PandoraPartyProject

シナリオ詳細

決意の石

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●皇石
 貴方は何かを決意したことがあるだろうか。
 例えば、このシュートを決めたらあの子に告白するぞとか。
 例えば夏までに痩せて見せるとかそんなごくありふれた物から。
 決して負けられない戦いがある、必ず生きて戻るだとか。
 そんな重さとプレッシャーを伴った物まで。
 だがどんな決意だってそこに至るまでの経緯だとか、心情だとかはあるわけで。
 決意を実行できる者はそう多くはない。
 潔く諦めることとて、また一つの尊い勇気である。

「よう、来てくれはったねぇ」
 様々な形の鉱石達が飾られた棚の道を通り抜けて奥の座敷へと進む。
 紫煙燻る甘い香りにその男は身を委ねていた。
「なに、そないかとぉならんでええよ。うちはスメラギ言いますのや」
 ただのしがない石商人ですわと、スメラギはゆるりと唯一露出した口元に弧を描いた。
「さて、ここに来た言うことはなんや決意したことがあるんやねぇ」
 スメラギは愉しそうに肩を揺らしながら近くの棚へ手を伸ばし小箱を手に取った。
 ぱかりと箱の蓋を開けるとなんてことはない、ただの石が入っている。
 目を丸くした貴方にスメラギはくつくつと笑う。
「タダの石や思いますやろ? コレは皇石言いますのや。お客さんの決意によって形と色が変わる面白い石なんどすえ」
 スメラギはそっと貴方の手に皇石を握らせる。
「うちはその人それぞれによってこの石の輝きが変わるのが何よりも好きなんですわ。
 あんたの決意はなんやろなぁと、手の中から溢れ出した光を見つめながらスメラギは笑った。

●それぞれの決意
「お前さん達、良いもん見せてやるよ」
 そっと手招きして朧は特異運命座標を呼び寄せた。
 朧の手の中には本の形をした不思議な鉱石が黒々と輝きを放っていた。
「面白えだろ? 皇石って言ってな。手にした本人の決意によって形と色が変わるらしい」
 皇石を仕舞った朧は貴方達に向き合う。
「俺はまぁ決意なんて大それたもんはねぇが……。お前さん達、なんか心に誓ったものとか決意とかあるんじゃないのかい」
 今回のオーダーはとある異世界の不思議な店でこの皇石を変化させることだと朧は簡単に告げた。
「ま、いつもみてぇに珍しいもん見に行く旅行気分で構わねえよ」
 朧はいつもと変わらぬ声色で特異運命座標を送り出した。

NMコメント

 初めましての方は初めまして。そうでない方は今回もよろしくお願いします。
 ノベルマスターの白です。
 今回は不思議な石屋さんで、決意によって形と色が変わる不思議な石へと触れていただきます。
 貴方の決意はどんな色や形になるでしょうか。

●舞台
 とある異世界にある江戸時代や平安時代を混ぜたような和の世界。
 そこにある不思議な石屋『キセキ屋』が舞台です。
 店主が集めた不思議な鉱石がたくさん売られておりますが、店主曰く金に興味はないとのことです。

●目標
 決意を口にして姿が変わった皇石を手に入れる。
 皇石:手にした者の決意により様々な形や彩りに姿を変える不思議な石です。
 皆さんにはこちらを手にしていただきます。
 プレイングは皇石の形と色、そして決意を書いてください。
 形が変わった皇石はもって帰って飾ってもお守りなんかにしても大丈夫です。
 決意が揺らぎそうになった時、何かの支えになるかもしれませんね。

●NPC
 スメラギ
 OPで登場した口元のみ露出した衣装を身に纏うどこか気怠げかつ妖艶な男性です。
 自らを唯の石商人と名乗ります。皇石が形を変える様が何よりも好きで石を通してその人の決意を知ることもまた同等に尊く愛おしいと語ります。

 朧
 黒衣衣装に身を包んだ境界案内人です。
 ご指名がなければ登場しませんが、ご指名があればホイホイついていきます。
 ちなみに皇石は本の形をした漆黒の石だったそうです。

●サンプルプレイング
 決意:次の戦で必ず生きてかえる
 形 :剣
 色 :赤
 俺さ、次に大きな戦に行くんだ。正直怖いけど。
 幼馴染と約束したんだ、生きて変えるから待っててって。
 俺の決意は「次の戦で必ず生きてかえること」
 赤い剣……勇気で打ち払えそうな気がする。もう何も怖くないや。

 こんな感じです。それではいってらっしゃい。

  • 決意の石完了
  • NM名
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月18日 17時53分
  • 章数1章
  • 総採用数8人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)
トリックコントローラー

