PandoraPartyProject

シナリオ詳細

一人、二人、たくさんの用心棒

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 彼らは、この森の永きにわたる支配者だった。
 贅沢とは無縁な支配者らしからぬ一族だったが、徒に戦を起こすこともなく先祖代々受け継がれてきた土地を守り、狩りを糧とし細々と暮らしてきた。

 時が流れ、いつしか縄張り内に余所者が暮らす小さな集落が出来た時も、争いを好まぬ彼らは寛容だった。
 夜中に畑から少量の農作物を租税として徴収する以外、多くを求めることはなかった。
 時折、彼らの居住地付近に迷い込む者もいたが、畏怖すべき(そして唾棄すべき)容貌を目撃するや怖れ慄き悲鳴をあげて逃げ去る者のほうが多く、大事に至ることは少なかった。
 不幸にして戦闘が回避されず、やむをえずに侵入者が死亡することも稀にあったが、慈悲深き彼らは死体を粗末に扱うことなく、敬意を払い食してきた。自らの血肉と一体化することで犠牲者の魂魄を鎮魂し供養としてきたのだ。

 農民とそれなりに共存してると自負していた。
 誇り高く、されど奢ることなく、そして慎ましくも清貧に生きてきた。
 そんな彼らの安穏とした暮らしが、今、脅かされそうとしている。

「族長。申し上げます、また犠牲者が!」
 洞窟の奥深く、玉座に座した族長が沈鬱な面持ちで報告を受ける。
「嗚呼、またか……これで何人目になるのであったか?」
「一人……二人……たくさんです!」
 彼らは野盗に襲われていた。
 野盗は彼らが今までに知る農民と違い、全く異質な存在であった。
 戦闘技術に長け、集団で動き、武器を持ち襲ってくる野盗は、兎や猪を相手に平和裏に暮らしていた彼らの手におえる相手ではなかった。
 ある日、狩りに出ていた一族の者の死体が発見されたのを境に、連日のように誰かが襲われ、犠牲者の数は日増しに増えていくばかりであった。
 一族の住むこの洞窟が発見されるのも時間の問題に思えた。
 発見されたら……鏖(ミナゴロシ)……。一族に待ち受ける悲惨な未来が脳裏に浮かぶ。
「それだけは避けねばならぬ……」
 そう呟くと族長は覚悟を決め、傍らに侍る息子に命を下す。
「我が息子よ……お前に我らの命運を預ける。一族が危機に晒されたときの為、代々伝わる伝承がある。頼む、どうかやってくれないか? まずはここより離れ、人の多く住む処に赴き……」

●『駆け出しの新米冒険者たち』をぶっころすだけの簡単なお仕事
「で、そのオークの若者は伝承に従って、田舎からわざわざ用心棒を探しにきたのさ」
 集まったイレギュラーズたちを前に、情報屋『黒猫の』ショウ(p3n000005)が静かに告げる。
「いきなり棍棒で襲いかかるなんて、とてもロックなやり方でね」
 口元が微かに緩む。
「強者を探すためだったらしいけどもね。そんな探し方じゃ殺されても仕方ないだろうに、襲った相手が偶々イレギュラーズでこうして依頼に繋がったんだから、あながち言い伝えってのも莫迦にはできないのかもね」
 どうやら幻想の片田舎の村を拠点に最近活動を始めた新米冒険者のパーティーを退治して欲しい、ということらしい。
「冒険者の構成は自称勇者に戦士、魔法使い。それから僧侶、武道家、盗賊、商人、そして遊び人。ある意味、非常にバランスの取れてる一団だね」
 なぜ遊び人? そもそも勇者って職業なのか? 疑問をスルーして、ショウは続ける。
「この依頼、受けるかい? 冒険者を殺すのに気が引けるなら、無理にお奨めはしないけども」
 もっとも好き好んで冒険者なんてやる連中だ。戦闘の末に命を落としたとしても文句を言える稼業ではないだろう。少なくとも、化けて出てきたりすることはない筈だ。
「最後にもう一つ。安心して欲しい。こんな田舎の片隅で何が起きようと、偉い人は誰も気にしたりはしない筈さ」

