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シナリオ詳細

ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅰ~イレギュラーズたちよ、立ち上がれ~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Scene1:Opening
(綺麗な風景。鳥のさえずり)
(配給会社のロゴ)
(複数人の足音)
GM注:ここから、映像はブレが激しく、急激に心配になる画質になる。

ビーキュウ・グルメスキー(以下、娘)「はあ……っ、はあっ……」
ビーキュウ・エイガスキー(以下、父)「大丈夫か、グルメスキー! もう少しだ。この川を渡れば、『ヴァル・ベールデ共和国』のやつらから逃げられる!」

GM注:この後、作中で『ヴァル・ベールデ共和国』には触れられることはないため、この固有名詞は忘れて構わない。

(追手から身を隠し、木の陰にしゃがみ込む二人)

父「大変なことになったな(こりゃちと骨が折れるかもだぜ)」
娘「寒い……ママの作ったバーガーが食べたいわ」
父「実のところ、あれは冷凍食品だったんだがな」
娘「冷凍食品が我が家の味ね」
(乾いた笑い)

(以下、冗長な親子のやり取りが3分間繰り広げられるが、GM判断でカット)

追っ手「いたぞ!」
娘「あっ(つまづく)」
父「グルメスキー! おのれ、アクダヨー大統領め!」
アクダヨー大統領「きえーっけっけっけ、とうとう見つけたぞ、グルメスキーどもめ!」

(アクダヨー大統領、複数人のチンピラを伴って現れる。
派手目のつるつるした衣装は、かなり浮いている)

アクダヨー大統領「『トラストの鍵』を、何処へやったか教えてもらおうか!」
娘「パパ!」
父親「グルメスキー!」

GM注:この後、作中で『トラストの鍵』には特に触れられないため、この固有名詞はマジックペンで塗りつぶしておいていい。脳のメモリに控えるだけ無駄だ。

娘「やめて! 私は本当にそんなもの知らない!」
アクダヨー大統領「そうか? それならそれでいい。指定の場所に身代金を持ってきてもらおうか!(?)」
父親「グルメスキー! グルメスキー!」
アクダヨー大統領「うるさい父親だな! 黙っていてもらおうか!」
(まるでCGのようなビームが放たれる)

父親「うぎゃあああ!!!」
娘「いやああああーーーー!」

 グルメスキーの腕を乱暴に引っ張っていなくなるアクダヨー大統領とその部下たち。父親はその場に倒れる。

父親「グ、グルメスキー……」
アクダヨー大統領に雇われたアグリア・ガレトヴルッフ「帰りますね(帰りますね)」

●ヴァル・ベールデ共和国の野望エピソードⅠ~イレギュラーズたちよ、立ち上がれ~
 長い、長い映像だった……。
 画面の端々から、低予算を感じさせられるような……。
 めまいがするような……。
「と、いうわけだ」
「は?(は?)」
『願いし黒刀』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は思わず依頼主のビーキュウ・エイガスキーに聞き返した。
「わかりにくかったか?(難しかったか?) まあ待て。若者がそう急ぐもんじゃないな。よし、もう一度再生してみるとするか」
「いや、わかった。わかってないが、わかった。えっと……」
「娘のグルメスキーが、アクダヨー大統領に攫われてしまったんだよっ!」
 急に怒り出すエイガスキー……。情緒が安定しないおっさんだ。
「仕込みとかではなく?」
「仕込みではない、断じてない!」
「追われる前から映ってたような……」
「うーむ。アクダヨー大統領との因縁を話すと長くなるが、そうだな……」
「いやいい、わかった。娘を取り戻せばいいんだな?」
 これ以上あの映像を見せられては気がおかしくなりそうだ。
「頼んだ! 勝利の暁には、我が娘が腕によりをかけてB級グルメをご馳走しようじゃないか! あ、ちなみに私も、君たちの雄姿を記録する心づもりだ。この練達の映像記録装置を片手に、ついていかにゃならん! いざ!」
 気にかかるのは……あまりに戦闘慣れしてなさそうな人員に混じった、……ひとり。セーラー服の後姿。
(アグリア……?)
 ガレトブルッフ=アグリア。もしあれが彼女なのだとしたら……危険かもしれない。いや、やる気なさそうだったが、露骨に。危険……かなあ?
「タイトルは何にしようかな~、ヴァル・ベールデ共和国の野望エピソードⅠ……」
 上機嫌のエイガスキー。なんてコケそうなタイトルなんだ……。

