PandoraPartyProject

シナリオ詳細

貴方の為のスイーツを

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●店長の憂鬱
「うーん……困ったわねぇ」
「どうしました店長?」
 ここはとある異世界にあるカフェ【ぷらむ】
 そこで一人の女性がボールペンを額に押し当てながら唸っていた。
 手元のノートにはびっしりとメモとイラストが描きこまれている。それを覗き込んだウエイトレスがああ、と一つ頷いた。
「そっか、もうすぐバレンタインデーですもんね」
「そうなのよ、だから新作のスイーツを考えていたんだけど」
 ころんとボールペンを転がし、女性は猫のイラストが描かれたマグカップへ手を伸ばす。
 珈琲の良い香りを楽しみ、ほろ苦い液体を喉の奥に流し込んで一息ついた。
 彼女の名前はカンロ。ぷらむの店長にしてお菓子作りの名人である。
 席から立ち上がり壁にかけられたカレンダーを捲ると二月十四日の日付に赤いハートマークが記されていた。
「駄目ね……まるでアイデアが浮かばないわ。ねぇ、シェリーは何か思いつかない?」
「店長に思いつかないのに私に言われても……」
 話を振られたウエイトレスのシェリーは苦笑いを零す。
 バレンタインデー、それは大切な人に贈り物をする一年に一度のビッグイベントだ。
 スイーツをメインに扱うカフェとして見過ごせるわけはなく、毎年新作のスイーツをぷらむでも売り出している。ところがどうしたわけか今回に限っていい案が降りてこない。
 ぱらぱらとノートを捲ってみるが、いまいちピンとこないのだ。
「……ああもう! こうしてても埒が明かないわ!」
 ぱんっと勢いよくノートを閉じたカンロに若干驚きつつもシェリーはどうするのかと尋ねた。
「こういう時はとにかく手を動かすのよ! それがいいに決まっているわ!」
「えっ……?」
「お客さんをイメージしたスイーツをたくさん作るの。材料はたっぷりあるからね!」
「えっ、ええーー!?」
 嵐の予感にシェリーの叫びが店内へと木霊した。

●貴方の為のスイーツを
「よう、また面白い依頼が来てるぜ」
 境界案内人である朧がひらひらとチラシを持ってきた。
 チラシにはピンクとホワイトのストライプにレースをあしらった模様、美味しそうなスイーツのイラストが印刷されている。
「ここのカフェでお客さんをイメージしたスイーツを作るそうなんだが。お前さん達にはそこに行ってほしいのさ」
 材料はかなり豊富で店主の腕前からあらゆるスイーツの製造が可能らしい。
「ま、いつもみたいに気楽にいってきなね。悪い気はしないだろ?」
 そういって朧はあなた方を送り出した。

NMコメント

 バレンタインデーにはまだ早いですがスイーツがめっちゃ食べたいです。
 初めましての方は初めまして。そうでない方は今回もよろしくお願いします。白です。
 今回は皆様をイメージしたスイーツを店主が作ってくれます。
 このラリーは一章完結予定ですが何度参加して頂いても大丈夫です。お気軽にお越しくださいませ。
 複数人の参加の方は同行者様のお名前かタグをお願い致します。
※記載がない場合、こちらでお一人様同士で合わせての描写となる事がございます。嫌だと言う方は絡みNGの記載をお願い致します。

●やれる事
 スイーツを作ってもらう。
 キャラクターをイメージした和菓子、洋菓子、中華風。あらゆるお菓子をオーダーすることが可能です。
 作ってもらったお菓子はその場で食べるもよし、持って帰るのもよしです。
 サンプルプレイングを記しておきますが、全部お任せ!! の場合キャラシを拝見して妄想を捏ねます。
 NGがある際はその旨もよろしくお願いします。

