シナリオ詳細
カランコエの花言葉
オープニング
●たくさんの小さな思い出
あなたと出会って、私は沢山の思い出を貰った。
一つ一つは小さいけれど、沢山集まって、抱えきれない程大きな思い出。
時に笑いあい、時に喧嘩をして。
他の人から見たら下らない。って一笑するかもしれないけど、私にとってはどれも大切な思い出。
ねぇヴォルフ……。
大好き。
これから先も、あなたと沢山の小さな思い出を沢山作って行くものと思っていたわ。
だけど変なの。あなたと作って来た沢山の小さな思い出が、最近思い出せないの。
ぽろぽろ、ぽろぽろ。私の腕から零れ落ちていく。
しっかりと抱きかかえたはずなのに……。
あなたにプロポーズされた時、あなたは何て言ってくれたのか思い出せないの。
あなたと喧嘩をした時、何が原因だったか分からないの。
私、どうなるのかしら。
このまま、全部忘れてしまうの?
そうなったら、それは私なの?
いや。いやよ。
お願い誰か、私の大事な思い出を守って……――。
●あなたを守る
「君たちに、この女性が安心して眠れるようにしてあげて欲しいんだ」
静かに言葉を紡ぐフォレスの前には、浅く眠る老婆が一人と、老婆の枕元に妖精が一匹。
「カリナはもう眠りに就くの。寂しいけど、ヴォルフが待ってるから仕方ないよね」
もう遊んで貰えないとしょんぼりする妖精の頭を撫でると、妖精は涙を拭って老婆の額を撫でる。
「みんなにはね、カリナの夢の中に入って、花を育てて欲しいの。カリナにとってはね、思い出はカランコエの花なの。でも、もう殆ど思い出せなくて、夢の中の花畑はもうほとんど枯れてるの」
夢の中へは、この要請が道を開いてくれると言う。
それなりに広い花畑だが、手分けすれば種をまいて水遣りをするなどの必要はない。必要なのは、花を咲かせることだけ。
夢の中の花畑は、カリナの思い出そのもの。夢の中で、妖精の日記をもとに思い出を話して上げたり、あったかもしれないことを話して花を育ててあげよう。
「全然違うこと言っても、花が咲かないだけで悪いことが起きるわけじゃないから多分大丈夫だよ。でも、もうカリナに残された時間は少ないんだ。
カリナはヴォルフや子供たちのことを忘れるのを怖がってた。だからね、最後は、いっぱいの思い出を抱いて行って欲しいんだ」
それは彼女と友情を育んだ、小さな妖精の我儘かもしれない。
だけど彼女に幸せな最後を迎えて欲しいという願いを無碍に出来なかった。
- カランコエの花言葉完了
- NM名ゆーき
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年12月31日 22時30分
- 参加人数4/4人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
●枯れた花畑
ぽつりぽつりとまだ花が咲く花畑は、何もない場所より物悲しくなるのは何故だろう。
「年と共に忘れやすくなっていくとは聞きますが……このように視覚的に見ると寂しく感じますね」
ぽつりと呟く『物理型お嬢様』碧紗(p3p008350)に胡蝶(p3p009197)がこくりと頷く。
「そうやねぇ。まばらに覚えているのは、本人も、周囲も辛いと思うわぁ」
覚えているのに、その前後は分からない。
一緒に過ごした思い出を、語り合おうにもいつの間にか忘れ去られている。
「でも、カリナはんの思い出は、私らの頑張り次第で再び芽吹くんやろ? この花畑、いっぱいにカランコエの花咲かせましょ」
胡蝶自身自分の名前以外のことを覚えていない。きっと胡蝶の記憶を花畑として見られたら、名前と言う花一本だけしか咲いていないのだろう。だけど悲観していない。だって、胡蝶は思い出せなくて悲しむ思い出もなければ、今から沢山新しい思い出の花を咲かせることが出来るから。
「はい! カリナ様の記憶をこれ以上無くさずに留める為に、わたくしにどこまで出来るかわかりませんが全力で頑張りますわね!」
ぐっと拳を握ると、碧紗は妖精に聞いた思い出メモを開いた。
まばらに花咲く花畑を見て『新たな可能性』バク=エルナンデス(p3p009253)が両手を広げ語り掛ける。
