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シナリオ詳細

チキチキ(物理)! 未帰還ゲーム!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●クリアって何でしたっけ?
「クソッ、またテスター辞退か! 最近の若い連中はヌルいゲームにしか慣れていないから困る!」
 練達のあるとあるインディーズゲーム会社の開発室で、男は苛立たしげに机を叩いた。モニターしていた部屋では、HMDと10点トラッキングを装着した男が倒れ込み、失禁しつつ小刻みに震えている。システムメッセージには■■■■回目のリタイアという表記とテスター完全辞退のメッセージがARで躍っており、彼が完全に『ゲーム』が出来ない肉体状態になっていることは用意に想像できた。
 男は他人への要求が過当ではあるが、さりとて人道を捨ててはいない。辞退した青年には丁重に洗体と記憶処理を施した上で、モニター謝礼と一定期間の社内のスパ施設での静養を与えるだろう。
 そもそも、青年は『もった方』だ。男はこれまでの間に多数のゲームを手掛けたが、そのどれもが控えめに表現して『ガチゲー』を超えた『クソゲー』と呼ばれ、しかしコアなファンが買い支えたことで実績を残したため彼を人気クリエイターにまで押し上げた。
 だからこそ、真面目一徹だった開発主任にはそれが強烈なプレッシャーになった。もっと強烈な、もっと重い、もっと、もっと、もっと。
 ……そうして彼が作り上げようとしたゲームはあらゆるテスターを精神汚染ギリまで追い詰める代物になってしまっていた。
 で、彼も流石にこの状況がヤバいと思ったので自分でプレイして難易度をブラッシュアップしていこうと考えたのだった。
 数十分後、彼は直前まで飲んでいたタピオカドリンクのタピオカがショック症状で喉につまり、死んだ。
 

●遺作(未完成)
「……という経緯で、有名なゲームクリエイターが死んだんだ。そして、今そのインディーズ会社が入っていたビル内はそのゲームのクリアを求める開発者の悪霊のせいで立ち入り禁止措置が取られてる」
 グリム・クロウ・ルインズ (p3p008578)から説明を受けたローレット・イレギュラーズ一行は、どこか安堵したような表情を浮かべていた。ああ、練達なら親の顔より見た感じの導入。もっと親の顔を見ろ。
「そのゲーム内容は不明だけど、とにかく難易度が高かったという意見と、ゲームバランスがおかしい、Tipsが中途半端、ジャンルが特定できない……など様々な要員からクリアがかなり難しいそうだ。立ち入り禁止になってから面白半分で潜入した連中、調査のために立ち入った官憲、どちらもほぼ会話不能なほどに精神を病んだ状態で出てきたって話だな」
 グリムから羅列された情報は、コンピューターゲーム黎明期に現れた怪作(クソゲー)の面影をそこはかとなく残している。だが、そんなものに興味のないイレギュラーズには何が何やらだし、何より話しているグリム自身がそのヤバさを理解しきっていない。
「……でも、練達ではこれくらいの難易度が普通と聞いた。イレギュラーズなら攻略できるだろ? そう言って斡旋されたんだ」
「そこは断っても怒られなかったと思うわ」
 果たして、イレギュラーズは精神衛生を保ったままゲームクリアできるのだろうか……?

GMコメント

 そういえば果ての迷宮10層も大概だったなと思いました。
 私も初代ゲーム機(おさがり)では中古クソゲーを大量に掴まされ……おっと年齢がバレる。

●達成条件
 練達クソVRゲームを攻略する

●クソVRゲーム
 とにかくクソゲー。インディーズの開発者がクラファンとか駆使して完成までこぎ着けたが、テスターが裸足で逃げ出す仕様の連発でバランス調整を検討されていた。
 主なクソ要素として
・バランス崩壊
・鬼畜難易度
・スキップ不可ムービー連発
・セーブなし
・プレイ中に謎通知がポップして邪魔をする
・覚え要素多数
・その他多数
 ……と普通に作ってもそうはならんやろレベル。ビジュアルやUIは親切だがTips(ヘルプ)が絶望的に乏しい。
 基本的に「RPGパート」「音ゲーパート」「アクションパート」などがある複合ゲーム。全部で一定以上の成果を残さないとゲームを終了できない。
 攻略順は自由。攻略したらそのゲームパートのやり直しはない。
 HMD+10点トラッキングデバイス装着でプレイする。

