PandoraPartyProject

シナリオ詳細

あの日夢見たあの白い服

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ホワイト・ハクイスキー
 幻想のとある小領地の領主、ハクイスキー様はたいそう清廉・潔白なお方との評判である。
 いかに巧みに金を握らせようとしても、袖の下などは受け取ろうとしない。
 特に地域の医療改革についてはひどく熱心で、資材を投じて診療所を立てている。また、研究者にも金を出すことで評判だ。
 しかも、学会などがあれば必ず顔を出し、なるべく自らの足で成果を見て回るというのであるから感心である。
 気難しい風貌相まって、声をかけるのは恐れ多いというものが多いが、けれども、領民から慕われているのであった。
 雨の日も風の日も嵐の日も、視察を欠かしたことはない。
 そんな彼が、最近は姿を見せないというので、何やら悪いご病気なのではないかと領民はたいそう心配しているのである。

●<急性白衣欠乏症>
「息子よ、私はもうだめだ……」
 力なく寝台の上に横たわるホワイト・ハクイスキー。
 頬はげっそりとこけ、見るからに元気はない。
「父上! いい加減にしてください」
「いや、私にはわかる。私はもうだめだ。お医者さんを呼んでくれ。看護婦さんでもいい」
「またですか? それ何回目ですか? みなさんお暇じゃないんですから、我慢してください」
「わかったわかった、もうこの際コックでもいい! コックでいいから! なんか絵具だらけの芸術家でもいい! たのむ!」
 領主の威厳はどこへやら。
 このみっともなく駄々をこねているのがホワイト・ハクイスキーであった。
「やだやだ! 白衣を着てくれなきゃやだやだ! は・く・い! は・く・い!」
「うわっ、漂白剤を投げるな!」
「まだらに色落ちした衣服なんぞ白衣ではないわ!」
「ならなおさら投げないでください!」
 なんのことはない。
 彼の行いは、完璧なる趣味以外の何物でもない。

●一大事
「領主様がご病気なのです!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、ぱたぱたと羽を震わせる。
「へぇ、ビョーキ?」
 目にバンドを巻いているアラク(p3p002078)はたいそうミステリアスで……性別もどちらだろうか。声を聴いて分からない。似合うだろう。
「できることはありますか?」
 リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)は真摯に言う。できることなら、と心配そうにするリディアは頼めばきっと着てくれるに違いない、あの衣装を。
 歯切れの悪いホワイト・メガネスキーは、ホワイト・ハクイスキーの息子である。うっかり打算をしてしまった自分を恥じた。白衣に対して父ほど執着がないメガネスキーは、可愛い子が着てくれたらなー、なんて思ってしまうのである。
「まあ、病気と言えば病気なのですが……ええもう、末期というか、はい。
ええと……恥ずかしながらわが父は白衣というものに目がないのです。さいきんご無沙汰で、かかりつけのお医者様が普段着で来たものだから、ぶっ倒れ、いよいよ熱まで出す始末。
みなさんが白衣を着てそれっぽいことをしてくださればけろりと治るに決まっています」
「それっぽいこと、とは……?」
「あの人は白衣なら何でもいい人です」
 ホワイト・メガネスキーは真顔で言った。

GMコメント

●目標
白衣を着てホワイト・ハクイスキー様を元気にしてあげてください。

●オーダー
・白衣を着てください(必須)
 ハクイスキー様はたいへん懐が深くあらせられます。
 老若男女問わず、すべての白衣が好きです。
 THE・白衣といったものから色味がかったもの、白衣であれば何でもオッケーです。
 汚れるのは白衣の宿命。オッケーです。
 白衣は着てくださいお願いします命がかかっているんです(懇願)。
 なんか白衣っぽく専門用語を交えたりすると喜びますが、厳密さは求めません。
それっぽければいいです。お願いします。

