シナリオ詳細
流れ着いた別新興宗教の神
オープニング
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天義……聖教国ネメシスの首都フォン・ルーベルグより離れた海沿いにある独立国家『アドラステイア』。
高い円形の塀で覆われたその都市は外部との交流を断ち、冠位魔種ベアトリーチェ・ラ・レーテによる『大いなる災い』を経て、信ずる神を違えた者達の拠り所となっている。
内部で暮らす者の多くは戦争孤児や難民となった子供達。
彼らは一部大人と共に、新たな神『ファルマコン』を掲げ、『キシェフ』を得て暮らしている。
アドラステイア内には、マザー・ファザーなる存在が存在している。彼ら一部の大人がこの地に流れ着いた子供達を保護し、神の名の下に導いている。
中層にある集会場の一つ。
そこでは、定期的に、聖銃士達の朝礼が行われていて。
「「おはようございます、マザー・マリアンヌ」」
聖銃士と呼ばれるアドラステアの子供達が立ち並ぶ中、マザー……血がこびりついた修道服を纏った女性が集まった子供達へと告げる。
「……皆さん、今日は紹介したい人がいます」
マザーが腕を上げると、空から降りてくる翼を持ちし人影。
彼は丁寧にお辞儀してみせて。
「我はフェルマーク……神……ファルマコンの言葉を皆へと伝えるべく遣わされた」
「「おお……」」
天義で飛行種を見かけることは少ない。加えて、頭上から現れる演出が神秘性を増して感じられて。
「彼はファルマコンの神子として、皆さんに言葉を代弁してくれます」
「…………汝らは今のまま、神に尽くすべし。これが神の言葉だ」
「「はい!!」」
高らかと告げるフェルマークは恍惚とした表情で子供達を見下ろす。
そして、傍らのマザーはやや冷めた表情で、その場を注視していたのだった。
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幻想、ローレット。
長らく、フェルマークなる新興宗教の神の行方を捜していたスティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)。
彼女はその手掛かりをつかんだと、集まったイレギュラーズ達へと伝えた。
「フェルマークの説明から必要な人も多いかな?」
天義は大罪ベアトリーチェの討伐以降、新しい体制で歩みを進めている状況だ。
ただ、まだ万全の体制となるには程遠いこと、神への信仰を疑問視した人々が多く存在したこともあり、新興宗教なども生まれていた。
その1つにFEL教団なる組織があり、元飛行種である魔種フェルマークを神に据えて信仰を得ようという者達がいた。
イレギュラーズらはその組織を壊滅させることに成功したが、フェルマークを逃してしまっており、スティアはその行方を捜していたのだ。
「どうやら、今このフェルマークはアドラステイア内部にいるようだね」
高い壁に覆われたアドラステイアの全容は未だつかめていないが、この地に逃れた子供達が一部の大人によってファルマコンなる創造された神の名の下に統制されているらしい。
アドラステイアに流れ着いたフェルマークは、マザー・マリアンヌに拾われることとなる。
「先輩……」
その話に、ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)が小さく顔を顰める。
マザー・マリアンヌはかつて聖女と呼ばれた元異端審問官だとミリヤムは言う。
しかし、先のベアトリーチェによる『大いなる災い』。
神を信じていようともあのような災厄が起こってしまい、しかも政府中枢にまで悪が巣食っていた。
あの1件後、マザー・マリアンヌは信仰を捨て、ファルマコン……新たな神に救いを求めた。敢えて、血に濡れた修道服を纏い続け、己の手足に枷までつけて。
