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シナリオ詳細

秋だ! 野球だ! 練習試合!! VSふくよか再生ポークス!!

完了

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●野球対決!!

 ――野球!! Baseball!!

 それは、白球を追う筋書きのないドラマであるという。
 それは、チームワークの球技であるという。

 競技人口の多いメジャースポーツであり、練達に再現性東京が出現したことにより、さらに混沌にも広がっている。
 野球の試合もすでに行なわれ、いくつかチームも結成された。

「野球だ、野球をするんだブ――」

 野球というスポーツをするのは、人間だけに留まらなかった。
 オークたちも、この野球をやるようになった。
 かつて、オークたちは山海ポークスを結成してイレギュラーズとプリンセスを賭けて混沌ハムファイヤーズと戦った。
 あえなく敗北したが、彼らは復讐の機会を待っていたのである。
 そして、ついにその時が来た。

「あのプリンセスが、再現性東京にいるらしいんだブ」
「おお、リベンジだブ! あのときの雪辱を雪いでやるんだブ」

 オークたちが結成した山海ポークスが戦力として申し分はなかった。
 しかし、打順とかオーダーとかに難があり、抑えの切り札として用意していた姫様をロングリリーフで使ってしまったことも敗因であった。
 だからこそ、所属選手たちのトレーニングやオーダーも見直して再生を目指し、チーム名も変更した。
 名付けて、“ふくよか再生ポークス”――。
 彼らは、かつて所属していたプリンセスを引き戻そうと練達の再現性東京に向かうのであった。

●迎え撃て! 希望ヶ丘学園の球児たち!!
「野球オークたちからの練習試合ですって!?」

 『星詠みの巫女』小金井・正純(p3p008000)は、声を上げて驚いていた。
 希望ヶ丘学園・新野球部からすると、練習試合は願ってもないことである。
 しかし、そのチームは野球オークたちで結成された“ふくよか再生ポークス”というチームだ。
 しかも、その条件が普通ではない。

「もし、希望ヶ浜新野球部が負けたらわたくしが移籍するという条件なのです」

 そう、再生ポークスは、もし自分たちが勝利しなら、新野球部が結成される要因ともなった野球大好きプリンセスの無償トレードを要求してきたのである。
 普通に考えれば、そんな条件で試合を受ける必要はない。
 ただが練習試合である。そんな条件を拒否して受けなくったってよい。
 しかし、今希望ヶ浜ナインは受けざるを得なくなったのだ。

「どうして勝手に承諾しちゃうんですかぁ~!?」
「だって、練習試合をしたいって小金井さんもおっしゃっていたものですから……」

 プリンセスが自分の一存で受けてしまったのである。
 なんということであろうか。
 引くに引けない状況とはこのことだ。
 
「でも、皆さんならあんなブクブクに太った豚さんたちには負けないと思うのです!」

 プリンセスは強気である。
 そのうえ、なんかチームメイトも焚きつけている。
 どっちかというと、白熱した試合をやりたいという思いが強かったんではないだろうか?
 しかし、今は詮索している場合ではない。
 練習試合に、とんでもないものがかかってしまった。

「しかないですね。メンバーを集めて受けて立ちましょう!」

GMコメント

■このシナリオについて
 皆さんこんちは、解谷アキラです。
 食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋です!
 というわけで、野球EXシナリオとなります。
 スキルやギフトを駆使してオークたちとの練習試合に勝利しましょう。なお、負けると姫様は移籍します。
 野球のルールについては、我々の知る野球そのものです。
 しかし、イレギュラーズがその力を発揮するとマンガ的野球となるでしょう
 基本的に、攻撃と防御は戦闘に準じる処理とします。
 募集人数は12人としますが、控えにも出場機会が回るよう調整いたします。希望があれば監督、コーチ、応援になります。
 また、姫様は選手として参加しますが、抑えピッチャーを希望しています。
 姫様は試合に出場する気満々でいますが、出さなくても構いません。采配には従います(しぶしぶですが)。


姫様ピッチャー
右横投げ右打ち
1勝3敗4S 防御率2.54

▼ふくよか再生ポークス
 ちなみに、ふくよか再生ポークスの先発オーダー、成績は以下のとおりです。

1.オークファースト
右投げ右打ち
打率.281 本2

2.オークショート
右投げ右打ち
打率.267 犠打7

3.オークサード
右投げ右打ち
打率.3 本3

4.オークレフト(キャプテン)
右投げ右打ち
打率.311 本6

5.オークライト
左投げ左打ち
打率.278 本2

6.オークセカンド
右投げ左右打ち
打率.220 犠打4

7.オークセンター
右投げ右打ち
打率.221 本2

8.オークキャッチャー
右投げ右打ち
打率.231 本4

9.オークピッチャー
右上投げ右打ち
打率.187
7勝3敗 防御率3.11

控え.オークリリーフ
右上投げに右打ち
1勝0敗6S 防御率1.73

控え.オーク代打(センター)
左投げ左打ち
打率.259 本3

 オークたちの打順、成績はあくまでも目安としてのものです。野球っぽいプレイングであればなるべく採用いたします。
 参加者で事前に相談し、スターティングメンバーの打順、ポジション、交代のタイミングが揃っていると揃っていると試合は有利に進みます。
 ポジションのかぶった場合、GM判断で調整します。
 今回は、試合に出場しないベンチの控えもありとします。
 監督やコーチの場合、作戦指示は優先して採用するかもしれません。
 応援を希望する場合、いろいろ頑張ってください。
 それでは、参加をお待ちしています。
 試合後になんかしたい人は、その旨もプレイングに書いておいてください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 秋だ! 野球だ! 練習試合!! VSふくよか再生ポークス!!完了
  • GM名解谷アキラ
  • 種別EX
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年11月08日 22時15分
  • 参加人数12/12人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(12人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
秋月・キツネ(p3p000570)
でっかいもふもふ
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
スティーブン・スロウ(p3p002157)
こわいひと
Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)
シュレーディンガーの男の娘
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
目的第一

