PandoraPartyProject

シナリオ詳細

SnowMans

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●雪深い先の
「さっっむ……」
 もこもこの服に身を包んだ『Blue Rose』シャルル(p3n000032)が、それでもぶるりと体を震わせる。はぁ、と吐いた息は白く染まって消えていった。
 シャルルをはじめとしたイレギュラーズ9名は天義の地を、いや雪を踏んでいた。ざくざくと小気味良い音が鳴るものの、足はよく取られるし爪先から冷えが忍び込む。こんな場所で温かいものを摂取しても、あっという間に寒さで冷えてしまうだろう。
「終わったら暖かいところで温かいもの食べようね」
 鍋を囲んでも良いし、ローレットで温かいココアを飲んだって良い。大人ならばアルコールだろうか。熱々の肉を頬張るのだって、この後ならきっと幸せに違いない!
 そんな想像をしながら彼らは目的地まで歩き続ける。やがて見えてきたのは――風景に同化していて暫くわからなかったが――雪だるまの群れ。彼らもイレギュラーズに気づいたか、枝でできた腕をぴょこぴょこと上げ下げして歓迎したのだった。


●時を少々遡り。
「雪遊びしたい人ー」
「いないですかー!」
 シャルルと『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の声がローレットへ響く。とはいえユリーカの方が元気いっぱいなので、イレギュラーズの中には「何をしたい人だって?」と寄ってくる者も少なくない。
「雪遊びだって。雪合戦だっけ? ユリーカ」
「はいなのです! 雪だるまさんたちが気合入れてお待ちしているのです!」
 シャルルの言葉に力強く頷いたユリーカ。なんでも、天義の首都より程近くに大量の雪だるまが発生しているらしい。
「雪だるまさんたちは精霊の一種みたいなのです。遊んだらお帰りになるのです」
「どこに?」
「さあ……」
 遊ばなければ解けるまでそこに居続けるし、近づいたら雪玉を投げてくる。うっかり子供が近づいて怪我をしないようにということで依頼が寄せられたのだそうだ。遊んでやればちゃんとどこかへ帰っていくのだが、シュッと消えてしまうのでどこへ帰っているのかは謎である。
「そういうわけでシャルルさんと一緒に行ってきてほしいのです」
「ねえ聞いてないよ?」
「今言ったのです! 大丈夫、遊んであれば寒いのなんて雪だるまさんとどこかに行っちゃうのです!」
「最初から寒いところに行きたくないんだけど」
 ダメですか? とユリーカが瞳をうるっとさせればシャルルはうっと言葉に詰まる。暫し見つめあったのち、深くため息をついたのはシャルルだ。
「わあい! ありがとうございます!」
「まだ何も言ってないけど……まあ、いいや」
 短い茶番を眺めていたイレギュラーズにシャルルは首を巡らせ、そういうわけだからと自らの同行を伝える。
「大した戦力にはならないけど、よろしくね」
「皆さんなら大丈夫なのです! いってらっしゃい!」

GMコメント

●すること
 スノーマンズと遊ぶ

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。依頼における不明点はありません。

●スノーマンズ×たくさん
 この季節に現れる雪の精霊です。姿は150cm程度の雪だるまです。
 スノーマンズは喋りません。近づくと雪玉を投げてきます。枝の腕で雪もこねられるし投げられます。不思議ですね。
 スノーマンズは雪玉が当たっても破壊されません。が、ひっくり返って当たったアピールをしてくれます。1人で起き上がれるのでお気遣いなく。
 遊んでいない人がいれば率先して巻き込みに行きます。満足したらどこかへ去っていくようです。

 彼らは遊んで欲しいようですが、子供が近づくと怪我をするかもしれないと言うことで依頼が出されています。我こそはという大人&子供(イレギュラーズに限る)を募集しています。

●フィールド
 見晴らしの良い原っぱです。それなりに雪深く、足を取られることもそれなりにありそうです。
 天気は良いですが、雪が溶けるほどでもないでしょう。

●NPC
『Blue Rose』シャルル(p3n000032)
 旅人の少女です。皆様と一緒に雪合戦へ参戦します。寒いのは苦手ですが、この後暖かいひと時を過ごすために頑張るようです。

