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シナリオ詳細

鋼鉄探偵ヴィクトリア

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「さてさて。このわたしをお呼びかね」
 背の低い美幼――美少女が、鹿射ち帽を乗せた長いプラチナブロンドを颯爽と払う。
 ざわざわとしていた人達が、薄い胸を張った少女へと一斉に振り向いた。
「あなたは……鋼鉄探偵ヴィクトリア!」
 ヴィクトリア(実は成人している)はパイプをくわえると、かがみ込む。
 そこには一人の男が死んでいた。
「ふふ、いかにも、わたしがヴィクトリア。人呼んで鋼鉄探偵。
 この町に解決出来ぬ事件なし。それでは警部、被害者についてご説明願おうか」
「し、しかし警部。現場へ民間人の立ち入りは」
 刑事が抗議するが、警部は首を振ってヴィクトリアを招いた。
「構わんよ。うむ。お噂はかねがね、探偵殿。早速お手並み拝見といこうか!」

 被害者の名はモンズ・モンゾ。三十二歳の男性。バツイチ。
 溶接技師をしており、元妻に引き取られた四歳の一人娘には、月に一度だけ合っている。
 このたびカジノであてた大金で住宅ローンを返済しきったらしい。
 相続人は娘になっており、代理人は元妻デミコ・デデコ。
 元妻の容姿はオレンジ色の長い髪で、黒い服を好んでいるという。
 また近所では、金回りの良くない元妻がギャンブルに手を出し、借金を作り始めたと噂されている。
 事件現場――つまりここ――では、良く似た人物が目撃されたようだ。

 というか、その。今ここに。
「ふふ、そこに居るのはデミコ・デデコ君だね?」
 ヴィクトリアが指をならす。
 立ち上がった探偵少女の視線の先には、『オレンジ色の長い髪で黒い服の女』が居た。
「何事にも『動機』というものがあってね。そう、ホワイダニットだ」
「わたくしではございません! 動機はあっても、証拠はございませんもの!」
 叫ぶやいなや、甲高い音がした。現場にいた元妻デミコが、赤く染まったナイフを放り投げたのだ。
 一同が一斉に、石畳を滑るナイフへ視線を送る。
 あ、川に落ちる手前で止まった。
 刀身はまるで今さっき人を刺し殺しでもしたかのように、ぬるぬると赤く見える……ような……。
 一同が難しい顔で考え込んだ時、再び甲高い音が鳴り響いた。
 決死の形相のデミコが鋭いスライディングを決めて、ナイフをドブ川へ蹴り落としたのだ。
「デミコさん、今なにを」
 警部の指摘に姿勢を正したデミコは呼吸を落ち着けると、けれど何事もなかったかのように首を振る。
「なんのことでしょう? わたくしスライディングなど決めておりませんわ」
「いま、何か蹴り落としませんでしたか?」
「血濡れのナイフなんて、もっておりませんでしたわ!」
「いや、見えた気が、てか今ナイフと」
「元夫をブチ殺したナイフなんて、もっておりませんでしたわ!」
 なんてことだ。自白が取れない。デミコが犯人でないとすれば、さっぱりわからない!
 警部はヘドロの溜まったドートン川を一瞥すると、部下の目を真正面から見据えた。
 見つめられた部下もまた、ドートン川へちらりと視線をおくり、目を泳がせる。
 ありていにいって、ドートン川はめたくそクサそうであった。探すとか割と無理。
「くっさ! 川くっさ! ちょっと無理み深いっスね」
「だが、証拠が」
「無理無理無理無理てか、さっきのナイフが証拠と決まった訳でもないっスし」
「ナイフなんてもっておりませんでしたわ!」
「そうなると、これは、不可解な事件ですな!」
「謎っス! さっぱり検討もつかないっす! このままでは、迷宮入りの可能性も……!」
 そう。鉄帝国人は、頭を使うのが苦手であるという。
 しかしこれは困った。
 たぶんデミコが犯人なのだが、自白もしなければ、あろうことか証拠も隠滅してしまった。
「もうだめだ」「証拠が出ない」
「ア、自白がねえ、証拠もねえ。迷宮入りはかーくじつ!」
「オラこんな事件(ヤマ)ー! いやだー!」
「オッホホホホ! 冤罪イズ冤罪! 無実オブ無実ですわ!」
 容疑者の高笑いに当局の人々が右往左往している。
 だが一人冷静なヴィクトリアは口からパイプを離して、ぷかりと煙を吐き出した。
「ふふ。実に難解厄介愉快痛快な事件だね。
 けれど不思議なんてものは、実際この世のどこにもありやしないんだよ」
 ヴィクトリアの決めセリフに警部がハっと顔をあげる。
「それではこうしようじゃないか」
 一同の視線は再び、麗しき探偵ヴィクトリアに集中した。
 ヴィクトリアは周囲を一通り眺め終えると、無駄にかっこいいポーズをキメた。

