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シナリオ詳細

【魔王召喚】世に善を作るには誰よりも悪を貫くしかない

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 幾百、幾万の物語にそれは在った。
 それはヒトであったり、モンスターであったり、はたまた神であったりと様々であったが、それが世に君臨した時、人々は戦争を辞めて共通の敵と戦うべく手を取り合った。
 世の中は敵からの侵略に怯え、混乱に満ちていたが、不思議と安らかな部分もあった。
 それは、引っ越してきたばかりの隣人が隣国からのスパイではないかだとか、やってきた客が敵国からの刺客ではないかだとか、そういったヒト同士の争いが抑制されていたから、である。

 ――魔王と呼ばれるその概念が消えるまでの間、平和だった。
 種族差別は多少あれど、魔王への対抗する術があるとなれば誰もが勇者になることができた。その可能性がある限り、か弱き種でも淘汰されることはなかった。

「だから私は望む。新たな魔王が来てくれるのを」

 勇者召喚ならぬ、魔王召喚。世界『エゴリスタ』はヒト同士の殺戮に満ちていた。ワイバーンを飼い慣らした国は空から毒を撒き、シードラゴンを操る国は貿易船を沈め、壊しつくす。
 故に我々は星がヒトを拒否する前に、エゴリスタに魔王を呼ぶ事にした。邪教と呼ばれるだろう。もしかしたらこの行いで自分たちの親の種族は滅ぶかもしれない。

 それでも、――半端モノが生きられる世界を望んだ。

 リーダーである女、ミルカは母をエルフ、父をヒューマンに持つ混血エルフだった。そして彼女を支えていた副リーダーである男、ギルバードは母をウォーウルフ、父をドワーフに持つ混血だった。

 そして、彼らが率いるものは全て、『半端モノ(ハーフブラッド)』として、臍の緒を切る前にその命を絶つべしとされてきた子供達だ。彼らはは両親の愛によって、あるいは非道な行いの末に生まれた、その残滓であった。

「世に魔王あれ、世に勇者あれ。 ――ヒトよ、手を取り合ってくれ」



「そしてエゴリスタという物語には本来、魔王が顕現するはずだった。けれど、さる事情で物語が歪んでしまった今、現れる者はいない。そこで、君たちには『魔王』になってもらう」

 魔王として世界に存在を知らしめる。単独で立ち向かってきた戦力には痛い目を見てもらう。そういった形で『人々が国家・種族の垣根を超えて手を取り合う』為に君臨することがイレギュラーズに求められた事だった。各自に用意されたモンスターキットは、イレギュラーズが『ぼくの、わたしのかんがえたさいこうのモンスター』が作れるものらしい。

黒髪眼鏡の麗人――名もなき境界案内人は微笑んだ。


「さぁ、応えてあげてくれ。これは物語をハッピーエンドにする為には必要な『悪』だ」

NMコメント

シリーズ系のライブノベルシナリオです。
イレギュラーズは全て魔王扱いになります。
途中参加・途中離脱がいつでも可能です。

Todoリスト
●世界に魔王の顕現を知らしめる!
●魔王は強敵であることをアピールする!
(アピール方法はなんでもOK!)
☆モンスター図鑑をみんなで作ろう!

  • 【魔王召喚】世に善を作るには誰よりも悪を貫くしかない完了
  • NM名蛇穴 典雅
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月28日 22時00分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
海淵の騎士
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
回言 世界(p3p007315)
狂言回し

リプレイ

●魔王召喚
 世界は嘆きに満ちていた。ニンゲン同士の争いに巻き込まれた大地、蒼穹、大海は血に汚れて行く。戦いの果てにニンゲンは人種差別、貧富格差、過去の因縁――剣を振るえば振るうほど、魔法を使えば使うほど、業にがんじがらめに縛られてゆく。
 罪に罪を重ね、地層のように重なってしまった宿業を個人が、否、一国の王でさえも清算する事はもはや叶わない。

「すまない」「ごめんね」
――こんな世界に、貴方を産んでしまって。

 だから、私は足掻く。全てを敵に回しても――!