●NPC
 カンロ
 今回皆様のスイーツを作ってくれる店長です。
 どんなスイーツでも作ることが出来ます。
 
 シェリー
 ウエイトレスです。大好物はカンロのスイーツです。
 今回はスイーツ造りを手伝ったり配膳したりしてます。

 朧
 ご指名があればホイホイ着いていきます。
 ちなみに甘い物は結構好きらしいですが生クリームドーンとかはちょっと苦手らしいです。
 胃もたれするらしいです。

●舞台
 異世界にあるカフェ【ぷらむ】です。
 中は白を基調とした清潔感のある店内で陽の光がぽかぽかとさしこみま。
 今は冬なので雪だるまを模した飾りなんかもあります。
 
●サンプルプレイング
 見た目:黒ゴマをまぶしたお饅頭・中にあんこ入ってる
 味:甘さは控えめだがしっとりとしていていくらでも食べられる感じ
「そうさね……ちょっと脂っこいモンは最近キツくてなぁ……甘さ控えめの饅頭とかできるかい。いや、トシのせいとかじゃねぇんだぜ。本当に」


 素敵な思い出の一助となれれば幸いです。
 それでは行ってらっしゃい!

  • 貴方の為のスイーツを完了
  • NM名
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月13日 01時00分
  • 章数1章
  • 総採用数14人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

「ぶはははっ、人物イメージたぁなかなかに面白そうな話じゃねぇか。うっし、そんじゃ折角だし何か手伝うぜ! 料理は比較的出来る方だしな!」
「助かるわ! それにしてもその格好……」
「ん? この格好? いつもの調理の時の格好だが……」
 左胸に愛しい人のプリントを施した清潔な真白の調理服に身を包んだゴリョウ・クートンをカンロはじっと見つめた。
「閃いたわ! 貴方イメージのお菓子は大福にしましょう!」
「え、俺? オークイメージって売れるのかそれ?」
「この白とまんまるなお腹! 大福にそっくりじゃない!」
「失礼ですよ店長!」
「ぶはははっ! 構わねぇよ!」
 すみませんと謝り倒すシェリーに気にしていないと手を振り、ゴリョウはカンロを手伝う。
 大福はシンプルに餅と餡子で作る事にした。
 チョコレートと一緒に食べる客が多いだろうと考え、甘さを抑えその代わりに餅の比率を多くしてもっちりとした触感を増やす。
 餅粉を塗せば白雪の様で美しく、さらにべたつきにくくなった。
「意外と餡子しかないみたいな薄皮大福より、バランス取れた大福の方が好まれるもんですよ」
「そうね! そして最後に仕上げとして……」
 チョコペンで調理服に見えるように襟の線を入れ、四肢には小さくカットしたチョコレートをちょこりと付ける。特徴的な鼻は余った生地をくっつけて盛り付ける。
 なんとも可愛らしい料理人オークの大福がお行儀良く皿の上に乗っかっていた。

成否

成功


第1章 第2節

耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う

「ええと、わたしすいーつは大好きなのですが……生憎お菓子文化に疎いため是非とも見目から味までお任せしたいです」
 豪奢な白無垢に身を包み、すこし気恥ずかしそうにお願いをする澄恋に任せておいてとカンロは胸を叩いた。
「こんな可愛いお嫁さんのお菓子を作れるなんて最高ね!」
「まあ! 可愛いお嫁さんだなんて!」
 無邪気に喜ぶ澄恋に目を細めつつカンロは調理に取り掛かる。
 メレンゲを練り込んだふわふわの生地にホイップクリームをふんだんにあしらい、ルビーの様に輝く瞳をイメージした苺を乗せる。白無垢の内側から覗く差し色の赤はベリーソースを散らした。
 澄恋をイメージしたスイーツは一口サイズの甘酸っぱい恋心を表したいショートケーキ。
 ちょっとカロリーは高めだが、だいえっとはいつでも出来るし、今日は寒い→震える→運動になるので実質かろりーぜろなのだ。問題ない。
 キラキラと輝くショートケーキに、ぱあっと澄恋の顔が明るくなった。
「こんなに素敵なすいーつ……! 食べるのが勿体無いくらい。帰ってお写真を撮りまくりますわ! カンロ様、シェリー様。素敵なすいーつをありがとうございます!」
「それだけ喜んでもらえたら嬉しいわ! そうだこれも持って帰ってちょうだい」
「これは何ですか?」
「そのスイーツのレシピ。良かったら旦那さんに作ってあげてね」
 ウインクと共に渡された一枚のメモとスイーツを澄恋は大層大事に持って帰ったそうな。

