PandoraPartyProject

シナリオ詳細

砂漠の夜に咲く弾華。或いは、銃声轟くパーティナイト…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●弾痕と硝煙
 ラサ近郊。
 白い月光が降り注ぐ、ひどく冷える夜だった。
 砂漠の中央にあるオンボロ小屋。
 今にも崩れそうなその家屋からは、暖かな火の明かりが漏れ出していた。
 『bar・badmoon』
 それが、その店の名前である。 

 薄暗い店内。
 まばらな客と、香る酒精。
 グラスに並々と注がれた酒はラム。
 それを喉に流し込みコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)は、ふぅと熱い吐息を零す。
「よぉ、良い飲みっぷりだな嬢ちゃん」
 そう声をかけたのは、カウボーイハットを被った老爺……この店の店主を務める男性である。
 男性。
 名を“マスター・M”。本当の名はとっくの昔に捨てたのだと彼はうそぶく。
「いい夜にいい酒、いい男が目の前にいるとなればペースもアップするというものなのだわ」
 なんて、静かな声でコルネリアは返した。
 空のグラスに追加の酒を注ぎつつ、マスター・Mはくっくと笑う。
「シスター服なんぞ纏って、どうした? 何かの仮装か?」
「……あら?」
「染み付いた硝煙の臭いは消せねぇのさ。俺ぁ、その道数十年のベテランよ」
 と、そう言って彼は自身の腰を叩いて見せる。
 そこに下げられているのは大口径の拳銃だった。
 およそ実用性とはかけ離れたバケモノ拳銃であるが、彼とて伊達や酔狂でそんなものをぶら下げているわけではない。
 マスター・Mは、それを十全に扱えるのだろう。
 年老いた老爺の手はしかし、無骨で、そして大きかった。
「そうだと思ったのだわ。このお店、あちこち弾痕だらけだもの」
「まぁ、なげぇことここにあるからな。荒くれどもが酔っ払って銃撃戦なんぞはじめやがんのさ。全員俺が叩きのめしてやったがな」
「こんな砂漠の真ん中で客も少ない。おまけに危険……どうして、ずっとこの場所で?」
 そう言ってコルネリアは、マスター・Mにも酒を薦める。
 マスター・Mはラム酒のボトルに口をつけ、中身を一気に飲み干した。
「酒の美味い夜だ。そんな日は口の滑りも良くならぁな……俺ぁ、ある男と約束したのよ。50年前、この店を開けて初めに来た客だ」
 どこか遠い目をして、老爺は語る。
 遠い過去の記憶。
 今でも彼の脳裏には、しっかりと刻み込まれているその約束の日。
「金はねぇが、酒をくれっつってな。最初の客は大事にしなきゃならねぇ。俺ぁ、その男に一杯のラム酒を奢ってやった。そいつは、いつかまた来るから、金はそん時に払うっつってな、俺にこいつを預けていった」
 コツン、と老爺は自身の胸を叩く。
 そこには、チェーンで吊るされた宝石が1つ。
 大した価値があるものではないのだろうが、宝石の裏には掠れた文字が刻まれている。
 それは女の名前だろうか。
「待ってるぜ、って俺ぁ応えた。そいつは今までここに戻って来やしねぇが、男と男の約束だ。だから、待ってんのさ」
 その男が再び『bar・badmoon』を訪れる日を。
 いつまでも、ずっと。
「だが、ちと面倒なこともある。数年前に俺がぶちのめしてやった荒くれどもが、最近釈放されたって噂を耳にしたんだが」
「穏やかな話じゃないわね」
「おうさ。そいつらぁ、きっとここに来る。ああいう手合いは、一度や二度痛い目を見たぐらいじゃ懲りやしねぇのよ」
「マスター1人じゃ、手に余るかしらぁ?」
「どうだろうな。こう見えて腕にゃ自信がある。とはいえ、おそらくは10名ほど……ちと、派手な祭りになるだろうな。酒ぇ飲んでねぇとやってらんねぇクズどもよ」
「派手な祭りなのだわね……そいつぁ上等。酔っ払いどものあしらい方なら一家言あるぜ……」
 と、そこで言葉を止めたコルネリアは、腰の銃へと手を伸ばした。
「……アタシも手ぇ貸してやろうかね? 盛大な花火を上げてやろうぜ」
「お客を巻き込むのぁどうかと思うが……花火ってのは嫌いじゃねぇよ。撃って、撃たれて、さようなら、ってな」
「はっ、いいじゃないか。ぜひとも参加させてくれよ。2人でそいつら、歓迎してやろうぜ? なぁ、爺さん」
「おうともよ。たらふく鉛弾(コイツ)をごちそうしてやらねぇとな!」
 グラスを打ち鳴らし祝杯をあげる。

