シナリオ詳細
たすけてー! 爆発オチしそうなのー!
オープニング
●海老たべたい気持ちが爆発した結果
「座長ぉぉぉ大変です! 主役とエキストラ達が全員、昼に海老を食べ過ぎて腹を壊して病院に――!!」
「なにぃぃぃぃぃ!!?」
幻想のバルツァーレク領の南に存在するトラフト領では今日、劇が行われる予定であった。それは周囲の子供達を招いての催しもので――幻想三大貴族が一角、バルツァーレク伯爵の支援もあって開催が決まったのだとか。
しかし当日開始三十分前に至って主役達が全員喰い過ぎでダウン。どうしても海老が食べたかったらしい。バカ! どうして我慢できなかったの! ともあれ一人二人ならまだしも全員となっては劇を行える様な体制ではとてもなく……
しかし。
「……という事態が発生してしまいまして、至急! 至急に依頼をしたいのですが……!」
「成程把握しました。近くに手の空いているイレギュラーズがいた筈ですので、連絡を取ってみますね」
ローレットの情報屋であるギルオス・ホリス(p3n000016)が偶々その場に訪れていれば、ローレットへの依頼となるのであった。急な形ではあるが――しかし依頼であればなんでも行うのがローレットだ。幸いにして頭数を揃える事も出来ると思考して。
「おおそれは助かります! バルツァーレク伯の支援もあっての劇であれば、とても中止にするのは憚られていまして……!」
「――ちなみにこの劇なんですが、一体どういう内容の劇の予定で?」
「ええ。本来の予定では人里離れた洋館が舞台でして、洋館の主人の妻が若い使用人と爛れた生活を送ってて、それを察知した主人が妻の首を絞めた上で殺そうとする――所を返り討ちにあって水槽での溺死に偽装されたあげく探偵役が訪れて最後は妻が地下に蓄えていた大量の爆薬を用いて爆破オチで終わるというサスペンス物の劇の予定でした」
「君達それを本当に子供達相手に見せるつもりだったの?」
こいつら正気かよとギルオスは思う。割と本気で思う、が。
「しかし飛び入りでは予定通りとはいきますまい! これよりはイレギュラーズの皆様に全てお任せしようかと……! ええ、もう劇としての体裁さえ整っていればなんでも構いませんので! ええ!」
こいつらやっぱり正気かよとギルオスは思うのであった。
……しかし考えようによっては劇をどういう風に導いても良い訳だ。アドリブかけまくっても問題ないだろうし、あれはあれ、これはこれと完全に縛られるよりは動きやすいかもしれない。多分。きっと。
勿論当初の予定通りの子供向けサスペンス物――サスペン、ス、物? 通りに進行しても良い訳だ。幸いと言うべきか、劇としてのセットは色々あるようで……多種多様な衣装や小道具が山の様に倉庫の方で見受けられた。
「まぁ色んな素材はあるようだし――なんとかなるんじゃないかなぁ」
ギルオスは依頼を受けるのを早まったかなと思考するのだが。
それでも子供達が目を輝かせて待っているのだ――なんとかするしかあるまいよ!
