PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<神逐>黒青の補

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●黙する青樹と咲む上帝
「玄武ぱぁぁぁりぃぃぃぃじゃああああああ――!!」
 そう、はっちゃける玄武とは対照的に黙する青龍。
「宴じゃ、宴じゃ! さぁさ、青龍よ! 今こそ力を見せるのじゃ!」
「―――」
 快活なる玄武の側で青龍は只、空を仰いだ。暗き雲、罅割れた世界を修復する様に光が舞い落ちる。
 それが一人の青年の起こした奇跡である事を、弐柱は知っていた。
 只人が命を懸けたのだ。
 自身ら大精霊、否、『神』が黙するのも可笑しな話ではないか。

「のう? 黄龍」
「……無論だ。瑞を救うと誓った者、そして、吾らの権能を超え奇跡(かのうせい)の光を帯びた者。
 吾らが其れに応えずして何となるか。良いか、玄武。青龍」

 その弐柱を束ねる黄龍は彼らが『加護を与えし存在』へと結界の補佐を行うように頼んだ。
 眼前でその慟哭を響かせる黄泉津瑞神。その悲しさを打ち払うが為――そして、この高天京を護るが為の力を、今一度貸して欲しい。

●黄泉津瑞神

 ――遍く命は等しく在らねばならぬ。故に、我が心を子らへと伝えるものが必要だ。

 言霊により、産み出された一匹は、『瑞』の名を頂いた。
 瑞兆を与えし神意の大精霊。彼女は国産みを行った祖の第一の娘であった。
 彼女がその姿を現す時、黄泉津は様変わりする。草木繁り、花啓く。枯れ泉は湧き出て蓮華は車輪が如く花咲かせ、瑞雲は中天を彩り続ける。天つ空なりし瑞の言葉が一つ、落ちれば大地は変貌し続ける。
 それだけの力を持った美しき白き娘。浄き神気を纏い、遠つ御祖の心へと添い続ける。

 祖は次々と『瑞』の補佐たる子らを生み出した。黄龍――四神。
 彼らは瑞を愛し、祖を愛し、祖の体なる黄泉津を深く愛していた。
 そして、祖は彼らへと一つの言葉を残した。
 自身の力を大きく別つ愛しき娘『瑞』が邪なる者に侵され狂おしくも祖を害する刻が訪れたならば――その時は『黄泉津瑞神』を弑するのだ、と。


 只人は可能性に溢れる。神とは坐し、黙し、人の営みには手を出せない。
 委ね、可能性を与える事こそが神に求められたもので、彼らが直接的に『何か』を行う事が出来ないのだ。
 それは神格として煽られた高天京の『大精霊』とて同じであった。
 彼らは皆、人の手によって蓄積した『けがれ』を厭い、霞帝に――今園 賀澄に助けを求めた。
 彼らの加護と、そして前へ行く心が国を僅かに進展させたのも束の間、『ありきたりな事故』が不幸にも『天香家の許嫁』であったことで停滞した。国の政は澱みに存在し、確執は深き溝を作る。
 それ故に、爆増したけがれはこの国を守り続けた黄泉津瑞神を――瑞獣を苦しめた。
 彼女は人によってその体を毒に蝕まれ、今にもその性質さえも『狂わせた』
 だが、狂気に侵されながらも僅かな光が差したのは――彼女が『神』であったかもしれない。
 青年が――ヴォルペ(p3p007135)が願った奇跡により罅割れた結界は再構築され、瑞が大呪を抑え続ける。
 その隙に、動けと黄龍へ告げたイレギュラーズも居たが、彼らは与える側であり、自らが動く子とは叶わない。
 それは自身らが人の歴史を変えてしまうという懼れ、そして、この地を護る為に縛れる存在だからである。
 だからこそ、只人に――イレギュラーズへと求めた。

 高天御所に存在する『御霊石』を守ってほしい。
 瑞の嘆きに呼応して襲い来る眷属達は皆、涙を流しているだろう。

 ――人の所為である。

 彼の女神が苦しみ藻掻いているのは、人が生み出す『けがれ』の所為であると。
 その悲しみを打ち払ってやって欲しい。
 そして、どうか、この結界を補佐して欲しい。より強固な結界を作り出すがために。