リプレイ

●プレイボール!!
 再現性東京、希望ヶ浜学園に、ふたつの野球チームが集まった。
 一方は、希望ヶ浜学園の生徒、関係者たちによって結成された“希望ヶ浜ノーブルズ”。
 かたや、オークたちで結成された“ふくよか再生ポークス”。
 先攻は再生ポークス、後攻はノーブルズとなる。
 では、それぞれのスターティングメンバーを見てみよう。

●ふくよか再生ポークス
1.(一)オークファースト
2.(遊)オークショート
3.(三)オークサード
4.(左)オークレフト
5.(右)オークライト
6.(二)オークセカンド
7.(中)オークセンター
8.(捕)オークキャッチャー
9.(投)オークピッチャー

●希望ヶ浜ノーブルズ
1.(遊)『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)
2.(一)『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)
3.(左)『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
4.(三)『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)
5.(中)『焔雀護』アカツキ・アマギ(p3p008034)
6.(二)『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
7.(右)『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)
8.(捕)『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)
9.(投)『でっかいもふもふ』秋月・キツネ(p3p000570)

 これに、ポークスは控えピッチャーで登録されているオークリリーフが。
 ノーブルズは『宿主になってね』Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)、姫様と二名の控え投手を有し、投球リレーが可能な布陣に加え、代打で『たんぱく質の塊』マッチョ ☆プリン(p3p008503)を要する。
 試合会場は、河川敷の希望ヶ丘球場である。

「ファイヤーズが嫌いになった訳ではないんです。けど、それ以上にノーブルズがあたしを評価してくれた――」

 試合前、ノーブルズの正捕手となったフランは記者会見でそう語った。
 アンチや古参ファンからは一種の畜生発言とも取られかねない一幕であるが、さらなる飛躍を求めてのフランの発言には残当の評価を下す者たちも多かった。

「あたしはノーブルズに骨を埋める覚悟だよ!」

 その心意気は、球場に集まった混沌野球ファンからも期待されている。
 試合開始時間は13:00、よく晴れた空の下での対戦であった。
 さて、ノーブルズはまずベンチ前で円陣を組んで試合への意気込みと士気を高める。

「一緒に移籍した人も、このチームの先輩たちも、前は敵だった姫様も……一緒にがんばろ!」
「名誉生え抜きの姫様に、ノーブルズを出る喜びは教えさせないわ」
「姫様の処遇はともかく、勝負事には負けたくねぇ。悪いが、気合い入っているぜ」
「さぁ、鉄球による右打ち特訓の成果を見せる時だ!」
「そうだ、ポークスには負けられねぇ! 球界の覇者は俺たちだ!」
「疼ク、疼クゾォ……! オレノコノ身ニ宿ル力ガ、コノ戦ニ名乗リヲ上ゲロト訴エテイルゥ……!」
「神がそれを望まれる」
「それじゃあ気合い入れていきましょう!」
「希望ヶ浜ノーブルズ――ふぁいっ!」
「おー!」

 掛け声とともに、グラウンドに向かう。
 皆、この日のために新調されたユニフォームに袖を通し、選手として仲間たちと整列する。

 闘志みなぎる両チームは、お互いの前に立った敵選手とにらみ合う。

「ブッフッフッ、オレたちが勝ったら姫様は無償トレードでいただいていくぜ」
「プリンセスさんの無償トレードなど認められません。この試合、負けられません」
「リベンジマッチってやつか……上等だぜ。へっ、俺たちの層の厚さを舐めんじゃねえぞ」

 敵チームのキャプテンであり、四番を務めるオークレフトと睨み合った正純と千尋がさっそく火花を散らす。
 練習試合とは言え、ノーブルズ結成のきっかけともなったプリンセスの無償トレード、さらには混沌ハムファイヤーズ時代の因縁までもある。俄然、盛り上がってくるのだ。

「プレイボール!!」

 審判の試合開始を告げる声が高らかに響き渡った。

●両チームの立ち上がり ~序盤戦~
「へぇ、テレビって奴で見た事はあるが。これが野球か、たのしそーじゃねーの」

 河川敷の観客席に座って観戦するのは、『こわいひと』スティーブン・スロウ(p3p002157)である。
 何を隠そう、希望ヶ浜ノープルズのユニフォームをデザインしたのは、彼である。
 女子のユニフォームは、スティーブンがTVで見たというソフトボールを参考にしており、特に女子のユニフォームはハーフパンツとなっている。
 チーム名をロゴにし、ティアラを被った猫をチームのマークをあしらったものだ。
 さて、マウンドには先発のキツネが立っている。
 キツネの人間フォルムは長身で豊満な女性の姿で、もふもふの尻尾が特徴だ。

「野球の時間よ! ……って、初実戦で先発任されちゃったわね……」

 実は、キツネは試合での初登板となる。
 一応、野球の知識はあり、フィジカルにも恵まれていた。
 あとは、投げ込めばなんとかかる。

「ぶっふっふ、さこーいだブ!」

 一番、オークファーストはここ最近の試合では.281、本塁打2となかかなの成績を残している。
 右バッターボックスに入り、投球を待ち受ける。

(……とはいえ、情報はなかったんだブ)

 キツネの情報は、シャットアウトされていた。
 試合経験がないということは、情報が得られないということでもある。
 おまけに、オーダーを組んだ正純が情報の隠蔽工作を行なったため、どういう球を放ってくるかもわからない。
 ピッチャーキツネ、振りかぶって、一級目を投げた!
 腰の回転を活かし、もふもふの白い尻尾を振りながらの右横手から伸びるサイドスローである。
 ずばっと切れのあるシュートがインコースに食い込んでくる。
 オークファーストも思わずのけぞって、ストライク!