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/31160/1455fe8974773676829466004e600e64.png)
- たすけてー! 爆発オチしそうなのー!完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2020年10月29日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
『今日は劇を観にきてくれてありがとう! 是非楽しんでいってほしい!』
ついに迎える演劇開始の声。
子供達の歓声が挙がり、拍手と共に幕が上がる――そして始まるナレーション。
『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)の美麗なる声が響いて……
むかーしむかしある所に、心穏やかな少女である赤ずきんとはまた違う別の所に、過激共産主義者の一家が住んでいました。
この一家は公安の監視を日々回避しながら善良市民ヅラでご近所とも接していた者達で、表面上は実に穏やかな一家だったそうな。しかしついに――別の場所に潜伏しているお婆ちゃんに『ケーキ』(隠語)『ワイン」(隠語)を届ける計画の日が近付いていました。
そうです、今こそ共産主義の旗を掲げ革命戦争の引き金を引く日がやってこようとしていたのです。
そして計画の中心人物である彼女の名は『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。顔と名は割れていませんが、公安からも特級危険人物としてブラックリストに入っている『アカずきん』その人なのでした。
「それじゃあ行ってきますわねお母様! お婆ちゃんに『ケーキ』を届けに行きますわ!」
ずっと準備をしてきて意気揚々。節穴の公安共なんか目じゃありません。
火薬の臭いが充満している『ケーキ』を片手にいざ出発――しかしここで不足発生。『ワイン』の中身が想定よりも足りないのです。やむなし。『ワイン』は後で現地調達する事にしましょう。
――が。そんなアカずきんの行動を背後から眺める影が一つありました。
その人物は『壊れる器』リア・クォーツ(p3p004937)。
心穏やかな少女である赤ずきんその人――とは仮の姿。実際はアカずきんの疑いがあるヴァレーリヤを長年監視していた公安員・コードネーム『赤ずきん』だったのです。
アカずきんがヴァレーリヤであるという決定的な証拠はありませんでしたが、十年来友人として監視を続けていたリアだけはほぼ確信していました。奴の陰謀を暴く日は近い、と。
「どこへ行くつもりなのかしら……? そっちはお婆さんの家ではない筈……」
そしてアカずきんの不審な行動を目撃した赤ずきんはこっそりと尾行を続けます。お母さんである『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)からは――
『赤ずきんも14歳になったからといって、あんまりやんちゃばかりしちゃ駄目ですよ? 自分や身の回りにいろいろと設定を付けたがる年頃なのもわかりますが……あんまりオイタが過ぎると伯爵様に叱っていただきますからね?』
との言葉を貰っているが、アカずきんだけは止めねばならないのだ……! あと伯爵に告げ口するのはやめろぉ! ふぁっきゅー! え、ふぁっきゅーとか言うのもおやめさない? うるさい! 反抗期じゃない!!
ともあれ赤ずきんは薄暗い路地裏に入っていくアカずきんの監視を続けます。
彼女を止めなければ伯爵領に血の雨が降る事でしょう。
惨劇の回避の為――赤ずきんの戦いが始まったのです!
●
「いやいやいやこれ大丈夫かよマジで! まぁ打ち合わせ三十分しかなかったから仕方ねぇけどさ!!?」
劇が始まった裏の方にて思わず顔を覆うのは『ラウンドナイツ』モルドレッド(p3p008649)である。彼の出番はもう少し後、狼の着ぐるみを着込んで待機中だ。こっそり客席の方を見てみれば子供達はアカずきん達の設定を眼を輝かせて見て・聞いているが――いや大丈夫かよここの子供達も!
「なんかとんでもないところに来てしまったなぁ……でも子供達も楽しみにしてる上に依頼なら、ねぇ? まぁ僕は裏方に徹させてもらうけれど……あ、一応念の為結界だけ張っておこうかな」
「成程、興味深い戯曲だ。平時であれば屑籠にぶん投げてるところだが……今回は時間がなかったのだから仕方ない。狼の頭の中にダイナマイトを仕込まなければセーフとする。着ぐるみに仕込まれてないよな?」
「いやいやそんな暇あった筈が……あるわコレ――!! なんじゃこりゃ――!!」
額に手を当てながら保護結界を張り『万一』に備えるのは『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)でTrickyはモルドレッドの衣装を調査しながら仕込まれていたダイナマイト(音と光だけ)を回収する。誰だこれ仕掛けたの!
「え、駄目でした? 最後に狼を爆発させてアカずきんと赤ずきんを道連れに全てを血に染め上げるハッピーエンド展開をすれば子供達にもウケが取れるかと思ったんですけれど。ねぇ仕込みましょうよ、ねぇ。そうしたら最後の劇を爆破するという当初の予定通り――え、違う?」
『逆襲のたい焼き』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)の仕込みだった! 彼もまた場面転換に応じてセットの変更を試みる裏方の一人。ハリボテの草木や華、家、家具っぽいものをあちらこちらに急速展開。こういうのはスピードと人手が大事です。
しかし爆破はともあれこれは本当に赤ずきんなのか……?
