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シナリオ詳細

スミス・カタナスキー氏の幸福な一日

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


『大闘技場ラド・バウ』。
 かつて少年だった彼は、ほかの多くの少年たちのように、その光景に魅せられていた。 ここでは、当たり前のように番狂わせが起きる。
 無骨な大剣を、槍のリーチが凌駕する。重い鎧の隙間を貫くレイピアがある。
 呪術師がゆったりとしたローブの下に隠された一冊の書物は、ぱらりとページを開けば何かを呼び出し、恐るべき大男を倒した。
「……っ」
 周りの熱狂とともに、思わず立ち上がった。
 少しだけ違うとするならば、彼が見ていたのは……彼らが持っている”武器”だったということだろうか。

 ああ、いくつになっても……武器が好きだとも。
 既に良い年となったカタナスキーは暖炉の前でうっとりとブロードソードを眺めていた。
 まっすぐな青年が構えるまっすぐな剣が好きだ。兵士の一人が集団の一人であることを示すために持っている画一的な武器が好きだ。それでもなお手入れによって個性が出るところが好きだ。選ばれたものにしか持てないような大剣は最高だ。この世界では、それを体格の劣る者が振り回すこともあるからまた最高だ。馬上で振るわれる槍は美しい。ぐねっと曲がる武器も実によい。短剣に毒を仕込むための溝があることに気が付いたときその機能美に震えるような感動をした。勝手に改造したわけのわからないボウガンが好きだ。か細いレイピアが好きだ。もうそれ戦うのに邪魔だろうというくらいごちゃごちゃした飾りのついた杖とかもいい。好きだ。好きだ。全部大好きだ。ブーツに仕込まれた短剣。暗殺者の針。糸一本、武器はあらゆるところにある。ロケットパンチになる義手も好きだ。名匠が鍛えたただ一振りの刀も良い。人が死ぬのは喜ばしいことではないが、曰く付きの武器っていうのにもあこがれる。山賊が持っているような無骨な斧もまた使い手を示しているようで最高に良い。表紙に毒の染みついた本だとか、勇者だけが持っている剣だとか……。女神から授けられた弓だとか星を落とすほどの……。
(以下略)


『お騒がせ』キータ・ペテルソン(p3n000049) は……おや。新しい武器を持っているようだ。ローレットの情報屋である。
 キータが持っているのは、レーザーポインターを取り付けた珍妙なサーベルだ。
「すごいだろ、えっと、練達の商人によると、これで適切に急所をポインティングするだろ? それで俺が適切にそこを狙えば、光学的に急所を狙えるって寸法らしいぜ! ほんとはもっとでっかいのがよかったけど、俺が持ち上げられなくて、後、高いし」
 玩具みたいな武器だが、新しいモノってことで自慢したかったのだろう。なんか騙されている気がするが、キータのお小遣いなんてたかが知れている。
「それで、ちょうどいい依頼があってさ! なんでも、”素敵な武器を持っている人間”限定の簡単な依頼らしいんだよな。ってわけで早速レッツラゴーだぜ!」



「スターップ!!!」
 カタナスキーの屋敷の前で、兵士に呼び止められるキータ。
「このカタナスキーの邸宅に入るには、相応の強さを示していただく必要があります。
 いえ、何も戦おうというわけではありません。”武器”を見ればその人がわかるというもの。私が求めているのは真の実力者なのです」
「ふーん。これならどうだ! ビームサーベルだぜ!」
「次の方、どうぞ」
 当たり前のごとくインチキビームサーベルはだめだった。

