シナリオ詳細
ココナッツを称えよ、さもなくば死ね
オープニング
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ヘイ! 君はココナッツを知っているかい?
そうあのヤシの樹の実さ! 飲んでみた事あるかい? チョーまずいぜ!
おっと失礼! だがあれはあんまり甘くないからな、フツーのジュースと思って飲むと拍子抜けしちまうかもな! ただ冷たくすれば暑い夏の日差しの中なんかじゃ悪くない爽やかさがあって――とッ話が逸れちまったな!
とにかくココナッツ。ココナッツさ! 君達にはココナッツをだな――
「討伐してほしいとかいう訳の分からない依頼を受けてきた訳なんだけど」
海洋。首都リッツパークから幾らか離れた小島にやってきたのはギルオス・ホリス(p3n000016)である。世間的には冬の筈なのだが、この辺りはまだ幾らかの暑さを残しているようだ。夏の様に灼熱とまでは言わないが、厚着をし過ぎれば汗が出る程度。
なんでもこの島では『ココナッツ』に困っているのだとか――
何度話を聞いても釈然としない為実際現地に出向いてみた所。
「おっ、アレかな? 確かにヤシの樹が幾つも生えているけれど……」
海辺の方を歩いていればやがて見えてきた……ココナッツを生やした件のヤシの樹達だ。
見渡す限り結構な数が生えている様である。
なんでもローレットに話を持ち込んできた者達の話を纏めるとあのヤシの木が……
「天災を下してくるとかなんとか……いやでも只の樹だよねぇ」
まじまじと見つめるギルオス。ヤシの樹はいずれも20~30m程の大きさがあるようで、成程近くによって見つめてみると中々の大きさがあるものである。上の方には所謂かな有名なココナッツが実っていて――
「んっ?」
その時、ふとココナッツが『動いた』気がした。
風か? そう思考したと同時――高速でギルオスの下へと飛来する一つの種。
「うわああああ!? ちょ、ま、何こ……!」
『――平伏すがいい下等な人間よ』
寸での所で躱したギルオスだが、先程までいた所が……着弾したココナッツにより大きく抉れている。もしもあれが頭に直撃していたら――ぞっとしない想像が頭をよぎるものだ。しかしそんな思考も一瞬のみ……どこからか声が聞こえてきたかと思えば。
「まさか――このヤシの樹は意思を持っていると!?」
即座に理解した。このヤシの樹は魔物だ! ついでに多分ココナッツ自体も!
『頭を垂れ、生贄を捧げよ。海辺の王者たる我らの軍門に下るがいい――』
「生贄って具体的には?」
『肥料と水』
なんか一瞬尊大なだけで無害なんじゃないかと錯覚するが――先程の攻撃は間違いなく殺意の伴ったものであった。どういう経緯かさっぱり分からないがこのヤシの樹は魔物化している。恐らくどんどん狂暴な性質へ成長していく恐れがあるだろう……
それにどうやら一体ではなさそうだ。全てのヤシの樹が魔物化している訳ではなさそうだが、感じる気配だけでも五、いや六体はいるか……? これ以上増える前に伐採してやらねばならない。
これは急ぎローレットへ戻りイレギュラーズ達を集めねばと思って。
『無駄な事は止めておけ。
我らの力は毎年幾人もの人間に死者を出す事が出来るのだと知るが良い!
海で調子に乗っておるサメなんぞ我らの足元にも及ばぬのだ!!』
ヤシの樹は叫ぶ。そう――落下するココナッツによる死傷者の話を知っているだろうか?
一説によるとココナッツの落下による死傷者は毎年150人に及ぶという。
海で狂暴と言うとサメが思い浮かぶだろうが……サメによる死傷者は実は年間5人程度らしく、ココナッツによる被害の方が上であってつまりサメなんぞ目じゃないのである。
海の王者の地位なんぞ勝手に争っているがいい。
だが浜辺の王者はこのココナッツであるぞ人間共。称えよ平伏せさもなくば死ね!