 下手なことをするとこれが後世まで残るのか!? このクオリティで?

GMコメント

なんてこった!
イレギュラーズたちはまったくこの事件を解決せにゃならんかもだぜ!
……おそらくな!

●目標
・グルメスキー嬢の救出
オプション:B級映画っぽく
 すごく馬鹿馬鹿しくてもいいですし、ひたすらにかっこよくてもいいです。
 なぜか一部のシーンだけクオリティが高いことありません!?
 予算はあまりありません。身代金も払えません。
エイガスキー「高いカメラ買っちゃったかもだぜ」

●敵
「来たか……イレギュラーズよ!」
アクダヨー大統領……ヴァル・ベールデ共和国の大統領を自称していますが、きっとその設定が息を吹き返すことはないでしょう。
設定上意味のありそうなオーブ(※触れられることはない)を持っていますが銃で戦います。

・両利き
 別のカットで武器を逆に持っていたりします。ミスじゃないです。
・ポテンシャル
 シーンによって、強さがまちまちだったりします。OPで強くなかったか?
 強い時と弱い時の振れ幅がひどい。
・治癒力
 次のカットでケガが直っていたりすることもあります。ん……?

 たいていのことは「なるほど!!!」で飲み込みます。みんなそうです。

戦闘員×たくさん(20とか)
 アクダヨー大統領と志を一つにした戦闘員たち。カメラにちょっと慣れていない。倒すとそこのカットだけ「人形だなこれ?」って感じになります。お子様にも安心ですね。

ゲスト:ガレトブルッフ=アグリア
 あまりのしょうもなさに帰ろうとしていましたが、エイガスキーがライバルの紫電様を雇ったと聞いてとどまりました。戦えるのを楽しみにしています。
 基本ライバルを狙いますが、そこそこ横やり歓迎の構えのようです。
 派手な演出がしたいときはアグリアさんを頼るといいでしょう。
 あ、でもアクダヨー大統領とかは邪魔だと思っています。邪魔されるとそっちには怒ります。

 このひどい低予算の中で、唯一規格外の実力を持ちます。
 至近でガンガン吸収していきます。
……あの、ほんとにこれに出演してよかったんですか?
 倒し切らずとも、満足すれば帰ります。

●場所
 受け渡しの場所は、なぜか依頼を受けたエイガスキーの邸宅と酷似しています。
 予算をケチって同じセットにしたかに見えますが、きっと設計士が同じなのでしょう。
※予算(シナリオ)の都合であり、エイガスキーは黒幕だったりしません。

●登場NPC
ビーキュウ・エイガスキー(父)「カーット!!! いいぞ!!! すばらしい!!!」
 娘を取り戻してイレギュラーズたちの活躍も描ければ一石二鳥じゃないか!? やった! これで億万長者だ。そうしたらたくさん新しい映画を撮るんだ! そうだろ!?
 B級映画というものに憑りつかれて万年金欠気味。
 爆発とサメが好き。
 たま~~~~~~~に、ごくたま~~~~~~~~に、良い映画をとることもある。だいたいコケる。
 この一件が終わったら、イレギュラーズたちの活躍を劇場で配給しようと画策中。

ビーキュウ・グルメスキー(娘)「やるじゃない!!! 今夜はパーティーだわ!」
 ヒロイン。しかし登場する時間は少ないと思われる。牛丼とかバーガーが好きよ!
 撮影が終わったらご飯をおごってくれるそうです。