「生きる上で思い出せぬ事はある。しかして大切な記憶はまっこと貴重な宝物である。それを忘却し悲哀に満ちたままこの世を去るはあまりにも不憫。故に、想起せよ」
「想い出の花か……。やっぱり俺が咲かせるとしたら出会いと別れの想い出かなぁ……」
『剣』であり、『別れ』の精霊である『特異運命座標』ヴェルグリーズ(p3p008566)は、自身に縁深いものであり、誰にとって切っても切れない別れに関する想い出を芽吹かせることを決めた。
「別れは辛くて悲しいこともあるけど、それも含めて想い出だろうからね。出会えばいつか別れる、だから俺はそれをまとめて祝福するよ。彼女の、そして妖精君、君の分もね」
ヴェルグリーズの言葉に、一瞬だけ世界が揺らいだ。
カリナの思い出を思い出して欲しいのは、彼女の為。だけどそれと同時に、別れを目の前にした妖精の為でもあったのだから。
●語り掛け
「順番に、お話していきましょうか」
「せやねぇ。これより語るはカリナはんの生きた道。カリナはんが忘れても、小さなお友達が教えてくれた思い出話や」
カリナの思い出に関することだから、思い出してと話しかける。
小さな妖精と出会ってからの、彼女の人生を。
「小さなカリナ様は妖精様と出会ってお友達になったのですね。一緒に遊ばれる事も多かったと思いますわ」
「そうやねぇ。小さい頃やからねぇ、楽しそうに外でも家でも遊んだんやろうなぁ。走ったりお喋りしたんやろうねぇ」
幼いカリナと妖精が一緒に遊ぶ姿を想像して、二人の出会いを語る碧紗と胡蝶。
「子供のお仕事は遊んで眠る事ですから、お二人一緒にお昼寝していたかもしれませんね」
そう、一緒に沢山遊んだ、大切な友達。
かけっこは勝てなくて悔しくて、勝てるまでもう一回! と何度も一緒に走ったの。
新しい洋服を買って貰ったら、家族の次に見て貰うのは決まって妖精さんだったわ。
妖精さんみたいなぬいぐるみを買って貰ったら、どんな反応をされたっけ?
ぽこぽこと、枯れたカランコエの下で忘れたはずの思い出が再び芽を出す。
「ヴォルフとは、どうやって出会ったんだろうな。学校に行ってる時にはすでにいたみたいだから、実は幼馴染とかだったりするのかな。そうだったらとても長く一緒にいたわけで、まさに人生の伴侶って感じがして素敵だね」
ヴェルグリーズの言葉に枯れた花を押しのけて芽がその姿を現す。
出会ったのはいつだっけ?
確か、一年生の時同じクラスで……。あれ、二年生だっけ?
戸惑うように動きを止める花を見て、背中を押すように語り続けるヴェルグリーズ。
「大丈夫。大事なのは出会った時期じゃなくて、彼と育んだ時間だから」
「そうやねぇ。カリナはんは、ヴォルフはんに告白されて嬉しかったんやろうねぇ」
おっとりとした胡蝶の言葉に恥ずかしがるように花が揺れる。
「大切な好きな人が出来るんは羨ましいわぁ。ええ人やったんやねぇ」
胡蝶は記憶にある限り、誰かと恋に落ちた記憶はないし、これからどうなるか分からない。だけど、興味や憧れはある。
ヴォルフ。
私の、一番大切な人。
毎年クラス替えあったのに、不思議とずっと一緒だった。
腐れ縁だって、笑ってた。
「それはとても幸せなことですね。ずっと一緒にいた方から告白されて、カリナ様は嬉しかったのでしょう?」
その時は返事を後伸ばしにしてしまったけど、凄く嬉しかったと、妖精に語っていたのだ。
もじもじと揺れる双葉を見て、微笑ましい気持ちで言葉を紡ぐ。
「デートはどのような場所に行ったのでしょうか。わたくしとしては手を繋いで街中デートも憧れますし、手料理を持ってのピクニックも憧れますわ」
ヴォルフとは、良く二人で屋台巡りしたなぁ。
ヴォルフ、私が頼んだの半分食べちゃうんだもん。
拗ねたような声に、胡蝶がくすくす笑う。
「あら。仲えぇんやねぇ。食べる物半分こ、して一緒に色々食べはってたんやねぇ」
カリナが頼んだものを、ヴォルフが半分食べてしまって、怒るカリナにヴォルフが自分の分を半分差し出すのがいつもの流れ。
他愛ない、だけど幸せな日々。
「プロポーズの言葉は聞かない方がいいかしら?」
「そうだな。きっと二人だけの大切な思い出だ」
小さく首を傾げる碧紗に、ヴェルグリーズが小さく頷いて同意する。
そ、それは秘密!
