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シナリオ詳細

狂戦士は流血を求めて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●襲撃の最中の惨劇
「くそっ! ノルダイン共の襲撃だ!」
「奴らを止めるぞ! かかれぇ!」
 鉄帝の北東部、ヴィーザル地方。大森林が広がるこの地においては、鉄帝にまつろわぬ少数民族が連合を組み、鉄帝と小競り合いを繰り返していた。
 その一つ、戦闘民族ノルダインによる海からの襲来を受けた港町イコーは、阿鼻叫喚のパニックの最中にあった。獰猛な性で知られるノルダインは襲撃した先を完膚なきまでに蹂躙し、容赦の無い略奪を行うことで知られている。住民は最低限の持ち物を抱えてイコーから逃れようとし、兵士はノルダインの蛮行を食い止めるべく挑みかかった。
 だが、鉄帝兵士達の抗戦は虚しく踏みにじられ、イコーにある物は食糧から財産から奪われていく。逃げ遅れた住民は運がよければ命だけは奪われずに済んだが、運の悪い者は抵抗せずとも殺された。

「……血を、もっと血を……!」
「ぐあっ! ……ギャアアアアッ!」
 嬉々として住民を手にかけていたノルダインの戦士の一人が、突然その動きを止める。数瞬の後、そのノルダインの戦士は他のノルダインの戦士に斬りかかった。
「お前、何を……ぐあああっ!」
 突如仲間に攻撃を始めた戦士に、他のノルダインは戸惑いつつも応戦する。だが、戦士は他のノルダインを赤子の様にあしらい、無惨に殺し尽くした。
「ああ……足りない、まだ足りない……!」
 周囲一帯を紅く染めた戦士は、得物を手に取るとゆらり、と何処か虚ろな様子で歩き出す。

「……ひっ、あ、あああ……」
 遠くからその虐殺を見ていた住民の一人は、恐怖にガクガクと身体を震わせ、必死にイコーから離れようと駆け出した。

●『狂戦士』を止めろ!
「この戦士を『狂戦士』と仮称しますが、皆さんにはヴィーザルに赴いてこの狂戦士を倒して欲しいのです」
 目前に集まったイレギュラーズ達に、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)はそう告げた。『狂戦士』の進行方向にある街ネリトから、ローレットに依頼が入ったのだ。
 それには、大きく二つの理由があった。一つは、ネリトに駐留している鉄帝軍人が質量ともに頼りないことだ。これは、鉄帝が領土として旨みの少ないヴィーザルの支配には本腰を入れていないこと、鉄帝の軍人達も戦い甲斐のある幻想や天義、あるいはラド・バウに興味を向けてしまうことにより、ヴィーザルが実戦を伴う演習場程度にしか見られていないためだった。
 もう一つの理由は、『狂戦士』に魔種の疑いがあると言うことだ。まがりなりにもノルダインは戦闘民族であり、事実イコーの鉄帝軍人を鎧袖一触で蹴散らしているのだが、そのノルダインが寄ってたかって戦っても易々と赤子扱いで虐殺されている。さらに、ネリトから出た軍人が威力偵察を試みて銃や矢で攻撃を行ったのだが、常人なら死んでいるはずの傷を負っても平然として動き、あまつさえその傷が自然と塞がっていったと言う。
「おそらく魔種だろうとは思われますが、そうでなくてもこんな血に飢えた存在を放っておくわけにはいきません。危険な依頼ではありますが――どうか、よろしくお願いします」
 勘蔵は深く頭を下げて、依頼への参加を請うのだった。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回は鉄帝のヴィーザル地方で魔種と化したノルダインの戦士の討伐をお願いします。

●成功条件
 『狂戦士』の討伐

●失敗条件
 『狂戦士』のネリト到達

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 ネリト近郊の森林の中。時間は昼間で天候は晴れ。
 森林の中ではあるものの開けている道のため、戦闘にペナルティーはありません。

●『狂戦士』 ✕1
 魔種となったノルダインの戦士です。元々快楽殺人の嗜好を持っており、イコーの住民を殺している最中に「呼び声」を受けて魔種となりました。他のノルダインを含めてイコーで生きている者を全て殺し尽くした後、さらなる殺戮を行うべくネリトへと向かっています。
 魔種となった際に精神が狂化しているため、回避、特殊抵抗の判定は行いません(ダイスの出目が0として扱われます)。
 一方で攻撃力と生命力が極めて高く、命中も高い水準にあります。また、高い再生能力も持っているため多少のダメージなら瞬く間に回復してしまいます。

