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シナリオ詳細

刀神闊歩

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●神を名乗る男
 鉄帝とラサを隔てる山脈のひとつに、交易路として先ごろ開拓された『ホルム街道』が存在する。その中央付近には断崖の谷を渡るための大橋が数年がかりで建設され、その利便性より使用者が増えている……のだが。
「ぐっ……あああ……!」
「大丈夫かね君ィ! なんなんだお前は、何が目的だ? 金か?!」
 長剣を取り落した傭兵が、手を押さえ、続く襲撃に大きく吹き飛ばされ岩壁に叩きつけられる。
 全身を強かに打たれ、斬られた姿は痛々しいが急所をずらしており、殺意はないことが窺えよう。尤も、殺意がないだけで偶発的に命を落とす可能性は度外視していることが明らかなのだが。
「貴様の負けだ。儂にその刃を渡し疾く去れぃ! 金など要らぬ、その刃のみが――」
 行商団と対峙した大男は、薙刀を手にしたまま腕を組み鼻を鳴らす。つまらなげに見逃そうとした彼の腹部から銅鑼のような大音声が鳴り響く。
「……すまぬ。刃と、3日分の糧食を分けてはくれぬか。それ以上は望まん。そして流布せよ、『強き剣士を求む』と。妖術の類を向けるのは望むところではない」
 大男はそういうと腹を押さえ、片手を拝む形で前に出す。
 行商人は二つ返事で食糧を渡すと、護衛の傭兵を馬車に乗せ去っていく。
 ホルム街道の大橋に乾いた風が吹き荒れる。今日もまた、彼は満足いく戦いを得られなかった。

●剣士案件+自称神=
「というわけで、長らく情報が明かされなかったのですがどうやらホルム街道の大橋に立っている巨漢がいるそうで。彼は旅人らしく、背に大量の刀剣や槍などの武器を背負っているそうです。……私がいた世界でも似た逸話を持つ方は聞いたことがありますが」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は資料をめくりつつ眼鏡を壁へ向け、ホルム街道の位置を指し示す。面倒な立地だ。周囲は山岳地帯のため道は限られ、問題の大橋は戦場として申し分ないが大男を無視できるロケーションではない。
「その巨漢、自称に従って『刀神』と呼びましょうか。彼は何故か剣や槍による近接攻撃にしか興味がないそうです。ですがそれでも相当な実力に成長しているようで、先日は噂を聞き護衛を増やした商人が、全員を打ち据えられ犠牲になった護衛を治療所へ運び込んでことが大きくなった……とのことです」
 流石に全員倒されて武器をかっぱらわれました、なんて恥ずかしくて表沙汰にできたもんじゃない。
 なお、術士や弓手、銃手は無傷であることから「戦うに値しない相手」を攻撃しない傾向にあるようだ。
「戦闘中に護衛の一人が聞いた話だと、『千本の武器には未だ至らず』とか『彼の地へ戻らねば』なんて言ってたそうです。ですから、私の知っている伝承に従うと刀剣千本狩りを目指しているものと考えられます」
 その話を聞いた夜式・十七号 (p3p008363)、白薊 小夜 (p3p006668)、玄緯・玄丁 (p3p008717)、鏡 (p3p008705)の4名の目が光ったのを三弦は見逃さなかった。多分、お目付け役も要るかなあ、などと。

GMコメント

 リクエストありがとうございます。ポン刀案件っていうんでしたっけ。そういうのです。

●達成条件
 刀神の撃破(殺そうとしても死なないので殺す気でやっていいです)

●刀神
 自称です。
 ですが実力はガチらしく、かなり戦闘をこなしています。
 単身で橋を通せんぼしているだけあって実力は相当なもので、全ての値が高水準です。
 代わりに自分に攻撃をしかけない者は狙いません。
 そのため神秘ヒーラーが負傷する可能性は低いですが、タンクとして前に出たら敵認定されます。
 なお、「敵」には体制を立て直す間を与えたくないため猛攻をしかけます。下がって立て直し、は高度な連携を要すでしょう。使用武器は薙刀メイン。
 所持スキルは以下。
・高速詠唱、二刀流、各種武器熟練等を所持。
・芦刈(物近扇・足止、不運)
・破多許(物中列・移、恍惚、必殺)
・大喝(名乗り口上と同一)
・九字護身法(付与・溜1・瞬付)
・EX 九十九部具法(物至ラ・詳細不明)