「デミコが犯人だと仮定して、決闘で負けたら正直にはいてもらうんだ!」

「名案だ!」
 警部が手を叩いた。頭を使うのが苦手なら、身体を使って解決すればいいのだ。さすが名探偵!
「いいわ。その勝負、受けて立ちましょう!」
 デミコがニタリと嗤った。
 そう。デミコはラド・バウの元闘士だ。かなり強い。
 それに未だファンも多いと聞く。最近スパチャがもらえなくなってきたのがつらいお年頃であったが、戦いとなれば元ファン達が集まってくるかもしれない。
「勝負は明日。メンバーは最大八名。場所はこちらで指定する。いいね?」
 さあ、ローレットに連絡だ。
 決闘の勝利によって、真相を暴いて貰おうじゃないか!


「そんなわけで、みんなに依頼。これはかなりのミステリー、かも」
 安楽椅子に腰掛けた『真心の花』ハルジオン(p3n000173)が、前後にぎこぎこしていた。
 ハルジオンは最近ローレットに入った仲間である。
 一緒に冒険したり、情報屋のまねごとをしたりしている。
 ハルジオンは安楽椅子の上で、なまじ軽いもんだから、むしろ大変そうに揺れていた。
 ともあれとりあえず依頼の詳細を聞いてみる。
「事件の解決が依頼。その事件のあらましは、こう」
 鉄帝国の小さな町で、一人の男性が殺されたという。
 容疑者は離婚済みの元夫人。動機は十分だが証拠がないらしい。
「いったい誰が犯人か、誰にも分からない。このままじゃ事件は迷宮入り」
 いやそれ。その状況ならデミコって奴が犯人なんじゃないの。
「このままじゃ事件は迷宮入り」
 あ、あー。えーと。若干ハルジオンの圧が強かったので、イレギュラーズは話の続きを促した。
「ほうほう、それで?」
「地元の敏腕探偵が、当局と容疑者との間で話をつけた」
 つまり容疑者は決闘の申し出を受けて、負けたら吐くらしい。
「なんて?」
 容疑者は決闘の申し出を受けて、負けたら吐くらしい。
「そ、そう」
「決闘は、八人の相手にイレギュラーズの一パーティーが挑む形式」
 どうしてそうなった。
 というかミステリー要素はどこ。
「だって鉄帝国だから」
 鉄帝国! なんてミステリーな国なんだ!

 容疑者デミコ・デデコはラド・バウの元闘士で結構強く、未だにファンが多い。
 イレギュラーズはデミコとファンの合わせて八名と決闘し、勝利するというのが仕事内容だ。
「がんばって真相を暴いてみて」
 暴くっていうか。勝てばいいんだよね。
「そう。勝てば官軍」
 なるほど、よくわかった!

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。
 これはミステリーですね!

