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シナリオ詳細

再現性東京2010:彼女と過ごした日曜日

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●誰かの記憶
 日曜日の午前十時。あの時計の下で待ち合わせをしよう――

 aPhoneを眺めながら騒ぐ心に鎮まれと繰り返す。この日の為に選んだ服は可笑しくないだろうか。彼女の好みであればいいけれど、と幾度も鏡を見直した。
 寝ぐせで跳ねた髪をブラシで抑えて、ポケットに財布を放り込む。流行のスニーカーでしっかりと地を踏み締めて彼女の許へと走り出した。
 君を待つのも屹度、楽しい。
「待った?」と慌てたように君が問うのだろう。
 大丈夫だよ、と手を差し伸べて。何もないこの日曜日を共に過ごしたい。
 妄想だけは捗って、彼女との待ち合わせに期待した。

 期待――していた。

 ぐらりと視界が揺らいだのは気のせいではない。眩さが迫ってきて。
 俺は――僕は――君にはもう、二度とは会えなかった。

●空想無為の彼氏
「――え?」
 ことり、と手元から転がり落ちたのは中身も残り少なくなったペットボトルであった。
 目の前で視線を逸らして不安げに「どうしよう」と呟いた山田・雪風 (p3n000024)はアーリア・スピリッツ(p3p004400)をその柘榴色の双眸で見つめる。
「実は……夜妖の情報を得に行こうとしたら、その……憑かれちゃって」
「雪風くんが?」
「……ウッス」
 女性との会話を苦手にする彼がしどろもどろに相談するのはアーリアが希望ヶ浜学園では『先生』にあたるからなのだろう。葡萄色の髪を纏めた美貌の女教師は「ふむ」と小さく呟いた。
「その夜妖ってどんな存在か分かるのかしらぁ?」
「……あの……『女の子とデートしたい』っていう夜妖で、他人に乗り移っては希望が叶えられなかったら殺す系なんすけど……」
「……それって、雪風君の欲求じゃなく?」
「……お、俺には二次元ってのがあるんで」
 震える唇で音を作り上げた雪風にアーリアはそう、と目を伏せった。決して彼は嘘を吐くタイプではない。不器用で、女性が苦手ではあるがそうした狡い事をするタイプではないだろう。
「それって、どうすれば解決できるのかしらぁ……」
「デートをして雪風さんから分離させるしかないのではないでしょうか」
 途中から聞いて居ましたと空色の瞳をぱちりと瞬かせた音呂木・ひよの。アーリアと雪風の視線がそちらに注がれれば、三日月の形を描いた唇が楽し気に「それしかありませんよ?」と揶揄う様に言葉を鳴らす。
「デデデ、デート?」
「はい。私も、それになじみもよろしければお手伝いします。
 雪風さんも皆さんにお声かけをして素晴らしい日曜日を過ごすしかありませんね」
 私もその夜妖については調査をしていたのです、とひよのは人身御供を見つけたと嬉しそうに微笑んだ。その夜妖は自身の欲求が叶わなければ憑依した相手を殺し、次の憑依先を見つけるそうだ。緩やかに被害が出ていた事で調査を行っていたが、身内――ローレットの情報屋――に取り憑いたというならば好都合だとその瞳は嬉々とした彩に濡れる。
「それでは、頑張ってデートをしましょうね。午前十時に希望ヶ浜の駅前で集合しましょう」
 ……デートを頑張らなくてはいけないと雪風はアーリアに「お付き合いお願いします」と懇願したのだった。

GMコメント

 日下部あやめです。
 アフターアクション【雪風くんが怪異に憑かれちゃった!?】をお送りします。

●成功条件
 『夜妖』を満足させて撃破する

●夜妖『空想無為の彼氏』
 顔も忘れてしまった大好きだった女の子と幸せな一日を過ごす事に固執している、という夜妖です。
 怨念の集合体であり、名前はございません。付けてあげるのも可です。
 未練は『女の子』とのデートなので休日の日曜日を利用してデートをしてあげてください。
 この夜妖は憑依を行う存在であり、満足するまで対象者から離れません。

