PandoraPartyProject

シナリオ詳細

燐灰石の先

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ──逃げよう。
 ──逃げられないよ。

 ヒソヒソと、吐息よりも軽い息が言葉を混ざらせる。自分たちの誰にだって聞かれちゃいけない。ここには味方であり敵である子しかいない。

 聞かれたならば、魔女裁判にかけられてしまう。

 ──大丈夫だよ。
 ──私たちならどこまでだって行ける。
 彼女の囁く声が元気付けようとしてくれる。けれどそれが妄言であるだなんて彼女自身が一番よく知っていて。
 魔女裁判にかけられるくらいなら、殺されるまで逃げ続けた方がマシだと2人はそれ以上によく知っていた。
 けれどもいつまで逃げ続けるのかわからない未来に光はない。手紙を書こうと2人はこっそり便箋とペンを用意した。人目を盗み、片方が周囲を警戒している間にもう片方が字を連ねる。
 孤児だった彼らだけれど、読み書きは元いた教会のシスターが教えてくれたのだ。あの人はもう天へ召されてしまったけれど、いつか役に立つかもしれないと言われたから覚えていたのだ。ああ、読み書きを知っていて良かった。ありがとうシスター。
「いつ出すの?」
「次、外に出た時に」
 ここでは外の世界から略奪をする。一瞬ならば──ポストの横を通った時に入れてしまえばバレないはずだ。
 絶対バレないようにしよう。自分たちの命がかかっている。気に入らない奴はすぐ蹴落とす、それがここ『アドラステイア』なのだから。

 こうして粛々と決行された秘密裏の作戦は成功する。手紙は郵便局を通じ、幻想──ローレットまで運ばれていった。



「アドラステイアに住む子からの依頼なのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は初めにアドラステイアという場所の説明から始めた。
 独立都市『アドラステイア』とは異端勢力の名称でもある。彼らは独自の神を作り上げそれを信仰しているのだ。
「2人……双子で、アドラステイアから逃げ出したいって書かれているのです。皆さんが助けに来なくても、この子たちは作戦決行すると思います」
 見てください、と向けられた羊皮紙には拙い文字で『ここで生きるなら疑雲の渓に飛び込む』という旨が書かれている。疑雲の渓という言葉に首を傾げたイレギュラーズへはユリーカが説明した。
「中で行われているという魔女裁判の、断罪が行われる場所なのです」
 アドラステイアの外周から少し離れた場所。魔女の刻印を刻まれた者たちがそこへ突き落とされるのだ。底の見えぬ深淵は落ちたものの魂を飲み込んでしまうのだろう。
「この子たちは皆さんの姿が見えなければ……いえ、助かったと思うまで崖へ向かうに違いないのです。いざとなったらいつでも、飛び降りれるように」
 助けてあげてください、とユリーカは呟いた。たとえ一度はアドラステイアへ踏み込み、そこで生活した者だとしても──あそこの異常さに気づいた者たちなのだから。
 手紙に記してある日時まではもうそう遠くはない。助けるなら急がねば、とイレギュラーズたちは空中神殿を介して天義へ降り立ったのだった。

GMコメント

●成功条件
 双子の保護

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。不測の事態に気をつけてください。

●手紙と保護対象
 手紙を書く時間もさしてなかったのでしょう。非常に簡潔な文が拙く書かれています。

・ここで生きるくらいなら疑雲の渓へ飛び込むつもりである事。
・双子の片割れも同じように思っている事。
・数日後の朝、太陽が昇る頃に外へ出る事。

 双子の名前も体格も、性別さえも定かではありません。発見時に無傷である保証もありません。

●エネミー
・聖獣(天使型)×5
 アドラステイアより差し向けられた聖なるけもの。とはいえその形はお伽話に聞く天使のようです。背中から純白の翼を生やした子供の姿をしていますが、言葉は解しません。彼らは逃げ出した子供の粛清を優先するよう命じられています。
 歌声という範囲攻撃を行う他、神秘攻撃に長けています。光る武器を召喚して戦います。特殊抵抗とEXAに強く、攻撃力はさほどでもありません。
 その見た目から予想しうるBSをかけてくるとも考えられますが、詳細は不明です。