「ナイスピー!」

 メガホンを構えたスティーブンの応援が飛んだ。

「…………」

 長い腕による角度のあるサイドスロー、初球からインコースに決まるえぐるようなシュートにオークたちも目をみはる。
 塁に出るのが仕事の一番バッターとしては、これはやりにくい。
 おまけに珠の出だしが白い尻尾と同化して見えづらい。某大リーグボール一号のような魔球理論である。
 二球目、インコースの懐に入り込むストレートで仰け反らせるボール。
 三球目は、アウトコースに逃げるスライダーだが、これに振り遅れてファール。

「ヘイヘイ! バッタービビってるー! 女騎士だぞ怖くねぇのかー!」

 ここぞとばかり、スティーブンの野次が飛ぶ。ノーブルズ一塁には防御と守備に優れたレイリーがおり、思わず意識したオークファーストも苛立ってしまう。
 カウント2-1、投げる球はここで勝負のストレート! オークファースト、振り遅れて1塁側へのボテボテのゴロ、それでも走る! しかし、落ち着いてセカンドのイーリンがさばいて一塁のレイリーに送球し、フォースアウト!

「OKOK、もっと思いっきり投げていいわよ」

 ファーストのキャッチングが上手いと、内野の安心感も大きい。
 しかし、オークファーストもゴロに倒れたがダッシュは早く、パワー打線だったポークスも機動力を磨いたようだった。
 続く二番打者、オークショートが打席に入る。
 キツネ、シュートでインを攻め、ストレートを放った後の三球目は超スローボール。しかし、体制を崩すもバントの名手であるオークショートは、バットコントロールでなんとかこれをカット、ファールとなった。緩急をつける硬軟自在のピッチングである。
 四球目は一級外してカウント2-2、5球目はストレート!
 しかし、これをうまーく身体を畳んで流し打ち、一二塁間を抜けるライト前ヒット! 義弘が飛び出して捕球したので、走らず一塁に留まる。

「ぶっふっふ、サイドスローは姫様相手のバッティング練習で慣れてるんだブ」

 出塁したオークショートはどんなもんだと笑って言う。
 姫様は、ポークスに捕らえられて野球に目覚めており、キツネ同樣エグいサイドスローピッチャーである。
 ポークスも、まったく手が出ないというわけではない。
 キツネ、ランナーを一塁に抱えて3、4番のクリンナップを迎える。

「さっ、こーい!」

 オークサードに対し、キツネ投げた! 初球はインローのストレート! ストライクゾーンをわずかに外れボール。
 二球目は外角に振るスライダーだが、これもボール。
 ボールカウント先攻で低めのストレートが決まってアウトカウントを取る。続いての四球目シュートは、あてられるも右に切れてファール。
 ボールカウント2-2、ここでリーディングによってバッターの心理を読むキツネは、ストレートに絞ったのを見越して消える超スローボール!
 扇風機のようにバットが空を切って三振に討ち取った。
 さすがキツネだけあって、化かすのは得意である。
 続いて、4番レフトのオークレフト。
 打率も本塁打も多い強打者である。

「やるんだブ、あのピッチャー……」
「あ、この前負けたオークさん。前はインに弱かったよね、キツネさんのインは……ううん、なんでもないよ」

 ここで、キャッチャーのフランが悪辣な囁き戦法である。
 インコースを攻めるキツネをリードし、あえてインを意識させるのは打者を大いに惑わせるものだ。

「相変わらず鬱陶しいんだブ……」

 ほわわーんとニコニコしているフランだが、カリスマを含んだ囁き戦法はキツネのインコース以上にえげつない。
 そして放られるのは、真ん中高めのストレート!
 意識の分、振り遅れてバットはボールの下を叩いてしまい、打球は高ーくセンターに上がる。

「オーライオーラーイ」
「そっち行きましたよ―、アカツキさん」
「任せたぜ、センター」
「ほい、キャッチなのじゃ」

 センターのアマギ、下がってキャッチして一回の表は終了である。

            *            *            *

 続いて、一回裏ノーブルズの攻撃である。
 1番バッターは、ショートしにゃこが立つ。

「一番ショート! 超絶美少女しにゃこちゃんです!!」

 左バッターのしにゃこは、元気がいい。しかも可愛い。
 獣耳が出るようにした特注ヘルメットも、あざとい感じだ。

「ブフッ、野球は遊びじゃねえんだブ」

 マウンドに上ったオークピッチャーは、吐き捨てるように言った。

(はっはーん、1番目がこんな野球の“や”の字も知らなさそうなチャラチャラした美少女で安心してますね?)