成否

成功


第1章 第3節

アーシタ(p3p009509)

「おいしいものが沢山あるお店、素敵ね。
おいしい味、いい匂い、そして、きっと見た目も大事なのね」
 色鮮やかなスイーツで飾られ、甘い匂いのする店内をぐるりと見渡してアーシタは興味深そうに呟いた。力を失った代わりに手に入れたこの殻の知性はアーシタの生に彩を与え、今こうして彼女の瞳を輝かせている。美味しい、と言うのを此方に来てから初めて知ったのだが、アーシタにとってコレはなかなか手放し難い思考であった。
「あら、お客さんはあまりスイーツは召し上がらないのかしら?」
「そうね、少なくとも自分自身のスイーツというのは食べたことがないわ」
「あら、じゃあ張り切って作らなきゃね。そうね、あなたの目とっても綺麗な透き通ったグリーンだからゼリーにしましょうか」
 そう言って差し出されたのは透き通りぷるぷると震えるグリーンのゼリー。中にはタピオカを仕込んでモチモチとした食感でアクセントを付けた。さっぱりとしたゼリーの足元にはまるで白いレースシューズの様に生クリームが控えている。
 銀のスプーンでゼリーを崩し生クリームと絡めて口の中へ迎え入れれば、生クリームの濃厚な甘さとゼリーの爽やかさが絡み、歯応えのあるタピオカがモチモチとした食感の違いを楽しませてくれる。
「ええ、ええ。昔の私にそっくりで嬉しいわ。私もこんなにおいしかったらよかったんだけれど」
「昔の私?」
 小首を傾げたシェリーにアーシタはにこりと微笑んだ。

成否

成功


第1章 第4節

灰羽 裕里(p3p009520)
期怠の新人

「俺、今日、レシピ、持って来た」
「本当? 助かるわぁ」
 任せて、と親指をぐっと立てた灰羽 裕里はエプロンを借りてキッチンへと立った。冷蔵庫を指さしてカンロを振り返る。
「食材、使って、いい?」
「ええ、構わないわよ」
ありがとうと呟き、裕里は卵を一つと砂糖、食パンを二枚取り出した。ボウルに卵と砂糖を入れ混ぜていく。砂糖は粘り気が出るくらいまで割と多めに入れる。
「フレンチトーストですか?」
「ううん、似てるけど、違う」
 手元を覗き込んできたシェリーに緩く首を振り、裕理は食パンの耳を落とし生地をできる限り薄くスライスした。丁寧に卵液に絡めていくと白かった食パンが黄色い衣を纏った。
「一枚だと、卵が、余り気味、だから、食パンニ枚」
「ああ、それはあるわね……」
 十分絡めたらフライパンに油を薄く引き弱火から中火で丁寧にじっくり焼き上げる。砂糖が入っている故に強火にするとすぐ焦げてしまうのだ。
「食パン、が、硬くなって、きたら、完成」
「ああ、ラスクね! 美味しそうじゃない!」
 メモを取り終えたカンロは早速習ったレシピ通りに手際よく調理を行う。通常であればたった一度見ただけのレシピを完璧に再現するのは困難だが……。
 出来上がったラスクを裕理が一口齧ると香ばしい香りとカリッとした歯応えが。
「流石、プロ。厚さも、火加減も、バッチリ」
「素敵な先生のおかげね?」
 悪戯っ子の様な微笑みに裕理はもう一度親指を立てた。