○RPGパート
 基本的に一本道のダンジョン攻略RPG。回避困難な罠とやたら多いモンスターハウス、初見殺し行動パターンの敵などがうろつく。
 実はスニークによるクリアが一番無難まであるクソ要素の宝庫。そして専門用語と大根演技のムービー鑑賞会が続く。

○音ゲーパート
 3曲構成、8割Perfectかgreat叩かないと失敗(ダンス系、手許系、DJ系など選択可)。
 ランダムに広告が流れてきて邪魔をすることがある。そんなにお金に困っていたのか。
 難易度設定はやり込んでいないと難しいレベル。なお失敗すると電流のようなショックが飛んでくる。

○アクションパート
 浮遊する足場、回転する足場、襲いくる回転棒! 上へ上へと登っていくステージではハイペースでせり上がる致死毒! 180cmのむくつけき男どもとレースで1位を掴みとれ!
 ……当然1位じゃないとクリア判定されない。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 ゲームの概要以外は何があっても保証できず、負傷の可能性は低くありません。グッドラック。

  • チキチキ(物理)! 未帰還ゲーム!完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年12月13日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
眞田(p3p008414)
輝く赤き星
天雷 紅璃(p3p008467)
新米P-Tuber
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨
※参加確定済み※

リプレイ

●最高級フラグ建築技師共の宴
「機械のゲームは初めてだから少し緊張するな。ただ、ゲームは楽しい物だと聞いているからやってる内に解れるだろう」
 『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)はトラッカーを身に着けながら、「な?」といった様子で仲間達に同意を求めた。純朴な彼の態度に、気を緩めた者が少なからずいたのは否定できない。
「クソゲーつっても結局はゲームだろ。クリアできるんなら何の問題もねぇっスよ。流石にクソゲー度がえっぐいぽいっスけど、イレギュラーズは格がちがうってトコ見せてやらねぇとな!」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)の理解度はそれはそれで正しい。クリアできるならクソではない、という発想は修羅の国の発想のそれだと思うが、まあゴールが明確ならイレギュラーズに超えられぬ壁はないのだ。
「皆とゲームで遊ぶお仕事らしいのだわ! ゲームは詳しくないけど……楽しみなのだわー♪ 」
 『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は仲間達とゲームで遊び、報酬がもらえる依頼という認識でいた。間違っちゃいないのだ。正しい認識のはずなのだ。それがクソゲーでさえなければ、簡単な依頼なんだけれども!
「げーむ……やったことないから分かんないけどきっと楽しいんだよね!」
 ここにも『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)という無垢な小鳥が一羽。まあこいつウォーカー(自称)なんだけどまあ置いといて。華蓮並にすげえ無垢な反応してるの本当にこいつ茄子子か? みたいな感がある。
「理不尽で難しいゲームとクソゲーは別物なんだってそれ地球でも言われてるから!」
「げーむとくそげーは違う……? ……なるほどね、全部わかった!」
 『スレ主』天雷 紅璃(p3p008467)の焦りの混じった言葉に茄子子は小首を傾げてから理解を示した。多分きっと、絶対わかってない方の反応なのだが今更突っ込むのも面倒だ。
「どこから見ても、クソゲーコンテストで大賞を取れそうなゲームじゃないか。ふふふ……ワクワクしてきたな」
 既にHMDまで装着し万全の態勢で挑むのは『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)だ。練達慣れしてきている彼女は、恐らく世に生まれたあらゆる忌み子(クソゲー)を網羅してきているに違いない。……バグとルールをひっくり返す要素にまみれたボードゲームが混じってないだけ、まだ有情なのでは? と考える程度には。
「前人未到の超難ゲーム……クソゲー? いやいや、やってみたら意外と……ってあるかもしれないじゃん?」
 『レッド・ドラマー』眞田(p3p008414)はVR機器にナマで触れ合えることに望外な喜びを覚えつつ、それ以外の要素(クソゲーとか)に関しては目をそらす方向に行った。
 意外と面白いゲームはクソゲーの門番すらも打倒し得ないので、多分その推測はバッチリ的外れなのだが仕方ないかもしれない。こんなものに挑む奴が初手正気を積んでいるはずがない。
「わたしには、テクニックとかは、ありませんけれど……かわりに、忍耐力だけなら、自信ありますの。こういうのは、耐えて、耐えて、耐えきることが、何よりも重要になるでしょう……この勝負……受けて立ちますの!」
 なお、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)の耐久力はまずもって色々とおかしいレベルであり、彼女が心折れたらまず他の面々も結構無理くさい難易度であることは間違いない。
 イレギュラーズ達は(旅人がいるとはいえ)混沌の価値観で練達の「ヤバい」に立ち向かわねばならない。その意味の重さを、受け止める事態のクソさを理解するのはまだまだこれから。
「とはいえ私もゲーマーの端くれ、クソゲーに恐れをなしたとあっては視聴者に笑われちゃうからね!」
「何があっても平常心を保つようにね。精神に異常を来さないよう対策もしてきたのだわよ」
 紅璃はJK力にゲームのうまさが付随しないか、と訝しんだ。しなかった。
 華蓮は大丈夫だろうと想いつつ万全の体制で挑む覚悟をしていた。果たして、その決意が秒で揺らぐことになろうとは(彼女を知る限りでは)誰も思わなかったのだが。