GMコメント

 こんにちは。茜空秋人です。
 以下、シナリオ補足情報です。ご活用ください。

●情報確度
 Aです。想定外の事態は起きません。

●依頼成功条件
・新米冒険者達の排除。全員死亡が望ましい。
・非死亡者がいる場合、森のオークを襲わない、二度とこの地に立ち入ることがない等なにがしかの確約、保障が望まれる。

●ロケーション
■冒険者サイド
・オークよりは強いレベル。実際は駆け出し。デビューしたばかりの冒険者。
・森の集落は10世帯程の農民が生活する小規模な農村。宿屋はなく、村の広場にキャンプを張り拠点にしている。
・農民たちとの仲は普通。
・イレギュラーズではない。
・この森でレベリングに勤しんでいる。
・オークの住む洞窟を発見したら、探索という名の蹂躙が始まる可能性大。
・冒険者たちは、村の農作物を荒らすオークを退治していると、正義の味方気取りである。
・村での戦闘になったら、農民に被害が出る可能性がある。
■オークサイド
・豚人間。
・農民(一般人)には勝てるレベルだが、イレギュラーズと比べるととても弱い。
・知能は低い。全体的に憶病。
・森の小動物を狩ったり、農作物を荒らして生活している。
・農民たとちの仲は良好と、一方的に思い込んでいる。
・オーク一族は農村から5㎞ほどに位置する洞窟を寝床にしている。
・洞窟には入口は一つしかない。中はそこそこ入り組んでいる。
・洞窟では女子供含めて100匹ほどのオークが生活している。
・洞窟の中で戦闘になったら、オークに被害が出る可能性がある。
・洞窟の奥には財宝部屋もあるが、財宝と呼べるほどの蓄えはない。この慎ましい財源から依頼報酬は支払われることになる。

●登場人物
・自称勇者♂
 主に片手剣で戦う。そこそこやれる。魔法はロクに使えない。BS抵抗は強め。
・戦士♂
 主に両手剣で戦う。
・魔法使い♀
 主に魔法で戦う。
・僧侶♀
 申し訳程度に木の杖を装備しているが、基本は回復しかしない。
・武道家♀
 主に素手で戦う。脳筋。
・盗賊♂
 弓矢を装備している。商人とは仲が悪い。
・商人♂
 後ろー! 後ろー! 盗賊が狙ってる!
・遊び人♀
 役立たず。バニーガール、お色気要員。
・農民(MOB)
 超弱い。
・オーク(MOB)
 族長含め、弱い。

●注意
 これは悪依頼です!
 成功以上の場合、幻想の名声値がマイナスとなりますのでご注意ください。
 ご納得いただけましたら、どうぞ自由かつ奔放にハイ・ルールを遵守しつつ悪依頼プレイをお楽しみくださいませ。

●アドリブ
 アドリブ描写が用いられる場合があります。
 プレイングやステータスシートにアドリブ度合、『アドリブNG』等記入くだされば対応いたします。

  • 一人、二人、たくさんの用心棒完了
  • GM名茜空秋人
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月26日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

メド・ロウワン(p3p000178)
メガネ小僧
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
エリク・チャペック(p3p001595)
へっぽこタンク
シロン・ポチリュアス(p3p001787)
まおうさま
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
神埼 衣(p3p004263)
狼少女
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