●トリガー・ハッピー・ナイト
 さて、そのようにしてマスター・Mとコルネリアが手を組む横でエルス・ティーネ (p3p007325)は静かにワインを飲んでいた。
「……ちと、派手な祭りになるだろうな」
(お祭り? ここでお祭りが開かれるのかしら?)
 漏れ聞こえてくる会話に耳を傾けながら、彼女は静かに思案した。
 先ほど老爺とシスターは「手に余る」「面倒なこともある」などと口にしていたのではなかっただろうか。
 ともすると、祭りとやらを運営するための人手が不足しているのかもしれない。
「アタシも手ぇ貸してやろうかね? 盛大な花火を上げてやろうぜ」
(あら、あの人はお爺さんに協力するつもりなのね? それに、花火……砂漠で見る花火は、きっととても綺麗よね)
 楽しみだわ、とエルスは思わず笑みを零した。
「2人でそいつら、歓迎してやろうぜ? なぁ、爺さん」
「たらふくコイツを、をごちそうしてやらねぇとな!」
 カツン、とグラスを打ち鳴らす音が薄暗い店内に響き渡った。
 コイツ、とはグラスに注がれたラム酒のことか。
 なるほど確かに、乾杯の拍子に香った酒精は、上等なものだ。
(2人とも、砂漠の民のためにあれほどのやる気を出して……なんだか嬉しくなってしまうわ)
 楽し気に笑うマスター・Mとコルネリア。
 この笑顔はきっと良いものだ。
 彼らに歓迎されるという誰かも、きっととても良い人なのだろう。
 だが、しかし……。
(この辺りは特に荒くれ者の多い地域と聞くわ。当日、何も問題が起きなければ良いのだけれど……)
 老爺もシスターも只者ではないことは理解できる。
 けれど、多勢に無勢ということもある。
 当日、荒くれ者たちに店が襲われないとも限らない。
 で、あるのならば……。
「ねぇ、2人とも! よければ私にもお手伝いさせてくれないかしら! いいえ、3人ではともすると人手不足かもしれないわ。もう数名、人を集めましょう。お祭りなら、盛大にやらないと!!」
 思案の結果、エルスは行動を起こすことに決めたのだった。

GMコメント

こちらのシナリオはリクエストシナリオとなります。

●ミッション
『bar・badmoon』を襲う荒くれ者たちの撃退。

●ターゲット
・荒くれ者たち×10
つい最近出所して来たばかりの荒くれ者たち。
拳銃や機関銃、ライフルなどを所持している。
攻撃はすべて中~遠距離。
実弾による物理攻撃。
すべての弾丸に【ショック】が、
そして、弾丸の大きさによって【火炎】【業炎】という状態異常が付与される。


・マスターM
『bar・badmoon』の店主を務める老爺。
カウボーイスタイルに身を包んでおり、得物として大口径の拳銃を有する。
70を超える高齢だが、背筋はまっすぐ伸びている。
「生まれた時からミルク一筋」とうそぶきながら、ラム酒を煽る酒豪である。


●フィールド
砂漠の真ん中にポツンとある小さなbar。
今にも崩れそうなほどにボロボロ。
店内には8つの丸テーブル。
カウンターには10名ほどが座れるだろうか。
今まで1度も満席になったことはないが、キャパとしては40~50名ほど。
店の裏手には、荒くれ者たちから奪った拳銃やライフル、弾丸、爆弾などが木箱に入れられ積まれている。
爆弾の中には、何の間違いか花火も混じっているようだ。