●ゲーム業界の判定は大体ガバⅠ
  というわけで、『中世ヨーロッパ』……言ってしまえばベッタベタに幻想風の世界観なRPGに降り立った一同。
「まずは、比較的、ゆっくりと考えられそうな、RPGパートに挑戦してみましょう……」
 能力は自身のそれを一部反映するようで、ノリアのHP値は誰がどう見てもバグり倒していた。ボスの数値じゃん?
「ヒーラー? っていうポジションで遊ぶのだわ!」
 華蓮はといえば、何時もと違う衣装に興奮を抑えきれず、いかにもな杖を振ってエフェクトを楽しんでいる。純粋かわいいである。
「わかんない!ㅤ誰かの後ろついて行こう! ……え?」
 茄子子、華蓮の後ろ(の座標)に移動した途端に視界に広がったローディング画面に目を見開いた。こういうとこ運がいいなお前。ローディングが終わった途端に流れ出す……ヘッッッタクソな英語(幻想語ではない)に〇〇奈〇〇みたいな字幕、細かすぎる設定を開陳するムービーの開始だ!
「音楽は無駄にアイリッシュ風にしておきながらムービーの雰囲気にインド混ぜてくるの合体事故じゃん?」
「私は知っている……このムービーそのものにバグが混じっている可能性を……!」
 眞田は凝りまくった音楽が何を発祥にしているのかと耳聡く聞き分けた。だがムービーの雰囲気的に間違いなくミスマッチだ。音楽と世界観が合致しつつ踊りだした登場人物。ムービー合成バグを疑ってしまうが汰磨羈は中空に手を伸ばして干渉できないか試していた。
 なおこんな事をしている間、紅璃はずっと死んだ魚の眼で固有名詞や世界観に関係ありそうな単語をピックアップしてメモしていた。
「ムービーくっそだる……」
 葵は飛ばせないか何度も試した。無駄な努力と知ってはいたが。
「御主ら構えろ! 理不尽なバグとか冗長極まりないイベントとかが平然と連続で来るからな!」
 汰磨羈の警句は正しかった。そして、ムービー最後にチラっと出てきた敵とそのまま戦闘になるまではいいとして、そのまま相手の先手である突進攻撃が来る辺りが超絶クソゲーだった。汰磨羈は「予測可能回避不可能」という単語が脳裏にチラつく。
「即死攻撃でも、受けないかぎりは、大抵の不意打ちは、耐えきれるでしょうから……ゲームオーバーになってしまう前に、パターン把握を、がんばりますの!」
 だがバグにも誤算は存在する。
 バグをバグで糊塗したノリアの超絶な体力は、初見殺しタックルを受け止め逸し、壁に激突させた。それだけでノリアの体力ゲージが大きく削れているので、ぶっちゃけ彼女以外に止めることは敵わなかっただろう。
「え……うーん……? 敵が強すぎる……今のは行っちゃいけない場所なのだわ?」
「強制ムービーの終了後に勝てないレベルの敵がイベント進行なしで襲いかかってくるのは仕様なのか?」
「いやいやいやいやありえないよね?! 絶対抜け道あるやつだよ!」
「全然わかんない!ㅤ誰か助けて!」
 華蓮、グリム、眞田、そして茄子子は迫りくる冗談じゃないレベルのアレコレに混乱極まっていた。
 眞田はその中でもまだ理解がある方で、汰磨羈同様抜け道やバグを積極的に探しに行く。
 ノリアも、一旦退けたボスが動き出すより前に壁抜けを何度も繰り返し、「すり抜けずに通れる壁」を模索する。
「行くぞ!  鉄板のアイテム並び替えを試すのも忘れるな!」
「なんでそんな詳しいッスかね……っと、来るか」
 汰磨羈の的確極まりないバグ検証(この間も数多のバグで色々不利有利を繰り返し被った)の最中、葵はボスが起き上がる気配を素早く感知。本来ならサッカーボールを叩きつけるところだが、ここは敢えて、相手に駆け出す。
 仲間達が驚愕に目を見開くが、彼は考えあっての行為だ。だと思う。
 1歩、2歩、3歩で地を踏み跳躍した葵は、そのままボスの頭上を飛び越え、かけたところで謎の隠しブロックに頭を打った。
「馬っっっっっっ鹿じゃねぇの?!」
 思わず叫んだ彼だがとんでも現象はまだ続く。落下先はボスの頭部、死んだと感じた彼は……しかし、踏み込んだ瞬間にあっさりと崩れ、消滅していくボス(?)の姿に愕然とする。
「わたしは、ゲームの知識は、ありませんけれど……これが、バグ……?」
「バグって虫じゃないのだわ?! いったい何が」
「オレが一番聞きたいッスね」
 理解できない、と言った表情で顔を見合わせるノリアと華蓮だったが、当の葵が一番この状況についてイケてないのは明らかだ。そして、その間も眞田と汰磨羈はバグ検証に明け暮れていたし茄子子はノリアに倣って(透過はできないのでやや強引に)壁に手を押し付けたり体当たりを繰り返していた。
「このゲーム、ムービーの内容的に凄くいっぱい属性があるしステータス開いたらめっちゃステ振り自由度高いんだけどどれに振ればいいの?! ジョブ固定なのに自由度高すぎるとか縛ってんのかそうでないのか分からないよね?」
 紅璃の戸惑いも尤もだ。展開されてるステータスは明らかに存在する意義がわからない状態だしフリ直しが利かないし6種(実質5種)の属性を自分で伸ばしていけって感じで振るやつになってるしで謎が多すぎる。
「会長知ってるよ! こういうのは大体物理で殴れば終わるやつだよ!」
「あの強さの敵を相手するわけにもいかん。ステータスなんて飾りだろう。それよりその隠しブロックが怪しい」
 茄子子の言葉は一種の心理だが、バグゲーは隠し要素を増やしすぎて詰んでるところがある。汰磨羈は葵が頭をぶつけたブロックに触れ……そこから蔦が生えてきたのを見た。
「ショートカットか……?」
「これはバグか、仕様か? 狂っているのはゲームではなく我々ではないのか?」
 葵の言葉に、グリムは哲学的な呻きを漏らした。……時代劇かな?
 まあともかく、蔦を辿っていきその先のモンスターを回避したまに茄子子が落ちたり眞田が落ちたり色々あったが、全員大した負傷もなくゴールできた。バグってすごい。一同はそう思った。
 バグフィックスしろと皆、思った。

