PandoraPartyProject

シナリオ詳細

イレギュラーズ(が)連続恐喝事件

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●不滅のJ〇ブランド(倫理規定により伏せ字)
「おにーさん。遊んでいかない? イーコトしてあ・げ・る♪」
 練達、再現性東京でもなんでもない、近未来的な繁華街に唐突に流れ出た色っぽい誘い声は、その国で日々に追われ疲労困憊の男の耳朶にとても魅力的に響き渡った。
「あぁ……? なんだよ、俺はこれから忙し」
 だが男は理性的な方だったので反射的に断ろうとした。が、駄目。眼前に写った風景の魅力的なことといったら。
 女子校生(どの学校かは不問とする)らしい顔立ちながら学生服とは到底呼べない露出の激しい服装、出るところは出て締まるところは締まっているスタイル、そしてピンク色の髪を挑発的に二つ結びにしたそのスタイルは、なるほど蠱惑的という言葉がよく似合う。何時の世も、男ってこういうのが好きなんでしょう? と聞かれると「はい喜んで」と居酒屋かっつー勢いで頷くのだ。わかんねえでもねえが。
「あーしの名前はゆーこ。こっちに来て?」
 首筋に腕を滑らせ、「ゆーこ」は男を物陰に引き込もうとする。男はすっかり彼女にメロメロ(死語)で、少なくとも抵抗する気持ちがないように見えた。
「で、こっちの『友達』は――」
「俺は――――だ。名前ぐらいは聞いたことがあるだろう?」
 物陰の声は男だろうか? 厳つい声が絞り出した名前は、たしかローレットでそこそこ名うての人間であるはずだ。
「あたしは――――、って言えば分かるかしら? ちょーっとお願い事があるのよ。いい?」
 女、あるいは中性的な声音をしたもうひとりはもう少し直接的に男の手首を掴んで引き倒した。
 ローレットの名を告げた面々は男を半殺しの憂き目に遭わせ、身ぐるみを剥いで路地裏に捨てていった。傷が深ければ、その場では死なずとも血で喉に詰まって命を落とすこともあるだろう。
 逃げ出そうとしてそのまま命を奪われた者もいる、という。そんな事件が度重なったらどうなるか、は語るまでもない。
 ローレットの名を吹聴して回ったのだから、当然だ。練達内部でも少なからずその話は広まって……。

●ナメられたら負け
「……というわけで、一番証言が多いのは貴女でしたので来ていただきました」
「誤解だよ三弦っち!? あーしだって困ってるんだし!」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は机を挟んで向かい合った高槻 夕子 (p3p007252)の顔を覗き込み、渋い顔で話を切り出した。
 一連の美人局騒動で最も多く名前が出ているのは彼女だ。そして面子は多少異なれど、複数の事案で残り7人――この場に呼び出された者達が多く証言や目撃情報として挙がっている。
「私も正直なところ信じてはおりません。夕子さんならもう少し上手に稼げるでしょう? こんな雑な手法は取るだけ無駄だと思っています」
「なーんか、ひっかかる言い方ぁ……」
「ですが、仮にも練達はイレギュラーズの都市です。大なり小なり戦闘能力のある方々を一方的にのして回っている以上は皆さん程ではないにしろ手練と見るべきです。
 報告書には、特に手練だった者が1~2名ほど混じっていたとも聞きます。皆さんの戦闘パターンと親しい人間が混じっている可能性が高いので重々警戒を頂ければ、と」
 ジト目で見てくる夕子ら一同に、三弦はしかし涼しい顔で状況を説明する。
 全く迷惑な話だ。徹底的に潰さねば――そう、一同は決意したのだった。

GMコメント

 ふてぇ野郎もいたもんです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●達成条件
 偽ローレット・イレギュラーズの捕縛(生死不問。生きてたほうが当然よい)

●偽ローレット・イレギュラーズ
 高槻 夕子 (p3p007252)さんを含む8名一組での行動をしており、事例によってかなりメンバーに相違があります。
 恐らく変装しているらしく、最も多く見られる組み合わせは『予約(通常)参加確定メンバー』であるとされています。
 外見だけを模していて似ても似つかない戦闘スタイルの者、かなり近い外見と能力を備えている者、ケースは様々です。
 ただ外見だけはかなり『寄せて』います。鈍いと見間違うくらいには。
 混戦になってもいいように、見分ける合図とか特徴を備えておくといいかもしれません。
 特に、『本人以上に強いのでは?』と噂される者も数名混じっているそうです。心外だ、ブッ潰しちまおうぜ。
 当然ですが、本人たちがそれと分かる形で警邏していたら見つかりません。数名は変装・偽装系のスキルがあったほうがいいと思います。
 時間帯は夜のため、視界等にもお気をつけ下さい。

