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シナリオ詳細

開拓者たちの宴

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●1から始まる
 男たちはただっぴろい土地を見渡す。
 目の前に広がっているのは、開墾されていない荒れた土地だ。
「1から、いや、0からのスタートだな」
 男たちは、様々な事情があって、この土地にやってきた。やるべきことは多いようだ。
「やっていこうって決めたのはいいけど、こんな荒れ果てた土地とはなあ」
「いいじゃねぇか、農民も。芸術的な作物を作ってやろうぜ!」
「おう!」
 そう意気込んでみたはいいものの、どうするかは見当がつかなかった。
 何人かは農具を握った経験のあるものもいるのではあるが、畑に関しては素人同然だ。
「さて、最初はどうするか。小石でも拾って……」
「イノシシだ!」
「イノシシが出たぞーーー!」
 作った柵を突っ切って、イノシシが飛び込んできた。
 前途多難のようである。

●イノシシ、イノシシ、そしてイノシシ
「やれやれ、なんとかなったな……」
「腐っても元傭兵がいるんだぞ、なんとかなるだろ、イノシシくらい」
 そうは言ったが、畑を争う獣と戦うのはまた勝手が違う。イノシシを倒したのは良いものの、それだけで1日かかってしまった。結構小さめのやつだったというのに、である。逃げ回るのを追いかけるだけで必死だった。
 今日は畑は諦めて、そのイノシシで乾杯している。
「うーん、まずくはないが、美味しくないな……」
「やっぱ、土地がやせてんのかね」
「罠とかしかけたほうがいいのかね」
 ほったて小屋で肉を焼いて食べていると、別の仲間が、血相を抱えて戻ってきた。
「おい、また、また出た!」
「ああ? 今忙しいんだよ」
「そうじゃねえ、こいつよりでかい!」
「でかいっつっても……」
 ものすごい勢いで、小屋の壁がはじけ飛んだ。たしかに、でかい。さっきよりでかい。
「う、うわああーーー!!!」
 農民たちは、散り散りに逃げ出した。
「ああ、そうか、あの小さいのは」
「こいつに追われてロクに食べてなかったんだな……」

●我々には手に負えません
「バルツァーレク領郊外の農民たちから、害獣退治の依頼なのです!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、ぱたぱたと羽を羽ばたかせた。
「結構大きめのやつなのです。これは手に負えないと、ローレットに依頼を出したのです。イノシシを退治する、これが依頼なのです!」
ユーリカは少し考えるようなそぶりを見せる。
「正直、報酬は微々たるものですけど、イノシシは好きにして良いそうなので……最後はバーベキュー……なんてのもいいかもしれないです」

GMコメント

●解説
目標:イノシシの退治

●暴れイノシシたち
 農民たちは気が付いていませんが、倒すべきイノシシは3匹います。

 イノシシ(中)…大きいが、普通のイノシシより少し大きい程度。
 大イノシシ(大)…かなり大きい。熊並。
 極大イノシシ(極大)…とてつもなく大きい。馬車並。

 サイズの小さいものから出現し、そいつを倒すと、上のサイズのものが出現します。基本的に、畑近くの林に潜んでいます。
 痕跡(足跡、爪痕)等が残っているので、丁寧に調べれば存在を把握するのもさほど難しくはありません。

●農民たち
『<幻想蜂起>正義にしがみつく者』に出現した考えを変えたレジスタンスの何人かです(※とくに参照する必要はありません。参考程度にどうぞ!)。
 元傭兵のバーグという人物が取りまとめています。
 基本的に、農民たちはイレギュラーズからの指示がなければ、せっせと小屋を直したり、大人しくしています。
 放っておいてもフレーバー以上の危険が及ぶことはありませんが、逆にあてになる戦力ではありません(単純に人手のみ必要な作業であれば加わることもできます)。