●場所
 ホワイト・ハクイスキー領主の館
 ありとあらゆる白衣、白衣に必要な場所や小道具はすべて完備してあります。
 更衣室もあります。

●登場
ホワイト・ハクイスキー
 白衣が好きすぎて好きすぎて好きすぎて仕方のない領主。本来は気難しそうな顔をしていると思われている。慈悲深く、自費で診療所を建てているというが白衣目当てである。若い頃は勇敢に戦場に立ったというが、それも野戦病院の白衣目当てであった。
 まあ白衣が好きすぎるという事以外は悪い人物でもないだろう。

ホワイト・メガネスキー
 色濃く父の血を受け継ぐ息子。

●病状
ホワイト・ハクイスキー様の病状はひどく悪く、今は寝台で臥せっています。息も絶え絶えといった様子です。

Level1:
 白衣の気配を感じると、ベッドから起き上がれるようになります。

Level2:
 白衣を追って、なんとかよろよろと歩き出します。

Level3:
 白衣を着て白衣っぽいこと(白衣ロール)をすると、元気にお庭をスキップできるようになります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • あの日夢見たあの白い服完了
  • GM名布川
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月14日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラク(p3p002078)
出来損ないの蜘蛛
※参加確定済み※
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
※参加確定済み※
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー
リィン・リンドバーグ(p3p009146)
希望の星
ルーナ・サリエル(p3p009157)
堕天使

リプレイ

●フライング白衣
「今回依頼を受けてくださったのがこちらの……」
「ふおおおおおお!」
 こぶしを突き上げてベッドから起き上がった領主。
「こ、これは!?」
「『希望の星』リィン・リンドバーグ(p3p009146)様ですね」
「”白衣を着ている”……っ!?」
「落ち着いてください! リィン様の白衣は亡き養父、リンドバーグ様のもの。……立派な遺跡探索家であられたと聞いております」
「そ、そんな白衣を……一瞬でも邪な目で見てしまったのか……私は……」
 それについては本当に反省したほうがいいと思うが。
「『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)様は、巫女服ではどうかとのご提案でした」
「巫女服、巫女服かあー」
「白衣とはニュアンスが違いますが、「びゃくえ」とか「しらぎぬ」などと呼ばれているそうです。あの、依頼書そろそろ返していただいてもいいですか? 個人情報なので」
「海洋……瑞稀神社かー……」
「ちょっと!」
 悩むそぶりをしつつ依頼書を手放さない領主。

