PandoraPartyProject

シナリオ詳細

都市を守護する聖獣?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 天義……聖教国ネメシスの首都フォン・ルーベルグより離れた海沿いにある独立国家『アドラステイア』。
 高い円形の塀で覆われたその都市は外部との交流を断ち、冠位魔種ベアトリーチェ・ラ・レーテによる『大いなる災い』を経て、信ずる神を違えた者達の拠り所となっている。
 内部で暮らす者の多くは戦争孤児や難民となった子供達。
 彼らは一部大人と共に、新たな神『ファルマコン』を掲げ、『キシェフ』を得て暮らしている。

 場所を移し、幻想ローレット。
「ファルマコンなんて、存在しないの」
 都市内において、魔女狩りの対象となっていた少女、エルシから聞いた話によれば、ファルマコンは、このアドラステイアで作られた『新たな神』。
 それを信仰する子供達は『神様の為に奉仕した証』として『キシェフ』を受け取る。
「キシェフ……こないだ、都市内に一つ落ちてたよ」
「うん、それだよ……って、もう必要ないんだよね」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)が説明を受けるイレギュラーズ達へと銅製のコインを差し出すと、エルシが思わず伸ばしかけた手を引っ込める。
 キシェフを得た子供は都市内でご褒美のようなものを受け取ることができる。配給の食事がランクアップしたり、生活環境が変化したり……。
 より多くキシェフを得た者は『聖銃士』となって称号や鎧を授かり、神の為、アドラステイアの為、更なる働きをすることが許されるそうだ。
「ですが、その為に子供達同士で互いを蹴落とすことも珍しくありません……」
 エルシが言うには、最初は都市内へと集団で集まり、身を寄り添っていた子供達は仲間意識を持っていたはずだった。
 しかし、キシェフを得た者の待遇が良くなるのを見た子供達は自分もと考え始め、『魔女裁判』にかけて仲間をも蹴落とすようになってしまうのだ。
 ここにいるエルシもまた、魔女裁判でアドラステイアを追われてしまった1人である。
「皆、その少し前までは仲良くしてくれていたのに、なぜか私が魔女だって……」
 ただ、彼女は言葉を詰まらせながらもさらに語る。
 自分もまた、それまでは同じように一緒になって魔女に仕立て上げた仲間がいた、と。
「やっぱり、バチが当たったのかな……」
 魔女となった子供はどうなったのか分からない。
 裁判の結果として『疑雲の渓』に落とされた場合もそうだが、都市の外に逃れた者も食べ物が無くて飢えたかもしれないし、最悪、アレのエサに……。
「アレ?」
 イレギュラーズ達が口を揃えて問いかける。
 そこで、オリヴィアが身を震わすエルシの代わりに説明を引き継ぐ。
「聖獣さ」
 それはアドラステイアに住む一部の大人……ファザー、マザーと呼ばれる人々が放った聖なる獣。
 建前こそそうだが、その実は単なるモンスターである。
「聖銃士が従えている聖獣も多いが、扱い切れずに野良になった奴もいるそうさ」
 それがアドラステイアの周囲を徘徊し、場合によっては侵入者や近隣の集落へとけしかけられているようである。
 できるなら、それらは叩いておきたい相手。
 前回は見つからずに内部へと侵入できたが、それに阻まれる状況は避けたい。
「ちと厄介な聖獣がいるのさ」
 更なる突入の前に、野良と化した邪魔な聖獣を討伐したい。オリヴィアはイレギュラーズ一行へとそう要望したのだった。


