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シナリオ詳細

<濃々淡々>千夜を超えて咲く花よ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●永遠の夜をこえて
 濃々淡々、薄く煌めく夜の物語。
 其の世界で百年に一度だけ咲くとされる花――薄紫の月下美人には、不思議な力があるそうな。
 万病を治す、癒しの力が――。
 けれども嗚呼、其の花は優しく摘まなければ、枯れてしまうのだと。
 だからそっと、手折ってやるのだと。
 此れは、そう。あのひとが、いつかおれに聞かせてくれた、物語だ。

 ぼんやりと、今宵は店を閉めて、何処か遠くへ出掛ける用意をしよう。
 そう考えた化け猫の男、絢は小瓶にお気に入りの飴を詰める。
 みるくの味の飴に、桜の味の飴。其れから、嗚呼、此れも――
 なんて欲張っているところ。ふと、彼を呼ぶ声がした。
「にいさま」
 絢の名を呼ぶのは、彼を兄のように慕う、白猫の娘。
「……華。どうしたんだい」
「はい、にいさま……今宵は、薄紫の月下美人の咲く日なのですけれど、」
「嗚呼、そうだね。其れがどうかしたのかい?」
 化け猫として永い、永い時を生きてきた。故に、何度か見た事はあるのだと。大して珍しくはないけれど、其れでも。可愛い妹分が何か困り事ならば、手を差し伸べるのが兄貴分たる務めであると。目の高さを同じに、其の腰を曲げて、柔く微笑んで見せるのだ。
「……実は、其の。あの花を、華のために、摘んできて頂きたいのです」
「……へえ。どうして?」
「永く、お慕い申していらっしゃる方が、もう、」
「解った」
 其の先は。もう、云わなくても良い、と。
 柔らかい髪を撫でてやれば、華は人の姿を保つことも忘れ、白猫の姿へと戻る。
「……申し訳ありません。にいさまは、未だお忙しいのに」
「気にする事はないよ。おれに任せてくれるかい?」
 にゃあん、と。声にならない言葉は鳴いて誤魔化すのだ、とは、いつ教えただろうか。
 華は小さく鳴くと、其の儘夜に駆けて行った。

●夜に咲く花を求めて
「ええ、と。此の度は、みんなを導くことになりました。
 改めて、になるけれど――絢。けん、だよ。宜しくね」
 ぽん、と手を叩き。其の男――絢は、頬を染めて笑みを浮かべた。
「此度は、おれの妹分の為に花を摘みに行きたいのだけれど――頼める、かな?」
 傷だらけの手で頬を掻いて。用意してきたのだ、と語る文には、今回の依頼の内容を。
「場所はおれ達の世界。集合場所は、夜。花が好きなひとならば、屹度楽しめると思うよ」
 其れから、と。用意しておいたのであろう、薄紫の花の咲いた飴細工を、おずおずと取り出して見せた。
「こんな花を、探しに行くんだ」
 ――それじゃあ、頼めると嬉しいな。当日は、宜しくね。
 にゃあん、と猫の鳴く声。
 気が付くと其処に、絢の姿は無かった。

NMコメント

 ご無沙汰しております、染(そめ)です。
 絢くん、遂に境界案内人でびゅう。やったね。
 立ち絵も用意できたらな、と思っております。其の時はまた、依頼を。
 其れでは今回の依頼の説明に入ります。

●依頼内容
 薄紫の月下美人をよっつ、摘んで帰る

 百年に一度だけ咲くとされる、其の月下美人。
 其の花には癒しの効果があり、どんな病気でも治るとされています。
 そんな花を求める少女のために立ち上がった絢――ですが。
 彼には力がありませんので、サポートをしてあげてほしいのです。

●ロケーション
 時刻:夜
 ところ:飴の森

 飴の森に関しては此方(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4316)を。
 群生した木。其の葉が飴になっており、様々な花のかたちと色をして咲くことから飴の森と呼ばれております。