●山田・雪風 (p3n000024)
 ローレット所属の情報屋さん。オタク男子。好きなアニメはプリティ★プリンセス2nd。
 自作同人誌なども作ります。仲の良い友人は月原・亮君など……。
 女性は3歳年上の姉、山田・氷花の存在が雪風を弄り、いえ、可愛がった事でとても苦手にしています。
 夜妖『空想無為の彼氏』に憑依されていますが自意識はしっかりしてます。デートしないわけには行かないので「うっす……頑張ります……」

●デート
 山田くんこと夜妖『空想無為の彼氏』とのデートをお願いします。日曜日の午前中からスタート、夕方までです。
 例えば、ダブルデート。
 例えば、山田君とのデート(相手が女装等も可)。
 例えば、デートを盛り上げる……等々。
 希望ヶ浜市街で何でも楽しんでいただけます。
 山田とのデートを利用して映画やゲームセンター、バイキングをローレットの経費で楽しむのもとても良いと思います。希望ヶ浜の冒険にもなりますね。
 山田君はオタク分野に対して特出した知識を持っている普通の男子高校生(大学生の年齢になりました)です。基本的にイエスマン、何でもついてきてくれます。

 デートに満足する事で夜妖『空想無為の彼氏』は山田の体への憑依をやめ、薄い靄でその体を作り上げます。
 その状態で戦闘をすることで倒す事が可能です。本題はきっとデートなのでデートが完璧ならば倒す事は容易でしょう。(そうではない場合normal相応の戦闘がしっかり必要です)

●その他
 音呂木・ひよの(p3n000167)さん、綾敷・なじみ(p3n000168)さんもお声かけすればお手伝い(デート)をしてくださるそうです。
 もしもよろしければそちらもご一考くださいませ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、楽しい一日を。

  • 再現性東京2010:彼女と過ごした日曜日完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月21日 22時26分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
晋 飛(p3p008588)
倫理コード違反
バスティス・ナイア(p3p008666)
猫神様の気まぐれ
エクレア(p3p009016)
影の女
越智内 定(p3p009033)
約束

リプレイ


 日曜日の午前十時。あの時計の下で待ち合わせをしよう――

 ディスプレイに表示されているのは09:45の文字列。そわそわと前髪を弄ってみせる『綾敷さんのお友達』越智内 定(p3p009033)は傍らで柱時計を硬直しながら見詰めている山田・雪風 (p3n000024)の横顔に「山田さん」と静かに声を掛けた。
「……うん」
「……生きて居る内に生身の女の子とデートするなんて考えた事あったかい?」
 定の言葉に雪風は首を振った。その柘榴の色の瞳に不安が浮かんでいる様子に定は「だよな」と予想が的中したというしたり顔で頷いた。想像だけなら無限大――ラブコメ漫画では何時だって冴えない主人公がモテにモテて彼女が出来て……そんなアニメや漫画みたいな『設定』が何時か自然に自分に当てはまる気がしていたのだ。少なくとも、この二人は。
「依頼としてのデートって事も置いておいて。今日はお互い頑張ろう」
「……頑張れるかな」
「いけるって。僕達二人の為に女の子二人が遊んでくれるって言うんだぜ?
 成り行きだとしても背筋を張らない理由にはならないだろ?」
「ウッワ、キモ……夜妖討伐の為なのに自分がデートして貰ってる顔してる……とか言われない?」
 定は雪風の言葉を否定できなかった。引き攣った三日月を描いた唇で「背筋伸ばして、頑張ろうぜ」と文字列をなぞるだけ――ただ、それだけだった。