リプレイ


 依頼人――オーク族長の息子に案内され、イレギュラーズ達は目的地、オークの住む森に到着する。
 鬱蒼と茂ってこそいるが陽の光が差し込まないという程のものでもなく、平坦な平野部で人里からも程近い森。そして何よりオーク以上に危険なモンスターも居ない。成程、新米冒険者が好き好んでレベリングに勤しむのも頷ける話だ。
「旦那がた……よろしくお願いします」
 オークの若者が、頭を垂れる。
「うむうむ、外敵の駆除であるな! 脅かされれば知恵を回すが生き物の道理。吾に任せるがよいぞ!」
 最強の生徒会長の証――白セーラー服姿の『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)が大船に乗ったつもりで任せろと豪放磊落に応える。
 セーラー服から垣間見える割れた腹筋、引き締まった身体は何よりも雄弁な説得力を誇っている。
「旦那がたの腕っぷしは判るんでやすが、何分相手は勇者……くれぐれも油断なきようにお願いしやす」
 オークは何度も頭を下げる。無理もない、身内を何匹も悪魔の如き勇者に殺られているのだから。
「勇者討伐は魔王の仕事の1つだな! この世界、魔王を名乗るものが多いからのぅ……。自称か本物かは知らぬが勇者は勇者、勇者を倒せば魔王としての格が上がるはず。オークよ、安堵するがよい! わらわが魔王の中の魔王、最強の魔王であること示してやるのじゃ!!」
 ピンと立った狼尻尾は自信の表れであろうか、勇者という響きに『まおうさま』シロン・ポチリュアス(p3p001787)が敏感に反応する。
 イレギュラーズ達は誰一人として、勇者――新人冒険者達を相手にすることに微塵も躊躇を抱いていなかった。実に頼もしい面々だ。
「オークを殺すのは善で、人間種を殺すのが悪だ、そう断定できないからこその面白さがある。故に、価値基準はそれがビジネスであるかどうか、それだけです」
 そう言い切ったのは『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)。フォーマルスーツを洒脱に着こなす様は血生臭い戦闘とは一切無縁に思われるが、これがビジネスマンである彼なりの戦闘服なのであろう。
「あー? オークだろうが依頼は依頼だしなァ。報酬貰えんなら文句はねェよ?」
 『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)が煙草に火をつけながら同意する。
「せいぜい、勇者様ご一行を丁重におもてなししてやろうじゃねェの」
 勿論、おもてなしとは皆殺しのことだ。27歳の自称魔法少女は愛飲するDer Freischützを美味しそうに燻らせる。
「ん……依頼だから仕方ない。それにオーク? を殺してたんだから殺されても仕方ないと思う」
 これまたヘビースモーカーの『狼少女』神埼 衣(p3p004263)がオイルライターを取り出すが、火の付きが悪いのか苦戦している。アホ毛な年下属性だが、決して未成年ではありません!
「まぁ、人間を食べたりする趣味はないけど、この際だから楽しもう。一応自称勇者らしいから強いかもしれないし。久々に暴れられそう!!!」
 狼――生まれながらの狩人の血が騒ぐのだろう、さらっと物騒なことも言う。
「新人冒険者ねぇ……」
 隣で煙草を吸われると、自分も吸わずにおられないのが喫煙者のサガだ。『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)が煙管を吹かす。18の時分に肉体の成長こそ止まっているが、彼も決して未成年ではありません!
「真っ当な活動ならいいんだろうけどな。真っ当なら。何もしてないオークを攻撃するっていうなら勘違いも困ったもんだ」
 畑を荒らしたりもしているが、ローレットにはそんな報告は上がっていない。つまり、今のところそんな事実は存在しないのだ。、
 ついでに雑魚狩りでレベリングというのも、騎士である彼の美学に反するのかもしれない。
「新人冒険者を少し上の冒険者がボコボコにしようとするって、知り合いの旅人さんが言っていた『てんぷれ』という気が……。冗談言ってないで、頑張りますかねぃ」
 『へっぽこタンク 』エリク・チャペック(p3p001595)が軽口で〆る。内容を選ばずに依頼を受けていたら幻想での評判が下がってきた彼だが、きっと今回の依頼でも評判が下がることになるのであろう。どうかこのまま立派な悪属性冒険家に育ってくれるのを期待したい。


 翌早朝、イレギュラーズ達は村と洞窟の中間地点付近をに襲撃場所に決定する。ことほぎがファミリアーで鳥を呼び出し上空から周囲を監視する。
 『メガネ小僧』メド・ロウワン(p3p000178)があらかじめ準備しておいたスコップを皆に配ると各々が落とし穴を、あるいは草を結んでブービートラップを設置する。
「理論上、作戦に問題はありません」
 ぐるぐる瓶底眼鏡に隠されてメドの表情は読み取れないが、自信の程は窺がえる。備えあれば憂いなし。逃走防止に罠の布石はたしかに有効と思われた。
「大事なのは、罠の設置場所を把握しておくことなのです」
 予め罠の設置場所を一方に配置することにより、万が一味方が引っかかる様なマヌケな事態は避けられる。
「落とし穴は如何に地面の形をそのまま残せるかがポイントですよねぃ」
 エリクが落とし穴を偽装する。鬱蒼と茂る森の中、丹念に叢や落ち葉で隠された足元の罠は平時でも余程注意していないと見破ることは難しい。まして逃走相手を想定しての罠だ。
「勇者様らがまぬけにすっ転ぶ姿を想像すると笑えるねェ」
 ことほぎが妖艶に笑った。