●レイティング
 このシナリオのレイティングはG (General Audiences)です。
 ストーリーや言葉に暴力的な表現やショックを感じるようなものが最小限にとどめられています。
 良い子のお子様にも安心してご覧いただけます。たぶん。

  • ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅰ~イレギュラーズたちよ、立ち上がれ~完了
  • GM名布川
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年12月29日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
※参加確定済み※
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
九重 縁(p3p008706)
戦場に歌を
グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)
灰色の残火
微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐
一ノ瀬 由香(p3p009340)
特異運命座標

リプレイ

●スタッフロール
 この物語(リプレイ)を――。
 妻と娘、そして
 娘を救ってくださった、
 勇敢な同志たち。
『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)
『願いし黒刀』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)
『気丈な覚悟』九重 縁(p3p008706)
『灰色の残火』グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)
『折れた忠剣』微睡 雷華(p3p009303)
『特異運命座標』一ノ瀬 由香(p3p009340)
 彼ら8人に、捧げます――。

●提供:Working ANdroid-COoperative life
「誘拐だって!? こいつぁコトデスネ、奪還せにゃ」
 怪しげな翻訳字幕を伴い参上するわんこは、完全に世界観を見切っていた。
「……全力を尽くすさ」
 義弘は重々しく告げた。
 卑劣なアクダヨー大統領の行いに憤っているのだろう。
 映し出される縁の横顔。きりりと前を向き、紫の瞳は決意を秘めている……。

「カーット! カット!
いや~いいね、亘理くんっ! すごく男らしいカットだったよ! わんこクンも九重クンも素晴らしかった! まさにエンターテイナーだ!」
 こほんと咳払いする縁。
(そろそろ故郷ではグラタンバーガーの季節でしたね……。たべたいなあ……)
 なんてことを考えていたのは内緒だ。
「悪辣な大魔王とか許せませんね! あれ? 帝王でしたっけ? 大統領?」
「魔王とは聞き捨てならぬな?」
 ルーチェが音もなく闇から現れる。
 ダークネス・ルーラー。元の世界では、「魔王」であった。
「おおっ、いいぞいいぞ! 真似するちびっ子がたくさん出るだろうなあ」
 真似しようとしてできるものではない。
「身代金も用意せずカメラに財産ぶっこむとは、全く娘想いのパパさんデスネ!!
……へっ。嫌いじゃねぇデスヨそういうの」
「わかってくれるかね……!」
「当然じゃないデスか……」
 生まれる友情に、額を押さえる紫電。
(……どうしてハクイスキーといいカタナスキーといい彼らの親族は変なのばかりなんだ……帰りたい)

「これが二度目の依頼だよ~! 初依頼は変わった依頼だったけど、今回の依頼はまともな依頼だね!」
 ぱっと顔を輝かせる由香。
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
 グリジオのそばには、きらきらと舞うエフェクトがある。
『娘が攫われたのだわ!』
『王道の救出大作戦なのだわ!』
 この依頼を受けるとき、双子姫はきらきらと依頼書を光らせていたものだ。「CHECK!」みたいな表示が出んばかりに。
「……お前らさてはB級映画好きだな?」
「困っている人がいるなら、全力で助けるぞー!」
「まあ、そうだね……女の子が攫われてるなら、解決しないとね」
 雷華は眠たげに時計を見た。
「90分くらいは頑張ってみるよ、うん」
 それ以上は……視聴者が耐えられそうにない。
(正直これ俺達必要なのか? と思わないでもないが、やるからには……な)
 なんだかんだ真面目な義弘だった。

●唐突に挿入されるマスターシーン
「紫電……『わたし』は『あなた』、『あなた』は『わたし』……」
 世界をいくつ巡っても……きっと、出会うことになると思っていた。
「きっと、同じことを考えていますね」
 同じ源流を持つ――わたしたちは、よく似ているのだから。
(ああ、アグリア。そうだろうな)
 共鳴する、相反するふたつの心。
(わたしたちは――)
(オレたちは――)

