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シナリオ詳細

<Raven Battlecry>灼顔のカイシングオ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●灼顔のカイシングオ
 金色のジッポライターを開き、石を擦る。煙草に火をつけるにはあまりにも強すぎる火が吹き上がり、それをゆっくりと自分の顎へと近づけていく。
 髭をちりちりと焼く音。
 男は薄暗い夜の砂漠で深く呼吸をすると、ライターをゆっくりと回しながら自らの顔を炎で炙り始めた。
「こうするとよお、皮膚がよぉ、焼ける匂いがするんだよ」
 顔半分を覆うようにフィアパターンの刺青をいれた男、通称灼顔のカイシングオ。
「強盗作戦をトチった時さ。コルボさんがキレまくってよぉ、俺の後頭部をこうやって掴んで……でもってたき火の真ん中に押しつけたんだよ。こうやってぇ!!」
 もだえ苦しむ声と暴れる足。
 カイシングオは両腕を腰の後ろで縛った商人らしき男の後頭部を掴み、たき火の中央に顔面をおしつけていた。
 そして自らも炎に顔を近づけ、にやりと笑いながら舌を出す。
「なあ、感じるだろ? 炭と土と自分の肌がよぉ、いっしょになって焼けていく匂いだよ! 俺はよお、俺はその時によお……『発射』しちまってよお……!!」
 声をあげて笑うカイシングオ。商人の男はもはや抵抗する力すら失い、ぐったりとたき火に顔を突っ込んだまま動かなくなっていた。
「俺はその時生まれ変わったんだ。アァァ……マジで俺はこの人のために生まれたんだって、その時分かったんだよ。お前も今なら分かるだろ? な?」
 立ち上がり、もはや息絶えた商人の身体を蹴飛ばして転がす。
 カイシングオはンーと目を瞑って唸るとぶるりと身体をふるわせてから鋭い目つきを開いた。
「さて、野郎共(ローストガイズ)。コルボさんのためにひと肌脱ごうぜ。あの人が砂漠の王になったら毎日暖炉で焼いてもらえっかもなあ! ハッハァ!」
 たき火を囲んでいた男達。顔を布で覆った男達は声を上げて笑い、それぞれの武器を手に取った。
「色宝は、俺たちがいただく」


 ジェイク・夜乃(p3p001103)はマガジンにひとつひとつ丁寧に銃弾をつめこみ、すべて詰め終わったマガジンをサイドデスクへと置く。そして空のマガジンをてにとり再び弾を詰め始める。
 まるでそういう風にデザインされた機械のように正確かつ等速のリズムで弾を込める彼の手が、ぴたりとやんだ。
「灼顔のカイシングオ? 奴がまた現れたってのか」
 ここはラサの中心、もしくは世界の流通の中心ともいうべきフェルネスト・ブラックマーケット。
 留め置いた馬車のそばに腰掛けた女が『だねえ』と言って調査書のスクロールを馬車の奥から引っ張り出してジェイクへと突き出した。
 彼女の名はバッケル。通称ローストフェイスのバッケル。パサジール・ルメスの民にして都市伝説キラーの異名をもつ。
「あたしゃ同じ都市伝説に二度会うことはそうそうないんだ。あったとしても、二度目には殺してた。主に、あんたたち(ローレット)がね」
 バッケルが顎で促すので、ジェイクはスクロールを開いてみる。
 ラサの顔役の一人であるフィオナ・イル・パレストが調べ上げた情報によると、大鴉盗賊団がフェルネストの色宝倉庫を狙って一斉に襲撃を仕掛けるというのだ。
 その襲撃作戦の中に、カイシングオのチームも含まれているという。
「街ンなかでのドンパチは偽ザントマンの時に懲りてるんでね。侵攻ルートに割り込んで、街に到達する前に潰そうってハラさ。ハウザーやイルナスたちも動いてるが、なにぶん人手不足でね。今回もあんたらの力を借りられるかい?」
 ジェイクはスクロールを閉じ、そして途中だった弾込めを素早く完了するとそれらをベルトの予備弾倉ホルダーへとさしこんでいった。
「オーケー、乗りかかった船だ。ローレットで仲間を集めてくる。依頼内容はカイシングオたちの迎撃ってことでいいんだな?」
「そういうこった」
 こいつは前金だよとバッケルがコイン袋を放り投げると、ジェイクはそれをキャッチして立ち上がる。
「連中の首は、俺たちがいただく」

