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シナリオ詳細

再現性東京1993:年末だぞ、蕎麦打てよ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●「次は蕎麦だな」「?!」
「ちょっと反省が足んねえゆ」
「…………はい」
 ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)の苛立たしげな声と仁王立ちの姿を前に、ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は正座していた。むしろ土下座していた。
「『米が来て 小麦が来たから 次は蕎麦』ってかゆ。季語滅茶苦茶ゆ。再現性フリー素材みたいな扱いされたら蕎麦だってフツーキレゆ」
 ぷりぷりとキレ散らかすパパスであったが、理不尽というなかれ。年末に入り年越しそばの準備も少しずつ始めなきゃな、仕入れとかなって思ってた問屋や先ごろ収穫を終えた蕎麦農家達は、『側にいるよ……(イケボ)』とかヌカし始めたそば殻の群体に襲撃を受けほとほと困り果てていたのである。
 面倒臭いのは、人的被害がないしそば「殻」であってそば粉は確保済みであり、べつに強引な排除は必須ではないという事実。
 再現性東京の人々は基本的に神秘への耐性が低いので、イケボで囁かれながらではとてもそば打ちなんて出来ないということである。
 なお、今回はそんな逆境でも美味しい蕎麦を打ってやるぞという気概を見せることで相手を追い払うのが話の筋である。
「蕎麦って十割が普通なんだっけ?」
「フザけんじゃねえゆ。十割蕎麦なんて高尚なものおまえたちには早えゆ。二八で我慢すゆ」
「お前なら打てるってのか?!」
「たりめーゆ。ポテサラハーモニア舐めんなゆ。なんならそば粉でガレットつくってやるゆ」
 どうやらマジらしい。
 だが、今回は蕎麦を打つのがメインなのでそういうのは見せてもらえなさそうだ。

●90年代の……そば屋……ハッ
「というわけでリタイア後の第2の人生を蕎麦に捧げた、掃いて捨てそうなほどいる経歴から」
「やめたまえよ」
「……まさかの逆転ホームランでめっちゃ繁盛しているこの道15年の万丈面道唆(ばんじょう・めんどぅーさ)さんに来て頂いたゆ」
「いやお前その人顔が濃いわ。南米系かよ」
「やめろゆ。万丈さんは帰化人ゆ」
「お前幻想種の癖に再現性東京に馴染んでんじゃねえよ」
 そんなわけで1993街の蕎麦屋にきた一行は、万丈さんの監修のもとそば打ちをすることになる。
「側に……いるよ……」
「こいつは?」
「ローレットで説明したゆ。『蕎麦殻』ゆ。万丈さんは絶えずイケボを聞きすぎて性癖歪められそうになって今蕎麦を打てねえゆ。おまえたちにやってもらうゆ」
 ナチュラルに討伐対象(?)が居座ってる状況に、一同は顔をしかめた。
「まずそば打ちゆ。これは水の加減を見ながら適度な力で練っていくゆ。体力(フィジカル)と技術(テクニック)が欲しいゆ。已む無く練るのが無理くせ奴しかいないならこれの出番ゆ」
「そば打ち用の撹拌機じゃねえか」
「次に麺切りゆ。これは繊細さと速度が大事ゆ。主に命中と反応がそれぞれ50くらいあったほうがいいゆ」
「そこそこ高次元な具体的数字出しやがって。あと撹拌機の下り無視したな」
「数値が足りねえならこれの出番ゆ」
「鍋の上にピストン機械みたいなのと……なにこのところてん押しみたいな金属の筒」
「これをピストン機にセットすると鍋に麺が直接出るゆ」
「詳しいなお前。茹では?」
「馬鹿でもできるゆ」
「ふざけんなよお前」
「ふざけてねえゆ。ぐらぐらに沸騰したお湯の寸胴に麺を入れたらそのままにしとくゆ。一度麺が沈んでもっかい浮いてきたら箸でさっと引き上げて水で締めゆ」
「……必要な能力とかは?」
「ファンブルは低い方がいいゆ。代替手段はないから精々ミスんなゆ」
「つまり……」
「能力はあったほうがいいけど手作りの温かみなんて幻想ゆ。万丈さんはオール機械だよりで下手な脱サラ蕎麦屋を潰してきたゆ」
「やめたまえよ」
 万丈さんから2度目のストップがかかったところで作業開始です。

