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シナリオ詳細

再現性東京2010:蠱毒結界儀式魔術(販売中)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●L&R株式会社、販売講演会にて
 練達再現性東京2010希望ヶ浜北区、■■■■■屋内応接室にて。
「お集まりの皆様、本日ご紹介しますのは優れた呪術媒体でございます。
 呪術ひとつで国すらも傾くというのは海洋王国の廃滅病やうわさの豊穣郷に伝わる呪詛が証明した通りであります。
 自分も呪術を使って邪魔な誰かを殺してみたい! そんな風に思ったことは一度や二度ではないでしょう。
 そんな皆様に当商品は最適なプランでコミットするでしょう」
 早口にまくし立てる黒いスーツの男。
 彼を扇状に囲むように複数の一人がけソファが並び、仮面やついたてによって姿を隠した何者かがそこには座っている。
 男の話すとおり、彼らは『お客様』なのだろう。
 部屋はシャンデリアや絵画の飾られた広い応接間であり、一般的な会議や講演を行うような部屋には見えない。いわゆるVIP向けの商品説明を行うために利用しているのだろう。
 男は胸に手を当て、片眉を上げてこう述べた。
「当L&R株式会社をどうぞご利用ください」

●商品番号■■■■――蠱毒媒体『朧泥縄』
 蠱毒媒体『朧泥縄』はきわめて高性能な呪術媒体です。
 特定の建物内にて生活するコミュニティを対象とした蠱毒性儀式魔術を用い生成することが可能です。
 儀式魔術には築十年以上が経過した建物と、同建物内にて平均して5時間以上の習慣的生活を行っている人間複数体を用います。
 準備手順。
 まず建物を■■■■結界によって封鎖します。■■■■結界は侵入はできるが脱出はできないという一方通行の結界です。
 次に対象となる人間複数体を建物内へと侵入させ、儀式魔術を完成させます。
 儀式魔術が完成した場合、魔術対象となった建物内部の人間は互いに増悪や疑心を急速に増大させ、短時間のうちに互いを殺し合うまでに関係が悪化します。
 殺し合いは最後の一人になるまで行われ、残った一人は約五センチ大の■■■■■型毒虫へと変化します。
 この毒虫には高い呪術媒体効果があり儀式に用いる建物が大きければ大きいほど、人数が多ければ多いほど効果が増大します。
 当L&R株式会社は長年の研究により本来生成の困難であった朧泥縄をコンパクトかつ低コストに製造することに成功しました。
 これからも皆様のニーズにコミットするL&R株式会社をどうぞごひいきに。

 事件記録■■■■■
 希望ヶ浜北区■■■小学校にて、■年■組の生徒24名による殺人事件が発生。
 生徒達は互いにカッターナイフやモップなどその場にあるものを用いて殺害しあった形跡があり、遺留品から24名全員が死亡したものと推測されている。
 本件では『朧泥縄』の儀式魔術が行われたとみられています。
 そのため1名の遺体が発見されていないことも、毒虫に変えて持ち去られたものと推測されています。