●選べる白衣!
 更衣室にずらりとかかった衣装。
 全てが白衣か、もしくは白衣と合わせるためのものだ。
「……ようはただの特殊嗜好持ちの変態じゃねえかぁぁぁぁ!!!!!?」
『ねむりの憧れ』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は騙されたことに気が付いた。
「なんだよ急性白衣欠乏症って!? しかもかかりつけ医が普段着なだけで倒れる!? なんかもうツッコミどころしかねえぞオイ!? 刀剣収集家のカタナスキーとかいそうだな!?」
「又従弟です」
「いるのかよ!? おい、しれっと更衣室に入ってくんな!」
 異常なまでに性癖に素直な一族らしい。……知り合いにそんな博士がいるような。ちょっと頭が痛い。
「白衣ならなんでもいいって、なかなかに雑食な領主様だね? いや、この場合は偏食なのかな。
でもまあ、自分も結構なんでも食べれる方だからちょっと親近感あるよ」
『出来損ないの蜘蛛』アラク(p3p002078)は器用に衣装を見繕っていく。
「同じか? ほんとに同じか!?」
「……白衣不足で倒れちゃうなんて、領主様は、本当に白衣が好きなのですね」
『小さな決意』マギー・クレスト(p3p008373)は、可愛らしくはにかんだ。
「ボクにはよくわかりませんが、倒れちゃうくらい好きなものがあるのはちょっとうらやましい気もしてきました」
「……まあ、僕とてこれを失えば正気を保てるか……些か自信はない。さすれば氏の気持ちも分からなくもないというもの」
 リィンは大事そうに、自身の白衣の袖を握りしめる。
 わがままばかり言っていた自分の頭を、養父が優しく撫でてくれた。
「うんうん。その「好き」を押し通す為に沢山の功績を立ててきたのは凄いと思うよぉ。領民の人達にも慕われてるみたいだし、大分変わってるだけで、決して悪い人じゃないんだろうねぇ」
『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)は、鏡を見ながら、ぴよんとあふれた触角を戻した。
「……はぁ、はぁ……こほん。まあとにかくだ。治せばいいんだろう治せば。だったらこっちにも考えがあるぞ」
 アレンツァー、いや、『紫電』は、衣装一式を持参していた。
「おや、希望ヶ浜学園での格好かい?」
「おっと、そっちもか。養護教諭だったか?」
 ここの白衣はなんか妄執が染みついてそうで怖い。
「なんでも選べると、逆に迷ってしまうよね」
 アラクはふむと首をかしげる。
 コックさんも、医者も、色々と気になる……。
 言ってしまえば、今回の依頼はなりきりコスプレみたいなもの。
 めいっぱいに萌えを詰め込みたい。
「んー、どんなものを着ようかなあ……お医者さん、誰かいる?」
「フフフ、カリスマ医師がここにいるとも!」
 ばーんと白衣をなびかせるのはルーナ・サリエル(p3p009157)。ひとたび白衣をまとえば、名医のカリスマを醸し出す。
「これぞまさに「白衣の天使」! シルキィ君と力を合わせれば隙はない。どうだい? 手を組まないかい?」
「助かる。養父から多少習ったとはいえ、実践はまだ少ないのである」
 頼りにしているとリィンが頷く。
「それじゃあ、自分は看護師にしようかな」
 アラクが手に取ったのは、ケーシー型の白衣。着てみると首筋がすうと風通し良い。水色やピンク色もあるが、ここは、オーソドックスに白としよう。
(靴は……ナースサンダルでいいかな)
 ストレートの長髪は、見事にお団子にまとまった。
「む、器用なのだわ」
「編むの、お上手ですね」
 華蓮とリディアが感嘆する。
「なんなら結ってあげようか?」
「わ、ほんとうですか?」
「お医者さんたち、師範、看護婦さん。なら、私は栄養士さんよっ」
 ポニーテールを揺らす華蓮。
「ぼ、ボクも頑張りますっ! よろしくお願いします!」
(ふふ、みなさん、本当に似合っています)
 一回り大きなサイズの長袖の白衣に袖を通しながら、ふと、リディアは思う。
 白衣を着て見せるだけで、本当に領主様は元気になるのだろうか?
 本当に何か病気になってたとしたら……。
(私には見抜くことは出来ないけれど、心を込めて看病することは出来るはず)
 領主様が早く元気になれるよう、一生懸命看病しなくては。

●被弾
 こんなこともあろうかと。シルキィが眼鏡をくいっとして現れると、メガネスキーが思いっきり吹っ飛んだ。
「ぐはあっ!」
「どうかな? こんな感じならお父さんのお眼鏡に叶うかなぁ……?」
「は、はいいい。ぜひ! ぜひありがとうございます!」
「? あの、どうかしましたか?」
 リディアのラウンド型の伊達眼鏡が性癖にクリーンヒットしたメガネスキーは、再びその場で崩れ落ちた。
 ……可憐だ。きょとんとして眼鏡を直す仕草がまた、良い。
「重傷なのだわ……」
(!?)
 メガネスキーは、放心したように華蓮に見とれた。
 ふわりとまとまるポニーテールを彩る、活発な赤ぶち眼鏡。強気そうな表情の中に、心配そうな母性が混じっている。
「ふむ、どうかしたのかね?」
 カツカツ、と音を響かせて、更衣室から出てくる白衣の天使。with眼鏡。
「はわああああああああ、はわああああああああああ!?!?!」
「どうした? もっと良く見せてもらおうか」
「……ありがとうございました。生きててよかった……心からそう思いました」
「えっと、これからですよね?」
「あ、そうでした。父上がピンチです!」
「ええと、車いすなど、ないでしょうか? 長く臥せっているということでしたので……」
 マギーがおずおずと頼み込めば、断れるわけもなく。
「良いお考えです。すぐにご用意いたします。父は(はしゃぎすぎて)倒れています……。よろしくお願いいたします」

