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シナリオ詳細

キョウコツ&キツネの冒険。或いは、我らの身体を取り戻せ…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鎧武者の奮闘
 紅色の鎧を纏った大男。
 その手に握るは1本の刀。銘を“肉喰い”と言う。
 ところは深緑。
 とある遺跡を進む彼は、大岩に追い立てられていた。
 そもそもからして可笑しかったのだ。
『やっぱ、こんなところに来るんじゃなかったかぁ?』
 などと、肩のうえで響く童女の声。
 それを発したのは青白い人魂であった。
「来いと言ったのはお主であろうが」
 一閃。
 鎧武者は眼前を塞ぐ巨大な甲虫を斬り捨てた。
 ざらり、と斬られた甲虫が砂と化して崩れ去る。
「本当に、この遺跡にあるのだろうな? 我らの身を苛む呪いを解く魔道具とやらは?」
『んー? たぶん? きっと? あるはず。知らんけど』
「……適当な!」
 頭上から降る鋼の矢を、武者は刀で斬り落とす。
 背後から迫る大岩も、眼前を埋める甲虫も、頭上から降る鋼の矢も。
 飛来する蝙蝠も、何もかも遺跡によって生み出された罠(トラップ)だ。
 遺跡の奥にまで一度は踏み込んだものの、武者と人魂はそれ以上の進行を諦め引き返しているのだ。
 理由は簡単。
 遺跡の奥に向かうにつれて罠の数は増え、1人では解除できないものも見つけた。
 武者と人魂のコンビでは、遺跡の奥まで突破することは到底叶わなかったのである。
『あ、ちょっと、あぶねぇよん!』
「分かっておるわ。囀る以外に出来ぬのなら黙っておれ!」
 縦横に刀を振り回し、迫る甲虫と降り注ぐ矢を斬って捨てる。
 斬って、斬って、斬って……そして、ついに数の暴力に押し負けた。
 甲虫に押しつぶされ、鎧武者が地面を転がる。
「……い、つつ」
 外れた兜の下から現れたそれは、肉の無い骸骨の顔だった。

●解呪の秘宝
「と、そのようなことがあってな。我らだけでは踏破がきつく、ぜひ手伝いをお願いしたい」
『遺跡はほぼ1本道なんだけどねぇ。なかなかどうして、面倒な仕掛けも多いのよ』
 そう言ったのは鎧武者“キョウコツ”と“キツネ”と名乗る人魂だった。
「永遠と追いかけてくる大岩に、降り注ぐ【猛毒】の塗られた矢、砂の甲虫に飲まれれば【泥沼】と、なかなかに面倒な仕掛けばかりでな」
 直線距離にして500~600メートルほどの遺跡である。
 緩い下り坂を下りていくと、最奥に辿り着くような造りになっていた。
 最奥部付近のみ、道は2つに分かれているというが……。
「どうも両方の門番を一定時間内に倒さねば、最奥への扉は開かんようでな。片方には物理攻撃を、もう片方には神秘攻撃を行う蟲がいる」
 それは道中に現れる甲虫に似た姿をしているとキョウコツは言った。
 違いというのなら、カブトムシのような角が生えていることぐらいだという。
「その奥に、我らの探している宝があると思うのだが……」
『ちなみに、その宝ってのは私たちの身体を取り戻すのに使う宝のことね』
 キョウコツとキツネは流れの武芸者だった。
 ある日、キョウコツが手に入れた妖刀“肉喰い”によって、キョウコツは肉を、キツネは身体そのものを失ってしまったらしい。
 失われた身体を取り戻すため、以来数年に渡り旅を続け、やっとのことで見つけた手掛かりが今回の遺跡の存在であった。
「門番のうち片方とは戦ってみたのだが、どうにも【必殺】や【封印】といった効果を伴う攻撃を行って来るようであるな」
『まぁ、その片方でさえ私ら2人だけじゃ倒しきれなかったんだけどねぇ』
「まぁ、キツネはこのような有様である故……実質、我1人で戦ったのだが」
 力及ばず逃げ帰って来たというわけだ。
「通路に灯は置いて来た。どうだ? 手を貸してはくれんか?」
『呪いが解けるかどうか、確証はないけどねぇ』
 なんて、言って。
 キョウコツとキツネは、拝むように頭を下げる。