 ――という文書資料を、イルミナ・ガードルーン(p3p001475)は無名偲校長から手渡されていた。
 所変わって希望ヶ浜学園校長室。部屋にいるのは無名偲校長とイルミナ含む数名の特待生……もといローレット・イレギュラーズである。
「北区にある小学校で儀式魔術がぶちかまされた。全く、隠蔽するのもタダじゃあないんだ……」
 校長は心底つらそうにため息をつくと、希望ヶ浜北区の地図をあわせて突き出してくる。
「小学校には『外部から侵入した異常者による殺人事件』というカバーストーリーを用いて封鎖が行われているが、こんなものはただの地獄の釜だ。都合のいい釜があるならもう一度使おうとするのが『連中』のやり口だからな」
「連中……『L&R株式会社』ってヤツのことッスか?」
 それまで黙って資料をにらんでいたイルミナが、赤い眼鏡をそえた顔をあげた。羽織った白衣の裾が小さくゆれる。
 校長はソファに腰掛け両手を組み、顎肘をついて前のめりになった。ちなみにこの姿勢を俗にシャーロックホームズハンドという。
「『L&R株式会社』。金持ちに異常物品の販売を行う集団だ。よそでやってくれる分には俺も働かずに住むんだが……希望ヶ浜はこういう気質だからな。商品を『製造』するのにうってつけなんだろう」
 再現性東京希望ヶ浜。ここは地球の日本文化を再現した街であり、偽りの日常に引きこもった人々の街である。
 この街をおおう悪性怪異は常に人々を危険にさらしているが、ここ希望ヶ浜学園は秘密裏に怪異を払うことで人々の『平和』を守護していた。
 そんな街において、人々が怪異から目をそらす状況や、外部の文化を拒もうとする性質が、秘密裏に儀式魔術を成立させるのに向いているということなのだろう。
 タチが悪いのは、彼ら『L&R株式会社』はそれをあくまでビジネスで行っているという点だ。悪意も正義も、ましてや感情もなく、ただ金持ちに売るために小学生24名にデスゲームをさせたのである。
「うちの掃除屋が次の儀式魔術計画を嗅ぎつけた。そう何度も庭で虫を育てられるわけにはいかないんでな。こいつを阻止してくるんだ。方法は任せるが……」
 校長は顎をあげ、イルミナの顔を見た。
「やり方は決まったようなものだな?」
「……ッス、ね」

●運命の巡り合わせ
「よう、イング。あんたもこっちの担当になったか。販売会の護衛はいいのか? あんたヴァニヤンとは長かったろう」
「知ったことではない。受けた仕事をこなしているだけだ」
 薄暗い夜の小学校。
 キープアウトテープが張り巡らされた校舎の下駄箱前通路に、黒いビジネススーツを纏った女性がスチール棚によりかかっていた。
 赤白い髪はポニーテールに結わえられ、袖からは白い手袋がのぞいている。
 彼女が戦闘用ロボット『イング』であることは、彼女を知る者ならすぐにわかるだろう。このキャリアウーマンめいた服装はあくまで偽装であり、厳めしいボディスーツやビーム格闘兵器ごてごての装備こそが彼女の標準であることも。
 イングに話しかけた魔術師風の帽子を被った男、忍者風の覆面を被った男、そしてベルトに銀のリボルバーをさしたガンマン。イングをふくめてこの4人が、通路には集まっていた。
 否……これから被害者となる子供たちをカウントするなら、23人プラス4人か。
 忍者風の男が子供たちに奇妙な粉を振りかけて回ると、やがて子供たちは目を覚ました。
「ここ……は?」
「ウェルカム。いや母校へおかえりと言うべきかなボーイズ」
 ガンマンの抜いた銃の口が、最初に目を覚ました少年の額に押し当てられた。
「は? なにこれテレビ? カメラどっかに――」
 どちゅ。という聞き慣れない音と共に打ち抜かれる額。飛び散る血。
 目覚めた子供たちは悲鳴を上げてほうぼうに散らばった。
「おい、勝手に殺すな」
「ドンウォーリー。誰か死んどいた方が効き目が早いんだ。イング、お前もやるかい?」
 銃をくるりと回して見せるガンマンに、イングは眉をしかめて顔をそらした。
「私の仕事はここの警備だ」
「つまんねーやつ」
 ガンマンは天井に向けて数発銃を撃つとゲラゲラと笑った。
 恐怖し、別々の方向に逃げ出す子供たち。
「ほらほら逃げろ逃げろ、ブギーマンに喰われるぞー! ってな!」

GMコメント

■成功条件:儀式魔術の阻止
 このシナリオでは二つの要素が重要になります。
 (ただでさえOPが長いので)複雑化しないように簡潔に『戦闘』『探索&無力化』の二要素について解説しま……すが、その前に概要から。

 L&R株式会社の儀式魔術によって希望ヶ浜北区の小学生23名(1名死亡したため残り22名)が最後の一人になるまで殺し合うデスゲームを開始しようとしています。
 校舎に突入し、殺し合いを阻止することでこの儀式魔術をとめてください。