 再現性東京には夜妖が跋扈して居る。そして、それは多岐に渡り人に憑く者も居れば在り来たりな都市伝説としても存在している――と言うのは、この地出活動する上の基礎知識である。『影の女』エクレア(p3p009016)は「ふうむ」と悩ましげに呟いた。
「予想より斜め『下』の種類が出てきたね。いや、怖いとも。現に被害は出ているのは事実さ。
 まあ乗りかかった船だ、僕も出来る限りのフォローはさせてもらうよ。大いに期待して震えたまえ、盟友たち。ふふふふふ」
 にたりと笑ったエクレアはその手には希望ヶ浜地区のガイドブックを握っていた。通常の夜妖退治ではそれは余り役に立たないが、今回を限り大役立ちの一品だ。『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)は「それにしても、突拍子がないと言うか、何というか」と悩ましげに呟いた。『猫と和解せよ』と書かれたTシャツを身に纏った猫神の予想をもアレコレ裏切った結果――
「『女の子とデートしたい』夜妖……? 時々突拍子もない夜妖が現れるよね。
 で、出来ないと殺す系……やだなぁ、この夜妖。いろいろ拗れすぎちゃって逆に面白いね」
「デートって聞いて仕事を受けたんだけどよ……デートすんのは俺じゃねぇのかよ! ざけんな!」
 俺のデートは年齢制限付きだけどよ、と快活な笑みを浮かべる『朱の願い』晋 飛(p3p008588)。そう、只、単純に『デートで囮』を作るのでは無く「夜妖の願いを叶える」ことが重要なオーダーの一つ。
「……この再現性東京の中で夜妖のもとになった人には大きな出来事だったのでしょうね」
 ソレが例え女の子と甘く素敵な時間を過ごしたいという個人的欲求が大きいデートであろうとも、『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)はその物語を想い、憂う。
「叶わなかった想い、それを抱えてどれだけの――……どれだけの、犠牲と時を重ねたのでしょうか」
 そして、取り憑いた相手が『山田雪風と類似した相手だったとしたなら』――ソレを想像するだに犠牲者が出ているのだろうとリンディスは口にしないまま目を伏せた。
「よし、このバスティスさんにお任せアレだよ。
 昔は悩める若人のアレでコレでソレしたモノさ。何時の事かは、それは言わぬが花っていう奴だよ」
「よし、サポートを頑張る……が、デートのサポートって何……」
 デートと言えばお互いの服を選んだり、食事をしたり映画を食べあり共通の事を関したりetc……そんな在り来たりな出来事にサポートが必要になるのかと『策士』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は愕然とした。
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は「必要よぉ!」とリアナルに力説する。何せ、今回『夜妖:空想無為の彼氏』が取り憑いたのがあろうことか雪風だったからだ。
「よりにもよって雪風くんが選ばれちゃったなんて! さ、かわいい生徒の為に先生が一肌脱ぎましょ!」
 ある意味で『酷い』事を言っているが『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)はそれに気付かずこてりと首を傾いだ。
「デートというのは、初体験、だ。まあ、機微はよくわからないが、互いに、楽しみながら、楽しませば、いい。だろう?」
「ええ、そうよぉ。さ、待ち合わせに向かいましょうか」
 ――AM10:00。時計の下で。30分前から待っている男子達に『合流』してからオーダースタートなのだ。