●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 

  • 砂漠の夜に咲く弾華。或いは、銃声轟くパーティナイト…。完了
  • GM名病み月
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月06日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
剣砕きの
エルス・ティーネ(p3p007325)
竜首狩り
※参加確定済み※
わんこ(p3p008288)
シャウト&クラッシュ
蓮杖 綾姫(p3p008658)
断ち斬りの
リズ・リィリー(p3p009216)
アンラッキーハッピーガール
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
テント設営師
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
月夜に吠える

リプレイ

●砂漠の酒場
 ラサ近郊。
 砂漠の中央にあるオンボロ小屋の片隅で、1匹の獣が目を覚ます。
 室内に漂う酒の香りに顔をしかめて彼は「あぁ」と言葉を零した。
「よぉ、兄ちゃん、お目覚めか? おめぇら、うちの店ぇ守るために集まってくれたんだってな。礼代わりと言っちゃなんだが、ラムの1杯もいっとくか?」
 目を覚ました黒い男……ルナ・ファ・ディール(p3p009526)に声をかけたのは、カウボーイスタイルに身を包んだ老人だった。煙草のヤニに黄ばんだを見せ、どこか悪童染みた笑みを浮かべて見せる。
 老人の名はマスター・M。砂漠の真ん中にある酒場『badmoon』の店主あった。
「あぁ、いや。今はいいや。そいつは、爺さんの待ち人にでも献杯しといてくれや」
「はん。あの野郎、いつまでもツケ払いに来やがらねぇ。金のねぇ奴に飲ませる酒はねぇよ」
 次に来たらきっちり代金取立ててやらぁ。
 ラム酒のボトルに口をつけ、マスター・Mはそう言った。
「……いいんじゃねぇか? その無銭飲食のクソ野郎にとっちゃ、この店はどっかで野垂れ死ぬ間際になって『あぁ、やべぇ、ツケを払いに行かねぇと』って思える場所ってことだろ」
 こんなクソみてねぇなボロい店でも。
 そんな言葉を吐き捨てて、ルナは店の外へと向かう。

 時刻は夕方。
 店の外では、積み上げた木箱の上に座った『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)が歌を口ずさんでいる。
「おう、防衛の準備は整ってるみてぇだな」
「モチロン。盛大なパーティになりそうだ……主賓の来訪が待ち遠しいデスネ」
 キャヒヒヒ、と引き攣った笑い声をあげわんこは体を折り曲げる。
 彼女のいう主賓とは、badmoonに恨みを抱くゴロツキ共だ。つい最近出所して来たというそいつらを追い返すため、ルナもわんこも今日、この場所を訪れた。
「あの辺りの棒の下には爆弾が埋まっているから、出入りは正面からお願いね」
 わんことルナの元に歩み寄り、物騒なことを口にしたのは『新たな可能性』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)である。彼女の傍らにはロバに似たロボットが控えている。そのロバの名は“メカ子ロリババア”。マッドハッターが或る謎生物を模して作ったロバ・ロボットであった。
 彼女……フォルトゥナリアの指揮のもと、既に店は木材や木箱で補強済み。後はゴロツキ共の襲撃を待つばかり、といったところだが。
「大人しくお酒を嗜みお帰りになるのであればそれでよし。そうでなければ……」
 静々と。
 足音も立てず、店の裏手より現れたのは『放浪の剣士?』蓮杖 綾姫(p3p008658)であった。黒髪に付着した砂塵を払い、ふぅと重い溜め息を一つ。
 ゴロツキ達の居場所を探し、つい先ほどまで索敵に出かけていたようだ。
「それらしい人影は見当たりませんでしたね。ですが、人が容易に通行できそうなルートは少ないですし、おそらく街側から攻めてくるかと」
 と、索敵の結果を告げる綾姫。その隣には、『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)の姿もある。
「お祭りって言うから早とちりしちゃったけれどそういう事ね! ラサの事だもの、改めてうんと力になるわ!」
 彼女の手には食材が満載された籠。
 フォルトゥナリアに請われ、補強用の素材を取りに行ったついで、打ち上げ用の食料も回収してきたらしい。