●イノシシの始末
 依頼を円満に解決すると、せっかくだからイノシシを食べていかないかと誘われます。誘いに乗っても、乗らなくても構いません。
 農民たちはそれほど料理に長けていないので、出てくる料理は塩で焼いた肉とパン、素朴なスープ、といったものになります。野菜はまだ出来てはいないので、町から買ってきたものです。
 手伝うか、自分たちで作成するならもっと良いものができるかもしれません。
 肉はオープニングで農民たちが食べていたものとは違って、結構おいしいようです。

  • 開拓者たちの宴完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年05月31日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
アトリ・メンダシウム・ケラスス(p3p001096)
ロビ・シートン(p3p001967)
狼王の末裔
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ガドル・ゴル・ガルドルバ(p3p002241)
本能を生きる漢
西園寺 姫乃(p3p005034)
想拳

リプレイ

●イノシシ、出現
「畑を開く予定の土地に現れる巨大イノシシを倒すのが今回の仕事か」
「……この所は少々後味の悪い出来事が多かったしな。こういう後腐れのない依頼は気が楽で良い」
「同感だな」
『任侠』亘理 義弘(p3p000398)と『本能を生きる漢』ガドル・ゴル・ガルドルバ(p3p002241)。任侠と軍人、戦いの世界で生き抜いてきた屈強な二人が肩を並べる姿はなかなかに壮観だ。
「さて、猪が出てくるってことは……あぁ、お腹に収まる獲物を狩る、盛大な狩りが始まるってところだが……」
『狼王の末裔』ロビ・シートン(p3p001967) の灰色の毛並みが、恐怖からではなく、獲物を追い詰める様子を浮かべて波打った。
「獲物か、いいな。手抜かりなく狩りを行い、ご馳走にありつかせてもらうとするか!」
 大物の気配にも怯まず、ガドルは豪快に笑ってみせる。

「バーグ達、頑張ってるじゃん……! 私も力になってあげたい!」
『特異運命座標』西園寺 姫乃(p3p005034) は、レジスタンスの暴動の水面下での鎮圧に一役買ったイレギュラーズの一人だ。
 彼らがまっとうに生きようとする姿を見ると思わず嬉しくなる。
「こんな荒れた土地でもしっかりと生き抜いているなんて、動物というのはなかなかに逞しいものだね」
『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917) は、未開の地を面白そうに眺めている。
 人間も、獣も、生き物というのはたくましい。
「ぶはははっ! この足跡からすると、結構大きそうだ。なかなか食いでがありそうだな。とっつかまえたら、何を作るとするか……」
「ネギや白菜、調味料に生姜、味噌、醤油か。……野菜関係はともかく、味噌や醤油は見つかるかね」
『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081) は、義弘ら仲間たちと調理方法についての談義に花を咲かせながら、ざっと様子を見て回る。
「あ、味噌ならあるよ」
「お、そりゃいい」
「用意がいいな」
 姫乃の持っていた調味料に、知り合いの姿を思い出したのか、ゴリョウが懐かしそうな顔を浮かべる。
「他は、出来る限り手配しておくね」
 メートヒェンが請け負った。
「俺の生まれ育った街も田舎だったがよ、流石にイノシシは出なかったぜ」
 義弘はしみじみとつぶやく。
「彼らからすれば我々こそが侵入者なのだろうけど、向かってくる以上は反撃される覚悟もしておいて貰わないとね」
「そうだな。人助けと思って相手するぜ」

●下調べ
 傍らで晩餐の準備を着々と進めつつ。
 イレギュラーズたちは、まず罠を仕掛けることにした。
『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は、身をかがめ、畑の周りを注意深く見て回る。壊された柵の周辺、暴れ回った現場。大きな痕跡はいくらでもあるが……。
「なるほど、ここだな……」
 四つ足の獣の目線は低い。同じ目線に立つことで、わずかな痕跡も見逃すことなく見つけることができる。
「やっぱり複数おいでなすったようで、こりゃ油断ならねぇな」
 壊された柵に引っかかった獣の毛をつかみ取る。
 注意深く見ないとわからないが、色が違う。別々の個体だ。
 奥に潜んだ別の個体は、どうにも注意深いようだ。