「空想無為とは一体、どういう子たちだったんだろうなぁ。
 名前……まぁ私は直接会わないし空想無為、略してムイ君とでも呼ばせてもらおうかな」
 悩ましげにそう呟いたリアナル。カンペや事前の情報収集、占い。
 仲間達が準備する様子を見ながらaPhoneで調べたのは流行のタピオカ屋やレモネード屋。折角ならローレットの予算でタダ飯・タダ買い物を楽しみたいと流行のブランドも欠かさずチェック。
「それはそれとしまして、デートの皆様が楽しんで過ごせますよう黒子に徹し、進めましょう。
 さて、デートの補助、記録、情報収集は任されました。やっぱり必要なのはランチですよね」
 すいすい、とaPhoneで「デートにオススメ!」などのページをチェックし確認するリンディス。雪風へと情報を送付する準備はOKだ。
「さて、俺が素晴らしいデートプランを準備して遣ったぜ。
 昼はテークパークで笑い合いながら歩き……夜はいい感じの夜景見える所で楽しく語らいながら、後はベッドにしけ込んで……ってのが完璧なプランだが……こんなティーンばっかの面子でんな事できねぇわなぁ!?」
 飛のその言葉にエクレアは「無理だな」と小さく頷いた。まずは第一に雪風は実姉の影響もあり女性へと苦手意識が強い。それ故に『三次元女子』が苦手なのだろう――そして、夜妖とて同じくらいの女性経験値だろうと予測していた。
「今回はアーリアちゃんらはホステスだ。aPhoneでオタク男子達が好みそうなスポットを連絡してフォローしておくかね」
 行く先々の混雑もコネクションでカバーし、あわよくばラッキースケベというのも……と考えてから飛は叫んだ。
「俺がしてぇわ! ざけんな!」
 その言葉に笑うバスティスはペンとカンペを手にしながらデートの様子を見ようと、待ち合わせ時間より早めに場所へと向かっていたが――
「……見て? もういるの? 雪風君&無為君。え? 定君も? はーん。今来たところとか言うの? 言うんだろうなぁ」
 そういうのが男子の嗜みだって思って居るんだろうなあ、とバスティスは小さく笑った。はーん、と若干遠い目をしたのは気のせいなのだと長い髪を揺らして首を傾いだ彼女の傍でエクレアは「盟友、ぼかぁね、知っているのだよ。デートはオーソドックスに何とかすりゃあいい。あと、デートには雰囲気が重要だと賢いから本で知識を得たのだよ」と頷いた。

 エクスマリアとアーリアの二人で雪風とデートを、というのが本日のスケジュール。定は綾敷・なじみをデートに誘ったとの事で先に女性陣だけ合流だ。
 ほんの少しだけ遅れて小走りで「待った?」と手を振ってアーリアは雪風の傍へと辿り着く。可愛らしいワンピースはキャンディスリーブで甘めの雰囲気に。今日はお仕事だと恋人にも説明済みで準備は万端。そうして走り寄ってくるアーリアに雪風は「ヒッ」と小さく声を出した。
「今来たとこ……」
 ごにょごにょと声量をダウンさせていく雪風にアーリアは「こんな年上が隣に並んでてもおかしくないように……って服を考えてたら遅くなっちゃって」と瞬き、淡いアイシャドウで飾った目元をぱちりと瞬かせた。
 カンペが見える『お洒落した彼女を褒めよう!』とバスティスが出すソレに雪風は無理だというように口をはくはくと金魚のように何度も動かした。
「……似合うかしら?」
 覗き込まれれば「あああ、揶揄わないで」と慌てたように顔をぶんぶんと振る。雪風の手をくい、と引いたエクスマリアは「学園の、制服姿。制服デートなるものも、あると、予習してきたから、な。似合う、か?」と首を傾いだ。希望ヶ浜学園のプリーツスカートをちょんと抓んで上目遣いで伺うエクスマリアに雪風は「うう」と小さく呻く。
「なじみさん、今日は突然呼んでゴメ……」
「なじみさんがデートのお仕事のお相手で良かったのかい?」
 デートだと聞いたからお洋服は選んだよ、と胸を張ったなじみはVネックのニットを着用している。
(……なんだろう、いつも通りのなじみさんなのにデートと言うだけで輝いて見える! まぶしっ!)
 胸中は華やぎ躍り出しそうな心を飲み込んで「なじみさんこそ、今日はありがとう」とクールな表情を見せた。飛に言わせれば「可愛い服だね位言えよ!」――なのかも知れない。
「……と言うかアレだね、アーリアせんせとなじみさん、並んでるとまるで姉妹に見えるよ。髪とか目の色とか一緒だしさ」
「えへへ。だってさっ、せんせ」
 にまりと笑うなじみに「嬉しいわぁ」とつん、とアーリアはその鼻先を突いた。エクスマリアと手を繋いだままの雪風は「アーリア先生となじみさんのデートになる……」と呟いたのだった。