じたばたと葉を振るカランコエの花は、花畑を半分程埋めている。
「せやったら、結婚式の話にしよか」
くすくす笑う胡蝶に、頷くように花が揺れる。
「結婚式の時は妖精はんは、カリナはんとヴォルフはんを特等席で見守ってたんやってなぁ。ふふ、仲がええ妖精はんに見守られて大切な人と結婚式挙げれるんはええなぁ」
気に入った人にしか見えない。だけどその存在はみんなが知っている妖精。そんな妖精を結婚式に招待したいというカリナの願いを、ヴォルフや家族は反対しなかった。
花嫁側の親族の座る席の端に、妖精用の席を用意してくれたのはヴォルフだ。
「息子さんも生まれ、大切に育てたのでしょうね」
「そうだな。子を産むというのは男である儂には分からぬ程の苦痛、しかして元気に泣き喚いた時に感じる物はあったろう」
バクは、カリナの最後を幸せで彩るために結婚後、特に子を産んでからの家族の幸せを想いだして欲しいと願っていた。
バク自身は得ることが出来なかった幸せな家庭。
それを得ることが出来たカリナには、その幸せを想いだして欲しかった。
「子の成長はあっという間だ。乳離れし元気に這い出し、立ち歩きだし、いつの間にか友を引き連れ外へと歩み出した。嘗ての己と同じように。
そしてそれを見ていたのは貴殿だけでなく、傍にいたヴォルフ殿もいたはずであろう。いつか旅立つとしても、それもまた、であったはずだ」
あの子、やんちゃで目を離したらすぐに悪戯をしてよく叱ったわ。
でもあっという間に大きくなったと思ったら、お嫁さん連れてきて……。
「伴侶を引き連れ幸せな顔を見て何を想った? そこにかつての己らの影を見出したはずであろう」
恥ずかしそうに挨拶に来たお嫁さん。
大きくなった息子と幸せそうに笑いあう姿を見て、カリナもまた、ヴォルフと顔を合わせて微笑み合った。
「彼のプロポーズを受けて、息子が生まれ、その伴侶に出会い、そして孫が生まれる。きっと途中には自分やヴォルフの両親との別れもあっただろうけれど、でもその時にはきっとお互いに支えあったんじゃないかな」
ヴェルグリーズの言葉通り、幸せなことだけではなく、カリナやヴォルフの家族、親しい人との別れもあった。そんな時はいつだってヴォルフが傍にいて支えてくれた。
だけど、別れは――
「……ヴォルフ様が倒れてそのまま亡くなったのはとても悲しいですわね」
ヴォルフとも、訪れた。
悲しくて、悲しくて、何日も泣いてばかりだった。
「ヴォルフとの別れはとても辛かっただろうね。お互いに幸福も不幸も分かち合って過ごした時間はとても大事だよね。忘れたくないと願うのも無理はないよ。でもその時息子やその家族が寄り添ってくれていたなら……それも大事な思い出の一つと呼べるんじゃないかな」
心が折れて弱っていくカリナを支えてくれた息子夫婦やかわいい孫。
とても辛かったけど、支えてくれる家族がいるカリナは幸せだった。
「死は、誰にでも訪れるものですわ。わたくしも、カリナ様には大切な事を思い出してゆっくり優しく幸せに最後を迎えて欲しいです」
いつの間にか満開になったカランコエの花畑を見て、碧紗が祈るように呟く。
●穏やかで幸せなお別れ
「して、妖精よ。貴殿もあるであろう。特にこの女性については一生から見ていたはず。であれば、その子や孫との親交を深める時もあったろう。この声が聞こえるならば、それを語り合え。此処が、最期にして最期である」
バクの言葉にふわりと妖精が姿を現す。
「……満開」
「はい。カリナ様、沢山思い出してくれました」
どこか誇らしげな碧紗の笑顔に妖精も笑みを浮かべる。
「忘れるんは辛い事やわぁ。少しでも幸せな時間思い出してもらえたんなら私としても嬉しいわぁ」
「みんなのお陰で、カリナは幸せな思い出、沢山思い出したよ。有難う」
「出会いと別れを繰り返して人は生きていくものだから。……二人とも。よいお別れを」
カリナと妖精の別れが良き別れとなるようにと祝福を与えるヴェルグリーズ。
きっと、二人は幸せで穏やかな別れの時を過ごせるはず。
有難う。
みんなのお陰で幸せよ。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
カランコエの花言葉は「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」「あなたを守る」「おおらかな心」
穏やかな人生を過ごした女性が、幸せな最後を迎えられるお手伝いをしてくれませんか。
●やること
・カランコエの花を育てる。
カリナが忘れてしまったカリナの思い出を話して、思い出させてあげましょう。
妖精の日記には大きな出来事に関してのみ記載されています。
幼いカリナと出会い、遊んだこと。
父親と喧嘩したカリナが家出してヴォルフが迎えに来たこと。
学校が楽しいと目を輝かせていたこと。
ヴォルフに告白されたと教えてくれたこと。
ヴォルフにプロポーズされたと嬉しそうに教えてくれたこと。
カリナの結婚式で、人の目には見えないのをいいことに、特等席で式を見守ったり、ご馳走を食べたこと。
カリナに息子が生まれたこと。
カリナの息子がお嫁さんを連れてきたこと。
カリナの孫と仲良くなったこと。
ヴォルフが倒れ、そのまま死んでしまったこと。
大切な家族のことを忘れて行くカリナに、幸せな最後を迎えて欲しいこと。
それ以外の事は、自分の経験や希望で「こんなことがあったんじゃないかな?」と話しかけてあげてください。
カリナの思い出に反応すれば、芽が出てきます。
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