PandoraPartyProject

シナリオ詳細

コットンフェアリーと妖精の髪飾り

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●コットンハウスへ
 深緑、迷宮森林。そのなかでもひときわ人間の立ち入りがない迷いの森エリア。
 『妖精の道しるべ』という結界によって正しい道順をたどらなければもといた場所に戻されるらしく、これまで森の先を見たものはいない……とされていたのが一年前の話。
「コットンちゃーん、きたよぉ」
 親指ほど小さな『鳴らないウッドベル』を軽やかな、そして独特のリズムで降るシルキィ(p3p008115)。
 すると獣道の上にふわりと景色のゆらぎが起きて、まるで暖簾でもくぐるみたいに景色の間から小さな妖精が顔を出した。
「呼んだ?」
 『コットンフラワーの妖精』コットン。シルキィのお友達である。

「へいウェルカム、シルシルー! お仲間さんも上がって上がってけー」
 身長にして30センチほどの妖精コットンは、小ぶりな雪かまくらみたいなサイズかつ色の物体の前で手招きをした。
 例の『景色のカーテン』を抜けてすぐ。迷いの森をショートカットしてたどり着いたコットンの別荘ことコットンハウスである。実際このまるっこい物体には『こっとんはうす』と花から作った塗料で書かれていた。にじみ具合から察するに、どうやら綿でできているようだが……。
 人の頭すら入らないような小窓から中へ入ったコットンは、内側からテーブルナイフのようなものをスコッと突き出させると大胆にも人がギリギリ通れるくらいの穴をこしらえた。
「ほれ、かもーん」
 壁を外側にけっとばして、くいくいと手招きする。
 こんな小ぶりかまくらに八人も入るのかしらと入り口をのぞき込むと……。
「わぁ、中はこんなに広いんだねぇ」
 外観からは全く想像がつかないくらい、というかどう考えても空間が歪んでるレベルで広いホールがコットンハウス内にはあった。
 六畳一間をまあるくしたような空間で、実際入ってみるとまあまあ狭いのだが、身長30センチのコットンからすればもはやテニスコートだ。
 妖精がのっかれるような小さい木馬やへんてこな形の積木や、途中でまで書いて飽きたらしい絵本などがあちこちに散らばっていて、どうやらここがコットンの遊び場らしいことたわかってくる。
「それにしても、壁をこわしちゃってよかったのかなぁ?」
「いーのいーの。また作るしー。それに壊さないとはいれないっしょー」
「だねぇ」
 ふわふわした白い床に座り、ほこほこと笑うシルキィ。
 目線の高さにあうためか綿で出来た雪ダルマの上にのっかり、コットンはシルキィたちに向き合った。
「でさー、遊びに来てもらってアレなんだけど、一つ頼みたいことがあるのねー」

●妖精からの依頼
「頼みって言うか、お使いなんだけどー。
 この森の中に隠れてるふるーい遺跡があるのね? そこから、ママっちの髪飾りをとってきて欲しいんだよね」
 つっこみたい単語は沢山あるが、その中でもシルキィが最初にふれたのは……。
「ママっち?」
 だった。
 頷いて膝を叩くコットン。
「別にうち、誰かのおなかからオギャアしたってわけじゃないんだけどさー。今の暮らしのしかたを教えた……先代? みたいな? ひとがいてね。その人も妖精なんだけど。ほらこんな」
 コットンは目にもとまらぬような速さでフェルト細工を作り上げると、髪が長くてあちこちふわふわした妖精を象って見せた。
 たとえるなら、コットンの髪を長くストレートにしてちょっとだけ大人びさせたような雰囲気の妖精だった。
 なるほどママさんと言われれば納得の風貌である。
「今はもう自然に還ったんだけど、ママっちの髪飾りは『忘れな雪の迷宮』に置いてったままなのね」
 ママさんが生きていた頃、迷宮の中で落としてしまって以来とりに行けていないものらしい。
 コットンもたびたび取りに行こうとしたが、迷宮が危険な場所というだけあって立ち入るのも危ぶまれる。
 しかし……。
「珍しいねぇ。コットンちゃんが物に執着するのって。やっぱり、ママさんのものだからかなぁ?」
 シルキィの言うとおりだ。別荘の壁をノータイムで壊しちゃうくらい物に執着しないコットンが、髪飾りひとつに長年執着するというのも珍しい話なのである。
 そして指摘もまた正しかったようで、コットンはえへへえと照れ笑いした。
「そりゃー物はいつか壊れて無くなるけど、友達とかは大事にしたいじゃん?」
 多くのものが崩れ、流れ、変わっていく世界の中で、コットンはママさんの面影を手元に残したいと考えているらしい。
 シルキィも、その気持ちはよくわかった。
 胸をトンと叩いて、笑いかける。
「うん。その依頼、引き受けるよぉ!」