 そして選ばれたのが……イレギュラーズというわけだった。


 その屋敷に入って思うのは、「やたら飾られている武器が多いな」ということだろう。
 スミス・カタナスキーは「保安上の問題」だとかなんとか難癖をつけ、イレギュラーズたちの武器を回収した。
 ……抵抗したものは露骨にガッカリされたが、別に無茶は言わないだろう。
 夜な夜な千本の刀を研いでいるだとか、千本の刀を研いでにやにやしているだとか、黒いうわさがあるようだが……。
 そう、この男。極限までの武器フェチであった。
「ぐふふ……素晴らしい、素晴らしい!」
 武器の手入れをするのが趣味であり、それで人を斬ったりはしない。
 倫理的な問題で、刃こぼれしたら大変なので……と言う理由による。
 人の武器を盗ったりすることもない。
 最高の使い手が振るう武器は最高だからである。
 奥さんは収集癖にあきれて出ていった。
 そして、イレギュラーズたちの武器は……すべてぴかぴかになって帰ってきた。
「それでは今回の依頼について、さあっ、作戦を練ろうではないか! こんな武器で倒せるのかね? どうやって倒すのかね? もっと見せるんだ!!! 見せたまえ!!! 何を隠す必要があるというのかっ! さあッ! 一回転してッ」

GMコメント

布川です。
直近で武器関連で面白そうな方々をご招待しております!
気が向きましたらどうぞ。

●目標
・スミス・カタナスキーに武器を披露する(orやりすごす)
・カカシダミーを倒す

●お披露目パート
 カタナスキーに武器を披露させられます。
 ノリノリで武器を披露するか、危ない空気を感じて黙っているかはご自由に。
 とにかくなんとかやり過ごしましょう。
【注意】
「喋る武器」「本人が武器」とかそういうことを知られるとかなり粘着されそうなので気を付けてください。
 特に見抜いてくるわけではないので、隠せば隠し通すことは可能です。ただ妙に勘がよくてしつこいので隠すなら頑張って隠してください。
 とはいえ、武器を愛好し、心から愛するカタナスキーは紳士でもあります。ちょっと、はい。勢いがその……はい。加速するだけです。奪ったり盗んだりはされません。

●実戦パート
カカシダミー×無数(!?)
 洞窟に沸いているモンスター。これを倒すのが任務のは……ず……?
 訓練用の木人形がモンスターと化したもの。
 どう考えても隊商の通り道ではなく、それほど危険ではないはずだが、カタナスキー曰く「絶対に倒す必要がある」とのこと。
「絶対に私も同行する必要がある」と主張して引かない。
 数は多く、NORMALなりに反撃はしてくるので気をつけてください。

●登場
スミス・カタナスキー(商人)
 幻想の商人。
 とんでもない武器フェチです。

 カタナスキーではありますが、斧、槍、銃、魔法武器、なんでもいけます。
 ただし己の拳が武器という概念にはまだ目覚めていないので、「うーん?」という顔です。
「その剛腕でちょっと大剣を振るってみたらどうかねチミィ?」みたいな顔です。
 牙とかはぎりぎりアリ。ナックルダスターは大好きですが、布を巻く程度だとちょっとがっかりします。まあこの辺のニュアンスはプレイングで自由に決めつけてください。
※※※「体の一部が変形して武器になる」は大好物です。気を付けてください。※※※
 素手で華麗に倒すと内なる何かに目覚めて新たなスキーに目覚めるかもしれません。これ以上増やしてどうする。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • スミス・カタナスキー氏の幸福な一日完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月28日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
伊佐波 コウ(p3p007521)
不完不死
蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士
リズ・リィリー(p3p009216)
アンラッキーハッピーガール