「私の目標は、毎週開催される闘技場で好成績を収めること」
 スメラギに決意はなんだと聞かれたチェルシー・ミストルフィンは真っ直ぐな瞳で答えた。
 週に一度開かれる公式大会と言われるソレには数多のイレギュラーズ達が集う。
 種族も違えば戦い方もそれぞれ違う。
 当然相性が存在している訳で、その全てに対応するのは無理がある。
 中には自分にとって天敵と言える者もいる。
「色々作戦を考えたり、話し合ったりするのも楽しい。今はそういう生き方よ。」
 だからこそ、共に戦う仲間と作戦を練ったり、ああだこうだと卓を囲んで話し合うことが楽しいのだ。
「強くなって栄光を手に入れたい。そういう気持ちを持つ人は混沌で少なくないと思うわ」
「それは何時の時代も同じなんやねぇ」
 はんなりと笑んだスメラギはチェルシーに小箱を渡す。
「今みたいな変わった形になっても、戦う事は止められないわね」
 彼女の闘志を読み取ったのか、皇石が光を帯び始めた。手の中の無機物な鉱石がまるで職人が細工したように、形を変えて行く。
「おやまあ、翼が生えた真紅の剣やなんて。ピッタリやねぇ」
 まるで最初からそこにあるのが当然と言わんばかりに、手の中の剣が眩く光を散らし翼が輝いた。
 その美しさにチェルシーは思わず溜息をつく。
「うまく作れたみたい。髪飾りにつけるわね」
「そらええわ。その子も喜ぶやろ」
 戦いの女神が愛した剣のように、皇石は彼女の決意に応えるだろう。

成否

成功


第1章 第2節

オライオン(p3p009186)
最果にて、報われたのだ

「言われるがままに送り出された訳だが皇石とは初めて聞く名だな」
 触れた者の決意より形が変わる石があるとあの黒衣から聞いた時はそんな物が実在するのかと半信半疑であったが、他ならぬ自分自身が世界を渡っているのだ。今更かと、オライオンは引き戸に手を掛けた。
「おこしやす。お兄さんも皇石取りにきはったんえ?」
「ああ」
 短く返事をしたオライオンを暫く見つめ、スメラギは皇石をその手に握らせた。
「して、お兄さんの決意はなんやの?」
「……果たさねばならん事がある。今の俺の全てを使ってでも果たさねばならない復讐が」

 一日たりとも忘れた事はない。
「ただいま」といえば「おかえり」と返ってくるささやかな幸せは突然奪われた。
 怨讐を追い求めた果てに共へ地獄へと堕ちる筈であった。だが自分は混沌に喚ばれ、今息をしている。
「神に仕える身としてあってはならない罪、憎悪と憤怒だけが俺を動かしているのだ」
 鉱石に力を込めると、徐々に熱を帯び形を変えていく。残ったのはあの日の惨劇をなぞる様などろりとした濃い赤にあまりにも自分に馴染みがある――。
「十字……? 捨てた筈の過去に対しての皮肉か、未練か……」
 あの日、神など。主など存在していないのだと思い知った。その日から信仰を捨てて血に染まりながら生きてきたと言うのに。

 紛い物の十字架は、彼の道筋を唯見守り続ける。
 例えその旅の最後が血塗られ、怨嗟に満ちた物であったとしても。

成否

成功


第1章 第3節

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

「俺の決意は、父上のような立派な騎士となる事」   
 リゲル=アークライトは凛と告げた。
 かつて天義で行われた冠位魔種との大規模な戦はあまりにも多すぎる犠牲を出しながら、ローレット、及び天義の勝利へと終わった。
 その中でリゲルを庇い命を落とした父親。
 魔種と成り、一度は在り方が歪んだかもしれないが。最期は間違いなく誇り高き騎士であった。
「ベアトリーチェ戦にて俺を庇い、命を落とした父上。亡き父上の遺志を継ぎ、母国である天義を復興させ、国を、世界を護っていく」
 言葉にするだけなら簡単な事も。
 この広い世界に対し、自分が如何に矮小で全てに手が届きはしないのだという事もよく理解していた。
 立ちはだかる試練、時には何もかも投げ出して逃げ出したくなる様な事だってあるだろう。
 この世界は御伽噺ではなく、痛覚がある現実だ。
 思い通りにならないことの方が多いだろう。
 悔しさで唇を噛み、血を流すこともあるだろう。