GMコメント

■依頼背景
 ラサにて発見されたファルベライズ遺跡群からは願いの叶う宝物こと『色宝(ファグルメント)』が発掘されました。
 小さな怪我を治す程度のささやかな力しか持たない色宝ですが、これをかき集めようとする勢力『大鴉盗賊団』が現れたことで、ラサはローレットを雇い盗賊団に先んじて色宝を集め保管する依頼を発行。こうして大鴉盗賊団VSローレットによる争奪戦が勃発しました。
 そして現在、大鴉盗賊団は色宝が大量に保管されているフェルネストを目指し侵攻を開始。迎撃の依頼が広く発行され、ローレット・イレギュラーズたちによる首都近辺防衛戦が始まりました。

■フィールド
 カイシングオを待ち構えるためのフィールドが用意されています。
 いつかの戦いの名残として土嚢が積み上げられた防衛ラインがあるので、これを利用してカイシングオたちを迎え撃ちます。
 周囲は砂漠地帯。土嚢による『)』型の障害物が複数ある場所を想像してください。

 カイシングオ率いるローストガイズはこれまでの強盗活動から一変して強力な装備をそろえ、馬車やバイクによる突撃や爆発物を用いた土嚢もろともの破壊などで突破を試みてきます。

・灼顔のカイシングオ
 リボルバーピストルを武器とする盗賊団の幹部メンバーです。
 コルボに深く心酔しており、彼のために命を賭ける覚悟のようです。
 戦闘力が群を抜いて高く、回避性能や特殊抵抗の高さからひょうひょうとした戦闘スタイルを得意とします。
 パッシブで【火炎無効】の能力をもっていますが、その一方顔を焼かれると興奮のあまり理知的な対応ができなくなるという弱点ももっています。敵軍の統率力をそぐには最適ですが、彼自身がヒートアップして戦闘力が増す危険もあります。状況次第で活用してください。

■おまけ解説
カイシングオの初出についてはこちらをご覧ください。
『<Common Raven>ローストフェイスのバッケル』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4557

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <Raven Battlecry>灼顔のカイシングオ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月20日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)
闇之雲
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
スカル=ガイスト(p3p008248)
フォークロア
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華

リプレイ


 遠く高く、猛禽類の声が天空に。
 古い土嚢が積み上がった戦場跡で、白いスーツ姿の男は……『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は土嚢に腰掛けてリボルバー弾倉へ弾をひとつずつ丁寧に差し込んでいた。
 その気になればルーレットのように回転させた弾倉へ器用に流し込むようにして素早く弾込めができるが、精密かつ確実な射撃のためには時として手間と時間をかけることもある。
 それが、確実に仕留めたい相手であればなおのこと。
「灼顔の奴はやはり生きていやがったか。しぶてえ野郎だ。
 とはいえ、食いそびれた獲物が向こうから出てきたんだ。
 今度こそきっちりケリを付けてやる。
 弾数十分、気合も十分。ただし、奴との勝負に十分もいらねえ。
 灼顔よ、ラサでのガンファイトは一筋縄ではいかねえぞ」
「お、来たぜ」
 高い場所から双眼鏡を覗いていた『ザ・ゴブリン』キドー(p3p000244)が、砂埃をあげてやってくる一団を見た。
 集団の中央には顔半分をファイアパターンの刺青で覆った男。灼顔のカイシングオの姿がある。
 こちらの観察に気づいているのか、フードの下からにやりと不敵に笑ってこちらをにらんだ。
「雁首揃えてノコノコと……っと、スッキリしたツラしてんじゃねえかよ!
 部下の連中も勿体ぶって顔なんか隠して……コルボさんに焼いて貰ったのかよ、 ええ?
 サービス精神旺盛なボスで良かったな! 悔いはねえよな? 終わらせようぜ」
 ぺろりと唇を舐め、高所より飛び降りるキドー。
 そのそばでは『フォークロア』スカル=ガイスト(p3p008248)が黙って銃の最終点検を行っていた。
 ジェイクの銃と異なり射撃速度も射程距離も遅く短く重い銃だが、そもそも運用目的が異なる。ナックルガン同様、これは相手に押しつけて使う武器だ。それゆえバレる部分が実質的なセーフティーロックとなっている。
「この防衛線を突破されれば大変なことになる。何としてでも止めなければな」
 黙って作業をするスカルのそのまた横で、『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は地面に突き立てていたふたつの剣を抜き取った。
 荒ぶる風を纏った剣、ウェントゥス・シニストラ。
 怒れる焔を纏った剣、フランマ・デクステラ。
 さらには彼女の腰に四本そろって下げられた緋色のダガーが、彼女の臨戦態勢を物語った。
「砂漠嫌い。砂が関節に入いりそうでヤダ……早くお風呂入りたい。
 ということで~この高まりに高まった鬱憤をキミたちで情状酌量の余地なくボコってボクのお財布の糧とすることで晴らすことにしました~文句はないよね?」
 『流離人』ラムダ・アイリス(p3p008609)は積み上がった土嚢の上からぴょんと飛び降りると、黒い刀身をもつ刀を鞘から抜いて、鞘を後ろへ放り投げた。
「答えは聞いてないけどっ♪」