●ご挨拶
 愁と申します。寒いですね。
 楽しく体を動かしてポカポカになりましょう!
 それでは、ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • SnowMans完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年12月29日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
コユキア ボタン(p3p008105)
雪だるま
一条 夢心地(p3p008344)
殿
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
黎 冰星(p3p008546)
誰が何と言おうと赤ちゃん
トリフェニア・ジュエラー(p3p009335)
深き森の冒険者
ネリウム・オレアンダー(p3p009336)
硝子の檻を砕いて
一ノ瀬 由香(p3p009340)
特異運命座標

リプレイ


「はいはーい! 雪遊びしたーい!」
 ぱっと挙手した『特異運命座標』一ノ瀬 由香(p3p009340)は依頼書の写しをもらう。偉大なエウレカ・ユリカの娘――『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)曰く、雪だるまと遊ぶのが今回のオーダーとなりそうだ。
「ユリカさん、すごいんだね! あたしも頑張ってくる!」
「ふふん、そうでしょう! 暖かくしていってらっしゃいなのです!」
 お気をつけて、とユリーカの言葉を背に由香は空中庭園へと移動し、そこから天義の地を踏む。寒さにぶるりと体を震わせるが、目的地まではもうすぐ。仲間たちともそこで合流だ。

「びぇーーーっきしっ!」

「あ、あそこかな?」
 由香はくしゃみ……っぽい声に視線を巡らせる。雪の上にいくつかの影が見えた。
「びぇーーーーーーっきしっ!!!」
 そこには――殿がいた。『殿』一条 夢心地(p3p008344)がぶるりと体を震わせ、鼻水を凍らせていた。ああ、こたつとみかんが恋しい。そんな周囲では盛大なくしゃみもなんのその、と『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が周りを駆け回っては跡のついていない雪へ転がり込む。暖かな洋服に身を包んでいるものの、素肌が出ている部分は雪に触れるとひやっこい。
「ひゃ、つめたい! でもふわふわ!」
 冬とは寒くて厳しいだけの季節だと思っていた。けれどもここの冬はどうか。あのちらついていた雪は驚くくらい積もって、まるでケーキのよう。
「それ、味はないからね」
「ないの? ……そっかぁ……」
 『硝子の檻を砕いて』ネリウム・オレアンダー(p3p009336)の指摘にしょんぼりするリュコスだが、すぐさま機嫌を直して雪に飛び込んでいく。元気いっぱいな姿から雪へと視線を移したネリウムは、試しに新雪へ足を突っ込んでみた。ズボッと勢いよく足が埋まる。
(結構深い雪が降るんだねぇ)
 まるで故郷のようだ、なんてネリウムは思う。そして置いてきてしまった片割れ――自身と双子として生まれてきた存在のことも。あの時は顔面に雪玉を当てて、泣かれてしまったっけ。
「ま、体力は使いそうだけど。雪遊びで依頼が達成できるなら平和でいいもんだねぇ」
「ええ、本当に……っくしゅ!」
 『パウダー・アクアの拳』黎 冰星(p3p008546)かくしゃみをひとつ。他者の視線に気づいた彼は照れたように笑った。
「今日が楽しみで、なかなか寝付けなくて……風邪をひかないようにめいっぱい体を動かさないといけませんね」
 むしろ、もう風邪をひいているかもしれないけれど。だってその証拠に、イレギュラーズに混じって雪だるまと青薔薇が隣り合っている。しかも雪だるまが「そうですね、たくさん遊びましょう!」なんて言ってる。
「あれ、今回参加するメンバーに雪だるまさんがいる……?」
「はい。今日をとても楽しみにしてきました!」
 やはり雪だるまも薔薇もあるし、雪だるまに関しては喋ってすらいる。その雪だるまはふぅわりと空気に溶けて、代わりに少女がひとりそこへ立っていた。少女―― 『雪だるま』コユキア ボタン(p3p008105)はにこりと柔らかな笑みを向ける。
「皆さんで、沢山遊びましょう!」
「うん、よろしくね! それで、そっちは――」
 と由香が視線を薔薇へ向ける。青いそれはとある幻想貴族を思い出させるようだが、どこからともなく聞こえてきたくしゃみと共にその姿がブレる。ボタンは目を丸くした。
「さ、さむ……」
「シャルルさん! 真冬に薔薇が咲くなんて、と思っていましたけれど」
「大丈夫……?」
 震える『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は由香に大丈夫じゃないと零す。これはもう、暑いくらいになるまで体を動かすしかないだろう。
「シャルルさんも頑張りましょうね。雪遊びなら得意なので任せてください!」
「まあ……もう来ちゃったし。頑張ろうね、ボタン」
 シャルルの言葉にボタンは嬉しそうに笑う。見慣れた銀世界ということもあってとても楽しみだ。
「トリフェニアさんとネリウムさんはあたしと同じくらいに召喚されたんだよね? よろしく!」
 ええ、と頷いたトリフェニア・ジュエラー(p3p009335)はなんとも言えない表情で雪景色を眺める。さて、雪遊びなんて何年振りか――考えるのはよそう。悲しいし虚しくなってくる。けれど久方ぶりではあるだろう、厚地のコートと革手袋をしていても冷気が忍び込んでくる感触は慣れない。
(あとは、そうね……コユキアさんに間違えてぶつけないよう、気をつけないと)
 トリフェニアはちらりとボタンを見る。雪だるまになられたら本当に区別がつかないし、そうでなくても彼女は床に溶けてしまいそう。それを言ったら傍らのシャルルとて、全体の色素が薄いから雪だるまに紛れてしまいそうである。2人とも何かしらの目印を決めるとして、もし当ててしまったら謝るしかない。
 メンバーも揃ったのでもう少し雪原を歩いていけば、今回の相手となる雪だるまたちがぴょこぴょこと動き回っている。どんな原理で動いているのかは謎だ。
「こ、これは…… まさに幼い頃に見た夢のままです!」
 感動した『狼拳連覇』日車・迅(p3p007500)は危うく泣きそうになるところを堪える。ボタンを見た時とは比でない感動だが、ここで流れる水分は凍る定めなのだ。現に鼻水を凍らせた夢心地は彼らの前へ仁王立ちする。
「童たちが外遊びをするのに危険というならば、この麿が一肌脱ぐとしようかの」
「僕も童心に返って遊ばせて頂きます!」
「そうですね! では……