 それこそが、瑞を護るための――この京を救う為の――そして、誰かが願った奇跡の続きなのだから。

GMコメント

●重要
「<神逐>黒青の補」「<神逐>焔白の応」はどちらかのみにしか参加できません。
(どちらか一方に受かった場合は、もう片方には参加できません。※予約段階は関係ありません)

●成功条件
 呼応する眷属を撃退し『御霊石』を護る

●現場状況
 高天御所。天守閣を望み、黄泉津瑞神を確認することが出来ます。その『左側』です。
『右側』との連絡は取れません。
 周囲一帯は障害物はなく、地面には陣が描かれています。
 また、その陣は『黄金の気』と『四神の気』、つまりは四神と黄龍(麒麟)の神気が流れ込み、四神結界の『補佐』を行っているようです。
 その陣の中央に存在する御霊石を『呼応する眷属』より守り切るのが今回のオーダーです。

●加護
 黄龍の加護/麒麟の加護/四神の加護を得ている存在は陣の上に立つことで補佐の力を強めることが出来ます。

 黄龍の加護:クエスト報酬(期間限定クエスト『黄龍ノ試練』)またはラリーシナリオ『<天之四霊>央に坐す金色』
 麒麟の加護:<天之四霊>自凝島参加者
 四神の加護:<天之四霊>参加者の内、特別な『護』の称号を得た者

●エネミー:『呼応する眷属』*10
 黄泉津瑞神の影響を受けた彼女の眷属です。白き毛並みを持った狐たち。
 それらは、巫女姫の連れていた『白香の獣』と似通った個体のように思えます。
『けがれ』の影響を受けて暴走した神遣であり、精霊としての力を強く持ちます。
 5体は前衛タイプ、5体は後衛タイプとそれぞれが役割を担い御霊石を壊して瑞に力を与えようとしているようです。

●御霊石
 高天御所内の左右、それぞれの位置に敷かれた陣の上に安置されている御霊石です。
 左側は青龍と玄武の、右側は朱雀と白虎の影響を強く受けており、それらは黄龍(麒麟)の力と合わさり、束ねられて結界を構築するようです。
 その陣の内側は浄き気配が感じられ、不安などが取り除かれます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、どうぞ、よろしくお願いします。

  • <神逐>黒青の補完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月16日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
ギンコ・キュービ(p3p007811)
天使の選別
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花
黒水・奈々美(p3p009198)
パープルハート