 かつて都市外部からの攻撃からネフェルストを防衛するために展開された陣地。といえど、年月による風化は免れない。
 破れて崩れた土嚢や砂が積もったことで壁の役割を失ったものもある。
 そんなあれこれをスコップと新たな麻袋で修復し陣地を再構築して回るのが『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)と『闇之雲』武器商人(p3p001107)の仕事だった。
「とにかく攻めて攻めて、やられる前にやるッスよ!」
 最前衛の防御壁を完成させた鹿ノ子が親指を立てたサインを送ると、それよりも皿に前衛にあたるエリアにてスパイクトラップを仕掛けていた武器商人がサインを返した。
「やれ、この国の盗賊たちの『なかよしこよし』ぶりにはいつも舌を巻いてしまうね。
 色宝は我(アタシ)も興味がある品だから、盗賊に奪われるのはちょっとなァ」
「理屈なんかどうでもいいんだよォ。ハッハァ!」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)はあえて意地汚く笑うと、斧と剣をそれぞれ肩に担いだ。
「こっから先はおれさまの縄張りだあ、通りてえってんなら、通行料をいただかねえとな。
 通行料はもちろん──てめえらの命よお!」
 迫るバイクと馬の群れ。
 構えた戦士達に、待ったはない。
 火蓋は既に、切って落とされた。


 バイクやサイドカーに乗ったカイシングオの部下達が、拳銃を点に向けて乱射する。
 銃撃とは弾を当てて傷つけるだけの兵器ではない。音によって恐怖をかきたてる兵器でもあるのだ。
 気の弱いものはこの時点で逃げ惑い、わざわざ弾を当てるまでもないだろう。
 が、ジェイクが相手であればそうはいかない。
「ド派手に行こうぜ! 汚ねえ花火の打ち上げだ!」
 射程内に入った途端、バイク乗りや馬にまたがった盗賊たちの額だけをピンポイントに狙って射撃。
 二丁の拳銃を、腕を水平にクロスさせた状態から翼のように開くまでのひとなぎで何人もの盗賊たちがひっくり返り、バイクや馬が派手に転倒していった。
 それを避け、飛び越え、さらなる猛攻が迫る。
 仲間の死や失敗を恐れないという点で、彼らは恐るべき襲撃者だ。
「ほら見ろ、ワン公。連中遊んでくれるってよ!『取ってこい』だ!」
 おらよ、と叫んで呪術爆弾を放り投げるキドー。
 一秒の間を置いて爆発した煙の中を盗賊達が強引に走って突っ切ろう――としたその時、煙に吸い寄せられるように飛び込んでいった犬型の邪妖精が盗賊の首を食いちぎっていく。
「オラオラ、雑魚どもが! 調子に乗ってんじゃねえぞ!」
 それでも強引に突破しようとした勇気ある盗賊には、グドルフがクロスボウによる小ずるい一撃をお見舞いしていくのだ。
 たとえば馬の喉。たとえばタイヤの前輪。たった一撃で走行能力を著しく失った盗賊達が騎乗物ごと転倒し、砂の上を転がっていく。
 彼らを踏み潰してでも突き進む猛者もあったが……。
「先頭を走る重騎兵も、ファミリア伝令兵も、爆撃飛空兵もいない『騎兵隊』など児戯に等しいものよな。ヒヒヒヒヒ……!」
 武器商人が笑いながら土嚢の影からふらりと歩み出て、誘い入れるかのように両腕を広げてみせる。
 と、武器商人の数十メートル手前でバイクが次々に転倒。スパイクを踏んだもや、土で隠した杭と透明やワイヤーにひっかかる者が続出。
 手持ちの手榴弾でやらかしたのか、武器商人の目の前で派手な大爆発が巻き起こった。
「近接部隊、突撃」
 きゅぱ、と指を鳴らす武器商人。
 と同時に控えていたラムダが高機動突撃をしかけた。
 彼女に内蔵された精神感応術式『狂月』が発動し、乗り物から転げでた盗賊たちが咄嗟に頭を抑える。
 できた隙は一瞬だが、ラムダはスラスターからのエネルギー噴射によって急激に加速。接近。食らいつく蛇の如きしなやかな連続斬撃によって盗賊たちの首を刀で切り落としていく。
 恐るべき斬殺者は彼女(?)一人ではない。鹿ノ子もまたとてつもない速度で駆け寄ると、馬にしがみついて倒れていた盗賊を馬の胴体ごと豪快に切り裂いていく。
 真っ二つにではない。十六のパーツへバラバラに分解する斬撃である。
「耐えていれば凌げると思ったら大間違いッス! 二撃、三撃、四撃、いつ終わるか分からない連撃を耐えきる覚悟はあるッスか!」
「ここまで周到に潰されていると、同情するな」
 スカルはそんな彼女たちのおこした砂埃の中を巧妙に移動し、這いずってなんとか切り抜けようとしていた盗賊の動きを鋭敏に察知。後頭部に銃を押しつけた。
「や、やめ――」
 悲鳴すらあげさせぬほどの手際で、スカルは盗賊を破壊した。
「おいおいおいおいおいおいおいおい、なんだぁ? こいつは。敵に気づかれる前に電撃作戦! じゃあなかったのかあ?」
 ジッポライターの蓋をカチンカチンと開閉する男。激しい砂埃の収まった後、カイシングオはのんびりと歩いて戦場へ現れた。
 先頭集団に紛れて突撃するかのように見せかけ、彼は部下に『地雷処理』をさせたのだ。
 カチンと親指で弾き上げたライターが開店し。火のついた状態で彼の手の甲へと柔らかく乗る。顔の前にそれをかざすと、カイシングオは笑った。
「どうやら、罠にかかっちまったみてぇだ。ハッハー、楽しいよなあ。罠にかかるってのは。部下も死んで、逃げるにも逃げられなくて、誰を恨んで良いのかわかんなくなって、ブルッちまうよなあ」
 ぺろりと、長い舌で頬の横に刻まれたタトゥーを自分で舐める。
「タマンネェ。生きてて良かったァ!」
「そうか、だったらここで死ね!」
 ブレンダはふたつの剣をそれぞれ逆手持ちして走り出すと、風と炎を交わらせて爆発。その衝撃を推進力にしてカイシングオへと急激に接近した。
 空中で同様の爆発を起こして回転。炎の刃がカイシングオの顔面へと迫る――が、ブレンダが切断したのは彼のジッポライターだった。
 ボンという爆発で視界が一瞬ホワイトアウトしたその瞬間。巧みに攻撃を回避していたカイシングオは彼女の後方へと回り込んでいた。
「言われ飽きたぜ、その文句は」
 後頭部に突きつけられる銃口。
 引き金がひかれる――が、ブレンダは豪速で縦回転した後身をひねって反転。剣をもちなおしカイシングオへと構える。
「おい、今当てたぞ」
「当たったな。だからなんだ」
 お返しにその顔をもっとハンサムにしてやろう。そう言って、ブレンダは飛びかかる。