「いやココナッツの死亡被害がサメを超えてる説ってそれ、確か『地球』っていう異世界での、その筋における有名な都市伝説だし混沌の話じゃ……うわああああ雨みたいに降って来た!!」
口答えするか人間! 強靭にして硬いココナッツを落下乱舞。
全くはた迷惑な存在が生まれたものだと、ギルオスは思考しながら駆けていた――
- ココナッツを称えよ、さもなくば死ね完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2020年11月30日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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ここなっつ~ここなっつ~
美味しいと評判のここなっつ~
貴方を染め上げるここなっつ~
――奇怪な謎電波が戦場に近付くにつれて響き渡っていた。なんやねんアレ!
「改めて近くで見るとでっけぇな……そしてマジでわっけわかんねぇな……」
思わず腕を組んでまじまじとヤシの木を見るのは『仕事の後の一杯』ティフォン・テンタクルス(p3p007865)である。最初に話を聞いた時は文字通り、訳が分からなかった。近付いてみて実物を見てみたら分かるかと思ったけどやっぱ分からんかった。
だが――アレを叩き折ればいいんだろう?
「ふふっ……おいしいと評判ですし、疲れたら実を拾って杖(銃)で撃ち抜いてからごくりといくのもありですね。途中で飲むか後で飲むか……いずれにせよ腹が減っては戦は出来ぬ、なのです」
「海! 常夏!! お酒よぉ――!!
ココナッツはいいわよねぇ、ピニャコラーダ、チチ!」
まぁ『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)や『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)に関しては完全に飲料として見ているが!! 具体的にはヤシの木のココナッツの方を!! ていうかアーリアさん、何ですかその手に持ってるの。お酒じゃないですよね? これから依頼ですよ!?
しかし油断してはいけない。曲がりなりにも奴らは魔物化しているのだ。
その上ココナッツは直撃すると結構痛いという……うん、そうであるならばと思案した末に導き出した結論は――
「さ。ギルオスくん! まさか皆に紹介だけして自分だけ安全圏とかそんな事はないわよねぇ~はははそんなまさか、ねぇ?」
「は、離せ君達――!! 僕はあくまでも情報屋だぞ――!!」
「何安心しろよ。いざとなれば守ってるやるさ。ああ――いざとなればな」
逆に言うと『いざ』の事態が訪れなければそのまま盾にしておこうとアーリアと『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)はギルオスの肩を強固に掴んで離さない。こ、この外道共――ッ!!
暴れるギルオス。なぁに難易度は高くないからこその処置である安心しろ、多分大丈夫だ。
「あれだよね、いつもの混沌へんてこ食べ物生物シリーズ。ついにココナッツ……というかヤシの樹までそうなっちゃったのかぁ……」
また凄いのが出てきたなあとギルオスの背後から覗くのは『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)であった。この位置からならココナッツが飛んできてもギルオスを盾に…・・いや違うよ偶々だよ?
ともあれアレに実っているココナッツは極上だという。
……そういえばココナッツオイルってお胸に効くとか効かないとか……ホントですかヤシの樹様!? え、ホントなんですね!? 今入信するとココナッツオイルがタダで付いてくる!? その後も20%オフ!?
「ココナッツばんざーい!! ココナッツばんざぁぁぁい!! ……ハッ、今ボクは何を!?」
あやうく怪電波に洗脳されるところだった焔。頭を振って正気を取り戻し。
「とーにかくヤシ狩りじゃ。ヤシ狩りじゃ! 単子葉植物にしては頭が回るようじゃが、所詮は木よ。常夏パラダイスでのほほんと生えていただけの、ひょろながに過ぎぬモノが人間に喧嘩を売ろうなどと浅はかな! 今こそ我ら人の力を見せつけ後悔させてやるのじゃ!」
なーっはっはっは! 高笑いしながら闊歩するのは『殿』一条 夢心地(p3p008344)である! 奴らが海辺の王者であるというのなら、こちらは殿だぞ殿。ヤシの木如きが勝てる訳があるま~~い!