リプレイ


 天望む――獣の雄叫び響き渡り、けがれ苦しむ黄泉津瑞神の悲しみにビリビリと周囲一帯の空気が震えている。
「は、初仕事が……なんかすごい大事な決戦って……あのクソマスコット、何考えてんのよ……!」
 毒吐く。『非リア系魔法少女』黒水・奈々美(p3p009198)はその陽に焼けぬ白百合の頬を隠すように乱れた紫苑の髪をぎゅうと握りしめる。奈々美の契約者である魔法生物バンビアへの恨み言もそこそこに、『神の声』に恐れるように肩を竦める。
「瑞……。あれが瑞か。遠くに見える――いや、大きすぎて遠近法狂ってない?
 まあ、いいや。僕らの戦場はあそこでも、この逆側でもなく、ここだからね」
『瑞』が見えていようと居なくとも。今、自身に課せられた使命は目の前にあるのだと『黄龍の朋友候補』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は『御霊石』を振り返る。ルフナの背後に存在したそれは四神が二柱、青龍と玄武の力を帯びたものであるらしい。其れ等は黄龍の力と交わり、四神結界の『補佐』を行っているらしい。緊急事態である以上は尽くせる手は全て、と云うのは理解できる。
「こちらの言葉でも『乗り掛かった舟』とか言うんでしょうか。
 一緒に加護をお預かりした手前、私には無いからってどこかに行くのも違いますし」
 仕事で承けた以上は文句はないと『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)は首を振った。神様(うえ)の事情や理由で実働隊になるのが人間(した)というのは他人事にも思えないと溜息を混じらせた。
「まずはこの場をきちんと治めて、穢れ払いにせよ神逐いにせよ次のステップに進めましょうか」
「ええ。それに――可哀想だわ」
 知り合ったならばその人の幸せを願いたい――そう黄龍へと告げていた『黄龍の朋友候補』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は痛々しいと云うように瑞神を見上げる。
「けがれに苦しんで涙を流す存在がここにもいるなんて、ひどいわ。
 どうして人ってそういう苦しみを誰かに押し付けることしかできないのかしら」
 其れが狂ったのは、其れが苦しむのは全てが人の所為であるならば。オデットは悔しげにそう呟いた後、静かに頭を振った。
「……違う、か。そんな苦しみを打ち払えるのは私たちにしかできないのね」
「人の所為でなるなら正すのもまた人の役目だ。
 加護を背負った者として、いや、一人の人として――全部救って見せるよ」
 それが自身を信じてくれた玄武への答えだと。『黒武護』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)は姿を見せた白き獣を睨め付ける。
「ああ。嘆きに呼応した涙……止めたいな。
 ここで逃げられたら他で殺されるかもしれない。
 瑞さんの元へ戻り、戦ってる先輩方とぶつかるかもしれない……だからここで止める」
 背後に存在する『結界の補佐』が壊れたならば瑞のもとへと向かう『先輩』に苦しむ結果を与える可能性がある。『薄桃花の想い』節樹 トウカ(p3p008730)は唇を噛んだ。傷つくのは酷く怖い――それでも、泣いている奴を助けられない事の方が何倍にもなって『もっと』怖いのだ。
「ここで俺ができる事を全力で頑張る!」
「ああ。結界のかなめの御霊石を守る仕事か、責任重大だな、腕がなるぜ」
 にいと唇を釣り上がらせて『砂風を纏いし者』ギンコ・キュービ(p3p007811)は笑った。スタンバイ準備は出来た。眼前迫りくる白き狐を――神の眷属だろうがなんだろうが知った話ではないと云うように、手にした獣性の槍がギンコに呼応し啼き始める。
「あいにく加減できるほどの自信はないんでな、死ぬんじゃないぞ!」


 ――花枯レテ 種 残スヨウニ。

『青樹護』フリークライ(p3p008595)は御霊石の周辺に敷かれた陣の上に布陣する。概念断楔はミスをしないことを重視する。自然と調和する青龍の加護保持者は眷属の動きを真っ直ぐに捉えた。
「神 照ラシ 結界 再構築シタ アノ光。誰カガ 命 賭ケタ 証。
 ……ナラ コノ結界 ソノ誰カ 墓標。
 フリック 墓守。コノ結界(ぼひょう) 壊サセナイ。コノ結界(たね) 花 咲カス」
 墓守たるフリークライの傍らで緊張したようにひいひいと息を吐き出していた奈々美は守護の魔術が刻まれた護符を手に小さく息を吐く。
「ま、魔法少女ナナミ……悪しき穢れを払うため、ただいま見参……! ……うぅ……は、恥ずかしぃ……」
 周りの人が強そうだし何とかなるかもと小さく呟いた。唇が震えて頬が紅潮するが彼女は首を振って神秘的な力を扱う『本能』を呼び覚ます。
 桜の太刀を構える。其れを血で汚さぬ用に、護り刀として握りしめたそれを真っ直ぐに向けてトウカは堂々たる格闘極意でその名を名乗り上げた。
「我が名は節樹 桃果! 狐さん達とは別の方法で黄泉津瑞神と京を護る為にここにいる! この声が、思いが届くのならば俺を狙え!」
 襲い来る狐たちを受け止める腕に僅かな痛みが走る。鋭い勢いで飛びかかる其れ等全てを一手に引受けた骨の軋む音を聞こうとも精強な肉体苦痛を叫ぶわけもない。
 背後には陣がある。その上で念じたいことがあった――明日も皆で朝日が見れますように。