 しにゃこは感じた、相手がこちらを舐めていることを。

「フレェエエエエイ! フレェエエエエイ! 希望ヶ浜ッ!」

 スピーカーボムによるマッチョ☆プリンの応援が球場に響き渡る。
 そんな中、しにゃこが駆け引きを仕掛けていく。

「ファイトダ! ファイトダ! ノーブルズッ!」

(……簡単にアウトが取れそうな打者が来たら、まずストライクを取りに来るはず!)

 それが投手の心理というものである。
 立ち上がりは、ぴしゃりときれいに抑えて仕上げたい。そうして試合の主導権を握りたいはずだ。
 オークピッチャー、おおきく振りかぶって、投げた!
 真ん中高めの剛速球である。
 しかし、これにがつんと当てるまさかの初球打ち! しかもフルスイング!
 打球はセンター方向に伸びていく、伸びていくが途中で失速してフェンス際でセンターがキャッチ! パンチのある打力も、ストレートの球威に押された形である。
 初球アウトだが、長打力もある可愛い核弾頭として相手の肝を冷やす役目は果たした。

「うおお、すげーな」

 観客席のスティーブンも感心した。
 続いて、レイリーが打席に立つ。
 この試合前、彼女は鉄球を打ち込んで打力をつけたという。
 しにゃこが出塁できない場合、2番バッターの仕事は、塁に出ることだ。
 オークピッチャーは、しにゃこの初球打ちで力勝負を警戒するかもしれない。
 外角ストレートで様子見し、カーブを放ってカウント1-1。そして3球目は急速の早いフォーク! これはレイリー、手を出さなかった。

「ここで手を出さないのは、ピッチャーにとっても嫌なバッターですわ」

 ベンチのプリンセス、思わず呟き、これにAliceも同意する。
 変化球に釣られないバッターというのは、嫌なものである。
 しかし、オークピッチャー、顔色を変えない。
 そして投げたのは、スライダーだ。
 その逃げ際を、レイリーは右打ちを意識してカンっと叩く。
 打球は、1-2塁間を抜けてシングルヒット! これでクリンナップに回ってくる。

「さあ、新打法をお見せしましょう!」

 3番レフト正純が打席に立つと、河川敷の観客席から声援が飛び、ベンチのマッチョ☆プリンもスピーカーボムで声を出していった。

「プリンッ! 魂ッ! ミッセルノダァ! マッチョオオオオッ!」

 一塁にいるレイリーを帰す長打での初回得点、あるいは四番に回したいところ。
 オークピッチャー、振りかぶって投げた! 正純、なんと伝説の一本足打法!
 しかし、打つ気満々の正純の気勢を交わす真ん中低めのフォークをフルスイングして豪快な空振り。
 剛球投手だったオークピッチャー、再生前の投球を反省して変化球での組み立ても研究したようだ。

「もう打ち込ませやしないんだブ……」

 しかし、正純の一本足打法は警戒に値する。
 伝説的ホームラン王のフォームは、それを支える強い下半身と日本刀を用いた武道をも取り入れて完成されたと言われている。
 それをモノにしている正純は、相手にとって不足なしといったところであろう。

「なるほどこれが絶対領域……」

 一本足打法によって強調される眩しい太ももに、思わず唸るスティーブンであった。
 続いて第二級、インハイのストレートを放った。
 正純は身を引いたが、ストライクゾーンはかすめている。
 思った以上に伸びてきたのは、球威があるからだ。
 三球目、スライダーはバットの上にあたり、後方へのファール、しかし徐々にタイミングは合ってきている。

(甘い球はフルスイングです……!)

 気合十分、そんな正純に対し――。

「……あっ!」

 ここで、渾身のストレート! 大きなフォームではついていけず、バットはボールの下をくぐっての三振に打ち取られた。

「うーん、やられました。速いですよ、あのピッチャー。レイリーさんを帰してあげてください!」
「わかってるって。任せな。ほら、とっとけ」

 スパイクにヤスリをかけた千尋が正純にスポーツドリンクを渡し、バッターボックスに入る。

「へっへっへっ」

 そして、おもむろにバットを観客席に向ける。
 お決まりの予告ホームランである。

「あいかわらず舐めた真似するじゃねえかブ」
「俺はあの重い病気の子の為にホームランを打つと約束したんだ!」
「なに……?」

 何か泣かせる事情がありそうなことを、千尋は語った。
 少年のためにホームランを約束する、名選手のエピソードがある。

「ここで打たなきゃ男が廃るぜェ!」
「がんばってー、千尋おにいちゃーん!」
「……! おい少年!お前、来ちゃダメだろ! 病院に戻れ!」

 なんと、スティーブンの横には包帯を巻いた少年の姿があった。

「へっ……お前、なかなか根性あるじゃねえか。見てな! 俺が特大のアーチを描いてやるぜ!」
「おめえ、そういう事情で……」

 オークキャッチャー、何かを知ってしまったような表情をした。
 この4番は、病気の少年を励ますためにホームランを約束したのだと――。
 しかし、千尋は三振した。

「くっ……! ちったあ手加減とかしろよな!?」
「俺たち悪逆非道なオークにそんな手通じねえんだブ。女騎士捕まえてひどい目に遭わせる連中が子供がどうこうの話に動揺するかってえの」

 4番の三振に、なんかがっかりする会場であった。
 ちなみに、すべて千尋の仕込みであるのは言うまでもない。
 そんなこんなで、1回が終了する。

●2回~3回 ~白熱の投手戦~
 1回の立ち上がりは、双方ともランナーを出しながらも失点なく抑えてピッチャーの好調ぶりがアピールされた。

「さあ、続いて2回表、ふくよか再生ポークスの攻撃から」

 病気の少年の役を終えた少年は、暇を持て余しているのでスティーブンの脇で実況解説を行なっている。
 左打者の5番のオークライトを迎え撃つキツネ。
 俗に、左打者にとって右サイドスローは打ちやすいと言わている。
 インコースを攻めてみるもファールで粘り、三塁線に痛烈な当たり。千尋が飛びつくも、レフトまで抜けてシングルヒットとなる。

「どんまいどんまーい!」

 雰囲気を悪くしないよう、しにゃこの声掛けが響いた。
 そして、6番オークセカンドはスイッチヒッターである。
 左バッターボックスに立った。

(……こうなったら手を変え品を変え……やれることは色々やってやるわよ!)