「今は、アドラステイア内でマザーとして子供達を導いているって聞いたよ」
今までも他のイレギュラーズ達が潜入を行い、都市内の情報を集めているが、マザー・マリアンヌは魔種と成り果てており、倒さねばならぬ相手では間違いない。
「でも、今はフェルマークを優先させたいかなって思ってるよ」
マザーはこの街において非常に強い力を持つ為、叩く為には状況を整える必要がありそうだ。
だが、現状この街に流れ着いて間もないフェルマークなら……。
力を集めていると思われるマザー・マリアンヌの手札はできるだけ削いでおきたいところだ。
「今回は私達だけで行くよ」
スティアはすでに、フェルマークが現れる集会場をチェックしている。後はタイミングを見てアドラステイアの騎士と合わせて、討伐に当たるのみなのだが……、状況はそこまで甘くないだろう。
「聖銃士達も先輩の指示で襲ってくるはずッスね。今までのパターンから聖獣も従えてるのは間違いないッス」
ミリヤムもこの状況には慎重になっている。
虎穴に入らずんば虎子を得ずということわざの通り、敵を討伐する為のリスクも大きい。下手をすれば、相手を避けたい聖銃士に囲まれる危険すらあるのだ。
「ともあれ、行ってみよう」
改めて、一行は依頼として張り出してメンバーを集め、フェルマーク討伐の為、アドラステイアへと赴くのである。
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アドラステイア内部へと潜り込み、イレギュラーズ達は主たる住民である子供達との接触を避けて目的地である集会場へと急ぐ。
「……で、あるからして、更なる功績が挙げられるよう励まれよと、神は仰せだ」
翼を羽ばたかせたまま、フェルマークはこの場に集まる子供達へと神の信託を告げていた。
その様子を、奥の角で見守っていたマザー・マリアンヌは、集会場の周囲にも警戒を強めており、内部の様子を窺うイレギュラーズにも気づいて。
「……外にいる方々も、ご一緒に神の信託を受けてみてはいかがですか?」
このまま隠れていても、狙い撃ちされる危険もあると判断したイレギュラーズ達は内部へと突入する。
その集会場はさほど大きくない。一辺30m程度の内部に15人程度の子供、奥にマザー、そして頭上にフェルマークがいる。そして……。
「こんなこともあろうかと、読んでおいて正解でしたね」
マザーはさらに頭上から呼び寄せたのは、獅子の頭を持つ巨大な鷲。屋根の上へと密かに聖獣を潜ませていたのだろう。
「しつこい連中だ、ローレット……!」
忌々しげに呟くフェルマークが地面に降り立てば、聖銃士達が前に出る。
「皆、アタシに続いて!」
聖銃士の中のリーダー、ミロイテがこの場の子供達を統率し、イレギュラーズ達へと刃を向ける。
様々な思惑が交錯するこの集会場。聖獣を呼び寄せただけでなりぬきを見守るマザー・マリアンヌも気になる所。
イレギュラーズもどれだけのことができるかと思案しながら、フェルマークの打倒を目指すのである。
- 流れ着いた別新興宗教の神完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年02月09日 22時00分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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アドラステイアへと潜入するイレギュラーズは目的の集会所へと向かう。
「アドラステイア……何度か来たけど、やっぱり慣れないね」
普段から天義の為にと戦う『特異運命座標』楊枝 茄子子(p3p008356)だが、肌に合わぬこの異色の空気に加えて別の宗教の神までいると耳にして。
「まるで宗教の入れ子構造みたいになってるや!」