  • イレギュラーズ(が)連続恐喝事件完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月01日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ
※参加確定済み※
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
如月 追儺(p3p008982)
はんなり山師
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士

リプレイ

●宵闇に隠れ悪辣は蠢く
 練達の繁華街ともなれば、日々人々の行き来は激しく、その多くがウォーカーであるがゆえに外見の差も激しい。
 そんな中で『目立つ』ということは、余程の個性か評判、ないし他者に向けられたあからさまな攻撃性でもなければそうは起き得ない。
「やーん、おじさんマジイケてなーい? ちょっとあーしとイイコトしない?」
 そういう意味では、明らかにイケイケ(死語)な雰囲気と過当な露出で男性を誑かす『彼女』の姿は如何にも目立ち、人々の目につきやすい外見である。彼女が『イケている』と称して引っ張ろうとしている男性は贔屓目にも「イケている」というには今ひとつの外見。そんな相手を捕まえる理由なんて、この摩天楼に於いてひとつかふたつしかありはしないだろう。
「え、ちょっ、君……その服装、確か」
「いいからいいから♪」
 男性は戸惑いながらも、しかし尋常ではない少女の膂力に引かれ物陰へと引っ張られていく。罠だと警告する理性、もしかしてを期待する本能がせめぎ合うなか、彼は見る間にビル影へと消えていく。
「そこまでよあーしのニセモノ! っていうかそのプロポーションであーしを名乗ろうなんて甘々よ!」
「俺達の名前を使って不正義を為すその姿勢、笑止千万! 歪んだ性根をここで糺す!」
 と、物陰に控えていた少女の仲間達が得物を手にしたタイミングで現れたのは、その少女と瓜二つの人物、『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)であった。
 彼女より前に出て剣を振り仰ぎ、光でもって路地を照らしたのは『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)にほかならない。対峙する者達の中に似通った姿の男はいるが、そのギフトと歴戦の跡を残す礼装までは模倣しきれていない。
「お、おいコイツらまさか」
「嘘でしょ!? こんなにあっさり見つかるなんてあるワケ?」
 突然の『本物』達の登場に驚いたのは、当然ながら路地に隠れていた者――『偽のローレット・イレギュラーズ』である。この頃なにかと話題になっていた彼女達は評判が広がるにつれ相手を選びにくくなり、結果としてやや強引な手法に切り替えていた節がある。足元に転がっている男性もその犠牲者の1人(未遂)。
「騙りはバレたらどうなるか。考えなかった訳じゃあないだろ?」
 足元に転がった石が仄かに光を帯び、リゲルの光を補うようにあたりを照らす。『神威の星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)のギフトによるものだが、外見ばかりを模倣した者達はそこまでの情報を持っておらず、突然の状況の変遷に驚くしか無い状況だ。
「わたしのニセモノを騙るなんていい度胸してるわ! ご褒美にわたしがやったことの責任をとってもらうわね!」
 なお、イレギュラーズ(本物)が現場の発見を容易に行えたのは夕子のJK力と『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)のファミリアーによるものだが……彼女はどうやら表沙汰に出来ないようなことをしでかしているらしい。ローレットにとっては迷惑極まりない。
「はっ、自分の偽物が出るとは思わなかったよ! しかもわたしのホームでな!」
 『策士』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)の口調は笑っているように見えるが、しかし目は全く笑っていない。奥の方に隠れていたニセモノの姿にいたく不満げなのは明らかだ。
「やーん、あーしも有名になったわねー。あーしの名前を使って美人局とかもー、あーしがきゃわわなのが知れ渡っているからじゃないの。もー、しょーがないわ……」
「だってアンタ、『こういうこと』やりそうでしょ? 騙しやすいから使っただけっしょ」
「よしぶっ殺す」
 夕子は楽しげに自らの評判に喜んでいたが、偽物の一元的な評価に湧き上がる殺気を隠しきれない。
 それは相手方も同様で、逃げられぬと見るや本物を喰らう勢いで覚悟を決める。最早互いの名乗りは不要だ。路地裏が、殺意と敵意に染まる。