■戦闘
 儀式魔術が妨害されないよう、L&R株式会社に雇われた傭兵が4人校舎内に配備されています。
 彼らの一部は子供たちが儀式魔術に抵抗しないように誘導し場合によっては殺処理する役目も担っているため、4人は校舎内に散らばって移動し続けています。
 といっても隠れているわけではないので、探そうと思えば割と簡単に見つけることができるでしょう。
 傭兵は儀式阻止の邪魔になるため、ローレットチームから戦闘要員を選出し、彼らへの対応に当たらせる必要があります。
 戦闘要員は何人選出しても構いませんが――
 増やすメリット:戦闘が楽になる。極端に増やした場合完全殲滅も可能。
 増やすデメリット:子供たちの探索が遅れ、殺し合いによる死者が増大する。

●エネミーデータ
 詳しい戦闘能力はわかっていないが、ひとりひとりがそれなりに高い戦力を有していると思われます。

・イング:イルミナと同世界からきたロボットの旅人。
 スピード型の近接戦闘を得意とし、戦闘スタイルは割とイルミナに似ています。
 彼女は儀式魔術の妨害者が現れた際これを排除するという仕事を請け負っているため、校舎入り口下駄箱前に堂々と一人で陣取っています。子供たちに手を出すつもりは特にないようです。

・スミス:ガンマン。プロフィール不明。
 二丁の拳銃を装備した男。殺人や破壊に対して積極的で、今回の儀式魔術に娯楽性を見いだしている模様。
 遠距離攻撃が主体のように見えるが一応オールレンジ対応。
 怖じ気づく子供がいたら撃ち殺して煽ってやろうと考えている模様。なので校舎内で子供を探してうろついている。

・ルカモト:忍者風の男。男と形容はしたが性別不明。
 ビジネススーツに面覆をした忍者風の男。非常に機敏で高い戦闘能力を有しているとみられる。
 近接格闘術に優れ、屋内戦闘はとくに得意そう。儀式魔術序盤の進行を担当していた。
 別に殺人にたいしてはどうとも思っていない様子。
 むしろ殺し合いをする子供が減ると品質が下がっていやだなくらいに思っている。
 想定外の状況がおきないようにと見回りを行っている。

・ジョンソン:魔術師風の男。仕事をするたび名前や自称経歴を変えるため詳細不明。
 いかにも魔法使いですよといった帽子を被り、ラフなジーパンやシャツで過ごしている男。
 帽子の主張通り魔術に優れており高い攻撃力が予想される。儀式魔術の妨害阻止が役目だが、どこから侵入者が入ってきても分かるように透視やエネミーサーチといったスキルを走らせながら校舎内を巡回している。

■探索
 子供たちは小学校の校舎内にて何人かのグループに分かれて散らばっています。
 これをいち早く発見し、無力化をはからなければなりません。
 物音を聞きつけたり、感情をサーチしたり、中庭にファミリアーを放つなどして窓からの様子を観察したりといった探索方法が有効です。
 もちろんなにもなくともとりあえず校舎内を走り回れば一定の成果は得られるでしょう。
 子供から死傷者を減らすには、探索担当を複数人選出しておく必要があります。
 多く選出すれば探索が早まり、そのぶん戦闘担当者が減って戦闘部分が苦しくなるといった影響があります。
 なお、子供たちの発見が遅れた場合は十中八九殺し合いによって死亡するでしょう。

 子供たちを見つけたなら、熱心に話しかけたり無理矢理気絶させるなどして無力化が可能です。
 通常攻撃等でも気絶は可能ですが、どうしても不安なら【不殺】攻撃を用いるといいでしょう。
 儀式魔術は一定時間が経過すれば解除されるので、子供たちを保護したまま殺し合いをさせずに見張っておくといったシンプルな方法で阻止することができるのです。

■オマケ解説
●再現性東京2010街『希望ヶ浜』
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 ここは『希望ヶ浜』。東京西部の小さな都市を模した地域だ。
 希望ヶ浜の人々は世界の在り方を受け入れていない。目を瞑り耳を塞ぎ、かつての世界を再現したつもりで生きている。
 練達はここに国内を脅かすモンスター(悪性怪異と呼ばれています)を討伐するための人材を育成する機関『希望ヶ浜学園』を設立した。
 そこでローレットのイレギュラーズが、モンスター退治の専門家として招かれたのである。
 それも『学園の生徒や職員』という形で……。

