PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おいしいケーキセットのために

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ひつじのしつじのいちだいじ
 『洋紅羊』テオドール・カルメ・ガルグマトンは、幻想で草カフェバー『ダンデリオン』を営んでいる店長である。
 ちなみに草カフェバーとは、薬草を使った薬酒カクテルや薬草茶を提供する健康志向なカフェバーである。決して混沌世界の客には草でも食わせておけとか、そんな上から目線の店ではない。
 むしろ草を食わせて黙らせておきたいフリーダム店員ならいるらしいが、今回はその話ではなく。

「薬草園の雑草退治? 今、退治って言った?」

 『ダンデリオン』の階上の部屋に寝泊まりしているカティアは、テオドールが薬草茶を提供しながら発した単語に己が耳を疑った。
 雑草を。駆除ではなく。退治と。
「ただの雑草刈りなら、わざわざイレギュラーズに頼まずとも自力で何とかする。私には厳しいが、お前達ならそう苦労もなく達成できるだろう」
 薬草に詳しいテオドールは店で扱う薬草は全て自前で育てるか、遠隔地であれば一度は自ら出向いて選定している。薬草の世話に関しては、この店では誰よりも的確にこなせると言ってもいいだろう。
 その彼が、敢えてイレギュラーズに頼みたいというほどの『雑草退治』とは何なのか。
「まず、すごく素早い。抜かれそうになると飛び出して逃げる」
「……抜く手間が省けていいじゃない?」
「そして、どこにでも登る」
「登る」
「他の薬草によじ登って食べたりする。最近この被害が無視できない」
「食べる」
「気を引いて捕まえたら、折ればいい。だが、命の危険を感じると叫ぶ」
「叫ぶ」
「叫ぶと仲間が集まってくる。髪や指を囓られそうになった」
「ねぇそれ本当に植物? 植物に擬態した何かじゃなくて?」
 どうしよう。この話本当に受けていいのかな。
 カティアは少し不安になってきたが、人を囓るような未確認雑草(?)を放置するのはよくないとは思った。
「臨時アルバイトと思って、引き受けてくれると助かる。
 報酬は、そうだな。仕事の後に試作品のケーキセットでも出そう。材料はその雑草だが、これが疲労回復に効くらしいことがわかってな」
「ケーキ、セット……」
 ぴこぴこ、と。視界の端で小さな羊の耳が動く。偶然この『ダンデリオン』に居合わせたメイメイが、食べ物の話を聞きつけたのだ。
「雑草退治、したら。ケーキセット、頂け、ますか」
「ええ、勿論です。薬草園には他の薬草もありますので、そちらに被害が出ないようご配慮頂ければ結構ですよ」
「やります……! ケーキ、欲しい、です!」
 控えめながらつぶらな瞳を輝かせるメイメイであった。
 その雑草、逃げるし登るし食べるし叫ぶし囓るのだが。
 なお、別人のように口調が丁寧なのはテオドールである。執事出身である彼は、オンオフを完全に使い分けているのだ。

●ダンデリオンの薬草園
 そこでは、多種多様な薬草達が細やかに手入れをされていた。
 日向を好むもの、日陰を好むもの、乾燥を好むもの、湿気を好むもの。
 人の性格がそれぞれ異なるように、薬草達にも個々の性質がある。
 それをひとつずつ見定め、管理し、店で提供するのが店長テオドールの務めだった。

 ばりぼり。ばきぃ。むしゃあ。
 植物を愛する者にとっては到底許せない音をたてて、『雑草』達はこの世の春を謳歌していた。
 彼ら(?)にとってもこの薬草園は非常に心地良いらしい。
 店長の災難を救うため、魅惑のケーキセットをゲットするため、『雑草』退治に挑んでほしい。

GMコメント

旭吉です。
この度はシナリオのリクエストをありがとうございました。
リクエスト者以外の参加も可能となっておりますので、どなた様もお気軽にどうぞ。
※相談日数が短めです。ご注意ください。