■依頼達成条件
 デミコ一党との戦いに勝利する。

■フィールド
 鉄帝国の町アルマチェフに設けられた小闘技場です。
 障害物などはありません。
 下記の敵が全員出てきます。皆で勝ちましょう。

■敵
『デミコ・デデコ』
 ラドバウ元闘士の女性。事件の容疑者です。
 倒すと罪を認めます。
 前衛EXA+底力型。手数で勝負するタイプで、HPが一定以下になると強くなります。

『バランシス兄弟』(トータルファイタータイプ)×2
 デミコのファンです。
 CTやEXA、EXF等を犠牲に、満遍なくステータスを稼いでいるタイプです。
 HPと防御技術、特殊抵抗が特に優れています。
 BS回復を伴うカウンター攻撃を中心に、物理単体攻撃スキルをもっています。
 怒り付与スキルを持ち、若干APを削ってきたり、恍惚やブレイク等もしてきます。

『ゲロウビィ』(両面遠距離砲台タイプ)
 デミコのファンです。
 物理神秘攻撃力と、命中に優れたタイプです。
 大威力の神秘貫通攻撃を仕掛けてきます。

『ゴリダッシュ』(アタッカータイプ)
 デミコのファンです。
 物理攻撃力を極端に高くして、命中も確保、多少の反応があります。
 攻撃はHPで受けるタイプです。
 それ以外のステータスは全捨てしています。
 必殺のBSを保有しています。

『デバウフ』(命中回避BSタイプ)
 デミコのファンです。
 命中回避を高めてBSを通すタイプです、HPもそこそこあります。
 神秘系の遠距離単体スキルで、様々なBSを与えてきます。
 保有BSはショック、感電、火炎、毒、猛毒、出血、恍惚、封印。

『イヤースー』(バッファーヒーラータイプ)
 デミコのファンです。
 指揮能力と範囲ステータス向上付与、範囲BS回復、全体回復、単体大回復スキルを持っています。
 HPとAP、防御技術、特殊抵抗が特に優れています。FBを下げて安定感を高めたタイプです。

『覆面刑事(デカ)』
 警棒でぶんなぐってきます。
 実は警部の部下です。デミコと付き合っており、元不倫相手です。
 実は事件を迷宮入りにさせようと企んでいます!
 倒せば洗いざらい吐きます。

■ほかのひとたち
『鋼鉄探偵ヴィクトリア』
 この町で信頼されている美少女っぽい探偵です。
 腕を組んで戦いを見守っています。

『警部』
 さっきから部下の姿が見えないことに、キョドっています。
 デミコ一党の中にいる覆面男を三度見して、首を振ったり捻ったりしています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 鋼鉄探偵ヴィクトリア完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月31日 22時11分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
カイル・フォン・フェイティス(p3p002251)
特異運命座標
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
桐神 きり(p3p007718)
ドミニクス・マルタン(p3p008632)
特異運命座標
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
竜の狩人

リプレイ


 秋の風がひゅるりと吹いていく。
「成程。ミステリーらしく、最後は頭脳勝負というわけですわね!」
 腕組みした『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が納得した表情で一歩前に出た。足下を映したカメラがヴァレーリヤの靴がジャリってするのを描く。
「良いでしょう、受けて立ちましてよ!」
「えぇ……」
 何が何でも無茶苦茶な提案に『神鳴る鮮紅』マリア・レイシス(p3p006685)は困惑する。
 手を口に当ててアワアワした。
「探偵ってこうやって事件を解決するものなのかい? 鉄帝らしいね……」
 隣のヴァレーリヤも提案を承諾し、更に脳が混乱をしていくマリア。
 しかし、可愛いヴァリューシャが言うのだから、おそらく正しいに違いないと自分に言い聞かせる。
 可愛いから仕方ない。仕方ない。

 ズシンと音がしそうな黒い巨体が映し出された。
「……証拠を抑える事が出来てさえ、結局は此処でモノを言うのは腕っ節……か。
 いや、理解し切ったつもりになってはいたが……言うべき言葉が見つからんよ」
 表情が読めない『彷徨う赤の騎士』ウォリア(p3p001789)が明らかに当惑している。
 今まで幾度も鉄帝国の依頼を受けていたウォリアでさえ今回の解決方法には肩を竦めた。
「まぁ召喚されている以上、野暮な事を言う気は無い……単純にブチのめせばいいのだろう?
 小難しく頭を捻るより、余程好みというものだ」
 元の世界の友人に裁きの神が居るが、この場に居合わせたら憤死してしまうとウォリアは笑った。
「鉄帝の司法はそれで良いのか、とか。これだけメンバー集められる資金なり影響力なりがあるならもっとスマートなやり方があるだろう、とか……」
 頭を抱えた『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は額に手を当てる。
 額に手を当てながらこれでもかというぐらい険しい顔をした。
 そして、そのまま首を振る。
 これは真面目に考えたら駄目なやつだ。絶対そうだ。ゼフィラの感がそう告げている。
「もういっそ、この探偵殿のノリに合わせてしまうか。たまにはそういうのも良いだろう!」
 やけくそである。