成否

成功


第1章 第5節

郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール

「え、なにそれ、お菓子食べるだけでいいのこれ? お仕事なのこれ、労働なのこれ、許されるのこれ?」
依頼の概要に目を通した郷田 京は朧へと確認した。
「おう、そういう依頼だぜ。ちゃんと報酬も用意して」
「でもそういうのアタシ大好き、だから細かいことは捨ておこう! 行ってきまーす!」
「……おう、行ってらっしゃい」
 ひらひらと手を振る朧に見送られながら、京はぷらむへとやってきた。
 可愛らしい店内に悪くないと満足気に頷き、京はレシピを纏めていたカンロへと声をかける。
「お菓子食べる仕事なんだよね。とりあえず持ってきてよ店長!」
「お任せってことね? 好き嫌いはない?」
「大丈夫! 強いて言うなら全部好きだから!」
「ふふ、正直なお嬢さんだこと。カロリーは控えめにしておく?」
「カロリーとかもどーでもいいよー、アタシ要らないお肉つかない体質だからー!」
「まぁ羨ましい」
 それにカロリーなんか気にして今を楽しめない方が大問題だと胸を張ればカンロはそれもそうねと釣られた様に笑った。
 元気溌溂、豪快と言った京に用意されたのはオレンジチョコケーキ。深い黒は彼女の髪と目から、鮮やかなオレンジの爽やかな香りは彼女の細かいことを気にしない元気なイメージから。仕上げには粉砂糖をまぶしてデコレーションを施した。
「いっただきまーす!」
「はい、召し上がれ」
大きく口を開けてケーキへ齧り付いた京をカンロは楽しそうに見守っていた。

成否

成功


第1章 第6節

ラビア・マーレ・ラクテア(p3p008448)
海を漂う蒼白星

「えっと、ばれんたいん? というのは? 好きな人にお菓子をあげる日なんですか?」
「ええ、そうよ。お嬢さんは誰にあげるの?」
 ラビア・マーレ・ラクテアは元気よく答えた。
「朧さんです! いつもありがとうって気持ちを込めてあげたいです!」
「素敵ね。その人も喜ぶわよ」
「私をモデルにしたお菓子……私を……青い、お菓子ですかね……」
 先程と打って変わって眉間に皺を寄せ、不安そうな瞳でラビアはカンロを見上げた。
「大丈夫よ、少し待ってて」
 落ち着かせる様に声を掛け、数十分後にカンロは小さな包みを持って来た。
「さ、渡して来てあげなさいな」
「ありがとうございます!」


「おかえり。菓子は美味かったかい?」
「朧さんに渡したくて持って帰ってきました!」
 俺に? と思いつつ朧は差し出された包みを丁寧な手つきで解いていった。
 蒼く透き通った飴が流し込まれ、その中にヒトデや貝を模したスイーツパーツやアザランを散りばめて星の形で閉じ込めたクッキーが入っていた。
「へぇ、ステンドグラスクッキーか」
「綺麗ですねぇ……」
「そういや、お前さんのイメージの菓子なんだよな?」
「はい! こんなに綺麗にしてくださるなんて!」
「ありがとよ、頂くとすらぁな」
 それにしても。
(自分のイメージの菓子を食べて欲しいなんて、大胆なお人だねぇ)
 ラビアにそんなつもりは無いのだろうけど。俺以外にはやらない様に言い聞かせねばと朧はクッキーを齧った。

成否

成功


第1章 第7節

コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ

「おかしと、なんかあったかい飲み物ください、甘いのがいいな。あと、あれ見たい飲み物に絵かいてあるやつ、らてあーと……?」
 シェリーに席に案内されたコゼットは小首を傾げてリクエスト。
「ふふ、じゃあ可愛いの描いてあげるわね」
「あと、それなり、おなかすいてるから、おなかにたまるのがいいな。なんかウサギ風な感じでおまかせ……?」
 任せてと言わんばかりにウインクを決めたカンロの背中を眺めた後、コゼットはぐぐっと身体を伸ばした。脚をぶらつかせて注文の品を待っていると、お待たせしましたとシェリーの澄んだ声が聞こえてきた。
 運ばれてきたのは生クリームと苺をふんだんに使い、頂点にバニラアイスの顔ととホワイトチョコのうさ耳をつけた可愛らしいうさぎが頭にミントの葉を乗せてちょこんと座っているミニパフェであった。
 セットドリンクは表面にうさぎの顔が描かれたラテアート。
「カフェで食事なんて、なんだかおしゃれな大人の感じ」
 準備しておいたaPhoneで写真を撮った後、パフェスプーンで掬って一口。ひんやりとした滑らかな甘さを楽しんでからラテアートに口をつけると今度は優しく温かい甘さがふわりと広がった。
「ふぁ……おなかいっぱいで、おひさまもポカポカだし、なんだか眠くなってくる」
 欠伸が眠気を誘い、思わず目を擦る。
 そうしているうちにこっくりこっくり舟を漕ぎ出して。
 すぅすぅと小さな寝息が聞こえてくるまであと――。