手塩にかけてる植物を勢いよく虫が食べてる時の音。わかりますか。

●目標
 他の薬草に被害を出さずに、『雑草』を退治する。

●状況
 幻想の草カフェバー『ダンデリオン』が所有する薬草園。
 市街地からは少し離れた場所にあり、様々な種類の薬草が栽培されています。
 今は多数の『雑草』が他の薬草を食い荒らしたり、地中の養分を奪う被害が出ている模様。

●敵情報
 『雑草』×なんかいっぱい
  逃げる 登る 草食べる あと叫んで仲間と一緒に囓りにくる。
  逃げ足はムカつくほど速いし、他の草を食べると回復します。
  耐久力は雑草の域を出ないので、うまく引き付けてバキィボキィするのがいいでしょう。
  頑張っていっぱい退治すればOKです。

  形状としてはマンドラゴラ的。逃げる時は速すぎて止まって見える二足歩行。
  叫びを聞いても発狂などはしませんが、抜こうとした相手に関する何かを叫ぶようです。
  (例:カティアノウモウブトォォォォォン!!!!
     メイメイオナカポッチャリィィィィ!!!!)
  範囲系スキルは、他の薬草や薬草園に被害が出ないようにお願いします。
  被害が出た場合はケーキセットのお茶が店員の新作ゲーミングティーになるそうです。
  味はテオドール曰く「世界への冒涜」とのこと。
  (むしろそっちに挑みたい場合は超渋い顔をされますが、出してはくれるでしょう)

  • おいしいケーキセットのために完了
  • GM名旭吉
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月09日 23時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りと誓いと
※参加確定済み※
カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)
グレイガーデン
※参加確定済み※
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ルツ=ローゼンフェルド(p3p008707)
復讐の焔緋
八重 慧(p3p008813)
歪角ノ夜叉

リプレイ

●雑草をぶちぃするだけの簡単なお仕事――のはずでした。
 緑がいっぱいの薬草園で、皆で一緒に汗を流して草毟りを頑張ったら、ご褒美においしいケーキセットが食べられる――それはとても地味な仕事だけれど、魔物退治とかに比べたらずっと楽だし、労働は早く終わらせてケーキをご馳走になろう……。

 『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)をはじめ、『こそどろ』エマ(p3p000257)も、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)も、『ミルキィマジック』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)も。『復讐の焔緋』ルツ=ローゼンフェルド(p3p008707)だって、今回は魅惑のケーキセットがお目当てだった。
 テオドールの話ではちょっとすごい雑草みたいだが、まあ雑草には違いないのだろうと思っていたのだ。思いたかったのだが。