 こんにちはあー! あーそびーましょー!」

 冰星の言葉に雪だるまたちが気づき、一斉に手をぴょこぴょこ上げたり下げたりする。かわいい。歓迎されているようだ。
「……ところで、雪の精霊って毒は効くのかな」
「えっ、」
 聞いてしまったボタンがぴしりと固まると、ネリウムは冗談だと肩を小さくすくめて見せる。そんなことをしなくたって成功する依頼だ。わざわざ不穏なことにする必要もあるまい。
「それなら良かった……」
「遊びやすい平地、敵もナシ。邪魔されるようなこともなさそうですね!」
 ほっと胸を撫で下ろすボタンの隣で冰星が安全確認。そこへ迅が雪の壁を作りたいと提案する。
「お互いに身を隠せた方が楽しいでしょう?」
 雪だるまもぴょこぴょこ跳ねる。こいつら、なかなか話がわかるらしい。そんなわけで雪の壁を作ったなら、雪合戦の始まりだ!

「ぴょこぴょこかわいいー!」
 由香ははしゃぎながら雪玉を投げつける。遊ぶ彼らもさることながら、当たってひっくり返る彼らも可愛らしい。リュコスも由香と共にぽいぽいと雪玉を作っては投げて、楽しげに威嚇する。
「ぼくたちが相手だぞ! Gaoooーー!!」
 威嚇のポーズにびっくりした、というように両腕を上げて跳ねた彼らは負けじと雪玉を作り始めた。
「シャルルもさむがってないで遊ぼう!」
「寒いもんは寒いよ……」
「大丈夫です! すぐ暖かくなりますよ!」
 リュコスに、そしてボタンに促されたシャルルも雪玉を投げ始める。今回は口を尖らせることの多い彼女だが、初めてしまえばそんなものはどこへやら、楽しそうな表情をしていることに彼女は気づいているだろうか?
 ボタンはそんな彼女にふふっと笑みを浮かべ、気配を殺しながら雪だるまたちに近づく。そぅっと、そうっと――雪玉をシューッ!
「ああっ」
 惜しいところで外したボタン。雪だるまの雪玉が当てられてしまうけれど、その冷たさに触れながら楽しそうに笑った。