「それでも諦めず、決して立ち止まらず、歩み続けていきたい」
「……ほんまにええ目されてはるわ」
 綺麗すぎて眩しいくらいや、と軽口を叩きながらスメラギはリゲルに皇石を託した。
 白銀の曇りなき光が皇石から放たれる。
「まあ、綺麗な銀の剣やこと」
 鏡面の様に輝く剣の表面にはリゲルの決意に満ちた青い瞳が映り込んでいた。

 誇り高き蒼銀の剣は主人の決意と誇りを映し出す。一点の闇もこの光を侵すことは叶わない。

成否

成功


第1章 第4節

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂

「中々面白そうじゃねぇか。俺もその『キセキ屋』に行ってみるとするか。

 煙管の灰を落とし、レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタインはキセキ屋へと足を踏み入れた。途端に紫煙の香りが漂ってくる。
「アンタが店主か。その香り、煙草でも嗜んでるのか?」
「ええ、まぁ」
「なら、気が合いそうだなァ。俺もヘビースモーカーだからな」
「そうなんえ? 一服どないどす?」
「いや、此処では吸わねぇさ。店の中じゃ悪いしなァ。」
 それに。と、レイチェルはスメラギの手元の小箱を指差した。
「俺の目当てはそれなんでなァ」
「ああ、せやったね。すんまへんなぁ」
 軽い口調でスメラギはレイチェルを手招いた。
「俺の決意は──悪を葬る悪で在り続ける事」
 揶揄いも同情もせず、スメラギはレイチェルの言葉を待つ。
「妹が殺されてからな、俺は復讐を果たす為に何もかも捨てて。手を汚し続けた。」
 レイチェルという名は彼女の名ではなく、その殺された妹の名だ。何度『ヨハンナ』が呼びかけたとて二度と応えてくれぬ名だ。
 復讐を果たした今も悪が憎い。

「俺は決して善人じゃない。善人が手を汚して後悔しないように、俺が悪を討つ。悪を葬る悪で在りたいンだ。」
 皇石の周りを花弁が開く様に光が纏わりつく。
 レイチェルの決意に応え咲いたのは見事なヴィクトリアン・ローズ。
 深紅の薔薇は悪の血を吸い続け美しく咲き続ける。その色はあの日、網膜に焼きついた鮮血によく似ていた。

成否

成功


第1章 第5節

黄野(p3p009183)
ダメキリン

「何やら面白そうな石があると聞いて!」
 黄野は透き通った灰色の目を見開いて興奮した様に言った。美少年らしからぬその表情にスメラギはくつくつと袖で口元を覆い喉の奥で笑う。
「お客さんかいらしなぁ。ええ、決意を口に出してもろてそれに皇石が応えれば形や色が変わるんや」
「ふんふん、決意を口に出すことで形を変えるとな」
であれば、と黄野は腰に手を当て堂々と宣言した。
「仁ある世を招く、正しき王たるものを我が主とする! どこにいようと見つけ出す!」
 嘗て居た世界では最後まで胸を張って主と呼べるものは見つけることは叶わなかった。
 だが、空中神殿へと突如呼ばれこの地に踏み出した瞬間に直感したのだ。
 主はこの世界の何処かにいると。
 そうして、正しき王が現れるということは即ち混沌世界の滅びの信託だって覆るかもしれないと。
『いれぎゅらーず』としての目的にも叶うと黄野は皇石を握った。
「ならば身命を賭してオレは我が主を探そう!」
 黄金に瞬く月の光の如き眩さが皇石から放たれる。
 手の中に残ったのは透き通る金の盃。
「ふふ、美しき形ではないか。まるで水面に映った望月の……そう、永久に欠けぬ月のごとしだ」
 嘗てとある優れた為政者が詠んだ句に擬えながら、黄野はまだ見ぬ主へと想いを馳せた。