●希望ヶ浜学園
 再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
 夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
 幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
 ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
 入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
 ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。

●夜妖<ヨル>
 都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
 関わりたくないものです。
 完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)

  • 再現性東京2010:蠱毒結界儀式魔術(販売中)完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月16日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)
ゲーミングしゅぴちゃん
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ドミニクス・マルタン(p3p008632)
特異運命座標
小烏 ひばり(p3p008786)
笑顔の配達人

リプレイ

●夜が明けるのは無償(タダ)じゃない
 学園制服のシャツに長袖の赤ジャージを羽織った『ミス・トワイライト』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は、黒いマスクの布ゴムを耳にかけた。
「L&R株式会社……。金儲けのために誰かの、それも子供の命を使うとはな……私はそういう自己中心的な輩が一番嫌いだ」
 スニーカーのかかとを鳴らし、改めてタンと右足を踏みならす。
 等間隔に並ぶ街灯の住宅街。ブロック塀の列に彼女の足音は反響した。
 家々は不気味なほどに暗く、小さな灯りひとつついていなかった。あるいは学校の校舎を除いて。
「デスゲームで蠱毒を作るとは、まぁ阿呆なことを考える」
 『策士』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は縦に線の入ったセーターに薄い上着を羽織り、淵のない眼鏡を畳んでケースへしまった。
 仲間の戦闘準備が着々と整っていくのを横目に、『特異運命座標』ドミニクス・マルタン(p3p008632)はアイゴーグルの内側で赤いライトを左右に動かした。錆めいた色をしたロングコートの内側から拳銃を取り出し、銃身を握ってスライド。拳銃と呼ぶにはあまりに無骨で凶悪なフォルムはしかし、彼のコートやボディの色と混じって鈍く光っていた。
「胸糞悪いこと考える奴もいたもんだ、どんな物もビジネスになるのは分かるがな。ガキに手を出すのは放っておけねぇよな……」
「わ、わ……」
 かなり物騒な雰囲気になってきたのを察して、『想い出渡り鳥』小烏 ひばり(p3p008786)はぶるりと肩をふるわせた。
 ぱちんと自分の頬を叩いて気合いを入れ直す。
「わっちの助けが必要って事だけはわかりました! 今夜は子供たちに安心をお届けです!」
 『シュピーゲル』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)は電子妖精を呼びだし、校舎を回り込んで中庭へと向かうように指示。大人や子供を見つけたらその場所を教えるようにジェスチャーした。
 飛んでいく電子妖精を見送るSpiegelⅡに、『蛇霊暴乱』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が『大丈夫か?』と問いかける。ただの確認だ。深い意味など無い。
 だが、なんだろう。この気持ちの揺れは。
(俺はこの手の無関係な他人の命を浪費する術が気に入らないらしい。人の事を言える来歴かどうかは置いといて、な……)
 やれやれと首を振ってコートの襟を立てた。
「情報にあった忍者や魔術師っていうのは、そこのスタッフでござ――コホン。スタッフなのか? それとも外注の傭兵?」
 口調を整えて咳払いをする『咲々宮一刀流』咲々宮 幻介(p3p001387)。それまで開いていた資料を閉じるとズボンのポケットへとねじ込んだ。
「てことは、俺の担当は忍者のルカモトだな。
 咲々宮一刀流皆伝――もとい。希望ヶ浜学園古典教師、咲々宮 幻介……推して参る!
 乱波や透破(忍の蔑称)の風情が、調子くれてんじゃねえぞ!」
 やる気を見せる仲間達。『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)はそんな中で、ひとつ別の箇所に気持ちを寄せていた。
 イング。イルミナと同じ世界からやってきた戦闘用ロボットである。
「まったく、これだから戦闘用のAIは……。
 どうせこの世界の人間がどうなろうと関係ないとか思ってるッス! 命の尊さという物を教育してやるッスよ!」
 いきましょう! イルミナは威勢良く叫ぶと、赤いフレームの眼鏡をトンと叩いて走り出した。
 青白い光が、夜の街にラインを残しては消えていく。