「森の中で一人暮らす老婆と、森の入り口に暮らすその娘と孫……これって姥捨て山なのでは……いやケーキを届けに行く設定があるのなら、そういう訳ではないのでしょうか……? しかし、いや……今考えるべき事ではありませんね」
「ハハハ然り――後はなるようになれ、だ」
赤ずきんの母を演じ、そして続いてお婆さん役の衣装に着替えている瑠璃。赤ずきんの元々の設定からしてなんか、こう、思う所はあるが……しかし劇は着々と進んでいる。今は気にしてる暇はないとTrickyは言うものだ。
しかし依頼を受けた三十分前はまさかこんな事になるとは思ってもいなかった。
『演劇を愛し、演劇に愛されたこの美天使に任せたまえ。さぁ諸君、何を演じたい。
君達の望むままにすると良い――俺はその願いを、必ずやかなえてやろう』
そんな事を言ったのが三十分前の会議段階。
正直Trickyは迂闊な事を言ってしまったな、と若干後悔していた。
●
路地裏を抜け、森の方へ近くなったアカずきんは一つの家を見つけます。
ノックの代わりにメイスを一閃。扉を半壊させたアカずきんは土足のままに家に乗り込んで。
「お、おお!? よう! 赤ずきんちゃ……ん? えっ、なにこの赤ずきんちゃんクッソ眼光鋭いんですけど」
「おらっ、お久しぶりですわね『狼』様! 要件は察しておりますわね――ジャンプなさい! 私が誰だかわかっておりますわよねぇ! 隠せば貴方も、貴方の家族もタダでは済みませんわよ!?」
「や、やめてくれアカずきん! ウチは以前失敗した蜂起騒動の時に公安にマークされてて、協力したなんて事が奴らに知れたら……!」
「知ったこっちゃありませんわ。どうやらご家族の身で実演しないと分かって頂けないようですわね?」
やめてくれー! 子供は、子供だけは――!!
アカずきんの足元に縋る狼さん。そう、狼さんはかつてアカずきんの同志だったのです。
革命には先立つ物も必要……『ワイン(軍資金)』が必要であればと家の中を荒らすアカずきん。壺が割れ、戸棚が荒らされさぁ大変という時に――
「イヤァァァ――!! た、助けて狩人さ……」
「――呼んだか?」
現れたのは一人の狩人でした――彼女は『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)。付近の森に住まう凄腕の狩人にして、フードのついた赤いマントを身に纏うその姿から――近くの村の人からは『レッドフード』と呼ばれていた第三の赤ずきんなのです。
暴虐を振るうアカずきんの治世。狼さんはレッドフードに希望を見ますが――
「少女よ。そのような探し方は体力の消費が激しい――狼の口に銃口を舐めさせた方が早いぞ」
「成程的確なアドバイスですわね!!」
「ちょっと待てぇぇえええ!! アンタもか――い!!」
状況一転。レッドフードは狼にマスケット銃を突きつけながらアカずきんと一緒になって狼を脅しつけます。実は歴戦の退役軍人でもあったレッドフードからすればたかが狼一匹なんぞ目じゃありません。
「悪者からはいくらふんだくってもいい。この世界はそういう風にできているのだ。ほら、もっとあるだろう? 目を逸らすな。鉛玉が欲しいというならそう言え。たっぷりとあるから一つぐらいくれやっても惜しくはない」
「アッハイ……すみません……こちらワインであります……お収めください……」
震える狼さんに『初めからそうしておけば良かったのですわ!』とアカずきんは笑顔満点。
こうしてアカずきんはワイン(隠語)を手に入れ、レッドフードもワイン(隠語)を手に入れハッピーになったのでした。しかし流石は伝説の軍人だったレッドフード。アカずきんの荷物から微かに火薬の様な臭いがする事に気付きました――
が。
「今の時期だから爆破解体でもするのだろうなぁ……」
華奢な少女だがきっと解体業者なのだろうと見逃して。
後に残ったのは――すすり泣く狼さん一人――