GMコメント

●ミッション
遺跡最奥に眠る魔道具の回収


●ターゲット
・門番甲虫×2
 ゴーレムのような存在。
 体長3メートルほどの巨大甲虫。カブトムシに似た角を備えている。
 片方は【物無】、もう片方は【神無】を備えている。
 右の通路には【物無】の甲虫。物中単に大ダメージ、必殺、封印の攻撃を行う。
 左の通路には【神無】の甲虫。神中範に中ダメージ、必殺、封印の攻撃を行う。


・砂の甲虫×多数
 床や壁から湧き出てくる砂で出来た甲虫。
 体は脆く、崩れやすい。
 攻撃により【泥沼】を付与する。
 

・キョウコツ&キツネ
 鎧武者(中身は骸骨)と人魂の旅人。
 妖刀の呪いで現在のような姿になっているらしい。
 呪いを解き、身体を取り戻すために旅を続けている。
 キョウコツは生真面目な性格。
 キツネはどこか適当かつ軽薄な性格をしている。

妖刀“肉喰い”:物至単に大ダメージ
 キョウコツによる斬撃。

妖術“狐火”:神遠単に中ダメージ、暗闇
 青白い炎による攻撃。キツネの技。


●フィールド
 深緑の地にある遺跡。
 全長5~600メートルほど。
 緩やかな傾斜になっている。
 侵入すると背後から大岩が転がって追いかけてくる。壊しても、しばらくするとまたどこかから現れる。
 400メートルほど進んだ先で道は2つに分かれており、左右の通路に控えた門番甲虫を討伐することで最奥の部屋へ辿り着ける。
 門番甲虫は数分で復活するため、ある程度タイミングを合わせて討伐する必要がある。
 時々天井から【猛毒】が塗られた鋼の矢が降って来るので気を付けてほしい。
 通路は広めなので、横に4人ぐらいは並べる。

●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
 

  • キョウコツ&キツネの冒険。或いは、我らの身体を取り戻せ…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月11日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
腐れ縁
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人
微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐
袋小路・窮鼠(p3p009397)
座右の銘は下克上

リプレイ

●進めトラップ・ブレイカーズ
 8人+鎧を着こんだ骸骨が1体、人魂が1つ。
 地下へと下る傾斜を駆ける一行の背後に地響きを立てて大岩が迫る。
「壊れても新しいのが出てくるなら速度を緩めたりすれば余裕が出来る。何とかならないかな?」
 『黒武護』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)がそう告げた。弛んだ腹は、ふるんと揺れる。
 一行が駆けているのは遺跡の内部だ。そこに仕掛けられた罠の一つである大岩は、破壊しても次から次へと新しいものが発生するという特徴を持つ。
 逐一破壊していては、幾ら時間があっても足りないが……ならば破壊しなければ良いのだと、ムスティスラーフは考えだのだ。
「なら、俺の防技で受け止めよう」
「ならば俺も突き合おう。“そもそも罠が効かない”というのは罠を仕掛けた奴に対する最高の意趣返しだと思わないか?」
 ムスティスラーフの提案を受け、踵を返したのは2人。
 氷で自身を覆った『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)と、魔力障壁を展開した 『病魔を通さぬ翼十字』ハロルド(p3p004465)だ。
 巨岩の前に身を晒し、2人はそれを受け止める。
 サイズの纏う氷が砕け、破片を散らすが、おかげで氷の速度が緩んだ。
 その隙に、と一行は遺跡の奥へと駆けていく。
「この先には矢の仕掛けが無数にある。気を付けられよ」
 そう告げたのは、依頼人でもある鎧武者・キョウコツだ。鎧の中身は、肉を失った骨の身体という一風変わった姿の武士だが、何でも妖刀の呪いによってそのような姿になっているらしい。
「それなら僕が力技で解決するよ。キョウコツ君とキツネ君も、早く元に戻らないと辛いだろうからね。この先の魔道具が呪いを解く助けになればいいけど……」
『洗礼名『プィリアム』』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)の周囲で風が渦巻く。展開された魔法陣より放たれるは空気の爆弾。
『その辺り一帯に罠があるよ!』
 空気弾がある地点に至ったところで、人魂がそう叫ぶ。その人魂の名はキツネ。キョウコツと同じく、妖刀の呪いを受けた冒険者である。
 ウィリアムの放った風弾が壁に激突。壁面を砕き、仕掛けられていた罠を強制的に作動させた。降り注ぐ無数の鉄の矢は、誰もいない地面に深く突き刺さる。
 罠の連鎖により、キツネの示した一帯はあっという間に無数の矢で埋め尽くされた。それを見て『座右の銘は下克上』袋小路・窮鼠(p3p009397)は「あぁ」と呟きを零す。
「ギフトがいい仕事をしてくれたぜ。あの矢ぁ、上手く使えばよ、大岩を止めておけるんじゃねぇか?」
 にぃ、と口元に笑みを浮かべて窮鼠は告げた。
「はっはっは。遺跡探索なんてまるで洋画で大変結構! 楽しいじゃねぇか!」
 自身の策を実行に移すべく、窮鼠は駆け出す。
「まって。私も行くよ。罠がまだ残っているかも……気付いたら、すぐに知らせるからね」
 『折れた忠剣』微睡 雷華(p3p009303)が窮鼠の後を追いかけた。
 頭頂部の狐耳をしきりに動かし、周囲の異変に気を配る。超反射神経を持つ雷華なら、矢の罠を回避することも難しくはないだろう。
 
