PandoraPartyProject

シナリオ詳細

キョウジンの行末

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ざわ、ざわと人々の喧騒があちら、こちらから聞こえてくる。
「んぐ……? んくっ、んー?」
 差し出された三色団子を飲み込んだ鹿ノ子は聞こえてくる喧噪の中の一つを聞いて首を傾げた。
「結紅さん、何かあったんッスか?」
「何かって……あぁー他の人が話していることでしょうか?」
 くすんだ黒髪をゆらりと揺らして首を傾げた少女――結紅に、鹿ノ子(p3p007279)はこくりと頷いた。
 近所で有名な看板娘であるという結紅と鹿ノ子はこの茶屋に偶々立ち寄ってからの知り合いだった。
 年も近いこともあって、気安く声をかける仲になってきつつある。
「そうですね……鹿ノ子ちゃんは確か、神使の方だし、いいかも」
 そう言って、結紅はきょろきょろと周囲を見渡した後、鹿ノ子の空いた茶器を持って奥へ戻っていく。
 少し待っていると、割烹着を取った姿で抹茶のお代わりと共に現れた結紅はそっと鹿ノ子と向かい合う席に座り、さて、と少し考えた様子を見せる。
「実は、ここ一月かしら、時々なんだけど、その……辻斬りが出るみたいなの」
「辻斬りッスか!? 大変じゃないッスか!」
「うん……そうみたい。夜しか出なくて、刑部省もまだ犯人を特定できてないみたいなんだけど、
 傷口がその……『焼き切れて』るらしいの」
 ひそひそ話の形にして、結紅が語り聞かせてくれる。
 鹿ノ子はそれをふむふむと聞きながら、不意に彼女の言葉が止まったのに気づいて視線を上げた。
「……………………実はね、わたくし、その犯人知ってるかもしれないのよ」
「じゃ、じゃあ、届ければいいんじゃ……」
「ううん。でもその犯人って、冤罪なんじゃないか? って言われて、仮釈放された鬼人種の人なの。
 本当に犯人じゃなかったら、その日との人生を台無しにしちゃう。違う?」
「……それはたしかにそうかもしれないッスね」
 結紅の言葉に鹿ノ子が頷いた辺りで、彼女がじっと鹿ノ子を見つめていた。
「……お願いがあるの、鹿ノ子ちゃん。神使様としてのあなたに、お願い。
 少しの間、私の事を護衛してくれないかしら?
 その犯人さん、最近はわたくしを狙ってるみたいに尾けてくるの。
 だから……その犯人から守ってほしいのよ」
「ストーカーってことッスか? 任せてほしいッス!」
 そう言って鹿ノ子が抹茶を飲むのを、結紅が穏やかな笑みを浮かべて見つめている。


 ――その夜。
 冷たく張り詰めながらも澄んだ空気が肌を刺す。
 月は優し気に天に輝き、路地を照らしていた。
「……貴様、何者だ?」
「それはこっちの台詞ッスよ! うら若き乙女を相手に大の男が8人も集まって何するっていうんッスか?」
 闇に溶けるような黒き太刀を構え、鹿ノ子は向かい合う8人の男達――その先頭に立つ男を見た。
「うら若き乙女? ――はっ! 笑わせる! 貴様が後ろに庇うその女はなぁ!」
「……鹿ノ子ちゃん、気を付けてね……わたくしなんかに言われてもかもだけど、
 怪我しちゃうと悲しいわ」
 後ろで結紅の声が響く。
 まるで男の言葉を遮るかのように思えたのは気のせいだろうか。
「大丈夫ッスよ! それより、僕達から離れないでくださいッス。
 離れて逃げるよりは後ろにいてもらった方が守りやすいッス」
「……ありがとう、助かるわ。ここでじっとしてるから……お願いね」
 そう言って、後ろから声がするのとほぼ同時――眼前にいる男の刀が熱されたかのように鈍く赤に染まり、陽炎のように刃が揺らめきを得る。
「ふ、7人も人を雇って何をやるかと聞いてみれば、小娘一人を殺すだけ。
 興もそそられんと思っていたが……これならば少しは興ものろうというもの。
 その気迫、只者ではない――神使であろう」
 そう言ったのは、静かに太刀を抜いた男。
 長大なソレを緩やかに構えた男に隙は無い。
「すみません、神使の皆様方――これも何かの縁、お覚悟を」
 ほぼ同時、そう言った青年は、しかし、腰に佩いた刀を抜かず。けれどその視線には鬼気迫るものがある。
「夜叉郎、行くで? お相手さんも強そうだ!」
「おうよ、平兵衛兄い!」
 平兵衛というらしい男の槍から冷気が零れ――夜叉郎というらしき男の槍からバチリと稲妻が迸る。
「……蓮歌、参ります。穂乃――」
「ええ。蓮歌様」
 蓮歌というらしき忍び装束の女性が間合いを開け闇に溶け、穂乃というらしき女性が短刀を構えた。
「がはは! まどろっこしいネェ! ようは全員つぶしゃあいいんだロ!
 この太郎様に任せとけヤァ!」
 太郎というらしい大男が、頭上でぐるりと大斧を振り回した。