「これは……一体なにがあったんですか!? まるで邪知暴虐な連中にカツアゲされたかのような……!」
その時現れたのは赤ずきん。襲撃されている場面と思いドロップキック一閃。
ただでさえ壊れていた扉が完全にぶち壊れるとともに――狼さんの前へと。
「よ、良かった……! 本物の赤ずきんちゃんだ! なんかやたらとアグレッシブだけど赤ずきんちゃんだ! た、助けて下さい実は……」
「あ、ごめんなさい狼さん。ここにあの馬鹿――もといアカずきんが来ませんでしたか?」
「ヒッ! ま、まさかアカずきんさんの知り合いとは! こ、ここここれがお探しの最後の『ワイン』です、見逃してください! 他はもう全部アカずきんさんに渡したんです――!」
「……この紙袋がワイン? ふぅん?」
中を一瞥した赤ずきんは怯える狼を置いて外へと出ます――そして公安へ連絡を取り狼を密告。やがて彼は逮捕されるでしょう。尤も、この後狼さんがギリギリのタイミングで家からこの後脱出するのですが――その辺りのアクションシーンはまた今度。
●
「……これなんですが。原型は赤ずきんじゃなくて、レッドキャップに襲われた村の悲劇を描いたものだったりしませんか? え、違う? そうですか、信じましょう」
「えっさらほい、えっらさほい。もうすぐラストシーンですね」
瑠璃は進行する赤ずきんの劇に歴史的なモノを感じるが、気のせいだと思う事にして。
同時、駆けまわるベーク。この後は想像通りだと多分凄い事になるのでエフェクト必須だ。
ハリボテの中に隠れて観客からは見えぬ様に縦横無尽に駆け巡っている。見えない所での努力が劇を進行させているのだ……! あ、でも籠の中だけは勘弁してくださいね。変化しなおせなくなったら大変な事になるので!
「ああ……全く、色んな意味で喉が枯れそうだ……なんだこの劇は……そしてなぜ好評なのだ」
Trickyが感じているのは客席から聞こえる『アカずきん頑張ってー!』『レッドフードかっこいー!』『赤ずきん、狼さんを始末してー!』とかいう歓声ばかりだ。いや歓声だったか今の?
まぁ、いい。どんな展開だろうが劇であり、客も求めているのであればやり遂げるのみ。
ここからが最後の展開。
お婆さんが狼に食べられ、赤ずきんや狩人によって解決する場面だ……!
「アンタがアカずきんの祖母だな……! アカずきんの所為で俺の人生、いや狼生はもう滅茶苦茶だ! ――復讐させてもらうぜ!」
「ああ、そんな。まさかアカずきんの振りをしてやってくるだなんて……! ドアを開ける前にのぞき穴からきちんと確認していればよかった。これを見ている子供達の教訓になれば……!」
瑠璃はあえて子供達にも分かりやすい様な平坦な口調で言葉を紡ぎ――物質透過を用いてベッドの下へ急速避難。まるで消えたように、或いは食べられたようにも見えるだろう。
……良かった……真っ当な人だ……ッ!! ちゃんと教訓とか挟んでる……ッ!!
狼役のモルドレッドはさっきまでの赤ずきん共があんまりにもあんまりだったのでつい本気で泣きそうになった。さて、ここからは祖母の振りをして赤ずきんを騙す場面だが……
「――アカずきんよ。ケーキとワインを持ってきているの。戸を開けて」
思わず声だけで震えそうになる狼さん。しかしここは勇気を振り絞ります。
なお、ケーキとワインとは隠語にして、お婆さんと取り決めていた合言葉でした。敵は公安だけではありません――そう。この国の闇を担う秘密警察共の耳も掻い潜る必要があったのですから。奴らはオフラーナとも呼ばれる狩人集団……捕まった同志は帰ってきませんでした。
「おや……アカずきんかい。今日は一体……」
「ええ――約束のブツは用意致しましたわ。これで肥え太った薄汚い資本家の豚どもを爆破なさい。まさか、今さらできないとは言いませんわよね?」
「いやちょっと待って!? ソレなんの取引!? 何の話、ねぇ!?」
アカずきんが持ってきた袋はやけに重いものでした。そう、爆薬が大量にあったのですから!