「め、めえ……」
「何……この……雑草……?」
「じゃねえなこれ! なんで草が逃げ回るんだよこのやろう! 雑草処理なんて楽な仕事だと思ったのになぁ!」
 目の前の光景に驚きを通り越してドン引くメイメイとルツ、そして世界。
 テオドールに案内された薬草園では、そこかしこからばりばり、むしゃむしゃと、元気よく葉を囓る音がした。
「俺の知ってる雑草と違う。これ……咀嚼音……? なんで?」
 『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)はその昔、近所の畑で獣に作物を食い荒らされる被害を目にしたことがある。奴らは美味い所だけ食べ散らかして、商品にならない野菜を量産してくれたものだが、ここに獣はいない。むしろ、色々な意味でもっとやばいものがいる。
 『雑草』と言われたそれらの、二足歩行っぽく見える根はもはや脚であるし、何なら葉を食べるための手っぽい部位もある気がする。咀嚼できるなら歯もあるのでは?
 なんだこれ。
「うわぁ……雑草も生きるために必死なんだろうけど、思った以上に好き勝手に薬草をむさぼってるね……」
「これくらいじゃ驚かなくなってきた自分もちょっと怖いですね……えひひ……」
 思わずじっくり観察してしまったミルキィに比べ、そこまで観察する気は無いエマ。驚きはしなくなっても、若干笑顔が引き攣っている。
「今までの混沌トンデモ生物よりはよっぽどマシな部類だが……どう見てもマンドラゴラだよな? 歩いて叫んでってマンドラゴラだよな?」
「これもう雑草っていうより害虫で良くない?」
 『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)と『グレイガーデン』カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)は案内してきたテオドールに振り返る。
 しかし、彼は表情ひとつ変えずに言うのだ。これはマンドラゴラでも、虫でもないし、『草』であると。
「確かに、食獣植物とか見たことあるけど……」
「何でもいいけど、動きが素早すぎて気持ち悪い……」
 マカライトは何とも言えない顔で再び『雑草』達を見渡していたが、ルツの視線に至ってはもうドン引きに加えて憎悪すら混じっていた。例えるなら、黒光りする家庭内害虫を見てしまった時のような。
「見てたら腹立ってきた。早々に駆除しねえと」
「だね! 大事に育てた薬草を台無しにされちゃうのは許せないからね!」
 本来荒事は好まない慧だが、今回は威嚇でもするように『雑草』達を見下ろしていた。ミルキィも言うように、どんな有り得ない存在だろうが人の努力を滅茶苦茶にしていくようなものが許せなかったのだ。
「薬草園を守るため。薬草園のお外に出してしまっても、大変です、から」
「そして美味しいケーキセットのために! ここはひと頑張りと行きましょう!」
 メイメイの言葉にエマが一番大事なことを付け足して、おー! と気合を入れれば。
 それぞれにテンションの違う同意の声が返ってきた。