●なぜか保健室っぽい寝室
 消毒液の香りが香る真っ白な部屋。
「こんにちはぁ、息子さんに呼ばれて駆け付けてきたよぉ。お身体の具合はどうかなぁ?」
 シルキィが戸を開くと、ハクイスキーの咳が止まった。
「お邪魔するねぇ」
 白衣の一団が、病室に舞い込んだ。
「リィン・リンドバーグだ。多少の心得はある。早速、診察させてもらおう」
 額帯鏡をつけてたリィンは、領主に聴診器を当てる。口を開けてもらい、中を照らした。
「なるほど、ここ数日、一度も白衣を見ていなかったんだねぇ」
 シルキィが聞き取りをしていく傍ら、アラクは脈拍を測る。まあ、フリのようなものだが、構わないだろう。
「う。こんなにも素晴らしい白衣が……こんなに。先生がいないと……めまいと動機が……ごほっごほっ……」
「先生、どうでしょうか、父は……」
 ルーナはもったいぶったように、ゆっくりと首を横に振った。
「ふむふむ……成程……魔眼も使うまでもなくこの男の症状……そう……白衣ニウムの欠如による衰弱であろう」
「うんうん、これは白衣欠乏症だねぇ」
「”白衣ニウム欠如による白衣欠乏症”っと……」
 アラクが先生方の診断をさらさらとカルテに記入する。
 言い換えると……ただの思い込みによる衰弱である。
「全く! 度し難いな!! だがそこまでナニカに拘れるのもまた人の子の強い想い……愛というものか!」
 生まれ持ったカリスマというもの。きらきらと輝くルーナの前で、天使の裁きを待つ人間よろしく、一挙手一投足に見とれるしかない。そうであろう、とルーナは納得する。
(うむうむ、我のチョー好みだ。正直濡れそう)
 ぽんぽんと布団を叩く。
「よしよし、愛し子よ。思う存分この白衣を愛でるがいい。ついでに薬も処方してやろう」
 景気よく振る舞われるスペシャル・ポーション・オフェンスを浴びて幸せそうに起き上がる父親。
「あっ、ずるい、ずるいですよ!」
 それにつられて立ち上がったのは眼鏡に反応した息子のほうであった。
「ほう? 汝もか? よかろう! 汝の眼鏡に対する「愛」もしかと受け入れた!」
「よよよよよろしいんですか!」
「思う存分愛でるが良い!」
「「ありがとうございますっ!!!」」
(そっくりじゃねぇかよオイ)
「フフフ、愛い奴等だ……我は嬉しいぞ! おっと、ちなみにだがあまり我の髪の中を見るではないぞ? ペットのゲイザー君達がびっくりしてしまう故にな」
「ぼわっ」
 球体の邪眼の深淵を覗き見たハクイスキー。
 なんだかうぞうぞとしたものを見た気がする。
「は、白衣でなければ即死だった……」
「ん~? 何かあった? 注射、はさすがにアレだよね」
 覗き込むアラク。
 結構、秘密の多い一行であった(だが、白衣なら全て良しである)。

●食事の時間です!
 ルーナが治療を行っている間に、リィンは、これからの治療方針を考えていた。
(精神的のダメージが大きいのだろうが、重篤な病があるではないのだろう。しかしこのままでは本当に大きな病に成りかねない)
 ちらりとはしゃぐハクイスキーを見るリィン。
(恐らく白衣を着た者達に信頼を置ける様々が事があり、それで氏は知らず知らずに白衣を見るとその信頼を無意識に感じ取り安心を得ていた。
……だから逆に白衣を目にしないと不安に陥ってしまう、てな所だろうか)
 健全な生活習慣を取り戻す事が大事なのだとは思うが、しかしまた白衣が欠乏したら元の木阿弥である。イレギュラーズたちも、しょっちゅういられるわけではない。
「ハクイスキー氏、まずは栄養のあるものをしっかり食べて日の当たる日は外に出て軽く運動をしてください」
「ふむ……」