●生命デフレーション
 ビジネススーツに身を包んだ紫髪の女。
 眼球の中で点滅したシグナルに応じて振り返る――と。
「見つけたッス!」
 玄関の扉を蹴りによって突き破りさらなるステップとブレード状のウィングユニットからのエネルギー噴射によって手にエネルギーフィールドを展開。
 イルミナの手刀が下駄箱をその筐体ごと破壊しながらイングめがけて走り、イングは展開したエネルギークローでそれを防御。
「貴様――イルミナか」
「イング!」
 繰り出した膝蹴りがイングの脇腹に直撃し、イングは壁際のガラス棚へ突っ込んだ。直後イングは赤いブレード状のパーツを発光させてイルミナめがけて突撃。
 スチール製の下駄箱を破壊しながらイルミナの頭部をたたき込んでいく。そのまま仲間のほうを見るイルミナ。


「皆さん、ここは任せて先へ!」
「助かる!」
 幻介はそばを駆け抜け、仲間達と分岐するように突き当たり右側へと走り出した。
「おっと」
 天井から面覆をつけた人の首が生え、するりと宙返りをかけてスーツ姿の人間が飛び降りてきた。
 音を聞きつけ、床を抜けて現れたのか。
 幻介の前に立ち塞がると、忍者風の人間は素早く名刺を取り出して突き出してきた。
「ドウモ。わたくし、L&R株式会社のルカモトと申します」
 隙だらけのようで隙の無い姿勢。
 強引に突破してしまおうと銃を構えたドミニクスに手をかざし、幻介は首を振る。
「こいつの相手は俺がする」
「しかし……」
「よく見ろ。こいつの狙いは足止めだ。関わる人数が多いほど奴の思うツボだぞ」
 ドミニクスはなるほどとつぶやいて銃を下ろすと、反対側へときびすを返し走っていった。
「おやおや。随分と冷静な判断をなさる。それに、その立ち姿――」
 ルカモトが面覆の間からギラリと目を光らせたように見えた。
 本能。
 としか言い様がない。
 幻介は胸ポケットに入れていた赤のボールペンにオーラを纏わせて『抜刀』するとルカモトの繰り出した黒塗苦無を受け止めた。
「やはり、『できる方』のようだ。目的は子供たちですか?」
「お前さんらも仕事だってのは分かるぜ、俺もそういう仕事は選り好みしねえからよ
 御門違いだってのも十分分かってんだ、けどよ……」
 飛び退いて構え直すと、幻介はボールペンをくるりと回して逆手持ちにした。
「役割とはいえ、俺は『先生』だからな……ガキ共は守んなきゃいけねえし、ガキに手を出す様を見過ごす訳にはいかねえ!」

 廊下をてくてくと歩いていた魔術師風の男が、玄関口で響いた破壊音に足を止めた。
 と同時にスマートウォッチが振動。パネルをタップすると『乱射魔』の名前で受信通知が表示されていた。一階の対応をするように返事をして通話を切る。
「互いの位置は把握済、というわけか……」
 途端、構内スピーカーがノイズを発した。
 夜の校舎じゅうに男の声が響く。
『あーあー、これ聞こえてるか? あんま時間もないし手短に言っとくぜ。ガキどもはその場から動かずに楽しいことでも考えて待ってな、そうすりゃ無事に帰れるからよ』
 ドミニクスの声だ。ジョンソンはゆっくりと振り向き、スピーカーを指さしてみせる。
「これは、お前の仲間の仕業か?」
 後方。薄暗い廊下にはアーマデルが立っていた。
 剣を抜き、パキンと蛇腹形態へ変化させる。
「俺が近づくことはお見通し、か。やりづらいな」
「相手をやりづらくするのが、魔術の基本だ」
 ウィッチハットで目元を隠し、微笑みながらピッと人差し指を立てるジョンソン。
 アーマデルは相手が仕掛けるよりも早く飛び出していた。
 間合いをわずかに詰めて蛇腹剣を振り込む。まるで生きた大蛇のように走った剣が切っ先に塗られた毒をそれこそ蛇の牙の如くジョンソンの腕へと斬り付けた。そのまま後ろの天井部へ突き刺さり、アーマデルは剣の伸縮を利用して急接近。
 籠手に仕込んだ噴射機から恐ろしい力を持った酒を零距離で噴射した。
「たいした絡繰だ。見た目で侮ったら死ぬところだった」
 攻撃を受け――つつも、ジョンソンは指先からバチンと雷を発動。廊下じゅうに雷が迸り蛍光灯が狂ったように明滅した。