 ――先輩方の思いが瑞さんのけがれを払えますように。

 願いと思いを陣に、握る二刀に込めて、護る為に、明日の笑顔を掴み取る為に戦うが為。
 トウカの決意を支える如く、熱砂の精霊が前線へと飛び込んで往く。光を纏った妖精は、近しい友人の力を借りて「行くわよ!」と声かける。
 オデッドは眷属を、『瑞の友人』を斃す事は控えたかった。その命までを奪わずとも無力化しておきたい。黄泉津瑞神が悲しむ事は出来る限り避けたいのだと陣の上に立ち、祈りを込める。
「さあ、穢れ払い落しましょう」
 静かに、瑠璃は美しき宝石剣の切っ先を狐を模した眷属たちへと向けた。自身を包み込む無限泡影――指先よりぷくりと浮き上がった血玉を媒介に毒の煙を生み出した。蝕みの術を使用した彼女は玄武の許へと赴き、その加護を得るところを見ていた。所に、玄武の力を護る事からは目を背けたくはない。
「――と言うわけで、ぱぁぁぁりぃぃぃぃ! 歌えや踊れや、よいよいよい!」
 ムスティスラーフは四神の結界補佐の為にも『玄武パゥワー』を溢れさせるべく踊り出した。それは、祭り好きで明るい玄武そのものである。陣の上でむっちだいなみっくなそのボディに力を籠める。霊力を、そして玄武パゥワーを伴った言の葉は力となって編み出される。
「スゥゥゥ―――」と息を大きく吸い込む音にオデットがぱちりと瞬いた。玄武を模して踊るムスティスラーフの傍らでくるりくるりと踊る妖精もきょとりとした顔をする。
 ――鮮やかな緑だ。密度を増してそれがムスティスラーフの口から飛び出していく。
「百の言葉より一の行動、けがれなんて祓ってみせる。
 だからこの一言を伝えるよ、僕らを信じて任せて欲しい」
「……凄い、力強い行動だよね。まあ、悪くはないよね。
 さてと、僕の立つこの場は閉じた聖域。何人も侵すこと能わない。それが神遣だろうとね。僕が立ち続ける限り、味方も倒れさせないさ」
 故に、陣の上にて閉じた聖域を展開した。侵されざる者は『傍ら』の産土神の力をその身に巡らせる。生ける幻想たるハーモニアは精霊の傍らでその補佐を得続ける。
「切り込んでいくのは苦手だけれど、耐えて場を繋ぐ防衛戦は僕の得手だ。僕は僕のできることで力を尽くそう」