 天義国内にあるアドラステイア。
 都市を囲む高い塀の内部は、上層、中層、下層と分けられ、暮らしている。
 その中層の某所には聖銃士と呼ばれる子供達が集っていた。
「皆さん、おはようございます」
「「おはようございます、マザー・マリアンヌ」」
 血がこびりついた修道服姿の女性が挨拶すると、ずらりと並んだ白銀の鎧を纏った子供達が声を揃えて挨拶を返す。
 小さく頷いたマザーと呼ばれた女性は、本日の予定と告げて。
「現在、都市内に新たな魔女はおりません。そこで、皆さんには都市の外で巡回を願いたいのです」
「都市の……」
「外……」
 聖銃士達は外の世界と聞いて表情を強張らせ、その身を震わせる。
 自分達の居場所はこの都市内にある。だから、都市の外へと出ることは必要なくなることと道義とすら認識していたのだ。
 そうなれば、住むところはもちろん、食べる物だってない。この寒空の下では、数日と持たずに餓死してしまうことだろう。
 だが、マザー・マリアンヌはすました顔のままこう続ける。
「大丈夫です。この子をついて行かせます」
「…………」
 頭上から羽ばたいて来た大きな獣。
 鷲とライオンが合わさったようなその聖獣は、任せろと言わんばかりに大声で嘶いてみせたのだった。

 アドラステイアの外周へとやってきたローレットイレギュラーズ達。
 そこは無機質な塀に囲まれた都市。後は原っぱが広がるのみの場所を、メンバーはオリヴィアと共に討伐すべき聖獣の姿を探す。
 なお、少女エルシは満足な食事がとれていないこと、精神状態が不安定なこともあり、幻想内の病院へと入院させてから一行はここまでやってきている。
「この辺りを歩いていたはずさ」
 オリヴィアの経験を頼りに外壁を歩くメンバー達の前に、空から舞い降りてくる巨大な獣。
「クエエエエエエエエエッ!!」
 野良と化した聖獣、フレスベルグは獲物を見つけて飛来してくる。
 それをイレギュラーズ達が迎え撃とうとしたところに、都市内部から駆けつけてくる一団が。
「あれは、ローレット……!」
「排除できれば、マザー・マリアンヌがお喜びになります!」
 聖銃士達は意気揚々と向かってくるが、すぐに野良となった聖獣フレスベルグに気付いて。
「こんなところに来るなんて!」
 ローレットを相手にしたい聖銃士達だが、フレスベルグからの邪魔は避けられないと判断して。
「聖獣、どうか僕たちを守って……」
「アオオオオオオッ!!」
 そんな聖銃士の呼びかけに応じて、聖獣グリフォンが襲ってくる。
 イレギュラーズ一行としては厄介な状況となってしまった。
 野良化した聖獣だけでなく、聖獣士率いる聖獣まで纏めて相手にせざるを得ないが、イレギュラーズ達は覚悟を決めてそれらの討伐、掃討へと当たるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 天義の独立国家アドラステイア外周を徘徊する『聖獣』、及び巡回に当たっていた聖銃士らの討伐を願います。

●目的
 全ての聖獣の討伐、及び聖銃士達の撃退。

●概要
 アドラステイアの内情を聞いたイレギュラーズ達は野良化した聖獣討伐を行う際、都市の周囲を巡回するアドラステアの騎士達と彼らが率いる聖獣も合わせて相手にすることとなります。

●敵
 野良化した聖獣と聖獣士集団&聖獣との交戦です。
 下記の○と▽は別勢力であり、争うこともあります。

○野良化聖獣……フレスベルグ
 全長3m、巨大な白いワシの姿をしております。
 聖銃士達の言うことを聞かず、彼らや別の聖獣にも攻撃を行います。
 死体を飲み込む者という意味を持つモンスターであり、都市内から逃げ損ねた者や都市内へと侵入する者の命を奪い、その嘴で引き裂くようです。
 また、氷のつぶてを発射したり、羽ばたきによって強い衝撃を浴びせかけてきたりします。

▽聖獣グリフォン
 全長3.5mほどあるマザーからもたらされた聖なる獣。
 鷲の上半身と翼、ライオンの下半身を持ちます。
 下記の聖銃士達に従い、邪魔者の排除、野良化聖獣から聖銃士達を護ります。
 鉤爪で敵対者を切り裂く他、翼から激しい風を巻き起こしたり、奇怪な叫び声を発してこちらの思考を乱したりしてきます。