 黄金の盃はいつか主人を変えるであろう。
 誓いの証、我が忠誠の示しとして。
 だがその忠誠心が揺らがぬ限り、輝きが曇ることは有り得ぬのだ。

成否

成功


第1章 第6節

望月 凛太郎(p3p009109)
誰がための光

「決意、ね……俺はねーーヒーローに、なりたいんだ」
 皇石に視線を落とし望月 凛太郎は呟いた。店の篝火に照らされ、まだ幼さの残る少年の顔が濃い影を作る。
「俺、こっちの世界に来てから憧れの人が出来たんだ。強くてかっこよくて」
 そして……俺を助けてくれて、俺に『ヒーロー』を教えてくれた人。
 スメラギは凛太郎の肩が僅かに震えていることに気づいたが指摘しなかった。固く結ばれた唇が悔しそうに言葉を紡ぐ。
「でも……その人は何故か世界の敵になって死んだ。足元が崩れ落ちたみたいな感覚だったよ」
 真紅のコートがよく似合っていたその人は、突然イレギュラーズを裏切って敵の側へと着いた。
 薄氷が割れて極寒の海へと沈められた様であった。
「でも、俺にとってはあの人は確かにヒーローだったんだ。それから色々考えた。考えて、考えて、考えて……俺はヒーローになるって決めた」
 そしておそらく彼は、確証はないけれど。
 もう既に彼はこの世にはいないのであろう。
「理由は知らないけれど、ただ裏切る人じゃないって俺は思った。だからーー俺はあの人の罪の分まで人を助けるよ」
 それが俺の仕事だからね。
 ヒーローの口癖を真似て、微笑めば皇石はその決意に応えた。中心からゆっくりと花開いたのは慈愛の色を湛えて咲いた彼岸花。
 
 蒼き彼岸花は少年の未来と共にある。
 いつかまた会う日を楽しみに、あの真紅のヒーローの様に人を守り続ける彼を護る為に。

成否

成功


第1章 第7節

鬼裂崎 佐木鷺 希咲(p3p007472)
銀鍵の人獣

「おで、ずっどにげづづげでだ。ぎずづげるのも、ぎずづげられるのも ぎらいだっだがら」
 唇がなく、長い舌を懸命に動かして鬼裂崎 佐木鷺 希咲はスメラギの前に立っていた。
 その悍ましい姿は大抵の者ならば悲鳴を上げてしまうような、決して『人間』とは形容できない様な醜い顔。そんな彼に一切怯えた様子もなく、何ら他の者と接する時と変わりない態度でスメラギは希咲に微笑みかけた。
「優しい子ォやねぇ……」
「げど、おで が だだがわなぐぢゃ もっど ぎずづぐびど が いるっでじっだんだ」

 だがら、おで、だだがう!

 皇石は決意が本物ならば必ずその想いに応える石。
 それが人でなくとも。獣であろうとも――邪神と呼ばれる存在であろうとも。
 皇石が宙に浮き、混沌とした黒い球体へと変わる。その周囲を緑色のベースに様々な色を流し込んだような不思議なマーブルを描く泡の輪が取り巻いていた。
 皇石が答えてくれたことが嬉しくて、希咲は不器用な笑顔で無邪気に喜んだ。
「ごのいじ、おっどう ど おっがあ みだい……ぐげげ! ありがどう、おっどう、おっがあ。おで、ジャジンになれながっだげど、がんばる!」
「変わった親御さんやねぇ?」
「ゔん!」

 見た物の正気を失わせる様な不可思議な輪は和となり、獣へと寄り添う。
 ああ、願わくば、その優しさと善性はどうか塗り潰されぬ様に。
 例えそれが『邪神』と呼ばれる存在からは程遠いものだとしても。
 

成否

成功


第1章 第8節

溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士

「おー! 触れた者の意によって形が変わる石なんて初めて聞いたゾ! それで皇石ってこれでいいのか、店主?」
 興奮冷めきらぬ様子で溝隠 瑠璃は店内の鉱石を眺め、一つの鉱石を手に取った。
「ええ、そうどす。ほんで? お嬢さんは何を決意しはったん?」
「決意かぁそれは勝ち続ける事かな」
「へぇ」
「僕が本当に小さかった頃……まだ本当に無力だった3歳の頃に猛獣に襲われて死に掛けた時に助けてくれたラド・バウ闘士……強くて優しい僕の英雄だった人」
 知らない子供の為に躊躇いなくその身を猛獣の前に晒して助け出した無名の闘士。
 周りの子たちはビッグネーム達に夢中だったけれど瑠璃にとっては彼こそが憧れであった。照れくさそうに「ラド・バウのS級闘士になるのが夢なんだ」と言っていたことをよく覚えている。絶対になれるよと心から伝えればありがとうと頭を撫でてくれた。
 そんな優しい英雄は瑠璃が5歳の頃に戦争に徴兵されて、帰ってくることは無かった。
「だから僕は彼の夢を引き継いだ……その為には何をしてでも勝って勝って勝ち続けなきゃ…そうしなきゃ敵わない夢だから……」
 皇石が淡く輝いた。やがて見事に羽化したのは瑠璃色の立派な羽を広げた蝶であった。

 瑠璃色の蝶は美しく少女の傍で舞う。
 夢を引き継ぐと決め、修羅の道を行くことを選んだ少女を遥かなる高みへと連れて行く様に。
 たとえそれが毒を含んだ鱗粉を舞い散らすことになったとしても。

成否

成功

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