 ……時間はやや遡り、宵の口の繁華街入り口。イレギュラーズ達はその辺りを管理する警察機構に面通しを済ませ、操作の準備に取り掛かる。偽装技術を持たない面々が出歩くことで、濡れ衣を着せられ逮捕される憂き目を避けるためだ。
「偽物はんの姿形がこちらと似ているならむしろ練達では悪目立ちしてくれますでしょ、なら後は近距離だろうが遠距離だろうが近づいてぶん殴るだけですわなぁ」
「なに、鬼人種だって結構活躍してるんだ。この街では目立たないさ。何時かあるとは思ってたが、随分とまぁ派手な噂まで出してくれたもんだ。一発締めてしょっ引かないとレオンの大旦那の沽券に傷つく」
 『アヤシイオニイサン』如月 追儺(p3p008982)は自らの容姿が目立つものであるという自覚はある。『黄泉津の純種』にはまず見られぬ姿だからだ。しかしここは旅人の国、『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が言うように極端に目立つものではない。それにしても、とマカライトは思う。偽物の登場は誇るべきなのか、呆れるべきなのか。或いは憤激を隠さぬべきなのか。
「僕の名前と瓜二つの姿を持った偽物なんて名前が売れた証だね! ……美人局恐喝一味の一人は不名誉すぎるけど!」
 『ラド・バウD級闘士』溝隠 瑠璃(p3p009137)は積み上げてきた実績がようやく評価されたと喜びかけたが、まさかの事実にしわくちゃの表情を見せた。そりゃあまあ、『積み上げ』がなにかとアレなケースがある瑠璃ではあるが、悪事に手を染めた扱いはちょっと心外だ。
「騙りがでるのは有名人のサガ……かは知らないけど、人死にはほっとけないな。……リゲル?」
「ああ、済まない。『本物以上に強い』なんて相手がいるなら、俺の偽物はどうなんだろうと思って。不謹慎だけど、少し期待してるんだ」
 夕子達が調査に出向いたなか、ウィリアムは複雑な表情で周囲を見渡す。と、リゲルがどこか奇妙な表情をしていた為に声をかけておく。返ってきたのは、彼らしくもあり、不謹慎さは『らしからぬ』ものであった。
「……自分、手加減が苦手なんですわ。うっかりぐちゃぐちゃにしてまうかもしれへんけど、まあそれは偽物はんが弱すぎるのが悪いと思いますねん」
「ダチコーからこの辺りの噂は聞いたからさっさと行ってさっくりと殺ろう。今すぐ殺ろう」
 追儺と瑠璃は割と殺る気満々で、遠巻きに見ても雰囲気が明らかに違う。なんていうか、人選を明らかに間違えたのではないかとすら思える。
 ……思えるのだけど、実際瑠璃の情報源の確度はたしかで、先行して向かった変装半含め、発見の早期化に寄与したのは間違いない。
 果たしてこの戦い、何人が無事に帰れるのだろうか……?