▽アドラステアの騎士×7人
 別名『聖銃士』。白銀の鎧を纏う8~12、3歳くらいの子供達です。強さは普通の子供達が武装した程度で修練はあまりされてはおらず、然程強くはありません。
 野良化聖獣には聖獣を差し向けて被害を食い止めつつ、敵対する者には白銀のライフル銃をメインに長剣や槍も合わせて使い、全力で排除に当たります。

●NPC
〇オリヴィア(p3n000011)
 同行します。戦闘では、手にする曲刀や水の魔法で攻撃を行います。
 援護も可能ですが、どちらかと言えば前~中衛で戦う方が得意なようです。

〇マザー・マリアンヌ
 20代女性。血に濡れた修道服を纏う魔種となった元人間種女性です。
 神への愛を説き、慈善活動奉仕など比較的優しい条件でキシェフを与えてくれるなど、下層でも人気のシスターとして知られています。
 今回はOPの登場のみで、リプレイ内で姿を現すことはありません。

〇エルシ
 拙作「子供達を導く『聖女』」でアドラステイアの魔女狩りの対象となっていたところ、イレギュラーズに助け出された人間種の少女です。
 OPで都市の実状を語ってくれますので、そちらに目を通していただければ、上記のリプレイをお読みいただく必要はございません。
 今回はOPで説明を行ってくれるのみの登場です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 都市を守護する聖獣?完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月28日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)
アイドルでばかりはいられない
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
司馬・再遊戯(p3p009263)
母性 #とは

サポートNPC一覧(1人)