 いざ、雑草『退治』へ。

●『雑草』バトル開幕
 『雑草』は多い。しかし、ここでは他の薬草も栽培されている。まとめて燃やせたら楽だったのにというルツの不満は至極もっともだが、他の方法を探さねばならない。
「逃げる敵をただ追うだけの徒労は御免だ。奴らの動く範囲を徹底的に制限していく」
 餌で吊り、追い立てて、一網打尽にする。世界が決意する声は真剣だった。
「店長、特に被害の酷い薬草とか、ある? 『雑草』にも好き嫌いがあるようなら、好きそうな薬草を入れた鉢とかで多少誘導できるかも知れないよ」
「商品として使えなければ、廃棄するしかないだろう? 奴らが好きそうな種類で、廃棄作物の山を作ることができれば、薬草園に被害を出さずにおびき寄せられそうだが」
 カティアとマカライトの提案を聞いたテオドールは、『雑草』達が走り回る薬草園を先導するとある一角へ案内した。葉が柔らかい種類で、特に被害が酷いらしい。
 他にもいくつか『雑草』が好む薬草の種類を教わった後は、それらを使った罠をどこへ仕掛けるかだ。
「今使ってない場所とかどうっすかね?」
「薬草園の中だと、他の無事な薬草を踏みそうなんだよね。よじ登るような草……やっぱり草じゃないと思うけど……ああいうのだと、薬草園の柵も越えちゃいそうだし……」
『クリィィィィィムシフォンケェェェェェェェキ!!!!!』
「「…………」」
 慧とカティアの相談を遮ったのは、何とも言えない、しかし何を言ったかはわかってしまう微妙な雄叫び。
 恐らくはこれが。
「とりあえず一本確保しておけば、囮に使えるかなーと思って! うまく捕まえたところまではよかったんだったけど……こんなに早く叫ばれるなんて」
 異世界シュガーランドからやってきた見習いパティシエ。それが、今生きている『雑草』をじわじわと、しかし根(?)の真ん中でへし折ろうとしていたミルキィの本来の姿である。そして今のは間違いなく、『雑草』が命の危機を感じた悲鳴だったのだ。
 そのような悲鳴があがったということは、即ち――。
「ぇひあぁぁっ!?」
「っ!? 突然変な声出さな、……嘘でしょ」
 その光景に思わず素で驚いてしまったエマと、エマの声に驚いてからその光景に絶句したルツ。
 仲間の危機を聞きつけて、薬草園のあちこちから『雑草』達が飛び出してきたではないか!
「あの、ですね。肥料の土、置いてる場所あった、ので。そこ、どうでしょう、か」
「そこ、囲いはあるっすか!」
「なかった、です。けど、開けていた、ので。やりやすいかな、と」
 ファミリアーの小鳥で空から薬草園とその周辺を観察していたメイメイが、突然の事態に慌てて提案する。慧の問いに彼女が答えると、取り急ぎ『雑草』達をそこへ追い込むこととなった。
「土しか無いなら爆発させてもいいよな? ひとつ残さずかき集めてくれ! 後で俺も加勢する」
 『雑草』達より先回りすると、世界は土の中に仕掛けを施していく。
「結構、来てます、けど。まだ、中にもいます、から」
「中に残ってるのはこっちで潰しておくよ。すごく燃やしたいけど……」
「じゃあ、保護結界も張っとこうか。おまじない程度かも知れないけど」
 メイメイから状況を聞くと、ルツが率先して薬草園に残る残党を個別に担当することにした。意図しない破壊が起きても最低限の被害で済むよう、カティアも保護結界を展開した。
「カレン、アヤメ。あっちの山と、今からここから出てくる走る雑草は好きに食っていいぞ。ティンダロスもだ」
『のじゃー』
『ノジャア……』
 『カレン』『アヤメ』と呼ばれたマカライトのロリババア達は、可愛い虚無顔にじゅるりと涎を垂らして『雑草』の群れに突っ込んでいく。ロリでなく混沌世界のロリババアなので涎を垂らしてても(絵的に)OKです。
『ババアアアアアアア』
『ババアアアアアアアアアア』
 心なしか『雑草』の雄叫びが可哀想である。
 ティンダロスも俊敏に動いて噛みついては『雑草』を引きちぎっていた。
「ではでは、私もひと頑張り! もうビビったりしませんよー!」
 待ち伏せ場所よし、回り込み要員よし。ならば自分は薬草園の中から雑草を追い立てるべく、エマもその韋駄天の脚を動かす。ついでに先程廃棄予定だと言っていた草も持って行ってしまおう。
 その時、薬草園で銃声が響いた。
「ここの薬草は、あなた達のご飯じゃないんだよ!」
『ルツオナカノッテルベルドォォォォォォ』
「どこに! 乗ってないから!」
 声に振り向いてみれば、ルツが見上げる程に高く伸びた薬草の支柱に銃を向けていた。その頂上にはあの『雑草』が。ここで引き金を引けば、支柱を破壊してしまうことを気にしているのだろう。
「にーがしませんよー!」
 そこへ高く跳躍して、影穿の刃を叩き込むエマ。
『エマビリビリビビリ……ィィ……ィ』
 落ちて動かなくなるまで叫んでいた『雑草』。
 ふざけたことばかり叫ぶかと思えば痛いところも突いてくる。ただ走り回って、叫ぶだけの『雑草』なのだろうか。本当に。
「まだ向こうにいるよ。一匹残らずちぎって投げていくしかないの、ほんと面倒くさいったら」
 ルツがビーム銃で狙いを澄ますのを見て、エマも気を取り直す。
 この後は――ケーキセットだ!