 キャッチャー・フランとのサインの交換を行なう。
 一塁への牽制を挟んで初球は見送り、二球目の変化球を三塁線に転がす絶妙なバント。
 キツネが処理してレイリーがキャッチ、流れるようにイーリンに送るも、オークライトはぎりぎり進塁し、二塁にランナーを背負ってワンナウトで下位打線を迎える。
 7番、8番は、打率は低いものの長打力はありそうだ。
 しかし、7番オークセンターは詰まったフライを打ち上げ、8番オークキャッチャーを変化球と消えるスローボールで三振に討ち取った。
 そして2回裏――。

「右投げ両打ち……スイッチヒッターアカツキ参上なのじゃ!」

 5番センター、アカツキ・アマギが打席に立った。
 式神のしきちゃんにビデオを回させ、記録を頼んでいる。
 オークピッチャーが振りかぶって投げたのは、ストレート。

「死ねえええぇぇぇっ!!!!」

 全力のフルスイングは、燃え盛った炎をバットがまとうほどだ。
 しかし、空振り!

「……まあ、今のは練習じゃから、次が本番じゃから」

 コホンと咳払いし、照れ隠しをする。
 当たれば長打、しかし当たらねば小型扇風機といった感があるアカツキであった。

「そう簡単に打たせねえんだブ!!」

 続いて放ったボールは高めに浮いた、これを絶好球とふたたびフルスイングするも、落差の大きいフォーク! バットは空を切った。

「うーむ、もっとよく見なければ」

 鋭い視線で投球モーションを見切ろうとする。
 球威もあり、変化球もキレがある。攻略には癖を盗む必要があるだろう。
 ここは分析に徹し、フルカウントまで粘る。
 外角低めを突いたストレートで討ち取られたものの、得たものは大きかった。

「任せるのじゃ、イーリン」
「ええ、データは無駄にしないわ」

 6番、イーリンもまた分析に徹する。
 オークピッチャーは力のある速球と変化球が武器だ。
 しかし、変化球の組み入れたことによって、再生以前の力でぐいぐい来るような投球から、どこか逃げを感じるものになってもいる。
 カウントいっぱいまで粘ったものの、高めのストレートに手を出してセンターフライに倒れる。

「よし、俺の番だな」

 ここで、7番ライトの亘理義弘である。
 異世界からやってきた任侠という異色の経歴だ。
 打席に立つとその異圧力は高い。下位打線からの一発があるバッターは怖い。

「勝負なんだブ!」

 オークピッチャー、オークキャッチャーのリードでストレートでの真っ向勝負に切り替えた。
 ゆるい変化球ならスタンドへ運ばれてしまう、それを危惧したのだ。
 2球目でボールに外し、3球目までストレート。
 ここで恐れず投げたストレートを、痛烈なセンター返し!
 一塁にとどまったが、鋭い打球はポークス陣営に衝撃を与えた。

「フラーン!! がんばってー!」
「おかーさーん! ありがとー! 見ててね―!」

 8番キャッチャー、フラン。観客席の母の応援に、ぶんぶん手を振って答えた。
 守備ではキツネへのリードで活躍したので、今度は打撃で見せる番だ。
 ツーアウト、ランナー一塁。ここは思い切って勝負していい場面。
 クイックモーションからのストレートを――。

「おりゃあああ!」

 思いっきり振って、フランはレフト前に転がした。
 一塁の義弘が進んで、フランも出塁する。
 得点圏にランナーを置いて、9番ピッチャーのキツネ。
 みずからの手で先取点を取りたいところだが、オークピッチャーの変化球で三振に打ち取られてしまった。
 得点はできなかったものの、3回表のキツネのピッチングは、9番オークピッチャー、1番オークファースト、22番オークショートを三者凡退に抑えてピシャリと締めた。
 打者一巡したノーブルズが攻撃に移るも、こちらも出塁はできず、投手戦の様相を呈してきた。

●4回から5回 ~試合はここで動く~
 試合が動いたのは、5回表である。
 4回にオークレフトとオークライトを塁に出したものの、続く3人を抑えて得点は許さなかったキツネだが、粘ってフォアボールで出塁した2番オークショートを、3番オークサードが三塁まで進め、4番オークレフトを迎える。
 ワンナウト、2、3塁というピンチである。

「点数はあげられない……」

 フランのサインを覗き、キツネが投球する。
 変化球を巧みに投げてカウントを追い込むも、投げる珠がなくなってくる。
 超スローボールも消える魔球も見切られているのではないか? そういう不安が過る。

(でも……!)