成否

成功


第1章 第8節

甘露寺 結衣(p3p008114)

「依頼した方の人物像を感じて、お菓子を作る……面白そうですね。私もと思いまして、その……お願いいたします」
 実家が有名な老舗の和菓子店なこともあり、依頼内容に興味をそそられた甘露寺 結衣は渋柿染めの作務衣を着て、ぷらむのキッチン内にいた。しゃんと背筋を伸ばしたその手にはしっかりとメモ帳が準備されており、結衣の真面目さを強調している。
「ふふ、なんか緊張しちゃうわね」
 口にした言葉とは裏腹に手慣れた様子でカンロは調理の準備を進める。結衣の柳染の髪の色と渋柿染の橙色をイメージカラーとし、主役に選んだのは瑞々しい柿であった。それを切って円を描く様に焼き上げておいた掌サイズのタルト生地へと乗せていく。仕上げにミントの葉を彩りとして添えれば柿のミニタルトの感性である。
「どうかしら? 結構可愛いと思うんだけど」
「まあ……初めての体験です、私をイメージしたお菓子が出来るのは嬉しいですね」
 両手の指を突き合わせそっとはにかむ結衣にカンロは満足げに頷いた。シェリーから小箱を貰った結衣は薄紙を敷き、形を崩さぬ様にそっとタルトを包み込んだ。
「家で温かいお茶と一緒にいただきます。カンロ様、シェリー様、ありがとう存じます」
 このお菓子にはどのお茶が合うだろう。日本茶はもちろん紅茶もいいかもしれない。中国系のお茶もきっと合うはずだ。
 少し先のティータイムに想いを馳せながら、結衣は帰路へと着いた。

成否

成功


第1章 第9節

天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に

 朧から話を聞いた天之空・ミーナはぷらむを訪れていた。至る所から漂う甘い香りにすんすんと鼻を鳴らす。きゅうと腹から聞こえた音には無視をして、ミーナはカンロへと声を掛けた。

「なーんか面白そうな事やってんな」
「あら、いらっしゃい」
「ようはオーダーメイドっつーか世界に一つだけのものを作ってくれるって事だろ?」
「ええ、そうよ。和菓子も洋菓子もなんでもござれ。全部お任せしてもらっても構わないわ」
 ふむ、とミーナは考える。これといって食べたいスイーツを決めてはいなかった為基本おまかせでもいいのだが。
「そうだな……私、結構日本で暮らしてた時期長いからなぁ。和菓子で何かって感じで頼むわ」
 やはり親しみやすい味が良いとミーナは暫く考えた後に和菓子をリクエストした。
「あ、ここで喰いたいし持ち帰りもしたいんだがいいかな?」
「ええ、構わないわ。好きなだけゆっくりしていってね」
 さてミーナに似合う菓子は何だろうか。真紅の瞳を引き立てる少し赤みがかかった黒髪。背中から生える一対の翼。カンロは生地を取り出し暫くこね回していたが、やがてミーナの前に差し出されたのは瑞々しい苺をまるっと一粒使ったチョコレート大福であった。ちょこんと赤い翼に見立てたフリーズドライの苺をフレークがちょこりと乗せられている。
 見た目は悪くないが、味は如何程か。
 その結果は羽を嬉しそうにパタつかせて大福を持って帰ったミーナだけが知っている。