リプレイ

●カタナスキーの野望
「記念すべきイレギュラーズとしての初依頼! よーし、やるぞぉ!」
 アンラッキーハッピーガール』リズ・リィリー(p3p009216)が一発目から引き当てた依頼がこれだ。
「成程! いや、ここは初心者の館みたいなものであるからしてっ! 存分に武器を振るっていくがイイ!」
「はいっ!」
 上級者の館過ぎる。
(気の毒に……)
『願いし黒刀』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)はリズに同情した視線を送る。
 鋼メンタルのリズは、にこにこして気にしていないようだ。
「評判はかねてから聞いているとも、紫電くん!」
(カタナスキー……ハクイスキーの証言通り実在していたのか……)
 そっちから情報が漏れたに違いない。
(なんで私はこの依頼を受けたんだ……)
『白い死神』白夜 希(p3p009099)はふっと目を閉じ、極限まで存在感を殺していた。
 曰く付きのカースドアイテムがあればと思っていたが、このテンションは予想外というものだ。
 勿忘草のギフトのせいか、心なしか話を振られる回数は少ない。
 それでも、会話の隙間に「素手というのはいささか危険では?」などと趣味を押しつけられそうになり、ふるふると首を横に振る。
「お、おう……何とも圧が強い依頼主だゾ……」
『ラド・バウD級闘士』溝隠 瑠璃(p3p009137)はごくりと唾をのむ。
(これ知ってる……同級生の原田君が筋トレとか怪談話とかで盛り上がっている時のテンションのアレだゾ……ええっと、確か「オタク」って言ったっけ?)
 ちなみに原田くんが挙動不審なのは溝隠さんが好きだからだが溝隠さんは知る由もない。
(まあ、アレだゾ。とりあえず僕達は依頼人に満足してもらうのが仕事!)
 ピカピカになって帰ってきた紫電【迅空】を諦めの境地で見つめていた紫電だったが……。
「……」
(……待ってくれ、何故オレが持っている迅空よりも背中に背負っている刀をガン見している)
 たらりと冷や汗が流れる。
(……まさか、オレの本体がバレて……? いやいやそんなはずは)
 ぱっと見、獣種にしか見えないはずだ。
(思い過ごしだろう)
 そっと位置を変えると粘っこい視線が追いかけてくる。……用心するに越したことはないだろう。
「……だから素手だって。隠してないから……。ね? 袖にも靴にも何も入ってないでしょ」
「うーむ、……そうかね?」
(さすがに影と同化してる闇には気づかないよね……うん)
 希はチラリと自分自身の影を見る。
 身の危険を感じているのか、わずかに動いている。

●ザ★接待
 一方で、依頼主の奇行を柔軟に受け入れるイレギュラーズたち。
(まあ、悪い気はしないな)
『銀河の旅人』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は相棒であるリボルバーにはしゃぐ依頼主を生暖かい目で眺めていた。