「《異界の門より、此処へと来たれ、来たれ。運命の歯車は周り、神の手より賽は投げられた。果てなき闇より出でし者よ、暗黒の産声をあげる者よ、世界に今一度、夜の恐ろしさを知らしめよ》」

 ミルカの言葉に応え、何重にも重なった線の上に、ぶわりと広がる漆黒の光。それは暗い闇にもかかわらず、不思議と彼女には酷く眩しく感じた。



●悲しい覚悟
「おおかたの事情は既知しているつもりだ。覚悟の上で願った事に対してこちらからどうこう言うつもりは毛頭ないよ。……もっとも、人類滅亡を前にしてなお争いをやめない人々というのも割とよく聞く話ではあるけども」

 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は眼鏡のブリッジを中指で押し上げながら、エゴリスタの民に声を掛ける。『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は口角を上げながら、ほんの少し興奮の色を宿した言葉を唇から紡いだ。

「正しい、……正しいよ。争いを無くす為には、より強大な共通の敵を作るしかない。実に正しい! だが……その強大な敵によって人がどれほど死のうとも、無論……その強大な敵によって、最悪の場合は逆に滅ぶ可能性がある事も承知しているだろうな?」

 その指摘に、ごくりと唾を飲み込んだものの、力強く頷くミルカ。ギルバードと言えば、諦念の感情を秘めた眼差しで返答する。

「……世界の情勢を無視して存在である魔王様が顕現した。その緊迫した状況ですら協力が出来ないのなら、滅びるのは時間の問題ですよ。魔王様が滅ぼすか、ニンゲン同士が刺し違えて滅びるか、結論が同じならばそこへ至る『過程』なんての些事でしょう?」

 その言葉に一番、傷ついたような顔を浮かべるのはエゴリスタの民でもなんでもない、『放浪の騎士』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)である。

(……世界に善を敷く為に、悪を貫く……本当に良いのだろうか。それしかないのだろうか。世界を団結させる為の悪事とはいえ、犠牲となる者はいるだろう……。分からない……分からないが……。そうしてくれと助けを求める者は、確かに此処にいる。ならば、ボクは――)

 フェルディンが応えるより早く、『柔らかく、そして硬い』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)は頷いてみせた。

「いいよ、僕は僕が考える最悪の魔王になって見せるよ」

 かくして、世界はイレギュラーズという異端分子による魔王顕現により、選択を迫られる事となる。
 ――軋轢を越えて得る生か、積み上げた復讐の炎に焼かれた後に訪れる死か。



●宣戦布告
 城塞都市グランデラジオ。世界で3番目に大きい都市国家である。
 取引されている物資は食料品から衣類といった生活必需品から、火薬や魔法石、武器といった戦争が頻発するこの世界において《金の成る木》であるモノまで取引されている。人口は大国家の十分の一。兵力こそ大国家に負けるものの、大国家を相手に取引している事もあって、世界においては戦争で攻め入る事は許されない暗黙の了解が成り立った中立派閥として世界に存在していた。

 大きすぎず、小さくもない。かつ、世界に影響力を持つ城塞都市グランデラジオは宣戦布告に持ってこいの場所だった。

 地図を広げ、この世界の情勢を脳に刻み込んだシャルロッテが選んだこの場所でイレギュラーズは、否、魔王達は世界への宣戦布告を言い渡すことを選択した。

 どこからか現れて早々に『正当な人間的外交の上でやりとりをしよう』と笑うその姿に、グランデラジオ槍兵達は警戒しながら矛を向け、排除せんと襲いかかる。
 しかし、シャルロッテを守るようにして前に立つのは夜空の如く暗い鎧を見に纏った、血よりも赤い瞳を光らせたフェルディンである。赤い軌跡を残しながらロングソードが槍を弾き、嘲笑うような声が響く。

「エゴリスタの愚かなヒト達よ……お前達の力は、この程度か?」

 グランデラジオ槍兵達はたじろいだ。確かにこの城塞都市は攻め入られる事はない。けれど戦争が多いこの世界で生き残る為に日々研磨を重ね、腕が落ちる事がないようにしてきた筈だ。にも関わらず、この黒騎士は10人近く居たグランデラジオ槍兵の武器を全て弾き返したのだ。