 一方、ドミニクスはジョンソンの透視した通り非常階段から回り込み放送室へと侵入していた。
 今はマイクをSpiegelⅡに交替し、壁に貼り付けてあった校内地図を見つめている。
「ギルド・ローレットです。希望ヶ浜学園からの依頼で助けに来ました。今から救助に向かいますので安心してください。
 くれぐれも早まった行動を取らず。近くのお友達と協力して仲良く助けを待ってくださいね。不安な時は一緒に歌を歌いましょう」
 ここまで話してから放送スイッチを切るSpiegelⅡ。だいぶ古い型の放送設備だったが、小学生でもわかるようにかメモが貼り付けてあったおかげで操作に難は無かった。
 問題はここからである。
「これで、まだ術におかされきってない子達はは閉じこもってくれるでしょう」
 窓を開くと、電子妖精が数カ所を順番に指さして手を振っている。
「子供たちのグループを見つけたみたいです。二箇所……ですね。これで全部でしょうか」
「そこまでは分からん。俺は『見つかってないグループ』を探すことにする。手分けするぞ」
 何かあれば通話する、といって『aPhone<アデプト・フォン>』をポケットから出して見せた。
 と、早速ディスプレイにひばりの名前が表示されスマホが振動した。
 耳に当てると――。
『職員室から鍵一式を手に入れました! 保健室のほうから子供たちの声が聞こえたので直行します。その辺りに敵は居ますか!?』
 振り返るドミニクス。SpiegelⅡは電子妖精をチラリと見てから、短く『ガンマンが』と答えた。
「……いるが、大丈夫だ。そっちはもう一人向かっている」

 薄暗い空き教室。窓から入る月光が黒板を照らしていた。
 その中央に、銃弾がめり込んでひび割れていく。
「なあおい、これはゲームなんだぜ? 最後に生き残った奴が勝ちのゲーム。ボイコットとかサムいことするんじゃあねーよ。なあ?」
 スミスは拳銃を少女の開いた口に突っ込むと、そばに落ちていたカッターナイフを隣の少年に握らせた。殺さなければお前も殺す、という脅しだろう。
 震える手でカッターナイフを握り、その刃をチキチキと出し――たところで。
 窓をかち割ってブレンダが突入してきた。
 クロスアームでフレームごと破壊して教室内へ転がり込んだブレンダは椅子や机をなぎ倒しながら転がり、腰にさげたナイフを手に取った。
 緋色のナイフを投擲。
 スミスは素早くその場から飛び退き、少年少女からブレンダへと銃の狙いを移した。
「おっと、お楽しみだったのに邪魔すんな。動画広告かよ」
「最初に言っておこう」
 剣をとって立ち上がり、構える。
「今回は少しばかり頭にきている。加減はできそうにない」
 二人の間には無数の椅子と机。
 ブレンダは少年少女に教室の端に寄っているように言うと――間にあるすべてをボーリングのピンのごとく跳ね飛ばしながらまっすぐ突撃した。
「うおっマジか!」
 反射的に銃撃を浴びせるスミスだが、ブレンダは何発もの『直撃』を受けながらも突進をやめない。怯まないどころか更に加速しスミスに斬りかかった。
 剣の斬撃というより剣のくっついた体当たりである。まるで車にでも撥ねられたように吹き飛んだスミスは教室の壁を破壊すると廊下へと転がり出た。
「ファック! 付き合ってられっか。こちとら命までは売ってねえってんだよ」
 スミスはわざと少年少女へ銃を乱射するとその場から逃走。それを察して子供たちを庇ったブレンダは追いかけようとするが……。
 少年は握ったカッターナイフと少女をずっと交互に見つめていた。
 ゴクリと息を呑み、少女の髪をつかむ少年。
 ――その時。
 トスンと少年の首に刺さった灰色の針が彼を眠らせた。
「間に合ったようだな」
 壊れた壁の大穴をくぐって教室へ入ってくるリアナル。
「この子達は任せろ。ブレンダ殿はあの阿呆を追え」
 リアナルは少年を抱え上げると、少女にちょいちょいと手招きをして頭を撫でてやった。
 それで気持ちが落ち着いたようで、リアナルが『任せろと言ったろ?』とブレンダへ振り返る。
「適材適所か。分かった、任せる!」
 走り出すブレンダに手を振って、リアナルは少女の手を引いて歩き出した。
「さて、まずは放送室へ……かな」