GMコメント

 これらの工程は(検閲削除)ってスーパー銭湯で大体18年前に私がやってた作業なんで何一つ嘘じゃないです。
 マジで100%機械打ちあるんですね、今は……。

●達成条件
 蕎麦を美味しく作って振る舞う

●蕎麦づくり
 大体OPに書いたとおりの手順です。
 数値等の参照値はOPに書きましたが、足りなくても機械工程に代わるのでぶっちゃけ好きなのやるといいよ。
 なお流石に年越しまで保存できないので万丈さんのお店で最近蕎麦に飢えているお客さんが臨時再開に沸いてなだれ込んできます。

●万丈面道唆(ばんじょう・めんどぅーさ)さん
 髪の白くなったナイスシルバーのメキシコ人。
 最近、蕎麦殻のせいで性癖歪められそうになって妻と別居が始まってしまった。

●蕎麦殻
 リプレイ中ずっと一同の周りを回って「側にいるよ……」って言ってくる蕎麦殻の集合体。
 なお1993街の人達はもう見ないことにした。けど声には逆らえず蕎麦打ち職人は経済的に流行り病以上にヤバめの昨今。

●戦場
 キッチンが戦場だ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 再現性東京1993:年末だぞ、蕎麦打てよ完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年12月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
流麗花月
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
猪突!邁進!
エミール・エオス・极光(p3p008843)
脱ニートは蕎麦から
えくれあ(p3p009062)
ふわふわ
冰宮 椿(p3p009245)
氷翼