・攻撃手段など
 大剣 物至単/物至範 【弱点】
  常人の足から肩まであろうかという長さの刀身を持つ剣です。虐殺した他のノルダインから奪いました。
  ダメージのより大きい単体攻撃と、複数を攻撃出来る範囲攻撃とを使い分けてきます。
 狂化
  精神が狂っています。そのため意思の疎通は不可能です。また、回避、特殊抵抗の判定が行えません。
 再生(高)
 BS無効(ダメージBSと【怒り】を除く)

・【怒り】を受けた際について
 『狂戦士』が受けている【怒り】は、近くにより多くの人間を虐殺出来るネリトの街があるため、外れやすくなっています。
 その確率は中距離以内にいる敵の数が少ないほど上がります。具体的には100-(至近距離の人数✕2+近距離以内の人数+中距離の人数÷2)✕基本値で算出されます。

●ネリト
 周囲を城壁で囲っている街です。鉄帝軍人達の駐留地でもあります。
 しかし、一応の防備があるとは言え、『狂戦士』の前にはひとたまりも無いでしょう。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしています。

  • 狂戦士は流血を求めて完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年10月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ルリ・メイフィールド(p3p007928)
特異運命座標

リプレイ

●遭遇、そして開戦
「足りない……血を、もっと血を……」
 虚ろな様子で、人の気配がある方、即ちより多くの血を流せるネリトの街へと、狂戦士は向かう。その精神は既に歪み、魔に堕ちていた。そんな中、ネリトから近付いてくる気配に気が付いた狂戦士は、獲物が向かって来ていることに不気味な歓喜の笑みを浮かべた。

「うむ! 戦いは楽しい! 蹂躙は胸がすく思いがする!」
 そこまでは、『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)も理解するところである。
「――であるが、鯨飲は咎めねばならぬ。所詮、戦闘など過程にすぎん。
 しかしそれが目的の化け物となり果てたなら、同類が始末をつけるのが道理であろうよ」
 独語しつつ百合子は狂戦士へと駆け寄り、その行く手を阻むように立ち塞がる。『狂戦士』の前進を阻んだ百合子は、自らに戦闘を最適化する支援を施してから、狂戦士に向けてウィンクを飛ばし、幾度も拳で殴りつけた。
「!?」
 美少女のウィンクは、神経毒を含む睫毛を飛ばす。知らぬうちに睫毛の毒に侵された『狂戦士』の動きが鈍った隙に、百合子は白百合清楚殺戮拳で狂戦士を立て続けに殴打していった。毒が『狂戦士』の身体を蝕み、殴打の痕からは血がだらだらと流れ出してくる。しかし、狂戦士の身体は殴打の痕をなかったことにしようと言わんばかりに修復を始める。

 その修復を許すまいと、百合子に続いて『至剣ならざる至槍天』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)が仕掛けた。
(虐殺してる時に呼び声に応じて魔種化して味方も虐殺か……全く、とんだ狂戦士もいたもんだ。
 マジもんのヤバい奴じゃねぇか、どこまで血に飢えてやがんだよ。
 さっさと止めねぇと、余計にひどいことになりそうだな!)
 狂戦士の凶行に半ば呆れ果てるエレンシアだったが、そうしてばかりはいられない。その背後には、ネリトの街があるのだ。狂戦士をそこまで進ませれば、惨劇が起こるのは明らかであった。
「さて、そんじゃま戦闘民族、いや戦闘民族の魔種がとやらがどれくらいか見せてもらおうか!
 狂気にとらわれた精神には何されようが動じねぇだろうが、体はどうかな? 
 毒と炎に、焼かれやがれ!」
 エレンシアは『黎明槍』アルハンドラ・クリブルスを構え、素早く二度の突きを放った。エレンシアの突きはそれぞれ黒と紅の衝撃波となって、『狂戦士』に突き刺さっていく。
 二色の衝撃波をその身に受けた『狂戦士』は、百合子がもたらしたものとはまた別種の毒に侵され、さらにその身を炎に焼かれていった。