 夜も月光を通し明るいのですが、時折現れる敵エネミーに注意をしましょう。

●遭遇するかもしれない敵

 ・夜光蝶
  飴の森を舞う、淡く輝く蝶です。触れなければ攻撃をしてくることはありません。
  光り物を置いておくと其方に寄っていくようです。
  神近単 ひらひら 【弱点】【ブレイク】
  神近単 はらはら 【火炎】【魅了】

●月下美人
 飴の森の奥、小さな滝の近くに咲いているようです。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。またヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神です。
 昔の日本のイメージで構いません。

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々の境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいるようです。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。

 呼び出されればご一緒致します。

●サンブルプレイング
 私はカンテラを持っていこうかな。
 蝶をそれで惹き付けておいてから、月下美人を探しに行こう。

  • <濃々淡々>千夜を超えて咲く花よ完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月18日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
メルバ・サジタリウス・サーペンタリウス(p3p007737)
自称パッショニスタ
彼岸 月白(p3p009118)
此岸より臨む

リプレイ


「絢さん、案内人さんになったんだねぇ!」
「ふふ、そうなんだよ。いーさんにももっと会う機会が増えるかもしれないね」
 絢と仲睦まじく話すのは『秋の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)。
 二度目の飴の森、其れでも未だ全てを知るわけではないから、絢の隣に並び、彼から森について詳しく聞くことに。
「絢さん、森の中で危険なものとかあったら教えてもらいたいんだけど……いい、かな?」
「うん? 構わないよ」
 大柄な二人、イーハトーヴは横目で少し伺うけれど、絢は其れを微笑み一つで受け入れる。
「そう、だなぁ。気を付けてほしいのは、木かも。温度変化によっては壊れやすいみたいだから、気を付けてほしいな」
 頷く四人。其の中から凛と声を響かせたのは『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)。りんご飴のような真っ赤な瞳をどこか緊張したように動かして、絢へと問いかけた。
「もし、案内して頂けるなら、嬉しいです、が。……無理強いを、するつもりは、無いのです。
 もちろん、来て頂けるなら、守ります、が。貴方のお気持ち、次第です」
 ふわふわの長耳を震わせながら、声を上げたネーヴェに絢は目線を合わせ、笑みを浮かべた。
「ううん。寧ろ、おれも行っていいのかな……って。守ってもらえるなら、其れは心強いね」
 こくこくと、言葉にならずに頷いたネーヴェ。そんな繊細な彼女に変わり、ぱっと絢に話しかけたのは『自称芸術家』メルバ・サジタリウス・サーペンタリウス(p3p007737)。
 彼女はどうやら絢が事前に見せた飴細工の花――薄紫の月下美人に興味津々な様子。
「このお花…とっても素敵! きみが作ったの!? うーっ! あたしの絵の参考にしても良いかな!?」
 溌剌と話しかけるメルバに絢は目を細めた。
「うん。此れが参考になるなら、使ってやってくれると嬉しい」

 夜の森は酷く暗くて、静かで。けれど、降り注ぐ月光は足元を照らし、色鮮やかなコントラストを描き出す。
「夜の森で此の森の飴を食べても、身体に害などはないでしょうか」
 『此岸より臨む』彼岸 月白(p3p009118)はキィとカンテラを揺らしながら、絢へと質問を投げかける。
「うん、ないよ。おれが前に食べたときは、なかったから」
「えっ、絢さん食べちゃったの?!」
「……お転婆、です」
 イーハトーヴは驚きの声を上げ、ネーヴェは苦笑して。
「……無茶は余りしないでくださいね」
「危ないことはあたしたちにお任せあれ、だよ!」
 月白とメルバはそんな絢をサポートするように、絢の後ろを歩む。
 こうして五人の、夜の森の探検は始まった。