「遺跡ネェ、最近は領地運営で旅に出てなかったから楽しみだヨ」
「対処することが多いわねぇ……あぁ、ほらあの甲虫なんて、邪魔ったらないわ」
 どこか呑気な長身ハーモニア、『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)は周囲を見回し、くすりと笑う。一方で『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)は長い前髪に隠れた瞳で、壁の一部を睨み据えていた。
 ずるり、と壁の一部が溶けてそれは姿を現した。
 乾いた砂色をした巨大な甲虫。それも遺跡の罠のひとつである。
 その数は1体、2体と次々に増える。
 けれど、しかし……。
 直後に響く轟音は、アルメリアの放った緑雷によるものだ。
 空気の爆ぜる音が響いて、地面を、壁を雷が走る。
「本当に危険な遺跡ね」
 四方へ向けて拡散された緑雷が、甲虫たちの身体を貫通。感電し、動きを止めた甲虫の額に、1本の矢が深く刺さった。
「危険だろうと依頼はきちんとこなすともサ、おじいちゃん頑張るネ」
 そう呟いたジュルナットは、第二の矢を弓に番える。
 百数十年にわたって磨き続けた弓の技は、そう簡単に狙った的を外しはしない。
 速く、正確に。
 アルメリアの援護を受けながら、ジュルナットは次々に甲虫を仕留めていった。

●砕け門番甲虫
 大量の矢を腕に抱えて、窮鼠と雷華が引き返す。
 大岩を支えるサイズとハロルドの背後に迫る甲虫は、ムスティスラーフの光刃により真っ二つに両断された。
 ざらり、と砂になって崩れる甲虫。
 地面を蠢くその砂が、ムスティスラーフの身体を覆う。
「わっ、う、動きにくいけど……他の人よりかは遅くならないから大丈夫!」
 動作の鈍ったムスティスラーフに、新たな甲虫が襲い掛かった。それを見て取り、窮鼠と雷華は拾い集めた矢を投げ捨てて、攻勢に出る。
「全体的な火力の配分が難しそうなんで、状況に応じて敵と脳みそ切り替えねぇとな」
「なら、まずはわたしが……上手く協力して対処していこう」
 姿勢を低くした雷華が腕を振るう。
 暗闇を切り裂き、投擲されるは1本の短刀。たっぷりと毒の塗られたそれは、スコンと軽い音を鳴らして甲虫の頭部に深く刺さった。
 短刀の軌道を追うように窮鼠が駆ける。
 その腕にはどこか禍々しい気配を放つ布が巻きつけられていた。
 怒号と共に振り下ろされた窮鼠の拳が、甲虫の頭部へ直撃。刺さっていた短刀を、その根元まで押し込んだ。
「おい、袋小路! 何か策があるんじゃねぇのか!? 無理なら、せいぜい力業で突破してやるが……」
「っと、そうだった。ちょっと待っててくれよ……まずは、大岩を浮かしてくれ!」
 ハロルドの怒声が響く中、窮鼠は慌てて捨てた矢を再度拾いなおす。
 そんな彼の元へ襲いかかる甲虫を、キツネの火炎や雷華のナイフが斬り捨てた。
「大岩を浮かせばよいのだな。では、我に任せよ!」
 窮鼠の隣に並んだキョウコツが、腰に差した妖刀“肉喰い”を引き抜いた。彼とキツネの身体を奪った呪われし刀だが、その強度と切れ味は本物だ。呪いさえなければ、まさしく名刀……身を失う苦痛を許容できるのなら、呪われたままでも一級品の武器である。
「せぇやっ!!」
 気合一閃。
 強く踏み込んでからの斬撃が、大岩を深い疵を刻んだ。
「やっぱ、見た感じ同族のようだな……友好的にはとても感じないから処理した方が良さそうだけど」
 “肉喰い”を一瞥し、サイズは呟く。
 彼の本性は呪いの大鎌だ。妖刀“肉喰い”とは同じカテゴリにある存在である。
 もっとも、サイズと異なり“肉喰い”は喋ることも、人の姿を取ることも不可能なようだが。
「っし、支えててくれ。にしても、今日は餓者髑髏封布がカタカタとうるせぇな。肉喰いって同族がいるからか?」
 ともすると、好き勝手に暴れそうになる腕を無理やり抑え込み、窮鼠は大岩の下へと滑り込んだ。ハロルドとサイズ、キョウコツが大岩を支えている僅かな隙に、その真下へ次々と矢を突き立てた。
 地面に刺した鋼の矢で、大岩を固定しようという心算なのだ。
 その試みはどうやら成功したらしい。しっかとその場に大岩が固定されたのを確認し、ハロルドとサイズ、キョウコツは己の得物を手にして踵を返す。
「“肉喰い”の呪いをどうにかしたいが……ま、魔道具を回収してからだな」
「おう。砂の甲虫は脆いらしいからな。ブン殴って、先に進もうぜ」
 通路の先から続々と迫る甲虫を見据え、2人は一瞬視線を交わした。
 サイズは大鎌を、ハロルドは2振りの剣を手にして甲虫の群れへと斬り込んでいく。