●『忘れな雪の迷宮』
 迷いの森のなかにひっそりと存在する遺跡。それが『忘れな雪の迷宮』である。
 獣道のなかぽつんと存在する扉を開くと、その向こうには雪景色が広がっているというものだ。
 迷いの森は妖精郷の影響をうけているのか常にほこほこと暖かく、冬に閉ざされるようなことはないにも関わらずだ。
 そんな雪景色の中を進むには、コットンのナビゲーションが必要不可欠である。
 彼女は感覚的に『通るべき道』が見えるらしく、一切道のない真っ白な世界の中をどういう順番で進めば良いかを教えてくれるのだ。

 迷宮には進行を妨げるモンスターがおり、彼らとの戦いは避けられないだろう。
 それにずっと進むには寒すぎる。
 コットンふくめ途中で暖をとれる道具や準備があるととてもいい。
 さあ、準備ができたら出かけよう。
 『忘れな雪の迷宮』へ。

GMコメント

■オーダー
・成功条件:ママさんの髪飾りを見つけて持ち帰る

 『忘れな雪の迷宮』を妖精コットンと一緒に探索し、髪飾りを持ち帰ります。
 道順はコットンが教えてくれるため、探索能力やプレイングは要りません。
 そのかわりモンスターとの戦いや途中で暖を取ったり休憩したりするスキルや道具があるとよいでしょう。

■フィールド
 常に強く雪が降り続け、すねまで雪の積もった平原めいたフィールドです。
 足跡はすぐに消え、進むべき道もわかりません。ですが結界の仕組みを理解しているコットンはそれを見いだしナビゲーションすることができます。

■エネミー
 途中にはモンスターが出現するため、時折戦闘が必要になります。
 ちょろちょろ出るというよりは一度にどばっと出るので、いま紹介するモンスターが一度に一通り出てくると思ってください。

・雪ダルマさん
 スマイルマークの顔が描かれた雪ダルマ。
 手足がなくぴょんぴょん跳ねて移動する。腕がないにもかかわらず雪玉を発射でき、これにぶつかるとあんまり痛くないのになぜかHPやAPが削られていく。
 別に火に弱かったりはしないが、火の魔法やたいまつとかで炙ると『ウワー溶けるー!』といって嫌がる。

・雪ウサギさん
 葉っぱの耳と赤い実の目をつけた饅頭型の雪兎。ただし大きさは全長3m。
 その巨体で体当たりしたり押しつぶしたりしてくる。
 『凍気無効』能力をもつ。見てるとなんか癒やされるのか、毎ターン敵味方全員のAPが1ずつ回復する。じんわーりと。

■休憩パート
 敵のでない安全なタイミングをコットンが教えてくれるので、そうなったら休憩をとりましょう。
 暖かい食事を作ったりするチャンスです。
 仮に過酷耐性をもっていてもポテンシャルが落ちることは避けられないので、ちゃんと身体を温めて回復しておくと後々いいことがあります。
 具体的には乱数判定時ダイスの出目がよくなるとかです。

■不明なゾーン
 もしかしたら予想していない敵が出るかも知れません。雪ダルマさんや雪ウサギさんの延長上のやつなので、いきなり凶悪なやつが出たりはしないはずなので安心(?)して構えておきましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • コットンフェアリーと妖精の髪飾り完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
蟻巣虻 舞妃蓮(p3p006901)
お前のようなアリスがいるか
リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心