「事件の解決方法が決闘って……そうはならないしもっと違うやり方もあるんじゃないですかコレ」
「しっ、それ以上いけない」
 カイル・フォン・フェイティス(p3p002251)の裾をひっぱり唇に指を置いた『真心の花』ハルジオン(p3n000173)は首を振った。
「機関に見つかってしまう」
「え、そういうヤツですか?」
 有無を言わさないハルジオンの眼差しに、ぽんぽんと頭を撫でるカイル。
「とはいえ決まったものは仕方がない。貴女を倒して洗いざらい喋ってもらいます」
 カイルはデミコ・デデコに向き直った。
「罪を犯した者が裁きを受けないなんて話、あっていい筈はないのだから」
 拳を握り込むカイルの後方に『特異運命座標』ドミニクス・マルタン(p3p008632)が姿を見せる。
「決闘で勝ったら自白ってこれでいいのか……?」
 至極最もな意見である。ドミニクスは聡明な男だった。
「いや、分かりやすくはあるけどよ……。まぁ、決まっちまったならしょうがねぇな。いっちょやってやるとするか」
 ドミニクスは頭を掻いて、戦闘態勢に構え直す。
「鉄帝は実力主義って聞いてたんだけど……これはちょっと違うんじゃねーのかな……
 いや依頼に不満はないけど、これで大丈夫なのかこの国???」
 険しい顔をした『深緑の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)は鉄帝国の明日を憂う。
「まあ、負ければ罪を認めるってのはシンプルでいいな。ちゃんと犯人には罪を償わせてやらないと。俺達が関わった以上真相は暴いて見せるぜ!」
 ミヅハは天穿つアーカーシャを手に、弓を引きやすい位置に移動した。
「……うーん、鉄帝の脳筋ぶりは流石としか言いようがありませんね」
 溜息をついた桐神 きり(p3p007718)はやれやれと首を振る。
「まぁ、郷に入っては何とやらと言いますし」
 妖気術式を展開したきりは真剣な表情で妖刀を鞘から引き抜いた。
「ここは国の流儀に則って正々堂々ぶちのめすとしましょうか」
 深呼吸をして気持ちを整えるきり。
「変に推理合戦とかするよりは余程楽かもしれませんしねー。
 ――名探偵きりの実力を見せてあげるとしましょうか!」
 キラリときりの目が光る。

「勝ったら見逃してあげるけれど、あまり私達の賢さをなめないことですわねっ!」
 ヴァレーリヤが組んでいた腕を解き、メイスの柄に手を掛けた。
「こうなっては仕方ない! ヴァリューシャ! 中々手強そうだよ! 気を付けてね!」
 マリアは気合いを入れて拳を握り込む。
「骨の一本くらいは覚悟なさい!」
 メイスをデミコに突きつけたヴァレーリヤの声が闘技場に響き渡った。