リプレイ

●1993街は希望ヶ浜じゃないと何度言えば
「おそば。 お蕎麦ですか。お蕎麦を打つのは初めてですが……上手くやってみましょう」
「ぼくはねー、さむい日にあったかいおそばをたべるのがすき! 上にのっけるのはねー、その時その時でちがうけど、てんぷらがのっかってるのがすきだよ!」
『氷翼』冰宮 椿(p3p009245)が緊張気味に蕎麦道具一式(打つ方)に視線を落とす一方、『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)はマイペースな調子で蕎麦の好みを語りつつふわっとした笑みを浮かべていた。彼女の視線の先にはつゆ作りの材料が揃っている。
 なお、aPhoneは使えないので(これもう5回くらい描写したな)、予め万丈さんにレシピを用意してもらっています。
「まさかイレギュラーズ業と料理の道がこんな風に繋がっているなんて……。イレギュラーズ業は来年から本気出そう」
「コレも仕事ゆ。今から本気出すゆ」
 『ビビりながら頑張るニート』エミール・エオス・极光(p3p008843)がどこか遠い目をしながら早くも来年脳豊富を語りだしたので、パパスはブレーキを掛けに行く。頑張るって今だよ。落ち着いて。
『側に……いるよ……』
「……ところであの蕎麦殻は放っておいてもいいんですか?」
「米、小麦と来て次は蕎麦……今まで遭遇した連中は料理に真摯であれば襲ってこない。大丈夫だろう」
 『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)はアレなんとかならねぇのかなって思いながら見ていた。『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)はもう3度目となると慣れたもので放置を決め込む気満々だ。1993街に出る魔物(not夜妖)は揃いも揃ってロクでもないが、説得さえ上手く行けば大抵の場合は敵対性が薄れたりする。いいのかなぁそれで。
「メイは格好から入るので、お蕎麦屋さんのお手伝いと聞いて、甚平さんを着て来たのですよ!  さらに三角巾を頭に巻いて髪をまとめたら、メイお蕎麦屋さんスタイルなのですよ!」
 はいかわいい(即決)。
 『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)は都会人なので形から入ることが礼儀だと思っている。そのとおりだね。そんなお蕎麦屋スタイルなので実は並んでいる人達も実演ブースから見える彼女の姿に頬を緩めていたりするわけだが、まあここにいるメンバーが濃いので癒やし枠である。
「思えば、蕎麦を打った事などは一度も無かったな……よし、何事も経験だ」
 全力で挑むか、とたすき掛けをして蕎麦打ちの格好を整えた『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)の振る舞いは堂に入っており、とても未経験者とは思えない。が、尻尾がゆらゆらと揺れているのを見れば興味深いのだ、とすぐに判ずる程度には正直なところもある。
「蕎麦は立ち食いのような早い安いが売りの低価格店と、本格蕎麦が売りの高級店に二極化しています。この店は後者に分類される訳ですから、営業戦略としては客単価を伸ばす方向でしょう」
「その心は何ゆ?」
「酒のアテに向くサイドメニューの開発で、蕎麦前の充実を図ります」
 眼鏡のブリッジを押し上げ、不敵に笑う『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の姿に、パパスは「まあ及第点ゆ」と大仰に頷いた。ここで回答を誤れば、寛治はハムにされていただろう。彼が蕎麦に関連する依頼に入ってきた時点で想定すべき事態ではあったが。
「全員が担当を決めてきて貰っているのは話が早くて助かる。では準備にとりかかろうか。ゆでの作業は開店後、注文を受けてからになるので注意して欲しい」
 万丈さんは柔らかい口調で(そして非常にすごい流暢さで)一同に指示を出す。めんつゆは? そもそも出汁とかの関係で調理工程が長引きがちなので蕎麦打ちと併行でいいのである。
「特に偏りがあるわけでなし、問題なさそうゆ。わたちは適宜手伝っていくゆ」
 色々とアレな状況下ではあるが、パパスが手伝うというなら問題ないのだろう。なにせ万丈さんもついている。
『側にいるよ……』
「あふゥん……?!」
 駄目だ。この人レシピ以外全然頼りにならねえ。