●戦場
 ホルム大橋。
 横幅、奥行きが広く、刀神に対し戦闘開始の意志を告げない限りは彼も攻撃してきません。
 付与などの準備は彼も見逃してくれるでしょう。

●その他
 このシナリオは「鉄帝」「傭兵」双方の名声に影響します。ご注意ください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 刀神闊歩完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月05日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
※参加確定済み※
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕
※参加確定済み※
鏡(p3p008705)

※参加確定済み※
玄緯・玄丁(p3p008717)
蔵人
※参加確定済み※

リプレイ


「武器集め、橋の上……なんでしたっけぇ、笛でも吹けば様になりますかねぇ」
 鏡(p3p008705)は橋の半ばに胡座をかいて瞑目する男――“刀神”をみやり、己の記憶を掘り返そうとした。刀としての己の知識のどこかにあった逸話は、冗句のひとつを捻り出すに足るもので。
「――あれが刀神、か。自称するだけあって強いのだろうが、なんだろうな」
 『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)は刀神の姿を視界に収めると、やや怪訝そうな表情を浮かべた。強者特有の気配はある。だが、それ以上になにか異質なものを覚える。そんな感じだ。
「ふふ、ふふふ。彼方の神様、刀の神様……是非に是非に存分にやり合いたいねぇ!」
「それにしても強い剣士ね……あの人も暇だったらふらりと辻斬りに来そうね、ふふ」
 『蔵人』玄緯・玄丁(p3p008717)と『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)は抑えきれぬ愉悦の感情を口の端に漏らしながら、刀神がぐるりとこちらに顔を向けたのを見た。それからようようと立ち上がる様は、隙だらけにしか見えず、しかし相応の重圧を湛えていた。引き締まった顔、目鼻立ちはクッキリしており、武人としての誇りと矜持を思わせる。
 玄丁は彼の様子を見てから、仲間達の得物を見て嘆息する。自分の求める戦いを与えてくれるそれではない、と。……それはそれで非常に礼を欠いた言動なのだがそれはともかく。
 ……確かに、彼の幻想貴族に与する剣客が話に聞けば両断されていよう相手では、あるが。
「来たか、新たな刃が。佳いぞ、儂にその切れ味と信念を見せるがいい」
「……滑稽至極。武器に遣われてるでありますな」
 満足気に鼻を鳴らした刀神に向け、『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は心底不満げにその男を見た。背負っている武具の数は数多、驚くほど手入れの行き届いたそれらを手にする彼は、どれほどの時間を武器に捧げているのだろう。或いは、寝食を捨ててまで? その意志は見上げたものだが、行い自体は見下げ果てたそれだ。
「それにしても刀神とは、大きく出たものですね。この橋を塞ぎ続けるというのなら、排除するしかありません」
 『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は感情の起伏を表すことなく、腰に佩いた長剣に手をかけた。
「……まだだぜ。分かってるよな?」
「無論です、が、あちらが自分達を認識しているなら――」
 その動きに手をかけたのは、『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)。オリーブは理性では理解しているようだが、刀神から放散される敵意、あるいは戦意と呼べるものが武器持つ者としての本能を刺激したのだろう。
「じゃあ、皆ごめんなさぁい。私から行かせてくれますかぁ?」
「……分かった。が、気を付けろよ。私達の対応は万全に出来ない距離だと思う」
 鏡はそのやり取りを見たか否か。仲間達に手を振り仰ぎ、ゆるりと橋へと踏み出す。十七号は仕方なしと鏡を送り出すと、僅かに重心を前に傾けた。
 刀神がそれに気付くには距離がありすぎる。そして、彼女が意図通りに動くにも、また。
「初めましてぇ、武器を集めてるんですってぇ? 私、こう見えて”刀”なんですけどぉ、要ります?」
「……面妖な事を言う。この世界は生きた刀が徘徊するか。然し……」
 鏡の足取りは軽い。如何にも戦意に欠けた歩調、足運び。そして絶対的に、一刀を入れるには遠い距離。それらと口八丁(事実)によって刀神はやや意表を突かれたように表情を歪めた。
「ま……切れ味だけでもご覧になってください」
 が、鏡が居合の構えから縮地を以て間合いに踏み入れたのを、気付かぬほどに彼は愚図か? 答えは否だ。絶対的に速度に劣る刀神ながら、喉元へ伸び上がった無銘刀を薙刀の石突で打ち払う。奪えたのは、頬一筋の血と皮一枚。
「任せましたよぉ、十七夜ちゃん」
「万全に対応できるとは、言わなかっただろう……!」
 無銘刀を逸した勢いを先端に載せ、薙刀が横一閃に払われる。受け止めたのは、十七号の海燕と甲冑だ。うまく受けたつもりだったが、それでもなお重い。
「まずは10秒、ものにしたぞ……次」
「言われなくとも、二番手は頂戴するでありますよ。……こういうのが、お望みでありましょう?」
 十七号の言葉に応じるように、エッダはゆっくりと……だが確実に刀神の間合いへと踏み込んでいた。騎士(メイド)としての完璧さを損なわぬよう、徹甲拳を構え相手の出を待つ。その姿は、刀神の意識に爪痕を残さんとし……しかし、内側から弾かれたような感触を幻視する。簡単には誘われぬか。だが、ならば此方を見るまでお前の全てを見てやる。エッダの鋭い敵意は、確かに刀神の背、その産毛を毛羽立たせた。
「さぁ! 始めようか! ……武器を持たない私達は君のお眼鏡に叶うかな?」
「クッ……ハハハハハハハッ! それが嚆矢か! 面白い! 我が往年の同胞(はらから)を見るが如き、美と誠意からかけ離れた戦働き! それでよい、それがよい! 徒手にて本懐というなら見せてみよ、儂が愚かと詰るなら貴様等の知恵を振り絞れ! 儂は貴様らの行為全てを甘受しよう!」
 『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)が全身に紅雷を纏わせ突貫するのを皮切りに、見の姿勢を保っていた面々が前進する。
 刀神は動じない。相手がたとえ徒手であろうと。己へ抱く感情が、恨みつらみに似ていようが。
 そして、騙し討ち大いに結構。今まさに、盲(めしい)だ目を隠さずゆらりと踏み込んだ小夜が桜吹雪そのままに刃を振るう――!