 というわけで、食事の時間だ。
「お世話の仕方は乳兄弟に習ってきたので、たぶん、きっと、大丈夫です! ……多分」
 語尾は自信なさげにしぼみ、そっとメモを見るマギー。初々しく可愛い。
「ええっと、お水飲んだりお話しするときは少し身体を起こしてあげた方が良い……と」
「お、お手をどうぞ」
 リディアとマギーが、せーのでハクイスキーの体を起こす。ご老人とはいえ、男性と身体が触れ合うのはちょっと恥ずかしかったが、リディアは平静を装う。これも治療のためだ。
(食事の介助に、脈拍測定、……必要とあれば下の世話だってしますよ)
「ンンン! いや、結構、いたいけなハーモニアにそんなことはさせられん……!」
 頑張って自分で起きるハクイスキー。デレデレしているので説得力はない。
「領主様、ご飯ですよ。私が食べさせてあげますね。はい、アーンしてください」
 ぷい、とそっぽを向くハクイスキー。
「いやだ。……私は絶対にまだ、この天国に居座るぞ!」
「そんな……っ!」
「領主様、よく聞くのだわ」
 華蓮はずっしりとした本を持って、片手に教鞭を持っていた。先生モードだ。
 勝手に背筋が伸びる。
(と言いつつも、ご家庭レベルの栄養知識しか正直ないのだけど……)
 大切なのはそれっぽさ。マギーもきらきらした目でこちらを見ている。コホン、と咳払い。
「さて……お野菜を沢山食べるべきっていうのは今更でしょうけど……具体的には? 凡その目安は350g……両手に山盛りにして丁度それくらいなのだわよ」
「はいっ、用意しました」
 リディアが野菜を持ってくる。
「350g、多いですね」
「生でなくても大丈夫。スープなどに加工すると、かさがへるのだわ。まあ、加熱すると栄養素が壊れてしまうこともあるけれど……」
「むふふふ」
 幸せそうなハクイスキー。
「大雑把で良ければ……赤白黄緑黒5色の食べ物を意識して全部食べる事で、栄養バランスは大体合うのだわ」
 ぺらりとページをめくる。
「ただし、例えば林檎は白の分類なのだわ、実は白いから、後は嗜好品や着色料を含んだものもノーカンなのだわよ!」
「わぁ……」
 感心したようにこちらを見るマギー。
「ワンモア! ワンモア!」
「食べてからですよ」
「むむむうう」
「領主様、もう私の白衣姿に飽きてしまったんですか?」
 リディアが悲しそうに言う。
「そんなわけなかろう、違う、違うんだもっと見ていたかっただけなんだ」
 そして、完食。
「全部食べて下さってよかったです。これ」
「これは……」
「ボクのとっておきのお薬……ホットミルクです」
「む」
 ほのかに甘い。
 はちみつが隠し味のホットミルクである。
「ご飯たべて元気になったら、歩く練習しましょうね!」
 マギーが微笑む。
 その様子に、領主は深く恥じ入っていた。「これからも元気に過ごせるように」との配慮だ。今だけじゃない。これからを見ている。
(これは……この温かさは……白衣だけの力ではない……)
 そうか、これが……献身の精神というものか。
「車いすを用意しましたから、一緒にお散歩しましょうね」