●ゲーム業界の判定は大体ガバⅡ
「うん……? うん? まずどういうゲームなのだわ?」
「大体全部同じッスよ。タイミングに合わせて鍵盤や手元足元のパネルを踏んだり叩いたりして上手くいけばクリアってやつッス。オレはダンス行くわ」
「私もダンス系ね! 多分考えてること同じだろうけど、飛んで跳ねて魅せていくよ!」
 華蓮はこの手のものに理解が疎い。旅人である者達は知っている者もそこそこいるようで、葵と紅璃はダンス系のゲームを選んだ。
「気になってたヤツ! 俺はボタン押すのが1番馴染んでるからそれでやるぜ!」
「練達の人はこういうので楽器を練習するのか? ピアノなら軽くは引けるからそんな感じなの選んでやってみよう」
 眞田は5ボタン式のもの、グリムは鍵盤を打鍵しまくるタイプを。音楽通りの譜面であれば、多少鬼畜な構成でも8割をキープできる……はずだ。
「譜面は音楽を追っていけば覚えられる……あとは気合いでなんとかする」
「会長は絶対ミスをしない!ㅤあと疲れない!!ㅤだからタイミングを覚えるまでずっとプレイし続けるよ!! 」
 汰磨羈はドラム型を、茄子子はDJ型に走った。さり気なく一番きつそうな……。というか2人ともトライアンドエラー前提か……。
「これは、ここまでのすり抜け理論をふまえて……パートそのものを、すりぬけてやりますの! そうでもしないと、わたしには、攻略なんて、無理そうですの……」
 ノリアは自身の運命の力を、透過能力を信じ『ゲームそのもの』をすり抜ける暴挙に出た。……まあ当然ゲーム間の障壁に阻まれ留まってしまうが、彼女はあろうことか自傷し、戦闘不能へと至ったのだ。
「……あとのことは、皆様、お任せしましたの……」
「ノリアーッ!?」
「自分達は彼女の分まで攻略せねばなるまい。いくぞ、皆」
 汰磨羈の絶叫を背景に、沈痛な面持ちでグリムは呟く。斯くして、7人の戦いが――。
「健康・医者・パズル・カード・建築 ……どうしてノーツ? に紛れてくるんだ?」
「テンションあげて! でないと続かない!」
「いや電流痛え! モウヤダ! でも音楽で負けるのはもっと嫌だ……!」
(きっと終わりはくる……!)
「音ゲー中に謎通知ポップするのは反則じゃないのだわ!?」
「あっクソ広告てめぇ! いい流れだったのにぶった切るなあぁもう8割落ちてんじゃねーかあだだだ!」
「覚えるまではミス前てイッッッタ!!!」
 地獄絵図である。なお、このあと一番多くて〇5〇回くらい繰り返した者もいたが無事クリアした。無事の定義とは?