(好事家という生き物はこんなものだろう。よく見た。武器を舐めて味を確かめるのが趣味の奴もいた。略奪しないだけマシなくらいだ)
 人生経験があらゆる意味で豊富なヤツェクは動じない。
 カタナスキーは、まだ紳士的の範疇だというのだから宇宙は広い。
 紫電は、なるべく手を伸ばし、迅空と無明永夜を見せた。
「こっちは、迅空。反応速度に呼応して強くなる……。
無明永夜は防衛武装が鞘に変化したものだな」
「ほむほむほむほむ」
「……特に迅空はアンバー・ノースというオレの知り合いが打ち直してくれた、割と大事なものだ」
 テンションには引きつつも、そう語る語り口は誇らしげだ。
「その紫電殿の背負っている剣は」
「ときにこの銃は人工知能というやつを搭載していてな」
「私に調教された動物の如く芸をさせるとは、よっぽど暇なのだねヤツェク君」
「シャベッタアアアア」
 すかさず割り込むヤツェク。
 しゃべるAI(E-A)に大歓喜。なんとか視線を逸らすことができた。
「ふむ、多種多様な武器……実によいですね! 私も少々刃物類には目がなくて!」
『放浪の剣士?』蓮杖 綾姫(p3p008658)はうきうきと仲間たちの武器を見ている。刃物を扱う慣れきった所作は(少々?)と疑問がつくほどに洗練されている。
 いや、刀に限ればその扱いは遙かに綾姫が上だろう。下手な者が抜けば傷を負ってしまうような刀も、まるで剣が従うがごとくに注意を与えることなく抜いてみせる。
「画一的な工業製品的な品もよいですし、一点物も実によいですよね」
「ですなあ!」
 こちらにくる以前の記憶はなくとも、それでもその身は覚えている。生来のモノと割り切っていたが、以前の世界では果たして魔剣を奉ずる剣の巫女。
「むむっ、この小手の奇妙な金具はっ」
「おっと、危ないですよ」
『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)はすばやくカタナスキーから忍具を取り上げる。針が飛び出す。
「ふおおおお!」
「どうぞ。仕事で困らない程度には見て頂いて構いませんよ」
 おそるおそるだったカタナスキーの手つきは好奇心に負けた。
(忍者の武器といえば初見殺しの塊のようなものですが、まあ私は武器で戦う流儀でもなし。そも忍びは大道芸に身をやつすもの。武器を見せものにするのもまた一興) 
「忍具といえば実用品。金銀の装飾で飾られた芸術品を兼ねる刀剣とは見所がかなり違うと思いますが」
 カタナスキーは射干玉を光にかざす。光を吸収して、ほとんど目立たない。
「素晴らしい、素晴らしい」
「いいですね、いいですね」
 キラキラとした目を向ける綾姫とカタナスキー。
「おおっ暗器には興味があるゾっ!」
 溝隠のほうの瑠璃も興味深そうに刀を眺める。
 物騒な瑠璃ちゃんたちであった。
「むむ、これはっ」
 カタナスキーが触れてはいけないモノに触れたとき。
(――ふふ)