 西の空に日が沈む。
 暗い砂漠をまっすぐに進む10の影。衣装の年齢もばらついているが、その身に纏う粗野な雰囲気は隠せない。
 そして誰もが左の脇が膨らんでいる。
 彼らゴロツキの目指す先は、砂漠の真ん中でぼんやりと光を放つ粗末な酒場だ。数年前、彼らを撃ち倒し、憲兵へと引き渡した憎き老人の営む店だ。
 彼らが刑に服していたのは、彼ら自身の行いのせいだ。マスター・Mがやらずとも、いずれ彼らは捕まっていた。
 とはいえしかし、こういった手合いは何よりメンツを重んじる。やられたらやり返す。自身の行いなど棚に上げ、他者に暴力を巻き散らす。
 そのうえ、彼らは卑怯で下劣。この時間帯を選んで店を訪れたのは、ノックも無しに扉を開けて、あいさつ代わりに鉛の弾を撃ち込むためだ。
 ただ1つ、彼らに誤算があったとすれば……。
「お? こんな場所にシスターがいるぜ?」
「道にでも迷ったか? まぁ、ちょうどいいさ。もう少し待っておけよ。もうじき爺の死体が1つあがるぜ」
 馴れ馴れしくもシスター……『弾華』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)の肩に手を置き、ゴロツキは笑う。
 煙草と酒、火薬の臭いがコルネリアの鼻腔を擽った。
「死した魂に冥福を。祈りは幾らだって捧げるのだわ。でも……」
 カチャリ、と。
 金属の擦れる僅かな音。
 ゴロツキの顎に押し付けられたのは銃口だった。
「増える死体は1つじゃなくて10だろう?」
 銃声。
 コルネリアが爪先でトリガーを押し込むと同時、ゴロツキの顎に目掛けて無数の弾丸が撃ち込まれた。
 ゴロツキは咄嗟に後ろへ転倒し、鉛の弾を回避する。
 顎は砕けたが、幸か不幸か命は無事だ。
 声にならない悲鳴をあげてのたうつゴロツキ。仲間たちがコルネリアへ向け銃を構える。
「こいつ、いきなり撃ちやがった!!」
「おい、ありったけ叩き込め。ガトリングを撃たせるな!!」
 流石というべきか、荒事には慣れているようだ。ゴロツキたちの対処は早い。倒れた仲間を戦力外と斬り捨てて、一斉に銃を引き抜いた。
 しかし、彼らのうち数名はトリガーを引くより先に、銃をぽとりと取り落とす。
 不注意によるものか。
 否、そうではない。
「あ……スライム?」
 気づけばその手に纏わりついている緑色の粘液。
 スライムである。
 それは『アンラッキーハッピーガール』リズ・リィリー(p3p009216)により強制的に引き起こされた、必然的な不運。
 困惑し「?」を浮かべるゴロツキたち。
 しかし、彼らに停滞は許されない。
 鳴り響く銃声。
 そして、頭上で弾ける烈火。
 炸裂し、撒き散らされた鉛の弾がゴロツキたちに降り注ぐ。

「体と銃口をうまく隠して撃つのが良い射手ってものだろう?」
 建物の裏手、木箱の影に身を隠し『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)はほくそ笑む。先ほど降り注いだ弾雨は彼女の撃ったものである。
「やるじゃねぇの、姉ちゃん」
 窓から身を乗り出したマスター・Mは、親指突き立てニカリと笑った。