 闘技場に風がひゅるりと流れる。
「それでは、デミコチームVSイレギュラーズの試合を開始する! 始め!」
 審判役の警部が開始のゴングを鳴り響かせた。

「さて、まずは状況を『整理』してみようか……つまり、こうやってね!」
 先陣を切ったのはゼフィラだ。
 誰よりも先に動いたゼフィラは戦場を走り抜け、ゲロウヴィに接近する。
 時間さえ置き去りにする光弾がゲロウヴィの目の前で炸裂した。
「うぎゃあ!?」
「何が起こったんですの!?」
 一瞬にして起こった一連のゼフィラの動きにゲロウヴィとデミコが驚きの声を上げる。
「今回は考える事が多いですね……」
 きりは戦場を見渡してキッと眉を顰めた。
 馬鹿みたいな茶番はあったにせよ、流石は鉄帝国の住民である。
 構えを一目見るだけで戦い慣れていることがきりには分かった。
「それでこそ、戦い甲斐があるというものです」
 きりは戦場の真ん中に駆ける。
 先陣を切ったゼフィラに叩きつけられるバランシス兄弟の剣をはじき返した。
「あら、鉄帝国の闘士も大したことないんですね?」
「はぁ!? 何だってぇ!?」
「お前に鉄帝闘士の何が分かるってんだよ!」
 きりの挑発は効果抜群だ。怒りに満ちた表情でバランシス兄弟がきりへと襲いかかってくる。
 二人の剣をするりとかわしてきりは斬撃を繰り出した。

「……落ち目になった片割れが元交際相手の羽振りが良いのを聞いて利を狙う。
 こう有り触れた一件の解決も腕ずくとは、全く鉄帝様々だな」
 ウォリアはゴリダッシュへと攻撃を叩きつけながら呟く。
 本来であれば竜斬刀を自由自在に振るい、敵をなぎ払う戦闘スタイルを好むウォリアだったが、今回は闘技場内での乱戦である。
 仲間を巻き込む恐れがある大技は使えないだろう。
「ならば、これを受けて立っていられるか?」
 強烈な怒りと闘争心がウォリアの身体から吹き上がる。闘気を纏わせた変幻邪剣をゴリダッシュへと走らせた。魔性の切っ先はゴリダッシュを惑わし、恍惚の内に落とす。
 吹き上がる血に膝を着くゴリダッシュ。しかし、イヤースーの回復で再び立ち上がる。
「ほう。面白い。そうこなくてはな!」
 ウォリアは闘争心をむき出しに剣を振るった。

 敵との距離を測りながら、ドミニクスはVULGARの照準を合わせる。
 50口径の徹甲榴弾は、深く、強かに敵を抉る死の凶弾となりゲロウヴィを貫いた。
「ぐわあ!」
「ゲロウヴィ!!!!」
 ドミニクスの弾丸に貫かれた肩を押さえ、ゲロウヴィは冷や汗をかく。
「まだまだ、こんなものではない」
「俺もゲロウビィも似た者同士、ってことは仲間に守られつつ後ろから撃ってくるタイプだな間違いなく」
 ミヅハはドミニクスと攻撃を合わせる形でアーカーシャを引く。
 海の嵐を切り裂いた伝承を持つ弓。その一閃は、天にすら穴を穿つのだ。
 虹色の軌跡を残す小さな星はゲロウヴィの脳天をポコポコ貫く。
「ぎやあ!」
 可愛らしいエフェクトのスキルだが、ミヅハの攻撃力を持ってすれば死地が見えるだろう。
「くそそお! 小賢しいガキがぁ!」
「へへん! 追いかけられるもんならおいかけてみやがれ!」
 ミヅハの挑発にゲロウヴィは戦場を駆けてくる。

 ――――
 ――

 闘技場は白熱していた。
 イレギュラーズの猛攻は止まらない。されど、デミコ達の奮闘も気合いが入っていた。
 そして、とうとうデミコだけが戦場に立ちはだかる。

「デミコは追い込まれてからが本領発揮するタイプだろう、だからその前に畳み掛ける!
 こういうやつは本気を出させる前に倒しちまうのが一番有効だからな!」
 ミヅハの月の果てまで届く狩人の一矢がデミコに降り注ぐ。
「痛っ、まだまだですわ!」
 ミヅハの攻撃にカイルの剣が重なった。
「追い込まれると強くなるデミコは最後に火力を集中させて一気に倒す!」
 叩きつけられるカイルの剣にデミコの肌に傷が散らばっていく。
「何故自分の罪から逃げ出そうとする! そんな間違った在り方、俺は決して認めない!」
「まだ、勝負はついていませんわ!」
 カイルの剣を押し返し、デミコはぜいぜいと呼吸を繰り返した。
「勝った方が正義だと言うのなら、勝つのは俺達だ!」
 自分の意思の強さを剣の輝きに変え、カイルはデミコに力の限りを叩きつける。
 カイルの攻撃を受け、ザリザリと後ろに下がったデミコの頬を汗が流れた。