「情けない事だ。矮小なお前達が、群れる事すら忘れているとは――野生の犬共の方が、まだ上手に纏まっているのではないか?」
「なッ……」

 逆上し、襲い掛からんと槍を握り直した若い兵士を先輩らしい中年の兵士が留める。この侵略者に対して冷静さを失った状態で戦っても、死ぬだけだ。
 だが、後から援軍に来たグランデラジオ魔導兵はそれを知らない。ロングソードを片手にした黒騎士に対し、気圧されている槍兵を見て危機と感じたのか、火球を杖先から飛ばして攻撃に出る。

「面倒だな、全部吹っ飛ばせばいいか」

 回言が小さく呟いたのちに片手を軽く、向かってきた火球に対して振り払う。刹那、召喚された小型竜はその翼から凄まじい風を巻き起こし、グランデラジオ兵達を襲った。火球は風力に負けて消え、バサバサとローブがはためいた。フェルディンは使役した影を操り、建物の壁を破壊する。

「さぁ、どうする? 外交をしたいと言うなら契約を交わそう。無理なら無理でこちらは構わないが」
「ふざけるな! 侵略者め。どこの国のものだ? 城塞都市グランデラジオに手を出してタダで済むと思うなよ!」
「やれやれ、まだ理解していないのかな。僕たちは――魔王だって」

 ムスティスラーフの言葉に喧騒に何事かと様子を見に来た住民達はざわめいた。魔王というのは伝承のアレのことだろうか。だがアレは物語上の空想の存在だろう。『いい歳をしてごっこ遊びか?』と嘲笑う兵士も居れば『遊び半分で国を脅かすな』と怒りの眼差しを相変わらず向ける兵士も居る。変わらぬ敵意に、ムスティスラーフは肩をすくめた。そして、大きな浮遊する目玉のモンスターを召喚した。

「ゲイザー、やっちゃって!」

 新たな敵の出没にグランデラジオ兵達は武器を向ける。見たこともないモンスターだがヒト型ですらない、知能の低いモンスターならば倒せるだろうと打算して。

 しかしそれが、何もかもの間違いであった。

「な、んだ……!?」
「僕は色欲の魔王、ムスティスラーフ。ね、武器をおろして、僕の《オトモダチ》になっておくれよ。ね、お願い聞いてくれるでしょ?」

 武器をおろしてふらふらと『色欲の魔王』に忠誠を誓う男の兵士達。一方で強靭な精神力を持っていた男たちはその様子に恐怖する。この世界に洗脳系のモンスターはいない訳でない。だが、この大人数を一度に《魅了》するモンスターなど聞いたことがない。

「帰ってこい! オイ!」
「嗚呼、今まで全く気が付かなかった俺を許してくれ。なんと素晴らしい肢体なんだ。貴方こそ愛を捧げるに相応しい」
「お前こそ、いつも鍛錬をしていた成果もあって、素晴らしい筋肉だ。それにその声も渋くて魅力的だ」

 敵を前に味方――しかも同性で――同士で愛を囁き合うその姿に、悲鳴のような声が上がる。それは、同僚だけではない。彼らの妻や子供からの叫びだった。

 『1日にして城塞都市グランデラジオの兵士の一軍が籠絡した』とグランデラジオの王が他国に救援を求めた。世界中の王はそれを笑って拒否したが、その数日後、後悔した。

 城塞都市グランデラジオは陥落し、魔王軍の元に下ったのだ。それは噂によれば、『黒騎士と竜の操者によって城が破壊された』とも、『色欲の魔王の手管に国中の男が籠絡した』とも、『見たこともない種族が突然現れた』とも謳われ、そしてそれらは全て奇妙な椅子に座った魔王によって計画されたものだとも語られる。
 世界は大きな武器庫を1つ失った。その事実に城塞都市グランデラジオ近隣国は他国から救援しなかった事を責められ、近隣国同士で責任の押し付け合いが3ヶ月の間、続いた。
 半端モノ達は、生き長らえる機会を得た。魔王に矛先が向いた今、差別はされることがあっても、逃げた先まで追いかけてくるものは減った。走り続けさえすれば、いつかミルカやギルバードと出会い、拾われ、いずれ筋書き通りに進むのであれば自分たちが召喚した魔王へと対抗するべく育てられるだろう。

 ――魔王顕現から3ヶ月。勇者という概念はまだ、現れない。

成否

成功

状態異常

なし

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