「FEL教とやらとファルマコン、相性が良いのかもしれませんが、アドラステイアに身を寄せるとは、節操のないものですね……」
修道服姿の美女、『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は、神を語る男の行動に呆れを隠さない。
「……よりにもよって、魔種が神子を名乗りますか」
白銀の鎧を纏う『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)は以前、FEL教団と敵対している。
すでに壊滅済みのその団体を牛耳っていた魔種が神子を名乗るなどと、リディアは考えて。
「噂には聞いていましたが、アドラステイア――捨て置けない場所のようですね」
そして、それを招き入れたのは、この都市で暗躍を続けるマザー・マリアンヌと呼ばれる女性。
「……まさか、元異端者を神の代弁者に仕立て上げてこき使うとかちょっとどうかと思うっス!」
チャイナ服を纏うアイドル、『不幸属性アイドル』ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)にとって、マリアンヌは先輩に当たる。
「元異端審問官として矜持はどこ行っちゃったんスか……パイセン」
魔種と成り果てた血染めの修道服を纏うマザーの心中は如何に。
目的の集会場へと到着し、一行はその内部を窺う。
「で、あるからして……」
別新興宗教の神を名乗っていたフェルマークは何事もなく、ファルマコンの神子となりすまし、白銀の鎧を纏った子供達へと信託を告げる。
「聖銃士って言われてるけど、みんなぼくとほとんど変わらないくらいじゃん……」
長い銀髪で片目を隠す『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)と建物内で並ぶ子供……聖銃士達の年齢はほぼ同じくらい。
そんなアドラステイアでいいように使われている子供達を助けたいと、海洋の医学生である『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は本音で感じて。
「この世界はたくさん楽しい事があるのに、罪を得て不幸になる人生なんて送らせたくないから」
しかしながら、そんなイレギュラーズの存在をいち早く、マザーは察していて。
「……外にいる方々も、ご一緒に神の信託を受けてみてはいかがですか?」
奇襲は困難と察したイレギュラーズ。ここは敵地ということもあって動けなくなる前に入り口から姿を現す。
「追い詰めたよ、フェルマーク」
以前の事件から神を名乗る男を追っていた天義の貴族、『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が敵意を向ける。
「アドラステイアで何をするつもりか知らないけど、これ以上、被害者を出さない為にもここで終わりにするんだ!」
「しつこい連中だ、ローレット……!」
地面へと降り立ったフェルマークが忌々しげに呟くと聖銃士達が武器を構えて前に出る。
「しつこくないもん。逃げてるから追いかけられるんだよ!」
リュコスがすぐさま反論するが、一行はフェルマークに攻撃を仕掛けることすらままならない。
「魔種フェルマーク……出来れば子供達と戦わずに討ちたかったけど……そう上手くはいかないね」
立ち塞がるのは聖銃士だけではない。サクラの目には、後方に控える手枷足枷をはめたマザー・マリアンヌと、獅子の頭にワシの身体を持つ聖獣アンズーが翼を羽ばたかせて降下してくるのが映る。
「くっ! これが魔種になるってことっスか! やるせないっス」
ミリヤムは奥のマリアンヌを一瞥してから、立ち並ぶ聖銃士達を見据える。
「戦いづらい、けど倒さないとマリアンヌやフェルマークの方にはいけない……やるしかないかな」
「まず、眼前の無垢な少年少女達ですか――」
リュコスにリディアは覚悟を決め、聖銃士と対峙する。