「素早く、リズミカルに! ふふ、ちょっと楽しくなってしまいますね!」
「確か、十割はつなぎ無しで打ったものだったか? ……確かに私達には早い代物かもしれん」
「気温を気にしながら水を調整せねばいかんのは少々難儀だが、ここをしくじると出来にかかわるので慎重かつ丁寧に……」
 椿と汰磨羈、そしてブレンダは蕎麦打ちを担当する。「蕎麦打ち」と一言で纏めても細かい工程があるのだがそれはさておき、手さばきと正確性の両方が求められる工程だ。
 パパスが十割蕎麦を打たせなかったのは、単純に「まとまりにくい」からだ。ツウぶった者達は十割崇拝のようなところがあるが、さりとて舌触りをなめらかに仕上げるのは至難。素人舌には二八のがウケがいいのだ。
 なお、そば粉を計量カップで大ボウルに分けていく寛治の姿があるが作業に支障ないのでスルーする。
「蕎麦の練りは、あくまで空気を抜くのが目的らしい。ふむ、あくまで空気を抜くイメージで、と」
「ここの加減を大雑把にやってしまうと、却って食感に響くのですね……慎重に、と」
 頼りになるのは指先の感触だ。肉体との対話を怠らぬ2人は、その僅かな違いを敏感に感じ取り、作業に反映させていく。
「……そうか、打つだけだと思ってたらその作業もあったのだな!?」
 薬味切りに素早く移行していたブレンダは、判断の速さ故に気付くのにやや遅れた。なお、その間に作った薬味の量がエラいことになっているのはご愛嬌。
「でも、ネギは直前に切ったほうがよかったね。あれは切った側から風味が落ちるから……」
「仕方ない、冷蔵庫に!」
「そうだね」
 万丈さん、注意しつつもリカバリーしていくブレンダには優しい。結局は氷水に漬けて冷蔵庫だ。
『側にいるよ……』
「 知りません。囁いている暇があるのなら手伝ってくださいます?」
『エ……』
 唐突に挟まれた蕎麦殻の超えは、しかし椿にとってどうでもよかった。むしろのし棒と生地に意志を傾けないといけないので、ぶっちゃけこいつが邪魔だ。
「丸だし、角だし、幅だし――なるほど、確りと考えられた手順だな。基準があれば……」
「それならここに私が木尺と竹製の差金で作ったものが」
「万丈、御主、省力化に力入れすぎではないか?!」
 形を整えるのになにか基準が欲しい、と考えた汰磨羈は即座に用意された基準器(といっておこう)に目を丸くする。なんやかんやして畳んだ生地が基準に合致すれば丁度いい感じになるらしい。
「返す返すに『職人の勘』じゃ下はついてこねえゆ。基準を設けて覚えたほうが何かといいんゆ」
「なるほど……?」
 パパスの言葉に頷きかけて首を捻った椿は、納得したようなそうでないような気分になった。
「フッフッフッ……メイに麺切りをさせたらすごいのですよ? 地元では千切りのメイと呼ばれた(らいいな)実力をおみせするのですよ!」
「期待しておるぞメイ!」
「1人じゃ手間ゆ。わたちも手伝ってやるゆ」
 続いて蕎麦切り。汰磨羈から生地を預かったメイは、子供用包丁を手に蕎麦に手を添える。
 パパスはメイの作業を横目に切りそろえていく。切れ端が出るのを待ち受ける寛治が視界の箸に見切れるがほどほどに無視。切れ端を彼に向けて包丁で追いやると、彼は勝手にそれを持っていった。
「何も手伝ってくれないならちょっと黙っててくださいですよ! メイはお料理で忙しいのですよ!」
 蕎麦殻は麺切りに集中するメイにとって正直邪魔であった。ので、かなり邪険に扱われる。蕎麦殻無惨!
「調理は形から入ったほうが捗るけど、それで全てうまく行くのも幻想ゆ。やっぱ腕とセンスゆ。見ゆ、わたちよりメイのが上手ぇゆ」
 速度と正確性を両立させたメイのそば切りは、拙そうな動きに反し正確だった。麺切り包丁を手にする(割烹着姿の)パパスでは彼女ほどには速くは切れない。正確性は五分だが。
「機械打ちを周知するための実演窓だったけど、こうして上手い子がやってくれると映えるねえ」
「えへへ、褒められちゃったのですよ♪」
((可愛いなコイツ……))
 メイのあまりの純粋さに万丈さんとパパスがキュンときたが、分かっての通り2人どころか外の人達もいい感じに彼女にほだされているところがある。
 そして、麺切りの次はいよいよ茹での工程。水をきっちり沸かしておかねばスムーズに進めないが――。
「こちらはもう十分にお湯を沸かしてあります。お任せ下さい」
 そこは担当が瑠璃である。
 すでに寸胴に7割ほど張った水はガス火でグラグラに沸いており、今や遅しと蕎麦を待ち構えている。
「……開店しましょう。暖簾をかけてきます」
 万丈さんがここで動いた!
「湯切り網は便利かもしれませんが、麺が踊る範囲が狭まるのはよくないですね。大きめのザルですくって素早く水で締めましょう。温蕎麦にするときはそこから温めるとして」
「あたたかいおそば! たべられるの?!」
「ええ、それはもう」
 そばつゆ作りに注力していたえくれあが、瑠璃の言葉に胸踊らせて問いかける。その動きが余りに可愛かったので瑠璃もちょっとほんわかした。なお、彼女の集中力の前に蕎麦殻のイケボは花と散った。