リプレイ

●扉を開けたら、そこはもう雪国でした
 森の中にぽつんと直立しているドア。
 木製の、それもとても古いタイプのドアだった。ノブすらも木で出来ていて、撫でるとつるりと心地よい感触がする。
 『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)は指先に感じた冷たさに目を細め、肩に座った妖精コットンへと小さく振り返った。
「ここへたどり着くのも、一苦労だったねぇ」
「だっしょ? うっかり迷い込まないようにって、『妖精の道しるべ』が何重にも仕掛けられてるんだよねー。ママっちもそのひとりだよ?」
 思いがけず出てきたママさんとダンジョンとのつながり。この中に落としてきたというのも、少なからず関係する話なのかもしれない。
「ママさんの髪飾り。必ず持って帰ろうねぇ」
「ねー」

 ぽふぽふした頭を左右にゆっくり振って脚をぱたつかせるコットン。
 その様子を横から眺めていた『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)は、思わずふっと笑ってしまった。
「物に執着しないコットンさんが手元に置いておきたいと思う物……か。
 そうだね、大切な人が残してくれたものは、しっかりと持っていたいものだよね。
 何でも移ろいゆく流れの中でも、確かなものはあるから」
「だなー。精霊は純種とはちょっと命の成り立ちが違うから時間や命の感覚は違っても普通だけど、誰かを思うことや感じることはやっぱり同じだもんな。同じ精霊の一種として、気持ちはわかるぜ」
 ニコニコとした様子で空中を泳ぐ『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)。
 冒険の中でできた友達。親しい家族。愛された記憶。それが現実と地続きなのだと知るために、人は思い出を残すのかも知れない。
 人は思われているよりもずっと、今を信じていられないものだから。
「なるほど、悪くない話だ……」
 『お前のようなアリスがいるか』蟻巣虻 舞妃蓮(p3p006901)はぼうっとした表情、というか髪色で白と空色の間をいったりきたりしていた。
「ことさら寒い場所は勘弁願いたいところだったが……美味しいスープをいただけるなら、行こうか」
 スープはいい。米をいれてリゾットにしたりジャガイモやコーンをいれてポタージュにしてもいい。
 舞妃蓮はその温かさと味を思い出してか、髪と目の色をほっこりとしたオレンジ色にした。
 ゲーミングキーボードみたいに色のかわる舞妃蓮である。
 そうこうしていると、シルキィたちが扉を開いた。
 常春の温かさがある森が、途端に冷え込んでいく。
 『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)は嫌な予感をいだきつつも扉の内側に入る……と、ぶわりという風圧に背を押された。
 なにゆえかといえば。
「寒い!?」
 身体を震わせ、慌ててカーディガンを羽織るエルシア。
「契約精霊のみんなも仲間?に会いたいだろうと思って揃って連れてきてしまったから最低限の荷物しか持って来れませんでしたけれど、もう後悔しています……」
「え、そうかな。一面の銀世界。なかなか風情があるんじゃないの。
 このメンバーならそうそうのことでは大事にならないだろうし」
 『祖は神奈備』錫蘭 ルフナ(p3p004350)はのんびりした様子で両手を頭の後ろに組んでいる。
 日頃からだいぶ薄着で短パン姿もザラな彼だが、この状態を予期してか毛皮のファーがついたダッフルコートを着込んでいた。
「ずるい……」
「寒いのは分かってたはずじゃない?」
 ごもっともです、といって春めいた格好のままきてしまった自分を責めるエルシアでえある。
「……雪、降りっぱなしね。寒いわ」
 胸元の窮屈そうなポンチョを着ていた『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)が、連れてきていたひよこちゃんを胸の谷間に押し込み始めた。
「あなたには私のカイロ代わりになってもらうわよ。ふっふっふ」
 そんな、普段なら目ぇかっぴらいてキレそうな風景を前に、『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)はどこかほっこりしていた。
(うん、お友達は大事! お友達のものも大事にしたい! わかるなあ……!)
「なに?」
 振り返ったアルメリアに、フランはなんでもないよと首を振る。
「頑張ろうね、アルちゃん!」
「ん、そうね。頑張りましょ!」
 ぐっと拳を作って互いにノックしあうと、二人の後ろで扉が閉じた。