「はっ」
 意識を取り戻すカタナスキー。一瞬記憶が飛んだ気がするが気のせいだろう。
 そんなことよりも目の前の幸せだ。
(武器収集家とは世の中には不思議な趣味を持った御仁も居るものだ)
『不完不死』伊佐波 コウ(p3p007521)は新しい記憶をインプットしつつ、戻ってきた試製四六弐型火雷を受け取った。
 部下が二人がかりでやっとだったその銃はコウでなければ扱えるまい。
(武器は使ってこそ。使い手が居てこその物。これを心得ているカタナスキー殿は中々分かっている方のようで安心した)
「ぐおっ、重い!!! 見た目に反してとても重いですな!!! フッフウ!!!」
「もう一つ、私には大きな武器がある。一番と言ってもいいだろう。不死の兵士として造られた我が身だ」
「”不死の兵士として作られた”ッ!?」
(ああ……)
(……好きそう、うん)
 注目がそれたのをいいことに、そっと距離をとる避難組。
『黄泉軍計画』により産み出された、実験体第一号『伊邪那美型 甲式』。
 コウはすでに常人からかけ離れた境地に達していた。
「例え砲火の中だろうが、地雷原だろうが構わず踏破し、敵陣に乗り込みコイツを叩き込む」
 コウが試製四六弐型火雷を……重い銃を軽々と持ち上げて示して見せた。
「うんうん、肉体も武器だナ!」
 溝隠のほうの瑠璃の玉潰しの黄金の右足は、数々の「玉」を潰してきた右足はもはや凶器である。
「こ、このような者が存在したなんて……私はもっと、もっと目を向けていかなくてはならなかった……」
「あとで存分にお見せしよう。楽しみにしておいてくれ」
「じゃん!」
 瑠璃が見せたのは、魔杖「マリーツィア」。
「悪意」の名を冠する見た目は黒き杖。ただ先端に取り付けてある白い核………。一振りすると、風の刃が飛び出し、机の上のリンゴがぱたぱたと切れた。
「おおおおおう!!!」
「鈍器にもなる一品だゾっ!」
「私の武器はこれだよっ!」
 リズが取り出したのは、柄頭に赤い宝石の付いた短剣だ。一見、何の変哲もないように思われたが……。
 リズが剣を握ると、魔力が流れて赤く光った。
「わあ!」
 身を乗り出す綾姫。
「ん……見てもいい?」
 希がカタナスキーを避けつつそっと見る。
「主な用途は魔術礼装だよっ」
「魔術具ですか」
 綾姫は刀身を眺めて感嘆する。
「といっても、えっと、伝聞で。そんな感じのことを聞いた気がするなってものなんだけど」
 イレギュラーズになった記念として、先輩イレギュラーズから贈られた武器だ。綾姫は来歴を聞いて微笑んだ。
 銘は、ラズベリル。
「きっと、リズさんと一緒に、いろいろな光景を見るのでしょうね」
「志屍殿のこちらは……刀身が短いですな」
「ああ、これは」
 鍔に足をかけ、素早く壁を登り、天井にぶら下がる。
「このように使います」
「おおっ……」
「日本刀はこちらでも何度か見かけますので鑑賞されたことはあるかと思いますが、刀身がやや短くまっすぐでその分頑丈、というわけです」
 鞘の円筒にキャップを被せた構造もまた、この逸品の特徴だ。
「そしてこちらは棒手裏剣。まあ、尖っただけの鉄の棒と言ってしまえばそれまでですが」
 目立たぬ刃は確かな切れ味を隠し持っている。
「斬り合いや術の行使中に空いたほうの手で投げて隙を作ることが基本的な使い方ですが、楔や鉄筆の代わりにしたり握りこんで暗器のように使う事もできますね」
「マルチツールだね!」
「どこでも作れるので仮に落としてしまっても足が付き難い」
「足が付きづらいのは大事だゾ!」
「貴方のような方からしたらつまらないかもしれませんが、これが私の武器なのです」
「つまらないなどととんでもない!!! ところで白夜殿はまだ何か奥の手を」
「そうですね……志屍さんも、何かお持ちなのでは?」
「! よくぞ見破ったナ!」
 巧妙に隠していたせいでカタナスキーは気がつかなかったが。
「なんとっ!?」
 複合毒、「シグルイ」の毒針。
「二通りの使い方があるんだゾ」
 一つは毒自体をそのまま散布する方法。もう一つが毒を塗った毒針を複数対象に向けて投擲する方法。
「あと10本以上は隠れているゾ! 見破れるかな?」
 挑発的に身体を指し示す瑠璃。
 どこに隠しているのか……。想像が膨らむ。
「綾姫殿のその剣は、新しいモノですかな?」
「ふふ、最近武器を新調しまして。鉄帝で発掘されたという機械式の大剣です」
 綾姫は鋼華機剣『黒蓮』を取り出した。
「多少の変形機構と、使用者の精神エネルギー的なものを吸って威力があがったり刀身が伸びたりしますね。この威力全振り! っていう感じが実にまーべらすですよね!」
「FOOOOO!!」
 一息に喋る綾姫。がしょんがしょんと変形する刀に大喜びのカタナスキー。
(まるで博覧会じゃあないかね、ヤツェク君?)
「私自身は武器に拘りがある、というわけではないのでその時々で使うものを変えたりはよくしますし、実際この間までは瀟洒な細剣を使っていました。こちらも細身の割によい切れ味と美しさを兼ねそえた一振りですよ! 持ってこれればよかったんですけどね!!」
「ぐぬぬ……」
 見たかった。
「ああ、宇宙にゃあいろんな剣があったもんだ」
 ――生命エネルギーを啜る剣。攻撃用触手の生えた鎧。
「好きだろう?」
「「詳しくお願いします」」
 声をそろえるマニアたち。
「E-A、あのときのことを覚えてるか?」
「耄碌しているとでも?」
「はわあああああああああああ」