GMコメント

 さて、そんなわけでこんばんは。
 設定委託をお預かりした鹿ノ子(p3p007279)さんの関係者依頼となります。

 さっくりと倒してしまいましょう。

●オーダー
・結紅の生存
 皆様が指示しない限り、結紅は戦場の後方にて皆様を見ています。
 この戦場にいる限り、敵の8人以外からの襲撃はなく、皆様が防げさえすれば心配はありません。
 ただし、あくまで『このフィールドにいる限り』です。

 彼女だけを戦場の外に逃がすなどした場合、
 もしかしたら他の襲撃者に襲われたりしてしまう可能性もございます。
 くれぐれもご注意ください。

・『溶刃』三郎を倒す。
 その他の人物は三郎が倒れた時点で撤退を選びます。
 三郎を集中的に落とすもよし。この際、全員を捕縛するもよしです。

 なおこの条件は両方達成して成功とします。
 難しそうにも見えますが、ようは勝って守り切ればよいのです。

●フィールド
 月夜の路地。それぞれが1Tで各々の間合いを取れる程度の位置関係にあります。
 横幅が若干狭く、大体30m程度しかありません。
 ちゃんと陣形を組めば抜けられる可能性は低いですが、こちらも大きな展開が難しいです。

●エネミーデータ
・『溶刃』三郎
 鬼人種の男。非常に熱量の大きい刃を持つ日本刀を持ちます。
【炎】系のBSを持ち、至近距離戦闘の他、
 斬撃を飛ばして超遠距離範囲にいる1人を攻撃する技を用います。

ステータス傾向はこれといった特徴のない近接アタッカータイプ。

・『氷槍』平兵衛 『雷槍』夜叉郎
 平兵衛は【氷】系、夜叉郎は【電気】系のBSを持ちます。
 武器は両者ともに槍、中距離戦闘の他、
【スプラッシュ4】の連続突きを用います。

両面型のアタッカータイプ。物攻、神攻、命中、反応、防技がやや高め。回避やや低め。

・『隠刃』蓮歌
 忍び装束を纏っています。
 【毒】系のBSを所有し、様々な暗器による至近~遠距離攻撃を用います。
 また、夜闇に乗じて【防無】【災厄】【必中】の3つが乗った初見時奇襲効果を発揮します。
 なお、獣種の超反射神経など、非戦スキルで奇襲の看破が可能であれば
 ただの攻撃になるでしょう。

神秘アタッカー。神攻、命中、回避がやや高め。防技やや低め。

・『殺刃』穂乃
 忍び装束を纏っています。
 【連】【追撃】【必殺】を持ち、短刀による至近~近距離戦闘を行ないます。
 スキルには初見時奇襲効果があります。
 初見奇襲攻撃時に乗るBSは蓮歌と同一です。

物理アタッカー。物攻、命中、回避がやや高め。防技やや低め。

・『鏖刃』忠次郎
 長大な太刀を握る鬼人種の男です。
 【致命】【必殺】のBSを用います。至近~近距離攻撃を行ないます。
 単純戦闘能力は今回の8人中トップです。