●ゲーム業界の判定は大体ガバⅢ
「ここはかなり自身あるッス。跳んでアクロバットで避ければイケる」
「というか一位以外ダメってことは私たちの誰かから一人が勝てばいいのかな?」
「会長は妨害に回るよ! あとは任せた皆!」
 飛び跳ね駆け回ることに自信のある葵と紅璃、そして持続力こそあれ瞬間体力に難があるため妨害に徹することを決意した茄子子。彼等は役割と、得意分野とがあればこそ気合が入っていた。
「……誰かが一位を取れば解放されるのか?なら自分は妨害に回ろう」
「機動力に任せて男達を妨害すればいいんだね、任せて!」
 グリムと眞田は男として妨害工作に徹することで仲間を活かすことを選択。得意分野の使い方を絞って戦うことを選んだ。
「フィジカルエリートの力を見せてくれるわ!」
 汰磨羈、ここまでの理不尽を吹き飛ばさんと気合いの入りようが違う。あ、物理でイケるからノってきたな?
「何……? 私は何をしてるのだわ……? 修行?」
 ……で。
 なんていうか華蓮さんはそろそろ限界っぽいんですよ。飛べる。跳べる。だが、飛行は試したがチートとしてロックされたのだ。目が濁っている。確実に。
「マッスルッ!」
「マッスルッ!」
 むくつけき男共の掛け声がマッスル一択なのは制作陣の手抜きではないだろうか?
『STAGE1 ひたすら回り続ける丸太の上で上位20人まで生き残れ!』
「「「レースじゃねえのかよ!」」」
『STAGE2 斜面の上から転がってくるオブジェクトを避けてせり上がってくるスライムから逃げ切れ!』
「「だから!!」」
 アクションゲームではある。
 あるのだが、レースなのだが、手法が胡乱すぎた。
「ちょ、待っ! グラだけで接触判定ねぇのかよ足場ァ!」
『ランダム♪』
「くっ……クソ…クソでしょ……クソゲー!!!!」
 葵が落ちていく横、STAGE3のクソ罠をギリで避けた華蓮が叫ぶ。
「私だってねぇ!? 優しくて穏やか……って自分でも思ってるし、そういう印象保とうと頑張ってるだわよ! 限度っ……限度があるでしょ!! ふっっっざけんじゃねぇのだわよ!?!?」
 あー、華蓮ちゃんがこうやってこう、壊れていく様見るのすっげえ楽しいなあ。でも自我を保って。保ちながら壊れて。
「うおおおおお!ㅤ落ちろおおおおおお!!」
「……何故自分はこんな苦行をしているのだろうか? 練達の人は皆こんな苦行を楽しんでいるのか? そもそもこれに楽しむことができる要素とは一体どこに?」
 割り切った茄子子は男達もろとも奈落の底へ消えていく。グリムは自分の存在意義に疑義を覚えつつ、スライムの海でくんずほぐれつ大乱闘だ。薄い本が増えるね。
「あっっっっぶな何コレ!? ランダムに扉ぶち破ってゴールかと思ったら開かない扉と即奈落の扉?! 後出しジャンケン進行しかできないでしょこれ!」
「男どもはショートカット用の足場に過ぎぬッ!」
 紅璃と汰磨羈はなんとかギリ避けつつ進む、先へ、先へ、むくつけき男どもをこえ――!