『おのれ矮小なる人間共! また来たのか、供物以外は受け付けんぞ!』
「うわわ、ホントにヤシの樹が喋って……えっ、なにあれこわい……」
なんだとこの小娘ェ! とヤシの樹に理不尽に怒られたのは『超絶美少女女子高生(自称)』松瀬 柚子(p3p009218)である。陽気な小島の海辺に降臨した超絶美少女女子高生(自称)であったが、あのヤシの樹には流石にドン引きですよドン引き。
ええ、あれを折るの? 折れるの? 美少女に折らせるの?
色々疑問符が浮かぶ存在を前に――して。
「まさか。ヤシの樹様に反逆の意志を示す等、滅相も御座いません。
其処に座すは誉れ高き海辺の王たるヤシの樹様。
私はココナッツに心酔する哀れな吟遊詩人……どうか王へ捧ぐ我が歌をお聞き届けあれ」
『魅惑する男』テルクシエペイア(p3p009058)はまるでヤシの樹に追従するかのような姿勢を見せる――無論本心ではない。成すべきはヤシの樹を煽てて仲間の行動から気を逸らす事である!
奴らは人を見下し傲慢な姿勢を見せている。
ならば! 我が身の歌声で彼らに隙を作るのだ!
――それではお聞きください。『ココナッツ万歳』(作詞作曲僕)
「めでたし天上に座す偉大なココナッツ。
全ての情熱と歓びを呼び覚ます大いなる実りよ。
空を抱く葉で御身に傅く我らのこうべを撫で祝福したまえ。
おお、めでたし恵み多き偉大なココナッツ――……ラブフォーエバーココナッツ~」
抑揚のある声の使い方。
されど魅せるは音だけに非ず、身振り手振りの様はまるで舞台の上にいるかの様。
そう、ここは大舞台。
ヤシの樹達にとっての――今、このとき限りのライブステージッ!
『おお……おおお! うむ! 実に見事な我らを称える讃美歌である――!
その雄姿称えよう! その歌を天地に轟かせる事を許そう!』
ちょろいなコイツら! ありがとうございますと、テルクシエペイアは言葉を紡げば。
『だが今は歌声より肥料を寄こせ肥料を!! 話はそれからだ!!』
ココナッツが滅茶滅茶跳んで来た。
おのれ、これだから芸術を介さない植物は――!!
●
しかしテルクシエペイアの歌声に聞き入って隙を見せていたヤシの樹達は気付かなかった――いつの間にか懐に飛び込んできている存在達に。
『ぬぅ、何奴!!』
「麿である」
その一人が夢心地であった。
海辺に生える一本のヤシの樹――対するは立派なちょんまげを携える殿――
見せつけるかの様に闊歩し、小首をかしげ、髷もやや傾くように。そう、これは……
『何、まさかその頭……貴様も同類だというのか!』
「なーっはっはっは! そぉーれ」
コッココココココ! ココーナ――ッツ♪
コッココココココ! ココーナ――ッツ♪
天~に届こう、甘味~の頂点。
コッココココココ! ココーナ――ッツ♪
コッココココココ! ココーナ――ッツ♪
陽気なリズム。ヤシリスペクト迸る歌声とその内容。
そう。これはこれはココヤシを崇拝するがあまり、頭をヤシっぽくしてしまった夢心地一世一代の場面なのである――ッ! このちょんまげがその証であろう。だってこんなヤシの樹に似た形の髪型が偶然存在しようか? 偶然である。
連中の警戒心を解くためにテルクシエペイアに続いてのメロディーを披露――
さすればヤシの樹達は見入っている。やっぱこいつらちょろいだろ。
一歩二歩、近付き近付き歌声と供に――そして。
「隙ありゃあああああ――ッ!!」
『ぐ、ぐあああああ――!! き、貴様裏切ったな――!!』
ずんばらりのバッキバキじゃ。夢心地の愛刀がヤシの樹の身を穿ちて。
「やれやれこんなにか弱く子犬の様にこびても駄目だなんて、贅沢だなぁ。
なら仕方ないね! 精々もっと困らせてあげようじゃないか!!」
更にテルクシエペイアがココナッツの乱舞を華麗に躱す――ふふ。
如何に強力な一撃だろうと当たらなければどうと言う事はない! そう、完璧な回避と言うのをご覧に入れてみせよ――ごはぁ!