――とても、帰りたい。

 正直言って、紫電はやる気のないアグリアに全力で同意している。
(わかる、わかるぞこのくっだらない茶番から抜け出したい気持ちは)
 あいつはオレを得るために何もかも利用するかわりに、利用(ふりまわ)されるのは嫌いだ。(今回はそんなに危険じゃねえだろ……多分)
 ここで決着をつけたい、そんな気持ちもある。
 いや、ほんとうにこんな状況で決着していいのか?
 疑問を押し殺しながら進んでいく。
「わぁ、森ですね!」
 冒険らしい冒険に、由香のトレジャーハンターの血が騒ぐ。しかしほかのメンバーは若干つらそうだ。
 歩いても歩いても、同じような雑木林が続くのだ。
『ありがちな尺稼ぎなのだわ!』
『予算が少なくて済むのだわ!』
「言ってやるな」
 ため息をつきながら、枝をどけるグリジオ。
「……前も通らなかったか? いや……気のせいか」
 と、義弘は納得しておく。
 縁は、「私には秘策があります。現地で落ち合いましょう」と言っていた。
 ルーチェは早々に飽きて飛んでいった。
「これもアクダヨー大統領一味と戦って、娘さんを助けるためだもんね! あれ、でも、エイガスキーさん。国家が相手になるのかな……?」
「うむ、これは危険な任務になるだろう」
「……そうですね。奴らはもはや国家という規模と言っても過言じゃないデスよ」
「うう……これも正義のためだもん、あたし、負けられない、頑張るぞー!」
(長く苦しい過程を越えて、敵の本拠地に辿り着くんだね……)
 DANGERと書かれた看板があったが、とくにこの伏線が回収されることはないだろう。
(ちょっと……眠いかもしれない)
「おっと、ここをまっすぐ行って2回右に曲がればたどりつくはずだっ!」
 なぜか本拠地を知っている依頼人。
(……B級どころかZ級レベルの低予算感含めて依頼主とアクダヨーがグルにしか見えないんだが……本人のあの態度を見るにシロ……なんだろう。うん、きっと、めいびー)
 このガバガバ具合は、どちらかといえば設定ミス的なあれだろう。それか悪の秘密結社はイレギュラーズにWeb広告でも出してたんだろう。

●サントラは評判がいい
「ここが受け渡し場所だね……?」
「うむ!」
(ここに悪のアクダヨー大統領一味がいるんだね、緊張する……。心臓もどきどきする……)
 なんたって、国家を相手どる戦いなのだ。
 ぎゅっと手を握りしめる由香。
(でも、攫われたグルメスキーさんはもっと怖い思いをしてるんだろうし、あたし、弱気になってる場合じゃないよね! 頑張る!)
 頑張る由香の姿は、「この映画の良心」との評判である。