ミリヤムもまた、フェルマークなる胡散臭い男にこれ以上子供達が悪い影響を受けては困るとタクトを手に取って。
「僕のアイドル力で子供達の目を覚まさせてあげるっスよ!」
しかしながら、可愛いアイドルが拳を振るうわけにはと、ミリヤムは盾役に徹する構えだ。
「ま、やろうか! 攻撃は任せたよ!」
茄子子は仲間の背後につき、ヒーラーとなる。
他メンバーもそれぞれの役割を果たすべく、奮起する。『恋桜』サクラ(p3p005004)もその1人だ。
「スティアちゃん、そっちはお願い!」
「了解! サクラちゃんも頑張ってね!」
2人は短い言葉で意思疎通し、それぞれ抑えるべき敵へと向かっていくのである。
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「「やあああっ!!」」
剣や銃を手に距離を詰めてくる聖銃士達。
「一度だけ言います。そこにいるフェルマーク、及びマザーと呼ばれる女性は魔種と呼ばれる存在です」
武器を交える直前に、リディアが聖銃士達へと呼び掛ける。
「剣を下ろして投降なさい。決して悪いようには致しません!」
しかし、フェルマークがさらに大声で指示を出して。
「神の仰せのままに、侵入者を排除せよ!」
「「はい!」」
リディアの訴えもむなしく、口火を切る戦い。
やむなく身構えるリュコスはしばし、相手の出方を注視する。
「さぁ、かかってきなさい! 天義の聖騎士、サクラ・ロウライトが相手になります!」
厳しい役目と分かっていながらも、必ずやり切ると奮起するサクラは向かいくる子供達に敢えていい印象を抱いてないと思われる天義の聖騎士と名乗り、聖なる光を発して注意を引く。
「「やあああっ!!」」
特にその先頭、隊を率いる赤毛の少女ミロイテを優先して引き付け、サクラは聖刀でその攻撃を防いでいく。
「我が名は、リディア・ターキッシュ・レオンハート! 騎士として、その決意に正々堂々と応じましょう!」
リディアもまた聖銃士達を引き付けつつ、輝剣を握って次なる攻撃に備えていた。
「ここから先に行きたければ、私を倒してからにするんだね!」
一方で、スティアは自らの魔力を旋律に変えて室内へと響かせる。
「いいだろう。相手をしてやる」
ガオオオォォォ……!
全員に気を纏ったフェルマークに、吠えて衝撃波を撃ちだすアンズー。スティアはタンク役となり、それらの抑えに当たる。
そのスティアの後ろから、ココロは集団の中央目がけて召喚した熱砂の精をけしかけ、砂嵐を巻き起こさせる。
ココロは狙い通りに聖銃士達の足並みを崩し、仲間が一度に攻撃を受けるのを避けていた。
それでも、盾となるスティアやサクラへと攻撃は集まる為、茄子子はヒーラーとしてココロと手分けして癒す。
「回復がいるなら、すぐに回復するね!」
仲間へと呼びかける茄子子の前では、ミリヤムがドヤ顔で引き付け役の仲間も含めて盾となる。
「ボクこそ、天義の新鋭中華アイドル、ミリヤム・ドリーミングっスよ! 皆、ボクのファンになってっス」
向かい来る聖銃士や聖獣に対し、ミリヤムは気を引き締めて仲間をカバーする。
聖銃士達はその名が示すように銃を携帯する他、剣も携えている。基本的には戦い慣れしていないのか、仲間同士ですら間合いをはかって武器を使うのが窺えた。
また、リーダーであるミロイテも同様だが、銃を使わず剣を多用するスタイルの様子。
ある程度、相手の戦闘スタイルを見ていたリュコスも攻撃へと転じ、手当たり次第に武器が握られた聖銃士の手を狙う。
聖銃士は個々では完全に武器の扱いが素人だと、アリシスは断定する。しかし……。
「練度が低かろうと、このような状況において数は力です」
数が多ければ、傷付く可能性が高まってしまうとアリシスは判断し、数を減らすべくミロイテやアンズーを巻き込みつつ神気を浴びせかけていく。