ハイバランスアタッカー。物攻、神攻、命中、防技、抵抗が高め。
回避は好まないのか低め。

・『明刃』総志郎
 相対時点で刀を抜いてない線の細い青年です。
 【カウンター】【反】【連】主体の防技、回避が高いタイプです。

物理回避アタッカー。防技、回避に加え、物攻とCTも高め。

・『断刃』太郎
 大斧を握る大男です。
 【ブレイク】【邪道】を持ち、至近~中距離攻撃を行ないます。
 非常に大振りではありますが、その分、まともに当たった時の火力は強烈です。

両面ロマンアタッカー。でたらめな火力とやや高めのCT。
防技、回避、命中、反応はかなり低めでFBもかなり高いです。

●護衛対象データ
・結紅
 黒髪の女の子です。若干、大人びた口調と落ち着いた知性を持つ少女という雰囲気。
 鹿ノ子(p3p007279)さんの関係者です。
 戦闘能力は無し――と思われます。少なくとも今回は戦力に数えられません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はB-です。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、ここだけでは語られない何らかの思惑が潜んでいる模様です。

  • キョウジンの行末完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

彼岸会 空観(p3p007169)
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
庚(p3p007370)
宙狐
久留見 みるく(p3p007631)
月輪
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
イスナーン(p3p008498)
不可視の
瑞鬼(p3p008720)
幽世歩き
微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐

リプレイ


「この貴族騎士が護っている。だから、任せてほしい」
 ミッドナイトラヴァーを構えた『貴族騎士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)はそのまま引き金を引いた。
 巧みなコントロールで放たれた銃弾は、3人の敵に降り注いだ。
「かっかっか、遊びの時間じゃな」
 笑う『幽世歩き』瑞鬼(p3p008720)の足元よりあふれ出した幽世の空気が数人の敵を包み込みながら碧き花を咲かせた。
 ひどく寒いそこは、この世ならざる地。
 本来ならば誰もが知るべくもない往路のみの異界。
 限定的に呼び起こされた幽世が複数の敵を抑え込んでいく。
「幻術の類とは、なるほど。面白い……」
 その起点となった男――『鏖刃』忠次郎にはさほどの効果は無さそうだった。
 その一方で、その後ろにいた穂先をスパークさせる男は警戒を露にしている。
「ほーれ、鬼はこちらじゃぞ?」
「あぁ、見えている――」
 刹那、長大な太刀が真っすぐに瑞鬼に伸びた。
 それを合わせるように剣を走らせた。
 冷気が散り、霜が走り、触れ合った切っ先から剣圧が生じ、瑞鬼の身体に微かな傷を刻む。
「冥の連中と何度か殺し合い(やりあい)ましたが豊穣の忍者とは縁がありますね」
 その横、『真庭の諜報部員』イスナーン(p3p008498)は忍装束に身を包んだ女――姿が見えなくなった少女に意識を向ける。
 月明かりの下、真っすぐに女の消えた方向めがけてククリナイフに姿を変えた液体鋼を飛ばす。
 真っすぐに飛んだナイフが金属に弾かれる音が聞こえた頃、既にその身体は闇に紛れた女の姿を捉えていた。
 再度生成したナイフを握り締め、ついた運動力をそのままに斬りつける。
 居場所がばれたことに驚いた蓮歌はイスナーンから逃れるように跳躍してそれを躱す。
「――目障りですね」
 ぴたりと止まった女が、そのまま返すように放った二つの苦無を難なく躱し、構えを取る。
(事前に得た情報によれば、あの三郎という男が似たような事件で捕えられたという男のようですが……
 ただの看板娘がそんな人間に、それもこの人数に襲われる理由は何ですかね)
 情報網を駆使して得た情報を思考しながらも、眼前の女からは注意をそらさない。
「全力でいくッスよ! 『星の型「天涙流星」』!」
 刀を構える『溶刃』三郎にめがけて突貫した『黒犬短刃』鹿ノ子(p3p007279)は黒蝶を閃かせた。
 熱を持って淡く輝く三郎の剣を目印に振るわれた黒刃は真っすぐにその身にたたきつけられる。
(降り注ぐ数多の流星の如く! 天より落つる幾多の涙の如く! 何度でも何度でも!)
 それは黒き流星となり、一度目で三郎の剣を払いあげ、二度目でその右腕を斬り下ろし。
 三度目で真っすぐな刺突がその心臓付近を突き――終わりを見えぬと錯覚するほどの連撃に、相手の眼が見開かれた。
「なぜだ、何故邪魔をする! あの女が! あの女が私を貶めて苦しめたというのに!」
「分からないッスけど、女の子相手に8人で襲い掛かるなんて、許せないッス!」
 鹿ノ子の言葉に男が血走った眼で殺気を増していく。
「どうにも、穏やかではありませんね」
 先端開かれる中、『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)はつとめて冷静だった。
(犯行を見られた為の口封じならば兎も角、町娘一人相手に七人も)
「追々、聞かせて頂きましょう」
 真っすぐに見据えるは、大斧を持った大男――『断刃』太郎。
「がはははっ! お嬢ちゃんが生きてたらなぁ!」
 振り抜かれた振り抜きを軽く躱せば、その風圧だけでも敵の馬鹿力が分かろうという物。
 返すように踏み込み、放つ一閃は正中線を連続で貫いた。
 大きく開いた敵の胴部、真っすぐに『ソコ』を見る。
 刹那、一切の曇りなく放たれた一撃は、まるで見えているかの如く真っすぐに敵のがら空きな胴部に吸い込まれる。
 美しささえ感じられる一閃に、振り抜かれた直後、鮮血が飛沫を上げた。
(結紅様にもなにかご事情のあられるご様子。
 しかしながら、カノエにとってどちらが本当の正義かなど、どうでもよい事。
 今、カノエにとってより心地よい選択……
 つまりは知らない方よりは知り合いのご友人であるところの結紅さまにつくのは当然にございます)
 妖しき光を散らす『宙狐』庚(p3p007370)はその光から小さなトカゲたちを生みだした。
 夕日を溶かしたような黄色のソレらはすさまじい速度で『断刃』太郎の方へ走り出す。
「ささ、可愛いカノエの坊やたち。遊んであげてくださいましね」
 へばり付いたトカゲたちは太郎の身体を這いずり回っていく。
「ぐぅぬぅ……なんだこりゃあ!」
 体中を這いまわるトカゲを叩き落とそうとする敵を見ながら庚は笑む。
「御機嫌よう。刀を抜かないなんてずいぶん余裕なのね?」
「ええ、ごきげんよう。いえいえ、余裕なわけではありませんよ」
 月輪を構えた『月輪』久留見 みるく(p3p007631)の言葉に敵は静かに微笑む。
「ま──すぐに後悔する事になるけれど」
 踏み込みと共に放つは天への片道切符。
 どこまでも洗練された、真っすぐな一太刀。
 全霊を籠めた優美でさえある流麗な軌跡が一度、二度と総志郎の身体を裂き――
(――抜刀術!)
 返す刀がミルクの身体に浅くない傷を刻む。
「なるほど。これが神使、ですか。並みの手合いであれば今ので殺せたのですが」
「相当な手練のようね。どうしてあなた達のような実力者が辻斬りなんてする必要があるのかしら?
「私達も気乗りしませんが、依頼を受けた以上はやらねばならないので」
「あっそ。……ま、あなたたちが辻斬りだろうがなんだろうが、どうだっていいわね。
 ──ただ女の子を複数で襲うような連中を見逃すわけにはいかないだけ。覚悟しなさい?」
 月輪を構えなおす。白刃が淡く輝き、月光を映したかのように光を讃えていた。
「言われずとも、常にしていますよ」
(みんなが上手く自分の得意な相手と戦えれば楽になると思うんだけど……
 やっぱり、そううまくはいかないね)
 術式を起こし、一気に『殺刃』穂乃へ至近した『折れた忠剣』微睡 雷華(p3p009303)は身体を倒して、下から上へ、蹴りを放つ。
 風を纏い、スパークを起こして放たれた強烈な蹴打の速度は速く、穂乃の身体を微かに後ろへ飛ばす。
 それに合わせるように起こした術式で脚力を強化すると、跳躍、後ろへと回り込んで返すように蹴り飛ばした。
 対するように穂乃がその体勢から手に握る短刀を投擲する。
 雷華はそれを常人では不可能な体勢からくるりと跳んで躱し、相手を見た。
 間合いを近づけようとする穂乃に合わせるように体勢を整える。