●雪降る昨日はいつまでも、或いは、母から貰ったもの。
 一歩進むたびに脚がすねまで埋まる雪景色。
 大粒の雪が降りしきるなか、少しでも放っておけば肩や頭に雪が積もる。
 視界が白くかすんでいくのはもちろんだけれど、どの方向を見ても真っ白で平らな景色が広がるここでは、方向感覚はおろか時間感覚すらも薄れていく。雪が音を吸収するせいかひどく静かで、まるで真っ白な世界にひとりきりぽつんと取り残されたような気分にさえしてくる。
 それでも迷わず進めているのは、コットンの案内があるからだろう。
「皆止まって、何か居る!」
 フランが手をかざし、後続の仲間たちを停止させた。
 するとどうだろう。真っ平らな雪からぼっふんと雪のボールが飛び出し、二つ重なったかと思うと黒い墨のようなものでスマイルマークを描き出した。
「出たなっ、雪ダルマさん!」
 フランは特製の栄養ドリンクをぐびぐびやると、空き瓶を明後日の方向へ放り投げた。
「さあ、見せるよ! オトナなわたし……!」
 説明しよう! フランは魔術によって10秒間だけオトナフランとなることができるのだ!
「そう、おむねだってこの通りに……!」
 両腕を頭の後ろで組むギャーンって感じのポーズをとってみせるフランの胸は平坦であった。
「…………」
「…………」
 後ろでみていたアルメリアと、前から見ていた雪ダルマ。
 両方が『元気出しなよ』って顔をした。
「んあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
 怒りの余り雪ダルマさんを殴り倒すフラン。その後も雪ダルマさんによる雪玉バルカンがばすばすぶつけられたが、『緑の絶壁』フランはものともしなかた。
「ま、まあ、ミュスカおばさんをみたら……その、ね……」
 目をそらすアルメリア。
 目をそらしたまま指を突き出し、空に『ミザリーボルト』の多重魔方陣を展開した。
 空で踊る魔方陣たちが雪ダルマさんたちへと無数の雷を落としていく。
 すげー余談だが、アルメリアが今以上に進化するであろうことか母ラウラを見れば明らかであった。日々開いていく格差社会。
「それにしてもほんとに寒いわね。魔法じゃ暖にもならないわ」
「炎の術なら任せて下さい。暖を取る準備ができなかった分、モンスター達の邪魔は私が何とかします!」
 エルシアはニットの帽子を被り直すと、契約精霊クルミのカリュアー、ニレのプレテアー、ポプラのアイゲイロス、クワのモレアー、ハナミズキのクラネイアー五体をすべて呼び出した。
 樹木の紋章が五つ空中に浮かび上がり、その中央に向けてエネルギーを集約させていく。
(母……か)
 ひとは母を選んで生まれてこない。人間は運命を選んで生きてはいけない。どんなひとにも母がいて、それぞれのつながりをもつ。
 そして誰もが、何かを受け継いでいくのだ。
「これがきっと、母が私に遺したもの――もしくは」
 手のひらを突き出すと、エネルギーが破壊の熱光線となって雪ダルマさんたちをまとめて貫いていく。
「奪ったもの」