●タイムイズマネー
 フィンガースナップによって生み出される大量の雷は蛇の形を取りアーマデルへとホーミングして襲いかかった。
「俺に蛇をけしかけるか」
 アーマデルは防御姿勢をとるもがくりと片膝を突き、倒れそうになった身体を支えるように籠手で床を叩いた。
「お前もなかなか粘るな。どうだ、うちで働かないか」
「子供を殺し合わせる会社に興味は無いな」
 突然、アーマデルの放った蛇腹剣がジョンソンの足首に絡まり、強制的に転倒させる。
 素早く飛びかかったアーマデルはバランスを崩したジョンソンを蹴りつけ、階段から下へと蹴り飛ばした。落下のダメージに歯を食いしばるジョンソン。耳に手を当て通話を開始する。
「全く知恵の回る奴だ。おいルカモト、撤退するぞ」

 ジョンソンの通信はルカモトへと届いていた。
 薄暗い廊下の突き当たり。体中に激しい切り傷を作って倒れた幻介の前に、ルカモトは立っていた。
「対象を殲滅できませんでしたか? 仕方ありませんね、今年のボーナスは減りそうです」
 きびすを返す。
 返してから、ピタリと止まった。
 ルカモトの後ろで、倒れたはずの幻介が床に手を突いてゆっくりと起き上がったのだ。
「トドメを刺しそびれましたかね」
「お前等は、俺の……じゃねえが、生徒に手を出した」
 血塗れの顔を上げ、両目を大きく見開く。
「なら、此処で始末しねえ訳にはいかねえな!」
 弾丸のように飛び出した幻介の『手刀』を、ルカモトはとらえることができなかった。
 あまりの速さに胸をX字に切り裂かれ、勢いのまま扉に激突。
 扉が壊れ空き教室へと転がり込み、ルカモトは首を振った。
「こんな底力があったとは……いや、この『太刀筋』、まさか」

 一方ドミニクスとSpiegelⅡは子供たちを発見し、比較的安全そうな保健室へと移動していた。
 子供たちは恐怖にすくみ、指先の震えが止まらない者もいる。
 誰が誰を殺すかわからない状況に不安でいっぱいなのだろう。
 ドミニクスは黙々とベッドや机を使ってバリケードを作り、時折子供たちへと振り返る。
 彼らの心をケアするのは、SpiegelⅡの役割だ。
「怖かったでしょう? もう大丈夫です。
 もし信じられないなら、おまじないを分けてあげましょう」
 子供たちの頭を撫でて優しくささやきかけるSpiegelⅡ。
 彼女のケアによって、子供たちが殺し合いをする様子はない。時間いっぱいまで粘ることもできるだろう。

 その別の教室では、ひばりが子供たちの間に割り込んでいた。
 突き出された包丁やカッターナイフ、シャープペンシルといったものを自分の手で握るようにとらえ、強引にもぎとっていく。
 子供たちの中で膨らみきった疑心暗鬼による殺し合いが始まったが、間一髪でそれを阻止することができたようだ。
 割り込んだひばりが何者であるか、いかなる理由でここにいるのか、それは子供たちにとって重要なことではなくなっているらしい。彼らは生き残るため、莫大な不安と恐怖を払うため、眼前の全員を抹殺しなければという強迫観念にとらわれていた。
 新たに武器を拾おうとする子供たちにひばりは――。
「ごめんなさい!」
 取り出した飛脚棒で子供たちの間をハヤテのごとく駆け抜ける。直後、子供たちは次々とその場に倒れた。急所を外した打撃によって気絶させたのである。
 ふと見ると、机の下で身を丸くして震えている少女がいた。
「もう大丈夫。もう殺し合いなんてさせません。お姉さん達が、君たちを守ります」
 少女に手を差し伸べ、微笑む。