●実演
「さてカカシですか。ただのカカシですな、とは言い難いのがなんとも……」
 露骨な仕込みにあきれる瑠璃。
「本当にカカシって感じだね。練習相手かな?ぁーいや、油断はダメよね」
 うんうんと頷くリズ。
(まずい、はしゃいで数が多すぎたか!?)
 カカシが思った以上に多いかもしれない。
 だが、イレギュラーズたちにはそれでは足りなかったのをあとで思い知ることになるが……。

「らぶりーちぇんじーらずべりー
ばすたーはーとあうぇいきん」
 新米魔法少女は、ラズベリルを胸にぎゅっと決めポーズ。くるりと一回転をする。
「不運に負けずにキラメキシャイニー!
魔法少女 ラブリー☆ラズベリー
ピカッと参上 ヨロシクねっ♪」
 決めポーズでウィンク。
(はっず! これは恥ずい! けど、可愛く自信満々にやるのが魔法少女の秘訣なんだよね!?)
 初々しい。
(頑張れ、若人)
 若さを感じ、ヤツェクは深く頷いた。
(もうヤケじゃー! 今の私は究極可愛いっ!)
 もちろんカタナスキーは変身も好きだ。
 風が横を横切っていったかと思えば、カカシが真っ二つになぎ倒された。
 無明永夜が、紫電【迅空】から解き放たれていた。
 紫電の居合の速さはすさまじい。
 隼刃《星落》。
 すさまじい反応速度で距離を詰め、既に事は成っていた。
「そ、そ、そん」
 見逃したというのか。
「あらあら、お気の毒♪」
「……ってオイ、なんでしれっといる」
 現れたのは、ガレトブルッフ=アグリア。
 好敵手にして……。危険な人物だ。
「落ち着きなさい、今日のわたしは「オフ」よ。愛するしでんはいるけれど、カカシを除けばあなたたちに危害を加えるつもりもありませんし、むしろそこの武器蒐集家の人が気に入りました♪」
(大丈夫か……?)
「大剣っ!!! ゲスト歓迎ですぞ! 」
 その正体は……シャレにならない。
 正直、愛しの”しでん”にまとわりつく商人は邪魔ではあるけれど。蠱惑的に微笑んだ。
「……今日は一切合切手を出さないであげますね?」
(まあいいさ。ある意味ちょうどいいかもしれない。カタナスキーの注目を外せるのなら。アイツもオレと同族だしな……)
 競うように、素早くカカシを斬り払った。
 アグリアが4、紫電が5。
「せーのっと」
 飛刃六短。マリーツィアから放たれる攻撃がカカシの首を吹き飛ばした。……強い。
 そして、カカシは腐り落ちていく。複合毒「シグルイ」。
 その効果は折り紙付きだ。
「さて、出番だ」
「どうぞ、ご随意に」
 ヤツェクの逃さじの雨。天に向かって放たれる光線は無数の雨となって降り注ぐ。無秩序にばらまかれるかに見えるその攻撃はしかし、ほとんど全てがカカシに命中しているか、牽制となっている。
 瑠璃の毒をわずかに食らった一体を土に返した。
 くるりと身を翻し、撃ち続ける。
 後ろから狙われていると、AIは警告を発しない。
 なぜならば、カカシは振りかぶったが最後、天からの攻撃を食らって落ちた。
(魅せるだけ魅せて互いに幸せな一日にしようじゃないか)
「さて、実演のお約束でしたね」
 コウの制圧攻撃が強引に戦場を切り開いていく。果敢に名乗りを上げるその姿に、カタナスキーは直感するだろう。
 それこそが一つの兵器であると。
 敵を引きつけ、浴びせる攻撃と同じだけ、いや、それ以上の攻撃を浴びながらも……。
 コウは倒れることはなかった。
 もろいカカシたちがボロボロに崩れていく。
 カカシもなけなしの反撃を放つが、効いていない。
「お披露目しますよ!」
 綾姫はどん、と思い切り突きの動作で魔砲をぶっ放し吹っ飛ばした。
「なんと!?!? 剣からもビームが!?」
「いえ、剣からビームだすくらい普通ですよ普通。剣士の嗜みですから」