●フィールド
 アドラステイア外周。無機質にそびえ立つ外壁の外側になります。
 一面ただの原っぱで、身を隠す場所はありません。朝日はよく差し込む事でしょう。

●ご挨拶
 愁です。初アドラステイアです。
 どうか双子を保護してあげてください。先ある命が崖へ投げられてしまわぬように。
 ご縁をお待ちしております。

  • 燐灰石の先完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月01日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
桐神 きり(p3p007718)
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
エンジェル・ドゥ(p3p009020)
Comment te dire adieu

リプレイ


 アドラステイアの周辺はなにもない。ただの平野が続いている。そこを4人のイレギュラーズがアドラステイア方面へ進んでいた。
「穏やかじゃないですね、身投げなんて」
「でも助けを求められたんだ、助けない訳にはいかないよね?」
 桐神 きり(p3p007718)の呟きに『おかわり百杯』笹木 花丸(p3p008689)がそう返し。『パーフェクトクローザー』楊枝 茄子子(p3p008356)もまた彼女らの言葉に頷く。
(こんなところで死なせるわけにはいかない。私なんかより強い……ずっと強い子たちなんだから)
 アドラステイアの状況はローレットでも聞いている。それは絶対的な空間なのだと茄子子へ思わせるに十分で、そこから逃げ出そうだなんてどれだけの勇気が必要だったか想像もつかない。もしも茄子子がアドラステイアという国に囚われていたら? ──きっと抜け出すことなんてできないだろう。
「これより進めばアドラステイアの人に見つかるかもしれませんね」
「どう? この辺りから何か見つかるかな」
 きりの言葉に足を止めた一同は、茄子子の言葉に辺りを見渡した。鴉のファミリアーを空へ放った花丸は、しかし上空からも2人の人間らしき影は見えないことを確かめる。
「となると……B班が向かった疑雲の渓に花丸ちゃんたちも向かう形になるかな?」
「ええ。見落としの無いように頑張るとしましょうかね!」
 花丸の呟きにきりはアドラステイアを背にした。目を向けた方向は疑雲の渓と呼ばれる場所があるとされている。断崖絶壁、底も見えぬ闇が満ちた場所らしい。そんな場所へ身投げなんて寝覚めが悪くなりそうだ。皆がそちらへ向かい始める中、『Comment te dire adieu』エンジェル・ドゥ(p3p009020)は肩越しにアドラステイアを振り返る。
「Dude……ワタシ達と貴方達、一体どちらが悪魔なのかしらねぇ」

 一方、渓谷側にも残り4名のイレギュラーズが到着していた。疑雲の渓は見下ろすのも恐ろしいほどに深く、試しに落としてみた小石の落下音は聞こえない。まだ底に落ちていないのか、それともその音すら闇が吸収してしまったのか。
(こんな場所に飛び降りる、だなんて……)
 『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)は小さく息を呑み込み、そして頭を振る。まだ朝日も昇っていない時間だ。双子も飛び降りてはいないだろう。ならば早急に探し出して保護してあげなければ。
「精霊たち、聞いてくれ。探して欲しい人がいるんだ」
 見た目も性別も、ましてや2人で一緒かどうかも分からない。ただ必死に逃げているだろうことは察せられる。そう告げていると『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)が「きっと一緒よ」と付け加えた。
「だって同じ想いを抱いて、死まで覚悟した双子なのでしょう? バラバラには逃げていないはずだわ」
 死ぬ時も共に──恐らくはそう考えているだろう子たちだ。彼女の言葉にポテトは頷いて精霊たちへそれを伝える。姿を分からないような者を捜せだなんて無理を言っていること承知で、されど彼らの力が必要なのだ。
「一緒に探してくれ。見つけたら俺に報告を」
 『壁を超えよ』杠・修也(p3p000378)も人海戦術と言わんばかりに鳥のファミリアーと式神を召喚し、周囲の捜索をと頼む。どちらもあまり離れた場所までは行くことができないが、目となり耳となれるはずだ。
「この辺りにアドラステイアの……聖獣? だっけ。あれは飛んでいないみたいだね」
「時間帯の問題かもしれないが、自ら断罪されるような者を止めるつもりはないのかもしれないな」
 空を見渡した『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)に修也はファミリアーの視界へ注力する。この辺りでアドラステイアの者が使役する獣は見当たらない。アドラステイア付近ならいざ知らず、ここまで来る者がすることなど決まっているのだろう。修也の言葉に焔は苦い表情を浮かべた。
「そんな悲しい事、どうして選ばさせてしまうんだろう」
 子供が自ら死に向かうような国を『正しい』などと言えるわけもない。略奪などを教えているともなれば尚更だ。
「アドラステイアが振りかざす理屈なんて認めてはいけないわ。少なくとも……私は認めない」
 行きましょうとラヴは告げる。心の琴線に引っかかる助けの声はまだ、ない。