「強い剣士をご所望なんて自信がお有りなのね、私なんてまだまだ至らないけれど折角だもの……一手、いいかしら?」
「聞く前に斬りかかってくるか。食えぬ女よな」
 小夜の斬撃をその身で受けつつ、刀神はしかし軽く嘆息するのみで応じた。彼女の不意打ちは間違いなく入った。2度、3度と繰り返される追撃は、成程傷としては浅からぬものだ。が、刀神はそれもよしとばかりに猛威を振るう。
「ふふ、僕も始めようかっ!」
「絶対に当たる防御無視の攻撃、対処できるかい?」
 玄丁は此夜煌を握り背後から。マリアの両足は電磁力によって地面と反発を生み、猛烈な加速で正面から、それぞれ一撃を叩き込む。避け得ぬもの、守りを貫くそれらはしかし、両者ともに対照的だ。
 玄丁は刀神の反撃に後の先を叩き込むべく、鋭い呼気と共に身構え。マリアは一発目を蹴り込んだ直後に、身を翻し次撃の構えに入っている。圧倒的速度のセットアップから、位置の上下を問わぬ猛攻。個々の能力もさることながら、即興で集まった面々とは思えぬ連携だ。
「皆さんの力と共に、自分も……確実に仕事をします」
 オリーブは上質な長剣を今度こそ抜き放つと、流麗な動きで踏み込み、避ける余裕を与えず連撃を叩き込む。鉄帝の民としての矜持、国の危機に際しての憤り、強者へ挑む挑戦者としての心得。数多の思考が渾然一体になりつつ、しかし彼の真価は全てに対する純然たる敬意にこそある。
 仲間に、敵に、この機に、彼は一切の妥協をせず全力を以て挑んでいる。甘くはみていない。だから、負ける気はない。
「鏡!」
「分かってますよぉ、十七夜ちゃん」
「乗らせてもらうぜ、十七……かなぎ」
 この濃密にもほどがある攻防で10秒。十七号――否、十七夜か。鏡の速度に合わせて彼女が踏み出すと、義弘はそれに乗じる形で刀神に呪いを刻まんとする。
 只でさえ圧倒的な速度に居合を加えた抜刀は、その速度にあって狙いを違えない。立てた薙刀をすり抜けるように……立てるよりなお早く両断した無銘刀は衝撃にみしりと音を立てた。
 続けざまに繰り出された十七夜の瞬天三段はしかし、恐るべき精度を以て薙刀により防がれる。だが、その衝撃を叩き込んだだけで十分。続く義弘の拳の打撃は、それどころではないのだから。
「面妖、面妖、更に面妖! 貴殿等の身のこなしは面妖であるがゆえに一定の真実を突きつけてくる喃……だが儂は未だ果てず。……喝ッ!!」
 刀神はイレギュラーズの猛攻を受け止め、或いは柳に風と受け流してこそ居るが、この状況が続けば確実な敗北が待ち受けることは承知の上だ。だが、それでは余りに呆気ない。刀神の名をもて立てば、その浮名に誘われた羽虫が集まるは道理。だが蓋を開けてみれば猛禽の類が呼ばれるとは思わなんだ。
 喉から絞り出した喝破は、確かにその場の何名かの動きを単調なものへと変えた。が、彼はその顛末を見届けること無く素早く薙刀を切り払う。狙いはエッダを軸として左右に座する数名。動き出すより猶早く足元を刈り取られた者達は、姿勢を崩し足が止まる。
(強い、なんて噂が独り歩きした程度だと思ってたけど……あの人には及ばないだろうに、それでも強い)
 小夜は感情を刀神に支配されつつも、それでも冷静に敵の実力を評価する。剛力、そして鋭い薙刀捌き、イレギュラーズの猛攻をしてなお数度は避け、多くを正面から受け止めてびくともしない。こと、マリアの連撃は間違いなくその術理の力を奪っていように、堪えた顔ひとつせぬ。
(……最近集団戦の戦い方が増えちゃったなぁ。それでも多分、1人じゃ勝てないだろうけど)
 玄丁は、己の攻撃をものともせず暴れまわる刀神に嫉妬じみた感情を抱く。自分ひとりでは倒せぬ敵という歯痒さと、己が身と得物ひとつで自分達を相手に堂々と立ち回るその姿の対比がただ妬ましく。彼の男は、その状況をすらも楽しんでいるのだから手に負えない。
「……つまらない、でありますな」
 マリアの戦いぶりを見るのに不満はない。彼女の背を追い、受け継いだ力の真価を引き出したのだから。仲間達の剣戟、そしてそれに耐える刀神の振る舞いも評価できよう。少なくとも、一瞬で崩れ落ちるような雑魚が神の名を僭称するような腹立たしさを覚えずに済んだ。
 だがやはり、それでも気に食わない。
「鉄帝を狙われるのは遺憾ですね。理解できます」
「なんだ娘、愛国の徒として許せぬか? なに、儂は交易を潰そうなどとは思っておらん、なんなれば」
「……隊商が1日止まるだけで何人飢えると思っている。 何人の乳飲み子が明日を迎えられぬと思っている。鉄帝とラサにとっての交易とはそういうものだ。それを貴様、『弓や魔術はお断りだ』と、注文をつけられると思う立場にあるとでも?」
 オリーブと刀神の言葉を遮るように、エッダは怒りを発露する。両国家間の交易を足止めすることの意味は重い。それを無自覚に行いながら、身勝手な主張を口にするのは話が違うのではないか、と。だが、刀神は理解できぬという表情で首を傾げた。
「応とも。無ければつけぬ道理よ。何故なら儂は、術も飛び道具もそう通じぬでな。誇りをかけて切り結ぼうと言うのなら、一方的に通じぬものを使えと強要することこそ不公平ではないか」
「……は?」
「本当にそんな理由だけで使うな、と……?」
 さしものエッダも、この言葉に呆れたように声を上げた。十七夜もまた、僅かに緊張の糸が緩む。周囲の者とて同じだろう。
「問いはそれだけか? ならば来い。徒手の者とて捨てたものではない……儂はまだまだ、貴“殿”等の本気を見ていない! 術理と弓が効かぬ我の逸話、ここから見せてやろうではないか!」
 刀神は薙刀を橋に突き立て、両手を組む。深い呼吸から紡がれた鋭い呪言は、護身法の術式か。背に浮いた曼荼羅から手が伸び、彼の背の武具を掴み取る。宛らそれは――。
「千手観音の真似か、多芸だな刀神ってヤツぁ」
「無頼の男、貴殿の拳は効いたぞ」
 その有様に嘆息した義弘に、刀神は不敵に笑う。それは彼を狙うという合図か、それとも。