「さ、行きましょう?」
 さ、と手を差し出して自然に手を繋いだアーリア。制服を見せる為とエクスマリアと手を握りっぱなしだったことを思い出した雪風は「アッ」と声を発したが――時既に遅い。
「アーリアせんせ、何て自然に手を……! いや、僕にはまだ早い」
「定くん? はい」
「いやっ」
 それは、と叫んだ定の様子にエクスマリアは首を傾いだ。じい、とその様子を見詰めながらゲームセンターをベースに行動を、とデート開始。
「雪風は、こういった場が得意、らしい、な。では、遊び方を、教えて貰おう。
 レース勝負も、面白そう、だ。それに、ふむ。太鼓を叩いたり、踊る遊戯もある、か。これならば、マリアも出来そうだ、な。やるぞ、雪風」
「マリアさんは、その……あんまりこういう所、来ない?」
「ああ」
 こくん、と頷くエクスマリアに雪風はうず、とオタク心を擽られたように教えたいとそわそわし始める。その様子をタピオカミルクティーを飲みながら見詰めていたリアナルは「あぁ、そうだ。デートと言えば障害がつきものだな……」と小さく呟いた。
(私も飲み屋以外詳しくないし、仲間の皆のaphoneからの助け舟やカンペにお世話になりましょ!)
 よし、とやる気を溢れさせるアーリア。デートを記録するリンディスは何を喜び、何を楽しみ、どんな時間を過ごしたか――そして再現性東京でそのデートがどんな意味を持つ者なのかを事細かく記載し続ける。彼等にとってはかけがえのない日常で自分たちとっても想ってもみない部分があるかもしれないのだ。
(あと、慣れてない雪風さんが少しでも慣れる切欠になっていただければと思いますので。
 雪風さんのお好きそうな……らいとのべる? 風に書いていければ良いかなと思いますが、出来る範囲で)
 新たな世界の扉を開きそうなリンディスの傍らでバスティスがもそもそ、と物陰でカンペを描いていた。
『無理に面白い話しようとせずに自然体に』
『上手くカッコつけるのはまだ難しいと思うので一緒の時間を楽しむことを楽しみましょう』
 とても無難なカンペが見えて雪風はふう、と息を吐く。ゲームセンターの中で定がペットボトルのドリンクを購入している様子を見ながら背後でバスティスがアーリアへとカンペをちらみい
『お酒抜きで』(そうヒエログリフで描かれている)
「ひ、ヒエログリフは読めないわよぉ!?」
「え?」
「な、何にもないわぁ!」
 慌てた様子のアーリアは音楽ゲームを楽しむエクスマリアと雪風を覗き込む。やりこまれているゲームでは可愛らしいツインテールの少女が踊っている。
「これはなんて子なの? かわいいわねぇ」
「これは、リリアンちゃんって言って……」
 そうして会話を重ねれば、きっと普段通りに落ち着いてくれる。レースゲームもしましょうと誘えばエクスマリアもこくりこくりと頷いた。
 背後で、定はダブルデートだと言ってもずっと一緒では夜妖も納得しないかもとなじみをくるりと振り返る。
「なじみさん、ぬいぐるみとか興味ある? ほら、どまんなカくらしのメンチカツとかあるよ」
「頑張って取ってね!」
 どちらも前途多難そうなのだとバスティスはにんまりしながら見守った。これって、きっとアオハルなのだ。