「どおおりゃあああ! 私の推理を喰らいなさい!」
 ヴァレーリヤのメイスがデミコを襲う。
 しかし、一瞬の隙をついてデミコの反撃が繰り出された。
「そっちこそ! 甘いのですわ!」
「ヴァリューシャ危ない!」
 デミコの攻撃はマリアの背に叩きつけられる。血を噴き出し白い制服を赤く染めたマリア。
「マリィ!?」
「大丈夫、それよりも、ヴァリューシャ! ぶちかましてあげるといいよ!! 援護は任せて!」
 背中の傷は痛いけれど、可愛いヴァリューシャのためならへっちゃらだとマリアは笑顔を見せる。
「ありがとうマリィ、行きますわよ! 真実を掴むまで……あと少し!」

 ヴァレーリヤの猛攻を受け、すかさず反撃を繰り返すデミコ。
 おそらくそろそろAPが尽きてくる頃だろう。ヴァレーリヤが目線でマリアに合図を送る。
「さあマリィ、次は貴女の番でしてよ!」
「ここから先は私の領分!」
 幻影を作り出したマリアはニヤリと笑った。
 電磁加速により紅雷を纏い繰り出される神速の拳打はデミコを打つ。
「こんな、攻撃。効きませんわ!」
「ううん。まだまだここからさ!」
 紅雷を限界出力を超えて放電し、蒼雷形態へ移行したマリアは膨大な疑似電気・磁力を生み出す。
「食らえ! 雷吠絶華!」
「ひやぁああああ!?」
 蒼く輝く軌跡を残す雷光がデミコを貫いた。
 一度だけでは終わらないマリアの雷蹴は、デミコが倒れるまで何度も何度も、その身体を叩く。
「う……、参りました」
 デミコはマリアの電撃に身を焼かれ、その場に膝を着いた。
 その瞬間イレギュラーズは勝利したのだ。

 悔しがるデミコの前へヴァレーリヤが仁王立ちする。
「肉体で語り合うことで、私にも見えて来ました。――犯人は、貴女ですわねデミコ!」
 ヴァレーリヤの声が闘技場に響き渡った。
 どこからか「おおー!」といった感動の声が聞こえてくる。
「何故分かったのです! 完璧な証拠隠滅でしたのに!」
 地面にバァンと手を着いて涙を見せるデミコ。
「貴女の筋肉がそう証言してくれましたの。まさか否定するはずがありませんわよね?」
「筋肉が……!? そうでしたの。ええ、筋肉は嘘を吐きませんものね。
 ――ええ、ええ。貴女の言うとおりですわ。私が元夫のモンズ・モンゾを殺しましたわ」
 オヨヨと泣いてみせるデミコにヴァレーリヤは白いものを差し出す。
「武士の情けですわ。最後の別れを楽しみなさい」
 差し出されたプロテインにデミコの目は驚きと感動に更に涙を溢れさせた。
「わぁ、ぁぁあ!」
「うう……」
 デミコは突っ伏して大泣きをする。それにつられて周りの男達も啜り泣いた。
「ヴァリューシャが楽しそうプロテインいいなぁ!」
 マリアがニコニコと笑って見せる。マリアには可愛いヴァリューシャが戯れているとしか見えていない。

 デミコと覆面刑事を警部に引き渡したミヅハ。
「ふっふっふ、これにて事件は解決だ。この町に解決出来ぬ事件なし!!!! ふはははっ!」
 響き渡るヴィクトリアの声にミヅハは「ミステリーってなんなんだろうな」と一人呟いた。

 彼女の名はヴィクトリア。人呼んで鋼鉄探偵。彼女にかかれば解決出来ない事件は無い。
 さて、明日の事件は今何処――

成否

成功

MVP

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星

状態異常

なし

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 楽しんで頂けたら幸いです。
 MVPはデミコの自白を後押しした方にお送りします。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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