 蕎麦屋で基本のメニューに必要なのは、「蕎麦」「つゆ」「薬味」そして「蕎麦湯」の4つ。蕎麦は茹でまで終わっていたが、つゆはどうなっているのか、と考えた諸兄は鋭い。
「そばつゆには厚いかつおぶしがおいしいんだよね! あとはこんぶとー……あ、ぼく、しいたけのおだしもすきー! おしょうゆと、みりんもひつようだよね!」
 えくれあは下調べが十分だったのか、三種合わせ出汁に挑戦する腹積もりだ。基本の三種、すべてうまい具合に合わせるのは技術が要る。出汁を引くのも大変なのだ。
 ……が、彼女の手にかかればそれも容易。可愛らしい言動と見た目からは想像できない的確さで、三種の出汁を並行して引いていく。
「そうね、出汁をとっておいて醤油と味醂で返しをつくっておいて、出す前に合わせてお出しすれば大丈夫……ギャグじゃないよ?」
 エミールは返しの作成にとりかかる。簡単に見えるが、この配分を間違うとやたらしょっぱいとか、酒気が強すぎるとか、色々と問題が起きがちなのである。そういう意味では、油断のできない工程だ。
「温かいお蕎麦には出汁に水を加えたあと返しを合わせて沸騰直前まで温めて、冷たいお蕎麦には出汁3:返し1の割合で合わせればいいのよね。確か」
「えみーるちゃんはしっかりしたしらべしてあるんだね! すごーい!」
「え、えへへ……」
 エミールは、えくれあの明け透けな称賛に思わず顔をそむけた。イレギュラーズとしての活動は後々まで置いておこう、程度だった彼女だが、こうして他人に承認されるのは悪い気がしない。こうして彼女も「イレギュラーズ」のよさを身にしみて理解していくことになるのだがそれはともかく。
『側にいるよ……』
「ん? そばにいるよ? あっ、応援ありがとう? 頑張るよ!」
「こえがかっこいい! すごーい! そばにいてくれるの?うーん、でもふわふわしてるとここのみんな、きっとびっくりしちゃうよね……」
 蕎麦殻からの妨害に、しかし2人はさして気にした様子もなかった。エミールは当たり前のように素直に受け取り、えくれあは褒め返す始末。そして、やはりこの蕎麦殻は危ないな、とえくれあは考える。
「ね、ね、まくら入らない?きっとみんなのそばにいられるよ!」
「それも悪くないが、蕎麦殻枕はやや需要が落ちている。アレルギーでな」
 えくれあの提案に、蕎麦打ちが一段落した汰磨羈が声をかける。「そんなあ」と残念そうな表情を見せたえくれあと蕎麦殻だったが、フフフと汰磨羈は悪い顔をする。我に一計ありという表情だ。
「今は、蕎麦殻燻炭や菌床の添加剤として使う時代だ! この私が、御主達を役立ててやるよ――」
「すごーい! かしこーい!」
『ア……ア……』
 汰磨羈の堂々たる提案に、2人(?)は思わず称賛の拍手を送る。1993年頃には全く考慮の外だったアレルギーに配慮した案に、影で見守っていた寛治も脱帽だ。
(汰磨羈……恐ろしい子……!)
 と、まあそういうわけでつゆも温蕎麦対策もしっかり取られていたのである。