成否

成功


第1章 第10節

ニゼル=プラウ(p3p006774)
知らないこといっぱい

「あのー、こんにちは。こちらでお菓子を作ってもらえるって聞いたんですけど……」
 狐耳を揺らしながらニゼル=プラウはぷらむのドアを開けた。
 店内には見たこともないお菓子が飾られており、ニゼルは小さく感嘆の溜息を漏らす。
「こんにちは。どんなお菓子がいいかしら」
「えっと、僕今までクッキーとかしか食べたことなくて、お菓子のことは詳しくなくてよく分からないんですが、最近どこかでクマさんの顔みたいなの見かけたことあるんです。なので僕みたいな狐っぽいのを作ってもらえたら嬉しいです」
「狐のお菓子かあ。お好みは和菓子かしら、洋菓子かしら」
「わがし? ようがし?? えーと……」
 初めて聞いた単語に思わずハテナを浮かべ、三秒ほど固まったのちにニゼルはあわあわと答えた。
「あっ、どんなのでも! 甘いのなら!」
 一生懸命な様子にカンロはくすりと微笑みお任せをと手に馴染んだ調理器具へと手を伸ばす。
 カップにスポンジを敷いてその上にマロンクリームをクルクルと細く回し山を作る。黄色い栗を天辺に乗せて切ったチョコレートで耳、目、髭、脚を作り、ちょこんと乗せれば狐のモンブランの完成だ。
「わあ、おいしそう!あの、持って帰っていいですか? 一緒に住んでるおばあちゃんにも見せたくて」
「ええ、勿論よ」
「おばあちゃんきっと「ええもん作ってもうたなあ」って言いますよ。ふふ」
 早く見せたいなあ、とニゼルは目の前の狐を見つめていた。

成否

成功


第1章 第11節

アシェン・ディチェット(p3p008621)
玩具の輪舞

「自分がモチーフのお菓子を作っていただけるだなんて、とても素敵ね!」
 お出かけ用の真っ白なワンピースに身を包んだアシェン・ディチェットは案内された席についた。スカートの裾がふわりと揺れて、どんなものが好きかと聞かれたアシェンはううんと細い指を口元に当てて考えた後に答える。
「折角でしたら見た目が可愛らしいものが良いのだわ。お茶の席に添えられたお菓子って目でも楽しませてくれるの。お味はもちろん甘いのが良いかしら、少しだけ苦みのあるティーと一緒に味わうと、どちらもより美味しくなるのだわ」
 儚げな白銀の乙女に微笑まれてはカンロの腕もなるというもので。待っていてねお姫様とキッチンへ一旦引いた彼女の後ろ姿を見届け、邪魔にならぬ様にアシェンは店内を闊歩する。
 動物の形にくり抜かれたクッキーに瑞々しい果実で飾られたタルトタタン。ベリーソースを回しかけた一口サイズのフォンダンショコラ。陳列棚に丁寧に並べられた宝石の様に輝くそれらに目を輝かせるアシェンの肩をカンロはとんとんと叩いた。
「出来たわよ、お姫様」
 差し出されたのはお茶会にピッタリの白いメレンゲで着飾ったカラフルなマカロン達。淡いパステルカラーのお菓子たちにアシェンはまぁと目を細めた。早速持って帰って今日のお茶会のメインにしよう。と、その前に。
「本当に嬉しいのだわ、素敵なお菓子をありがとう!」
 スカートの裾を摘んで淑女の礼を。

成否

成功


第1章 第12節

武器商人(p3p001107)
闇之雲

「最近、我(アタシ)もお菓子作りに凝ってるから色々食べて勉強したいんだ。ひとついただけるかい?」
 冷たい月を思わせる長い銀の髪を揺らしながら、武器商人はぷらむを訪れた。この世の物とは思えぬ妖しさにシェリーがぱちくりと瞬くのと対照的にカンロは気さくに武器商人へと声をかける。
「ええ、勿論。あなたは……紫がよく似合うわね」
 イメージしやすくて助かるわと、カンロは絞り袋に紅芋のペーストを注いで口金からタルト生地の上へと絞り出す。器用に手を動かし描いたヒラヒラとした紫色のペーストからは素材由来のほのかに甘い香りが漂っている。ヒラヒラとした可愛らしくも美しいそれは彼の身を守る浄瑠璃の世界を想起させる。
「はい、お待たせしました。紅芋のタルトです、ってね」
「ああ、これは美味そうだね」
 差し出されたスイーツは知り合いの菓子職人の作るものとは趣向は違えど、武器商人のお眼鏡に叶ったようだ。フォークを刺し、口に迎え入れるとほっくりした芋の甘さがくどくなく、上品に香り舌の上で綻んでいく。タルト生地のサクサクとした歯応えも楽しい。
「これは小鳥に作った事が無いや。美味しいから今度作ってみよう。ありがとぉ、お嬢さん」
 素敵なお菓子の対価には硬貨とお菓子によく合う紅茶の葉を。武器商人自らが選んだ品物に間違いはあり得ない。
「美味しかったよぉ、ヒヒヒヒヒ」
 前髪の奥から覗く紫音の瞳は嬉しそうに細められていた。