「くっ、流石に僕の速度じゃあどこかしら限界はあるか……!!」
しかし彼はめげない。なぜなら女性達がいるから。
いやむしろ彼女達を狙う一撃があるのならば身を呈そう。なぜかって? そう!
「見ていてくれ美しき人――この吟遊詩人(アイドル)の勇姿を――……!」
直後、その顔面にココナッツが尋常じゃない勢いでめり込んだ。
「ああテクルシエペイア君が!! これは放っておけないわぁ。ねぇギルオス君。大丈夫だいじょーぶっ! 治癒は飛ばすから安心して盾になってよぉ、ね?」
同時。アーリア達がギルオスを盾に突っ込んできた。
盾がやめろやめろと言ってる気がするが、盾なので気のせいだろう。盾だし。
降り注ぐココナッツ。盾の悲鳴が聞こえる気がするが、気のせいだろう盾だし。
しかしとりあえずイレギュラーズ達の基本戦術はヤシの樹を煽てつつ接近し、もののついでにギルオスを盾にしてみんなでなぐるとかいう外道御用達戦術であった。
「あらあらやっぱり殿方なのねぇ……背が高くてすらっとしていて素敵よねぇ……ね、触ってもいい?」
『ま、待つのだ。私には妻が……』
しな垂れかかるアーリア。拒絶しようとしてあんまり拒絶してないヤシの樹。ていうかヤシの樹って妻とかいう立ち位置の存在いるの? わかんないけど指を背中――多分に這わせて腹――多分に吐息を一つ。
あふぅん……とかいう声がヤシの樹からした。ので、その時。
「今よ総攻撃――!!」
イイ感じに隙だらけになったので橙色の魔力を全力で叩き込んでやった。樹が悶えてる!
「今だ行くぞ! 連中の統制が乱れた――この機に突っ込んでぶっ潰すんだ!!」
いざ尋常(?)にココナッツ狩りじゃ! とティフォンは全力疾走。
海種を馬鹿にしたなこの植物ヤローと闘志全開。ヤシの樹達の注意を引きつつ――ティフォンはココナッツを引き受ける。いや、厳密には受け止めたココナッツをこっそり荷物袋の中に詰め込んでるのだが。
「いやだって上手いんだろ? 一杯飛んでくるし少しくらいだな……ココナッツで度数の高い酒が作れた気がするし、ああコイツも正当な報酬の一つだろ!」
私欲ダダ漏れである! ああまたもう一つくすねてるぞティフォンが!
「いやー事情はよくわかんないですけどなんか盾になってくださる方がいるみたいなので有り難く利用させていただきますね! てへぺろ! かんしゃかんしゃ~!」
待てえええてへぺろ! じゃないんだよ柚子ぉぉぉお!!
盾の影に潜んで一気に接近。跳躍、一閃。
狙うは夢心地と同様にヤシの樹の懐――懐――? に飛び込んでズバッとやっちまう事である。折角滑り込んだ依頼なのだから、此処は一つガッと言ってバシッと決めてバッチリ活躍して、超絶美少女の名をバババッー! と。
そう! 地盤固めをしっかりと……ところでなんでテルクシエペイアもそうなんだけど、君達なんでそんな自分の自信に満ち溢れてるの? 輝かしすぎるんですけど?
『娘――!! この青二才めが、小賢しいぞ――!!』
「うるせーんですよ!! こちとらココナッツよりも人をあの世送りにしてる餅と生きる文化圏から来てんですよ! やれるもんならやってみろってんです!! 私は今年の正月も生き延びてやりますよおらっー!!」
餅。それはとある国における最終決戦兵器とも言うべき威力を秘めた食物だ。
割とマジで毎年危ないので皆食べる時は気を付けて食べようね!! って、うわああ!
