PandoraPartyProject

シナリオ詳細

適応するG。或いは、1匹見たら100匹はいる…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●地上最強生物
 生きていくのは大変だ。
 暑さが、寒さが、疫病が、飢餓が、戦争が、事故が、あらゆる事象が寄って集って人を死へと至らしめる。
 人間は、いかに弱い生き物なのか。
 生まれながらに体が弱く、定期的な薬の服用が無ければ生きていけない我が身を顧み、1人の女性はそう嘆く。
 ところは練達。首都セフィロトの一角にある移動研究所“ソシエール”
 その管理人は1人の女性研究者であった。
 黒いドレスにウィッチハット。
 意図的に古の魔女の服装をした妙齢の女性、名を“ドクター・ストレガ”という。
 生き辛い世を生きやすく。
 彼女の目的は、およそどのような環境であれ生存可能な機械の体の開発だった。
 完成した機械の体に自分の脳を移植すること。それが彼女の最終的な目標であり、そのための研究を長年続けているのだが、果たしてなかなかストレガの理想に足る体は完成しない。
 そうして、彼女は何を血迷ったのか……。
「あ……アレなら、どんな環境でも適応できるわ。アレだ、アレ。アレ作ろう。キッチンの黒い悪魔をベースに、1つ作ってみようじゃないの」
 なんて、呟く彼女の顔色は蒼白。
 寝不足で虚ろな視線に、紫色の薄い唇。
 脳みそも碌に回っていなかったのだろう。
 けれど、長年研究に費やし、そして適応した彼女の体は脳が半ば眠っていても勝手に動いて結果に至る。
 つまり、完成してしまったのだ。
 ストレガ曰く“どのような環境”にも適応できる、究極の体。
 黒く輝く軽量金属の体。
 6本の脚は悪路も壁も意に介さずに駆け抜ける。
 頭部から伸びる触覚や、腹部、尻部に付いたセンサーにより空気や地面の震えを即座に感知する。
 体長はおよそ1メートルほど。
 背の翅に刻まれたコードネームは“Mother・G”
 最大100体にまで増殖する機能を持つそれは、ストレガの技術や知識の粋を集めた最高にして最悪の発明品だった。
 それから、数日……。
「やっべぇ……寝て、起きたら、えらいことになってるわ」
 移動研究所“ソシエール”の入り口前で立ち尽くすストレガの姿がそこにはあった。
「何でゴキブリなんかベースに作っちゃったんだろ。アレに脳を移すのは勘弁だし、近寄りたくないし」
 占拠されてんじゃないのよ、と。
 そう呟いたストレガは血を吐きその場でひっくり返る。
 そう言えばMother・Gに追い立てられたその結果、しばらく薬を飲んでいない……。

●黒い悪魔
「……語ることは何もないです」
 そう言って『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は踵を返し立ち去っていく。
 そんな彼女を呼び止めて、イレギュラーズは半ば無理やりに詳しい情報を聞き出した。
 ユリーカとしては、今回のターゲットである“Mother・G”と、その量産型である“kitchen・G”の容姿など口にしたくはないのだろう。
 とはいえ仕事は仕事として、きちんとこなして貰う必要がある。
「うぅ……今回のターゲットは、1メートルほどの巨大ゴキブリの討伐なのです」
 正確に言うなら巨大ゴキブリ……以下Gと呼称する……型の機械である。
 製作者であるストレガが睡眠不足のおかしなテンションのまま作り上げたせいで、見た目や触れた感触は本物のそれと酷似しているようだった。
「素早い動作に回避能力、そして非常に頑丈で、状態異常にかかり辛いという特性を持つのです」
 その攻撃には【窒息】や【狂気】が付与されている。
 そして何よりの特徴として“マザー・G”を破壊しなければ最大100体まで増殖するというものがあった。
 ストレガ曰く「1匹見たら100匹はいると思えって言うから」とのことだ。
 幸いなことに“キッチン・G”はマザー・Gに比べると弱く、そして体躯も小さい。
 およそ30センチ前後といったところだろう。
 その主な目的はデータ収集ということだ。
 キッチン・Gが集めたデータは、即座にマザー・Gに転送され、その生存能力向上に役立てられるということだ。
「幸いなことにマザー・Gを破壊すればキッチン・Gの機能も停止するです」
 そのため、移動研究所“ソシエール”内を闊歩するGたちを1体1体破壊して回る必要はないのだ。
 あくまで必須のターゲットはマザー・Gのみということになる。
「ソシエールの内部はほぼ1本道なのです。ただ、ストレガが作ったガラクタや発明品、部品があちこちに散乱していてるのです」
 そのため、通路幅や施設規模の割に人が通れる範囲は存外狭いのである。
「研究所の外見は、ムカデに似てるです。全長200メートルほどですけど、およそ30メートルごとに隔壁があるから、一気に移動することはできないです」
 隔壁はボタンを押せば簡単に開閉できるという。
 けれど、何か所かガラクタのせいでしっかり閉まらない隔壁もあるとユリーカは言った。
「マザー・Gが何処に潜伏しているかは不明ですが、ストレガが必要としている薬は最奥にある彼女の私室に保管されているのです」
 可能であれば、それも回収してきてほしい、と。
 そう言って、ユリーカはイレギュラーズを送り出す。