 曼荼羅の最上段から降る槍は、まず鏡と小夜に降り注いだ。先程までの戦闘でかなりの消耗を強いられていた2人には堪らぬもの。運命の助力がなければ立っていることも疑わしかった。
 次にオリーブへと長剣薙ぎ払いが飛ぶ。彼の持つ長剣は、それと打ち合ってなお、刃こぼれ一つ残さない。
 3名へと降り注いだ猛攻は、曼荼羅の停止と同時に止む。だが、刀神自身は止まらない。
「面白い技だね! でもそう何発も打てないだろう? 私が力を奪っているからね!」
「女、その実力誉れ高し。一撃ごとの威を隠して理力を奪うとはな。――だが、なれば尽きる前に潰すのみ!」
「その意気込み、嫌いじゃないな!」
 マリアの雷吠絶華を迎え撃つように、薙刀が払われる。だが遅い。常の彼女の能力なら五分で当たっただろう。だが、疑似リニアドライブユニットの生んだ僅かな決定力(クリティカル)が、その背をほんの僅かに押し、刀神のそれを上回らせた。
「悪いな、俺にはこれしかねえからよ。けど、息が続く限り殴り合ってやらぁ。いいよな?」
「返答が必要か、男?」
「要らねえなぁ」
「で、あろうよ」
 義弘だって、この短時間で受けた傷は生半なものではない。消えかけた曼荼羅が血を吐くような呪言と共に再起したのはさしもの彼も舌を巻いた。そしてその武器が纏めて自分を襲えば何の冗談だと憤るほかはない。
 それでも止まらぬのは、彼が亘理 義弘(かれ)であるがゆえだ。
「鏡、」
「いけますよ? ……武器千本、永い帰り路、お気をつけて………」
 十七夜の言葉に応じた鏡は、最後の力を振り絞って前進した。身に余る速度、そして破壊力。それは刀神の背の武器がひとつを奪い、振るったがゆえか。それとも命の燃える輝きか。