 矢の罠や甲虫たちを蹴散らしながら、一行は遺跡を奥へ奥へと進んでいく。
 しばらくすると進路は左右2つに分かれた。
「この先に門番甲虫が控えておる。事前の組み分け通りで良いのだな?」
『キョウコツが役立たずになっちゃうね!』
「やかましい。我は壁役に専念してやるわ。我らの問題に巻き込んだうえ、戦闘も何も任せっきりでは立つ瀬が無くなる故な」
 短いやり取りの後、一行は二手に分かれて左右の道へ。
 右の通路に控える【物理無効】の甲虫は、ムスティスラーフ、ウィリアム、アルメリア、窮鼠、キョウコツ、キツネ。
 左の通路に控える【神秘無効】の門番甲虫はサイズ、ハロルド、ジュルナット、雷華が受け持つ布陣である。

 突撃槍に似た角と、砂甲虫よりひと際巨大なその体躯。
 6本の脚で地面を踏みしめ、鋭く太い角で地面を激しく叩く。その身に纏う赤いオーラが、神秘攻撃を無効化するのであろう。
「おじいちゃんはパワー型じゃないしサ、後ろから来る砂の甲虫を相手に立ち回っていくヨ」
 門番甲虫へ立ち向かっていく仲間を見送り、ジュルナットは通路の途中で後ろを向いた。
 構えた弓に数本の矢を纏めて番え、弦をピンと引き絞る。
 薄暗がりの中、ザリザリという乾いた音が響いていた。砂甲虫の群れが地面や壁を擦る音だろう。
「ハイセンスがあるから遠くてもくっきりぱっちりだけど、数も多いしばら撒きで対処するヨ」
 引き絞った弦から指を離す。
 動作は最小。
 けれど、結果は最大に。
 解き放たれた無数の矢が、続けざまに甲虫たちの頭部を射貫く。
 
 地面を這うように身を低くして、雷華は通路を疾駆する。
 その手には1振りのナイフ。
 銀の髪が風に舞う。
 その疾駆を真正面から受け止めるべく、甲虫は角を地面に付けて前にでた。鋭い角の先端が、雷華の額を深く抉る……その寸前。
「罠の類はまだあるかもしれないから……警戒は怠らずに行こう」
 地面を蹴って、雷華は跳んだ。
 角を避け、その頭部へと接近。ナイフを額に突き刺すと同時に、数度の蹴りを一瞬のうちに叩き込む。
 甲虫の身体が低く沈んだ。
 太い角が地面を強打し、床板を砕く。
 甲虫の姿勢が崩れた隙を突き、ハロルドは一気に加速し、その角へ向け2振りの剣を叩きつけた。
「不本意ではあるが“ゴリラ”というクラスに就いている。力で負けるつもりはないぞ」
 甲虫を押さえつけるハロルドの頭上を、サイズが跳んだ。
 高く振り上げた大鎌を、力任せにその頭部へと振り下ろす。
 サイズの鎌が、甲虫を貫くその刹那……。
 甲虫の身より拡散された魔力の波動が、3人の身体を飲み込んだ。