 吹きすさぶ雪の中、混じって染まるように吹く桜花の吹雪。
 津々流は雪ダルマさんたちが放物線を描いて放つ無数の雪玉たちをかわしながら、『花嵐の伏籠』を発動させていた。
 冷食によって生み出された桜吹雪が雪ダルマさんたちへ降りかかり、その形を削り取るように崩していく。
 やがて殆どの雪ダルマさんを削りきった所で、空から巨大な雪ウサギさんが振ってきた。
「おっと、随分出てこないと思ったらこんなタイミングとはね」
 ぽいーんとジャンプして津々流への押しつぶしを狙うが、津々流は大きく後ろに飛ぶことでこれを回避した。
「そろそろおれっちの出番か!? 下がってな津々流!」
 雪の中をすいすいと泳いだリックはヒレをパタパタやることで小さな鮫型水精霊を次々に召喚。雪ウサギさんお巨体めがけて一斉に突撃させる。
 ぽぽぽぽんと景気の良い破裂音が連続する中、シルキィもコットンを胸の谷間にひっこめてから戦闘に加わった。
「特性の糸で溶かしちゃうよぉ」
 雪ウサギさんの周りをぐるぐると走り回り、両手から出した糸を絡みつかせていく。
 やがて繭のように巨大雪兎を薄く包み込むと、電撃を思いっきり流し込んだ。
 更にその熱で発火。雪ウサギさんがぼわぼわと燃えはじめる。
 やがてしぼんで小さくなっていく雪ウサギさんだが、そのピンチに新たな雪ウサギさんが出現。シルキィたちへと突進をしかけてきた。
「相手は可愛らしいし愛らしいが、ここが極寒で体が雪なのだけが悪い。
 凍気に耐性があろうと寒いものは寒い。
 可能な限り穏便に、さもなくば少しだけ物騒に御引取り願おう」
 舞妃蓮は直撃をうけて吹き飛ぶ仲間達を庇うように割り込んで、髪色をぱりっとしたグリーンカラーへ変色させた。
「ついてきているか? 暖をとれる火の精霊」
 キリッと振り返る舞妃蓮。
 このダンジョンにはいる直前まではついてきていた火の精霊が忽然と消えていた。というか雪を嫌がって帰ったらしい。しゅーんと髪色が紫によどんでいく。
「まあいい……」
 舞妃蓮は気を取り直してバッテンシールを雪ウサギさんに発射すると、大きく飛び上がる行動を禁止させ、更に飛びかかってアリスパンチをたたき込んだ。
「とどめだ、誰か――」
「僕だってああまで大きい相手なら攻撃も外さないよ」
 任せて! とばかりに助走をつけてジャンプするルフナ。
 空中で宙返りをかけたルフナは雪ウサギさんのおでこへけりを直撃させた。
 ぴきぴきと走るヒビ。そして雪ウサギさんは爆発四散し、ちっちゃい雪ウサギがキューとないてから逃げていった。
 雪の上に着地し、グッと握った拳を振るわせるルフナ。
「何か心残りでも?」
 問いかける舞妃蓮に、ルフナは一言……。
「あのちいさい雪ウサギさん、連れて帰りたかった……!」
 目を瞑って叫ぶ彼に、舞妃蓮は『ちょっとわかる』という顔(というか色)をした。

●あったかスープ
「こんなところではぐれたら大変だし、手を繋ぐとか、お互いを紐で結ぶとかして対策しないと……ちょっと、誰なの、引率される子供みたいって言った奴」
「わたしだよー」
 振り返ったルフナに、シルキィの谷間から顔を出した妖精コットンが手を振った。
「ごめんねボーイ」
「この年齢知った上で子供扱いされたのは初めてかも」
 見た目のわりにやたら長寿なコットンである。そのせいで物質への執着が薄いわけだが……。
「そろそろ休憩にしよっか。キャンプセットを持ってきたから、暖かい物が食べられるよ」
 雪のなかに小さなテント屋根をつくり、その下で火をおこすルフナ。
 集めた雪を溶かして煮沸させると、用意した加工済の野菜パックを放り込んでいく。
「スープの具の好みを聞いてたらなんとも健康的な野菜まみれになったものだよね。肉しか入れない奴らは見習うべきだ」

 ルフナがテキパキキャンプ飯している間に、津々流とリックはかまくら作りにいそしんでいた。
「なぜかまくら」
 舞妃蓮が興味深そうにのぞき込むと、津々流が折りたたみスコップを地面に突き立てて息をついた。
「かまくらって案外暖かいんだよ。中で暖かいものを食べると尚良いよね」
「だよなー。そこそこ大きいのが出来たし、早速入ってみようぜ」
 リックたちが入り口へ回り込む……と。
 中では鮫の精霊と火の精霊がおもち焼いて食べていた。
「サボって帰ったと思ったら……」
 捕まえてホッカイロにしてやろうか、と両手をわきわきさせるピンク舞妃蓮であった。