GMコメント

●ミッション
機械生命体“マザー・G”の破壊
※ストレガの私室にある薬の回収


●ターゲット
・マザー・G×1
体長1メートルほどの巨大なゴキブリ型機械生命体。
マザーを中心に、キッチンは最大100体まで増殖する。
キッチンとマザーは同機されている。キッチンの見聞きした光景はマザーにフィードバックされる。
マザーが同時に同機できるのは100体まで。
減った分のキッチンは、ガラクタを使って新たに作成し直すことができる。

黒い悪魔:物中単に中ダメージ、窒息、狂気


・キッチン・G×1~100
マザーがガラクタから作った小型機械。
サイズは30センチ~50センチほど。
元がガラクタであるため、非常に壊れやすい。
マザーが破壊されると、キッチンも活動を停止する。

弱・黒い悪魔:物至単に極小ダメージ、窒息


・ドクター・ストレガ
黒いドレスにウィッチハット。
顔色の悪い妙齢の女性科学者。
体が非常に弱く、定期的に薬を飲まねば命を落とす。
現在、移動研究所“ソシエール”の前でひっくり返って意識を失っている。


●フィールド
移動研究所“ソシエール”
内部はほぼ1本道。外から見るとムカデのような形をしている。
30メートルごとにある隔壁や、ストレガが作ったガラクタ、発明品、部品が移動の妨げとなる。
隔壁はボタンを押すことで開閉できる。また、操作しないと数十秒で勝手に締まる。
ソシエールの全長は200メートルほど。


●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 適応するG。或いは、1匹見たら100匹はいる…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月11日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
音無 九内(p3p008678)
バトルラビット
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女
紫薇・四葉(p3p009139)
クローバーイーツ代表

リプレイ

●“悪魔の巣食う”ソシエール
 移動研究所“ソシエール”
 練達。首都セフィロトの一角にある“ドクター・ストレガ”の住居であり、研究施設の名であった。 その外観は、例えるならば巨大なムカデといったところか。
 ムカデの口蓋部分にあたる出入口から施設内へ踏み入れば、そこに散らばる無数のガラクタが視界に映る。それらが何のために造られたのか、『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)には理解できない。
 だがしかし、無造作に積み重ねられ、部屋の端に押しやられた様を見る限りでは、とても大切に保管されているようには思えなかった。
「ええい、片付けが出来んのかクソババア!」
「はぁ……メンドいことしてくれるよねぇ……」
アランの怒声に言葉を返す『(((´・ω・`)))シ ミゞ』矢都花 リリー(p3p006541)は、左手の鋏で足元に転がるガラクタを1つ持ち上げる。
 見た目は金属の筒のようだが、よくよく見れば幾つかスイッチのようなものが側面に取りつけられていた。適当に押しては見るが、壊れているのか何の反応も示さない。
「やっぱ、ガラクタじゃん……ついでに全部壊していいと思うけどねぇ……」
 ぽい、と通路の端へそれを投げ捨てリリーはそう呟いた。
 カランコロン、とガラクタの転がる音が響いた、その直後……。
 カサリ、と。
 一行の視線の先の暗がりで、何かが僅かに蠢いた。
 どうやらそれは、次の部屋へと繋がる扉に張り付いているようだ。

 カサリ。
 カサリ、カサリ。
 カサリ、カサリ、カサリカサリ、カサリ……。
 カサカサカサカサ   
 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ   カサカサカサカサカサカサカ 
サカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ
 カカサカサカサカサ
カサカサカサカサカカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカ――
 