●不吉な月の浮かぶ夜
 弾雨に追われ、ゴロツキたちは四方に散った。
 そのうち1人が、地面に埋められた爆弾を踏み宙を舞う。業火の柱が暗い夜空を紅蓮に染めた。
「襲撃されるって情報があるんだから、準備してないわけないよね」
 宝石剣で空を斬り、フォルトゥナリアはそう呟いた。
 立ち昇る火炎に巻き付くように、闇より黒い霧が渦巻く。それに飲み込まれたゴロツキは、喉を抑えて地面に倒れた。
 半狂乱の状態にあるのか、その手に握った拳銃を滅茶苦茶に乱射する様はなんと哀れなことだろう。
 けれど、そのうち1発が偶然なのか、フォルトゥナリアの肩を撃ち抜く。短い悲鳴。慌てて木箱の影に身を潜ませるが、今の一撃で彼女の居場所は敵に発見されただろう。
「正面以外は駄目だ! 爆弾が仕掛けられてる!」
「女がいたぞ。何者か知らねぇが、自分の近くに罠は掛けねぇはずだ!」
 ゴロツキのうち、誰かが叫ぶ。
 反撃の目があると見るや、ゴロツキたちは酒場へ向けて進軍を再開。散開している状態であれば各個撃破も楽だったのだが、1点突破を試みられるとなれば少々話は変わって来る。
 事実、集中攻撃を受けたコルネリアは、修道服を朱に濡らし後退していた。
「やば。こっち来る!」
 バリケードがあるとはいえ、そう長く敵を抑えられるものではない。木箱の影に身を隠し、フォルトゥナリアも後ろへ下がった。
 ついでとばかりに木箱を蹴倒し、進行ルートを封鎖するのも忘れない。
 
 ライフルを手にラダは駆け出す。
「ここからでは射線が通らないか」
 敵の進行速度が思った以上に速かった。下半身を馬に戻して、蹄で地面を蹴りつけ走る。
 その手には小さな爆弾が1つ。導火線には既に火が着いていた。
「敵が怯んだらその隙に走れ!」
 地面に埋まった爆弾を避け、ラダは疾駆。ゴロツキたちの背後に回り込んだ彼女は、敵集団の前方に向け爆弾を放った。
 直後、周囲に火炎と爆風が吹き荒れる。ゴロツキたちの動きが止まった、その一瞬の隙を突き、イレギュラーズは速やかに陣形を整える。
「っと……戦闘力は奪っておかねば」
 コルネリアに撃たれた男と、爆弾を踏んだ男へ向けてラダは続けざまに発砲。銃を握った彼らの腕を正確に撃ち抜き、継戦能力を奪い取る。
「ハッ! 流石は“傭兵要らずのジグリ”だな!」
「OK、OK! お祭りならわんこも混ぜてもらいマスゼ!」
「彼らの素っ首、ここで叩き落して差し上げましょう」
 ルナ、わんこ、綾姫の3人が火炎の渦へと飛び込んだ。
 先頭を駆けるルナは、その大きな身体を活かしわんこ、綾姫の盾となる。腕を、脇を、鉛の弾が撃ち抜くが、彼の疾走は止まらない。
「おいおい、想像以上に鈍間なカスだな? ア゛ァ?」
「なっ……⁉」
 黒い肌を血に濡らし、けれどその口元には獣の笑み。
 疾走の勢いを乗せたルナの殴打が、ゴロツキの側頭部を打ち抜いた。短い悲鳴を上げ、よろめくゴロツキ。にぃ、と笑みを一層深くして、ルナは追撃を叩き込む。
 手にした拳銃の底で、その顔面を強かに打ちのめしたのだ。意識を失ったゴロツキが倒れた。それと同時、左右から火薬の爆ぜる音。
 回避行動に移っていたゴロツキたちの射撃であった。
 ルナに迫る2発の弾丸。
 2発の弾丸を脚と胴に撃ち込まれ、ルナはその場に膝を突く。
 傷は痛む。追撃とばかりにさらに数発。狙いもつけずに撃ち込まれた弾丸を浴び、ルナは血を吐き……けれど笑った。
 問題はない。予定通りだ。この程度で倒れるほどに獅子がひ弱であるものか。
 弾丸のすべてを自分に撃ち込んで、その後は一体どうするつもりだ?