「覚悟ー!」

 そんな声と共に雪だるまへ接近する影。迅である。彼もまた、なかなか雪玉が命中しない1人。銃の腕を思い出せばさもありなん、しかしだからといって外してばかりいられようか!
 故に――外さないほどの距離から投げれば、必然的に命中率は当たる。課題は接近中に狙われることだが、彼よりも素早いスノーマンなんぞいるはずがない。多分きっとメイビー。
「うおおおおおお!」
 足のとられる雪にもめげず突き進む迅。手から離れた雪玉が雪だるまへ命中すると共に。
「うおおおおおお!?」
 周囲の雪だるまから、格好の標的と集中砲火(雪玉)を喰らったのだった。
(シュールだわ……)
 その様を雪壁から隠れて見ていたトリフェニアはごくりと喉を鳴らす。見ているだけなら可愛いのだが、それらが全て突然動き出し、しかも雪玉を投げてくるなんて。
 しかし幸いなことに、そこまで個々の投げるペースは早くない。これならばトリフェニアにも攻撃の機会はあるだろう。雪玉を作ったトリフェニアは、雪玉の止んだ隙を狙って近づく。
「えいっ」
 投げて届くほどの距離。必ず当たるとも限らないが、ぺしゃりと命中したのを見たトリフェニアは喜色を浮かべて――飛んできた雪玉に、慌てて壁裏へ逃げ込んだのだった。
「なっはっは! 良いのかのう、雪だるまん達よ?」
 その中で堂々と仁王立ちするこの男、夢心地。鼻水は相変わらず凍っているが、それをものともさせないオーラを見に纏う。
 雪玉は玉だ。つまり球技だ。蹴鞠キングの称号を持つ自分に球技で挑むなど、もはや試合前から負けを認めたも同然!
 夢心地はガッチガチに固めた雪玉を『上』へと放り投げる。誰もの視線がそこに集まった。麿はそれを一度リフティングして――蹴った。

「超! シューーーーーーーーッ!!!」


 そんなこんなで賑やかな雪合戦であるが、ちゃんと平穏な雪合戦をしている場所もある。
「あうっ」
 ぺしょ、と雪玉の当たる感触。リュコスはふるふると頭を振り、再び雪を丸めて投げつける。遊びなのだから躱しいなら躱せば良いし、そんなことを考えなくたって構わない。リュコスは手当たり次第にびゅんびゅんと投げていく派だった。
「シラユキさん、剛速球ですね」
「フブキさん、とても素早いです!」
 ボタンは雪だるまたちを観察しながら応戦する。どうやらこの雪だるまたち、それぞれに個性があるようだ。
(華奢な腕……腕? で雪玉を作るのと投げるのは変わりませんが)
 あれはとてもじゃないがボタンにできない。彼女が雪だるまになって出来ることといえば、喋ることと転がることくらいである。しかし――できてしまったらそれはそれで、紛らわしいかもしれない。
「喰らえッ雪団子スマッシュ!」
「ひゃっ!?」
 そんな声と共に思わないところからのフレンドリーファイア。冰星もボタンに間違えて投げてしまったと気付いて慌てる。
「あわわごめんなさい大丈夫ですか!?」
「はい、大丈夫ですよ」
「一応休んできたら? ほら、」
 シャルルの指し示した場所にはいつの間にやら、かまくらができている。そこではネリウムがまったりと過ごしていた。
「あったまる……」
 換気に注意しながらも火種へ指を近づければ、じんわりと血行が良くなってくる。半地下のように掘り進めるのも一苦労なのだ。
「さて、雪玉量産……あ、こら、アンダースローで投げ入れるの禁止」
 ちょっかいを出しに来た雪だるまへ休憩所なのだと言えば、雪だるまはぴょんぴょん跳ねながら戻っていく。こちとら体力お化けではないのである。
「お邪魔しても良いですか?」
「ん? もちろん、どうぞ」
 そこはやってきたボタン。ここは休憩所なのだから、とネリウムは頷いた。

「うおおおおおお、おっっ???」
 負けずに特攻していた迅、より深い場所で足を取られて顔面から雪に突っ込む。そこへぽいぽいと雪玉を投げられる様は――遊ばれている。これは思い切り遊ばれているぞ!
「失敗、失敗! 次こそこうはいきませんよ!」
 けれど迅は楽しそうに笑い、よいせと起き上がる。勝ち負けでも成功失敗でもない。楽しめる事が大事なのだ。
「援護しようか?」
「なら私も」
「おお、よろしくお願いします!」
 シャルルとトリフェニアの援護を得た迅は再び雪だるまへ突っ込んでいく。彼女らも狙われるが、そもそも危険なものを仕込んでいるわけではないのだから本気で避ける必要もあるまい。
「宝石とか入れてたら歓迎するんだけど」
 流石に石はあっても宝石はあるまい、なんて1人で思って小さく笑ったトリフェニア。彼女は暑くなると、皆が投げ合っていない場所で雪へと倒れ込んだ。