「やめて! 私は知らないわ! その秘宝については、なにも!」
「……こっちだな」
 義弘は耳を澄ませる。秘宝は、きっとまた関係のないブラフだろう。
「来たか……っ!」
 扉がばあんと開く。だが。それと同時に……天井がぶっ壊れた。
 ルナ・ヴァイオレット。
 全備重量3.5t。異世界の金属で構成された縁の愛機。
 何らかの映画的なCGパワーで、見かけだけは本来の姿を取り戻している。
 胡乱げな世界観にSF(すこし・ふしぎ)なスパイスがどばどばと投入されようとしていた。
「……アーアー。救出ニ、キマシタ。グルメスキーオ嬢様。私ハエイガスキー様ニツクラレタロボットナノデス!」
「そんな……! まさか! お父様が!」
「お父様……!」
「……!?」
 そう、ルナ・ヴァイオレットは、アクダヨー大統領に作られたアンドロイドだ。ん?
「ココロを得たというのか……! 歌唱機能は必要がない。削除だといったはずだ!」
「いやです。私はもっと歌いたい!」
 挟み込まれる回想シーン。
 響き渡る曲はシンセサイザーを効かせた切ないメロディ。すれ違って道を分かつ二人の姿。
「どうも、アンドロイドのわんこと申しマス」
 二体目。
「その関節の可動部は……お姉様!」
「オー、妹デスね!」
 本当にB級映画みたいな設定だが、わんこはといえば純然たる事実なのであった。
「ふむ、景気よくやっているようだな」
 ぶわりと、空いた穴から舞い降りるルーチェ。
「今度は魔王……だと!? おのれ、私の野望を邪魔するか!」
「余たちが来たからにはもやはその野望は潰えたも同然よ。どうだ? 降伏するなら命だけは助けてやらんことはないぞ」
「そうデスよ。囚われのお姫様に伝言を……愛してる、すぐ助けると伝えといてクダサイ。メッセンジャー希望の奴は助けてあげマスヨ?」
 ルナ・ヴァイオレットとわんこアンドロイド。そして、敵に回したらやばそうな魔王に気おされて若干迷った戦闘員もいたようだが、どうしようか考えているうちに尺が足りなくなった。
「……ふっ、いい度胸であるな。ならば……」
 ルーチェの角が光り輝く。
 ばらまかれるカーストガトリングが、破滅的に地上を覆いつくしていった。