オリヴィア・ミラン(p3n000011)
海賊淑女

リプレイ


 天義の海合い、高い塀に覆われた場所。
 そこを、ローレットイレギュラーズ達が少し離れた場所から見上げて。
「ここが噂のアドラステイア?」
「丁度、外周部か。あまり長引くと余計なものが出てくるかもしれない」
 音を操る精霊種、『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)の独り言に、無表情な黒髪褐色肌の少年アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が応える。
 手早く依頼を遂行すべく、一行は外壁まで近づいていく。
 聳える高い外壁を、金髪の海種少女『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が改めて見上げる。
「こんなに近くに来れるのに、中には入れない」
 今この瞬間、都市内部には救いを待っている人がいるのかもしれない。
 そんなもどかしい胸の内を、ココロは表現できずにいた。
 なんでも、このアドラステイアには、ファルマコンなる創造された神を崇める数人の大人と、戦災孤児や難民となった子供達が多く住まうという。
「確かに、今はまだ存在しない神。でも……」
 アーマデルは知っている。特殊な能力を持つ血を継ぎ重ね、大量の信仰を……想いを束ねたならば、ヒトが奇跡と呼ぶ現実の捻じ曲げが発生することがあるということを。
「……今は出来る『現実』を重ねて、対抗していく時だろうか」
 ただ、スタイルの良い中華系ピンク髪女性『天義の希望』ミリヤム・ドリーミング(p3p007247)は頭で分かっていながらも、思うことがあったようで。
「アドラスティア……相も変わらず胸クソ悪い所っスけど……」
 ただ、今回は内部に入らず、周囲で野良化した聖獣の討伐依頼。幾分精神的に優しい状況だと、ミリヤムは思っていた。
(……そう思ってた時期がボクにもあったス……)
 間もなく、彼女はそう後悔することになるのだが、それはさておき。
「来たよ。皆、構えな」
 『海賊淑女』オリヴィア(p3n000011)の一言で、皆神経を尖らせる。
「クエエエエエエエエエッ!!」
 視界の向こう、塀の影から飛来してくる白い体毛に覆われたモンスターだ。
「野良化した聖獣か……」
 ゆるふわ系の旅人『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)も真剣な表情で野良化した聖獣とされるそのモンスター……フレスベルグを見つめて。
「まだ、聖獣が子供たちを変化させたものだという確証はない。だけど……、そうとしか思えないんだ」
 現段階では、それはポテトの推論でしかない。
 だが、この聖獣が本当にアドラステイア内に住んでいて、都市から離れたかった子供であったなら。
「本当にそうならば……、ただただその存在が悍ましい」
 星を信仰する社の巫女、『不義を射貫く者』小金井・正純(p3p008000)は進行の果てに人外とさせられるというその推論に嫌悪感すら抱く。
 ならばこそ、それが事実かどうかを確かめたいところだが……。
 一行がフレスベルグを相手にしようとすると、都市内部から小柄な一団が駆けつけてきて。
「あれは、ローレット……!」
「フレスベルグ、こんなところに!」
 ローレットの排除に意気揚々としつつも、野良化した聖獣に戦慄する『聖銃士』……白銀の鎧纏うアトラステアの騎士達だ。
「……子供じゃん!」
「……いやいや! 確率的におかしいでしょ! ……何で今一番会いたくない連中に遭っちゃうッスかね!」
 その姿に驚きの声を上げるアリア、ミリヤム。
「……アドラステイアの銃士達と鉢合わせるなんてね」
 天義生まれの女騎士、『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は携える聖刀に手をかけた。
 また、聖銃士達は後方に翼の生えた聖獣グリフォンを従えている。
「しかも、聖獣のお代わりと来たもんっス! これも絶対マリアパイセンの陰謀っス!」
 都市内にいるマザー・マリアンヌと浅からぬ因縁があるミリヤムは、昔からその相手が色々なタイミングで神がかった采配を行う事を思い返していた。
「アドラスティアのことはよくわからないのですが……」
 そう前置きした元練達の腕利き女性ゲーマー『特異運命座標』司馬・再遊戯(p3p009263)が縄を手にして。
「あんな子供を戦わせているあたり、ろくなものではなさそうです」
「まあ聞いてはいたけど……歪んだシステムだね」
 再遊戯の意見に、アリアが同意してみせた。
 その全容はまだ分かっていない部分もあるが、ココロはここまで来られたのだからと、想いを定めて真っ直ぐありたいと前方を見据えて。
「アドラステイアにある真実を求めて。わたしは頑張る!」
 その時、フレスベルグが聖銃士達へと飛び掛かる。
 どうやら、野良化聖獣を子供達でも制御できないとサクラは見定めて。
「脱走したとかじゃなくて、そもそも制御が効かないから放されたと考えるべきなのかな」
「聖獣、どうか僕たちを守って……」
「アオオオオオオッ!!」
 いずれにせよ、聖獣2体に聖銃士達はイレギュラーズ達にも攻撃を仕掛けてくるのは間違いない。
「ともあれ、遭っちゃったもんは仕方ないッス……ここは覚悟決めて子供たち以外は全部倒すっスよ! 皆が!」
 この状況にあって、ミリヤムの言葉を聞いたこの場のメンバーは呆気に取られ、彼女へと視線が集まる。
「ボク? ボクはほら……可愛いアイドルっスから、あんな聖獣倒せないっスよ!」
 新人アイドルとしてドヤ顔で決めポーズをしてみせるミリヤム。
「あいつがマザー・マリアンヌの言っていたイレギュラーズだ!」
「全力で潰せ!」
 子供達からマザー・マリアンヌの名前を耳にし、ミリヤムは「病む……」と口癖にもなっていたセリフを吐いていた。
「アドラステイアの銃士! 天義の聖騎士、サクラ・ロウライトが相手するよ!」
 その間に、仲間と共に前に出たサクラは納刀状態のまま駆け出し、聖獣と聖銃士を纏めて相手取るのである。