●『雑草』バトル、爆散
「なんで雑草が齧るんすか!?  突き返してやりましょうか!?」
『クビイタイケイィィィィ』『アタマオモイケイィィィィィ』
 薬草園の外側で、慧は『雑草』に集られていた。美味しいわけではないだろうが、巨角が登りやすかったのだろう。反射体質でダメージも蓄積しているはずなのに、あまり降りてくれない。
 例えるなら、猫の遊び道具状態だ。
「ま、降りないなら降りないで……こうしてやりますけどね!」
 その場で手に暗黒の月を生み出すと、闇は慧ごと『雑草』達を包む。しかし慧は傷ひとつなく、生命力を失った『雑草』達だけが『ケイィィ……』と断末魔の声をあげながら剥がれていった。
「悪いな、そっちは永遠に通行止めだ!」
 道から外れて逃げようとする個体をティンダロスに阻ませ、更にウェボロスを飛ばして縫い止めるマカライト。
『ジャラジャラァァァァァマカライトォォォォォォ』
「走らせ続けたら枯れるかと思ったが……それに付き合う方が大変そうだわな」 
 鎖に絡まってごろごろと転がる『雑草』を見下ろしていると、世界がイレギュラーズ達に呼びかけた。
「こっちは整ったぞ。さあ来い……ケーキの敵!」
「思いっきり仲間を呼んでね!」
 仕掛けを終えた世界の元へ、ミルキィが再び『雑草』を叫ばせる。
『キェアアアアアアカッチカチシフォォォォォォン』
 助けを求める仲間の元へ一斉に駆け出す『雑草』達。早すぎて足元が見えない。
 正直気持ち悪い。
「ブラックドッグ、いって……!」
 メイメイの神秘の力で呼び出されたブラックドッグが飛び出すと、軍勢の一匹へ噛みつく。別の方向へはエメスドライブの刃をすぐに飛ばした。
 しかし、それでも『軍勢』と化した『雑草』達は収まらない。
『メイメイポッチャリィィィィィ』
「してません、してませんから……!」
 攻撃するのと同じくらい、必死に否定するメイメイ。多分本当にしてないのだと思う。
「ろくなこと言わないなこの雑草……」
「構うか。残り全部ここに集めて足止めしよう」
 押し寄せる『雑草』達にカティアがマジックロープの縄を、世界がスケフィントンの娘の黒いキューブを飛ばし、少しずつ拘束を増やしていく。
『ウモウブトォォォォン』
『ヤァァァァイビンボークジィィィィィ』
「自分の羽で羽毛布団とか嫌すぎる……なんで理解できる言葉を喋るかな……」
 もしかして、この雑草はあのカフェバーのゲーミング店員が変な薬を捨てて発生した、魔法生物的なアレではなかろうか。カティアは訝しんだ。
 あと、絶対に彼にだけはこの雑草を渡してはならない、とも思った。

「そら、これでいけそうっすかね」
 慧がフロストチェインで『雑草』の1体を凍らせると、ミルキィは囮の『雑草』からホワイトハープへと持ち替えた。
「一気にいくよー! まとめて冷凍雑草ー♪」
 メテオジェラート――それはハープで奏でられるファンシーなメロディに合わせて、空から様々な味のジェラートが降り注ぐスイーツマジック。ミルク味、チョコ味、メープル味のジェラートがランダムで降ってくるという、なんとも夢のある、シュガーランドのパティシエらしい……巨大で、大分痛い、ジェラート成分が全く気にならない氷結メテオである。
「さぁ、一気に纏めて吹っ飛べ!」
 広域にわたって氷結された『雑草』達の足元から、世界が仕掛けた精霊爆弾が炸裂する。
『ビンボ――――クジィィィィィィィィィ』
 爆発四散していく『雑草』達が、最期の雄叫びをあげていった。