●一触即発
 空間を、ぶった切るような一薙ぎ。
 斬神空波。
 それを受け止める金属の音が響き渡った。
 心は高鳴る。
(最初から全開ですね、それでこそ……紫電です♪)
 退屈しすぎていたところですから。
 アグリアの返す刃は、重い。着実にこちらの体力を奪っている。
「……! おおおおっ、すごい勝負じゃないかね!」
 紫電にはわかる。アグリアは、これでも”やる気がない”。
「下がってろ」
 本気で相手どらねば大けがだ。幸いにも、仲間がカバーに回ってくれる。
「さっさと娘を離せ、さもなければ、お前を殺す」
 腹の底から響くような声。義弘が迫っていた。
「貴様、何者だ!」
 義弘はスーツとシャツをばっと脱ぎ捨る。
 背中の桜吹雪があらわになった。
 鍛え抜かれた体は、まるで鋼鉄のようであり。
 そこにはホンモノの刃物傷や銃創がある。いくつもの修羅場をくぐってきた男の証だ。
「この桜吹雪に懸けて、大統領、お前を倒す」
「そういわれてほいほいと開放する愚か者がいるかね!? さようならだ、正義のヒーローくん」
 銃弾が放たれる。
 ああ、こんな戦場も、懐かしいような気がする。……いやもっとシリアスだったが。
「逃げて―! 義弘さんっ!」
 それにかまわず、義弘はそのまま突撃をする。
 スーサイド・ブラック。自身への反動をいとわずに死を刻み付ける。
「ぐ、ぐぎゃあああー!」
「今のうちに」
 手を差し出すグリジオ。
「くそっ、エイガスキーの手に落ちるくらいならっ! 撃て! 撃て!」
「大丈夫」
 グリジオは、安心させるように笑った。
「でも、ひどいけが……!」
 念のために記録しておくと、かすっただけで、かなり軽傷に見える。というのも、グリジオがうまいこと威力を殺したからである。
 野暮なことは言うまい。グリジオは頷いた。
「危険だから、下がっててくれ」
『主人公たちをサポートする老兵ポジションなのだわ!』
『序盤は役に立つけど主人公が成長したら追い抜かれて消えるポジションなのだわ!』
『でも何故か続編やサイドストーリーで人気が出るのだわ』
『わたしたちもおめかしするのだわ』
「いやお前ら見えてないし映りもしねぇだろ」
 ラブストーリーエンドは、残念ながらない。
 グリジオは高らかに名乗りを上げる。
「ほっ!」
 その間に、わんこがぐんぐんと距離を詰めていた。
(そう……戦闘シーンに入ってしまえばこちらのもの)
 予算が無くても、アクションで魅せることができるからだ。
 ぴぴぴとセンサーが発動し、輪郭だけを抜き出したボーンが表示される。ターゲットのみを識別し、照準が合う。
 Target1、2、3。効率:100パーセント。衝撃:とてもすごい。
 乱撃があたりを埋め尽くした。
(己の膂力のみで繰り出すノースタントの力技ッ!!)
 跳躍からのアクロバット。そして、重力のうちに3回転捻り。どかんと吹き飛ぶ構成員たち。
 揺れる狼耳。
「天国で逢おうぜ、坊や達……」
 きらりと3カメまで使って飛んでいく戦闘員。
(……何やってんのって? 尺稼ぎデスヨ尺稼ぎ)
 一発撮りは楽ではないのだ。
「いきますよ、初号機!」
「はい!」
 縁はすう、と息を吸った。
 ルナ・ヴァイオレットが起動した。
 ゆっくりと展開し、ステージとなった。
「ふぉおおおおお!」
 エイガスキーは興奮しすぎて頭を打った。
 そっと、歌を紡ぎだす。
 動く予算がな……いからというわけではない。
 ルナ・ヴァイオレットは歌を歌いたいというアイドルの心から生まれた存在。人を傷つけるために生まれたものではない。
 英雄叙事詩。高音を歌いこなし、ロボティクスを感じさせるその歌声は徐々に――徐々に、人のぬくもりを帯びていった。
「これって……!」
 歌うは英雄の歌。希望にあふれるヒーローの歌。
(……! 元気が湧いてくる。そっか、これが……これが、イレギュラーズの力、みんなの力なんだ!)
 その歌声を聞いていると、不思議と。……力が湧いてくる。由香は敵に向きなおった。
(大統領は亘理さんが、アグリアさんは、紫電さん。あたしは、自分にできることを……するの!)
「キーー!」
 はいて捨てるほどいる戦闘員を、由香の衝術がいともたやすく吹き飛ばす。ご安心あれ。命を奪うつもりはない。
(キイー! なんとか生き残ったぞ!)
「うん……ありがとう。これで、よく狙える」
 雷華は、戦闘員たちの群れに飛び込んだ。次々と迫りくる戦闘員たちを、軽くいなしていく。振りかぶられた拳を、蹴りで受け止める。
 複合戦闘術・蹴剣技。振りかぶったナイフはフェイントに使った。そのまま回し蹴りを決める。そして今度は蹴りがおとりだ。
 本命は、ナイフ。
「馬鹿な。歯が立たない……だと!?」
「遅いな、止まって見えるぞ」
 ルーチェは雑魚の攻撃を次々と受け止め、威力を殺した。今にも振るわれようとしていた武器を蹴り上げると、魔力撃を放つ。
 派手な爆発が折り重なった。

●雌雄を決する
(速い、上に……重いっ!)
 アグリアの捨て身の攻撃が来る。
 紫電は、捨て身の攻撃に転じるわけにはいかなかった。五月雨。無形の術。切れ目の無い刺突と斬撃の絶え間ない繰り返し。
 苛烈でありながら、遊んでいるかのような軽やかなリズム。
――楽しんでいる!
「……」
 攻撃によって削られていくたびに。
「まだ、終わりませんよ」
 縁のスーパーアンコールが響き渡る。
「いい音ですね。もっともっと続けられます……♪」
 まるで筋書があるようなその一幕。
 それが一切の打ち合わせなしに行われているとは信じがたい。相手の実力を知って、そしてついていく。一度リズムを外せば即座に終わりを迎える――だろう。
 1倍速、2倍速とすさまじい速さで繰り広げられる紫電の攻撃。対してアグリアは一撃一撃が確実で、重い。
「素晴らしいです……とても楽しい。生きている、という気がします」