「キャヒヒヒ! 初見じゃ見切りは困難だぜ、近距離ガンファイトと行こうや!!」

 ルナの影から跳び出したわんこは、一足飛びに敵の眼前へと接近。
 その眉間に向け、人差し指を差し向ける。
「あん?」
 何を……と、続く言葉は途中で途切れた。
 撃ち出されたエネルギー弾が、その眉間を撃ち抜いたのだ。
「がっ⁉」
 額を抉られ、仰け反る男の腹部へ向けてわんこは拳を叩き込む。 
 一撃、二撃……くの字に身体を折り曲げて、男は血を吐き意識を失う。
 
「倒れた奴は放っておけ。それより、もう1人女がいたはずだ!」
「ここまで来て引き下がれねぇぞ。せめて爺は道づれだ!」
 ルナとわんこに牽制射撃を行いながら、ゴロツキ数名が酒場へ迫った。不意打ちを避けるべく、視線を左右へ巡らせるが……そこに綾姫の姿はない。
「あん?」
「人様の店でそのような狼藉。見過ごせませんね。我が魔剣によって砂漠の塵芥の一粒となりなさい」
 囁くようなその声は、ゴロツキたちの頭上から聞こえた。
 木箱やバリケードを足場に、酒場の屋根へと跳び乗っていた綾姫。
 彼女は剣を構え、目を閉じる。
 剣に宿る膨大な魔力に、ゴロツキたちは目を見開いた。
「やばっ……撃ち落とせ!」
「お、おうよ!」
 屋根の上の綾姫に向け、都合3つの銃口が向いた。
 だが、その瞬間、彼らは再度驚愕に目を見開いて動きを止めた。
 剣を構えた綾姫の隣に、燐光を纏いくるくると回る女がいたのだ。
 不吉な月の色にも似た赤い光。
 重力に逆らい、揺れ、舞い上がる赤い髪。
「らぶりー ちぇんじー らずべりー すちーるはーと あんぶれいくっ」
 果たしてそれは何の呪文か。
「不運に負けずにキラメキシャイニー!」
「……あの、それは本当に必要ですか?」
 光を纏い、ポーズを決めるリズへ向け綾姫はそう問いかけた。
「魔法少女!! ラブリー☆ラズ……っとわぁ!!」
 銃声。
 変身中に攻撃するなど、悪党としては二流も二流。だがしかし、戦術的な観点からいえば、それは非常に正しい行いであった。
「ラ、ラブリー☆ラズベリー! ピカッと参上! ヨロシクねっ♪ っらぁ!! 変身中に攻撃して来た奴ァはキサマかぁー!」
「合わせますね」
 リズ……否、ラブリー☆ラズベリーの叫びに合わせ降臨するスライム、顕現する触手の群れ。
「少女じゃない!!」
 そんなゴロツキの叫びはしかし、綾姫の放った魔力の渦に飲みこまれ、誰の耳にも届かない。

 たった1人。
 倒れた仲間たちを見捨て、這う這うの体で彼は酒場の扉を開いた。
 銃を手にしたその腕は、怒りと恐怖に震えている。
 血走った瞳。
 食いしばった奥歯は砕け、噛み締めた唇からは血の雫が伝う。
「爺……久しぶりだなぁ!」
 銃を構え、男は叫ぶ。
 カウンターでグラスを磨くマスター・Mは、何も答えず冷たい視線をちらりとくれるだけだった。その態度が、男の怒りに火を着ける。
「てめっ……」
「全く……本当に来るなんて、ね? ただの荒くれ者は思考も行動も単純だわ」
 男が銃の引き金を引いた、その瞬間。
 その腕に鎌が突き刺さる。
「さぁ、お遊びもここまでよ。そろそろ痛い目を見てもらいましょうか」
 入口の影、暗がりに佇む少女が1人。
 青い瞳に白い肌。薄く開かれた唇の隙間からは、鋭い犬歯が覗いている。
 彼女……エルスは打ち上げの準備をしていたせいで、戦線に加わり損ねたのである。
フォルトゥナリアの組んだバリケードのおかげで、前線の人数が十分に足りていたというのもあるが……。
 しかし、それが功を奏した。
 こうして仲間たちの防衛ラインを突破して来たゴロツキを、阻むことが出来たのだから。
「さぁて荒くれよぉ、まだやるか?」
 ゴツ、と重たい音がして男の額にガトリングの銃口が突きつけられた。
 声の主は、血濡れたシスター、コルネリアである。
「クソみてぇな安モンでも銃は銃、それを握ったってーこたぁ覚悟出来てねぇなんて言わせはしねぇぞ」
 コルネリアが引き金を引けば、男は一瞬で蜂の巣になる。
 仮にコルネリアを撃破しても、エルスの鎌は逃れられまい。
 先には進めず、後退も出来ず……僅かな逡巡の後、彼は復讐よりも命を選んだ。
 銃を投げ捨て、視線を伏せる。
 果たして、それはきっと一等賢い選択だった。ゴロツキが降伏したことを確認し、エルスとコルネリアは顔を見合わせ笑い合う。
「コルネリアさん、いい戦い方だったわね。これからまたローレットで会った時はよろしくね!」