 僅かに開いた扉の隙間。
 先の部屋から這い出して来る黒い影。
 黒い金属で出来た薄い身体。ぬらりと艶めいて見えるのは、身体を覆うオイルのせいか。
 繊毛の生えた6本の脚で、壁に張り付き這いまわる。
 何かを探すかのように、頭部から伸びた2本の触覚が細かく上下に揺れていた。
 体長はおよそ30センチ~50センチほどだろうか。
 実際のそれとは異なるが、まさしくその姿はキッチンに潜む黒い悪魔……ゴキブリと呼ばれるそれである。
「ふふ、懐かしいな。私がまだ普通の猫だった頃、よくGを見つけてはシバキ倒していたものだ。ん……どうした御主等。顔色が悪いぞ?」
 重なり合いながら蠢く数十体のキッチン・G。
 それを視認し『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)はくすりと笑んだ。遠い昔、彼女がまだ単なる“猫”であったころを、ふと思い出したのだ。
 そっと近づき、跳びついて……。素早く動くGを追うのは、あれでなかなか楽しかったな……と。
 在りし日を想起したのだろう。
「……配達以外は初の依頼なんで、先輩たちの動きを勉強させてもらいます」
 そう呟いて『クローバーイーツ代表』紫薇・四葉(p3p009139)は『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)へ視線を向けた。
 そっと口元を抑える四葉の顔色は蒼白。【超視力】による、蠢くGの姿を細部までしっかりと見てしまったのである。なるほど、確かにストレガの技術は優れたものなのだろう。
 一見して機械だとは分からないほど、キッチン・Gのクオリティは高かった。
「うわぁ気持ち悪い! なんかわかんないけど気持ち悪い! いっぱいいるし! 会長帰りたい!」
「慌てず……騒がず……虫はもう克服した。大丈夫、何が起きても私は冷静」
 悲鳴を上げる茄子子の隣で『白い死神』白夜 希(p3p009099)は虚ろな瞳。ぶつぶつと唱える自己暗示に、果たしていかほどの効果があるのか。
「大丈夫。私は大丈夫……声ひとつあげない。それを証明し…………っ!!?」
 希はキッ、と唇を噛み締め顔をあげる。
 顔面は蒼白。唇は震え、瞳の端にはきらりと涙が一粒光る。
 けれど、目の前の脅威に立ち向かおうという確かな意思がそこにはあった。
 そんな彼女の想いに応えたわけではないのだろうが、瞬間、数匹のGが翅を広げ飛翔する。そう、Gは……飛べるのだ。
「うっし!  露払いやっちゃうぜ? 着装!!」
 驚愕に目を見開いた希の背後、ポーズを決めた『バトルラビット』音無 九内(p3p008678)は腰のベルトに手を翳す。
 その身が光に覆われた時間は、僅かに0.05秒。
 ぴっちりとした黒のボディースーツ。急所や腕を覆う銀の装甲。瞳を覆う赤のバイザー、頭部で揺れる長い耳。首に巻いたマフラーが、風もないのに激しく靡く。
 ダン、と地面を蹴り飛ばし。
 駆けた九内とキッチンGが交差する。
「バトルラビット! 行くぜぇ!」
 熱い咆哮。
 鋭い拳打が、キッチンGを撃ち砕く。
 舞い散る破片と、飛び散るオイル。
 ぴちゃり、と。
 それは『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)の頬に付着し、白い肌を薄茶に濡らす。
 瞬間、利香の身体がビクリと揺れた。
 瞳の端から、滂沱と涙が溢れだし、艶めく唇はわなわなと震える。
 そして……。
「Gって頭おかしいんじゃないんですか⁉ 睡眠不足キメすぎじゃないですか!? 第一奴ら鉄帝の方じゃ寒くて生きれないじゃないですかどこが無敵だこんちくしょー!」
 利香の悲鳴が木霊して、キッチン・Gはより一層に活気を増したようだった。
 さぁ、地獄のはじまりだ。

●黒き悪魔の蠢く地獄
 壁を、天井を、床を。
 カサリカサリと這うGを、踏みつけ、潰してリリーは進む。
「別にGとか踏んづけて潰せるただの昆虫ごときなのにさぁ……」
 じっとりとした眼差しで、潰れたGを一瞥し彼女は手にしたバールを振った。
 リリーの顔面目掛けて飛んだGの頭部を砕く。
「一寸の虫に三尺の野望とか完全ギルティだから……もう元のサイズまで叩き潰してわからせるしかないよねぇ……」
 降り注ぐ鉄片とオイルを避けて、扉に辿り着いたリリーは開閉ボタンへ手を伸ばした。
 