成否

成功


第1章 第13節

歩行機 RPT-0R コア番号71F(p3p008664)
二足歩行型機械生命
感染体 RPT-0R 識別名“長蟲”(p3p008665)
駆け回る半生命

「いらっしゃいませ」
 カランコロン来店を告げるベルが鳴り、振り返ったシェリーは「何名様ですか?」というフレーズが紡げなかった。目の目にいる二人、いや二機のお客様にシェリーは一瞬フリーズしたが直ぐに頭を振って気を取り直した。何処から食べるんだろう、という様な素朴な疑問は置いておくとして。
 そんなシェリーの胸中などいざ知らず二機は初めて訪れたカフェに興味津々の様であった。


「すいーつ? すいーつ は 何? たべもの…… 甘味? であるならば 果実? 違う? 食べてみたい!」
 ぴょんぴょんと跳ねて幼子の様に無邪気に燥いでいるのは感染体 RPT-0R 識別名“長蟲”。ネオンサインの様なパープルが彼の無機質なレンズへ映り込み彩っている。
「スイーツ、人を幸せにする、可能性アリとのデータ」
 まるで気心の知れた友人に相槌を打つ様にウィンと駆動音を鳴らしながら歩行機 RPT-0R コア番号71Fは長蟲と補色になるグリーンの蛍光色を点滅させた。
 二機はやれ、実際の統計はどうだとか起源はどうだとか検索してきたであろう事を楽しげに話している。
「えーっと……お菓子、どうします?」
「お任せ! 出来れば、酸味!」
「あら、酸っぱいのが好きなの?」
 奥から一連のやりとりを見ていたカンロが長蟲に声を掛けた。声を掛けられた長蟲は嬉しそうに跳ね同時にぶんぶんと長い首を振る。
「酸味! 前、 口にした! 怯んだ、何故? 分からない! 故に、 酸味、 知りたい!」
「酸味 調べた 好き嫌い 別れる 味」
 実は長蟲は以前に檸檬を口にしたことがある。その時に損傷した訳でもないのに怯んだ事を記憶していた。それを捕捉する様に71Fが首を縦に振る。
「あら、じゃあ今日は美味しい酸っぱいを教えてあげるわね」
 長蟲の頭部と思われる部分を一撫でしてからカンロは調理に取り掛かる。それをじっと71Fは見つめていた。混沌肯定のお陰で“食”を知った食物は彼のお気に入りの観察対象の一つだ。彼自身は飲食を必要としてはいないが友人である長蟲の為に同行した。
 とはいえ、そうそうお菓子作りの工程などお目にかかれる物では無いので71Fはカンロの手元に夢中であった。
「もう少しで出来るからね」
 夕飯を楽しみにする幼児に話しかける様な穏やか声色でカンロは71Fと長蟲に微笑む。
 甘酸っぱい爽やかな香りが広がりシェリーと遊んでいた長蟲の元へスイーツ運ばれてくる。
 グレープとマスカットが冷たいグラスの中に詰め込まれ添えられた生クリームには酸味がほどよく効いたミックスベリーのソースが幾重にも回し掛けられている。不思議そうに同じタイミングで首を傾げる二機を微笑ましく思いながらカンロは二機に説明をしてやった。
「グレープのミニパフェよ、お友達も一緒のスイーツね」
 この日71Fのメモリには友人がスイーツで幸せになったと言うデータが記録された。

成否

成功

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