「色々な味のおにぎりもいっぱい持ってきたんだ。スープに溶かしてもいいし、そのまま冷めてるやつもいけると思う」
 スープのできあがったルフナがランチボックスを開ける一方で、エルシアはほっこりした様子でおにぎりと野菜スープで身体を温めていた。
「コットンさんのママさんも、こんな料理を作ってくれたのでしょうか……。
 記憶を失ってしまった私には、母の味も思い出せませんから、せめてコットンさんだけでもお母様との思い出を大切にできますように」
「んー、ママってキノコ生でムシャってた気がする」
「生で?」
「ママ、料理下手だったからね」
「そうなんですか……」
 それもまた、大事な思い出なのかもしれない。世界は何もかもが綺麗じゃないけど、それでも愛しいものはあるのだと。
 一方で、ママの味をしっかり受け継いでいる子もいた。
「じゃーん、おかーさんに教わったシチュー!
 年末に家に帰った時教わって、これだけは美味しく作れるようになったんだよー!」
 フランがキャンプコンロから引き上げた鍋にはとろとろのシチューができあがっていた。
 ほくほく顔でお椀にもってもらうアルメリア。
「うーん、ミュスカさん直伝のシチュー、おいしいわ」
「食べたら身体動かそうよ。ストレッチストレッチ」
「えぇ……」
 本でも読んで休憩したいんだけどって顔してるアルメリアの手をひいて立たせ、背中をくっつけて身体を反らさせるストレッチを始めた。
「ん、んんん……っ」
 顔をくしゃっとさせながら胸をそらすアルメリア。その胸は豊満であった。
「んぎゅーっ」
 同じく胸をそらすフラン。その胸は平坦であった。
「ハッ、格差社会!?」
 これどこにお金はらったら挿絵になりますかね。
 ――さておき。
 シルキィはちっちゃいおにぎりをもふもふしてるコットンを膝にのせ、シチューを木のスプーンでひとすくいしていた。
 予め火にかけていたポットがふつふつと音を立てる。
「わ、ホットミルクができたよぉ。マシュマロもあるから一緒に焼いてたべようねぇ」
「焼きマシュとな?」
「噂に聞く例の?」
「ウホッホ」
 にゅっと精霊と一緒にかまくらから顔を出す舞妃蓮とリックと雪ゴリラ。
 わーいといって集まってきた仲間達に、鉄の串でマシュマロを刺したやつを配っていく。
 みんなしてたき火にマシュマロをかざし、ぱちぱちいってるたき火を見つめた。
「肌ぱさぱさになるけど、やめられないのよねこれ」
「わかるー」
「ウホッホ」
「…………」
 アルメリアは焼いたマシュロをはぐはぐ食べて、甘く蕩ける食感と熱にうっとりしてから……。
「何よ雪ゴリラって!」
 串をばしーんと地面に叩きつけた。
「ウホ?」
「落ち着いてアルちゃんただの雪ゴリラだよ」
「フランもなになじんでるのよ」
「おっゴリちゃんじゃーん」
 シルキィの膝の上でちっちゃいマシュマロをふーふーしていたコットンが手を振ると、雪ゴリラもまた手を振った。
 そして懐(?)から赤い髪飾りを取り出してコットンへと差し出した。
「さんきゅー」
 しばらくその様子をぱちくりして観察していたシルキィだが、どうやら状況が飲み込めたらしい。
「ここが、髪飾りのある場所だったんだねぇ」
「そゆこそそゆこと。放っとくと雪に埋まっちゃうから、持っててくれたんだねゴリちゃん」

 それからしばらく休憩した一同は、雪ゴリラをお別れをして来た道をそのまま戻っていった。もちろん雪ウサギさんや雪ダルマさんとの戦いもあったが、すっかり元気になった彼らの順調な足取りのこと、余裕で踏破できたことは語るべくもなかろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

 ――コットンのお願いどおり、母の髪飾りを手に入れ、無事に帰還することが出来ました。

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