(こんな狂戦士、魔種であってもなくても放ってはおけないのである!
 凄く怖いけど……がんばる!)
 元々怖がりである『分厚い壁(胸板)』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)にとって、血に飢えた狂戦士は酷く恐怖を感じさせる存在であった。だが、ボルカノは勇気を振り絞り「がんばる」ことで、その恐怖を乗り越えてきた。であれば、今回の恐怖もどうして乗り越えられないはずがあろうか。
 ボルカノは今までのように恐怖をねじ伏せながら、狂戦士の背後へと回り込んで接近し、百合子と挟み込むようにして狂戦士の移動を封じる。
(これで、ここからは動けないのであるよ! その間に、がんばって倒すのである!)
 おそらく、狂戦士は逃れようと猛烈な攻撃をしてくるだろう。だが、必ず耐えて味方の勝利に繋げてみせると、ボルカノは覚悟を決めた。

 その直後、狂戦士の攻撃が来た。大剣を横薙ぎに振るい、百合子とボルカノを斬り裂かんとする。ボルカノは紙一重のところで回避したが、百合子は避けられなかった。
「クハッ! 力強いな! だが構わぬ! 吾とて易々と倒されるような美少女ではない!」
 腹部をザックリと斬られ、血を吐きながらも、百合子は倒れることなく耐える。
「斬られても斬られても、吾は倒れぬ。
 それは戦士としての矜持、持てるもの全てを使って勝たんとする意志である!
 お前は狂い、利用すべき仲間を斬り捨て戦略も失った!
 暴力だけの片手間で倒されるほど【美少女】の看板は軽くは無いぞ!」
 狂戦士には、百合子の言葉は通じていないであろう。それでも百合子が咆哮を放ったのは、百合子の言う矜持と意志の発露だった。

(仲間も殺し尽くしてしまうとは、言葉の通り狂っていますね……。
 力もパワーも大好きだけど、理性も大切! ギリギリの際で踏みとどまってこそ、ですから。
 それを踏み越えてしまった狂戦士は、ここで確りと倒しましょう)
 無数の棘の付いた盾『鮮血針千本』を手に、『鋼の力』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)は百合子の側へと駆ける。
「大丈夫ですか、百合子サン? ボクが、守ります!」
 元々、初手は『鮮血針千本』の棘を突き刺して狂戦士に流血を強いるつもりのリュカシスであったが、百合子の傷が重いのを見て、狂戦士の攻撃から百合子を守る盾となることにした。生半可な攻撃で倒れないことには自信があるし、百合子の代わりに攻撃を受ける際に茨の鎧を纏っておけば、茨が狂戦士にも傷を負わせてくれるはずだ。

(――殺っても、殺っても、魔種は一向に減りゃしねえ。そして、ここにも魔種がいやがった)
 『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は、反転した事情を問わず、あらゆる魔種の存在を許しはしない。魔種を相手にするのは危険ではあるが、皆殺しにするつもりで魔種と戦ってきたジェイクにとって、そんな危険は当然ついて回るものだった。
(しかもこいつは、魔種になる前からクズ野郎って話じゃあねえか。
 お前みたいな相手は大好きだよ、狂戦士。惨たらしくぶっ殺しても、心が傷まねえなから
 てめえは俺にとって、格好の獲物だ)
 獲物を狩る獣のような笑みを浮かべながら、ジェイクは狂戦士の斜め後方に回り込み、射線を確保する。
「獲物は、追い詰めて喰らうだけだ! Time to Hunt!」
 ジェイクは大型拳銃『狼牙』のグリップを握り、トリガーを引く。銃弾は狙いどおりに狂戦士の頬をチュン、と掠め、狂気の矛先をジェイクへと変えさせた。

(これはまた骨が折れる仕事だね……でも、絶対に失敗する訳にはいかない!
 ネリトにいる一般人達を傷付けさせるものか!)
 軍人として戦ってきた『神鳴る鮮紅』マリア・レイシス(p3p006685)にとって、民間人は守り抜くべき対象である。それは、ネリトにいる民間人達も例外ではなかった。狂戦士の姿を目にした意を決すると同時に、ふっ、とその姿がかき消えた。次の瞬間、紅雷を限界まで放電し、蒼くなった雷をその身に纏ったマリアが狂戦士の背後に現れる。
 マリアは蒼い雷の全エネルギーを右足に集中させると、狂戦士の左足の膝裏に神速のローキックを叩き込む。パァン! と派手な音が響き、狂戦士の膝裏に閃光が奔った。
 ガクン、と膝を突きかけた狂戦士だが、辛うじて体勢を立て直しかける。
「頑丈な奴だね! でも、少しでも歩みを遅らせてみせる!」
 そこにもう一発、マリアのローキックが突き刺さる。立て続けの攻撃には流石に耐えきれず、狂戦士は左膝をガクンと地面に突いた。
 一方でこの雷には敵の気力を消耗させる効果もあるのだが、まだ戦闘は序盤である故か、狂戦士が気力を消耗した様子は見られなかった。