「って危なぁっ!? ちょっと美少女の顔狙うとは何事ですか!!」
『いやすまんけど我々の美的感覚からはちょっと美少女ではないので……』
「はああああ!? ヤシの樹風情が私を、なんて……あ、ははぁ~ん? さては照れ隠しですね? まぁ好きな美少女にはちょっかいだしたくなるっていう心理状況があるらしいですから、思わず狙ってしまうのも分かりますけd」
ココナッツ、顔面に直撃。柚子がやられた――!?
「うわああ! 殺人兵器ココナッツだ!! くっ、あのへんてこなヤシの樹を全部やっつければいいのは分かるけど……どうしよう! ギルオス君もう一回盾に成ってくれないかな! ちゃんとお礼もするから!」
「焔? 君ちょっとナチュラルに外道な台詞が今」
問答無用でまた焔はギルオスを盾にして突っ込んだ。
なぁに如何にココナッツを幾つも飛ばしてこようが、近付きさえすればこっちのものである。纏わせる炎の力が、樹で出来ているヤシの樹達に直撃する――ッ!!
「いやしかしこのココナッツ割とマジでうめぇな。もうちょい落としまくるの待ってから狩ってもいいんじゃねぇか?」
回収したココナッツ。上の方だけをエイヴァンは砕いて豪快に飲み干せば、空になったのをヤシの樹へとダイレクトアタックだ。中々美味なので持って帰ろうと画策し、ヤシの実を回収していれば。
『おのれ人間共~よくも我らのココナッツを~!!』
ヤシの樹、怒る。怪電波(特にダメージは無い)の圧が強まって。
脳髄に作用する――ココナッツ万歳と言え――!!
「うぅ……こ、これは抗えないわ……ざい。
……ばんざぁい
…………ココナッツばんざぁい! ひゃあ!」
周囲に(主に泥酔してるのが原因で)滅茶苦茶雑に治癒術を掛けていたアーリアが(主に泥酔してるのが原因で)ココナッツに洗脳されそうになる――ッ! 直後、手近なギルオスに頭突き一閃! 痛みによって正気を取り戻し、ギルオスのパンドラは削れた!
「ちょえええ――!! しゃらくさいッ!
ヤシの樹と戦う事を想定していなかったと思うてか! 見よこの剣術!」
ヤシの樹と戦う機会を想定していたとか本気か夢心地ィ!
右手の刀で切り倒し、飛んでくる実は左手の刀で打ち返し、撃ち返したのはギルオスの顔面に。これぞ正しく――夢心地剣術奥義が一つ、ヤシガニの構え! 称えてもいいんじゃぞ?
「ふふ――ここなっつを称えよ、ですか」
その時。一歩前に出たのは樹里だ。
ここなっつを称えよ、と仰られるならば是非もない。
……私の最大限の敬意を以て称えましょう。
「即ち――ええ。祈り花です」
それは祈りの奇跡。
それは果てなき渇望へ捧げる祈り。
飲み干してなお満たされぬ心に、幾何かの安寧を齎す――願いの極致。
受理受理受理~ココナッツ電波を~
『受理』
「……受理、しましたね?」
『き、貴様――』
「えぇ、えぇ。偉大なる偉大なるここなっつ様。偉大なる受理をされたここなっつ様。
受理をされたというのならば……そこは私の領域ですよ?」
こ、こいつ! ヤシの樹達を……自らの土俵に引きずり込みやがった!!
同時に放つは樹里の魔法――天まで届く祈りを具現した、魔法の一閃である。
全てを食い破る樹里の祝砲が、彼女の満面の笑顔より放たれる!
『ぐああああ――ッ!』
焼き尽くされるヤシの樹達。香ばしく輝くヤシの樹達。ついでに罪なきヤシの樹も巻き込まれたけどまぁ些細な事である。
魔力とは筋肉。
ただ只管なる威力で――突き破れば何も問題ない!
『お、おのれ――!! ココナッツ……ばぁんざあああああい!!』
何故か生じる大爆発。恐らくヤシの樹の内部の……なにかこうなってああなって火炎性の何か引火したのだろう!