 はぁ、はぁ、はぁ。
 息切れと心臓の音が耳のすぐ近くで聞こえた。もしかして心臓って耳の近くにあったのだろうか。そう思ってしまうくらいに大きな音だ。
「走って、まだ、」
「わかってる!」
 妹の声にはまだ覇気がある。大丈夫、まだ逃げられる。まだ疑雲の渓まではもう少しある。
 手紙は届いただろうか。送るまでに見つかった感じはしなかった。今日まで魔女裁判にかけられなかったのがその証拠だ。最も──脱出は見つかってしまったけれど。
「うわぁっ!?」
 聖獣の放った光の矢が少年のマントを貫き、近くの地面へ射止める。少年はすぐさまマントを脱ぎ捨てて走り出した。
 この季節には寒い、けれども死ぬよりはずっとマシだ。このままだと死ぬことは避けられないけれど、あとはイレギュラーズに願うしかない。
 願い、縋る神などいないかもしれない──それでも、双子はずっと『何か』に祈らずにはいられなかった。どうか無事でいられるように、と。




「手紙届いたよー! イレギュラーズだよー! 聞こえてたら返事してー!!」

 茄子子の声がスピーカーボムに乗って遠くまで響いていく。見晴らしの良い平野は朝という事もあってか随分と静かだ。きりもひたすら足を使いつつ周りを見渡すが、それらしき影は無い。
「少しでもこれで踏みとどまってくれるかな……」
「あとは早く保護できれば良いのだけれど」
 エンジェルは周囲の霊魂に呼びかけ、彼らにも人を探してもらうよう伝える。この時間帯に大勢が出ているとも思えない。生きている人間2人が見つかるのならほとんど絞れたも同然だろう。
「──あっ!」
 不意に上がった声は花丸のものだ。一斉に集まった視線へ花丸が「見つけた!」と告げる。
「2人の子……聖獣に追いかけられてるみたい!」
 イレギュラーズたちは一斉に走り始める。茄子子が声を張り上げれば花丸の視界には一瞬こちらへ意識を向ける双子が見えた。
 けれども、止まらない。止まったならば聖獣に殺されてしまうだろうから。歯を噛み締める花丸は、更に向こう側からも声を聞いた。