「いけーっ、我が改造人間たちよ!」
 後付け設定によって、どこからともなく戦闘員たちが現れる。
(ワンパターンは、ちと飽きたな)
 ルーチェは戦闘員を前に、ふわりと飛行する。捻じれた二つの角が光り輝いた。
「ばかな、その技は……」
(ふむ、圧くらいはわかるようだ)
 ど派手な閃光。
 バスター・レイ・カノン。
 全身の魔力を口の中で収束させて、すべてを薙ぎ払う光の奔流として放つ大技だ。戦闘員が消し炭に消えていく。
(これで、気兼ねなくやれるってもんだな)
 義弘はその場にあったテーブルをつかむと、そのままぐるぐると振り回し始める。
 戦鬼暴風陣が巻き起こり、戦闘員を一網打尽にする。
「ぎゃぴーー!」
「ば、馬鹿な、闇のオーブが!」
 大統領のミッシングパーツ(忘れていたパーツ)に、ひびが入る。
「なんだ、こっちが本体か?」
「ぐおおおおおおおおおおお」
 拳で、握りつぶす。
「は、ははは。私のコアを破壊するか!? それをすれば、自動自爆装置が……作動することになっている」
「亘理さんっ!」
「一緒に死ぬのが嫌なら、手を放すんだな……!」
 だが、義弘が選んだのは。
「……頼んだぜ」
 
 グリジオは爆風を受け、当然のように威力を極限まで殺しきる。
 若者へ託す――。
「由香サマ、雷華サマ……!」
「はいっ」
 由香の衝術が、大統領を大きく打ち上げた。
「サマ、って言われるのは、なんだか……不思議」
 ばちばちと雷が走った。
 由香は、雷をまとって加速する。
「出力200パーセント……おまけして255パーセントデス!」
 纏雷撃。
「ラストオオオオ」
 アロガンスレフト(傲慢な左)が、大統領を打ち上げる。
「そんな、わんこさん……っ、まさか、捨て身で?」
(気にすることないデスよ)
 だってこれ、コメディ映画ですもの――。

●オフショット
 こうして、平和は取り戻された。
「それでは、みなさん、お疲れさまでしたーー!」
 無駄に陽気なBGMを背景に、祝賀会だ。
「みんなの協力のおかげで、無事に映画を撮ることができた!」
「キャーッヒッヒ!!! 生還デス!」
「B級グルメか……」
 何事もなくもどってきたわんこと義弘。
(大きいピザと……うん、大ぶりのハンバーガーと……折角だから、たくさん頂こう……)
 ひょいひょいと皿にとっていく雷華。
「終わった後のB級グルメは格別だなぁホント!」
 紫電はたこ焼きをそっとほおばってみる。
「お金には困ってはいないんだけど……奢ってくれるというなら、折角だしね! 遠慮はしないよ!」
 たくさん食べる若者をなんとなく眺めるグリジオ。気が付けばわんこが「どうぞどうぞ」と盛っている。
「おっと、どうも」
『タバスコがあるのだわ!』
『バジルソースだわ!』
「必要以上にはかけねぇよ?」 
「あーいやほんとマジでなんなんでしたんですかね」愚痴りつつも、ちょっと考えて、縁は「割と楽しかったです」と述べた。
「あたしもです! 新しいことたくさんでしたね。おいしいもの、大好き! 食べまくるぞー!」
「グラタンバーガー、ありますかね」

成否

成功

MVP

わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬

状態異常

紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)[重傷]
真打

あとがき

映画の出演、じゃなかった、ピンチの娘さんの救出、お疲れさまでした!
なぜか完成度の高い戦闘、ハイクオリティーのBGM、ありとあらゆる意味で伝説の映画となったようです。サントラが欲しい。

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