「さて僕の名を使って悪事を働いた事、後悔して貰うゾ♪」
「なんの、僕が君を倒せばなにも後悔することはない!」
 瑠璃が調合した毒を振るい、当たり一面に撒き散らす。相手が同系統の使い手なら、毒の苛烈さに多大な影響を受けることは間違いない。が、相手もさるもの。毒が蔓延する前に瑠璃に鋭い一撃を与え、大きく後ずさったのだ。明らかな上手、というほど強くはない。しかし複合毒を使えぬ代わりに、身軽さ、そして手にしたナイフの毒で細かく相手を弱らせる基本は抑えてきているらしい。
「楽しめそうで何よりだゾ♪ ……手加減せずに済みそうで」
「ははは怖いね! ラド・バウで鳴らした実力をもっと見せておくれよ!」
 享楽的な性格はにているかもしれないが、ベクトルが違う。今一度踏み込んだ相手が複合毒に咽るのを見て、瑠璃は嗜虐的な笑みを深め、追撃する。偽物は激しい乱舞とアクロバティックなナイフ術を駆使して瑠璃に追いすがり、襲いかかる。相性は悪くないが、面倒な相手に出くわした。だがそれもまた、愉悦への階(きざはし)である。
「全くもう、私の苦労も、悲しみも、苦悩も……なにも、知らない奴が……私の、身体を、名前を、真似するんじゃぁない!」
「知りたいとは思わないね、アタシ達はアンタ達の名前を借りて好き勝手やれてればそれでいいのさ!」
 練達の花火による光源を背景に、リアナルの戦扇と偽物のトンファーが打ち合わされ火花を散らす。速度にあかせた一撃はリアナルのそれが僅かに威力で上回り、避けそこねた偽物の腕を滑って切り裂いていく。
 首を傾げた彼女の脇をトンファーが抜け、膝で腹を打って間合いを作って更に戦扇で打ち据える。リアナルに躱されたとはいえ、偽物は二合目までは食らいついた。そこから三合目に至れなかったのは、偽物としての決意の甘さ……そう結論づけ、倒せると確信した彼女の戦扇を偽物はあろうことか、額で受けた。
「悪いねェ……噂に聞く本物の実力、甘く見てるワケ無いじゃあないか!!」
 額の出血はなく、受けた跡は浅い。……成程、連撃能力を切って守りに回したか。相応の覚悟を見せた相手に、リアナルの表情が歪んだ。
「こっちの腹の虫が治らんしな、徹底的にやらせてもらうぞ」
 マカライトが偽物との間合いを詰め、片刃の剣を振り下ろす。苛烈な一撃に遅れて振るわれた爆風は、しかしぬっと突き出された手が放った魔砲がかき消していく。首の皮一枚で躱したマカライトは、相手を間合いの外へ逃さず追随しつつ、周囲に視線を鋭く向けた。反応は明確に二分される。判別にはそれで十分だった。
「なんだなんだァ、距離を詰めてたって無駄だってのは分かってンだろ? 怖いかい、魔砲が?」
「お前のそれより怖いやつを沢山見てきたさ。遺跡の番人の方がもう少し『やる』」
「負け惜しみだぜェ!」
 2度目の魔砲を、受けてやる義理はない。マカライトは偽物が構えた刹那、後の先の邪剣を放つ。胴を袈裟に三重、切り裂いた跡は巨獣の爪のようでもあり。
 然し、それが彼の真価ではないことを仲間達は知っている。……まだ彼には上がある。
「私と殴り合って形を保っとるくらいには強いことを期待してますでぇ」
「フフ、可愛イネェ」
 追儺の渾身の拳を左手を繰って受け流した偽物は、そのまま左手を滑らせ顔面に押し当て、彼を地面に叩きつける。更に、追儺の浮いた体に魔力の乗った蹴りをあわせ、その身を覆う術式を引き剥がした。
 ……一合で理解できる。これは、上手だ。付与術式の二重付与を待ってくれるほど相手は悠長ではなく、その欠点を知ってか魔術と格闘の複合戦にて引き剥がす。幸いなのは、腰に佩いた刀を抜かぬ点は共通してるということ。鬼の角は自前か、だとしたら相手は別世界の鬼であろう。
「海向コウノ“鬼”ハ、モウ少シ楽シマセテクレルカイ?」
「冗談きっついわぁ、私は楽しもうなんて思ってへんよ?」
 「一方的に嬲り殺したいだけやわ」、と。追儺は血を吐き捨てながら拳を振るう。実力で上回るなら、何ができる? 何が上回る? 彼のなかに、既に結論はあるはずだ。
「えっ、なんなのあなた、わたしの偽物の癖に……!」
「知ってるわ。“勝てる相手を一方的に嬲りたい”んでしょう? あてが外れた?」
 メリーは、偽物の手際の良い戦い方に舌を巻き、たたらを踏んだ。
 戦い方は同じと見える。バランスのよい能力に魔術偏重の戦闘、衝撃で距離を取り中遠距離から魔術で行動選択を奪っていく。術士必勝の教科書があればまさにそれが一つの適解、メリーの実力なら『できるはず』のそれだ。だが、相手は同程度の実力なのにそれをよりしっかり構築し、相手をナメていない。メリーは? 相手を倒したあとの皮算用は出来ていたが、倒す算段は……残念ながら偽物に劣る。
 重くなる体、閉じる視界。果たして恨むべきは未だ偽物を打倒できぬ仲間か、後れを取った自分か――。
「魔術師は接近戦が苦手だなんて、考えてたのか?」
「……成程、噂だけでは分からぬことも多いな」
 ウィリアムの対峙した偽物は、魔術師という点で共通していた。が、相手は肉体を限界まで強化し、一撃に賭ける戦闘魔術師。対するウィリアムは、至近戦で相手の守りを崩しつつ、中距離での範囲攻撃などを使いこなす距離戦闘のオールラウンダー。1対1での戦いに持ち込めた以上は接近戦に注力するのが妥当だろうか?
 相手の拳は回転数と威力を両立した乱打、そして受けることを想定した頑健な防御術式。対するウィリアムは、回避を重視しつつ鋭い一撃を放つ軽量型。偽物が惜しむらくは、守りを貫かれたその先を想定しなかったことだろう。
「俺を騙るならば、リゲル=アークライトとしての信念を語ってみせろ。君の矜持は? 君にとっての正義とは何だ?」
「無論、凡百の弱者を引き倒し己の糧として奪うことに相違なかろう! 甘えるな!」
「俺は人々の剣となり盾となる……騎士として人々を守る為に在る! そして偽りの正義を断罪する為剣を振るう! 俺の正義と君の正義――どちらが重いか、決着を着けよう!」
 リゲルの断罪の刃と、偽物のレイピアによる連撃とがかち合い、激しい火花を散らす。リゲルは首を捻り、胴をひねってレイピアの連撃を躱しながら確信を得ていた。
 相手は、自分より上手だ。一撃一撃が、彼の渾身の斬撃に迫る勢いだ。
 戦闘スタイルは違うが、それでもローレットのトップクラスを上回る手練がここにいる。下らない犯罪に手を染めなければ、奪う側を徹底して主張しなければ。そんな「もしも」を思わずにはいられない。
「俺は様々なものを背負い、ここまで生きてきた。君がその人生ごと背負い成り代われるというならば、今ここで俺を倒し、やってみるといい!」
「面白い! 貴様のたどった道に興味はないが、その実力と名誉には大いに興味があるよ!」
 切り払い、穿ち、黒顎魔王の一撃を叩き込み、胴を、肘を、肩口を貫かれながらリゲルは笑う。こんな場末の路地裏で、命を削る相手と会えるとは。
 ああ、だからこそこの薄っぺらい主張のなんと惜しいことか! 彼が明確な理性と理合に基づき戦いを挑んだならば、互いの剣はより高みに登れただろうに! だからこそ――倒すのが、ただ惜しい!
「だいたいその露出が露骨過ぎるのよ。大事なのは『脱ぐ』瞬間なの。それまで来ていた服を脱ぐことで『ガードを緩めました』というサインを送り、その瞬間に優しく畳みかける。それがキモなのよ!」
 夕子は速度にあかせた一撃で距離をつめ、偽物の衣装の大事な紐を削り取る。本人がえっちな目にあってないのに、なぜか彼女のアレコレが危うい。
「知らないっての! 男は肌を見せれば喜ぶじゃない! アンタもそうしてきたんでしょ!?」
「初めから『そういう行為』を彷彿させるんじゃなく、ちらりと魅せる胸元とか太ももなのよ。それが出来ないんじゃ、あーしを名乗るのは失格ね!」
 反応速度が速いのは相手も同じ、速力による打ち合いは、それでもJK力で上回る夕子が上をいく。そして、その主張の説得力もまた、上を行く。
「あ。それはそれとしてあーしに目を付けたのはハナマル。まー、命だけは許してあげるわ」
「フン、倒せるもんなら倒してみなさいよ! まだまだあーしは負け」
 ない、と。偽物は言いかけた。だが、彼女は気づいていなかった。
 ――とうのむかしに打ち込まれた連撃は4度。常の夕子の速度より速く、そして多く叩き込まれたそれは偽物が気づくより早く決着を呼び込んだ。