 こちらは玄関口。
 未だ激戦を繰り広げていたイルミナとイングは崩れた下駄箱からゆらりと立ち上がった。
「なんの感情も抱かずに仕事をこなしているだけの相手に負けるわけには行かないんスよ……!」
「その何がおかしい。主に仕えることこそ私たちの使命にして意義。貴様も同じはずだ、イルミナ」
 イルミナの胸を指さし、にらみつけるイング。
「私の仲間になれ。こっちには統合軍の将校がいる。いずれ元の世界へ帰れるかもしれないぞ」
「そんなの……」
 言葉に迷ったイルミナのポケットでスマホが振動した。
 慎重に取り出すと、通話相手はリアナルだった。

「子供たちを保護した。そろそろ儀式魔術とやらもタイムアップだろう」
 リアナルは空き教室に子供たちを集め、ブレンダと共に見張っていた。
「もう大丈夫だ。君たちはパパとママのいるおうちに帰れるよ」
 ぽんぽんと頭を撫でてやるブレンダ。
 リアナルも優しく彼らを統率し、殺し合いと疑心暗鬼状態から解放し籠城状態を作らせている。
 窓から外を見ると、野外に飛び出して撤退していくスミスたちの姿が見える。
 結界が解け、脱出が可能になったということだ。
 フウ、と息をついて椅子に腰掛けるリアナル。
 後に計算したところによると、校舎各所に散っていた子供たち23名は無事発見、保護されたらしい。
 窓の外で待機していた電子妖精に合図を送ると、リアナルは学園の校長室へと電話をかけた。
「――私だ。儀式魔術の妨害が完了した。子供たちは、そうだな。最初の一名を除いて全員無事だ。保護を頼む。それと掃除屋を手配してくれ」
 通話をきり、壁に背をもたれさせた。
 デスゲームの夜は、終わったのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――儀式魔術の妨害に成功しました
 ――生存中の子供たち全員を保護しました

 ――隠しフラグ解放
 ――シークレットテキストを公開します

 胸にX字の傷を作ったルカモトは、革のソファにこしかけて面覆を解いた。
 右目に傷を負った若い女性の素顔があらわとなる。
 見上げると、電球むき出しのライトが揺れていた。
 ここは希望ヶ浜北区にある橋の下。コンテナハウスの中である。
「どうやら、随分手ひどくやられたらしいな」
 振り返ると、ウィッチハットを目深に被ったジョンソンが煙草をくわえてフィンガースナップで火をつけている。
 スミスはさっきからパイプ椅子に座ってビール缶をあおるばかりで口をきかない。
 奴は殺人ができなくてふてくされたんだと、ジョンソンは肩をすくめる。
「今日は、これでもう解散ですか?」
 ルカモトが言うと、扉の前で腕組みをしていたイングが噛みつくようににらんだ。
「報酬をまだ貰っていないぞ」
「そう怒るな。『命令』だ」
 背後から聞こえた声に、イングがびくりと背筋を震わせる。
 まるで甘美な毒を流し込まれたかのように頬を染め、ゆっくりと脱力する。
 その肩を叩き、白い軍服の男がコンテナハウスへと入ってきた。
「うおっ――」
 彼の姿を見てルカモトはおろかスミスでさえも姿勢を正し、立ち上がって向き直る。
 胸に手を当てて頭を垂れるルカモト。
「お疲れ様です、社長。自らお越しになるとは。何か特別なことでも」
「いや、なに……『オリジン』と遭遇したと聞いてな」
 聞き慣れない単語に首をかしげるジョンソンたちの中で、唯一、イングだけがハッとして振り返った。
「准将……まさか、彼女が?」

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