そして、リディアは信条と誇りをもって剣を向けてきていた聖銃士達の姿を見て、サクラと並び立ちながら大声で叫ぶ。
「立ちふさがる聖銃士をたおす!」
叫びは彼女の影を刃と化し、ミロイテを含む聖銃士達へと乱撃を浴びせかけていく。
すでに倒れる子供も出始めてはいたが、リディアは雑多と侮ることなく、なおも敵陣へと攻撃を加えていくのである。
●
「やああっ」
「たあっ、えいっ!」
掛け声を上げ、聖銃士達は武器を振りかざす。
ただ、練度の低さもあり、その掛け声で対処するタイミングをつかむことは容易い。
「ぎゃー! 寄ってたかって凹るなっスよ!?」
大げさに叫ぶミリヤムだが、ドヤ顔を崩すことなく彼らの攻撃をやり過ごす。
とはいえ、衝撃波を発する聖獣アンズーはそうもいかない。ミリヤムもそちらを含め、抑えに本腰を入れていた。
盾役の癒しに当たる茄子子はスティア、サクラを重点的に癒しへと当たっていて。
「私はこっち回復するよ!ㅤそっちは任せた!」
茄子子の声掛けを受け、ココロは彼女と対象が被らぬようスティアへと魔法式医術を施して癒しに当たる。
ココロの回復を確認した茄子子は号令をかけてから、サクラへと大天使の祝福をもたらす。
だが、聖銃士達が集まってきたことで、茄子子は存在しない翼を羽ばたかせて空刃を舞い踊らせる。
「神様神様って、そんなのに頼ってばっかりじゃなくて、自分達のことは自分達で解決していけばいいのに」
そうして、自身に近づかせぬよう聖銃士達を牽制していた茄子子だったが、盾役メンバーから漏れた敵が押し寄せていく。
「ぽっと出の神を祀ったところで、救いなんて訪れないんだよ!」
深追いはしないと決めていた茄子子だったが、そこでフェルマークがフットワークを生かして拳や蹴りの連打を広範囲に浴びせかけてくる。
咄嗟のことで対応できず、茄子子は地を這いかけ、パンドラの力に縋っていた。
「私を無視してもらっては困るよ!」
そこにスティアが滑りこむような形で、立ちはだかる。
茄子子の体力が厳しいと判断したことで一度魔力を放出し、その残滓が象る満天の花びらで癒しをもたらす。
そして、スティアはフェルマークやアンズーを抑えつつ子供達へと呼び掛けて。
「イコルを摂取し続けると貴方達も聖獣になってしまうから……、今は信じられなくてもこのことは覚えておいてほしいな」
子供達の攻撃の手が僅かに鈍りはするが、隊を率いるミロイテだけは止まらない。
「そんな虚言など通用しない!」
ミロイテは怒りに満ちた表情で切りかかってくれば、彼女を注視していたサクラが引き付け、防御態勢をとる。
しばし攻撃をしのぐことができれば、サクラもまた聖刀で乱撃を浴びせ、聖銃士達を切り捨てる。
一時は崩れかけた戦線だが、スティアの引き付けがその後は上手くいっていたことを受け、アリシスはサクラの引き付ける敵を纏めて神聖の光で灼いていく。
いかに白銀の鎧纏う聖銃士とはいえ、戦闘経験の少ない子供達がイレギュラーズの攻撃に何度も耐えられるはずもなく、アリシスの光を浴びて倒れていった。
リディアもまた聖銃士をメインに1人1人の顔を、その目を見据え、敬意を持って輝剣で打ち倒す。
倒れた子供を顧みぬリディアは敢えて命を奪いはしないが、それて力尽きるならば天意と割り切っていた。
それだけ、後に控える相手の力が強大であり、イレギュラーズ達が子供達に割く余裕がなかったということでもある。
聖銃士の数が減ってきていたことで個別に青き彗星で貫いていたリュコスはミロイテが剣でばかり応戦しているのを目にする。
「やああああっ!」
聖銃士の中でも一際目の色を変えて襲い来るミロイテに、イレギュラーズの言葉は一切届いていない。
そんなミロイテも度重なる攻撃で息が上がってきており、リュコスは冷静にその剣筋を見極める。
その最中、リュコスは聖獣やフェルマーク、そして後方で様子見しているマザー・マリアンヌと視界に捉える。
(何かしてくるかな)