 一方、農村に向かった百合子と寛治は広場にて朝食中の勇者一行に接触する。
「さあて、今日もオーク退治頑張りますか」
「だねー。でも、最近ちょっと飽きてきたかもー。手ごたえなさすぎるよね」
「俺らも強くなってきたってことだな!」
「商いの基本は小さいことからコツコツと、ですよ」
 和気藹々、緊張感の欠片も感じられない。
「もしや、貴殿ら冒険者の方々であるか!?」
 彼らの緩んだ空気に毒気をぬかれながらも、打ち合わせ通りに百合子が近づき声をかける。
「ええ、そうですが……あなたがたは?」
「クハッ、これは天の采配であるな! 実は吾等も冒険者のはしくれなのであるが、森の奥でオークの巣を見つけてな! 流石に吾等二人じゃ心許なしと難儀しておったところである。手を貸してもらえぬか!」
「……詳しく聞かせてもらえますか?」
 有無を言わせぬ百合子の口調に多少怯みながらも、一行のリーダー格と思しき青年が応える。はたして、彼が勇者であった。

(やれやれ。仮にも冒険者が、危機感がなさすぎですね……)
「私のようなケチな冒険者には手に余る敵勢、勇者様御一行に出会えた幸運に感謝しなければ」
 首尾良く勇者たちを誘うことに成功し、寛治が心とは裏腹に彼らを持ち上げまくる。
 少しでも油断してくれるなら、それに越したことはない。
(それにしてももう少し、警戒心などないのだろうか……? 私なら彼らを勇者らしくプロデュースできるのだが……)
 職業病か、やくたいもないことが頭に浮かんだりもする。


「おいでなすったみてェだなァ」
 鳥のファミリア越しに敵を感知したことほぎが呟くと、イレギュラーズ一達は身を隠し息を潜める。
 やがて、百合子の目論見通りに前衛後衛と隊列を組んだ一行が襲撃ポイントに現れた。
「さーて皆殺しの時間だ!」
 木の上に隠れたことほぎの魔砲が敵後衛に向け放たれる。
 戦闘はイレギュラーズの奇襲によって幕を開けた。
 ドゴォォォォン!!!
「きゃあああっ!」
 純粋な破壊力を総身に受け、僧侶がたまらずに悲鳴をあげる。その声の主を木陰から飛び出したルシールが強襲する。
「さて、徹底してやりますかね」
 駆けつけざまに放たれた二刀を避けること叶わず、少女は絶命した。
 戦闘序盤で回復役を奪われ、勇者たちは以降苦戦を強いられることになる。

 僧侶死亡確認!

「危ないのである!」
 魔砲の轟音を合図に、百合子が突然の襲撃に狼狽える勇者を狙い不意をついてドつく。
「な……なにをする!?」
 状況が呑み込めてない勇者だったが、襲われてると呑み込むと
「さては騙したな! 卑怯者め!」
「吾は卑怯とかよくわからぬが、勝ったものが強くて正しいのでは?」
 百合子は肉体言語で返答した。

「私の名はエリク。君たちの名は聞くつもりはありませんー。墓石には新人冒険者と書いておきますからねぃ」
 イレギュラーズの盾役志望、エリクが敵前衛に向け名乗り口上を使う。
「……面白い。面白いねえ! その減らず口、二度と聞けなくしてやるよ!」
 怒りに震えた武道家が釣れました!

「よく来たな勇者たちよ! わらわは勇者と対をなす存在・・・魔王シロン様である!」 イレギュラーズ後衛組の暗黒時空超魔王様が、魔王様らしい口上を発する。
「残念だがそなた達の冒険はここまで! 何もなせぬままここで終わることを嘆きながら死ぬがよい!」
 超魔王的破壊が魔法使いを襲う。
「ちょ……まっ……」
「相手の命を奪うということは、奪われる覚悟もあるということでしょう? 僕は常に奪われる覚悟をしています。さて、覚悟はいいですか?」
 最後まで言わせることなく、メドの魔砲が魔法使いを有無を言わせずかき消した(物理的に)。

 魔法使い死亡確認!