 銃からも出るモノなあ、と納得する。
(洞窟……よし暗い。これなら誤魔化しも効く)
 希はそっと影を潜ませる。
 素手の戦闘。……端からはそう見えただろう。だが、拳よりも先に。不殺の黒針が形を変え、こっそりと敵をなぎ倒していた。
「む!? 今のは!?」
 影が応える。
 大きく振りかぶったパンチは、本来の刺突の型でダミーに穴を空ける。
「これが、素手の威力? いや、そんな馬鹿な……」
(うまくいってるね)
 ふ、と気を抜いたかにみえた希。
 指をパチンと鳴らすと、カカシが崩れ落ちる。
「素手を極めた先にある、これが」
「あの!」
 こくりと頷く。なんとかごまかせたらしい。
(武器を扱うさまを見たくて的を用意されたのでしょうが――武器は集中するために持つだけで、構える必要ないのですよね)
 眩術紫雲……瑠璃の虹の如く煌く雲が、辺りを漂い、覆い尽くした。それも、敵のみを狙って、だ。カカシたちは一斉に倒れ伏す。
「よーしっ。薙ぎ払うっ!」
 リズはかわいらしくくるくると周り、エーテルガトリングをぶっぱなす。
 紅黒く迸る雷光。
 体力を剣に捧げて、絶大な威力を引き出す紫電一閃【禍】。
「背中の剣は!」
「抜いたら世界が滅ぶ」
「見たい!!!」
(滅ぶっつってんだろ!)
 とはいえ、本体は混沌肯定で弱体化してなければ世界同士を行き来できたから間違いでもない。
「切れ味をお見せしますよ!」
 武器が応えるように手になじみ、カカシを両断した。
 瑠璃の蹴戦がカカシを踏み潰した。
 人間敵だったらあぶなかった。ほんとに。
「カタナスキー殿、リズ殿。後ろへ!」
「おおっと」
「! ありがとう!」
 カカシのすさまじい反撃を食らってなお。コウは立つ。立ち続ける。
「それでは、こちらも反撃させていただきましょうか」
 眩術紫雲はなおも敵を包み込む。
「武器を使うまでもなく、期待外れでしたでしょうか」
「まさか、まさか、私は世紀の瞬間を目にしているっ!」
 身を乗り出したカタナスキー。
(私のそれは、ありがたがるモノじゃない……)
「!」
 希の影が……意思とは関係なくカカシを倒した。
「こ……これは……」
(バレたら仕方ない……)
「これは闇。私自身の闇
殺したくなくても、死を与える闇」
 淡々と話すその隣で、カカシは何度も切り刻まれていく。
「どんなスキルを使っても、どんな武器を使っても、私自身が変わることはなかった
私の性質そのもの。
隠れて欺き、人知れず音もなく、這い寄り不幸を撒くことしかできない。
悠久の時間の中、私が積み上げてきたもの、それがカタチになった」
 言葉を失うカタナスキーに、希は目をそらす。
「ま……そんな感じ。
カタナスキーさんも、そのうち自分の中にある何かを具現化できるかも知れないよ……良いか悪いかはともかく」
「……」
 さすがに無邪気にはしゃぐことは出来なかった。
 代わりに。
「……助けていただき、心よりの感謝を」
 最後の一体。カカシはふらふらとこちらへ寄ってくる。それに果敢に杖を向けるのはリズだ。
(さあて、英雄の誕生に祝杯をあげようじゃあないか)
「行きます!」
 ヤツェクの曲芸射撃がカカシの腕を吹き飛ばし、中心を真ん前に持ってくる。リズのアースハンマーが最後を叩き潰した。
「やった、やった、成功ですよ! 魔法少女第一弾っ」
「あっけなかったわね♪」
 アグリアはふっと微笑む。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
皆様のご活躍に、カタナスキーはとても満足したようです!
いつかまた素敵な武器を、そして活躍を教えてくださいね。

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