 追いすがるキッチン・Gをバールで叩くリリーの横を、白い髪を靡かせ希が駆け抜ける。
「邪魔なやつは蹴散らす」
 その手に握った手榴弾のピンを咥えて引き抜くと、アンダースローの体制で前方へ向けて投擲する。
 カランコロンと硬質な音。
 9秒の後、手榴弾から溢れだすは紫のガスだ。
 戦闘用に改造されてはいるものの、本来はGを殲滅するために作製されたものである。
 ガスを浴びたGが数体、ひっくり返って痙攣していた。
 残りのGはガスを裂けて部屋の端へと逃げていく。
「ははっ、道が開いた!  てかマジ周りが強くて安心っちゃ安心だよな! 敵キモいけど!」
 口元を手で覆い、ガスの中を九内が駆けた。
 その足元に群がるGを巧みに回避し、彼は次の扉へ向かう。
 Gたちの受けた攻撃や視認した光景は、即座にマザー・Gへとフィードバックされるため、不用意な戦闘は避ける方針であった。
 殴りつけるようにスイッチを押し、扉を開けた九内だったが……。
 さて、そう言えば……次に進んだ部屋の中にも大量のGはいるわけで。
「……は?」
 ゆっくりと開いた扉の間から、無数のGが溢れだし九内の身体を飲み込んだ。

「ぁぁあああああ! もう、何食ったらこんな悪趣味なのができるんです!?」
 悲鳴を上げる利香を引きずり、四葉は部屋を駆け抜ける。
 Gの山から九内が這い出し、2人の後を追いかけた。その身に負った無数の傷は、Gに噛まれて負ったものだろう。
「おらぁ、先行け先! 次の部屋の扉を開ける準備をしとけ!」
「此方の手の内をフィードバックで覚えさせる訳にはいかんからな。こいつらは、こっちの部屋に閉じ込めよう」
 開いた扉の前に立ち、剣を振るうアランと汰磨羈の間を抜けて茄子子とリリー、希が隣の部屋へ移った。 
 それを確認した汰磨羈が扉を閉める。
 ゆっくりと閉まる扉の隙間を潜ったGを迎え撃つべく、アランは剣を下段に構え腰を落とした。
「あぁ、ちくしょう! 来るなクソ虫!! 邪魔だ!」
 黄金の軌跡を描く一閃がGの身体を真っ二つに斬り捨てる。
 Gの飛翔にぴったりとタイミングを合わせた斬撃。回避する暇もなく破壊されたGの身体から散ったオイルが、アランの愛剣、星界剣〈アルファード〉をどろりと濡らした。
 閉まる扉のその向こう側。
 床を黒に染め上げる、数十体のGの姿がそこにはあった。
 扉が完全に閉まったことを確認し、四葉が次のスイッチを押す。
 その瞬間……。
 ガラン、と大きな音がして傍らに積まれたガラクタの山が雪崩を起こす。どうやら戦闘の余波により、バランスが崩れてしまったようだ。
 そして……。
 ガラクタの山に身を隠していたGたちが、その衝撃で驚いたのか、一斉に翅を広げて四葉と利香へ群がった。
「うわー!? よるなー!?」
 本日3度目の利香の悲鳴が木霊する。