「色々あってな。イレギュラーズのことは信頼してるんだ。今日の連中もなかなか腕っぷしが強そうだな」
 バーグは、姫乃たちに嬉しそうに現状を語った。
 開拓民の一人がアトリ・メンダシウム・ケラスス(p3p001096)の肩をぽんと叩く。
「ええと、一応……僕は女の子だよ」
「!? 悪い!」
 顔を真っ赤にして謝る相手の反応に、少し慣れない。ギフトのせいで、どんな格好をしていても『普通の男性』に見られてしまう。
「ねえ、イノシシって一匹だった?」
「そうだなあ……何匹かいたんだろうなあ……」
 姫乃の言葉に、開拓民は思い出すように首をひねる。
「ほかに異常はないか?」
「どうもこの辺の獣が殺気立ってるような気がするな。俺たちが来たからかともおもったんだが」
「どっちの方向からいつも来るの?」
「あっちだ、林の方らしいな」
「林か……。罠を仕掛けるから、この辺の地形について詳しく教えてもらえる?」
 アトリは開拓民から話を聞き、的確に情報を集めていく。

●仕掛ける
「仕掛けるならこの辺だな。……通り道だ。ほかにもいくつかある」
 キドーが獣道を指し示す。
「よくこんな跡を見つけられたね」
 メートヒェンが感心したように言うと、キドーはひらひらと手の平を振る。
「まあ、本職だからな。罠は仕掛ける。あとはお前ら任せたぜ!」
「ああ、俺たちは前線でカラダ張らせて貰うぜ」
 義弘が鍛え上げられた拳を握る。
「どうにも、超大物がいるというか、野生動物の世界では虎やライオンですら手が出せないレベルの超大物の気がしてきた……」
 ロビの動物知識と超嗅覚は、的確に手ごわい獲物の姿を描いていた。

「スコップとかないか? それと、手が空いてたら手伝ってくれ」
 ガドルの呼びかけに答え、農民たちが道具を手に集まってきた。事前に集めた情報をもとに、罠を設置する場所を指定していく。
 簡単な落とし穴だ。
 ガドルの的確な指示により、一気に罠が築かれていく。
 農民たちが5人がかりでようやく掘り終えるころには、イレギュラーズたちがその倍はこしらえているといったありさまだが、同じ作業をしていると何となく仲が深まるようでもある。
「よしよし、んじゃ、とりもちを置くか」
 ゴリョウの取り出したとりもちは、一見すると普通のとりもちに見えるが、改良された特殊なものだ。
 一度落ちたら、這い出すのも困難だろう。
「小さいのはこれでなんとかなってくれればいいけど」
 アトリが思慮深げに考え込む。
「ちゃんと通るか分からないし……障害物を置いて、進行方向誘導できればいいかな。それと、できればこっちに追い立てるようにしてもらえれば」
「わかった」
 開拓民は慎重に頷いた。

 畑のあちこちに、落とし穴が出来上がった。
「へへ、俺たちもやればでき……うわっ!」
 はしゃいだ開拓民の一人が、落とし穴に落っこちる。
「おっと、大丈夫か」
 ゴリョウが苦笑しながらも手を伸ばしてやる。
「なんだこれ、とれねえ!」
「あー、落ち着け落ち着け。酒をかけりゃあとれるからよ」
 とりあえず威力は間違いなしのようだ。
「……こっちが罠にかからねぇように、打ち合わせしとかなきゃな」
 義弘の言葉に、キドーが頷く。
「だな。戦闘中だと注意もまばらだ。猪の代わりに引っかかったら馬鹿みてえだからよ!」
「私たちは平気そうだけど、一応、目印もつけておくか?」
 一応、農民たちも通る道だ。
 メートヒェンが印をつけていく。