「──助けに来たわ、もう大丈夫よ!」

 それは普段穏やかで、大声なんて聞いたことがあっただろうかという人の。疑雲の渓側から聞こえたそれに子供たちが再び走り出すより先、登り始めた朝日を浴びて煌めく金髪が靡く。双子の前へ降り立ったラヴは聖獣を見据え、その手に銃を握った。
「一、二──」
 唱えてとん、と地を蹴って。速度に見合わぬ軽やかな動きでラヴは銃口を敵へ向ける。ひとつ、ふたつ。その間に焔が双子へ追いついて背中へ庇う。
「お手紙を出してくれた子だよね?」
 頷いた2人に焔はほっと息をつき、ファミリアーへ意識を集中させた。A班ももうじき合流しそうだ。
「大丈夫、絶対に助け出してあげるよ!」
「ああ、ここからは私たちが守るからな」
 その言葉と共に少年は温かな力に包まれたことに気付いた。先ほどマントを縫い留めた矢──それが掠った時の傷が癒えていく。視線を向けるとポテトが優しく微笑んだ。
 ラヴが1体を相手取り、その敵へ向けて修也の魔砲が飛ぶ。天使を模したそれらは俊敏な動きでラヴに、そして双子たちへと攻撃を仕掛けるが焔とポテトがそうはいかせない。粘っているうちに聖獣の背後から4人の影が見えてきた。
「助けにきたよー!!」
 よく通る声は茄子子のもの。次の瞬間、魔法の薔薇《Sigur Rós》が聖獣の1体へ咲く。
「とっておきの魔法よ」
 エンジェルの其れは不吉を含み、毒を含み、鮮やかに。その間にも駆け寄った花丸は聖獣を通り越し、「おまたせ!」と双子たちの元へ辿り着いた。良かった、自分でも抱えられそうなほどの体格だ。
 彼女の到着で焔は前線へと向かい、ポテトは回復役として仲間のサポートに回る。
「保護に来たよ。君たちの名前は──っと!」
 言葉が終わらぬうちに聖獣の矢が飛んでくる。咄嗟に双子を抱えるようにして守り、敵の攻撃を受け流した花丸はラヴの銃弾が命中するのを見た。そして腕の中で不安そうにする表情も。花丸はそれを吹き飛ばすように満面の笑みで笑ってみせる。
「大丈夫! 君たちには私と、頼れる皆が一緒にいるから」
 だから信じて──その言葉を紡ぐ間にも、聖獣が1体地へ落ちた。

「相変わらず天義の天使さんは心無い方ばかりなことで」
 エンジェルは茨の鎧を身にまといながらロベリアの花を咲かせる。聖獣たちが苦しむ様子が見えたが構うものか。彼らのような『他者から与えられる使命に従う』のが天使だというならば、自らの心に従うエンジェルはそうではないのかもしれない、なんて──本当に思う訳もない。
「私もあの街は嫌いなんでね、これで一泡吹かせると思えば捗るってもんですよ」
 きりはそう零しながら妖刀を滑らせる。神速の斬撃にまた1体。天使のナリをしているからかそれらしい異常は見受けられないが、それでも確実に減らせている。けれど敵を一斉に相手取るラヴには多大な負担がかかっているはずだ。早めに倒さなければ戦線が崩れるだろう。
 朝日が昇る空が唐突にぐにゃりと歪む。そんな錯覚を敵へ見せたラヴは華麗に敵の攻撃を避けながらも、手数の多い相手に少しずつ傷は増えていく。茄子子とポテトの支援はあれど、目に見えた疲労がそこにはあった。
(それでも、子供たちから自由を……愛を奪うなんて、許さないわ)
 『可能性』を纏った彼女は敵へ触れる。触れたそこから蝕む呪いは敵を苛み、苦しめて。天使の歌声が周囲で戦う仲間をも傷つけるが、すかさず茄子子がクェーサーアナライズで立て直していく。
「もう少しだ、頑張ってくれ!」
 ポテトの響かせた天使の歌にぐっと顔を上げた修也がグローブを付けた拳を叩きつける。そこに載せられた多大な魔力が敵へぶつけられ、また1体地面に落ちた。
「きりちゃん、最後の1体だよ!」
「ええ、思い切りぶつけてやりましょう」
 焔の言葉にきりが応え、2人は駆けだす。最後の1体はラヴを倒さんと手にした剣を振り下ろしていたが、そこへ焔の闘気が襲い掛かった。息つかせずきりが身に宿した殺人剣のままに肉薄する。妖気が軌跡のようにたなびいて──。
「終わりです」
 敵の身体が文字通り、斬り刻まれた。