(鉄帝の名のもとに、元から外道の類でありましたが魔種になり果てた無様な狂人を討滅するであります)
 鉄帝に魔種がいるのならば、鉄帝の将として戦ってきた軍人である『号令者』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)としてはこれを討つしかない。ハイデマリーは狂戦士の側方三十メートル程の所まで移動すると、練達製のレールガンを狂戦士に向けて構えた。
「貴様にかける言葉はないであります。この鉛玉で、機械的に黙々と駆除されるがいい」
 黄金獅子旗の下、金獅子の一頭として生まれ育ってきたハイデマリーに、敵への情けや容赦と言ったものは存在しない。ただ冷徹に敵を見据え、引金を引くだけである。
 フオォン! フオォン!
 電磁加速によって発射された音速の弾丸二発が、狂戦士の胴体に突き刺さる。常人なら、間違いなく即死の一撃だ。だが、流石は魔種と言うべきか、ダメージを負いつつもまだまだ健在のようであった。

「詰まるところ、制御できねー力なんてもってても不便なだけで、何にも価値なんてねーわけですよ……。
 彼はその究極なのかもしれねーですね……」
 『特異運命座標』ルリ・メイフィールド(p3p007928)は、空中に浮かんで狂戦士の姿を見下ろすと、ぼそりとつぶやいた。魔種と言う絶大な力を得たとしても、こうして仲間まで殺める血に飢えた狂戦士と成り果ててしまっては、何の価値も見出しようがなかった。
 だが、ルリはそんな物思いに耽ってばかりはいられない。既に戦闘は始まっており、百合子が深い傷を負っている。今回の戦闘ではヒーラーを担っているルリは、自身の魔力を治癒の力と転じて、百合子を癒やした。
 ザックリと斬り裂かれた百合子の腹部の傷は、半ば以上が塞がった。まだ浅く残ってはいるが、もう一度癒やしを施せば綺麗に消えることだろう。常時苦しげだった百合子の様子も、時折痛みに微かに顔を歪める程度に変わっていた。

●戦術に嵌る狂戦士
 狂戦士と戦うにあたって、イレギュラーズ達が立てた作戦の一つは、百合子を含む前衛が狂戦士の移動を封じつつ、ネリトとは逆方向に移動したジェイクが狂戦士の敵意を自らの方に向けさせ続けると言うものだった。これなら、仮に狂戦士が前衛を突破しても、ネリトから遠ざけることが出来る。実際、その作戦は上手く当たっており、狂戦士はボルカノもリュカシスに守られた百合子も突破することが出来ないでいた。もっとも、このどちらかを倒したところで、リュカシスかマリアが代わりに狂戦士の移動を阻むだけとなったであろうが。
 そしてもう一つは、炎や毒、出血などの状態異常によるダメージで、再生能力で回復する分の生命力を削り取ると言うものだ。狂戦士は状態異常に抵抗しようとしないため、こちらも易々と決まった。並の相手なら、多少状態異常を与えられたところでどうと言うこともなかったであろう。しかし、高レベルのイレギュラーズを相手に状態異常を放置しておくのは、悪手と言えた。
 百合子の『白百合百裂拳』が、ジェイクの銃技『焚付』が、エレンシアの雷撃を纏った『黎明槍』アルハンドラ・クリブルスが、ハイデマリーのレールガンによる音速の弾丸が、マリアの神速のローキックが、容赦なく狂戦士に浴びせかけられる。これだけの攻撃を受けて、さらに状態異常によるダメージまで負うとなれば、狂戦士の再生能力など軽く相殺されていた。
 一方、狂戦士の攻撃も熾烈ではあった。特に、百合子を庇っているリュカシスの受けているダメージは大きい。それでもリュカシスが倒れなかったのは、ルリの癒やしがあってこそだ。だが、ルリの気力が底を突いてしまうと、前衛の、特にリュカシスの傷は次第に深くなっていった。しかし、その間にも狂戦士はマリアの執拗なローキックを受け続けており、まともに立っていることが出来なくなって左膝を地面に突いた。
 それでも腕力だけで強引に大剣を振り回す狂戦士だったが、足が使えなくては攻撃の精度は大幅に落ちる。もうこうなると、狂戦士は脅威とは言えなくなっていた。