●狩りの時間
 獲物を迎える準備は整った。
 ロビはじ、と身を伏せ、茂みに隠れながら様子を見ている。キドーとゴリョウが、畑を見張る。
 まだ、辺りは静かだが……。
「来やがったみたいだな!」
 キドーがいち早く物音に気が付いた。
「獲物が来るぞ!!」
 ゴリョウの大音声に答えるように、一頭のイノシシが現れた。
 農民たちはへっぴり腰ながら、イノシシをイレギュラーズらの元へと追い立てている。
「構えろ!」
 ロビは仲間たちと合流すると地面を蹴り、獲物に向きなおった。
「まぁ、まずは、普通に狩れるレベルのやつか」
「小手調べってところかね」
 ガドルが肩を鳴らす。
「へっ、甘いな!」
 突っ込んできたイノシシの攻撃を、キドーは難なくかわした。
 イノシシは怒り狂い、地面を蹴る。
「おっと、お前さんの相手はこっちだ」
 ディフェンドオーダーで防御力を固めたゴリョウが、名乗り向上をあげて立ちふさがった。突進には結構な威力があるはずだが、ゴリョウはイノシシを押さえつけ、その場から一歩も動かない。
「おらっ!」
 義弘が前線に躍り出ると、背水の構えで立ちふさがる。容赦なく振るわれるクラッシュホーンが、イノシシの顎を打ち砕く。
 鈍い音がした。
 あっけないほど一撃だった。
「こちらがお前らの住処入っちまったのかもしれねぇがよ、それでもここで生活していく人が居るんだ。済まねえが同情はしねえぞ」
 義弘は言う。
 瀕死ではあるがまだ息のあるイノシシに、ロビが的確にトドメを刺す。
「とりあえず、軽く腹ごしらえできる分、確保だ……まだいる」
 勝利ムードに酔いそうになった農民たちを、ロビがとどめる。

●第二陣、来る
「来るぞ!」
 ロビが警告を発した後、ほどなくして地響きが鳴り響く。熊のような大きさのイノシシだ。だが、イレギュラーズたちはすでにその存在を知っていた。
 手ごわい敵の姿だが、ただのイノシシ。怯むことはない。
「はっ!」
 メートヒェンが割り込み、農民たちを後退させる。だが、相手は巨大だ。押し負けそうになる前に、ゴリョウが難なくイノシシを止める。
「待たせたな! さぁテメェの突進と俺の盾、どっちが強いか比べようじゃねぇか!」
 ゴリョウの勇ましい名乗り口上が、再びあたりに響き渡った。
 先ほどのイノシシの比ではなく、力は強い。だが、2人がかりなら耐えられる。
 ガドルが鋭く踏み込むと、イノシシに拳の一撃を見舞う。乱れた呼吸の隙をつくように、 姫乃が格闘術式を放つ。息の合ったコンビネーションだ。
「おらっ!」
 頭部めがけて、義弘のクラッシュホーンが襲う。
 イノシシは大きくよろめいた。

 相手は大きいが、落とし穴に近い。
 地形の有利を察したアトリが、多段牽制でさらに足を止める。イノシシは頭を大きく振るが、アトリが前進を許さない。
 突進の威力は、すでにメートヒェンとゴリョウに殺されている。
(後で食べるなら体をあまり傷つけないように、頭を狙っていった方がいいかな?)
 防御は解かず、メートヒェンは蹴りを繰り出す。
 翻るメイド服が、その頑丈さに反してふわりと揺れる。
「そっち!」
「おっと、了解、了解っと」
 魔弾を撃とうとしていたキドーが、アトリの呼びかけに答え、衝術に攻撃を改める。放たれた攻撃が、イノシシを思い切り吹き飛ばす。
 どしん、と派手な音を立て、イノシシが落とし穴に落っこちた。身動きの取れなくなったイノシシに、キドーがきっちりとどめを刺した。
「しかし、こんな土地でずいぶんと大きく育ったものだね……というかこの巨体で今までどこに隠れていたんだろうか、後から周辺に他に何かいないかも調べた方がいいかもしれない」
 メートヒェンの言葉に、ロビが頷く。
「少なくともあと1頭いるな。相手は、弱肉強食を長い間生き延びた古参だと思う」
「ああ、ずいぶん慎重なやつだ」
 キドーは痕跡を思い出していた。色違い、最後の一匹。