「ちょ、無理、死んじゃう、パイセンたっけて……」
 四葉の腕が虚空を掻いた。
 その腕を這うGの姿に、茄子子は伸ばしかけた手を引いた。なぜなら一瞬たりとも、Gに触りたくはなかったからだ。
 既に利香の姿はGに埋もれて視認できない。
 四葉の頬をGが昇って……。
 彼の姿も、あっという間に見えなくなった。
「うーわ……」
「追い払うのは時間の無駄だとか、言ってられない、ね? これは」
 蠢くGの群れを見下ろし、リリーと希はそっと視線を交差させた。
 Gに飲まれた仲間たちの安否を確認しないわけにはいかない。
けれどしかし、Gの群れに手を突っ込む勇気はなかった。
「これがゴキブリ……あ、いや知ってるよ!ㅤ会長旅人だし!」
 頬を引き攣らせ、茄子子は告げた。
 胸に抱いたその白い手には淡い燐光が灯っている。回復術の発動準備は万全だ。
 後は利香と四葉を助け出すだけ。
 そのために手を伸ばす勇気だけが出なかった。
 なぜなら人は自然とGを嫌悪し恐れる生き物だから。
「ふむ……仕方ないな」
「だな!  野郎はほっといても大丈夫だろうけど、男として可愛い子には手を貸したいからな!」
 汰磨羈の刀と九内の蹴りが2人に群がるGを払った。
 斬られたGは地面に落ちて、蹴り砕かれたGの残骸が壁にぶつかる。
 そうして助け出された四葉は、よろりと立ち上がると口元を抑え端の方へと歩いて行った。その後ろ姿を見送って、アランはゆっくり視線を背ける。
 一方、その場に取り残された利香はというと、脱力した様子で放心していた。視線の定まらぬ瞳。ひくひくと小刻みに震える指先。
 半開きの唇には、黒くて細いGの脚が引っ掛かっている。
 Gによってもたらされる【窒息】とは、なるほど“そういう”ことなのだろう。
 利香の口元に汰磨羈はそっと手を伸ばし、Gの脚を指で弾いて取り除く。
「過酷態勢を持っておるだろ?」
「……地獄は無理」
 ひどくか細く、そして震えた声だった。

●母なるG
 ソシエール、最奥区画。
 長く、そして辛い道のりだった。
 先陣を切った九内とアランはGに襲われ細かな傷を無数に負った。
 利香の精神は崩壊しかけ、その都度に希と四葉がフォローした。
 Gによって植え付けられた心の傷を、理解し、癒せるのは同じくGに恐怖する者だけ。
 リリーや汰磨羈に、利香の気持ちは分からない。
「それじゃあ開けるよ!  マザー・Gを倒して、ストレガくんの薬も保護しないとね!」
 そう告げて、茄子子は扉の開閉スイッチへ手を伸ばす。
 ゆっくりと扉は開き……。
 ガラクタに溢れたストレガの私室へ、8人は足を踏み入れる。

 床に散らばる何かの部品。
 壁際に積まれた膨大な量の機械類。
 そして、その中央。“何か”を組み上げるマザー・Gの姿があった。
 マザー・Gの手から離れた“何か”が駆ける。
 それは新たに製造されたキッチン・Gだ。
 素早く床を這いずって、キッチン・Gは宙へ飛ぶ。
 まっすぐに、それは利香へと襲い掛かった。
「と、飛んでくるなぁぁ!!」
 道中で行われた戦闘のログはマザー・Gに正しく送られていたようだ。
 その結果、マザー・Gは理解した。
 この場で最も、自分たちを恐れている者は利香に他ならない、と。
「リサイクル能力自体は大したものだな。全く、別の形にすれば名作になったろうに」
 けれど、しかし。
 キッチン・Gの黒い手が、利香に届くことはなかった。
 一閃。
 汰磨羈の刀が生まれたばかりのキッチン・Gを斬り捨てた。

 ひゅおん、と空を裂く音がした。
 回転し、マザー・Gへ飛来するのは血染めのバール。
 マザー・Gは素早い動作でそれを回避してみせた。その手から零れた造りかけのキッチン・Gがバールによって粉砕される。
「ガラクタ、全部壊しちゃってもいいかも……」
 と、そう呟いて。
 投手のリリーはチラと背後へ視線を向ける。
「茄子子っち、フォローよろしく……」
「おっけー!  会長は後のことは考えずに回復しまくるよ!」
 そう叫ぶなり、茄子子は【クェーサーアナライズ】を行使。彼女を中心として展開された燐光が、仲間たちの傷を癒し、失われた気力を回復させる。
 戦闘準備は万全だ。
 たとえ、物陰から無数のキッチン・Gが姿を現そうとも、ここまで来て撤退するなどあり得ない。
 まず真っ先に飛び出したのはアランであった。
 身を低くして駆けるアランの両の手に、2振りの剣が握られる。
 右手には太陽の聖剣《ヘリオス》。
 左手には月輪の聖剣《セレネ》。
「あぁ、クソが! 月輪よ!このゴキブリを叩き潰すぞコラァ‼」
 その姿こそ、かつての“勇者”アランの本領。
 鋭く薙いだ斬撃が、キッチン・Gを微塵に砕く。