しかし同時――取引の現場に踏み込んできたのは赤ずきん。
扉をまーたドロップキックでぶち破ってふぁっきゅー思考で視線一瞥。
「って、おい! なんだその爆弾と金は! 目を離した隙に色々取り揃えてなにやってんだ!! おい、ヴァカずきんてめぇ!! いくら何でも子供の教育に悪いだろーが!!」
したり顔のアカずきんの顔を見て赤ずきんは悟ります――ああアカは説得出来ないと。
彼女(ついでに狼)を放置すればやはり大きな犠牲が出るでしょう。
――彼女は本来の任務を遂行するしかなかったのです。故に火炎瓶を取り出し。
「貴女の凶行を止められなかった、あたしにも罪はある。
だから、せめてこのあたしも一緒に逝ってあげるわ」
いい事? 子供達。
いつか、貴方達にも大切な人が悲劇の道を歩もうとする日が来るかもしれません。
だから、隣人を愛して生きなさい。
誰かの悲しみを止められるのは、貴方達ひとりひとりの思いやりよ。
それを胸に刻み……まっすぐ優しい人に育っていってね……
「やだー! 赤ずきん死なないでー!」
「アカずきーん! 資本家の豚共を吹っ飛ばしてよ――!」
「えーん、えーん!」
赤ずきん達の必死の演技に子供達も感極まってるようです。(by. Tricky)
『大丈夫大丈夫ー、なんとかなるって! 伯爵も笑って許してくれるはず。
さぁみんな! 俺と一緒に赤ずきんの最期を応援しよう!!』
もうなる様になれとTrickyは囃し立てる。演劇が完成する為ならば喜んで死のう!
「待て、こんな所で火炎瓶なんぞ使えば全員吹っ飛ぶぞ! 落ち着くんだ!」
だが決着の前にオフラーナのレッドフードも介入。
マスケット銃を突きつけながら、場を制止せんと。
「そんな事をすれば事態が大きくなって公安と言えど隠蔽できまい。アカも事態が大きくなるのは望まない筈だ――落ち着くんだ。どうせ殺るならもっと静かな所で跡形も残さないのがコツだ。爆薬を腹に詰め込んで炸裂させるのがお勧めだぞ。沈めただけでは生き残るかもしれんからな」
やけにリアルなアドバイスを紡ぐ。一方そんな様子を見ながら裏の方では。
「いやなんのアドバイスなんだアレ……状況がカオスになってるだけでは?」
「まぁいいんですよ! とにかく爆薬のルートに入り込んでしまえばオチを付ける事が出来ます」
「うーん成程……ところで爆薬の量って上手く調整したんだよね?」
「えっ?」
「えっ?」
全ての準備を整え終えた世界とベークが会話を、会話を……していたら嫌な事に気付いた。
あれ、爆薬の量これであってますか……? いやなんかこれ多くない……?
不穏な台詞が裏の方で並び、しかし劇はもう止まらない……!