 爆発オチ、最高。

●スイーツマジック!
 精霊爆弾の爆発後も、念の為薬草園を見て回ったイレギュラーズ達。
 『雑草』の残党がいないことを確認して、晴れてご褒美のスイーツタイムである。
「いやーひと仕事終えた後のケーキとお茶は最高ですよ、えひひ、ひひひっ!」
 やはり笑顔が引き攣ってしまうエマ。しかし、今は本当に嬉しいし楽しいのだ。
「労働後のケーキ、期待してたんだから」
「へー、あの雑草がこんな美味しそうなケーキセットになるんだね!」
 ルツの台詞までは皆それぞれに配膳されるケーキセットを楽しみにしていたが、ミルキィの台詞で空気が少し変わる。
 このケーキ――名前はまだ無い――色としてはキャロットケーキのそれに近い。それでいて、紅茶ケーキのように黒っぽい何かが生地に散らばっているようだ。テオドール曰く、根だけでなく葉の部分も使ったとのこと。
 見た目も、香りも、全く悪くはないのだ。
 その原材料が、先程まで好き放題叫んで走り回っていたあれだと思わなければ。
「このケーキ……あいつなんだっけ……?」
「試食済みだ、食っても死なないから安心しろ。何ならあいつのゲーミング何とかの方が事故率は高いぞ」
 まじまじと見つめてしまうカティアに、釘を刺す店長。あいつとは、この店にいる不思議系困ったちゃん店員である。
「では、いただき、ます……!」
 期待に瞳を輝かせて、メイメイが一口食べる。全てはこの為に。雑草にポッチャリとか言われても頑張ったのだ。
「……甘すぎず。でも、お野菜、でもなくて。さっぱり……ミルクでも、コーヒーでも。お茶も、合いそうな」
 メイメイの好感的な食レポに、テオドールも僅かに表情を緩めた。
「なんであんななのに良い材料になるんすかね……料理の腕……?」
「……やっぱり雑草じゃねえよなこれ」
 慧やマカライトも雑草ケーキの味に驚きながらも、次々に口へ運んでいく。
「生きていて良かった……この時の為だけに俺は生きていると言っても過言ではない……」
 世界に至っては深く、深く溜息をついて、人生論にまで次元が飛躍していた。
 甘味が無ければ死んでしまう人種なのである。よくいる。
「あ、あとお持ち帰りできるか? 今夜の夜ご飯と明日の朝ごはん、昼ご飯、夕ご飯分、あとおやつ用に4つくらいと幾つか知人に分けたいから5個……これだけ用意してくれると助かるんだけど」
「それは……なにぶん試作品ですので……」
「あ、やっぱり無理? さいですか」
「……いえ」
 無茶振りの割りにあっさり引き下がった世界だったが、一度は断ろうとしたテオドールの方から待ったがかかる。
「そこまでお気に召して頂けたのです。お時間を頂ければ、ご用意致しましょう」
「まじか。言ってみるもんだな! 待つ待つ、余裕で待てる」
 上機嫌の世界。美味しいケーキがたくさん食べられて、しかも疲労回復に効く。これほど楽しいケーキタイムがあるだろうか。
「これだけおいしくて疲労回復効果があるケーキになるんだったら、この雑草もきちんと管理して栽培してみたら面白いかもしれないね!
 品種改良とかして他の薬草への被害をおさえれたら新しい薬草にならないかな?」
 その時は『雑草』ではなく、ちゃんと名前を付けて『薬草』のひとつとして。
 提案したのは、菓子に関しては本職でもあるミルキィだった。
「今のままだと、流石に栽培は難しいかもしれないけど……もったいない気がするんだよね」
「そうですね……私も、食べればここまで有用な草だとは思いませんでしたので。考えてみましょう。ご意見、有難く」
 丁寧に礼をするテオドールに、ミルキィも笑顔を向けた。

 次に来た時には新たな薬草ケーキと、少しは大人しくなったあの薬草が増えていれば嬉しい――そう願いながら。

成否

成功

MVP

ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ

状態異常

なし

あとがき

雑草の叫びを考えるのが楽しかったです(すみません)(土下座)
爆発オチってサイコー!!
ちなみに旭吉はキャロットケーキも紅茶ケーキも好物です。
次は改良型ゲーミングマンドラゴラができてるとい……よくない?

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