「超! オーバーヘッドキーーーーーーッ!」

 夢心地はトリッキーに攻めていく。雪玉もあえて大きく作っているので外す可能性も低い。
「当たらぬ、麿には当たらぬぞぉ!!」
 雪だるまたちが対抗して投げてくる雪玉をみょいーんとイナバウアーで避けてみせる。こんなの余裕と言わんばかりのドヤ殿である……が。
「ぬぎゃー! 麿ばかり狙うでないわ!!!!」
 ムキになった雪だるまたちの猛攻が麿を襲う。まあ、ある意味――この中の誰よりも温まる事だろう。
 冰星も勢いの良い雪玉を投げつけるからか、雪だるまたちからも容赦ない攻撃が降り注ぐ。お陰で上着まで真っ白だ。
「こりゃあ負けていられないですねえ!」
 にっと冰星が笑い、雪だるまたちもにこにこ笑顔で向かってくる。同じ場所で同じ思いを共有できていることに、嬉しさが止まらなくて――冰星は満面の笑みで雪玉を振りかぶった。
 その傍らで。
「カザバナさんとっても可愛いです!」
「……コユキアさん、そのお名前は?」
 喜ぶボタンにトリフェニアが首をかしげる。いや、気になることはとてもあるのだけれど。どうして雪だるまたちを着飾らせているのか、とか。
 トリフェニアに聞かれたボタンは小さく照れ笑い。親近感が湧きすぎて彼らへつけたのだとか。
 冬が終わってしまっても、名前があればきっとそれぞれの顔を思い出せる。そんな気もするのだ。
「お返し、えいえいっ」
 リュコスは逃げ惑いながら雪玉を投げて応戦する。冷たさにびっくりもするけれど、嫌ではない。むしろ――ひたすら、冬を楽しんでいる。
「こっちもいるよっ」
「! シャルルさん」
 シャルルが雪壁から顔をのぞかせ、雪玉を投げつける。リュコスも一緒になって畳みかけると、雪だるまは参った、というように転がって足をばたつかせたのだった。



 楽しい時間はあっという間だとよく言うが、そこで雪だるまたちは名残惜しくならないらしい。
 ひと段落ついたところで雪だるまたちがぴょんぴょんと跳ねだし、イレギュラーズたちに向かって細い腕を振る。そろそろお別れの時間なのだとイレギュラーズは察した。
「冬だって、いつか終わるんだもんね……」
 それでも寂しいことには変わりない。けれどここで駄々をこねたらいけないのだと思うから、由香は来年の約束を口にする。
「また遊ぼうね! 来年もあたし、待ってるから!」
「ええ、ご縁があればまた一緒に遊びたいですね!」
 にっと笑みを浮かべた迅と、それから冰星も大きく手を振って見送る。これが依頼だなんて思えないくらいに楽しい時間だったのだ。
「楽しかったです、ありがとう!」
「よいお年を!」
 遠く、小さくなって消えていった雪だるまたち。見送ったリュコスは周りの雪で雪だるまを作り始める。彼女の作った雪だるまは動かないけれど、彼らと一緒に遊んだ記念にはなるだろう。
「手伝います! 大きく作りたいです」
「それならボクも」
 ボタンとシャルルも手伝い始めるのを横目に、トリフェニアはボタンが雪だるまたちに連れて行かれていなくてよかったと胸を撫で下ろす。もしかしたら同じ雪の精霊同士、連れて行かれてしまったかも……なんて心配していたから。
 ネリウムは用意していたタオルを仲間たちへ配る。朝が冷えてしまえば風邪をひいてしまうかもしれない。
(まぁ、薬の実験台になってくれるんならそれも歓迎なんだけど!)
 なぁんて。これも冗談、冗談。
「さて、帰りましょうか。温かい部屋でゆっくりしたいわね」
「炬燵でみかん……びぇーーーーっっきし!!!」
 トリフェニアの呟きが夢心地のくしゃみに消される。どうやら本当に、早く撤退した方が良さそうである。
「あ、はいはい! 鍋食べたーい!」
 由香の提案で口の中が鍋の気分になった一同。暖かな具材をはふはふと頬張りたい。彼らの決断は早かった。
(まるで、お仲間に出会えたようでした)
 ボタンは雪だるまたちが消えた方向を振り返る。この思い出はどこまでだって連れていこう。
 ――雪が溶けて、また1年が巡るその先まで。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした、イレギュラーズ。
 我が家も今夜は鍋です。どうぞ暖かくなさってね。

 それでは、またのご縁をお待ちしています。

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