「やあそこの君達、特に男性から特別なオーラを感じるよ。どうだい、お金は取らないから手相を占わせてくれないかね?」
 にんまりと微笑んでエクレアは占い師のコスチュームでそう声を掛ける。カンペで「GO!」と見えたことで一行は占いマスターEと名乗るエクレアの占いを受けてみることにした。
「おぉ。君すごいね、恋愛運オーバーフローだよ。長年色々な人を占ってきたけどこんなの初めてさ。君はきっと二人と一層仲良くなれるだろう。なぁに、占いマスターEのお墨付きさ」
 そう言われると緊張したように雪風(無為くん)がちら、とアーリアを見る。にんまりと微笑まれれば心臓が激しい音を立てるのだ。くい、と手を引いたエクスマリアとの相性も良いとエクレアが伝える。その結果を話の種に、食事へと向かう最中――
「あれ? マリアさんは?」
 逸れた、と雪風が慌てた様に言えばリンディスが「あちらで会ったのです」と微笑んだ。
「そうだ。はぐれない魔法があるんですよ? 手をつなぐ、というんですけれど」
 提案に雪風がまたも『金魚』になっている背後でR級AG【饕餮】に乗った飛がロボットの振りをしてエクスマリアをエスコートしてくる。
「イヤ、ワタシハソノヘンニイル一般ロボットデスヨ」
「ロボットだ!」
 はしゃぎ始める雪風と定、なじみに飛は「男の子なんてなぁおっぱいよりロボットなんだよ!」と呻いた。彼自身はどちらかと言えば前者が欲しいが、それはお口にチャックした。
 その背後ではリアナルが「ねぇねぇお兄さんがた私がお相手しましょうか? 私今暇なんですよね」と蠱惑的な笑みを浮かべている。今回の男性陣の外見は屈強とは懸け離れている故に、こうして狙われる可能性も鑑みていたのだ。
 にまりと微笑んだリアナルが『邪魔者』を眠らせ対処する中、皆揃って食事とカラオケへ。
「うーん、でも、みんな可愛いなー、青春だなー、アオハルだー。キュンキュンきちゃうよねー。
 皆が皆、青春して恋愛して、可愛い子供を作って見せに来てくれると嬉しいなー神様してるとそういうのホント嬉しいんだよねー」
 ふふ、と微笑むバスティスの傍らで「成程成程」とエクレアは頷いた。自称引きこもりぼっちの彼女は陽の気配でやられてしまいそうなのだ。
「マリアは知っているぞ。シェア、と言うらしい。あーん」
「あ、あーん……」
 エクスマリアと食事をシェアし、あーんまでこなすエクスマリアに雪風が叫びだしそうになる。
 取り皿を貰い慣れた調子でシェアする定になじみは「此れ頂戴?」と気兼ねなく手を伸ばしていた。


「カラオケ、楽しかったわねえ。すぴかちゃんを熱唱しちゃったわ。
 雪風くんたら、マリアちゃんにプリ★プリの主題歌をお願いするんだもの……ふふ、さあて」
 アーリアがゆっくりと顔を上げる。雪風の傍に『何か』が立っていた。それに気付いて飛は「下がってな」と雪風となじみを後方へと誘う。リアナルは彼に「無為くん?」と声を掛けた。
「……成程、君が無為君か」
 頷いたエクレア。彼に『おわかれ』を与えなくてはならない時間がやってきた。
 リンディスは未来を綴り過去の彼へと静かに『続き』を与える。
「夢はおしまい、ですよ。――ほら、早く起きて」
 手を伸ばし、その姿がはっきりと双眸へと映り込む。空想だらけの少年は「おしまいかあ」と唇を動かした。
「楽しかったろ?」
 飛の言葉にこくり、と少年は頷く。エクスマリアはそう、と彼に「マリアも楽しかった」と告げた。
「よかった」
「ええ。とっても楽しかった。だから……おやすみなさい、一日だけの恋人さん」
 アーリアの告げた別れが、彼との一日の最後を終わらせる。眠って起きれば月曜日、いつもの日常がやってくる――その前に、少しの余韻を楽しもう。
「雪風くんも、楽しめたかしら?」
「楽しかった、す。えと、今回はご迷惑をおかけして……」
 ぽそぽそ呟く雪風にバスティスは「お疲れ」とカンペを出して揶揄い笑い、リンディスは纏めたライトノベルをそうっと手渡した。
「なじみさん、今日は有難う。どうだろう、デートに僕は馴染んでいたかい?」
「とびきり馴染んでたぜ、定くん」
 にんまりと微笑んだなじみに定は頷いて、そう、と雪風へと手を差し伸べる。
「山田さん、いや、もう僕らの仲だ。ユッキーもお疲れ様」
「――お疲れ様。ジョーさん」

 もうすぐ、一日が終わる。君と過ごした――かけがえのない一日が。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この度はご参加誠に有難う御座いました。
 雪風君の心が重傷を負っていますが……とっても素敵奈想い出になったと思います。

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