「もう、大丈夫」
 ラヴが双子の前にしゃがみこみ、視線を合わせる。その目頭から透明な雫がほたりと落ちた。
「お姉さん、何処か痛いの?」
「苦しい?」
「ううん、違うの」
 首を横に振り、なんでもないからと告げるラヴ。その足元を1匹の猫が抜けていき、双子の足元に拠りつく。すりすりと甘えるような仕草をする猫に双子たちが顔を綻ばせた。
「猫だ!」
「かわいいね。ね、お姉さんも猫好き?」
 2人の見せた笑顔にラヴも目を細める。その姿にきりは修也へ視線を向けた。それに気付いた彼は一瞬彼女の方を見て、それから双子たちへ視線を戻す。
「……あんまり言葉が得意じゃないんでね」
 双子を安心させたい気持ちはあったが、口下手な修也では逆に怯えさせてしまうかもしれない。故に彼はファミリアとして野良猫を連れてきていたのだ。その目論見は成功したようで、顔をこわばらせていた双子も今や猫に笑顔を見せている状況である。
「もう追手は居なさそうだね! きっと奇跡なんて起こらないけど、キミたちの頑張りは無駄にはならなかったんだ」
 茄子子はアドラステイアの方を見渡し、それから双子を振り返って笑う。彼らは特異運命座標と違って奇跡なんて起こせない。それでもこうして掴み取ったのは他ならぬ彼ら自身の努力だ。
「ここからが大変かもしれないけど、でも強い子なキミたちならきっと大丈夫! なんだったら私も力になるよ! 『羽衣教会』の会長だからね!」
 ばっちこいと笑顔を見せる茄子子の傍ら、ポテトが進み出て彼らの名を聞く。助けることに夢中で名を聞く暇すらなかったのだ。
「僕はルル。こっちは──」
「ララ。ルルの妹だよ」
 そう告げる双子はよく似た顔と声で、仮に髪型を揃えて服もお揃いにしてしまったなら分からなくなりそうだ。
「ルルくん、手を出して。驚かないでね、ボクの炎は燃えないんだ」
 焔に言われておずおずとルルが手を出せば、焔は神炎を彼の手にともす。手が燃えるという現象に驚いていたルルも、温かさのみを与える炎にやがてほぅと息をついた。途中でマントを外してしまった彼は非常に寒そうで、されど全身にこれを灯しては一種のホラーに見られかねない。落ち着ける場所に行ったら暖まってもらう必要があるだろう。
「ルル、ララ。一緒にローレットに向かいましょう」
「そうだな。それからはどこかの孤児院に入るかもしれないが……その前に迷惑かけた人たちに謝りに行こう」
 ポテトが示唆したのは彼らによって略奪された人たち。それらしく振る舞って魔女裁判にかけられないようにとしなければならなかったのだろうが、それでも罪は罪である。双子が頷いたのを見てポテトは表情をやわらげた。
「謝ったら、真っすぐ前を向いて進もう」
「ええ。恐怖で心を縛るあの国にはもう戻らなくていいのよ」
 天義に保護してもらえば良い。それが難しいのであれば幻想でも。勇気を出した彼らが再び縛られることなどあってはならないのだから。

「お姉ちゃん」
「……? ララ、どうしたの?」
 さあ行こうと歩き出す最中、ラヴはララに手を引かれた。振り返り、言われるままに掌を出すと何かを握らされる。
「もう、必要ないから」
 持っておくといい事があるかも、とララは小さく告げてちょっぴり悲しそうに笑う。そんな顔にラヴはありがとうと告げながら──ほんの少し、泣いた。

 後日、ローレットには天義の孤児院から双子の手紙が届いたという。そこには双子がそれなりに楽しく過ごしていると記されていた。

成否

成功

MVP

ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい

状態異常

ラヴ イズ ……(p3p007812)[重傷]
おやすみなさい

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 双子は無事保護されました。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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