 門番甲虫が太い角で地面を叩く。
 飛び散る瓦礫や衝撃を、キョウコツはその身を張って受け止めた。
 そんな彼の背後では、キツネが上機嫌に跳ねまわる。
『ないすぅ! 頑丈な鎧で良かったね!』
「減らず口を叩いておらんで、狐火を撃て!」
『あいあーい』
 キョウコツの指示を受けたキツネが撃ち出す青い炎が、甲虫の頭部に着弾。その頭部を青い火炎で包み込んだ。
「なかなかいい仕事をするじゃねぇのよ!」
 そう叫ぶ窮鼠の手には1枚の式符。
 放られたそれは、即座に白い鴉へ変じ甲虫へ向け飛翔した。
 まるで弾丸のように、甲虫の硬い外殻のうち特に脆い部分を狙って鴉は突撃。
 罅の入った外殻へ向け、ウィリアムが雷の槍を投擲した。
「アルメリア、今のうちに回復を!」
 ウィリアムの放った槍は、狙い違わず甲虫の身を深く抉る。砕けた外殻が零れ落ち、その身に紫電が迸った。
 甲虫の身が硬直したその隙に、アルメリアは回復術の詠唱へ。
 手にした魔導書を中心に、吹き荒れる淡い燐光が、仲間たちの傷を癒す。
「さっさと終わらせないと私の魔力も尽きちゃう、急ぎましょ……って、え!?」
 回復を終えたアルメリアは、押し寄せる砂甲虫に対応すべく踵を返した。
 その瞬間、彼女の足元から湧き上がるように1体の砂甲虫が現れた。アルメリアの細い足首に、砂甲虫は鋭い顎で喰らい付く。
 姿勢を崩したアルメリアの身体を砂が覆った隙を突き、さらに数体の砂甲虫が通路の奥から駆け寄って来る。

 がむしゃらに振り回される硬角が、ムスティスラーフの腹を打つ。
 その衝撃は、彼の内臓にまで深いダメージを与えたのだろう。銀の髭は、吐いた鮮血で朱に濡れた。
「ムスティスラーフ殿、後退を!」
 キョウコツが撤退を呼びかけるが、ムスティスラーフは首を横に振り否と示した。
 痣だらけになりながらも、彼はその角にしがみつき、大口を開け空気を吸い込む。
「いや、ここでいいよ。中途半端な位置にいるよりは飛び込んだ方が対処しやすいだろうからね」
 刹那。
 吐き出された新緑色の閃光が、門番甲虫の身を飲み込んだ。
 砕けた外殻が地面に散らばる。散ったそれは砂と化して崩れていく。
「向こうはそろそろ終わりそうだけど……こっちも問題なさそうかな。それなら後は向こう側とタイミングを合わせてトドメだね」
 別ルートを進む雷華と連絡を取りながら、ウィリアムは門番甲虫へと視線を向ける。
直後、ウィリアムの放った紫電が、アルメリアに纏わる甲虫を一掃した。
「いけるかい?」
「怪我はひどいけど、なんとか……【アナイアレイト】を浴びせてやるわ!」
 気丈にもそう叫びはしたものの、アルメリアの怪我の具合はひどかった。
 甲虫に食い破られたのか、アルメリアの腹部からは滂沱と鮮血が零れている。

●キョウコツとキツネ
 深緑色の稲妻が、甲虫の身を撃ち抜いた。
 それを放ったのはアルメリアだ。出血のせいか、もとより白い肌はひと際血の気が失せて見える。
「“緑雷の魔女”の名は伊達じゃないのよ! ……えほっ」
 口から血の塊を吐き出して、アルメリアは不適に笑う。
 血に濡れながら、しかして彼女はどこか得意げな表情を浮かべているようだ。
「畳みかけよう。あぁ……そちらもトドメを」
 前の言葉は仲間たちへ。後の言葉は別ルートの雷華へ向けられたものだ。
 ウィリアムの放つ不可視の空気弾が甲虫の頭部へと着弾。【大むっち砲】の直撃によりひび割れていた角を砕いた。
 痛みによるものか、甲虫は声にならない雄たけびを上げ、頭をがむしゃらに振り回す。
 けれど、しかし……。
「ぬぅ、止まれ!」
「キョウコツ君、気合い入れていくよ!」
 ムスティスラーフとキョウコツにより、甲虫はその場に抑え込まれる。
 ギシ、と骨の軋む音がした。
 ムスティスラーフの腕には血管が浮かび上がっている。巨大な甲虫を抑え込むのは、なかなかに負担が大きいようだ。
 だが、しかし……。
「もうひと働きしてもらうぜ!」
『おっけー、任せて!』
 ムスティスラーフの奮闘を、無駄にする窮鼠ではなかった。
 彼の放った白い鴉と、キツネの放った青い炎が同時に甲虫へと着弾。その頭部を粉砕し、ついに息の根を止めたのだった。