「こいつら……」
 ボウガンを土嚢の裏に放り投げ、グドルフは立てかけていた剣を手に取った。
 もはや射撃で敵の足を潰し続ける段階は終わった。
 と同時に、敵は無数に積み上がった馬やバイクをバリケードにして這い寄って、土嚢に隠れるグドルフたち第二攻撃ラインの面々へキツい一撃をたたき込む準備を終えていた。
「おい商人テメェ! 壁ふやせ壁!」
「ヒヒヒ、人使いが荒いなァ」
 武器商人は笑いながらバリケードへとダッシュ。
 彼女(?)をアタッカーと判断した盗賊の数人が頭を出しアサルトライフルによる銃撃を開始――したと同時に武器商人は『破滅の呼び声』を発動させた。言葉で表現するのが困難なほど、あえていうなら名状しがたい干渉によってミーム汚染を受けた盗賊達は銃をかなぐり捨て、グルカナイフを手に武器商人へと襲いかかる。
 四方から組み付くようにしながらナイフを突き立て、腕を切り落としにかかる……が、武器商人は影から湧き上がる名状しがたい何かで肉体を補いながらヒヒヒと笑い続けた。
「チッ、罠はスパイクとワイヤーだけじゃなかったってことか。自分自身まで罠にするとは恐れ入るぜ」
 カイシングオは舌打ちをすると、残る盗賊達をブレンダや武器商人の抑えに回し第二攻撃ラインから打ち続けていた面々へと二丁拳銃を撃ちまくりながら接近した。
「そうそう喰らうかヤケド野郎!」
 土嚢からあえて飛び出したグドルフは剣で銃弾を数発打ち払うと、むき出しの素肌に命中した弾を正体不明の淡い光で打ち払った。
「その加護……てめぇまさかサーティーンの言ってた」
「うるせえ知るか!! そんなに焼かれて嬉しいならよ、地獄の炎にでも焼かれて来な!」
 猛然と突撃するグドルフ。彼から距離をとって射撃を続けようとしたカイシングオ――の背後に、両目をカッと見開いたブレンダが迫っていた。
 足止めしたはず!
 と振り返ると、まさにそのタイミングで戦場をジグザグに駆け抜けていた鹿ノ子が盗賊達にトリプルブロックをかけていた。
「さぁ、この状態で僕の攻撃を避けられるものなら避けてみるッス!」
 ひとりで複数人を相手に出来る鹿ノ子の素早さは、実のところ代行防御や足止め、はたまた離れた敵への急速な接近にも使える万能の刃でもあるのだ。
 そして足を止めて固まってしまった敵を葬る方法は、チームで戦っているならいくらでも作れる。
 アイリスは自らのボディに光のラインを通し、封印していたシステムを解放。
 とてつもない速度で残像分裂を起こすと盗賊達を一斉に斬り殺していった。
 それに巻き込まれないように直前で跳躍し逃れる鹿ノ子。
 一人残った盗賊の首めがけて刀をたたき込む。
 崩れ落ちたその先では、武器商人を取り囲んで無意味なリンチに囚われていた盗賊達がバタバタと倒れていく。
「他人のために命を賭けるか。なら、此方も生半可な覚悟で迎え撃つわけにはいかないな」
 倒れた彼らの影から現れたのは、空になったマガジンを滑り落とすスカルだった。
「待て、俺らを舐めてっと……」
 スカルの足をつかみ、拳銃を突きつける盗賊。
 だがその時には、セーフティーを解除したスカルの銃『C&JX1パイルドライバー』が盗賊の頭を爆ぜさせていた。
 かくして。
 ついに。
「もっと私の炎で焼いてやろう。貴様の罪諸共なッ!!!」
 ブレンダがしっかりと両手持ちした炎の剣が、ホームランを狙うスラッガーのフルスイングさながらにカイシングオの胴体へと炸裂した。