 跳ね上がった。乱戦ならばお手の物と言わんばかりにギンコは地を蹴り飛び回る。その動きは空を縫う飛燕の如く、鋭くも靭やかに攪乱を続けていく。手加減など苦手であった。故に、『相手に死ぬな』と声を掛ける。
 跳躍するギンコは三千世界に覇を唱え、自身の技を魅せ付ける。武芸を用い、その反射神経を生かして敵を避け続ける。
 前線を踊るギンコと対照的に、後方で契約者たる妖精を勇敢なる『牙』として放った奈々美はルフナの背後に隠れる様に身を縮める。
「ひぃい……こ、こっちに来ないで……! 後で油揚げあげるからぁ……」
「ああ、そっか」
 ルフナはトウカが受け止め、フリークライが補佐する様子を眺めながら「狐だね」と頷いた。狐が油揚げを好むには諸説あるが「狐は鼠の油揚げが好きから転じたそうだよ」とルフナは陣の上での補佐を行いながら何気なく呟き――奈々美は「い、いやああ……」とその身を縮めた。風習とは恐ろしい物から転じている事が多い、この地のけがれとて『獄人差別』と『獄人解法令による八百万暴行』が溢れさせた結果なのだろう。
「な、なによ……クソマスコット……相手は神様の遣いなのよ……?
 そ、そんな……こ、殺したくはないけど……死んじゃったらごめんなさい……それに、此処でも安全じゃないじゃない……」
 ふひ、と小さく笑みを漏らした奈々美に「此処なら大丈夫」とルフナは静かに告げた。何故なら――この陣には一歩たりとも踏み込ませぬ様にと仲間たちが戦っているからだ。
『狐さん』と親しみやすく呼びかけて、傷を受けながらもトウカは懸命受け止め通d蹴る。陣の浄き気配に苦しみ藻掻く様に暴れ出す眷属たちの一撃は重たく辛い。桃の花弁を思わす鬼紋を晒し、花弁のように花を咲き綻ばせたトウカは唇を噛む。殺意無き桃の花は天下無敵に鮮やかに、然して血潮を流すことなくふわりふわりと眷属たちを気s図りゆく。
「護ルヨ 青龍。霞帝 作ロウトシタ 優シイ国モ……コノ国 愛シタ ヒトタチノ 心モ」
 フリークライはトウカを支えるべく調和を賦活の力に変え続ける。眷属たちが突破し、石を害さぬ様に。その為ならば自身の見さえも挺しても良いとフリークライは考えていた。その手を伸ばし、持久戦を、そして『生還者』として陣の上に立ち続ける。
「眷属 引キ付ケ 御霊石 護ル トウカ 癒ヤシ 維持シ 御霊石 守護 成ス。
 ソレニ 不殺 願ウ トウカ フリック 尊ブ。白桃花 散ラセナイ」
 その石は固い。鮮やかなる白桃花。それが尊い事であるとフリックが静かに告げれば頷くギンコは「ああ、コイツらを出来れば殺したくないのは分かる!
 だから、『死なないでくれ』。この場でその命を取りたいと願ってるやつはいねえんだ!」
 迫る狐の牙がギンコの腹を抉る。ぐん、と脚に力を込めて殴りつける様に眷属より逃れ、その身を反転させた。地を蹴る際に脹脛がぴんと張る感覚がした。随分と攻撃が厳しい事に気付く。だが――
「まだまだ倒れて貰ったら困るんだ」
 指先が手繰るように。ルフナは故郷との魔力的な繋がりを以て仲間の傷を癒し続けた。変化を厭う澱の森。大きな傷による変化さえ『拒絶』するようにルフナは息を吐く。
「人も神も同じだ。なんで皆、自分の力でなんとかしようとするんだろうね。助けが必要なのに助けてって言えないなんてさ」
「そうだね。それは僕らを信じられないからかもしれない。
 人が彼女達に影響を与えたんだ。これ以上傷つくことは誰だって怖いよね。だから……信じて貰えるために此処を護らなきゃいけないんだ」
 ムスティスラーフはにんまりと微笑んだ。敵陣を出来る限り少数まで減らし、そして、『殺さず』をモットーに戦い続ける。今現状の状態ではその気が昂り浄き気配を厭うような動きを見せるが、倒してからならばそのけがれを少しずつ浄化できる可能性もある筈だ。
「瑞は、きっと悲しむわよね。……友人が、自分の眷属がこんなにも苦し気なんだもの。
 ごめんね、貴方たちの苦しみできるだけ早く打ち払ってあげるわ。だから、少し我慢して」
 オデットは哀し気に目を細めた。黄龍の力になりたいと願った。支えてくれる人がいる。魔力を伴い攻撃を重ねる中で、一人で受け止め続けたトウカが持ちこたえられるかとオデットはちらりと視線を向け――「手伝うわ」と小さく呟いた。
 トウカを癒すフリークライとルフナに一つ断り、その周囲を撹乱する熱砂の息吹。巻き込まれることとなるトウカと支えるフリークライは祈るように静かに呟いた。
「怨ミ嫉ミ 女神 苦シメ 眷属 悲シマセル。
 眷属 女神ノ為 戦ウ。誰カノタメ フリック 一緒。
 ダカラ フリック コノ国 守護シテクレテタ 女神 眷属 感謝 祈リ 以テ 戦ウ」