 ここで逃げるわけにはいかない。
 インコースのストレート、力勝負を挑んだ。

「あっ……!?」

 午後の河川敷に、オークレフトのバットが快音を響かせる。
 レフト方向、フェンス直撃の一発である。
 正純、これを処理してセカンドに返球するものの、走者一掃のツーベースヒットとなった。
 セカンドにオークレフトを背負ったまま、左バッターの5番オークライトを迎える。
 ここで、フランとイーリンが駆け寄る。

「どう、いける?」
「この回は抑えるから、任せて」
「わかったよー、球威は落ちてないからいけるいける!」

 左バッター対策のAlice控えているが、先発投手としての務めも果たしたい。次の打順のこともある。
 キツネが続投を決意すると、ふたたびノーブルズナインは守備についた。

「追加点を上げるんでブ!」

 一方、ポークスもダメ押しの3点目がほしい。
 二塁のオークレフトを帰して追加点を上げるチャンスは続く。

「……いくわよ!」

 カウントを追い込んでから、内角にえぐりこむシュートを投げる。
 オークライト、待っていたとばかりに右に打ち分ける広角打法で外野に持っていこうとする。
 しかし、ここに来てのキツネのシュートのキレは想像以上であった。
 バットの芯を外れて詰まった当たりを、ショートのしにゃこが飛びついて一塁に送球して確実にアウトを取る。
 その間、オークサードは三塁へ。

「今の、三塁でタッチアウトがよかったんじゃね?」
「ううん、確実にアウト取って次で勝負するのはありだよ。次のスクイズもなくなるし、次で仕留めればチェンジなんだもん」
「なるほどねー」

 スティーブンに例の少年が解説する。
 判断は難しいところであったが、ツーアウトにしたのはいい判断だと解説した。

「ふう……」

 キツネはロージンバッグを叩いてひと息つき、6番オークセカンドを落ち着いて変化球で三振に討ち取った。

「さっ、切り替えていくぜ」

 打順は、7番亘理から。
 なんとしてもオークピッチャーを切り崩したい。
 これまで無得点に抑えられてきたが、データも十分取れている。
 変化球を投げるときの癖を見切って、甘く決まったカーブをオークファーストの頭を越えるシングルヒットを放つ。
 ここまで、亘理の打撃は好調である。

「さあ、いくよー!」

 8番キャッチャー、フラン。
 ノーアウトのチャンスをどうしても活かしたい。
 気合十分で、3球目、インコースから外れたストレートにみずから当たりにいった。

「えへへ、痛た……」

 みずからの身を犠牲にしたデッドボールの出塁によってノーアウト1-2塁。逆転の大チャンスが巡ってきた。
 9番ピッチャー、キツネは三振に打ち取り、打順は1番に回ってきてしにゃこ。

「さあ、いきますよー!」

 ここで、足も使えて一発もあるしにゃこを迎えるのはオークピッチャーも苦しい。失点を抑えたいポークスは、左バッターシフトの守備陣形を取った。

「ふふ、警戒してますね」

 初球に対し、奇襲気味のプッシュバントである。
 長打を警戒したオークファーストが深い守備に取ったのを逆手に取った。
 亘理、フランも同時スタートして二、三塁を陥れ、ファーストに走ったしにゃこもあわやセーフかと思われたが、オークセカンドのカバーが間に合ってアウトに取る。

「……ちっ!」

 奇襲に苛つきながらも、オークピッチャーは2番レイリーを迎える。
 彼女も変化球にも対応する打撃巧者である。
 一球、二球とテンポよく投げ込んだが、三球目のフォークを落ちる前に合わせ振り切った!
 ライト方向に飛んでいる間にひとり、ふたり帰ってレイリー自身も二塁に進む。同点タイムリーである。

「よし、ここで逆転です!」

 そして迎えるバッターは、三番小金井正純。
 クリンナップでオークピッチャーを打ち込み、逆転したいところ。

「もう点はやらないんだブ!」

 ストレートの球威は、いまだ衰えていない。
 しかし、チーム全体で癖を見抜いて共有している。
 オークピッチャーがストレートを放るときは、意気込んで鼻を鳴らすらしい。
 そこで外に逃げるカーブを読んで、センター前に打ち返す!

「ブオッ――!?」

 センターはバックホームを諦め、セカンドに送球。その間にレイリーはホームイン! 正純は一塁に留まる。

「よっしゃ、もうひとつ追加点だ」

 畳み掛けようと4番、千尋が打席に立つ。
 おーくピッチャー、焦りながらも変化球中心にカウントを進め、勝負のインパイ! これは高々とライトに上がってチェンジとなる。
 しかし、ノーブルズ、3点を奪って逆転に成功。

●6、7回 ~中盤の攻防~
 6回から、ピッチャーはキツネに代わって左アンダースローのAliceが登板する。

「後は任せてね」

 ベンチについたキツネは応援に回り、1点のリードを守っていく展開となる。

「A・li・ce~!」

 Aliceに進んでエナジーを捧げようというファンたちが応援団を結成してパネルを掲げる。しかし、これはちょっと恥ずかしい。
 左のアンダースローはなんとも打ちにくい。さあ、ポークス崩していけるか?
 対するは、7番オークセンターから。

「ブゴッ……!?」

 さっそくアンダーからのジャイロボール。落差が大きくバットが空を切った。キツネも技巧派だが、こちらも緩急自在のピッチャーである。
 ふわっと浮き上がってから、スナイパーアイで狙ったコースをズバリと突く制球力もなかなかのもの。
 オークライトもあえなく三振に打ち取られる。

(こりゃあ、苦労しそうだブ……)