「いやあ旦那、面白い子たち雇ったね! 旦那の機械打ちも好きだけど手作りもたまには楽しめるってモンだ!」
「私は今日は楽をさせてもらってるよ。優秀な子達でねえ」
「褒めても何も出ませんよっ、作ったお蕎麦を楽しんで頂けるのであればこの上ない喜びですのでっ」
 客と万丈の対話を横目に、椿はハキハキと応対しつつ給仕を進めていく。蕎麦づくりを終えた者達は適宜給仕に回っているが、いずれもそれなり以上の手際で給仕にまわっているので、客側からもウケがいい。
 ここは希望ヶ浜のカフェで鍛えているメイや力自慢のブレンダなどが結構、強い。
「こちらは試作品です。是非食べてみて下さい」
「ほう……『揚げ蕎麦』に『蕎麦掻き』かい。アンタ、ツウだね」
「おや、わかりますか」
 客の1人に蕎麦前としてメニューを差し出した寛治に、客はぬる燗を手ににやりと笑う。
 寛治が用意したのは、先刻回収していた蕎麦の切れ端を揚げて塩をふっただけのものと、そば粉を軽くお湯で練っただけのもの。「だけ」とはいうが、これらはれっきとした蕎麦屋のメニューであり、客単価をあげつつ材料費を抑える一案でもあるのだ。なにより、揚げ油は天ぷらの流用が利く。
「酒も定番は日本酒ですが、蕎麦屋らしさを活かすならそば焼酎も置きたいですね。焼酎の蕎麦湯割りは、蕎麦屋だからこそのメニューです」
「ううん、アンタ商売上手だねえ……旦那、置いてなかったっけ?」
「嫌ですねえ、ちゃんとありますよ」
 寛治の的確な提案に唸った客は、すがるような視線を万丈さんに向けた。当然のようにそば焼酎を出す辺り、彼も飲兵衛としての気質があるのだろう。
「ま、酒飲みが過ぎると『天抜き』等と蕎麦を頼まなくなる本末転倒も出てくるんですがね」
 割とよくある話に、万丈さんと客はばつが悪そうに笑ってみせた。

「それでは皆で打った蕎麦、皆で用意したあれこれを一緒に食べようではないか。年末に食べる切れやすい蕎麦は「今年一年の災厄を断ち切る」という意味があるらしいからな」
「つばきちゃんのてんぷら、さくさくだねー! すごーい!」
「え、えへへ……照れますね……」
 臨時の開店での成果は上々。一同は、自分達の分の蕎麦にありついていた。温かい天そばを啜るえくれあは、つゆのしみた天ぷらに舌鼓を打ちつつ褒めることをわすれない。当然、これには椿も面映い気分を味わう。
「いただきます。……やはり労働の後の食事はいいものですね」
 瑠璃は山盛りにした蕎麦につゆをつけ、わさびを載せてゆっくりと啜る。鼻から息を吐き出すようにして蕎麦の風味を味わうと、ふうと満足げに息を吐いた。
「蕎麦前も付け足しも美味しそうだなぁ……蕎麦も美味しいし、こんなふうに蕎麦が打てたら楽しいだろうなあ」
「趣味で楽しむ範囲なら、十分楽しめますよ。蕎麦前は腕要らずですしね。あ、私は天抜きで」
 エミールが感嘆の声とともに蕎麦を頬張ると、寛治は焼酎を蕎麦湯で割ってくいと一献。
 蕎麦を打ちたい、という動機が適切かはさておき、実力を得たいと思う動機は大体なんだっていいのである。問題は、それによって最終的に何をなすか、なのだから。
「おつゆにワサビたっぷり入れて食べるのですよ! このツーンがメイは癖になってしまって好きなのですよ♪」
 ツウぶった者達は、メイがわさびをつゆに入れるのが気になるかも知れない。だが、これもまた蕎麦の味わい方としてはそれなり適切なのである。なにより、食事に細かいマナーも風習もそこまで重要ではない。
 大事なのは食と向き合い楽しむ心なのである。
「ところで、蕎麦殻はどうしたゆ?」
「私の隣の麻袋で寝ているよ……」
 パパスの問いにそう返した汰磨羈の声は、何故か超絶イケボだったという。

成否

成功

MVP

メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール

状態異常

なし

あとがき

 蕎麦食いたいっすね。(引き出物で貰ったパスタセットを横目に)

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