ヤシの樹達が朽ちていく――王者を名乗ったヤシの樹達が――そして――
●
「残ったココナッツはこれだけか……チィ、あの魔物化したヤツ以外は普通の味みたいだな」
「トロピカルカクテル祭よぉ~! のむわよぉ――!!」
戦いが終わった後。エイヴァンはまだ回収できるココナッツがないか探し回り、アーリアはアルコールと混ぜ合わせて勝利の美酒を味わうタイムと化していた。そう、弱者の肉を喰らうは強者の特権である!
「なーっはっはっは! 極上ココナッツミルク寒天とは、うむ中々に良きものであるのぉ。これぞ絶品というものよ。まぁ殿上人を前に自らを王者と偽った罪はどの道許されぬ事であったがのぅ。なーっはっはっは!」
「ええ、ええ。でもこっちもどうですか? ココナッツカレーというのもまた美味ですよ。ココナッツのエキスが絶妙にカレーと絡み合って……ああ、疲れた体に沁み渡りますね……」
そしてこちらはお酒ではないが夢心地は甘味にして、樹里は事前に用意していたカレーの隠し味として投入。う~んマーベラスな味である。よきかなよきかなはっはっは!
「あ。盾お疲れさまです、ココナッツジュース飲みます? まだ沢山ありますよ?」
「はっ! 忘れる所だった! ギルオス君、ありがとうね! はいこれ、お礼の某共産主義者のシスターのパンツ! 遠慮しなくていいよ~あっ! なくさないように頭に被せておいてあげるね!」
一方で柚子と焔と盾として働かされたギルオスを労わる様に――まて焔。何をしている止めるんだ! それは決してお礼なんかじゃ……やめろー! またぱんつの変態扱いされる――!!
「後は……こっそり持って帰っていいよね……いいよね……リリファちゃんとか小さなお胸同名の皆の分を……皆の、希望を……!!」
そうしてギルオスの目を塞ぎつつ焔が狙うはココナッツオイル。
やめるんだ焔。そんな事をしても君達の未来は平坦なもので……ぎゃああ腕が折れる腕が折れるッ!
なにはともあれ浜辺にはこれで平穏が取り戻された。
もはや怪電波が飛んでくることもなく……
「フフ……皆思い思いに楽しんでるねえ……
こんな生物が出てきたんだ。次はココナッツシャークとか出てくるかな……♪」
平和な浜辺のハンモックに寝そべりながらテルクシエペイアは想像を重ねていた――
いやそんなサメなのかココナッツなのか分からない化け物、勘弁してほしいものである!
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼お疲れさまでした!
ココナッツばんざああああああああああああああいい!!!
GMコメント
ヤシの実ばんざい! ココナッツばんざ――い!!
……ハッ! 洗脳されてしまっていた! 以下詳細です。
●依頼達成条件
魔物化しているヤシの樹の全駆除。
●フィールド
海洋首都リッツパークから少し離れた小島です。時刻は昼。
小島の一角に生えているヤシの樹の一部が魔物化してしまっている様です。
あくまで『一部』であって全てではありません。
足元は砂浜ですが、動くに問題はないでしょう。
●ヤシの樹×6体
20~30m程度の大きさのヤシの樹達です。
『自らを称えよ人間共』と何故か人間を見下してきます。ヤシの樹さまー!
実っているココナッツを飛ばしてきて攻撃してきます。ちなみに現実の話だとココナッツがマトモに頭に直撃すると死ぬ事もあるらしいですね。150人死亡説はただの誇張された話の様ですが……
彼らは地に根を張っている為に動けませんが、ココナッツをかなり遠方まで飛ばす事が出来ます。攻撃種類は二種類。硬い実をそのまま飛ばす(単)と、実を飛ばし着弾と同時に破裂させる(範囲)方法があるようです。命中や攻撃力自体は単体攻撃の方が上です。
あと『ココナッツを称えよ』と謎の怪電波を常に飛ばして来ます。
特にダメージの類は何もないのですが、ココナッツが好きだったり、うっかりしているとなんか洗脳されそうな気分になる事も。(あくまで気分です)
尚、余談ですが彼らのココナッツは極上の美味だとか……
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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