「お覚悟くださいませ。自分は、その増上慢を叩き潰す者であります」
「出来るものなら、やってみせよ。『そうした』のみが答えだぞ、武人の女」
 エッダの視線と刀神のそれが交錯する。お互いが相手を射殺さんばかりの視線を交わし、両者の得物と誇りがぶつかり、鉄の悲鳴を上げた。

「ここまでやってなんで死なないんですかぁ? こっちはもう死に体なのにぃ」
「最後の最後に……こんなに暴れまわるとか、ほんとにもう……」
 鏡と玄丁はもう立てぬとばかりに青天(仰向け)に倒れていた。他の仲間とて、運命の力を絞り出していない者の方が珍しいくらい。こればかりは、たった1人でここまでせしめた刀神の恐ろしさが際立つ。
 だが、彼は敗北した。
「はっはっは、いやぁ負けた負けた! もう敵わぬ! 自信をなくすであろうが!」
「また活動するのなら鉄帝以外にして欲しいですね。この国はそこまで豊かではないので」
「何が自信ですか、弱者を打倒して増上慢に浸っていた男が」
「手厳しいな!」
 オリーブとエッダ、鉄帝を故郷とする2人にとって刀神の行いは許せるものではない。そこから立ち退かせるだけで済ませるのは、大分ましな譲歩といえるだろう。
「そういえば……刀をいくら集めても、願いは叶わないと思うわよ」
「何?!」
「その程度で帰れるなら、旅人たちは国を作らんさ」
「国? ……儂のような者が居る国があるのか」
「それも知らなかったのか……」
 小夜の言葉に跳ね起きた刀神は、続けざまに語られた十七夜の言葉にかぶりつき気味にずいと顔を出した。
 ……もしかしたら、彼の次の旅先は練達のどこか、なのかもしれない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

亘理 義弘(p3p000398)[重傷]
侠骨の拳
鏡(p3p008705)[重傷]
玄緯・玄丁(p3p008717)[重傷]
蔵人

あとがき

 お疲れ様でした。
 連鎖行動のアレが意図通りに決まっていたらマジで速攻もあり得ました。トントンってとこでした。
 でもこれで被害だいぶマシっていうか……うん、個人の戦い方は自由だからね! ラブ・リスペクト・そしてラブだ。

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