●領主様が立った!
「そもそも、刀というものは……」
 竹刀を持って指導を行う紫電。
 ハクイスキーは真剣な表情でそれを聞いている。
 視線が注がれているのは本体ではなく、幸い……? にも、義体のほうだ。まだ少しマシではある。
(思ったより元気だな!?)
 羽織るだけの白衣も、また良し。ハクイスキーは幸せだった。もしも若かりし日、希望ヶ浜学園にいたならば剣道部に入部届を出していたことだろう。型を一通り披露すると、感涙していた。
「なんでだよ!?」
「素晴らしい……そのような考え方もあるとは……素晴らしい……」
 感動されている気がするが、別の方向のような。
「私は情けないながら、白衣と言えばお医者さん、コックさんにばかり執心してきたものだ。このような白衣もまたあったとは。教えられた気分だ」
「……まあ、これからハクイスキー殿が元気に外へ出れるというのなら、この服のまま庭に出て実践で指導しなくも、ない、けど……」
「何!? 本当か!?」
 車いすから立ち上がるハクイスキー。
「元気じゃねぇかよ!?」
「あ、そのままで! 甲冑はつけないでくれ! 頼む!」
 筋金入りである。
(まあ、いいか)
 実戦をするわけでなし……ちょっと付き合ってやるくらいなら、と、なんだかんだ優しいのであった。

●良さ
「ありがとう、イレギュラーズ諸君。今度は私から白衣の良さについて知ってもらおう」
「わあ、ほんとうですか!?」
「おい!」
 こんどは、ハクイスキーから白衣についての授業があるようだ。いや、ほんとに余計なのだが。
 長い上にマニアックだ。
「そういうものなのですね」
 素直に聞くリディア。
「なんだかんだ、世話を焼くのは嫌いじゃないのだわ。でもうーん、どうなのかしら?」
 華蓮はわかったようなわからないような。
「まあ、元気になったようでなによりだよぉ~」
 と、シルキィ。
「ここのお洋服、良い糸だったね。本気なのが分かるよ、うんうん」
 アラクは頷いている。
「しかし……一口に白衣と言っても奥が深いのだな……白衣だけでこれ程のパターンがあるとは」
 ルーナは面白そうに口の端を持ち上げる。
「流石愛しい人の子等よ。その想像力は無限の可能性を秘めてる。うむ、これからも精進してほしいものだ」
(これ以上……!?)
 紫電は頭を抱える。
 マギーは、周りをそっと見渡してみた。
(大人っぽく着こなしてる方はもちろん素敵ですが、こう、小柄な方が大きい白衣を着てらっしゃるのは愛らしいな……と思います)
 リィンしかり、リディアしかり。ぴったりと体に合わない白衣もまたそれぞれのストーリーを持っている。
(これが、ギャップ? というものなのでしょうか)
 少しだけ、分かったような気がする。
「ボクもちょっと大人の階段を昇れた気がしてきました!」

「お気の毒ですが、領主様の病は完治する病ではありません」
 リディアは悲しげに、きっぱりと告げる。
「そ、そんな……」
「今後、再発する可能性があります。それと、息子さんへの遺伝の可能性が……常に領主様の側で白衣を着て働いてくださる幻想種の方がいれば、もう再発の心配は……?」
「良い考えですね!」
「では契約を確認していただいてこちらにサインを」
「え?」
 その条件に自分も当てはまることに気がつき、慌てて付け加える。
「私はギルド・ローレットの活動がありますので依頼完了後は働けませんごめんなさい!」
「せめて毎週、いや隔週でいいので! お願いします!」
「定期的に健康診断として医者を呼ぶ……というのはどうだろうか?」
 なるほど、リィンの提案はいいかもしれない。必要なものであるし。
「困ったことがあったらいつでもいいなさい」
 キリッと言うハクイスキーだが、白衣目当てなのだろうことは想像に難くはない。
「気が向いたらね?」
 と、にやりと笑うアラクであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

白衣!白衣!白衣まみれ!
かくいう私も白衣が大好きです……!
素敵なご依頼、ご指名ありがとうございました。こんなにふざけた症状だというのにたいへんに優しくしていただいて、ハクイスキー様もほくほくでございましょう。
白衣をまとうことがあれば是非お知らせください。のけぞってよろこびます。

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