「もし、精霊さま。此の辺りには、蝶はどのくらい、いるでしょうか」
 ネーヴェが膝を曲げて、近くに咲いた飴の花に語り掛ける。ひょっこりと顔を出した彼らは、指をひぃふぅみぃと動かした。
「あ、動物さんもいるんだね!」
 其処に居た動物達の角や爪は、どうやら飴の様子。流石は飴の森の名を冠しているだけはある。イーハトーヴが動物達の背を撫でてやると、動物達は五人に滝への安全な道を教えてくれた。動物達が示した道には花が沢山咲いていて、恐らくは此処が彼らの寝床なのだろうと、イーハトーヴは思った。
「絢さん。道はこちらであっているでしょうか?」
「うん。あっているよ。おれは此処の常連と云うには来たり無いくらいだけど……此の道を通ればそうか、安全だね」
「そのようですね。動物や精霊に感謝しなくては」
 月白は絢の発言に同意を示し。手にしたカンテラで蝶をおびき寄せ、花畑の端に置いておく。此処ならば屹度誰の迷惑にもなるまい。
 仲間の手にしたカンテラもあることだし、まだ安全に進めそうだろうか。月白は頷くと、花畑を後にし四人の元へと戻っていった。

「それにしても、綺麗なところだねぇ……素敵。依頼が終わったらスケッチしたいな…」
 メルバの声にネーヴェもこくこくと頷き。二人の少女にとってはこの森は何とも幻想的な光景を見せてくれるのだから、胸の内が擽られるのも当然のことで。
「花や、草は、花の匂いなのかしら? それとも、飴の、あまい匂い?」
「食べてみたらわかるかもしれないね」
 くすくすと笑う絢。近くに咲いていた花を手折り、六人分持ってくると、それぞれにわけて。内緒話をするようにイーハトーヴに近付いた絢は、イーハトーヴの手にふたつの花をのせた。
「此れは、いーさんのお嬢さんの分ね」
「わぁ、ありがとう絢さん! オフィーリアも嬉しそう」
 ふふふ、とはにかんで。ぱり、と飴の割れる音がした頃には、いつものミルクも不要になるだろうか。
「あまくて。とろけてしまいます、ね」
「わぁ、おしべとめしべまである……すごい細かい!」
 一枚花弁をつまんで口にしたネーヴェはきらきらと瞳を輝かせ。一方のメルバは花が溶けるまでは、と花を観察している。
「此のような飴が自生しているなんて……不思議な森ですね」
 口にした飴は程よい甘さを残して、消えてゆく。ぱちぱちと瞬いた月白は、先程の花畑を思い出して。不可思議な物語の中だ、と思うのだった。
 その時。
「あ、絢さん、危ない!!」
「え――、」
 イーハトーヴの叫び声。ばさばさと鳥が羽ばたいた。
「全く。危ない人ですね」
 月白が帯刀していた刀を構え蝶が触れることを防ぎ、メルバは持っていたカンテラを前に突き出しながら、蝶々を巻こうを絢の前に立つ。
「蝶々さぁん…こんばんはぁ…おじゃましてまぁす…お花探してるだけだからねぇ…」
 ほっと胸を撫でおろしたメルバ。蝶はカンテラ伝いにネーヴェの元へと届けられる。
「さあ、さ。今宵は、わたくしと、踊りましょう?」
 月には兎が居るらしい、とは誰が語ったものであったか。蝶に触れぬように軽やかに踊りながら、蝶を退けるネーヴェの姿は、美しくも儚いものだった。
「あ、あはは……ついうっかりしていたよ。皆、有難う」
「もう、気を付けてね? ……あ、怪我してる?!」
 眩く輝く蝶に手を火傷してしまった絢。イーハトーヴは其れを見逃さず、回復を施してやる。
「飴職人さんなんだから、手は大事にしないといけないでしょう? 気を付けてね?」
「……はい」
 いつもよりも語気の強いイーハトーヴに圧倒された絢は、其の尾をしょんぼりと下げてゆらゆら揺らす。そんな様子はまた、微笑ましさもあるのだけれど。