 8番オークキャッチャー、内心の焦りが表情に出たようだ。

「どう? うちの中継ぎ、すごいでしょ。オークさんたちに姫様は渡さないからね」

 すかさず囁くフラン。
 じろりとオークキャチャーの視線が刺さりそうになるが、どこ吹く風でキャッチャーマスクを被っている。
 スライダー、ストレート、タイミングを狂わせてファール、そして決め球は山なりの超スローボール! 沈黙思考の鉄仮面ぶりもまた球種を読ませない。
 変幻自在のピッチングで、オークキャッチャーを罰金ものの見逃し三振に切って取る。
 続く、オークピッチャーもセカンドゴロで討ち取った。

「おいおい、こりゃあすげえぞ」
「次の一番からどうなるかだね。でも、継投策は当たってる感じ」
「やっぱり、フランちゃんのリードもいいのよ―」

 ノーブルズを応援する観客席にも、心強さが生まれている。
 おやつ代わりのたこ焼きをつまみながら、応援を送る。
 さて、6回裏ノーブルズの攻撃は5番アカツキから。
 ピッチャーの癖を盗んだ功績もあり、追撃するポークスの望みをへし折るためにも塁に出たい。
 しかし、オークピッチャーは立ち直ったのか、立て続けのストレートの真っ向勝負だ。変化球を覚えても、剛球投手としての信念が甦ったかのようである。
 炎をまとうバットを叩き折って、アマギをサードゴロに討ち取った。

「て、手が痺れるのじゃ~」

 エースの意地に、押し負けた感がある。
 燃えるバットは、やはり耐久力を失うのかもしれない。

「やはり速球が本来の武器よね……」

 6番、イーリン。前回は代打ヒットを放った相手だが、この試合中に成長したことも認めなくてはならない。
 ストレートを弾き返して出塁したいところ。
 オークピッチャーが力投するからこそ、カット打ちで投球数を増やす粘りのバッティング。
 こうなると集中力勝負である。

「前回の借りは返すんだブ!」
「あっ……」

 フルカウントまで粘ったイーリンに投げたのは、高速スライダー!
 思わず手が出てしまい、ヘッドに引っ掛ける形となってボテボテのファーストゴロでアウトとなる。
 続く義弘も、あわやホームランという大ファールを放ったものの、センターフライに倒れた。

「さあ、ラッキーセブンなんて言わせないわ」

 中継ぎAlice、好調の変化球と超スローボールで翻弄していく。出塁率の高い1番オークファースト、2番オークショートも立て続けに凡退させた。
 続いて、3番オークサード。塁を踏ませないピッチングを維持したい。

「もう点はやらないわ」
「もぎ取ってやるんだブ!」

 オークサードも攻略の糸口をつかもうと、カウント2-2まで粘る。
 そこでフランはサインを出す。

(さあ、あの決め球だよ!)
(わかったわ)

 サインにうなずき、Aliceは沈み込むフォームから必殺の魔球を放った。

「ブッ――!?」

 すっぽ抜けたかのようなスローボールだが、途中で起動がブレる。Aliceですら変化がわからないという切り札のごにゃーぽボール3号であった。
 バットが空を切り、フランもなんとか後逸せずにキャッチする。

「なんだ、今のは……?」

 呆然とするオークサードだが、ここで攻撃は終了。チェンジである。
 七回裏、打席に立つのは八番フラン。ここまで攻守に活躍しているが、オークピッチャーもみずから当たりに来るデッドボール作戦を警戒し、ストライクゾーンにボールを入れていき、三振に打ち取った。
 九番Aliceも危なげなく三振に取る。
 そして1番バッター、しにゃこ。これまで曲者な打撃をみせるのでなんとしても抑えたい。

「さあ、いきますよー!」

 特注ヘルメットから覗く耳が嬉しそうにぴょこぴょこ動いている。
 さっそく初球をフルスイング、これは空振り。
 2球目の外角に外れるカーブを、すくい上げるように打って一塁に走る。しにゃこ、待望の出塁である。
 2番レイリーが打席に入るが、ポークスバッテリーはリードを広く取るしにゃこを警戒し、牽制する。
 レイリーもダメ押しの追加点を入れたいところ。
 ここでヒットエンドランをかけて三遊間を抜ける打球を撃った。
 しにゃこは三塁でストップ、レイリーは一塁にとどまってツーアウト1-3塁のチャンスとなった。

「――代打、マッチョ☆プリンッッッ!!」

 3番正純に代わって打席に送られたのは、ここぞの切り札、マッチョ☆プリンである。

「ムン! 任セロォ!」
「見せ場ですよ、プリンさん!」

 ベンチの正純が激励して送り出す。
 気合い充分のプリンだが、実をいうと野球経験は特にない。
 しかし、ボールとバットの扱いには何故か長けている。ゴールデン☆プリンバットを構えて、打席に入った。

「見ろ、相手は素人なんだブ!」

 オークベンチからも、プリンの構えを見て野次が飛ぶ。
 しかし、どこがやってくれそうなものを感じさせるのだった。
 代打を抑えて、1点差で切り抜けたい。
 その力のこもった投球を、黄金のバットが高々と打ち上げた。
 センターバック、センターバック! 柵越するかと思われたところで失速し、フェンスぎりぎりでオークレフトがキャッチ。ノーブルズ、追加点ならず試合は後半戦となる。

●8回、9回 ~白熱の終盤戦~
 ポークス対ノーブルズも、いよいよ終盤戦。
 2-3とノーブルズは1点リードを守りきれるかどうか?
 Aliceの変化球はいまだ健在で、このまま抑え切っていきたい。
 迎えるバッターは、四番オークレフト。一発あれば同点という場面。チームの期待がこもる。