「うあああああああっ!」
考えを巡らすリュコス目がけ、イコルを大量に使っている影響か、正気を失いかけたミロイテが少女と思えぬ力で剣を薙ぎ払う。
サクラがその斬撃を食い止めてくれる間に、リュコスは棒状にした鈍器でミロイテを背後から殴りつける。
動きが止まったところで、アリシスが迫る。
「子供であろうとも刃持ち戦場に立つならば容赦は無用、御覚悟を」
「う、ああ……」
アリシスの祈りは光刃となる。それによって体を裂かれたミロイテは目から光を失い、崩れ落ちる。
先に倒れた聖銃士達を、リディアは攻撃対象から外して。
「討伐が目的とは聞きましたが、必ず殺せという意味ではないでしょう、きっと」
また、倒れる子供達を、ココロは苦々しく見下ろす。
(せめて、考え直す機会を与えたい)
まだ、聖銃士達は息があるはず。手早く残る敵を倒して手当てをとココロは考えるのである
●
聖銃士を一掃したイレギュラーズ達は残る聖獣と魔種2体の討伐に全力を尽くす。
前線で引き付け役を護っていたミリヤムだが、奥にいたマザーが進み出てくれば、「……病む」と言いつつ身を退こうとして。
「だって、あの人絶対、必殺攻撃持ってるもの! 死ぬッス!」
そんなミリヤムの言葉に仲間達も注意を払う。残る敵はいずれも強敵であり、気を抜くことが許されない。
ミリヤムもそれが分かっているからこそ踏みとどまり、ドヤ顔でアンズーやフェルマークの前に立ち、その上でマザーへと声高らかに呼びかける。
「というか、パイセン! そんな詐欺師まで使ってファルマコンとかいう虚像の神を作り出したいんスか!?」
「私は神への信仰の為、何でもやると決めたのです。ミリヤム」
淡々と言葉を返すマザー・マリアンヌに対し、フェルマークは怒り心頭になって。
「詐欺師とは……我の力を知らぬらしいな……!」
敵は略式の悪魔召喚を行い、多数の悪魔達を呼び寄せてきた。
それらは一気にミリヤムへと取りつき、彼女の身体へと食いついてくる。
ミリヤムもこれには対応できずに生命力を削ぎ落され、希望の力をつかみ取って意識を繋ぎ止めていた。
「大丈夫!? 今治すから!!」
天使の歌声を響かせていた茄子子がすぐさまフォローに入り、倒れかけたミリヤムに救済をもたらして回復に入る。
「大丈夫、私能率高いから!ㅤ何時までだって回復し続けてやるんだからね!」
ヒーラーとして茄子子は全力で癒しを行い続ける中、サクラは聖銃士が全て倒れていたこともあってフェルマークを狙う。
「覚悟して貰うよ!」
攻撃に転じたサクラは、居合でフェルマークへと斬りかかる。
簡易召喚とあって、すぐに消え去った悪魔達。フェルマークも対処が間に合わず、その一太刀を浴びてしまう。
ただ、フェルマークは自らの陰に悪魔を潜ませており、そいつが飛び出てサクラへと凶爪をギラつかせて。
「危ないです!」
リディアが身を挺して盾役になろうとするが、態勢整わぬままその爪で肌を裂かれてしまう。
髪飾りから零れ落ちるパンドラにあやかり、リディアは倒すべき魔種と改めて対する。
そのリディアの危機を察し、ココロが一時大鐘の音を鳴らしつつ生を望む仲間へと祝福を与えていた。
また、ココロは合間に熱砂の精で聖獣を狙おうともするが、さすがに建物内で地上の仲間を巻き込むと躊躇していたようだ。
その聖獣アンズーの抑えへとシフトしていたスティアは、現れた悪魔も抑えつつ、召喚主へと叫びかける。
「何度も逃がす訳にはいかないから! 絶対に倒してみせる!」
「ふん、聖銃士が気がかりな者達もいる状況で、我を倒せると思っているのか」
フェルマークは鼻で笑い、逆に煽りすらして来る。
スティアも敵が逃げぬよう背後に回り、退路を断つよう意識して立ち回る。
そのスティアの代わりに、アリシスが聖獣へと向かう。
「この巨大な鳥も聖獣であるのなら、元は人か……それとも人以外をも聖獣化できるのか」
ガオオオォォォ……!!