 振り下ろされた大斧を大きく後ろに飛んで躱せば、破砕された地面が弾丸となって微かに無量に傷を付ける。
 お返しとばかりに打ち込んだ斬撃が、巨躯に傷を付ける。
「……生かすと言う事がこれ程までに難しいとは」
 相手の体を見れば、もうすぐでケリを付けられるのは分かっている。
 それでも油断して受けてしまえば致命傷を禁じ得ない。
 構えを取る無量の眼前を走る姿があった。
 振り抜かれた大斧がソレ――庚を大きく薙ぎ払う。
 真っ二つに切り開かれたその身体は蜃気楼かなにかのように歪んで消え――一瞬で肉薄。
 そのまま、庚はその柔らかく愛らしいぷにぷにの肉球を太郎に向けて叩きつける。
 その手は呪を持ち、そして死を齎さぬ慈悲の掌。
 受けた太郎がふらふらと後退するその瞬間、続けるように無量は跳んだ。
 真っすぐに、見据える瞳は決意に満ちていた。
 鮮やかに斬り払われた太刀筋は、慈悲を帯びて走る。
 撃ち込まれた太刀が太郎の腱を切り裂き、鳩尾を強かに打ち据えれば、その身がぐらりと倒れていった。
 厄刀『魔応』を構えたシューヴェルトは自分へと至近する男へ向けて斬り払う。
 誰よりも先手を撃てるその斬撃が、平兵衛の身体を切り裂いた直後、放たれたのは四度にも及ぶ冷気を纏う刺突。
 その最後の一つが想定よりも真っすぐに突きたった。
 イスナーンは死角から飛んできた苦無を持ち前の反射神経でくるりと躱し、着地と同時、爆ぜるように放たれた方角へと跳躍する。
 視線の先では蓮歌が忌々しそうにこちらを見ていた。再度ナイフを精製すると、思いっきり投擲する。
 放たれた2つのナイフは蒼く彩られながら尾を引いて真っすぐに放たれた。
 それに追いつくように蓮歌の眼前にたどり着けば、2つのナイフを躱した蓮歌目掛け、再度精製したナイフを叩き込む。
 その横を雷華は走った。
 一足飛びに蓮歌の背後へ飛び込み、そのまま刈り取るように放った蹴りは、相手に躱される。
 着地と共に術式を起こし、飛ぶようにもう一度はなった蹴りが強かに蓮歌の背中を撃ち抜いた。
 咄嗟の衝撃に蓮歌の眼が見開かれ、背後を見る。
 着地した雷華はその意識が自分に向けられていることを確かめると、こちらに向かってきているもう一人に視線を向けた。
 その視界に見えたのは、パンドラの輝き。
 向かってきた穂乃の短刀とナイフで撃ち合い、激しく金属音をかち鳴らしたまま、爆ぜるように仲間の方へ走り抜ける。
 振り下ろされる槍に割り込むように、ナイフで庇い、その勢いのままに前へ。
 ダメ押しとばかりに平兵衛を蹴り飛ばす。
 熱を帯びた太刀が真っすぐに振り下ろされる。
 殆ど当たる以外にあり得ない太刀筋。
 しかし、鹿ノ子はそれを殆どあり得ない動きで捌き――前へ踏み込んだ。
 その目は未来視にさえ等しい眼力を帯びていた。
「僕には当たらないッス!」
 握りしめた黒蝶をもう一度叩きつける。
 一振り一振りが相手の急所を暴きだし、強烈な斬撃となって刻まれていく。
「お望みでしょうし、今度はこちらが行きましょうか」
 総志郎が呟くと同時、閃光が奔った。
 真っすぐに放たれた斬撃が連続してみるくの身体に傷を刻んでいく。
 それをそのまま返すように、みるくは思いっきり踏み込んだ。
 月明かりが収束するようにして放つは外三光。
 刻まれた傷も、無理矢理な動きによる反動も無視して、叩き込んだ一太刀が、真っすぐに総志郎の身体を切り裂いた。
 庚は命を削り合う二人の武人の真っただ中に走り抜ける。
 放つは黄緑色に鮮やかに輝く不可思議な炎。
 瞬く閃光が月夜の路地を照らしだす。
 瑞鬼は刀に魔力を籠めていた。
「そら、おぬしもこっちにこんか」
 ぶんと軽く振るわれた刀より散るは幽世の雫。
 紫を生む水の雫は弾丸となって身体を痺れさせていた槍使いめがけて放たれ、その身体に滴り、内側から穿つ。
 血反吐を吐いた男の視線が瑞鬼へと集中する。
 打ち込まれる斬撃が真っすぐに入る。
 上段より振り下ろされた刃を雪月花で合わせ、刃の反りを利用して受け流してみせる。
「ほれ、当たっておらぬぞ」
 からかい、笑う瑞鬼に相手も笑っていた。