 乱戦の中、メドの連続攻撃が勇者の下半身を執拗に狙い続ける。
 地味に機動力――足を奪うという目論見だ。
 その勇者は百合子と、武道家はエリクと、戦士は寛治と。奇しくも前衛同士がっぷり組み合う状況であった。
「お前ら、何が目的なんだよ!?」
 執拗にマークされ思う様に動けない不満がつのったか、思わず戦士が咆える。
 寛治は黙して、ただ紳士用長傘で応ずるのみであった。
 一見、武器には見えないクラシックな長傘だが、フォーマルスーツを纏った寛治が振るうそれは遺憾なく武器――そして盾としての機能を発揮している。事実、寛治にとっては性能、そしてスタイル的にも非常に相性が良く、まさに紳士の武器だった。
 その長傘で戦士をいなし続ける寛治の姿は装いも伴い、大人と子供――教師と生徒程度の実力差を想起させた。

「んもー! 怒ったぞ! いっけーPRPNT!!!」
 美少女――遊び人が謎な呪文を唱えた!
 しかし何も起こらなかった!

「チッ、やってられるかっ!!!」
 シロンの超魔王的攻撃を喰らった盗賊が、捨て台詞とともに踵を返して逃亡を図る。
 が、イレギュラーズから逃げるように向かった先には当然、罠が待ち受ける。
「ん……。覚悟……いいよね? オークを殺した。なら殺される覚悟だってしてたはず。……そうでしょ?」
 落とし穴に嵌った盗賊に、追いついた衣が感情の篭らない声で問いかける。
「ケッ、何だお前ら、オークの犬かよ!!! クソがっ!!!」
「私は犬じゃない。狼」
 虚ろな目で反応すると、フリーオフェンスで凶暴化した犬みたいな歯、犬みたいな耳を持つ狼は、盗賊に(狼だけど)猟犬の如く喰らいつく。
「うわあああああああああああああああ」
 必殺の噛みつき! 盗賊は恐怖と怒りに染まった目を見開いたまま絶命した。

 盗賊死亡確認!

「超遠距離から、一方的に後衛をぶっ殺す。楽でいいねェ」
 ことほぎのマギシュートが、無慈悲に特に何の問題もなく、商人を薙ぎ倒す。
 いつかは自分の店を持つことを夢見て故郷を後にした彼は、一切の活躍も見せ場もないままその生涯をエゴイストな魔女によって刈り取られた。

 商人死亡確認!

「悪人になんて絶対、負けたりしない。何故なら、僕は、勇者だから!」
 百合子と勇者の戦斗は両者一歩も引かぬまま繰り広げられていた。
 勇者は存外に手強かった。
 後方からメドが百合子を回復で支援する。寛治がAPを支援する。
 が、互いにジリ貧まで削られ凌ぎあっていた。
「これで、決める!」
 乾坤一擲、勇者の全力を放った一撃が百合子に振り下ろされる。
「グッ……」
 堪らずに膝をつく百合子。だがしかし、最後の力を振り絞り立ち上がる。
「白百合清楚殺戮拳、咲花百合子。参る!」
 渾身の力を一撃にのせて勇者に逆襲する。決まった!
「バカな……悪人に……勝て……なかったよ……」
「うむ! 無念であろう! 何時か吾もそのように死ぬ故、地獄で己を鍛えて待っているがよい!」
 地に臥せた勇者の前にそびえたつ百合子は、何故か山の様に巨大に見えた(錯覚です)。

 勇者死亡確認!

「うぇーん、勇者くんを虐めるなー!」
 美少女――遊び人が石を拾って百合子めがけて投げつける。
 石はどこか明後日の方向に飛んでいった。

 最後の敵後衛(?)となった遊び人に、ことほぎが無慈悲にマギシュートを放つ。
「なーんか、あの女、気にいらねェんだよな……。絶対、フリルとかレースとかリボンとか似合いそうで……イヤ全然関係ねェよ?」

 遊び人死亡確認!

