鬼とは……」
 だらんと両腕をさげたまま、『刀』に手をかけることなく、がららぼんにすら視線をやらず、頼々はうつむき気味に口を開いた。
「往々にして人を食い、時には人を飼うことすらあった。人類が豚を飼って食うように」
 視線が動く。
「『天女』とやらは、鬼か? 否、人を組み合わせた『美術品』である。
 見る者は顔をしかめ定義を疑うが、技術品とは本来、美観にもとずいて作られるもの。壺や彫刻や絵画のそれと同じく、な」
 視線をやった先は、翼を畳んだティスルだった。
 がららぼんの呪力に接近しすぎたせいか、翼が半分まで黒く染まっている。
「奴の美観なんて理解できない。けど、意図があくまで『それ』だったなら、がららぼんの動きは不自然だったのよ。
 だって……美術品が『人を喰らう』必要がないもの」
 そろり、と動き出そうとするがららぼん。
 それを察知して、ティスルと頼々はほぼ同時に構えた。
 全力で走り逃げだそうとするがららぼんだが、しかし、頼々たちが駆け出すほうが圧倒的に早かった。
 空想の刃と雷炎の刃が交差し、がららぼんの大きく口を開いた顔面が切断される。
「ましてや『丸呑み』にするなんて……理由は一つしかない」
 切り裂かれ崩れていくがららぼんの内側から、粘液に包まれた女性がどろりと転がり出た。
 それだけではない。仲間達が倒した分離体からは何人もの人間が生きたまま発見されたのである。
「天女の『パーツ調達係』……であるか」
「たぶん、ね」
 ティスルは胸に手を当て、自分たちを頼って泣いた少年のことを思い出す。
「……よかった。悲劇にだって、取り返しはつくのね」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――天女『がららぼん』の撃破に成功しました
 ――シークレットフラグ:がららぼん分裂体すべての撃破に成功しました

 ――村の住人の救出に成功しました。この後依頼人の少年と家族は再会を果たしました。

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