 癒しを重ね続けた。仲間たちを均等に癒すフリークライとルフナはこの戦場の要であった。トウカが破られたならばすぐにとカヴァーに入ることが出来る布陣ではあるがそれでも、『けがれ』た眷属たちの力は強い。攻撃の要たるムスティスラーフはトウカにごめんねとウィンクした。
「大丈夫だ……! やってくれ!」
「オッケー――さあ、見てて! 僕の悩殺ダイナマイト!」
 ムッワアアと溢れ出すのは圧倒的なオーラ。おもむろなセクシーポーズは精神的な重傷を負うがトウカは気丈にも「この国を救う為!」と懸命に支え続けた。
 柱たる彼をサポートするルフナは「すごいよね、精神力」と驚いたように頷いている。
 一方で、集まっていた眷属たちと相対する瑠璃は黒い棺で敵を包み込む。内包する総ゆる苦痛を施し、続けるが機動力を生かしても追い縋る狐たちは彼女を捕まえる。
「ッ――流石は神の徒ですか。しかし、穢れ払わねばなりません。
 遺言なら、あとでいくらでも聞いてあげましょう。今は大人しく目を閉じて念仏でも唱えていて」
 瑠璃の囁きの上から『むわっ』と漂うムスティスラーフのセクシーすぎる一撃にオデットは「す、すごいわ」と小さく呟いた。自身とて傷だらけだ。眷属たちを通さぬ様に、トウカをサポートする彼女とてより良い未来を目指すがためにと眷属たちの前で立ち回り続けていた。
「溢れ出る父性に包み込まれて安心しておやすみ。ふふ、惚れてもいいんだよ?」
 微笑むムスティスラーフの言葉を聞きながらギンコは叫んだ。
「さあ、ラストスパートだ! 張り切っていくぜ!」
 その脚に力を込めて、跳躍。その勢いの儘、食らいつく様に飛び込んで往く。その攻撃に合わせる様に、受け止め続けていたトウカは全てを護る為に傷だらけで叫んだ。
「ここは通さない!」
 腕に力を、そして、それを支えるルフナとフリークライは癒しの手に力を入れ続ける。
 響く――慟哭。
 溢れる穢れが浄き陣の上にべちゃりべちゃりと落ちていく。それでも尚、その腕に力を込めて鎮める様にトウカは獣を押しとどめた。
 鮮やかなる御霊石を護るが如く――女神が、そうするが如く。


 ――命を救うためにどれ程、懸命に戦っただろうか。皆、傷だらけではあるがそれでも一度の
「ねえ、眷属は救えるかしら?」
 オデットの問いかけにフリークライは「生キテル」と小さく頷いた。『女神』――瑞神を悲しませること無き様にとイレギュラーズ達は懸命にその命を奪わぬ様にと尽力し続けた。倒してしまうことも構わなかったが、それでも自身らの信念を貫き通したのだろう。
 傷を負って動くことも叶わぬ状況のトウカは「お疲れ様」とほっと息をついたようにルフナを見遣る。「無理しすぎじゃない?」と冷たい声音でそう言ったルフナは「それに、今からが本番でしょ」と小さく息を吐く。
「……そうか。先輩たち……」
 青龍と玄武側の『御霊石』を護ることは出来たが、周囲では四神結界を壊そうとする動き、そして、実質的には霞帝(改革)派と天香(保守)派の戦いが続いているのだ。
「……少しでも瑞神様の悲しみを拭ってくれると良いな……」
 トウカは痛む身体を抑えてそう呟いた。彼が戦闘中に試していた『陣での浄化』を試してみようとムスティスラーフは提案し、瑠璃とオデットは其れに手を貸そうと陣内へと横たわる眷属の体を運び込む。その周辺に漂った正常な気がほうと心を落ち着かせてくれることに気付き、ムスティスラーフは「きっと大丈夫」と微笑んだ。
「眷属の皆、瑞さんもきっと助けてみせる、だから任せて欲しいんだ。誰も悲しむこと無い道を辿って見せる!」
 そう、呟き天を仰ぐ。あの天守閣に座する女神を包み込んだ光は――眩くも暖かいいのちだったか。
 その効果が在るうちならば、まだ彼女を『救う』手があるのだと、そう実感させてくれる気がして。

成否

成功

MVP

節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花

状態異常

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)[重傷]
鏡花の矛
志屍 志(p3p000416)[重傷]
密偵頭兼誓願伝達業
ギンコ・キュービ(p3p007811)[重傷]
天使の選別
節樹 トウカ(p3p008730)[重傷]
散らぬ桃花

あとがき

この度はご参加有難う御座いました。
青龍と玄武も喜んでいると思います。
この補佐が、素晴らしき未来に繋がりますように。

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