●狂戦士の死
 狂戦士の大剣が振り回されるが、誰にも命中することなく空を切る。ただ、ブウン、と大きな音だけが虚しく響いた。狂戦士は既に満身創痍であり、その死は近いとイレギュラーズ達の誰もが感じていた。
「……そろそろ、限界であろう。吾も、残りの気力を全て費やすぞ。
 ユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリィーーーーッ!!!!!!」
 幾度もの白百合百裂拳を放ち続けた百合子の気力は、もう限界に至っていた。それでも、最後の気力を振り絞って、百合子は無数の拳の連打を放つ。拳の一つ一つが狂戦士の背面に叩き付けられ、その上半身を大きくふらつかせた。
「まったく、恐ろしいまでにタフなやつだったな。これだけ殴って、ようやくかよ」
 百合子同様にほぼ気力を使い果たしているエレンシアが、最後の気力を雷と化して、『黎明槍』アルハンドラ・クリブルスに纏わせる。渾身の一突きは、狂戦士の腹部を斜めに貫き通した。
「――かはっ!」
 大量の血を吐いた狂戦士であったが、まだ戦意は止まることはない。
「ここで、終わらせるであるよ!」
 だが、イレギュラーズ達の攻撃も止まらない。攻勢に転じたボルカノの爪が深々と、狂戦士の胸部から腹部にかけて、深い傷を刻みつける。もう十分に血は流したはずでありながら、何処にまだそんな血が残っていたのか、大量の鮮血が傷口から噴き出した。
「狂戦士、もはや名前も棄てましたか? あなたは、ここでお終いです。
 おおおおおおっ!」
 雄叫びを上げながら、リュカシスは『鮮血針千本』を構えて突進し、狂戦士の後頭部に無数の棘を突き刺した。
「やりましたか!?」
 ザクザクと棘が突き刺さる感触に、手応えを感じるリュカシス。だが――。
「……血、血ぃぃ……」
 狂戦士はまだ生きており、うわごとのように血を求めてつぶやいた。もっとも、この時点で狂戦士の意識は消滅しており、ただ身体が生きているだけに過ぎなくなっている。
 狂戦士の意識が消滅したと言っても、狂戦士の身体が死を迎えない限り、戦闘は終わらないし終わらせるわけにはいかない。狂戦士が再生能力を持っている以上、いくら瀕死とは言え放置していてはいずれ復活しかねないからだ。そうでなくても、きっちりと止めを刺しておく必要があった。
「これで、終らせてやるよ!」
「さっさとその生命を尽きさせてくれたまえ!」
「これで、とどめです」
「価値のねー、生だったですね……」
 ジェイクの撃った銃弾が、マリアの放った雷撃が、ハイデュリーが撃ったレールガンの弾丸が、ルリが上空から射た矢が、その生に終焉をもたらすべく狂戦士へと向かっていく。
 まず、ルリの矢が狂戦士の脳天に深々と突き刺さった。さらに、ジェイクの弾丸が狂戦士の額を貫通する。ハイデュリーの音速の弾丸は心臓に直撃して破裂させ、最後にマリアの雷撃が狂戦士の全身を焼いた。
 黒く焦げた狂戦士の身体は、横倒しにバタリと倒れると、そのまま二度と動かなくなった。イレギュラーズ達は狂戦士に勝利し、ネリトの街を守り抜いたのだ。

成否

成功

MVP

マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫

状態異常

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)[重傷]
無敵鉄板暴牛

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆様のおかげで狂戦士は倒され、ネリトの街は守られました。

 MVPは、狂戦士の左膝を壊して脅威度を下げたマリアさんにお送りします。
 部位破壊攻撃は、防御を全く考えない狂戦士には見事に刺さりました。

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