 鋭く放った九内の蹴りをマザー・Gが回避する。
 瞬間、加速したマザー・Gのタックルを受け九内の身体がガラクタの山に突っ込んだ。
「ぬ、おぉぉ!?  発明品とか色々ごっちゃごっちゃしてんな!」
 ガラクタの山に潰されながら悲鳴をあげる九内へ向けて、茄子子は回復スキルを行使した。
「お? これ、使えるかも……?」
 崩壊したガラクタの中から、希は銃を取り上げた。
 正しく言えば、それは“銃型の何か”である。
 一体何を発射する物かは不明だが、手にした感じではまだ壊れてはいないようだ。
「マザーはパイセンたちに任せるとして……っと、あれか? あれっぽいな」
 崩壊したガラクタ山の向こう側、粗末なベッドと紙束の積まれた机が見える。
 その上に置かれた薬瓶を視界に捉え、四葉は机へと駆ける。
「すまないけど、援護を頼む」
「任された。さて、使える発明品だといいんだけど……」
 応えた希は拾った銃を構えると、四葉の進路を塞ぐGの群れへと向けて引き金を引く。
 果たして……。
 銃口から射出された黒い弾丸が、Gの群れの中心で業火を巻いて爆ぜたのだった。
「……え」
 嘘でしょ? と。
 希は唖然と言葉を零す。
 火炎弾を撃ちだす武器を、あぁも無造作に放置しているとは思わなかった。

 炎が燃え上がったのは一瞬。
 床や周囲のガラクタ、そしてキッチン・Gを焦がしてあっという間に掻き消える。
 軽業師のごとき動作で火炎の真下を掻い潜り、四葉は机へと辿り着いた。
 彼の手が薬瓶を掴んだ、その瞬間……。
「な……」
 机の影に潜んでいたGが、四葉の足首に食らいつく。
 よろけた四葉に群がるG。
 彼は咄嗟に薬瓶を投擲した。
「ないすぅ」
 弧を描き飛ぶ薬瓶はリリーが鋏で受け取った。
 
 豊満な肢体を露出過多な衣装に包み、利香は仲間の開いた道を突き進む。
 夢魔としての本性を顕わにした彼女に惹かれ、キッチン・Gが這い寄るがその牙が利香の柔肌を貫くことはない。
「ふむ……これで終いか?」
 低く駆けた汰磨羈の刀が、キッチン・Gを切り壊す。
 そうして開かれた道の先には、マザー・Gの姿があった。
「せっかく作ったドクターには悪いが……南無三!!」
 鞭を振るう利香の背後から、九内が跳んだ。
 跳躍の勢いを乗せた九内の蹴りを、マザー・Gは飛翔し避けた。
 宙を舞うマザー・Gへと向けて利香はまっすぐに視線を向ける。身体を前に屈めることで、胸の谷間を強調した姿勢。
 怪しく光る夢魔の瞳を直視して、その魅力に惹かれぬ者などいるものか。
「ふふ。いい位置ね。機械と言えど惹き付ける術があるのはご存じでし……ぅぷっ」
 もっとも、当の利香の精神が黒光りするGの好意に耐えきれるとは限らない。
 口元を押さえ顔色を悪くする利香へ向け、マザー・Gは翅を震わせ飛び掛かる。
 もしもマザー・Gに発声機能が付いていたなら、きっとこういっていただろう。
『顔色が悪いみたいだけど、大丈夫?』
 と……。
「や、やっぱ無理……さっさと終わらせて、今日の事は早急に記憶から消し飛ばします!」
 バチと空気の爆ぜる音。
 雷を纏った一閃が、マザー・Gのボディを深く切り裂いた。
 火花を散らすマザー・Gの腹部からオイルに濡れたチューブが零れる。
『キィ……』
 金属を擦るような鳴き声をあげ、マザー・Gはその機能を停止した。
 そして……。
 広げた2本の脚で、最後に1度利香を抱きしめ。
 マザー・Gはその機能を停止したのだ。
「…………ほんと、無理」
 一言、そう呟いて。
 放心した利香はその場にペタリと座り込む。
 

成否

成功

MVP

リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王

状態異常

リカ・サキュバス(p3p001254)[重傷]
瘴気の王

あとがき

お疲れ様です。
マザーGは無事に破壊され、薬の回収も完了しました。
無事一命を取り留めたストレガは今後も数多の発明品を世に送り出すことでしょう。
生活習慣が改善されるとは限らないため、その発明品が役に立つ物かどうかは分かりませんが…。

この度はご参加いただきありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。
なお、重症は精神的なものです。

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