 打たれ、挑み、それを何度も繰り返し雷華は地面に横たわる。
 甲虫の意識はハロルドに集中しているが、範囲攻撃までは防ぎようがない。しかし、まだ戦える。意識もある。腕も動く。
 ならば、それで十分だ。
 キョウコツたちは無事に甲虫を下したらしい。
 で、あるならば……。
「うん……あと少し、もう少し、頑張るよ」
 投擲された短刀が、まっすぐに甲虫の脚を穿った。深く斬られた脚でその巨体を支えることは叶わずに、脚が1本へし折れる。
 ぐらついた甲虫の角を抱えたハロルドは、渾身の力でもって駆け出した。
「壁際に追い詰めて身動き取れなくしてやる!  壁役は俺に任せて、トドメを刺しな!」
 地響きと共に、天井が崩れ砂埃が降り注いだ。
 遺跡の最深部へと向かう扉にその身を押し付けられたまま、甲虫は5本の脚をばたつかせるが……。
「俺たちは魔道具の回収に来たんだ。キミとの闘いは、言わば前哨戦なんだよ」
 がら空きになったその腹部に、サイズの鎌が突き刺さり。
 一瞬、甲虫は激しく身体を震わせた後、砂塵と化して崩れて散った。

 遺跡最深部に安置されていたのは、小さな1枚の鏡であった。
「今のうちに取って来なヨ。後方の警戒はおじいちゃんに任せておいてサ」
 そう言ってジュルナットはキョウコツの肩を叩いた。
 弓に矢を番えたまま後方へと視線を向けるジュルナット。その隣に、ハロルドとウィリアムが並ぶ。
「うむ……皆、かたじけない」
『さぁて、後はこれで呪いが解ければいいんだけどね』
 1歩ずつ、キョウコツとキツネは前へと進む。
 そんな彼らの様子を見ながらサイズは自前の鍛冶道具を取り出した。
 
 黒い髪を短く刈った偉丈夫と、幼さを残す顔立ちの少女。
 それが鏡に映った2人の姿。
 しかし、当の本体はといえば相も変わらず骸骨と人魂のままである。
「ぬぅ、これは……」
『真実の姿を映す鏡ってところ? でも……』
 落胆した様子の2人に向け、サイズはそっと手を差し出した。
「ちょっと“肉喰い”を貸してもらってもいいか?」
「あ……うむ。だが……」
 どこかぎこちない動作で、キョウコツは刀をサイズへ渡す。
 瞬間、2人の手の間で紫電が弾けた。
「俺でも駄目か……はっきり言って練達にいるシュペルという天才じゃないと不可能に近いな。いや、触れないとなると……」
 見れば、サイズの手は黒く焼け爛れている。
 妖刀“肉喰い”は持ち主以外に触れることを許さないのだろう。
「やはりか。だが、希望は見えた」
『そうね。また、別の魔道具を探しましょ』
 呪いは解けず。
 けれど、希望は僅かに見えた。
 キョウコツとキツネの冒険は、きっとまだまだ続くのだろう。

成否

成功

MVP

微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐

状態異常

ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)[重傷]
腐れ縁
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)[重傷]
緑雷の魔女
微睡 雷華(p3p009303)[重傷]
雷刃白狐

あとがき

お疲れさまでした。
無事に遺跡を踏破し、魔道具を獲得できました。
キョウコツ&キツネの呪いは解けませんでしたが、依頼は見事成功です。
2人の冒険はまだまだ続きます。
きっとどこかで、また逢う機会もあるかもしれません。
この度はご参加、ありがとうございました。

また機会があれば、別の依頼でお会いしましょう。

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