 戦いはイレギュラーズの劣勢に傾いていた。
 立地上、味方の布陣が万全であれば抜けられることは早々ない。
 だが、それを十全に機能させられるほどのヘイトコントロールがなされなかった。
 例えば、誰か一人が護衛対象を庇い、その間に1人ずつ削っていければ。
 あるいは、分断の方法自体、もっと詰めてさえいればよかっただろう。
 だが、どんな作戦を目指すにしろ、連携が取れてなければ中途半端にならざるを得ない。
「ふむ……なるほど、な。おい――やれ」
 瑞鬼が相対していた忠次郎が片眉を吊り上げてそう言えば、興味を失ったように剣を降ろす。
「言われずとも――」
 直後に平兵衛の声がした。
「なんじゃ? まさか……!」
「思ったより動きが鈍かったな、神使。残念だ。
 十全が出せればこうもなるまいが」
 背後――悲鳴が聞こえた。
 庇いに――いけない。
 行こうと動くよりも前に、既に決まっていた。

「やめて!」
 結紅の声が路地に響き渡る。
「けふっ……いっ……あ……これ……血……」
 震える手で傷を受けた場所を触れた結紅が声を上げ、ふらふらと後退して背中を白壁につけた。
「結紅さん!」
「あは、あはは、あはハハハ――血、血が、血が出てる――あははは!」
 白壁から体を起こして、溜息を一つ。
「もう……嫌になるわね……この服、気に入ってたのよ?」
 流れ出る血を、まるでかすり傷の如く振舞う結紅は、槍を構える平兵衛に近づいていく。
「私が折角、耐えてたのに、わざわざ暴き立ててくれた彼もだけど――」
 呟く結紅の声が一瞬で重厚な殺気を纏い――平兵衛の槍を握り、大きく引っ張った。
 直後――骨が折れる音と、白壁が砕け散る炸裂音が響いた。
「さよなら……ごめんなさいね」
 白壁に突っ込んだ平兵衛の顔を引っこ抜いて、業火が燃えあがる。
 たった今、人を焼き払った女が――怪物が、ぐるりとイレギュラーズを見た。
「――あぁぁ――人でいたかったのに」
 ちりちりと炎を引き、女が泣いたように見えた。
「なるほど、魔性か狂人の類であったか。巻き込まれてはたまらん。総志郎、帰るぞ」
 『鏖刃』忠次郎と『明刃』総志郎が踵を返す。
 その一方で、結紅は幽鬼のようにゆらゆらと三郎へ近づき、業火を纏うその腕で首をわしづかみにして――
「お前がいらないことをしなければ、私は人間でいられたのに――!!」
 ――きゅっと絞った。
 掻きむしり、暴れる三郎の身体から力が抜けてだらりと下がれば、女はソレをぽい、と放り捨てた。
「じゃあね、鹿ノ子ちゃん」
 そのままくるり、鹿ノ子を見て、結紅が泣きそうな声を上げ、とぼとぼとどこかへ消えていく。
 誰も武器を握れない。
 いや、たとえ握ったとしても、今の疲弊した状態で挑めば殺されかねない。
 見逃されるのなら、見逃されるしかない。
 それだけの力が、彼女の身体からにじみ出ていた。

 戦場には倒れ伏した大男と、焼き切れた男、崩れた白壁のみ。
 白壁に飛んでいった男の身体(したい)は、隠密共の気配は、もうなかった。

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

久留見 みるく(p3p007631)[重傷]
月輪
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)[重傷]
天下無双の貴族騎士
瑞鬼(p3p008720)[重傷]
幽世歩き

あとがき

お疲れさまでした、イレギュラーズ。
残念ですが、このような結果となりました。
判定理由はリプレイの中に記されております。
結紅が何者となったのか、その辺りは次に彼女と出会う時に明かされるでしょう。

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