(敵リーダーが死に、どうやら優勢は決しました……が)
 密かに遊び人の生け捕りを考えていた寛治であったが、チラッと振り返り遊び人の無残な死骸を確認すると、
(仕方ありません。依頼実行に傾注しましょうか)
 気持ちをすぐに切り替える。対応の早さは、流石出来るビジネスマンの面目躍如といったところか。
 事実、ここまでくると多勢に無勢。堰を切ったかのように、イレギュラーズの攻勢は止まらなかった。

「……なかなか、やるじゃねえか」
 激しい猛攻を、連撃を。その全てをエリクに捌かれて、武道家が咆える。
 彼女の中からとうに怒りは霧散していたし、さらに複数のイレギュラーズから攻撃を受け続けている。が、それでも武道家はエリクにのみ狙いを絞った攻撃を、ひたすら、ただひたすらに執拗なまでに繰りだしてくる。おそらくエリク以外は眼中にないのであろう。脳筋、哀しいまでに脳筋の性であった。
「それほどでもねぃですよ」
 飄々と受け応えながら、武道家の蹴りに強烈なカウンターをお見舞いする。
 はたして、武道家は己の命を奪った者を――その止めの一撃を目の当たりにしたのであろうか?
 ルナールの横殴りの一閃が、彼女を討ち取った。物言わぬ彼女の顔は、何故か満足そうに見えた。
「ま、こっちも仕事なんでな。諦めてくれ」

 武道家死亡確認!

「なっ! 全滅だと!?」
 唯一人の生き残り、戦士が脱兎のごとく逃げ出すも、案の定ブービートラップに足をとられ無様に転がる。
「言い残す事があるならば聞こう。魔王に挑んだ勇者一行の言葉として記憶しておいてやる」
 シロンの言葉が戦士に届いたかどうかは定かではないが。
「た……助けてくれ……」
「情け無用暗黒時空ファイアー!」

 戦士死亡確認!

「てれれれってってってー! 魔王としての格が上がった気がするぞ!」


 勇者たちは滅びた。いつの世も、悪は滅びる定めである。この際、どちらが悪かは置いといて。
 ことほぎが金目のモノはないかと、勇者一行の死体を漁る。
「……闇市につぎ込んじまってさァ。金欠なんだよ……」
 所持金、その他はイレギュラーズの戦利品だ。装備一式は叩き売り、少ないながらもイレギュラーズの臨時収入になるだろう。
 オークの洞窟に勇者らの死体を持ち運ぶイレギュラーズ。
「彼らも勇敢な戦士だったのです。どうか丁寧に供養してあげてくださいなのです」
 メドがオークの族長に告げる。
「判った。感謝する、客人よ……」
 慈悲深きオークの族長が肯う。
 この後、感謝と歓迎と供養を兼ねたオークの食事に誘われるのだが、全力で断るハメになる。
「農民の作っている植物は食べちゃダメですよー。今度は私たちの剣があなた達に向くかもしれませんからねぃ」
「……判った。感謝する、客人よ……」
 エリクが忠告するが、多分、判っていない。オークの知能を舐めてはいけない。判ったのかもしれないけれど、明日になったらどうせ忘れているだろう。
 オークが農民の依頼でイレギュラーズに討伐される日も、そう遠い日ではないかもしれない。
「それにしても、ここのオークはひ弱じゃな……身を守れるくらいの強さは身につけておくべきだろうに。ここがわらわの支配下だったなら、オーク全てを鍛え直しているところじゃ 」
 帰りしな、魔王シロン様が呟く。やめてあげて下さい、滅んでしまいます。
 ヘビースモーカー組は依頼達成後の一服、至福のひとときだ。
「ライター……付きが悪い……火、貸してもらえる?」
「さて、と……依頼も終わったし帰るとしますかね……」
 衣の煙草に火を灯すと、自身も美味しそうに煙管を燻らせ、ルナールが宣言する。

 おめでとう、イレギュラーズの活躍により依頼は達成された。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れ様でした。
 皆様には、称号『勇者を斃した者たち』が発行されました。
 奇襲初手で僧侶を倒せたのが非常に大きかったと思います。
 勇者が意外に強くて……主にダイスロール的に……これが、勇者のもつ資質なのか!?

 それでは、機会がありましたらまたよろしくお願いします。

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