このアンズーなる聖獣は元々からこうした生物だったのか、それとも……。
アリシスはタイミングを見て、フェルマークと合わせて神聖な光を浴びせかける。
「『神』は如何しましたか。ファルマコンに宗旨替えでもなさいましたか?」
「ふん、いずれそのファルマコンに我がすげ変わってやろうぞ」
本音を垣間見せるフェルマーク。それに、マザーが眉をつり動かしながらも、手枷足枷の鎖を鳴らして動きだす。
「頃合いです、フェルマークさん。この場は引きましょう」
そうして、マザーは両腕を上げ、聖獣アンズーを飛ばせて退かせる。
(動き出したマザー……ティーチャーら指導層も各々で思惑が違う様子ですね)
フェルマークとも、馬が合っているとは言い難い様子だとアリシスは見る。
「……この場は従おう」
すると、フェルマークは翼を羽ばたかせ、アンズーに続いて飛び去っていった。
それらを追おうとするイレギュラーズを、マザーが刃の如き殺気で遮って。
「イレギュラーズ……ミリヤム……。今度対峙するときは……、私もこの枷を解きましょう」
「パイセン……」
刹那、刃の如き殺気を放つマザー。ミリヤム含め、一行は交戦の構えを解かぬまま相手の出方を窺う。
「意識はありますか? 聞こえている者は起きなさい」
「「は、はい……」」
そして、マザーの呼びかけに応じ、ミロイテを含む5、6人の聖銃士が起き上がる。
集会場の奥へと去っていくマザーに続き、聖銃士達が体を引きずるようにこの場から去っていく。
残ったイレギュラーズ達も怪我は浅くなく、この場は退避することに。
「……保護した子供を助けたいです」
「わたしも、子供達を説得したい」
そんなスティアやココロの要望もあり、一行は倒れたままの子供達を介抱しつつ、アドラステイアの外へと向かうのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは討伐対象である聖銃士達の引き付けを行い、効果的にその討伐を行う戦況へと導いた貴方へ。
介抱した子供達は無事だったようです。また別の話でマザー・マリアンヌについての情報が得られるかもしれません。
今回はお疲れ様でした。また、新たな動きがありましたら、よろしくお願いいたします。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)さんのアフターアクションによって発生したシナリオです。
●目的
フェルマーク指揮下のアドラステイアの子供達の討伐。
●敵
○アドラステアの騎士
別名『聖銃士』。白銀の鎧を纏う8~12、3歳くらいの子供達です。
・ミロイテ
この小隊を率いている赤毛の14歳の少女(人間種)です。
聖銃士の中でもかなりの成果を上げており、キシェフやイコルを多く与えられているようです。
長剣を使い、かなりの技量を持っており、マザーにも一目置かれる存在です。
・一般聖銃士×15名
マザーに認められてアドラステイアの騎士となった少年、少女です。
強さは普通の子供達が武装した程度で修練はあまりされてはおらず、然程強くはありません。
○聖獣アンズー
全長3mほどあるマザーからもたらされた聖なる獣。ライオンの頭にワシの身体を持ちます。別称として、ズー、イムドゥグドとも。
衝撃波を放つ他、急降下しての攻撃、掴みかかってからの叩き落としなどで攻撃してきます。
〇マザー・マリアンヌ
20代女性。血に濡れた修道服を纏う魔種となった元人間種女性です。
神への愛を説き、慈善活動奉仕など比較的優しい条件でキシェフを与えてくれるなど、下層でも人気のシスターですが、あちらこちらで暗躍している噂も……。
○フェルマーク
元飛行種の魔種。以前、別の新興宗教の神として祀られていた存在です。
マザー・マリアンヌに拾われた彼は、ファルマコンの意思を子供達へと伝える巫女として動いているようです。
戦闘となれば、サモナーとして悪魔を召喚する他、気を合わせた体術を使うことが確認されています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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