●第三陣、来たり
 果たして、イレギュラーズたちの勘は当たっていた。
 暫くは何事もないかと思われたが、不意に地面が大きく揺れる。そしてその揺れは、イレギュラーズたちの元へ向かって近づいてくる。
「なんだ、地震か!?」
 農民たちはおののいた。
「おいでなすったようで」
 先ほどのイノシシも大きかったが、三度現れたこのイノシシは並大抵の大きさではない。……ゆうに馬車並だ。
「ぶはははッ、デカいな! だが引かんぜ俺ぁ! さぁ来な!」
 ゴリョウが構え、名乗り口上をあげる。
 相手が巨大であっても変わらぬ勇ましさに、農民は思わず息をのんだ。
 格の違いを、思い知らされる。
 イノシシにしろ、イレギュラーズたちにしろ。
 イノシシが迷わずゴリョウにぶつかっていく。跳ね飛ばされるような勢いではあるが、威力を半分は殺しただろう。
 回り込んだロビが地面を蹴り、全力攻撃で食らい付く。払わんと猛烈な勢いで振るわれる牙を、身軽な動作で思い切りかわす。
 だが、一撃食らい、地面に叩きつけられる。
 しかし、そこまでだ。仲間への追撃は仲間が許さない。
「はっ」
 美しく繰り出されたアトリのレイピアが、連撃によりイノシシの動きを止める。
「おらよっ!」
 離れた位置からのキドーの魔弾が降り注ぐ。そちらを向かおうとすれば、ゴリョウとメートヒェンに阻まれる。
 背水の陣。背後は、仲間に任せれば良い。
「やっ!」
 姫乃の美しく編まれた技が、イノシシの鼻っ柱に叩き込まれる。
 三度、義弘のクラッシュホーンが炸裂する。よろけたところめがけて、ガドルが攻撃を叩き込む。イノシシの片方の牙が折れた。
 猛然と怒り狂い、ガドルに正面から向かっていくところで、死角から現れたキドーが、イノシシに焔式を放つ。大振りのストーンナイフが、魔力を帯びて輝いた。
「おっと料理にはまだ早いか?」
 予想のできない攻撃に、イノシシは大きく翻弄される。
 焦げ臭いにおいがあたりに漂う。炎上する巨大イノシシは、頭を振り払い、思い切り向かっていく。
 暴れまわるイノシシも退かないが、イレギュラーズたちも全く退かない。姿を消し、戦線を離脱したかに思われたロビが、背後から再び現れた。
 パンドラを帯びた復活だ。
 奇襲攻撃。
 思い切り首筋に噛みつく。イノシシも暴れまわるが、食らい付いて離しはしない。血に濡れた牙がぎらぎらと輝く。
「チャンスだ!」
 メートヒェンが踏み込み、攻撃を加える。姫乃が攻撃を叩き込み、ガドルがそれに答えるように打つ。 義弘の拳が、脳天に一撃を加えた。
 イノシシは炎を振り払うように首を左右に振り、よたよたと走り出す。逃げ出すように。キドーが追撃を食らわせると、どう、と巨木に頭をぶつけ、……動かなくなった。
 イレギュラーズたちの勝利だ。

●レッツクッキング
「なんとかなったな!」
「さすがにこれ以上の奴はいないだろうな」
「それにしても大きいね」
 メートヒェンがしみじみとイノシシを眺める。
「しっかし、超大物を取れるとはな」
 獲物をしとめ、ロビは満足げだ。