「クエエエエエエエッ!」
「アオオオオオオオッ!」
 野良化した聖獣フレスベルグと聖獣グリフォンが互いに牽制し合う中、イレギュラーズは向かい来る聖銃士達との交戦に入る。
「この状況、利用させて貰うよ!」
 イレギュラーズにとっては好都合と、サクラは長剣やライフル銃を手にした聖銃士達へと迫る。
 利用されているだけの子供達を手に掛けたくはないと、抜刀したサクラは月を思わせる剣閃で子供達に斬りかかっていく。
 続き、瞳を閉じたアリアが絶望の海を歌い、聖銃士達を魅了して同士討ちを狙う。
 オリヴィアも再遊戯に依頼されたように、騎士達へと水を散弾のように放って聖獣士達の鎧に亀裂を入れ、態勢を乱す。
 アーマデルも明確に敵対する子供達の戦力を削ぐのを優先し、英雄の霊魂を呼び寄せて。
 志半ばで斃れた彼らの声は怨嗟の音色となり、子供達の動きを制しようとした。
「「うう……」」
「大人しく寝ていなさい。こちらに牙を剥く以上、子供とて容赦はしません」
 剣を振りかざし、ライフルを発砲する子供達へと言い放つ正純は、天星弓を空へと向ける。
 射放った正純の一撃は次の瞬間、多数の星となって敵陣へと降り注ぐ。さながらそれは、地を駆ける狼のごとく子供騎士らへと襲い掛かる。
 ただ、子供達も意地を見せ、なかなか倒れようとはしない。
「この戦いに勝てば……」
「キシェフが貰えるんだ……!」
 マザーの言いつけに従って攻撃する子供騎士達は、この都市で生きる為に立ち向かってくるのだろう。
「オラオラ、聖獣も子供達も! ボクの可愛い魅力を見るがいいっス!」
 そんな彼らの攻撃は肉盾としてチームの守りに当たるミリヤムが引き付け、敵の攻撃を全て受け持つ気概で前線に立つ。
「ボクこそがこの天義で新鋭の中華系アイドル、ミリヤム・ドリーミングっスよ!」
 ドヤ顔で敵へと言い放つミリヤム。
 子供達の攻撃は来るのは想定内。フレスベルグが聖銃士達も攻撃してくれることを祈るが、ふらりとこちらにも注意を向けてくるのが厄介だ。
「こうなったら、纏めて相手してやるッスよ」
 つられてグリフォンも近づいてくると、彼女は聖獣2体も含めて相手どる。
 とはいえ、聖獣達の攻撃がこちらに向くと、他のメンバーまで危険にさらされる可能性が出てしまう。
「邪魔! しばらくあっちと戦ってなさい!」
 アリアはフレスベルグが聖銃士達に攻撃が行くよう仕向けるべく、再び歌声を響かせる。
「クエエエエエエエエエエッ!!」
「アオオオオオオオオオオッ!!」
 周囲へと氷のつぶてを飛ばすフレスベルグ。それをグリフォンが奇怪な叫びを上げて牽制する。
 ミリヤムの抑えにも完全には意識を向けようとしないその聖獣達。
「聖獣にされる前に助け出してやることが出来なくて済まない」
 そんな聖獣達へと、ポテトは謝罪の言葉を口にする。
「聖獣から、元に戻す術を見つけられなくて済まない」
 まだ、そうだと確定したわけではないが、謝らずにはいられぬポテトはスキルによって気力の能率を高めながらも、仲間に号令をかけて態勢を立て直す。
「ここで倒れてアドラステイアの好きにさせるわけには行かないんだ。だから、負けるわけには行かない!」 
 後方からは岩や木に隠れてライフル弾を避ける再遊戯も、仲間の強化を行ってから回復に当たる。
 なお、戦闘前に持っていた縄だが、彼女はそれで自らの身を縛り付ける。
「無意味に縛られるのは、仕方がないね!」
 理解に苦しむ行いだが、これもゲーマーゆえの縛りプレイなのだとか。
 そんな中、再度放たれた正純の一撃で2人の聖銃士が倒れ、フレスベルグの爪が1人を倒す。
「光と 闇は 表裏一体。喰らえ 啜れ 己が身を♪」
 同士討ちとなる相手を見て、アリアは呪詛の歌で聖銃士を苛む。
 血を流す子供は小さく呻き、その場へと崩れ落ちてしまう。
(聖銃士の子らにも難しい事情があるってわたしは知っています)
 出来るなら、命までは奪いたくないし、傷すらつけたくないと考えるココロはグリフォンを相手にとる。
 ココロが巻き起こすインディゴブルーの風浪は巨大な斧鎚となり、グリフォンの巨体を強く打ち付ける。
 飛行する敵の高度が下がれば、近距離攻撃を中心とするアーマデルでも捉えられる。
 捩れた一翼の幻影で飛び上がるアーマデルはそのままグリフォンの間合いを奪って蛇鞭剣で闇の一撃を見舞う。
 そのままアーマデルはアイテムの力で着地するが、グリフォンは地面に叩きつけられて。
「アオオオオオオオオオオオ!!」
 目の色変えて鉤爪を振るってくる聖獣へと、サクラは視線を向けて。
「さぁ、一気に倒すよ!」
 相手はすでに手負いの獣。聖銃士がまだ残っている段階で仕留めるべく、サクラは狂い咲く花の如く居合でグリフォンの巨体を切り裂いてみせた。
「アオオォォォ……」
 全身から血を噴き出す獣。
 その爪、牙、翼。それらは自分達と同じものであっただろうと考える正純はそっけなくこう告げる。
「その口は、言葉を交わすものであったはず。こうも変わり果てては、何も分かりませんね」
 戻す手段はない以上、せめてその手を地に染めることだけでも止めようと、正純は魔性の一撃で目の前に立ちはだかるグリフォンの翼を貪り喰らう。
 それだけに留まらず、その捕食は本体にまで及んで。
 目から光を失ったグリフォンは重い音を立てて横倒しとなって地面に転がったのだった。