「この世の資本家共を血祭りにあげるまで、くたばるわけにはいきませんわ! 子供達の応援が私に力を与える! 貴女こそ死になさい!! どおおりゃあああああ!!」
「この分からず屋のアカずきん野郎――!! そいや――!!」
「よせ――! 爆発オチするぞ――!!」
「俺だけはせめて助けてくれ――!!」
はたして一番早かったのはアカずきんの反撃か、火炎瓶を放るのか。
銃の引き金か、狼の悲鳴か――
「――悪乗りしてた皆様、公演後の打ち上げで酒が飲めると思わないでくださいね?」
全てを悟った瑠璃がやけに怖い笑顔をその顔に貼りつけながら。
直後。ステージの上が全て吹っ飛んだ。
万が一にと設定していた世界の構築により、舞台と客席にはガラスが張られていた。故に子供達は無傷。凄まじい爆風と光が輝いて――
「おわぁぁぁぁぁ!? 結局爆発オチかよォォォ――ッ!!」
最後には天高く狼が吹っ飛んでいく様が――視えたとか見えなかったとか。
●
演技は盛況に終わった――どうして――
「ふっふっふ、これで我がクラースナヤ・ズヴェズダーのイメージアップは間違いなし! 入信者も続々! 溢れる酒代、毎日朝まで宴会……えっ、危ない人の印象しか残りませんでしたの? どうして……」
ヴァレーリヤは心底不思議そうな表情をするが、危険人物以外の評価がどうして付くというのか。見に来ていた同志マカールが凄い顔をしているが、そこはマカールなのでまぁいいや。
「こんなこともしてるんだな……イレギュラーズ。うん、よかった。面白かったよブレンダ」
「なっ、シルト殿!? 来て、どころか見ていたのか!?」
演劇が終わった後の空気の中ブレンダに会いに来たのは彼女の知り合いにしてバルツァーレク派の貴族のシルト・ライヒハートだ。ブレンダとは知古の間柄であり……
「ああ実は伯爵様もお忍びで来ているという話があってね――この後挨拶に行くつもりなんだ」
シルトの口から凄い事が語られれば『えっ!?』という表情をしたシスターが一人いたが、実際本当の話かは、どうだろう。追及しない方がいいかな……ともあれ挨拶であれば自らもと。ブレンダはシルトと共に歩み出して。
「……一応劇の内容をメモリア・クリスタルで記録しておいたけれど……
これはもしかしたらまた演劇が在った時にでも何かの役に……立たないな、うん」
一方で世界は記録していた水晶玉を見るが、どう役立つかさっぱりである。うん、うん……
――しかし子供達に見せる演劇、か。
随分と、己が知っている赤ずきんとは異なった気がしたが。
「……あの子に見せたらどんな顔をしたでしょうね」
瑠璃が想起するは『いつか』の話。
もしかしたら。こうであったかもしれない。
そんな『もしも』の話。ただの感傷と言える……一幕。
「さ、戻りましょうかね」
ともあれ依頼は終わった。ローレットへ帰還するとしようか。
子供達の笑顔は守られたのだ。うん――そうだと信じよう!
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
赤ずきんってこんな感じの話だった気がしますね!! 信じろ。
ご参加ありがとうございました!!
GMコメント
■依頼達成条件
『演劇』を開催して、とにかく終わりまで完遂させる事!
■フィールド
幻想国内、バルツァーレク領の南に存在するトラフト領。
その一角の館の大広間で演劇を行って頂きます。
当初の予定だと『人里離れた洋館が舞台で洋館の主人の妻が若い使用人と爛れた生活を送ってて、それを察知した主人が妻の首を絞めた上で殺そうとする――所を返り討ちにあって水槽での溺死に偽装されたあげく探偵役が訪れて最後は妻が地下に蓄えていた大量の爆薬を用いて爆破オチで終わるというサスペンス物の劇』の予定でした。マジで。
しかし主役たちが謎の呪い(海老の喰い過ぎ)に掛かってしまい、ダウン。
依頼主は『内容を変更してもらって構わない! 完遂してください!』と懇願してきました。その為、基本的に何をしても構いません。当初の予定通りでもいいですし、或いは白雪姫とか赤ずきんとか有名なモノでもいいでしょう。もしくは全員……総アドリブでも……ええ……
全員役者である必要はありません。裏方役とかがいてもOKです。
■トラフト領の子供達。
劇を楽しみにして来た子供達です。たくさんいます。
皆どんな話が行われるかは知らないようです。
でもめっちゃ楽しみにしてます。めっちゃ楽しみにしてます!! めっちゃ!!
■ガブリエル・ロウ・バルツァーレク
遊楽伯爵と呼ばれる幻想三大貴族の一人です。
今回の劇の支援者。多分来てません。たぶん。
■衣装やら小道具やら
なぜこんなにあるのか不思議ですが、色んなものがあります。貴族風の衣装であったり、銃(レプリカ)であったり、練達風の近未来的な衣装だったりと……とりあえずなんか探せばお望みのモノが見つかりそうな雰囲気です。
ので、必要そうな小道具はその場で取りそろえる事が出来るでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はEです。
プレイングによって全てが決まります。グッドラック!!
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