 イノシシを退治した後は、お楽しみタイムだ。
「私は猪鍋を作ろうかな。やっぱ大勢で食べるなら鍋だよね!」
  姫乃が腕をまくる。
「俺は料理に関してはからっきしだ。せめて力仕事は手伝うか」
「俺もだな。せめて火の番でもするか」
「あ、それならたき火の準備をお願いしたいかな」
 姫乃の言葉に、ガドルと義弘は頷く。
「分かった。ところでゴリョウは何を作るんだ?」
「猪肉ハンバーグだな!」
 ハンバーグと聞いて、不思議そうな顔をしたものが数名、懐かしそうな顔をしたものが数名だ。ゴリョウは解説を加える。
「知り合いのニホンジンに習った手軽なジビエ料理だな。メートヒェン、手伝ってくれるか?」
「もちろんだ」
「ハンバーグと鍋か。いやー、料理が出来る奴がいると助かるな!」
 キドーはにこにこと配膳を待つ。
「俺はその辺からっきし。せめて美味しく頂かせていただきますかってね。へっへっへ」

「ロビはどうする? 焼いたほうがいい?」
 アトリが首をかしげると、ロビはやんわりと首を横に振った。
「オレたちは生肉と内蔵とかで充分だ」
 ロビの呼びかけに答え、群れの仲間の5匹が現れた。
「ぶははっ! せっかくだ、良いところ持っていきな!」

「しかし美味いのか、イノシシって」
「師匠に昔教わったんだけど、猪肉が臭くなる原因って大体血抜きが上手くいってないからなんだって!」
  姫乃は猪肉を食べやすい大きさにブツ斬りにすると、牛乳に漬けこむ。20分、といったところか。その間、手際よく事前に作って持ち込んだ昆布だしを鍋底に敷き、味噌、砂糖、味醂でスープを作ってゆく。
 一方で、ゴリョウは豪快に猪肉、玉ねぎ、生姜、にんにく、パンをミンチにしていく。そして臭み抜きに味噌と赤ワインを少々だ。豪快に加えて混ぜ、ハンバーグのタネを作る。
「どうぞ」
 メートヒェンが美しくカットされた野菜を、ゴリョウと姫乃の元へ持ってくる。
「ありがと!」
 鍋のほうは、血抜きが終わった猪肉を水で洗ったら野菜と供に鍋に投入し、煮えるまで待機といったところだ。
「んじゃ、ハンバーグも焼くか」
「こりゃあたりだな、臭いで分かる」
 キドーはすんすんと良い香りを嗅いだ。
「暫く空きそうだから、お茶を淹れたよ」
「……あれ? 大した茶葉じゃないはずなんだが。なんだこれ」
 メードヒェンの入れた紅茶は、信じられないほど薫り高かった。今までに味わったことのない味に、開拓民は目を白黒させている。
「たき火で入れると美味いのか?」
「いや、まさか……」
 むしろ、難しいだろう……メートヒェンでなければ。
 メートヒェンは右目で熱量を正確に量りとっていた。
「ほんとだ、すごく美味しい」
「なんだかホッとするね」
 姫乃とアトリも、しばし手を休めてティータイムだ。

●いただきます
「さぁ出来たぜ! 美味い飯食って明日の開拓の活力にしてくんな!」
 辺境の地で味わうにしては、かなり贅沢な品々が並ぶ。近くではロビが、群れの狼たちと肉を食べている
「美味い! こっちの鍋もなかなかだな」
 ゴリョウが鍋に舌鼓を打つ。
「ハンバーグもおいしい……!」
「仕事後みんなで食べるご飯は美味しいねー!」
「仕事終わりに、一杯どうだ?」
  義弘が酒を取り出した。いち早くガドルとキドーが目を輝かせる。
「おっ、酒か、もちろんだ」
「そいつぁ……へへへ、ご相伴にあずかりますよって」
「ああ、未成年は果実水で勘弁してくれよ? それじゃあ、乾杯だ」
 いくらか食べたところで、誰かが思い出したように言って、笑いながら杯を打ち鳴らした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

イノシシ退治、お疲れ様でした!
つかの間の休息、いかがでしたでしょうか。
ジビエ料理は良いものですね。
これを書いている間、お腹がすいて仕方がありませんでした。
とても楽しかったです!
機会がございましたら、また一緒に冒険いたしましょう。

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