●はいクソ!
「最悪っス……なにこのクソオブクソ、キレそう。もう敵勢力幹部撃破レベルの高額報酬積まれても絶対やらんぞオレは」
「……しばらくきかいのげーむはみたくない」
「二度とやらないよこんなクソゲー!!」
葵、グリム、紅璃の3名は完全に自尊心と勝利への執念をバッキバキに折られて転がっていた。でもね、紅璃はゴールできたんですよ。凄くない?
「ふふ、予想以上の強敵だったじゃないか……もう二度とやらんぞ!」
「私はなにを……口にしていたのだわ……?」
「華蓮さん、今はゆっくり……おやすみに、なりましょう?」
 HMDを叩きつける汰磨羈の傍ら、華蓮は自身の記憶が曖昧なことに気づく。なおノリアは外野としてモニタしていたのでアクションの一部始終を見ており、彼女を慰めていた。
「前言撤回だよ、これは……超クソゲーだ」
 眞田はやってみたら意外とイケるんじゃないかと思っていた。数時間前の自分を殴りたくなった。
「なんだかんだで楽しかったね!ㅤ会長くそげー好き!」
「は?」
 なお、茄子子だけは何故か鋼のポジティブで耐えきったらしい。マジかよこのクソゲーメーカーの株売ります。

成否

成功

MVP

天雷 紅璃(p3p008467)
新米P-Tuber

状態異常

ノリア・ソーリア(p3p000062)[重傷]
半透明の人魚

あとがき

 そりゃバグとりでタピオカ詰まるわ。

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