 聖獣グリフォンを失い、残る聖銃士達に動揺が走る。
「ど、どうする……?」
「これじゃ、マザーに怒られる……」
 彼らにとってはこの場の敗北以上に、マザーによる罰を恐れていたようだ。
「もう勝てないし、この場をどうすることもできないってわかったんじゃない?」
 そんな彼らに、ココロが説得を試みる。
「だから、武器を捨てて帰りなさい!」
「「…………」」
「逃げるなら追わないよ。でもやるなら覚悟してね」
 ココロの問いかけにどうして良いかと顔を見合わせる聖獣士達に、サクラは再び刀に手をかけて撤退を促す。
「クエエエエエエエエエエッ!!」
 だが、そこに襲い来るフレスベルグ。
 多少はグリフォンからダメージを受けてはいたが、まだ野良化した聖獣は健在だ。
「ともあれ、どんな攻撃でも根性で耐えてやるッス! アイドルは根性ッス!」
 前に出るミリヤムも傷が深まってきてはいたが、率先してフレスベルグの嘴を受け止めに向かう。
(聖獣のことは気になるが、今は……)
 傷つくミリヤムの回復にはポテトが当たり、自らの調和の力を賦活の力へと転化して傷を塞いでいた。
 都市内にも帰れず、かといって外に出ても行く宛てのない聖獣士達は戦意を喪失しかけていた。
「悪いけど、足を止めさせてもらうね」
 ただ、交戦の構えを崩していなかったこともあり、アリアは熱砂の精を使役して重圧を伴う砂嵐を巻き起こし、彼らの動きを止めていた。
 その様子を見ていたオリヴィアはフレスベルグへと攻撃対象を移し、伸ばした曲刀から水の刃を飛ばして敵の翼を切り裂こうとしていた。
「クエエエエエエッ!!」
 野生化したことでかなりのタフネスを見せるフレスベルグ。
 その攻撃をほぼ一身に受けていたミリヤムは敵の嘴に体を割かれながらもパンドラの力に縋って。
「大丈夫! 盾役の任は全うするッスよ!」
 彼女の身体を止血すべく、再遊戯が賦活術を使う。
 再遊戯もまた倒れる聖銃士らを気がけるが、好き勝手暴れるフレスベルグは放置できない。
「これ以上、その嘴で死肉を喰らわせはしません。ここで、終わりにさせましょう」
 盾役の守りを貫通する力を持つ相手だ。正純は自分が食らえばそれだけで致命傷になると疑わず、グリフォンを仕留めた魔性の一撃で翼や嘴といった攻撃手段を潰しにかかる。
「動物的な本能に従っているようにも見えるな」
 仲間が言うように子供の慣れの果てなのか、アーマデルにはまだ分からない。
 だが、すでにグリフォンは倒れ、聖銃士も総崩れの状態。
 戦況はほぼイレギュラーズ対フレスベルグとなっており、不利を悟った相手は逃げ出すかもしれないと判断したアーマデルは高度を落とした敵を直接蛇銃剣で切りかかる。
 呪術回路によって生み出される弾丸はより深く相手に傷を与え、その身に呪いを与えていく。
 さらにココロもグリフォンと同様に巨大な斧鎚を叩きつければ、フレスベルグは弱々しい鳴き声を上げながらも、氷のつぶてを叩きつけようとしてくる。
 サクラは敢えてそれを食らい、全力で居合の刃でフレスベルグの巨体を切り裂く。
「ク、クェェ……」
 その美しい斬撃に見とれる間もなく、白い巨獣は地へと落ち、瞳を閉じたのだった。