「悪い子に育つなと両親に言われなかったか? ……それは、本当に悪い大人に騙されるのが一つ……もう一つはね、正義の名の下に、鉄槌を何度も振り下ろされるからだよ」
 リアナルは斃れた偽物を足蹴に、心からの侮辱を込めた表情で言い放つ。返す言葉を持たぬ相手は、ひゅう、ひゅうと乾いた呼吸を繰り返すのみだ。彼女が改めて法の鉄槌を受けるのは、明らか。
「自分と戦え楽しいという思いもあった。もし君が諦めないというのなら、個人的な手合わせはいつでも受けて立つ。お互い、研磨し合おうじゃないか」
「……爽やかすぎるぜ、騎士様よぉ……」
 リゲルは相手を打倒してなお、爽やかに相手に語りかける。彼は本当に、いつもどおりだ。
「『カロメロス』を名乗るのはいい。『ヴェンデッダ』なら笑って許してやる」
 そしてマカライトは、魔眼を以て偽物に突きつける。許されざるコト、その最大の咎を。
「だが、『この名前(マカライト)』はダメだ。この名前は『友人』が考えてくれた大切な物。次に名乗ったら……殺すぞ」
 彼の言葉に偽りはない。そして、イレギュラーズ達を騙った代価に、値切りはないのだ。

成否

成功

MVP

高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ

状態異常

メリー・フローラ・アベル(p3p007440)[重傷]
虚無堕ち魔法少女
如月 追儺(p3p008982)[重傷]
はんなり山師

あとがき

 お疲れ様でした。諸事情ありまして順番を前後してお届けします。
 皆さんタイマン好きすぎて非常に筆が乗りました。あー、楽しい。こういうのはたまにやりたいですね。

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