「このまま抑えきれるかねー?」
「まだわかんないよ、変化球に慣れてきてるみたいだし」

 スティーブンと少年も、試合の行く末を見守る。
 多少の疲れを見せるAliceであるが、エナジーヴァンパイアの宿主たちからのエナジーですぐに体力を回復する。
 初球、ストレートをオークレフトのフルスイングがピンポン玉のようにレフト方向に飛ぶが、左に切れてファールとなる。
 やはり一発が怖い。
 しかし、左右に振るピッチングののち、ごにゃーぽボール3号で三振に討ち取った。
 続く五番オークライトをサードゴロ、六番オークセカンドをフォアボールで歩かせるも、7番オークセンターも魔球ごにゃーぽボール3号には手が出ず三振となる。

「よっしゃ、一発いくぜ」

 8回裏、打席に立つのは千尋。ここで一発四番の意地を見せたいところだ。
 1球目を見送り、2球目の変化球をフルスイング!
 強烈なライナー性の当たりは、そのままスコアボードを直撃、待ち望んだ追加点である。

「いえーい!! ナイスバッチ―!」

 しにゃこを筆頭に、ノーブルズナインは千尋をハイタッチで出迎えた。

「さあ、妾も続くのじゃ!」

 5番アカツキが打席に向かったところでポークスベンチに動きがあった。

「9番オークピッチャーに変わりまして、オークリリーフ――」

 ピッチャー交代である。
 オークリリーフは左投げ、よってスイッチヒッターのアカツキは右打席にスイッチする。
 代わったばかりのリリーフが抑えられるか?
 投球練習を終えて、対決に注目が集まる中のことだった。
 オークリリーフが振りかぶる。
 その左腕から繰り出される速球は、先発のオークピッチャーを上回るかという球威とスピードだった。
 アカツキも手が出ず、続く6番イーリン、7番義弘も手が出ず三振に打ち取られてしまう。
 ただ、継投はもう少し早い段階であればと悔やまれる采配ではあった。
 そして9回表――。

「さあ、姫様! 頼んだわ」
「はい! わたくしも成長したところを古巣にお見せしませんとね」

 ピッチャーAliceに代わって、プリンセス。
 シンカーとジャイロボールを武器にクローザーとして立つ。

「姫様ァァァ! 守備ハ任セルノダァァ!」

 レフトに入ったプリンがスピーカーボムで声援を送ると、姫様もグローブを振って応じた。
 この回を抑えきればノーブルズの勝利である。
 このチーム、外野の守備は堅い。
 正純から代わったプリンもステータス的には守備寄りである。
 迎えるバッター、8番オークキャッチャー。
 初球から胸元まで曲がるシンカーを放る。
 さすがにこれは手が出ない。そのまま三振に討ち取った。
 9番オークリリーフも、変化球に対応できず、三振に仕留める。
 1番オークファーストが変化球に絞って粘るも、セカンドゴロをていねいに処理したイーリンがレイリーに送球し、ゲームセット――。
 希望ヶ丘ノーブルズの勝利である。

●戦い終えて
「いやー、おめでとう! おめでとう! 野球って勝ったらビールかけて遊ぶんだろ?」

 外野で観戦指していたスティーブンがビールとタオルを持ってきて球場に現われる。

「まあ、勝利の美酒と生きてえが、未成年もいるしな」

 ここで分別があるのが義弘らしい。
 しかし、試合が終わってしまえばもう敵も味方もない。

「おい、オークども。お前たちもこっちに来て付き合え」
「だが、俺たちは……」
「もう姫様の無償トレードもねえ。つべこべ言わず、飲んで食って水に流してやる」
「いい試合だったわ、選手層が薄いから継投に失敗したみたいだし、姫様がほしいのはわかるけど」
「おかーさぁん! 勝ったよ―!」
「おめでとう、フラーン!」

 試合が終わったら、河川敷で思い思いに食事と飲み物が振る舞われる。
 大人数でも食べられるよう、鉄板を用意しての焼きそばである。

「こういう日のヒーローインタビューはあたしだー!」
「たしかに得点に絡むプレイもあったけど……今回はピッチャー陣とレイリーさんじゃないかな?」

 うっきうきのフランに、少年が水を指した。
 しかし、フランの活躍も確かに見逃せない。

「おいおい、ホームランを打った俺だろ?」
「はい! 練りに練ったオーダーも勝因だと思います!」
「ピッチャーの球種を読み切った妾じゃろ―」
「あたしのプッシュバントだって、ヒーローインタビューものですよ?」
「わたくしだって三者凡退でシャットアウトしたのですのよ」

 などと、試合を振り返える。

「まあ、全員野球だったてことよ」

 イーリンがそのように締めくくった。
 そして、オークたちを交えて河川敷で焼きそばを楽しむのだった。

成否

成功

MVP

小金井・正純(p3p008000)
ただの女

状態異常

なし

あとがき

というわけでゲームセット!
2-4で希望ヶ浜ノーブルズの見事な勝利です。
正直、EX野球シナリオはかなり手間取りましたが、なんとか書き切れました。
どうしてもダイジェスト的になってしまうのを反省し、今回は試合の流れを書ききってみようと言う試みです。
今回は、チームを代表してプレイングでオーダーを提出してくれた小金井正純さんにMVPを差し上げたいと思います!
筋書きのないドラマの野球なので、アドリブは結構多めとなっております。
それを含めて楽しんでいただけたら、幸いです。

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