 今回のイレギュラーズの目的は、野良化した聖獣フレスベルグの討伐だ。
「さて、アタシからの依頼はこれで完了なわけだが……」
 共闘したイレギュラーズ達を労うオリヴィアは捕縛した聖獣士達を見下ろす。
 一時は自ら縄で縛られていた再遊戯だったが、彼女は戦いが終わるとその縄を解き、子供達の手当てを行う。
 何せ、外からではほとんど内部の情報が得られぬアドラステイアだ。
 先の依頼後に話をした少女同様、この聖銃士達から話を聞く方が早そうだが……。
「内部の情報は欲しいけれど、洗脳されてるんだよね?」
 その半数は気を失ったままであり、拘束したままローレットに引き渡すことも再遊戯は提案する。
「ファザーやマザーがどこから聖獣を調達してるかが気になるッス」
 仲間の手当てを受けるミリヤムの意見もあり、ポテトが意識のある子供達へと問いかける。
「お前たちは聖獣がどこから来るか知っているのか?」
 それに対し、子供達は何も反応しない。
 そんな子供達へとポテトは仮説を交えつつ質問を続ける。
「もし聖獣を1から育てている場合、閉ざされたアドラステイアのどこで育てているか考えたことはあるか?」
 まだイレギュラーズ達を敵と認識したままの彼らは多くを語らず、無言を貫く。
「知り合いで聖騎士になれると言われて連れて行かれた子たちは皆、お前たちの前に現れたか?」
「何が言いたいんだ、アンタ達は」
「おい、よせ」
 質問に耐えかねた子供の1人が口を開くと、隣の子供が制する。
「連れて行かれた子たちは帰って来ず、代わりに聖獣を連れてくるんじゃないのか?」
「そんなわけないだろ! 皆、素晴らしい騎士になっていたさ!」
 それまで無言だった1人の子供が顔を真っ赤にして、ポテトに反論する。
 ともあれ、この場では聖銃士達も語ってはくれないと判断し、ローレットに連れて行って食事を提供するなど信用を得てからさらに情報を聞きだすことにする。
「折角だから、聖獣の情報を得たいよね」
「そうですね。手分けして一部を回収しましょう」
 アリアや正純は倒れたままのグリフォンやフレスベルグから身体組織の一部を回収し、持ち帰ることに。何かつかめればよいのだが……。
 そして、ポテトは残されたその聖獣達の身体を探る。
 残念ながら、元子供だったという確証までは得られなかったが、ポテトは内にあるその推論の否定にまでは至らず。
「どうか、この子たちが安らかに眠れますように」
 彼女は仲間と手分けをし、手厚く聖獣達を葬ることにしたのだった。

成否

成功

MVP

サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは居合で敵陣を切り伏せていた貴方へとお送りいたします。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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