●打ち上げは盛大に
 グラスの打ち鳴らされる音。
 乾杯の唱和が響く。
「っはー! ひと仕事終えた後のお酒は格別ねぇっ!」
 グラスの中身を一息に煽り、エルスは熱い吐息を零す。
「おいおい嬢ちゃん。未成年じゃねぇのか? まぁ、こんな店に来るのは金なしの傭兵かゴロツキ程度のもんだから、しょっぴかれるこたぁねぇけどよ」
 空になったグラスに酒を注ぎながら、マスター・Mは呆れたような苦笑い。
「あらなぁに? 私はこう見えても成人相当なんだからね?」
「このような酒場らしい酒場は初めてなので、聊か緊張いたしますね……」
 両手でグラスを掴んだ綾姫は、供された炭酸水をおそるおそる口へと運ぶ。
 あまり飲み慣れない味だったのか、微妙に眉をしかめていたが。
 その背後では、床に零れた酒を踏みつけ、リズが盛大にこけていた。生来の不幸体質ゆえだろうか。
 頭から壁に突っ込み、小さな穴を開けていた。
「あぁあ……悪いな爺さん。安酒の駄賃代わりに、補修は手伝うぜ」
「バリケードも撤去しないとだしね。単純作業はロバも含めた皆で手分けしてやろう」
 ちなみにロバは、店の裏で休憩中だ。
 ルナとフォルトゥナリアの提案に、マスター・Mは首を振って否を示した。
「元々ボロだ。気にするな」
「なぁ大将、本当に撃退で良かったのか? あいつらまた来るかもしれないぞ」
 ラダの不安ももっともだ。
 重傷者はいたが、死者はいない。ゴロツキたちは、動ける仲間に担がれて街へと逃げて行ったのだから。
「客として来るなら良し。そうでないなら、なんとかするさ」
「はっ! なら、それでいいじゃない。いい夜にいい酒、いい男、飲まなきゃ損なのだわ」
 手尺で酒を注ぎながら、コルネリアは呵々と笑った。
「姐御、酒ならわんこが注ぎマスゼ?」
 なんて、コルネリアの手からわんこがボトルを奪い取る。
 こうして騒がしい夜は更けていく。

 冷たい風の吹く夜だ。
 1人の男が砂漠を歩む。
 日に焼けた肌。皺と傷だらけの顔。
 背筋のまっすぐとした老爺は、砂漠の真ん中に灯る明かりを一瞥し、くっくと肩を震わせた。
「なんだ。まだやってんのかよ」
 記憶の中に残るそれより、随分とボロくなったものだ。
 懐かしいラム酒の味を想起する。
 空を見上げてみればそこには白い月。
 ジンライムのような、白い月。
 月の光に背を向けて、男は店の扉にそっと手をかけた。

成否

成功

MVP

フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
テント設営師

状態異常

ルナ・ファ・ディール(p3p009526) [重傷]
月夜に吠える

あとがき

お疲れさまでした。
この度はリクエストありがとうございます。
無事、ゴロツキたちは撤退。
依頼は成功です。

とある酒場での約束と銃弾の物語、お楽しみいただけましたでしょうか。
また縁があれば別の依頼でお会いしましょう。

追伸
襲撃ルートを狭くするのは良いですね。

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