 縦回転するのはカイシングオの番だった。
 激しい炎に包まれ、驚きに顎を開き、どさりと砂の上に頭から落ちる。
 これでやったか……と振り抜いた姿勢のまま目を細めるブレンダだが、カイシングオはその姿勢からまるで操り人形の糸を素早くひいいたかのように立ち上がって見せた。
「ハァ、んだよ。ったくよお、また俺だけ生き残っちまったよなあ。あのときもあのときもあのときもあのときもこうだった。昨日まで一緒に酒飲んでた奴が死んでよお、悲しくて悲しくて熱くて熱くて熱くて熱くてつい――」
 ガ、と自らの顔半分へ爪を立てる。
「『発射』しちまったよォ!」
 もう一方の手で銃撃。
 それによって素早く構えたジェイクの右手から銃が飛び、回転しながらはるか後方へと飛んでいく。
「チッ!」
 取りに行く暇などない。奴の顔を見ろ。それを許すような目ではない。
 ジェイクは左手だけで、一丁だけでカイシングオへと連射した。
「灼顔、俺が死ぬかお前が死ぬかの二つに一つだ!」
「うるせえぶっ殺す!!」
 カイシングオの銃弾がジェイクの心臓――の前にゆらりと割り込んだ武器商人の身体にとめられた。
「やァ。随分と男前(ぶざま)な顔になったじゃないか、灼顔の旦那。ちょいと顔を炙られた程度でそんなに悦に入れるのであれば、我(アタシ)の提灯でも炙ってあげよぉか? ヒヒヒヒヒ!」
 その後ろから腕を出し、さらなる銃撃を浴びせるジェイク。
 カイシングオは、スローモーションで飛来する何発もの銃弾をとろけゆく意識のなかで認識し、そのすべてを回避するコースを描き出した。
 その通りに肉体をなぞればいい。それだけだ――が。
「よう! また会ったな変態野郎」
 ぺたり、とカイシングオの背後にキドーの姿があった。
「ザ・ゴブリ……!」
 言い終わるより早く、彼の首にナイフが突き立てられる。
 吹き上がる血を、キドーはため息交じりに見つめた。
「アンタとはこの先も一緒に火遊びできると思ったが……残念だぜ」
 ここで死ぬんだな。
 そうつぶやく声は、もはや当人に聞こえはしなかった。
 半笑いの顔のまま、カイシングオは息絶えていた。

成否

成功

MVP

武器商人(p3p001107)
闇之雲

状態異常

なし

あとがき

 ――カイシングオ部隊の迎撃に成功しました。
 ――ネフェルストの防衛に成功しました。

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