 滝の音がする、と告げたイーハトーヴを先頭にし、五人の冒険は続いた。恐らくはもう近くなのだろう。花の量が増え、木々は大きく聳え、成程此の環境ならば花も見事に咲くだろう。
「此の辺は花が沢山なんだね」
「ええ、そのよう、です。色とりどり、ですね」
 ご機嫌に尻尾を揺らした絢と、頷き頬を綻ばせたネーヴェ。此の辺りで休憩にしようかとは誰から告げただろうか、辺りには蝶も居らず、穏やかな時が流れた。
「ねぇねぇ絢さん、お花って持って帰っていいんだよね?!」
「うん、構わないよ。屹度また咲くだろうから、一寸くらい多くたって、大丈夫だと思うな」
「わぁい!」
 非常食用、スケッチ用、其れから観察日記用! と厳選して花を選ぶ姿には皆微笑ましく見守って。
 イーハトーヴは彼のお姫様――オフィーリアと花畑に座り込む。
「見て、こっちの飴は綺麗な黄色! ふふ。あっちもこっちも素敵にきらきらで、目が、眩み――、」
 ぱたり。
 仰向けに。あまりにも簡単に倒れてしまう。ぼんやりと眺めた空は、故郷の空よりも美しくて、此処は別世界なのだと改めて実感させられた。
「……うん、大丈夫だよ、オフィーリア。月明かりに、少し、くらりとしただけだから、」
「……いーさん」
 ぽふ、と背を叩き。行こうか? と目配せし、悪戯っ子のようにミルクの飴を手渡して、一歩先に踏み出した絢。イーハトーヴは其の飴をぎゅっと握ると、その背を追った。
「絢さん、絢さん。どうやら、向こうに滝があるようですよ」
 皆が気ままに過ごしている頃、月白はてきぱきと依頼遂行に精を出す。努力家の彼は一足先に安全な道を確保していたようで、絢は嬉しそうに笑うのだった。
「其れでは、いきましょう」
 月白は先導するように、四人を連れて行った。


「綺麗…」
 メルバの声に頷いた一同。其処には満開の月下美人の花。
「此れだけあれば、屹度大丈夫だ……有難う、皆」
 絢は早速花を手折っていく。月白は不用心すぎる彼の背を庇うように辺りを見渡して、護るように立って。
「絢さま、此方、良ければ」
「……此れ、は」
 ネーヴェが手渡したのは月下美人の花束。飴の花も一緒に組み込まれていて、小さな宝箱のようだと絢は思った。
「いい、のかい?」
「はい。喜んで、元気になってくれることを、祈って、作りました」
「……おれは幸せ者だなぁ。有難う」
 嬉しそうに微笑んだ絢は、ぎゅっと花束を抱きしめて。壊れてしまわないだろうかとネーヴェがあわあわと見守っているのに気づくと、恥ずかしそうに頬を赤らめた。

「俺ね、練達製の保温水筒にあったかい珈琲も入れてきたんだ! とびきりの飴のお供に、もし良ければ!」
 人数分のコップを用意し、イーハトーヴは手を挙げて。メルバはスケッチの為と持ってきたレジャーシートを意気揚々と広げている。
 ネーヴェと月白、其れから絢がレジャーシートに座る頃には、満月も空の真ん中でくぅくぅと眠る頃。
 小さなお茶会。今宵の旅路は少しのハプニングと、とびきりの思い出で彩られていた。
「俺からも。華嬢と彼女の大切な人に、できるだけ長く、沢山の幸いがありますように」
 綺麗にラッピングされた飴に、絢は瞳を潤ませて。大きくうなずくだけが精いっぱいだったけれど、屹度想いは伝わっているはずだ。
「絢さん。飴を頂けますか?」
「うん、勿論」
 丸飴の小瓶を手渡した絢。月白は其れを口に含んで空を眺める。
 真っ白な其の飴は、小さいころに見た雪のようだと、どこか懐かしくなるのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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